JP2003530855A - 遺伝子治療のためのベクター - Google Patents

遺伝子治療のためのベクター

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Abstract

(57)【要約】 チミジンキナーゼをコードする領域が機能的な受容体スプライス・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトを含まないチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチド。このポリヌクレオチドを含む発現ベクター。ポリヌクレオチドおよび発現ベクターは遺伝子治療に有用である。ポリヌクレオチドおよびベクターは、ガンシクロビルなどの実質的に無毒な薬剤(チミジンキナーゼにより有毒薬剤に転換される)と組み合わせて使用されたとき、細胞を破壊するのに有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子治療のためのベクターに関する。特に、本発明は、チミジン
キナーゼ遺伝子をコードする遺伝子治療のためのベクターに関するものであり、
中でも特に、この遺伝子をコードするレトロウイルス・ベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
癌遺伝子治療において、腫瘍治療のために代謝自殺遺伝子を使用することに大
きな関心がもたれている。哺乳類細胞中では通常発現しない自殺遺伝子を腫瘍細
胞中に送り込むと、無毒なプロドラッグを活性化してその細胞毒性形にすること
ができる。これは、遺伝子操作した腫瘍細胞を殺して腫瘍の退縮を引き起こすで
あろう(Mullen 1994,Pharmacol.Therapeut.
63,199−207)。HSV−tk/GCVシステムは自殺遺伝子治療で最
も広く用いられているアプローチの1つである(Moolten FL,Wel
ls JM,Cancer Res.46:5276,1986;Moolte
n FL,Cancer Gene Ther.1:279,1994)。HS
V−tk遺伝子を発現する細胞はGCVをリン酸化することが可能で、最終的に
はDNA複製能力に干渉する結果として細胞死をもたらす。このアプローチは、
ヒトの様々な癌の遺伝子治療に対する30例を超える臨床試験で現在使用されて
いる(Ross et al,1996;Hum.Gene Ther.:7,
1782−90)。
【0003】 同種(Allogeneic)骨髄移植(allo−SCT)は、多くの造血
器悪性腫瘍(haermatological malignancies)の
治療アプローチとして広く使用される。しかし、allo−SCTの成功は多く
の要因によって制限されており、その中には免疫適格ドナー由来のTリンパ球に
よって仲介され臨床的に移植片対宿主病(GvHD)とされるもの(clini
cal entity)も含まれる。GvHDの予防戦略としては、移植後にお
ける免疫抑制の使用および/またはex vivoもしくはin vivoでの
移植片のT細胞消耗除去法等がある。前者は、GvHDの予防に部分的には効果
があるが、免疫の再構築が遅れ、それにより、重度な病的状態や死に至る可能性
がある。後者には、移植片拒絶および白血病再発率の増加が伴う。場合によって
は、ドナーリンパ細胞(DLI;Kolb HJ et al:Blood 8
6:2041,1995)をさらに注入することによって再発の治療に成功する
こともあるが、これらはさらに重く致命的なおそれのあるGvHDをもたらす場
合もある。
【0004】 最近、同種造血幹細胞移植後における同種異系反応性(alloreacti
ve)ドナーT細胞の特異的かつ調整された除去(ablation)のために
HSV−tk/GCVシステムを用いることが提案されている(Bordign
on C et al Hum.Gene Ther.6:813,1095;
Tiberghien P,et al Hum. Gene Ther.8:
615,1997;Link et al,Human Gene Ther.
1998,9,115−134)。これは、移植片対白血病効果(GvL)を保
持しつつ移植片対宿主病(GvHD)を調整する可能性を有している。
【0005】 白血病再発およびエプスタイン−バー・ウイルスに伴うallo−SCT後の
リンパ増殖性疾患の予防と管理においては、HSV−tkを発現するドナーT細
胞が用いられてきた。臨床研究では、これらのドナー細胞によって引き起こされ
たGvHDはGCVに反応した(Bonini C,et al Scienc
e 276:1719,1997)。しかし、この研究では、1例の患者は、形
質導入されたドナーT細胞のGCV媒介消耗に対して部分的な耐性を示した。H
SV−tk形質導入された細胞のGCV耐性は、このアプローチの効果を制限す
るおそれがあるため、これは重要な問題である。この臨床観察結果は前臨床試験
で得られたデータを確認するものである。野生型のHSV−tk遺伝子を使用す
ることにより、GCV治療後の細胞増殖阻止率は80%から90%の範囲に及ぶ
。多くの場合、遺伝子操作された腫瘍細胞を完全に根絶することはできない。G
CV治療に耐性の細胞はHSV−tk形質導入集団内に見出された。ある場合に
は、GCVをより多い大量に用いることで細胞死を引き起こしてきた。しかし、
ヒトにおいてはGCVの毒性が累積的なため、このアプローチを臨床的な状況に
適用できないであろう。これらの新規なアプローチが引き起こした大きな期待に
もかかわらず、HSV−tk遺伝子は、最適化された場合に、これらの制限のう
ちのいくつかを回避する助けにはなるという程度である。理想的には、HSV−
tk/GCVシステムを用いて成果を挙げるには、効率を高め(100%殺害率
)、効果を改善する(必要とするGCVをより低い投与量にする)ことが望まし
い。そのような違いは、自殺遺伝子を臨床に用いる際の選択に影響するであろう
【0006】 遺伝子組換えドナーTリンパ球に関する我々の研究中に、我々は、HSV−t
k形質導入細胞のGCV耐性の少なくとも1つの原因を特定した。予想外なこと
に、レトロウイルス産生細胞では、プロウイルスに由来するtk mRNAの一
部がベクター由来のmRNA中にスプライシングされるようになることがわかっ
た。これはスプライス・サイトとして機能するtk mRNAの中のヌクレオチ
ド配列(これらは「隠れたスプライス・サイト」と呼べるかもしれない)の存在
により、異常な形のHSV−tk遺伝子を有するウイルス粒子が少数(残りは全
長形式を含む)が生産されるためだと考えられる。このメカニズムにより、トラ
ンケートされた(truncated)プロウイルスHSV−tk遺伝子が目標
細胞へ挿入されることが説明される。我々は、スプライス・サイトが除かれ、異
常な形のチミジンキナーゼ遺伝子の産生をもたらさないチミジンキナーゼ遺伝子
の変異体を作製した。これらは、チミジンキナーゼを正確に発現する形質導入し
た目標細胞をより大きな割合でもたらす。
【0007】 生物(酵素)活性を増加させるチミジンキナーゼ遺伝子の変異体が作られてい
る。例えば、Kokoris et al(1999)Gene Therap
y 6,1415−1426は、in vitroでのGCVおよびアシクロビ
ル(ACV)に対する細胞の感受性を増強する能力を備えた酵素のための変異体
HSV−tk遺伝子の大きなライブラリの作成およびスクリーニングについて記
載している。このライブラリから得られたある特定のチミジンキナーゼ(これは
、活性部位またはその近傍において6個のアミノ酸の変化を含む)の酵素動力学
から、チミジンのKmが35倍に増加し、その結果、プロドラッグとチミジンの
活動部位における競合が減少することが明らかになった。変異体はA151V、
L159I、I160L、F161A、A168YおよびL169Fである。W
O95/30007、米国特許第5,877,010号およびWO99/194
66(これらのすべては参照によって本願に組込まれる)は、酵素活動を増加さ
せたと称するHSV−tk変異体について記載している。 例えば、WO99/19466は、tk変異体P155A/F161V、P1
55A/F161V、P155A/D162E、I160L/F161L/A1
68V/L169MおよびF161L/A168V/L169Y/L170Cに
ついて記載している。仏国特許第2744731号、WO97/29196およ
び仏国特許 2751988は、ATP結合サイト中に変異を有するHSV−t
k変異体に関する。WO95/14102は、遺伝子治療で使用されるtkをコ
ードする組換えアデノウイルスに関する。しかし、これらの文書のいずれも、チ
ミジンキナーゼRNAの異常なスプライシング、またはtk mRNAからスプ
ライス・サイトを取り除く変異について記載していない。
【0008】 遺伝子治療においてtk遺伝子を使用する方法は、WO90/07936、米
国特許第5,837,510号、米国特許第5,861,290号、WO98/
04290、WO97/37542および米国特許第5,631,236号(こ
れらは言及によって本願に組み込まれる)に開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様は、チミジンキナーゼのコード領域が機能的スプライス・
アクセプター・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトを含まないチ
ミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0010】 以下により詳細に記載するように、スプライス・ドナー・サイトおよびスプラ
イス・アクセプター・サイト(これらは「隠れた」スプライス・ドナー・サイト
またはスプライス・アクセプター・サイトと呼ぶこともできる)は、チミジンキ
ナーゼ遺伝子(またはcDNA/mRNA)の天然のコード領域で識別され得る
ものであり、遺伝子操作により、これらのサイトの1つ以上を潰し、目標細胞中
で望ましくないスプライシングが起こらないようにすることができる。
【0011】 ポリヌクレオチドはDNAでもRNAでもよく、また、本発明でDNA分子の
中のスプライス・アクセプター・サイトまたはドナー・サイトと言う場合は、R
NAに転写されたときに、所与のスプライス・アクセプター・サイトまたはドナ
ー・サイトを含むDNA分子(またはその相補鎖)の一部を意味することは明ら
かであろう。典型的には、レトロウイルス・ベクター(下記の本発明の好適実施
態様)中に存在する場合は、ポリヌクレオチドはRNAであるが、、DNA(例
えば、レトロウイルス・ベクターがプラスミドDNAの形である場合、またはそ
れが形質導入された細胞のゲノムに統合される場合)、あるいは、適当な細胞中
に導入されるとRNAへ転写される別のタイプのベクター中のDNAでもよいこ
とは理解されるであろう。
【0012】 ポリヌクレオチドのtkコード領域はスプライスされないし、スプライスされ
得ない。したがって、前記コード領域の一部は除去されない。
【0013】 チミジンキナーゼは、天然のヌクレオシド基質およびヌクレオシド・アナログ
をリン酸化するサルベージ経路酵素である(Balaubramaniam e
t al(1990)J.Gen Virol.71,2979−2987)。
これはチミジンキナーゼを発現する細胞を殺すことができる有毒産物を生成する
アシクロビルまたはガンシクロビルなどの比較的無毒なヌクレオシド・アナログ
をリン酸化する能力を有するため、遺伝子治療や細胞を選択的に破壊することが
望ましいその他の用途に有用である。
【0014】 ヘルペス・ウイルス科(Herpesviridae)は、そのゲノムにおい
てチミジンキナーゼをコードする。他の単純疱疹ウイルス遺伝子の場合と同様に
、HSV−tk遺伝子は本来イントロンがない遺伝子である(Bordonar
o et al(1994)Biochem.Biophys.Res.Com
m.203,128−132;Otero et al(1998)J.Vir
ol.72,9889−9896;Lee et al(1998)J.Cel
l.Biochem.69,104−116)。チミジンキナーゼはヘルペスビ
リダエ・チミジンキナーゼであることが好ましい。適当なヘルペスビリダエ(H
erpesviridae)・チミジンキナーゼ酵素の代表的な例は単純疱疹ウ
イルス(HSV)タイプ1チミジンキナーゼ、HSVタイプ2チミジンキナーゼ
、水痘ゾスター・ウィルス・チミジンキナーゼ、およびマーモセット疱疹ウイル
ス、ネコ疱疹ウイルスタイプ1、シュードラビエスウイルス(pseudora
biesvirus)、ウマ疱疹ウイルスタイプ1、ウシ疱疹ウイルスタイプ1
、七面鳥疱疹ウイルス、マレーク(Marek)病ウイルス、疱疹ウイルス・サ
イミリ(saimiri)およびエプスタイン・バー・ウイルスのチミジンキナ
ーゼを含む。チミジンキナーゼがHSVタイプ1またはHSVタイプ2に由来す
る場合が好ましい。
【0015】 HSVチミジンキナーゼのcDNA配列を図11に示す。HSV−tkタイプ
1遺伝子(ATP:チミジン’5ホスホトランスフェラーゼ、EC 2.7.1
.21;受託番号V00467(EMBLデータ・ベース))の完全な配列は、
McKnight SL(Nucleic Acids Res.,77:24
4−248;1980)およびWagner et al(Proc.Natl
.Acad.Sci.78(3)1441−45;1980)によって記述され
た。このナンバリング・スキームによれば、実施例1のレトロウイルス・ベクタ
ーの構築に使用されるHSV−tk遺伝子配列は、5’端が516番の位置、3
’端が1646番目の位置にそれぞれ位置する。HSV−tk遺伝子の削除され
た断片は、5’端と3’端で844番と1071番の位置の間に位置した(実施
例1、図11)。
【0016】 スプライス・ドナー・サイトはRNA中のサイトであり、RNAの5’側に位
置し、スプライシング・プロセス中に削除され、また、切断されて、スプライス
・アクセプター・サイト内のヌクレオチド残基に再結合されるサイトを含む。し
たがって、スプライス・ドナー・サイトは、典型的にはジヌクレオチドAGで終
端するイントロンの端と次のエクソンの開始部位間の結合(junction)
である。
【0017】 スプライス・アクセプター・サイトはRNA中のサイトであり、RNAの3’
側に位置し、スプライシング・プロセス中に削除され、切断され、スプライス・
ドナー・サイト内のヌクレオチド残基に再結合されるサイトを含む。したがって
、スプライス・アクセプター・サイトはエクソンの端と、典型的にはジヌクレオ
チドGTで始まる下流のイントロンの開始部位間の結合(junction)で
ある。
【0018】 スプライシング中に削除される(すなわち「スプライス・アウトされる」)R
NAの部分は典型的にはイントロンと呼ばれ、スプライシングによって連結され
るイントロンの両側の2個のRNA片は典型的にはエクソンと呼ばれる。
【0019】 スプライス・サイトを記載し、また恐らくは識別するために用いられる「コン
センサス」配列が生産されているが、コンセンサス配列には適合しないがスプラ
イス・サイトとして機能する「隠れた」スプライス・サイトが存在することはよ
く知られている。念のために言えば、本発明においては、スプライス・サイトと
いう場合、隠れたスプライス・サイトも含む。したがって、特に、本発明のポリ
ヌクレオチドは、隠れたスプライス・ドナー・サイトおよび/または隠れたスプ
ライス・アクセプター・サイトを含まない。隠れたスプライス・サイトは本物の
スプライス結合サイトに類似しており、場合によってはRNAスプライシング反
応に加わることのある配列である。
【0020】 「機能的なスプライス・アクセプター・サイトを含まない」という場合、ポリ
ヌクレオチド中のコード領域(場合によっては発現ベクター)は、ポリヌクレオ
チドまたは発現ベクター中に存在するスプライス・ドナー・サイトとの組み合わ
せでスプライス・アクセプター・サイトとして機能することができるRNA(ま
たはRNAもしくはその相補鎖に転写され得るDNA)の部分を含まないという
意味を含む。
【0021】 「機能的なスプライス・ドナー・サイトを含まない」という場合、ポリヌクレ
オチド中のコード領域(場合によっては発現ベクター)は、ポリヌクレオチドま
たは発現ベクター中に存在するスプライス・アクセプター・サイトとの組み合わ
せでスプライス・ドナー・サイトとして機能することができるRNA(またはR
NAもしくはその相補鎖に転写され得るDNA)の部分を含まないという意味を
含む。
【0022】 本発明のポリヌクレオチドはtkのコード領域中にスプライス・アクセプター
・サイトを含んでもよいが、その場合、それはスプライス・ドナー・サイトを含
まず、コード領域部分でスプライシング・アウトは起こらない。
【0023】 ポリヌクレオチドはtkのコード領域にスプライス・ドナー・サイトを含んで
を含んでもよいが、その場合、それはスプライス・アクセプター・サイトを含ま
ず、コード領域部分でスプライシング・アウトは起こらない。好ましくは、ポリ
ヌクレオチドはtkのコード領域内にスプライス・アクセプター・サイトを含ま
ず、スプライス・ドナー・サイトを含んでいない。
【0024】 オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異生成またはポリメラーゼ連鎖反応に基
づく方法などの標準的な突然変異生成技術を使用して、機能的なスプライス・ア
クセプター・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトを含まないチミ
ジンキナーゼをコードするコード領域は、容易に作成することができる。
【0025】 オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異生成は、要するに、所望の変異をコー
ドするオリゴヌクレオチドを、変異させるべき領域を含む1本鎖DNAとハイブ
リダイズさせ、この1本鎖DNAをオリゴヌクレオチド伸張用のテンプレートと
して用いて変異を含むストランドを生産するものである。この技術は様々な形で
Zoller and Smith (1982) Nucl.Acids R
es.10,6487に記載されている。
【0026】 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、本質的に、in vitroで配列特異
的オリゴヌクレオチドを使用して、指数関数的にDNAを増幅することを含んで
いる。所望であれば、オリゴヌクレオチドは配列変更を組込むことができる。ポ
リメラーゼ連鎖反応技術はMullis and Fuloona(1987)
Meth.Enz.155,335に記載されている。PCRを使用する突然変
異生成の例はHo et al(1989)Gene 77,51に記載されて
いる。
【0027】 チミジンキナーゼのコード配列するコード領域におけるスプライス・サイトの
存在は、例えば、実施例1に記載した方法を使用して決定することができる。実
施例1においてtkに関して、より詳細に記載するように、形質導入されたバル
ク集団をサブクローニングし、得られたサブクローンの同定を、配列分析などの
分子技術によって行なうことにより、ウイルス産生細胞のスプライシング機構に
よって認識される可能性の高いコンセンサス配列(いわゆる隠れたスプライス・
サイト)を同定することができる。これらのコンセンサス配列、特に、コード領
域中に直接位置するものまたは導入遺伝子の調節要素は、新しいベクター構築物
を設計する際、ここに述べるように1つまたは複数のスプライス・サイトを変更
することによって回避できる。
【0028】 いったんスプライス・サイト(複数可)が同定されれば、スプライス・サイト
(複数可)がもはや機能しないようにその/それらの配列を修飾することが可能
である。
【0029】 スプライス・サイトの変異は不適当なスプライシングを廃止することで容易に
示すことができる。実施例1において例証されるように、細胞がGCVに曝露さ
れたとき、欠損HSV−tk遺伝子を有するサブクローンは遺伝子の不適当な発
現を示した。3Hチミジンの取り込みによって評価される細胞増殖は、形質導入
されていない細胞(対照)で観察されるものと同様であった。GCVに対して耐
性を示す分子機構の同定により、形質導入されたバルク集団内の欠損HSV−t
k遺伝子を特定的に増幅するPCRを開発することができた。主要なヒトのT細
胞もCEM(正常なヒトT細胞株)と同様にスプライス修正されたHSV−tk
遺伝子(つまり、スプライス・サイトが変異生成により除去された遺伝子)を有
するベクターを使用して形質導入した。これらの集団で実行されたPCR分析は
、トランケートされた(truncated)HSV−tk遺伝子に予想される
バンドを増幅しなかった。形質導入されたバルク集団は、修正済でないHSV−
tk遺伝子のために行なったのと同じ方法でサブクローニングした。修正済でな
いHSV−tk遺伝子を備えたクローンは、いずれも、分析により、HSV−t
k配列の位置842番および1070番で予期された削除を示した。
【0030】 したがって、本発明のさらなる実施形態は、本発明の第1の実施形態によるポ
リヌクレオチドを作製する方法、すなわち、(1)チミジンキナーゼのコード領
域が機能的なスプライス・アクセプター・サイトおよび/またはドナー・サイト
を含んでいるかを決定すること、(2)含む場合には、スプライス・アクセプタ
ー・サイトおよび/またはドナー・サイトの少なくとも1つを変化させてそれら
を非機能性にすることを含む方法を提供する。典型的には、ステップ(1)は、
スプライシング・イベントがコード領域内のスプライス・サイトを使用して生じ
たことをmRNAが示すかどうか決めるために、天然のコード領域の少なくとも
一部から転写されたmRNAを分析することを含む。これは本願に記載するよう
なPCR方法を使用して適宜実行してもよい。典型的には、ステップ(2)にお
ける変異は、例えば、不一致のオリゴヌクレオチドを使用することにより、部位
特異的変異生成を使用して導入される。
【0031】 本発明の好ましい実施形態では、スプライス・サイト(複数可)が、同じアミ
ノ酸残基をコードする縮退コドンにコドンが変更されるような遺伝暗号に着目し
て修正される。このように、野生型蛋白質をコードするが機能的なスプライス・
アクセプター・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトを含まない、
興味のある蛋白質をコードする領域を作成することが可能である。
【0032】 本発明のさらなる好適実施形態では、チミジンキナーゼをコードする領域は、
野生型に比べて酵素活性を増強する変異を含む酵素をコードするように修正され
る。
【0033】 チミジンキナーゼの変異体は例えば、Kokoris et dl(1999
)Gene Therapy 6,1415−1426、WO95/30007
、米国特許第5,877,010号、WO99/19466、仏国特許第274
4731号、WO97/29196および仏国特許第2751988号(これら
のすべては参照によって本願に組込まれる)に記載されている。したがって、本
発明は、チミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドおよび発現ベクターを
含み、ここでチミジンキナーゼをコードする領域は機能的なスプライス・アクセ
プター・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトを含まず、野生型と
比較して、酵素活性が増強する変異を含むチミジンキナーゼをコードする。特に
好ましい変異は、前記論文並びに特許出願および特許に記載されている変異であ
る。
【0034】 本発明のポリヌクレオチドはチミジンキナーゼをコードする領域のみを含むも
のでもよいことが理解されるであろう。しかし、ポリヌクレオチドがさらに目標
細胞内のコード配列の効率的な翻訳を可能にする核酸部分を、操作可能なリンケ
ージ中に含む場合が好ましい。さらに、ポリヌクレオチド(DNAの形である場
合)が、コード領域の転写、および目標細胞のコード領域の効率的な翻訳を可能
にする核酸部分を含むプロモーターを操作可能なリンケージ中にさらに含む場合
が好ましい。プロモーターは、RNAポリメラーゼが結合して転写が起こること
を可能にするDNA配列によって形成された発現制御要素である。
【0035】 ポリヌクレオチドは、発現ベクター(これは、次いで、チミジンキナーゼの発
現および生産のための適切な宿主または目標細胞を形質転換するために使用され
る)を構築するため、本願による教示を考慮して適切に修正された既知の技術に
従って使用してもよい。こうした技術は、1984年4月3日にRutterら
に対して発行された米国特許第4,440,859号、1985年7月23日に
Weissmanに対して発行された米国特許第4,530,901号、198
6年4月15日にCrowlに対して発行された米国特許第4,582,800
号、1987年6月30日にMarkらに対して発行された第4,677,06
3号、1987年7月7日にGoeddelに対して発行された米国特許第4,
678,751号、1987年11月3日にItakuraらに対して発行され
た米国特許第4,704,362号、1987年12月1日にMurrayらに
対して発行された米国特許第4,710,463号、1988年7月12日にT
oole,Jr.らに対して発行された米国特許第4,757,006号、19
88年8月23日にGoeddelらに対して発行された米国特許第4,766
,075号および1989年3月7日にStalkerに対して発行された米国
特許第4,810,648号(これらはすべて言及によって本願に組込まれる)
の開示に含まれている。
【0036】 ポリヌクレオチド(典型的にはDNAの形)は、適切な宿主中に導入するため
に種々様々の他のDNA配列に結合してもよい。相手DNAは、宿主の性質、宿
主中へのDNAの導入方法、またエピゾームの維持あるいは統合のいずれが望ま
れるかに依存する。
【0037】 一般に、ポリヌクレオチド(DNA)は、発現のための適切な方向および正確
なリーディング・フレームで、レトロウイルス・ベクター・プラスミドなどの発
現ベクターに挿入される。必要ならば、DNAは、所望の宿主によって認識され
る適切な転写と翻訳を調節制御するヌクレオチド配列に結合させてもよい(但し
、このような制御は一般には発現ベクターによって得られる)。その後、ベクタ
ーは標準的技術によって宿主(または目標細胞)内に導入される。一般に、宿主
または目標細胞は、すべてベクターによって形質転換されるとは限らない。した
がって、形質転換された宿主または目標細胞のために選択することが必要であろ
う。1つの選択技術は、発現ベクターを、任意の必要な制御要素と共に、形質転
換された(または形質導入された)細胞の選択可能な特性(抗生物質耐性など)
をコードするDNA配列に組み込むことを含む。あるいは、そのような選択可能
な特性の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換(または同時形質導入)する
ために使用される別のベクター上にあってもよい。興味のある蛋白質がtkであ
る場合、tkの存在は、例えば、tk酵素活動の測定により、またはtk発現を
免疫学的に検知することにより形質転換された細胞において検知することができ
る。新たに合成されるDNA中に3H−チミジンを取り込ませることにより評価
される細胞増殖の阻害を測定することにより、HSV−tk遺伝子の発現を適宜
決定してもよい。
【0038】 したがって、本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のポリヌクレオチド
を含む発現ベクターを提供する。発現ベクターは、tkが目標細胞によって取り
込まれ、かつコード領域が転写され翻訳されることを可能にするベクターである
。本発明においては、目標細胞は典型的には、スプライシングを行なうことがで
きる細胞である。好ましくは、細胞は哺乳類の細胞であり、より好ましくはヒト
の細胞である。したがって、本発明の好適実施形態は、哺乳類細胞、特にヒトの
細胞で、tkの効率的な発現を可能にする発現ベクターである。
【0039】 本発明のベクターは、遺伝子治療に用いるのに適合したものとするのが適当で
ある。典型的には、ベクターは好ましくは哺乳類の細胞、好ましくはヒトの細胞
中での発現を可能にするものである。ベクターが、破壊することが望まれる細胞
を選択的に目標とすることができるものである場合が特に好ましい。ベクターが
目標とする細胞タイプで選択的に働くプロモーター配列の使用により、目標細胞
中での選択的な発現を可能にするものである場合がさらに好ましい。これらの実
施形態は以下により詳細に記述される。
【0040】 発現ベクターはウイルスのベクターが便利であり、特に、ベクターがレトロウ
イルス・ベクターであることが好ましい。しかし、本発明のポリヌクレオチド、
発現ベクターおよび方法は、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス
その他、当業者には知られたウイルスなど伝染性のウイルス粒子の合成の間にウ
イルス生産細胞のスプライシング機構が干渉し得る発現ベクターを含む。したが
って、本発明は、ベクター由来のプレRNAが宿主細胞のスプライシング機構に
よって認識され続いて処理されることにより導入遺伝子の不適当な発現(すなわ
ち、興味のある蛋白質)をもたらすことができる任意の発現ベクターに関する。
【0041】 本発明のポリヌクレオチドおよび発現ベクターは、任意の適切な方法によって
作製することができる。例えば、操作しやすく相補的な粘着末端を介してDNA
をベクターに操作可能にリンクするために様々な方法が開発されている。例えば
、相補的なホモポリマー領域(tract)を、組換えベクターDNAに挿入す
べきDNAセグメントに加えることができる。その後、ベクターとDNAセグメ
ントは、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって連結されて組換えDNA
分子を形成する。
【0042】 1つ以上の制限部位を含む合成リンカーは、ベクターにDNAセグメントをつ
なぐ別の方法を提供する。前述のエンドヌクレアーゼ制限消化によって生成され
たDNAセグメントは、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼまたは大
腸菌DNAポリメラーゼI酵素で処理される。これらはその3’−5’−エクソ
ヌクレアーゼ活性によって、突出部分、3’−1本鎖端を除去し、後退した3’
−端をそのポリメラーゼ活性で満たす。
【0043】 したがって、これらの活性の組み合わせは平滑末端DNAセグメントを生成す
る。その後、平滑末端セグメントを、バクテリオファージT4 DNAリガーゼ
などの平滑末端DNA分子のライゲーションに触媒作用を及ぼすことができる酵
素の存在下で過剰モル量のリンカー分子をインキュベートする。したがって、反
応産物はそれらの端に重合性リンカー配列を担持するDNAセグメントである。
その後、このDNAセグメントを適当な制限酵素で開裂させておいて、DNAセ
グメントの端部と適合する端部を生成する酵素により発現ベクターにライゲート
する。
【0044】 様々な制限エンドヌクレアーゼ・サイトを含む合成リンカーが多数の発売元(
たとえば、International Biotechnologies I
nc,New Haven,CN,USA)から市販されている。
【0045】 本発明のポリペプチドをコードするDNAを修正する望ましい方法は、Sai
ki et al(1988)Science 239,487−491によっ
て示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を使用するものである。
【0046】 この方法では、2つの特異的オリゴヌクレオチドプライマーが酵素で増幅され
るDNAに隣接し、これらのプライマー自体は、増幅されたDNAに組み入れら
れる。前記特異的プライマーは、当業者に知られた方法を用いて発現ベクター中
にクローニングするために使用することができる制限酵素認識サイトを含んでい
てもよい。
【0047】 本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の発現ベクターは、Sambrook et al(1989).Molecular cloning, lab
oratory manual,2nd edition,Cold Sprin
g Harbor Press,Cold Spring Harbor,Ne
w Yorkに記載されているものなど、当業者にはよく知られた分子生物学的
技術を使用して、容易に作製し得ることが理解されるであろう。
【0048】 本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様のポリヌクレオチドまたは本発明
の第2の態様の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0049】 宿主細胞は、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを増殖するために使用され
る細胞であり、これにより、ポリヌクレオチドや発現ベクターをさらに使用する
ために十分な量を作成することができる。例えば、宿主細胞はDNAを生産する
ために使用されるバクテリアの細胞(例えば、大腸菌)でもよい。したがって、
例えば、レトロウイルス・ベクターのプラスミドDNA形式は大腸菌中で生産で
きる。
【0050】 宿主細胞は、当業者にはよく知られたレトロウイルス・パッケージング細胞株
のようなウイルスをパッケージにし増殖させるための細胞でもよい。
【0051】 宿主細胞は、破壊が望まれる動物または患者(ヒトでも動物でもよい)の細胞
でもよい。以下、より詳細に論じるように、本発明のポリヌクレオチドおよびベ
クターは、破壊しようとする細胞を標的とすること、および実質的に無毒だがt
kによって毒性の形に変換される薬剤と接触させるべき細胞(それらはある条件
の下のtkを発現する)に有用である。
【0052】 本発明の組換えDNAまたはRNAによって形質転換された宿主細胞は、当業
者にはよく知られた方法を使用して作成することもできる。
【0053】 本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様のポリヌクレオチドまたは本発明
の第2の態様の発現ベクターを含み、さらに薬剤として許容される担体を含む医
薬組成物を提供する。
【0054】 薬剤として許容される担体は、本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクター
の物理的および生物学的形態と適合するようにこれらの形態に従って選択される
。典型的には、それは無菌であり発熱物質を含まない。ベクターがウイルス・ベ
クターである場合、典型的には、医薬組成物は、低濃度の非イオン性洗剤または
蛋白質(例えば、血清アルブミン)などのウイルスを安定させる何らかの薬剤を
含んでもよい。その処方は、単位投薬形式で提供されるのが便利であるが、遺伝
子治療や薬学ではよく知られた方法のいずれかによって準備できるものでもよい
。そのような方法は、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを担体(これは1種
または複数の補助成分となる)と結合させるステップを含んでいる。
【0055】 非経口投与にふさわしい処方は、水ならびに抗酸化剤、バッファ、静菌剤およ
び意図するレシピエントの血液と等張にするための溶質を含んでもよい非水性の
無菌注射用溶液;ならびに、懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性または非水
性の無菌懸濁液である。処方は例えば単位服用量または多数回分服用量容器、例
えば、密封アンプルおよびバイアルとして提供することができ、また、使用直前
に、注射用の水などの無菌の液体の担体の追加だけを必要とするフリーズドライ
(凍結乾燥)状態に保存してもよい。前述したタイプの無菌粉末、顆粒および錠
剤から即席の注入溶液および懸濁液を調製することもできる。
【0056】 好ましい単位投薬処方は、活性成分を、1日当たり服用量または単位を含むも
の、1日数回の各服用量またはこれらを適当に分けたものである。
【0057】 本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様のポリヌクレオチドまたは本発明
の第2の態様の発現ベクターを医学での使用のために供給する。すなわち、ポリ
ヌクレオチドまたは発現ベクターはパッケージ化され、医学用に提供される。
【0058】 本発明のポリペプチドと発現ベクターは、破壊する標的細胞を持っている患者
(特にヒトの患者)の治療において有用である。
【0059】 本発明の第6の態様は、細胞の破壊方法を提供するが、これは、本発明の第1
の態様によるポリヌクレオチドまたは本発明の第2の態様による発現ベクターを
細胞内に導入すること、細胞にチミジンキナーゼを発現させること、実質的に無
毒であるがチミジンキナーゼによって毒性の薬剤に変換される薬剤と細胞を接触
させることを含む。ポリヌクレオチドまたは発現ベクターの細胞内への導入およ
び実質的に無毒な薬剤に細胞を接触させることは任意の順番でよい。
【0060】 細胞の破壊は、培養中の細胞などin vitroで行なってもよいし、動物
(ヒトを含む)の一部である細胞でもよい。様々な理由から細胞を破壊すること
が望ましい場合がある。例えば、細胞が癌細胞であるかそうなる可能性を有する
ために細胞を破壊することが望ましい場合がある。さらなる実施形態としては、
産生が望まれない細胞株の前駆細胞であるために細胞を破壊することが望ましい
場合がある。例えば、細胞は実験系で使用している動物の幹細胞でもよい。幹細
胞に由来する細胞株が産生されない場合に幹細胞を破壊することができる。
【0061】 ポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、標的細胞によって取り込まれるよう
に、細胞に接触させる。いったん細胞に入った後は、ポリヌクレオチドまたは発
現ベクターに由来する遺伝物質は、安定して細胞のゲノムに統合されてもよいし
、あるいは、エピゾームとして維持されてもよい。いずれの方法でも、また、ど
のような場合でも、細胞はチミジンキナーゼを発現する(但し、システムによっ
ては、これは細胞が刺激にさらされているか否かに依存する場合もある。下記参
照)。標的細胞(それらはチミジンキナーゼを発現している)を殺すために、そ
れらを実質的に無毒であるがチミジンキナーゼによって毒性の薬剤に変換される
薬剤と接触させる。
【0062】 本発明の第7の態様は、破壊を必要とする細胞を持つ患者を治療する方法を提
供するものであり、これは、本発明の第1の態様によるポリヌクレオチドまたは
本発明の第2の態様による発現ベクターを患者に導入すること、ポリヌクレオチ
ドまたは発現ベクターを細胞に取り込ませること、細胞にチミジンキナーゼを発
現させること、および、実質的に無毒であるがチミジンキナーゼによって毒性の
薬剤に変換される薬剤を患者に投与することを含む。実質的に無毒であるがチミ
ジンキナーゼによって毒性の薬剤に変換される薬剤は、ポリヌクレオチドまたは
発現ベクターの導入前、導入の間、またはその導入の後に投与してもよい。
【0063】 好ましくは、遺伝的構築体(これによって、我々は本発明のポリヌクレオチド
または発現ベクターを意味する)は細胞、好ましくはヒトの細胞への送達に適し
たものにする。より好ましくは、遺伝的構築体は、動物の体、より好ましくは哺
乳類の体への送達に適したものにする。最も好ましくは、遺伝的構築体を、人体
の細胞への送達に適したものにする。
【0064】 遺伝的構築体を動物の体中の細胞に導入する手段および方法は、当該分野では
知られている。例えば、本発明の構築体を、適宜な方法、例えばレトロウイルス
を含む方法により標的細胞中に導入するものでもよく、これによって構築体を腫
瘍細胞のゲノムに挿入する。例えば、Kuriyama et al(1991
)Cell Struc.and Func.16,503−510では、精製
されたレトロウイルスが投与された。レトロウイルスは癌細胞を選択的に感染さ
せることが可能な手段である。なぜなら、レトロウイルスは分裂中の細胞におい
てのみゲノムと一体になることができるが、癌を取り囲むほとんどの正常な細胞
は、細胞成長の静止状態、つまり、受容力がない段階にあるか、または腫瘍細胞
ほどには急速に分裂していないからである。適当なプロモーターセグメントおよ
びここに述べるようなチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含むレ
トロウイルスDNA構築体は、当業者にはよく知られた方法を使用して作製され
るものでもよい。このような構築体から活性なレトロウイルスを産生するために
は、両種性(amphotrophic)パッケージング細胞株が通常使用され
る。細胞株のトランスフェクションはリン酸カルシウム共沈殿物により行なうの
が便利であり、最終的濃度が1mg/mlとなるようにG418を添加すること
によって安定な形質転換体が選択される(レトロウイルスはneoR遺伝子を含
んでいるものとする)。独立した形質導入コロニーを分離し、選択および展開し
、培養上清を取り出し、孔サイズ0.45μmのフィルターでろ過し、−70℃
で保存した。腫瘍細胞中にレトロウイルスをin vitroで導入するために
は、10μg/mlのポリブレン(Polybrene)を腫瘍細胞に加えて、
レトロウイルス上清をインキュベートするのが便利である。レトロウイルスを腫
瘍にin situで導入するためには、腫瘍領域にレトロウイルス上清を注入
するのが通常である。直径10mmを超える腫瘍については、適当な力価のレト
ロウイルス上清0.1ml〜1ml、好ましくは0.5mlを注入するのが適切
である。
【0065】 あるいは、Culver et al(1992)Science 256,
1550−1552に記載されているように、レトロウイルスを産生する細胞を
腫瘍などの標的細胞部位に注入する。このように導入したレトロウイルス産生細
胞は、レトロウイルス・ベクター粒子を活発に生産するように遺伝子操作されて
いるため、腫瘍塊内においてin situでベクターの連続的生産が起こる。
したがって、レトロウイルス・ベクターを生産する細胞と混じり合うと、腫瘍細
胞などの増殖する標的細胞は成功裡にin vivoで形質導入することができ
る。したがって、「本発明の第1の態様によるポリヌクレオチドまたは本発明の
第2の態様による発現ベクターを患者に導入する」というとき、我々は、ここに
述べるようなレトロウイルス生産細胞を患者に導入することを含む。
【0066】 本発明では、また、標的とされたレトロウイルスも利用可能である。例えば、
特定の拘束親和性を付与する配列を、既存のウイルスenv遺伝子に遺伝子操作
で組み込むことができる(遺伝子治療のためのこのまたは他の標的とされたベク
ターに関してはMiller&Vile(1995)Faseb J.9,19
0−199参照)。レトロウイルス・ベクターの屈性(tropism)は外来
またはハイブリッドのエンベロープ蛋白質を組み込むことで変更できる(Bat
tini JL,et al J.Virol.66:1468−1475;1
992)。これは、単クローン抗体をマウスの自己指向性(ecotropic
)レトロウイルス粒子に挿入することで実現できる。あるいは、ウイルス粒子に
結合するラクトースなどの化学的修飾も、形質導入の可能な標的細胞の範囲を増
加させ、または予測可能に変更された認識特異性を付与することができる。非ウ
イルス性ポリペプチドを提示するレトロウイルス粒子は、非ウイルス部分によっ
て特定の標的細胞用に使用することができる。
【0067】 他の方法は、遺伝的構築体を単純に細胞内に送達し、限定された時間またはゲ
ノムへの統合後、より長い時間、そこで発現させる。後者のアプローチの例は(
好ましくは腫瘍細胞標的とされた)リポソームを含む(Nassander e
t al(1992)Cancer Res.52,646−653)。
【0068】 イムノリポソーム(immunoliposome)(抗体特異的リポソーム
)は、その抗体が利用可能な細胞表面蛋白質を過剰発現している癌細胞のタイプ
を標的とする場合には特に有用である(例に関しては表を参照)。イムノリポソ
ームの調製のために、MPB−PE(N−[4−(p−マレイミドフェニル)−
ブチリル]−ホスファチジルエタノールアミン)を、Martin&Papah
adjopoulos(1982)J.Biol.Chem.257,286−
288の方法によって合成する。MPBPEはリポソームの二分子層に組み入れ
られ、リポソーム表面への抗体、またはそれの断片の共有結合を可能にする。リ
ポソームに、本発明のDNAまたは他の遺伝的構築体を結合させ標的細胞に送達
させるのが便利である。これは、例えば、DNAまたは他の遺伝的構築体溶液中
で前記リポソームを形成し、0.8MPa以下の窒素圧力の下、孔サイズが0.
6μmと0.2μmのポリカーボネート膜フィルタを通して連続押し出しする。
押出し後、80000×g、45分の超遠心分離でトラップしたDNA構築体を
遊離DNAから分離する。酸素が除去されたバッファ中、調製したばかりのMP
B−PE−リポソームを新たに調製した抗体(またはそれの断片)と混合し、4
℃の窒素雰囲気下、一定のエンド・オーバー・エンド回転を一夜続けつつ結合反
応を行なう。80000×g、45分の超遠心分離によって、イムノリポソーム
を結合していない抗体から分離する。イムノリポソームは、腹腔内に注入しても
よいし、腫瘍に直接に注入してもよい。
【0069】 イムノリポソームを使用してもよいが、標的細胞に結合可能なペプチド部分を
含むことにより細胞を標的とするリポソームを使用することも可能である。この
ようなペプチド部分は、標的細胞上で選択的に発現(または過剰発現)され得る
受容体用リガンドを含む。
【0070】 また、DNAは、例えば、下記のように、DNAをアデノウイルス粒子内に存
在させることによりアデノウイルスによって送達してもよい。
【0071】 送達の他の方法は、抗体ポリリシンブリッジ(Curiel Prog.Me
d.Virol.40,1−18参照)を介し、およびトランスフェリン−ポリ
カチオン結合体を担体とすることによって外来DNAを運ぶアデノウイルスを含
む(Wagner et al (1990)Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 87,3410−3414)。これらの方法のうち最初のもの
は、ポリカチオン−抗体複合体を本発明のDNA構築体その他の遺伝的構築体と
ともに形成し、ここで抗体は、野生型のアデノウイルスまたは抗体に結合する新
しいエピトープが導入された変種アデノウイルスのいずれかに特異的である。ポ
リカチオン部分は静電気的相互作用によってDNAをリン酸塩骨格に結合する。
ポリカチオンがポリリシンである場合が好ましい。
【0072】 これらの方法の2番めでは、細胞内にDNA巨大分子を運ぶために受容体を媒
介としたエンドシトーシスを用いる高い効率の核酸送達システムが使用される。
これは、鉄輸送の蛋白質トランスフェリンを核酸に結合するポリカチオンに結合
(conjugate)させることにより遂行される。ヒト・トランスフェリン
、またはニワトリのホモローグであるコンアルブミン(conalbumin)
、またはこれらの組み合わせを小さなDNA結合性蛋白質プロタミンまたは様々
なサイズのポリリシンにジスルフィド結合によって、共有結合させる。これらの
修飾されたトランスフェリン分子は、それらの同系統の受容体に結合し、細胞内
に効率的に鉄輸送を仲介するその能力を維持する。トランスフェリン−ポリカチ
オン分子は、核酸サイズに関わらず(短いオリゴヌクレオチドから21キロ塩基
対のDNAまで)本発明のDNA構築体または本発明のその他の遺伝的構築体と
電気泳動に対して安定した複合体を形成する。トランスフェリン−ポリカチオン
とDNA構築体その他の遺伝的構築体との複合体を腫瘍細胞に供給する場合には
、細胞内において構築体からの高レベルの発現が期待される。
【0073】 受容体を媒介とした本発明のDNA構築体またはCotten et al(
1992)Proc.NatI.Acad.Sci.USA 89,6094−
6098の方法によってつくり出した、不完全なまたは化学上不活性化されたア
デノウイルス粒子のエンドソーム混乱(endosome−disruptio
n)活性を使用するその他の遺伝的構築体の高効率の送達を使用してもよい。こ
のアプローチは、例えば、本発明のDNA構築体またはその他の遺伝的構築体と
結合したトランスフェリンの存在下に、エンドソームからそれらのDNAをリゾ
ソームを通すことなしに放出させるようにアデノウイルスが適応され、アデノウ
イルス粒子と同じ経路で細胞により構築体が取り込まれるという事実によると思
われる。
【0074】 このアプローチは、複雑なレトロウイルス・構築体を用いる必要がない、レト
ロウイルス感染の場合のようにゲノムが永久的に修正されることがない、また、
標的とされた発現システムが標的とされた送達システムと結び付けられ、このた
め、他の細胞タイプへの毒性が低減するという長所を有する。
【0075】 標的細胞が腫瘍中にある場合、遺伝的構築体を含む適当な送達用担体を、一定
時間、腫瘍に局所的に潅流し、さらに、あるいはまたは、送達用担体または遺伝
的構築体をアクセス可能な腫瘍に直接注入することが望ましい。
【0076】 標的に対する別の送達システムとしては、さらにWO 94/10323に記
載された修正されたアデノウイルス・システムも知られている。この方法では、
典型的には、DNAはアデノウイルス内、またはアデノウイルス状粒子によって
運ばれる。Michael et al(1995)Gene Therapy
2,660−668は、繊維状蛋白質に細胞選択的部分を加えるアデノウイル
スの修正について記載している。Bischoff et al(1996)S
cience 274,373376に記載されたものなど、p53−欠損ヒト
腫瘍細胞中で選択的に増殖する変異体アデノウイルスは、本発明の遺伝的構築体
を細胞に送達するのに役立つ。したがって、本発明のさらなる実施形態が、本発
明の遺伝的構築体を含むウイルスまたはウイルス状粒子を提供することは理解さ
れるであろう。他の適当なウイルスまたはウイルス状粒子は、HSV、AAV、
牛痘およびパーボウイルス病を含む。
【0077】 本発明の第1および第2の態様では、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターが
、チミジンキナーゼの発現を駆動する標的細胞選択的プロモーターを有するもの
である必要はないが、選択性を与えるためそれがある場合が好ましいということ
は理解されるであろう。
【0078】 標的細胞選択的なプロモーターは、本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター
および方法を腫瘍治療に使用する場合は、腫瘍細胞選択的なプロモーターである
。さらに、他の適用例では他のタイプの標的細胞選択的プロモーターも有用であ
る。
【0079】 本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターおよび方法が治療の遺伝生成物が、
所望の標的細胞中でのみ治療用遺伝的産物がつくられることを保証するために使
用される場合は、標的細胞選択的なプロモーターは好ましくは、細胞選択的なプ
ロモーターである。これは、転写制御要素または組織特異的プロモーターを使用
することにより遺伝子発現を制限することにより達成することができる。遺伝子
のプロモーター領域内に存在する特定の調節要素を認識する転写因子の可用性(
すなわち、存在または欠如)によって遺伝子発現を調節することができる。組織
特異的発現を付与する調節要素は、ベクター本体内またはウイルス・プロモータ
ーもしくは調節要素に加え、あるいはそれに代えてウイルス・ベクター内に含め
ることができる。組織特異的遺伝子発現は造血幹細胞の形質導入の中で要求され
てもよい(目標が区別された細胞血統(例えば、赤血球、T細胞またはマクロフ
ァージ)中でのみ治療遺伝子を発現する)ことである場合(Grande−A
et al Blood 1999,15;93:3276−85))。特定の
組織で特異的にまたは優先的に発現する遺伝子から単離された利用可能な多くの
プロモーターが存在する(Huber et al 1991;Proc.Na
tl.Sci.USA 88:8039−43;Hafenrichter e
t al,1994;Blood 84:3394 3404)。
【0080】 宿主細胞ゲノム中の発現ベクター統合部位によっては、プロモーターに与えら
れた組織特異的調節機能が、統合部位近傍に位置する強い細胞調節要素によって
乗り越えられ無視されるかもしれない。場所によらず高レベルの導入遺伝子発現
を実現するためには、遺伝子座制御領域(LCR:locus control
region)と名付けられたDNA配列を使用することができる(Dill
on and Groveld,1993;Trends Genet.9:1
34−7)。
【0081】 発現ベクター中の遺伝子の位置独立的発現を保証する別の戦略は、統合部位近
傍に位置するエンハンサーやレプレッサーの影響からこれら遺伝子を保護するこ
とである(Duch et al,1994;J.Virol.68:5596
−5601)。このようなインシュレーター(nsulator)は、哺乳類お
よび哺乳類以外の細胞中で多数のものが識別されており、これらは将来のベクタ
ー設計統合サイトにこれらを組み入れることができるであろう(Kalos a
nd Fournier,1995;Mol.Cell Biol.15:19
8−207;Roseman et al,1995;Development
,121:3573−3582)。
【0082】 細胞選択的なプロモーターである有用な遺伝的要素は、以下のものであるが、
新しいものが常に発見されており、それらも本発明のこの実施形態において有用
であろう。
【0083】 チロシナーゼおよびTRP−1遺伝子は両者とも、メラニン色素、メラニン細
胞の特定の産物の合成に重要な役割を果たす蛋白質をコードする。チロシナーゼ
およびチロシナーゼ関連蛋白質(TRP−1)遺伝子の5’端は、これらのプロ
モーター要素の下流にクローン化された遺伝子に対し発現上の組織特異性を付与
する。
【0084】 これらの遺伝子の5’配列はBradl,M.et al(1991)Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 88,164−168 およびJa
ckson,I.J.et al(1991)Nucleic Acids R
es.19, 799−3804に記載されている。
【0085】 前立腺特異的抗原(PSA)はヒトの前立腺分泌物中の主要な蛋白質要素のう
ちの1つである。これは前立腺癌の検知およびモニタリングのための有用なマー
カーになっている。PSAをコードする遺伝子およびPSAの前立腺特異的発現
を指図するそのプロモーター領域が記載されている(Lundwall(198
9)Biochem.Biophys.Res.Comm.161,1151−
1159;Riegman et al(1989)Biochem.Biop
hys.Res.Comm.159,95−102;Brawer(1991)
Acta Oncol.30,161−168)。
【0086】 癌胎児性抗原(CEA)は、腫瘍マーカーとして広く用いられており、特に結
腸癌患者の監視に用いられている。CEAはいくつかの正常な組織中にもあるが
、明らかに、対応する正常な組織でよりも腫瘍組織中で高レベルに発現される。
CEAをコードする完全な遺伝子がクローン化され、そのプロモーター領域が分
析されている。CEA遺伝子プロモーター・構築体は、翻訳開始点から上流にお
よそ400個のヌクレオチドを含んでおり、ヒーラー・細胞株と比較して、腺癌
細胞株SW303中で9倍以上の高い活性を示した。これは、細胞タイプ特異的
発現性を担持するcis−作用性(cis−acting)配列が、この領域内
に含まれていることを示す(Schrewe et al(1990)Mol.
Cell.Biol.10,2738−2748)。
【0087】 ムチン遺伝子(MUC1)は、胸および膵臓の細胞株中では発現を選択的に指
図することができるが、非上皮でない細胞株ではそうではない5’側に位置する
配列を含む(WO91/09867。
【0088】 アルファフェトプロテイン(AFP)エンハンサーは、膵臓の腫瘍選択的な発
現の駆動源として有用である(Su et al(1996)Hum.Gene
Ther.7,463470)。
【0089】 細胞内で前記チミジンキナーゼの発現を一時的に規制できれば望ましいという
ことが理解されるであろう。これはチミジンキナーゼをコードするポリヌクレオ
チドまたは発現ベクターが、患者や動物体内の細胞に導入される場合は特にそう
である。したがって、前記チミジンキナーゼの発現が、例えば小さな分子の濃度
により調節できるプロモーターによって直接または間接にコントロールされるこ
とが望ましい。小分子は、(小分子が前記プロモーターの活性化または抑制を達
成するかどうかに依存して)前記チミジンキナーゼの発現の活性化や抑制が望ま
れる場合に、動物または患者に投与される。発現構築体が安定している場合、つ
まり、少なくとも1週間、1、2、3、4、5、6、8カ月間または1年以上の
間、前記細胞中で前記チミジンキナーゼを発現することができる場合、これは特
に有益であることが理解されるであろう。本発明の好ましい構築体は、調節可能
なプロモーターを含んでもよい。調節可能なプロモーターの例には、以下の文献
中で引用されているものを含む:Rivera et al(1999)Pro
c Natl Acad Sci USA 96(15),8657−62(経
口で生物利用可能な薬剤であるラパマイシンによる制御。2種の分離されたアデ
ノウイルスまたはアドノウイルス関連ウイルス(AAV)ベクターによるコント
ロールを用いる。一方は、誘致可能なヒト成長ホルモン(hGH)標的遺伝子を
コードし、他方は、2つの部分から成るラパマイシンにより調節される転写因子
);Magari et al(1997)J Clin Invest 10
0(11),2865−72(ラパマイシンによる制御);Bueler(19
99)Biol Chem 380(6),613−22(アデノウイルス関連
ウイルス・ベクターの総説);Bohl et al(1998)Blood
92(5),1512−7(アデノ関連ウイルス中のデオキシサイクリンによる
制御);Abruzzese et al(1996)J Mol Med 7
4(7),379−92(誘導要因、すなわち、ホルモン、成長因子、サイトカ
イニン、細胞増殖抑止剤、放射、熱ショックまたは関連する応答要素について総
説する)。
【0090】 ポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、任意の適当な方法で治療される患者
に導入される。標的細胞がポリヌクレオチドか発現ベクターを受け取り、かつ細
胞により取り込まれチミジンキナーゼを発現するには十分な時間が許容される。
次いで、患者に、チミジンキナーゼによって有毒薬剤に変換される無毒な薬剤を
――無毒な薬剤が、チミジンキナーゼを発現する標的細胞と接触してこれに入り
、酵素によってそれが標的細胞を殺すのに十分な有毒薬剤の量に変換されるのに
――十分な量投与する。
【0091】 チミジンキナーゼによって有毒薬剤に変換される実質的に無毒な薬剤は、ガン
シクロビル、アシクロビル、トリフルオロチミジン、1−[2−デオキシ,2−
フルオロ,β−D−アラビノフラノシル]−5−ヨードウラシル、ara−A、
ara 1、1−β−D−アラビノフラノシルチミン、5−エチル−2’−デオ
キシウリジン、5−ヨード−5’−アミノ−2,5’−ジデオキシウリジン、ヨ
ードキシウリジン、AZT、AIV、ジデオキシシチジン、Ara Cのいずれ
か1つである。ブロモビニルデオキシウリジン(BVDU)も用いることができ
る。tkにより代謝され得る任意のヌクレオシド・アナログまたは関連しない化
合物であって遺伝子操作された細胞およびプロドラッグの代謝産物に曝された細
胞の殺害に結びつくものも適宜使用できる。好ましくは、実質的に無毒な薬剤は
ガンシクロビルである。ガンシクロビルは、9−{[2−ヒドロキシ−1−(ヒ
ドロキシメチル)エトキシメチル}グアノシン)である。アシクロビルは(9−
[2−ヒドロキシエトキシメチル]グアノシン)である。AraAは(アデノシ
ンアラビノシド、ビブラバイン)である。AZTは3’−aziod−3’チミ
ジンである。AIUは5−ヨード−5’アミノ2’,5’−ジデオキシウリジン
である。AraCはシチジンアラビノシドである。
【0092】 本発明の第8の態様は(1)患者またはドナーから細胞を取り出すこと、(2
)細胞内にex vivoで本発明の第1の態様によるポリヌクレオチドまたは
本発明の第2の態様による発現ベクターを導入すること、(3)修飾した細胞を
チミジンキナーゼの発現の有無によらず患者に導入すること、(4)このような
発現がない場合には任意選択で細胞にチミジンキナーゼを発現させること、およ
び(5)チミジンキナーゼにより毒性の薬剤に変換される実質的に無毒の薬剤を
患者に投与することを含む、破壊の必要な細胞を有する患者の治療方法を提供す
る。
【0093】 ステップ(1)に関して、標的細胞は、望まれた治療の戦略により様々な出所
から得ることができる。癌の遺伝子治療では、腫瘍の軽減は、患者に由来する細
胞を含むであろう。同種骨髄移植では、細胞は、適当な受容者に移植すべきドナ
ーから得られるであろう。腫瘍塊中へのポリヌクレオチドまたは発現ベクターの
in vivo投与は、細胞のin vitro遺伝子操作に対する実現可能な
代替案となるであろう。
【0094】 本発明の第9の態様は、本発明の第1の態様によるポリヌクレオチドまたは本
発明の第2の態様による発現ベクターの、患者中の細胞を破壊するための薬剤製
造における使用を提供する。ここで、患者は実質的に無毒な薬剤であるがチミジ
ンキナーゼによって有毒薬剤に変換される薬剤の投与を受けていたか、現に受け
ているか、あるいは将来受ける。
【0095】 本発明の第10の態様は、実質的に無毒な薬剤であるがチミジンキナーゼによ
って有毒薬剤に変換される薬剤の、患者中の細胞を破壊するための薬剤製造にお
ける使用を提供する。ここで、患者は本発明の第1の態様によるポリヌクレオチ
ドまたは本発明の第2の態様による発現ベクターの投与を受けていたか、現に受
けているか、あるいは将来受ける。
【0096】 本発明の第11の態様は、本発明の第1の態様によるポリヌクレオチドまたは
本発明の第2の態様による発現ベクター、および実質的に無毒な薬剤であるがチ
ミジンキナーゼによって有毒薬剤に変換される薬剤を含む治療システム(あるい
は、これは「部品キット」と呼んでもよい)を提供する。実質的に無毒な薬剤は
チミジンキナーゼの作用によって有毒形に変換される前記の薬剤のいずれかでも
よい。好ましくは、無毒な薬剤はガンシクロビルである。
【0097】 以下、実施例および図面(これは例示のためのみのものである)によって、本
発明をより詳細に説明する。
【0098】 ここで、図1は、CEM細胞および主要Tリンパ球の形質導入のために使用さ
れた、SFCMM3(A)およびG1Tk1SvNa(B)ベクターのプロウイ
ルス形を示す模式図である。LTR、長い末端反復配列はモロニー(Molon
ey)ネズミ白血病ウイルス(MLV)およびMoloney肉腫ウイルス(M
SV)に由来する。HSV−Tkは単純疱疹ウイルス遺伝子配列である。SV4
0はサルウイルス40の初期プロモーターである。ΔLNGFRは、細胞質領域
中でトランケートされた低親和性神経成長因子受容体cDNAである。NeoR
:ネオマイシンホスホトランスフェラーゼcDNAである。CEM−Tkサブク
ローンに由来するゲノムDNAの消化のために使用したEcoRIとSacIの
ための制限酵素サイトが示されている。Tk1とNGFのプローブは、ゲノムD
NA中のプロウイルス配列を識別するために使用した。Tk2プローブもPCR
産物の特異性を確認するために使用した。SFCMM3を増幅することを目指し
たPCRプライマーの位置およびG1Tk1SvNaプロウイルス配列を、PC
R産物のサイズとともに示す。
【0099】 図2はレトロウイルスによって形質導入されたT細胞株であり、FACS分析
によるΔLNGFR発現の検出結果を示す。CEMおよびJurkat細胞(ヒ
トの細胞株)は未選択の集団(それぞれAおよびC)を形質導入した。磁気ビー
ズ(それぞれBおよびD)による1回のポジティブなイムノマグネティック選択
後、ΔLNGFR発現CEMおよびJurkat細胞の豊富化。示された結果は
、1つの代表的な実験に相当する。
【0100】 図3は、TK−CEM(A)およびTK−Jurkat(B)誘導サブクロー
ン中でのΔLNGFR導入遺伝子のFACS分析による発現を示す。細胞は、非
結合性(unconjugated)マウス抗ヒトLNGFR MoAbとイン
キュベートし、次いでFITCで標識されたヤギ抗マウスMoAbで染色した。
【0101】 図4は、TK−CEM由来のサブクローン中でHSV−tk導入遺伝子を測定
するためのGCV誘導細胞毒素の分析結果を示す。細胞は、GCVの濃度を増加
させ(0.05μg/mLから12.5μg/mLまでの範囲)、4日間インキ
ュベートした。細胞増殖は細胞DNAの中への3H−チミジンの取り込みによっ
て測定した。結果をGCVが存在しない状態で得られた3H−チミジンの取込量
に対する各GCV濃度における3H−チミジンの取込量によってパーセンテージ
で表わす。(◆)は形質導入されていないCEM細胞であり、(■)はSFCM
M3形質導入TK−CEMサブクローンである。
【0102】 図5は、TK−CEM(AおよびB)およびTK−Jurkat(CおよびD
)サブクローンのサザン・ブロット分析結果を示す。ゲノムDNAをSacI制
限酵素で消化した。サザン・ブロットは、TK(AおよびC)およびΔLNGF
R(BおよびD)特異的プローブでハイブリダイズした。
【0103】 図6は、TK−CEM(AおよびB)およびTK−Jurkat(BおよびC
)サブクローンのサザン・ブロット分析結果を示す。ゲノムDNAはEcoRI
制限酵素で消化した。サザン・ブロットは、TK(AおよびC)およびΔLNG
FR(BおよびD)特異的プローブでハイブリダイズした。
【0104】 図7は、TK−CEMおよびTK−Jurkatサブクローンに由来するゲノ
ムDNAからのSFCMM3プロウイルス配列のPCR増幅を示す。プロウイル
スの異なる4つの領域を特定のプライマーを使用して、PCRによって増幅した
(図1を参照)。断片1:LTR+/HTK5-(912bp);断片2:HTK
+/HTK1-(998bp);断片3:HTK1+およびNGF2-(753b
p)および断片4:NGF2+およびNGF3-(852bp)。
【0105】 図8は、形質導入され選択された主要Tリンパ球から得られたゲノムDNAか
らHSV−tk遺伝子配列(断片2:HTK4+/HTK1-;998 bp)の
PCR増幅を示す。TK−CEMおよびTK−Jurkatサブクローンからの
ポジティブおよびネガティブ・コントロールを使用した。
【0106】 図9は、TK−CEMおよびTK−Jurkatサブクローンに由来するゲノ
ムDNAからのトランケートされたHSV−tk遺伝子のPCR増幅結果を示す
。PCRは、耐GCV性のTK−CEMおよびTK−Jurkatクローン中の
HSV−tk遺伝子のスプライスされた形を特異的に増幅するプライマー(HT
K8+/HTK1-;640 bp)を使用してセット・アップした。
【0107】 図10は、形質導入され選択された主要Tリンパ球から得られたゲノムDNA
からのトランケートされたHSV−tk遺伝子のPCR増幅結果を示す。PCR
は、耐GCV性のTK−CEMおよびTK−Jurkatクローン中のHSV−
tk遺伝子のスプライスされた形を特異的に増幅するプライマー(HTK8+
HTK1-;640bp)を使用してセット・アップした。
【0108】 図11はHSV−tk遺伝子(V00467と呼ぶ)の野生型配列、実施例で
用いた発現ベクター中の完全長HSV−tk遺伝子(tkgene)および実施
例記載の実験で見出された削除された遺伝子(tkgene−del)を示す。
【0109】 図12は、癌遺伝子治療、および骨髄移植の後に、同種異系反応性(allo
reactivity)の調整のために用いるドナーTリンパ球によって腫瘍細
胞を殺すために提案された、HSV−tk/GCVシステムを示す模式図である
【0110】 図13は、部位特異的突然変異生成によるmSFCMM−3ベクターの修正を
示す。トランスフェクタント(transfectant)#2および#6の制
限酵素分析。EcoNIおよびMvaI制限酵素はベクターの位置1994およ
び2221で引き起こされた変化をそれぞれ検知するために使用した。野生型の
HSV−tk遺伝子配列を含む未修正ベクターを、ネガティブ・コントロールと
して使用した。
【0111】 図14。GCVを含むまたはGCVを含まない培養液中で形質導入された主要
なT細胞からのpTK/RTK2 PCR(35サイクル)産物のサザン・ブロ
ット。(A)形質導入されたか未選択のT細胞(TK0)中のHSV−Tk配列
のPCR増幅、形質導入されたかGCVがない状態で、および1μg/mL G
CVで7日間培養したG418選択のT細胞(TK800+GCV)。(B)G
CVの存在(1μg/ml)または不存在培地で8、11、16日間の培養後の
形質導入された主要なT細胞。ポジティブ(G1Tk1SvNaベクター生産細
胞からのDNA)およびネガティブ・コントロール(形質導入されていない主要
なT細胞)を使用した。
【0112】 図15。GCV治療中のGvHD(30日目には同種移植片(allogra
ft)を記入する)時における臨床試験の代表的な患者からの抹消血単核細胞の
TK PCR産物のサザン・ブロット分析。レーンA〜D:GCV治療開始後、
GVHD(A)、2日目(B)、4日目(C)、11日目(D)の時点で患者の
PBMCから抽出されたDNAサンプル。レーンE:ネガティブ・コントロール
(形質導入されていない主要なT細胞);レーンF:ポジティブ・コントロール
(G1Tk1SvNaベクター生産細胞からのDNA)。
【0113】 図16は、G1Tk1SvNaベクターで形質導入された異なる細胞集団の相
対的な細胞成長を示す代表的な実験の結果を示す。C0:形質導入されておらず
選択されていない細胞;C800: 形質導入されておらずG418(800m
g/ml)で選択された細胞;TK0:形質導入されて、選択されていない細胞
;TK800:形質導入しG418−選択した。
【0114】 図17。T細胞株および訂正されているか訂正されていないHSV−7kベク
ターで形質導入した主要なT細胞のPCR分析結果。(A)訂正されていないベ
クターG1Tk1SvNaまたはSF/Tk/wtで、または訂正されたベクタ
ーpSF/Tk/mutで形質導入された、GCV濃度(0、1、2または5μ
Ag/ml)の増加が存在する、Hut−78細胞株からのHSV−Tk PC
R産物のサザン・ブロット分析。(+)および(−)は、PCR反応のポジティ
ブ・コントロールおよびネガティブ・コントロールである。
【0115】 MWは、明るいバンドを有する600bp(100bp DNA ladde
r、Life Technologies)に等しい分子量マーカーを表わす。
HSV−Tk遺伝子の両方のかたち(白い矢印=全長、黒い矢印はトランケート
された遺伝子を示す)に対するプライマーを用いたPCRによる増幅結果。(B
)またはHSV−7k遺伝子のトランケートされた形式に特異的なプライマーを
用いた。(C)訂正されていないSCFMM3(wt)または訂正されたsc−
SCFMM3(mut)ベクターで形質導入した主要なT細胞のバルク集団。T
k−CEM#2およびTk−CEM#3はトランケートされていないPCRコン
トロールおよびトランケートされたPCRコントロールを表わす。形質導入され
ていないT細胞をネガティブ・コントロールとして用いた。
【0116】 図18。T細胞株および訂正されたHSV−Tkベクターまたは訂正されてい
ないHSV−Tkベクターで形質導入した主要なT細胞のGCV感度。訂正され
たSF/Tk/mut(?)または訂正されていないベクターG1Tk1SvN
a(○)またはSF/Tk/wt(△)で形質導入されたHut−78(A)お
よびCEM(B)細胞株のGCV感度を形質導入されていないT細胞株(■)と
比較して示す。データは、細胞活力の阻害を表わし、CEMおよびHut−78
細胞株について、それぞれ8つおよび3つの異なる独立した実験の平均±SDで
ある。(C)訂正されたsc−SFCMM3(△)または訂正されていないSF
CMM3ベクター(?)で形質導入された主要なT細胞のGCV感度を形質導入
されていないT細胞(■)と比較して示す。
【0117】
【実施例】
実施例1:単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子を有するレトロウイルス
・ベクターで形質導入されたヒトTリンパ球におけるガンシクロビル耐性の分子
メカニズム 我々は、形質導入されたCEMおよびJurkat細胞、2種のリンパ芽球状
ヒトT細胞株におけるGCV耐性に関わるメカニズムを検討する。使用するレト
ロウイルス・ベクター(SFCMM3)は、5’LTRコントロール下にあるH
SV−TK遺伝子、およびサルウイルス40プロモーターによって調節されるΔ
LNGFR遺伝子を含む(Verzeletti et al(1998)Hu
man Gene Ther.9,2243−2251)。形質導入され選択さ
れたCEMおよびJurkat細胞に由来する15種のサブクローンを、HSV
−tkおよびΔLNGFR導入遺伝子を発現させるために同定した。我々の得た
結果は、ΔLNGFR遺伝子を発現するサブクローン内では、いくつかの耐GC
V性のサブクローンが識別されたことを示した。GCV耐性の基礎となる分子メ
カニズムは、HSV−tk遺伝子配列中での227bp断片の削除を含んでいる
。トランケートされたHSV−tk遺伝子のマッピングは、HSV−tk配列内
の生産細胞のベクターRNAの隠れたスプライシングによって削除が引き起こさ
れたことを示した。サブクローンのうちのいくつかで見つかった、削除されたH
SV−tk遺伝子は、GCVのためのHSV−tk遺伝子の再発に関係している
。これらの知見は、癌遺伝子治療およびallo−BMTの中でHSVtk/G
CVアプローチを使用した従来の多くの研究でなされた観察結果を説明するであ
ろう。
【0118】 材料および方法 Retroviralベクターおよび産生株 SFCMM3ベクターは、Cl.Bordignon博士(Milan,It
aly)から提供されたもので、以前にも記載されている(Verzelett
i 1998)。簡単に言えば、レトロウイルス・ベクターは、長い末端繰返し
(LTR)の転写制御下の完全長HSV−TK遺伝子配列および内部プロモータ
ーであるサルウイルス40制御下のΔLNGFRを含む。ベクターDNAは、リ
ン酸カルシウム共沈により、E86自己指向性パッケージング細胞株に感染させ
た。感染したE86細胞から得られた上清を用いてGP+env Am12 両
種性細胞株を感染させた。形質導入したAm12細胞中でのΔLNGFRの発現
は、ネズミ抗ヒトΔLNGFR単クローン抗体(HB 6787,clone
20.4,ATCC,Rockville,MD)および第2抗体としてFIT
C標識をしたヤギ抗マウスIgGi単クローン抗体(Becton−Dicki
nson,Mountain View,CA)を使用してFACS分析によっ
て評価した。我々の実験で使用したレトロウイルス生産クローンはSFCMM3
#16として特定され、加熱して不活性化した10%のウシ胎児血清(FCS,
Harlan Sera− Lab Ltd.,Loughborough,U
K)、L−グルタミン20mM、ストレプトマイシン100μg/mL、ペニシ
リン(GibcoBRL;Life Technologies,Scotla
nd)100U/mLを添加したDulbeccoの修正イーグル培地(GIB
CO−BRL,Gaithersburg,MD)中に維持した。
【0119】 ウイルス上清の収穫 生産細胞を37℃に維持して拡張させる。培養が90%の密集状態となった時
点で、上清を新鮮なD−10培地と取り替え、細胞を32℃で16時間維持する
。ウイルスを含んでいる上清を収穫し、0.45μmメッシュのフィルターを通
して、離れている生産細胞および細胞断片を除去する。上清を液体窒素で瞬間冷
凍し、次いで、使用まで−80℃で保存する。ウイルス力価は、ウイルスを含む
上清を10倍無菌稀釈し、これを用いてNIH−3T3細胞を感染させ、しかる
後、FACS分析によって評価した。
【0120】 ヒトの主要T細胞リンパ球およびT細胞株の単離および培養 抹消血の単核細胞(PBMNC)を健康なドナーからヘパリン処理したチュー
ブ中に得た。低密度MNC(<1.007g/mL)を遠心分離(1500g、
30分、20℃)によりリンフォプレップ(Lymphoprep)(Nyco
med,Oslo,Norway)上に単離した。熱で不活性化した10%FC
S、5μM β−メルカプトエタノール、25μM Hepes(両者ともSi
gma(St Louis,MO)より入手)、グルタミン、100μg/mL
ストレプトマイシン、100U/mlペニシリンおよび100U/mL組換えヒ
トインターロイキン2(rhIL−2)(Research&Developm
ent System Europe Ltd.(Abingdon,UK)お
よびPrepotech EC Ltd.(London,UK)(T−RF1
0)から入手)を含むRPMl(GibcoBRL;Life Technol
ogies,Scotland)からなるT−RF10培地上で、2×106
胞/mLの濃度でPBMNCを培養した。CEMおよびJurkat、2種のヒ
トT細胞株を、熱で不活性化した10%FCS、20mMのグルタミン、100
μg/mLのストレプトマイシンおよび100U/mlのペニシリンを添加した
RPMI中で培養した。
【0121】 主要Tリンパ球およびヒトのT細胞株の形質導 PBMNCを、1μg/mL PHAおよび100U/mL rhIL−2で
48時間刺激した。非接着細胞を遠心分離によって回収し、2×106細胞/m
LでT−RF10中に再懸濁した。CEMおよびJurkat細胞に、RF10
を感染前に24時間与えた。SFCMM3生産細胞から得た、4μg/mL ポ
リブレン(Sigma;St Louis,MO,USA)を含む細胞を含まな
いウイルス上清を細胞培養物に加え、CO2インキュベーター中37℃で16時
間インキュベートした。感染は2日連続で繰り返された。最後の感染の後24時
間、細胞を新鮮な培地で洗浄した。形質導入された細胞をさらに2〜3日間培養
してからFACS分析によって遺伝子転送効率を決定した。
【0122】 ΔLNGFR発現量測定のためのFACS分析 形質導入した細胞を、非結合性ネズミ抗ヒトΔLNGFR単クローン抗体(H
B8737、クローン20.4、ATCC)とともに室温で40分間インキュベ
ートした。細胞は、1%のBSA−PBSで2回洗い、4℃で20分、ヤギ抗I
gG1マウスFITC結合抗体(Becton−Dickinson,Moun
tain view,CA)で染色した。2重色分析のために、細胞を4℃で2
0分間、PE結合抗CD3単クローン抗体(MoAb)(Becton−Dic
kinson,Mountain view,CA)で染色し、1%BSA−P
BSで2回洗った。最後にパラホルムアルデヒド−PBS緩衝液を用いて細胞を
固定した。FACS分析は、フロー・サイトメーター(cytometer)(
FACS Scan;Becton−Dickinson)で行なった。ΔLN
GFR発現量はCellQuest(登録商標)ソフトウェア(Becton−
Dickinson)を使用して、CD3ポジティブな集団で測定した。読みご
とに少なくとも20,000イベントをカウントした。
【0123】 磁気ソートによる形質導入された細胞の選択 形質導入した細胞を、メーカーの指示によってMiniMACSシステムを使
用して、細胞表面上のΔLNGFRの発現に基づいて選択した。免疫的選択(i
mmunoselection)のために、細胞を室温で、40分間、ネズミ抗
ヒトΔLNGFR MoAbとともにインキュベートした。細胞をMACSバッ
ファ(0.5%BSAおよび2mM EDTAを添加したPBS)で洗い、ヤギ
抗マウスIgG マイクロビーズ(MACS,Miltenyi Biotec
,Germany)とともに4℃で15分間インキュベートした。細胞を洗った
後に、ΔLNGFRを発現する細胞をMiniMACS MS+分離カラム(M
ACS,Miltenyi Biotec,Germany)で選択した。
【0124】 形質導入したT細胞株のクローニング 形質導入され選択されたヒトT細胞株のサブクローニングを35mmペトリ皿
中、メチルセルロース(MethoCult H4330;Stem Cell
Technologies,Vancouver,Canada)1mL当た
り400個の細胞に植菌することにより行なった。半固体の培養物をCO2イン
キュベーター中37℃で12日間インキュベートした。13日目に、コロニーを
採取し、96ウェル・プレートにおいて100μLのRF10中に接種した。ク
ローンの成長は顕微鏡でモニターした。上清が黄色になった時点でクローンに新
鮮な培地を加えることによって拡張し、体積の大きな容器にクローンを移して行
くことにより、1X106細胞/mLの細胞密度を維持した。
【0125】 ガンシクロビル細胞毒素の分析 全量2x104細胞/ウェルを96ウェル・プレートの100μL培地中に接
種した。細胞は、GCV(Cymevene(登録商標)、Hoffinan−
La Roche AG,Germany)の濃度を増加させて(0.05〜1
2.5μg/mL)で4日間行なった。しかる後、1μCi/ウェルの3重水素
化チミジン(メチル3H−チミジン、TRA.120、1.0MBq/mL、A
mersharn International,England)を、細胞収
穫器(Wallac、Gaitherburg、MD)によって細胞DNAを収
穫する18時間前に加えた。DNA中への3H−チミジンの取込量をβシンチレ
ーション計数器(Wallac 1410、Gaitherburg、MD)で
測定した。すべてのGCV濃度は3回試験した。結果は、GCVがない状態で得
られた取込量に対する各GCV濃度での3H−チミジン取込量をパーセンテージ
で表わす。
【0126】 サザン・ブロット分析 ゲノムDNAはメーカーによる推薦に従いQIAamp血液キット(Qiag
en Ltd.Germany)を用いて抽出した。制限酵素SacIおよびE
coRI(New England Biolabs Ltd.;UK)を用い
てゲノムDNA 10μgを一夜消化した後、試料を0.8%のアガロース・ゲ
ルの電気泳動によりサイズ分離した。DNAはサプライヤーの指示に従って、H
ybond Nナイロン・フィルター(Amersham des Ullis
,France)上に移した。ブロットは、HSV−TK遺伝子配列については
、α−32P−dCTPランダム・プライム標識がされた1.1kbのMlu I
−XhoI断片と、LNGFR遺伝子については0.9kbのRsrII断片と
ハイブリダイズした。最後に、ブロットを−80℃で少なくとも16時間、X線
写真フィルム(Biomax,Kodak,USA)に露出させた。
【0127】 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および配列決定分析 形質導入された細胞から抽出されたゲノムDNAにおいてSFCMM3プロウ
イルス配列の有無を調べた。プロウイルスの異なる4つの領域を特定のペアのプ
ライマー(図1)を使用して、PCRによって増幅した: 断片1: LTR1+(5’GGTCTCCTCTGAGTGATTGACTA3’)およ
び HTK5- (AACGAATTCCGGCGCCTAGAGAA); 断片2: HTK4+(TTCTCTAGGCGCCGGAATTCGTT)および HTK2- (ATCCAGGATAAAGACGTGCATGG) 断片3: HTK1+ (CCATGCACGTCTTTATCCTGGAT)および NGF2- (TTGCAGCACTCACCGCTGTGTGT)および 断片4: GF2+ (ACACACAGCGGTGAGTGCTGCAA)および NGF3- (ATAGAAGGCGATGCGCTGCGAAT)。 PCRはゲノムDNAを50ng、ならびに15mM MgCl2(Boeh
ringer Mannhein Ltd.,Lewes,UK)、dATP、
dCTP、dGTP、dTTP各250μM、センス・プライマーおよびアンチ
センス・プライマー各0.25μM、および0.025U/μLのTaqポリメ
ラーゼ(Boehringer Mannhein Ltd.)を含む1×Ta
qポリメラーゼ・バッファを含む20μL反応混合物で行なった。断片1および
2を増幅するための熱サイクル条件は、96℃、30秒間の変性、60℃、30
秒間のアニーリング、および72℃、1分間の伸張を35サイクル、最後に72
℃、10分間の伸張とした。断片3および4を増幅するために使用した熱サイク
ル条件は、96℃、30秒間の変性、64℃、50秒間のアニーリング、および
72℃、1分間の伸張を31サイクル、最後に72℃、10分間の伸張とした。
PCR産物(10μL)は、エチジウム・ブロマイドを含む1%アガロース・ゲ
ル上で電気泳動にかけた。
【0128】 増幅可能なゲノムDNAの存在を確認するため、別に記載されるようにして(
Melo et al (1994) Leukemia 8, 208−21
1)、ネガティブ・クローン上でヒトABL遺伝子の880bpゲノム断片のP
CR増幅を行なった。
【0129】 PCR産物のクローニングは、Invitrogen(Groningen,
The Netherlands)から得たpCR2.1 TAクローニング・
ベクターを使用して実現された。クローニングは独立したPCR反応から得たコ
ピーについて行なった。M13プライマーを使用する自動蛍光性のDNA配列分
析は、Advanced Biotechnology Centre(Lon
don,UK)によって行なわれた。
【0130】 結果 ヒトT細胞株の形質導入および選択 CEMおよびJurkat細胞は、ポリブレン存在下で細胞を含まないウイル
ス上清感染プロトコルに従って形質導入した。遺伝子トランスファー実験の効率
は、細胞表面でのLNGFR発現に基づくFACS分析によって測定した。得ら
れた形質導入効率は、両方の細胞株で類似していた:CEM細胞について20±
5(n=3)、Jurkat細胞について17±6(n=3)(図2Aおよび2
C)。形質導入した細胞の選択はイムノマグネティック(immunomagn
etic)な操作手順(MACS System)を用いて行なった。選択後で
は、CEMの細胞85%、Jurkat細胞の83%がLNGFRを発現してい
た(図2BおよびD)。第2ラウンドの選択を実行することにより、LNGFR
を発現する細胞の豊富化は、さらに95〜98%まで改善し得る。
【0131】 TK−CEMおよびTK−Jurkatクローン中のLNGFR発現 形質導入し、選択したCEMおよびJurkat細胞は、半固体培地中、細胞
を平板培養することによりクローンを作成した。10日目に、コロニーを採取し
、96−ウェル・プレートに移して液体培養でサブクローンをさらに拡張した。
6週間後に、十分な細胞が得られた時点で、LNGFR遺伝子の発現をFACS
によって測定した。図3は、各サブクローンについて得られたヒストグラムを示
す。形質導入されたCEM細胞に由来する大多数のクローン(15のうち12)
は、ΔLNGFRについて陽性であった。TK−CEMクローン#5および#7
は、同位体のコントロール(図3A)に関してオーバーラップするプロフィール
によって示されているようにΔLNGFRについては発現を示していない。TK
−Jurkat由来のクローンについて行なったFACS分析では、分析した1
5のサブクローンのうちの7つが陽性で、8つが陰性である(図3B)ことが明
らかになった。TK−Jurkatクローン12は、その異なる2つのサブクロ
ーンがこの細胞株に加わっていることを示す2重肩部分を示している。
【0132】 ΔLNGFRの異なる発現レベルが、ΔLNGFRリポーター遺伝子を発現す
るクローンにおいて観察された。TK−Jurkat#3および#11の中のΔ
LNGFRの発現は、TK−Jurkat#4および#6よりも2桁高かった。
TK−CEMのクローンでは、ΔLNGFR発現は、1桁の範囲内に収まってい
た(図3A)。全体として、TK−Jurkatクローンは、形質導入されたC
EMの細胞に由来するサブクローンよりΔLNGFRの発現についてより広い範
囲を示した。
【0133】 TK−CEMの中のHSV−TK遺伝子発現 TK−CEMサブクローン中のHSV−TK遺伝子の発現は、細胞をGCV濃
度を増加させつつ培養した際に起こる細胞増殖阻害によって決定された。図4は
、TK−CEMのクローン中で、GCVにより引き起こされた細胞毒素の分析に
おいて得られた結果を示す。3H−チミジンの取込みによって評価された細胞増
殖中のIC50阻害は、クローン#3、#8、#9、#11、#12、#13およ
び#15について0.1μg/mL GCV濃度に達した。一方、クローン#1
、#2、#4、#5、#7および#14中での細胞増殖は、形質導入されていな
い細胞(ネガティブ・コントロール)中で得られた値とパラレルであった。TK
−CEMクローン#6および#10は、50%の細胞増殖阻害を達成するために
はGCV(0.25μg/mL)よりも高い濃度を必要とした。これらの2つの
例では、GCVの濃度を12.5μg/mLまで増加させた時でも、細胞増殖の
完全な阻害は完全には達成されなかった。
【0134】 挿入したSFCMM3プロウイルスの統合 CEMとJurkatのクローンから抽出したゲノムDNAについて、挿入さ
れたSFCMM3プロウイルスが統合されているかをサザン・ブロット分析によ
って調べた。SacIで消化したゲノムDNAをゲル電気泳動し、次に膜上に移
した。ブロットは、HSV−TKおよびLNGFR遺伝子(図1)のための特異
的プローブで順次ハイブリダイズした。SacI制限酵素は、5’LTRおよび
3’LTRでのみ切断する。サザン・ブロット分析は2つのプローブのいずれか
を使用して、4.1kbのサイズの単一のバンドとなるはずである。図5Aは、
15個のTK−CEM由来クローンのうち13個で、ブロットがTKプローブと
ハイブリダイズされた時、統合されたプロウイルスを有することを示す。しかし
、6つのケース(クローン#3、#6、#9、#13、#14および#15)で
は、バンドのサイズは生産細胞と同じである。ほぼ200−bpのより小さなバ
ンドがTK−CEMクローン#1、#2、#4、#8、#10、#11および#
12で観察された。クローン化されていないバルクのTK−CEM細胞では、4
.1kbの位置でしみが得られた。ΔLNGFR特異的プローブを使用した場合
(図5B)、形質導入されていない腸管外CEM細胞を含むすべての例で内因性
(endogeneous)なNGFR遺伝子に対応する配列が現われており、
ゲノムDNAがすべて適切に消化されゲルに沿って均一に分配されたことを示す
。TKプローブの使用時に観察されるのと同じサイズの追加的バンドが、プロウ
イルスを運ぶクローン中で観察された。SFCMM3ベクター配列の不存在が、
TK−CEMクローン#5および#7でTKとΔLNGFRのプローブのいずれ
かを使用して確認された。TK−CEMクローン#3、#6、#9、#13、#
14および#15中の追加バンドのサイズは、生産細胞の中で得られたそれに似
ている。
【0135】 TK−Jurkatクローンから抽出されたゲノムDNA上で行なったサザン
・ブロット分析結果を図5Cに示す。TK−Jurkatクローン#1、#11
および#12は、TKプローブにより予想されるサイズのバンドを有している。
TK−Jurkatクローン#6は、予想されるサイズの1本のバンドおよびT
K−Jurkatクローン#3中で観察されたものに似ているより大きなバンド
を15kbに有している。TK−Jurkat#15は、さらに18kbのサイ
ズの1本の一バンドを示した。これらの観察結果はLNGFRプローブ(図5D
)を使用して確認された。TK−CEMクローンの場合と同様に、内部(end
ogeneous)NGFRに対応するバンドも現われた。プロウイルスに対応
する追加的バンドが、TKプローブを使用して見出されたのと同じ位置で観察さ
れた。TK−Jurkatクローン#2、#7、#8、#10、#13および#
18は、プロウイルス配列については陰性であった。
【0136】 SFCMM3プロウイルス配列の挿入および統合サイトの数 各クローン中でのベクターの挿入および統合サイトの数を決定するため、TK
−CEMおよびTK−Jurkatクローンから抽出したゲノムDNAを、制限
酵素EcoRIで消化した。これはプロウイルス配列内にただ1つの制限部位を
有している(図1)。TKプローブを使用したサザン・ブロット分析は、形質導
入されたCEMの細胞に由来するクローン中で、TKを含む断片の異なる位置が
観察された。これは、細胞ゲノム内のランダムなサイトに単一かつ独立した統合
が起こっていることを示唆する(図6AおよびB)。TK−Jurkatクロー
ンに由来するゲノムDNAをEcoRI消化した場合も同様の結果が観察されて
いる(図6CおよびD)。TK−Jurkat#6は、異なる位置で2本のバン
ドを有しており、細胞ゲノムへのプロウイルスの多数の統合サイトを示している
【0137】 PCRによるプロウイルス配列の増幅 PCRによってプロウイルスの全配列(図1)を増幅するために、SFCMM
3ベクターに沿ってプライマーを設計した。特定のプライマーを用いて断片1(
LTR1+/HTK5- 0.93kb)、断片3(HTK1+/HTK2- 0.
77kb)および断片4(HTK1+/NGF2- 0.87kb)を増幅した時
、TK−CEMおよびTK−Jurkatクローンから抽出されたゲノムDNA
のPCR分析結果は、予想されたサイズのバンドを増幅した。断片3については
、生産細胞(ポジティブ・コントロール)中で増幅されたものより小さなバンド
が、1つのケース(TK−CEM#4)でのみ得られた。HSV−TK遺伝子配
列に対応するバンド(断片2)はTK−CEMクローン(#3、#6、#8、#
9、#10、#11、#13、#14および#15)およびTK−Jurkat
クローン(#1、#6、#11および#12)については予想されたものであっ
た。より小さな同じ大きさのバンドが、TK−CEMクローン(#1、#2、#
4および#12)およびTK−Jurkatクローン(#5、#9および#16
)について増幅された。クローン化されていない形質導入されたCEMおよびJ
urkat細胞(バルク集団)では、2本のバンドが、個々の単一のクローン中
で増幅したのと同じサイズに増幅された。15個のTK−CEMクローンのうち
の2つ(#5と#7)、および15個のTK−Jurkatクローンのうちの9
つのクローン(#2、#4、#5、#7、#8、#10、#13、#14および
#18)が、PCR(結果は図示していない)によってプロウイルスの配列を増
幅しなかった。これらの結果は、HSVTKとLNGFRの遺伝子のサザン・ブ
ロット分析および発現分析によって前に観察されたものに一致する。
【0138】 統合されたプロウイルスのDNA配列分析 プロウイルス配列をさらに分析するため、HSV−TK遺伝子(断片2)を含
むDNA断片をゲノムDNAから増幅した。生じた断片は、TOPO−Aベクタ
ー中にクローン化し配列決定した。クローンのうちのいくつかについて行なった
配列分析の結果は、PCR(図7)によって増幅された小さなバンドが、HSV
−tk遺伝子配列内の228bpの削除に起因することを示した。分析したケー
スでは、結合領域が、隠れたドナー・サイトおよび隠れたスプライス・ドナー・
サイト(レトロウイルス・ベクターの位置1994でのCAGG/GTGA)、
および隠れたスプライス・アクセプター・サイト(CCAG/GCCG(SFC
MM3ベクターの位置2221))の接合によって発生した。この観察結果は両
者が形質導入されたT細胞株で確認された。
【0139】 形質導入された主要Tリンパ球の上のPCR 使用したレトロウイルス・ベクターは、当初は、主要Tリンパ球の形質導入を
含む多数センター臨床試験のために開発されていた。臨床使用のためのレトロウ
イルス・ベクターの効果に関して、我々は、形質導入され選択されたヒト主要T
リンパ球から抽出したゲノムDNAから、PCRによってプロウイルスのHSV
−TK遺伝子領域を分析した。図8は6つの異なる実験においてセット・アップ
されたPCRの結果を示している。TK−CEMおよびTK−Jurkatクロ
ーンのうちのいくつかを使用して、ポジティブ・コントロールとネガティブ・コ
ントロールも平行して確立した。形質導入された主要T細胞中のPCRによって
、完全長HSV−TK遺伝子に対応する1本の単一バンドが増幅された。TK−
CEMおよびTKJurkatのバルク集団は、トランケートされたHSV−T
K遺伝子の形に対応する予想されたサイズのより小さなバンドを示した。これら
の結果は、いくつかのクローン中で観察されたHSV−TK遺伝子内での削除は
、クローンが形質導入された細胞においてのみ生じるということを示しているか
もしれない。もっとも、この観察結果については、形質導入された主要細胞中で
のHSV−tk遺伝子の削除の頻度はPCRの検知レベル未満であるという別の
説明も可能であろう。
【0140】 TK−CEMおよびTK−Jurkatクローン中でのトランケートされたH
SV−TK遺伝子の特異的増幅 TK−CEMおよびTK−Jurkatサブクローンのうちのいくらかで見出
されたトランケートされたHSV−TK遺伝子を特異的に増幅するため、HSV
−TK遺伝子の削除交点(deletion junction)においてプラ
イマーが設計された。増幅されたバンドのサイズは640 bpのはずである。
図9は、サブクローンから抽出されたゲノムDNAを使用してセット・アップさ
れたPCRで得られた結果を示す。TK−CEMクローン#1、#2、#4およ
び#12ならびにTK−Jurkatクローン#5、#9および#16が予想さ
れたサイズ(640 bp)のバンドを増幅した。これらは、完全長HSV−T
K遺伝子(図7)を増幅するためにプライマーを使用して、HSV−TK遺伝子
について短いバンドを増幅したのと同じクローンである。形質導入されていない
腸管外のCEMおよびJurkat細胞を含むすべてのケースで、900 bp
のより弱いバンドも増幅された。アニーリング温度を高くするなどのPCR条件
の修正を行なっても、PCRの特異性は改善されなかった。その後、我々は、P
CRの結果に影響し得る何らかの汚染が含まれている可能性を排除するために干
渉バンドの配列決定を行なった。分析の結果、この干渉バンドの配列は、SFC
MM3レトロウイルス・ベクターの任意の配列とも、または、GenBankま
たはEMBLデータ・ベース(1999年1月時点)中に表わされた他のいずれ
の配列とも対応しないことが明らかになった。これは、おそらくは、何らかの細
胞の配列がまだ同定されていないことを示すものである。
【0141】 形質導入された主要Tリンパ球におけるトランケートされたHSV−TK遺伝
子の増幅 耐GCV性のクローン中でトランケートされたHSV−TK遺伝子を特異的に
増幅したプライマーを使用するPCRを、形質導入され選択された主要Tリンパ
球から抽出されたゲノムDNAを用いてセット・アップした。ポジティブ・コン
トロールとネガティブ・コントロールも平行してセット・アップした。6つの異
なる実験でトランケートされたHSV−tk遺伝子について予想されたサイズの
バンドを評価し、増幅した(図10)。これらの結果は、HSV−TK遺伝子が
、トランケートされた形質導入された主要Tリンパ球集団の中にも存在すること
を示す。主要細胞中のこのイベントは、トランケートされたHSV−TK遺伝子
の削除結合を増幅する特定のプライマーが使用される場合に限って観察されるた
め、その頻度はヒトT細胞株よりも頻度は低い。
【0142】 考察 単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ・タイプ1(HSV−tk)は、GCV
やアシクロビルなどの無毒なプロドラッグを細胞毒性代謝物質に変換できる酵素
をコードする。これおよび他の自殺遺伝子/プロドラッグを使用する遺伝子トラ
ンスファー戦略は、癌治療のための新規な治療法として提案された1;3;11。最近
になって、自殺遺伝子治療の使用が同種(allogeneic)骨髄移植(a
llo−BMT)にも拡げられた。GCVの制御により、HSV−tk遺伝子で
形質導入されたドナーTリンパ球を循環(血中)から選択的に取り除くことがで
きる。これにより、相当なGvLおよび免疫再構成を保ちつつGvHDの治療が
可能になるであろう8;9
【0143】 我々の研究で使用したレトロウイルス・ベクターは、プロウイルスを発現する
細胞についての選択可能なマーカーとして働くΔLNGFR遺伝子を含む。ΔL
NGFRcDNAは、神経成長因子に生物学上結合することができず、細胞質領
域を通って何らかの形質導入信号を引き起こすことがないように修正された12
リポーター遺伝子としてのΔLNGFRの使用は、形質導入効率をモニターし、
かつ、耐ネオマイシン性遺伝子などの他の遺伝子の発現に基づく一般に使用され
ているシステムより短い時間枠中で形質導入されたTリンパ球の選択を促進する
ために提案された13、14。さらに、遺伝子組換え細胞は容易に追跡でき、患者へ
の注入後に多分再選択できる。
【0144】 HSV−tk/GCVシステムの効能は、多くのin vitroとin v
ivoのモデルにおいて実証された。癌治療のためのこのシステムの使用にはい
わゆる傍観者効果に由来する追加的長所があることがさらに示された。この状況
において、HSV−tk形質導入された細胞は、形質導入されていない近隣の細
胞とともにGCVの投与後に死ぬ。このイベントの基礎となるメカニズムは、形
質導入された腫瘍細胞と形質導入されていない細胞までの間のギャップ結合を通
してリン酸化GCVが転送されることによって仲介されるものと思われる15。腫
瘍塊中の細胞のいずれかの小片だけが形質導入される場合に腫瘍の完全な退縮に
は傍観者効果は、不可欠なことが示されている16。Tiberghien et
al(1994)17は形質導入された主要T細胞では、GCVによって引き起
こされた成長阻害が傍観者効果によって仲介しないことを実証した。彼らは、形
質導入されたT細胞と形質導入されなかったT細胞(50:50)およびHUT
−78細胞(CD4+成熟T細胞リンパ腫細胞株)の混合物でGCVの影響を検
討した。両方の例では、彼らは、傍観者効果により仲介される殺害を立証すべき
証拠を見出さなかった。HSV−tk Tリンパ球での傍観者効果の欠如はal
lo−BMTにおいて、自殺遺伝子戦略の成功した適用にとって重要な意味合い
を有する。なぜならば、特にGvHDの原因であるこれらの細胞の循環(血中)
からの消耗除去が可能になるからである。
【0145】 HSV−tk遺伝子/GCVシステムの使用は、MooltenおよびWel
ls(1986)によって最初に提案された4。後になって、彼らは、さらに、
in vivoでの研究においてGCV治療に対し、HSV−tk形質導入され
た肉腫とリンパ腫の腫瘍細胞の再発を観察した2;18。同様の観察は、異なる組織
および動物モデルに由来する腫瘍細胞でも確認された。Barba et al
(1993)19は、HSV−tk遺伝子を発現する遺伝子組換えラット神経膠腫
細胞が14日間のGCV治療に続く培養中に死んだと記載している。結局、いく
つかの修正済の腫瘍細胞はGCVに対して耐性を有するようになった。しかし、
傍観者効果のため、HSV−tk遺伝子の不活性化は、in vivoでの分析
結果では干渉せず、GCV治療は、脳内の形質導入されていない腫瘍細胞をさら
に殺す結果をもたらした。同様の観察はヒトの腺癌細胞株において記載されてい
る。in vitroでの研究は、上皮組織に由来した細胞がHSV−tk導入
遺伝子の適当な発現を示すことを明らかにした。一方、GCV治療後の腫瘍退縮
は、HSV−tkが形質導入された腺癌細胞を含むヌード・マウスでは観察され
なかった。このin vivoモデルでは、傍観者効果の欠如は、形質導入され
た腫瘍細胞の小さな部分集合中のHSV−tk遺伝子の不完全な発現を排除する
ためには寄与していなかった。
【0146】 形質導入された腫瘍細胞のHSV−tk遺伝子の発現欠如の基礎となるメカニ
ズムは、あまり理解されていない。GCVへの細胞感受性の変化、細胞周期から
の腫瘍の一時的な脱出、HSV−tk遺伝子の不活性化または欠損、HSV−t
k mRNA中の構造変化、および一時的なメチル化が起こっているなど、種々
の説明が、文献において提案されている。Di Ianni et al(19
97)20は、両シストロンのベクター中でHSV−tk遺伝子およびバクテリア
のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ遺伝子)を発現するように遺伝子的に
操作されたU937細胞(ヒト造血組織悪性腫瘍細胞株)に由来するクローン中
ではHSV−tk導入遺伝子の発現が欠如することを報告している。さらに、G
CVについて耐性を示すサブクローンでは、5−ブロモ−4−クロロ−3−イン
ドリル−β−ガラクトピラノサイト(X−Gal)による組織化学的染色が起こ
らない。彼らはまた、5−アザシチジン(ジメチル化剤)を有する耐性クローン
を培養した。この処理は、2つの導入遺伝子のずれの発現も回復することができ
なかった。著者は、さらに、両シストロンのベクターのLTRで再配置または変
異の可能性を開いた。
【0147】 HSV−tk遺伝子を運ぶレトロウイルス・ベクターで形質導入されたヒト主
要Tリンパ球中のGCV耐性は、異なるグループによって確証されている。Ti
berghien et al(1994,1997)9;17はIL−2応答性で
ある形質導入されたネオマイシン選択性T細胞のGCV治療後の成長阻害が80
%〜90%の間であると記載している。これらの結果は、形質導入された集団の
少なくとも10%がGCVによる殺害に抵抗することを示唆しているとも言える
。形質導入されたドナーT細胞を使用する最初の臨床試験で、Bonini e
t al.(1996)10は、一人の患者が慢性GvHDを発症するのを観察し
た。GCV投与後、形質導入されたドナー細胞の割合は11.9%から2.8%
まで低減した。GCVによる集中的な治療後、循環(血中)からの形質導入され
たドナー由来T細胞の完全な消耗除去は実現し得ないものであった。これは、ド
ナーTリンパ球の約23%がHSV−tk遺伝子の適切な発現を欠いていること
を意味するであろう。Verzeletti et al(1998)は、慢性
GvHDを発症している患者中で観察されたGCV耐性をさらに特徴づけた。著
者は、HSV−tk遺伝子配列に生じる分子イベントではなくHSV−tk/G
CVシステムの細胞周期依存を主張した。
【0148】 レトロウイルス・ベクターを使用することで、我々は、形質導入され選択され
たTK−CEMおよびTK−Jurkat集団に由来するサブクローンのうちの
いくつかが、HSV−tk遺伝子の適切な発現を示していないことを見出した。
サザン・ブロットは、細胞ゲノム中に統合されたプロウイルスが短縮されている
ことを明らかにした(図5)。クローン中で行なったPCR分析は、GCV耐性
に関わる分子的イベントがプロウイルス(断片2(図7))のHSV−tk遺伝
子配列で起こることを明らかにした。配列決定分析は、HSV−tk遺伝子の短
縮型は、HSV−tk遺伝子のDNA配列における228bpの削除によるもの
であることを示した。結合領域のマッピングは、それぞれベクターの位置199
3および221の隠れたスプライス・ドナー・サイトおよび隠れたスプライス・
アクセプター・サイトの接続に相当する。これらの知見は、生産細胞では、プロ
ウイルスからのmRNAの一部が、Am12細胞のスプライス装置類によって認
識され、スプライスされたベクター由来RNAをもたらすことを示唆しているか
もしれない。また、これは、異常なHSV−tk遺伝子を担う小部分とともに完
全長HSV−tk遺伝子を含むウイルス粒子の生産を引き起こすかもしれない。
このメカニズムは、トランケートされたプロウイルスHSV−tk遺伝子が標的
細胞に入り込む道を説明する。TK−CEMクローン上で行なったノーザン・ブ
ロット分析は、トランケートされた遺伝子を有するクローン中では異常なHSV
−tk転写物が形成されることを明らかにしている(結果は示していない)。非
機能的なタンパク質は異常なHSV−tk遺伝子配列によってコードされうる。
【0149】 削除されたHSV−tk遺伝子を含む形質導入された細胞の頻度は、形質導入
されたT細胞株より形質導入された主要T−リンパ細胞の方が低いように見える
。形質導入された主要Tリンパ球中でトランケートされたHSV−tk遺伝子を
検出するために、HSV−tk遺伝子の削除結合がPCRによって特異的に増幅
されることを可能にするプライマーが考案された。この観察結果は、削除された
HSV−tk遺伝子に由来するウイルス粒子が、形質導入されたT細胞より主要
Tリンパ球に対しては感染能力が低いということを示しているのかもしれない。
もっとも、形質導入されたT細胞株では、機能的なHSV−tk酵素が細胞代謝
のどの経路にも干渉しないので、完全長HSV−tk遺伝子を有するものに関し
てin vitroでの増殖では異常形HSV−tk遺伝子を含むクローンが有
利であるという可能性もある。
【0150】 Yangと同僚(1998)21は、HSV−tk形質導入された胃腸腫瘍細胞
において耐性コロニーを見出した。耐性コロニーの同定は、HSV−tk遺伝子
が、HSV−tk形質導入細胞から部分的(220bp削除)または完全に削除
されているかいずれかであることを実証した。興味深いことに、GCV耐性に関
与する未知の細胞メカニズムの可能性を排除するために、彼らは、HSV−tk
遺伝子を含むアデノウイルスのベクターでレトロウイルス的に形質導入したGC
V耐性クローンを感染させた。GCV感度は回復し、機能的なHSV−tk蛋白
質を発現するこれらの細胞の能力を示唆した。我々の知見とは対照的に、彼らの
結果は、試験した異なる胃腸の腫瘍細胞株中でGCVの細胞毒素の効力が変化す
ることを示している。前に論じたように、GCV耐性が形質導入された細胞は、
良好な傍観者効果がある細胞株では識別されなかった。
【0151】 利用可能な臨床のデータと同様にin vitroおよびin vivoのデ
ータの検討でも、癌遺伝子治療およびallo−BMTのためのHSV−tk遺
伝子/GCVシステムの使用が臨床において現実的な改善案となることを示唆す
る。しかし、近い将来に解決される必要のある重要な制限がある。これらの結果
は、遺伝子操作された細胞の最適の殺す効率(100%)を達成するために、新
しい自殺遺伝子またはHSV−tk遺伝子などのような現在使用中のものの最適
化されたバージョンが開発されるべきであるという考えを強く支持する。実施例
2において示すように、我々はHSV−tk DNA配列を修正し、それが宿主
細胞のスプライシング装置類によって無視されるようにした。この戦略は、臨床
使用のための改善されたHSV−tk遺伝子を含むベクターの開発を可能にする
【0152】 実施例2:自殺遺伝子治療用のHSV−tk/GCVシステムの効果を改善す
る野生型HSV−tk遺伝子配列の修正 自殺遺伝子は、その作用がなければ無毒である化合物に対し、細胞を感受性に
する酵素をコードする。単純疱疹ウイルス・タイプ1(HSV−tk)によって
コードされたチミジンキナーゼは、ガンシクロビル(GCV)を、DNAの伸張
を阻害する代謝物質に変換する。このイベントは正常な細胞には生ぜず、細胞に
死をもたらす。したがって、HSV −tk遺伝子を人工的にTリンパ球の中に
送り込むことにより、分裂するT細胞を必要な時に殺すシステムを提供すること
ができる。このアプローチは、癌の治療およびDLIによって引き起こされるG
VHDの抑制のために開発され、有効であると分かった。
【0153】 HSV−tk/GCVシステムの効果は、多くのin vitroおよびin
vivoモデルで実証された。しかし、我々は、形質導入された集団内に、G
CVによる殺害に対して耐性を有する遺伝子操作された細胞の部分集合が存在す
ることを見出した。形質導入された細胞においてHSV−tk遺伝子の発現が欠
如する基礎にあるメカニズムは、よく理解されていない。我々は、形質導入され
選択された細胞に由来する耐GCV性のサブクローンを単離した。分析を行なっ
た結果、導入遺伝子の不適切な発現に関与する分子的メカニズムは、少なくとも
ある状況では、HSV−tk遺伝子配列において227bpの削除部分があるこ
とを含んでいる、ということが明らかになった。トランケートされたHSV−t
k遺伝子のマッピングは、結合領域が、それぞれ5’端および3’端の位置84
4および1071にある隠れたスプライス・ドナー・サイトおよび隠れたスプラ
イス・アクセプター・サイトの接着点に相当することを示した(図11)。
【0154】 我々の知見は、レトロウイルス生産細胞では、プロウイルスに由来するmRN
Aの一部がベクターに由来するmRNA中にスプライスされていることを示す。
これは、HSV−tk遺伝子の異常な形式を運ぶ小部分とともに完全長HSV−
tk遺伝子を含むウイルス粒子の生産を引き起こすと考えられる。このメカニズ
ムは、トランケートされたプロウイルスHSV−tk遺伝子が標的細胞に入り得
ることを説明する。
【0155】 我々の結果は、野生型HSV−tk遺伝子配列の隠れたスプライス・ドナーお
よび受容体サイトでの修正によって、最適化された自殺遺伝子がもたらされると
いう考えを強く支持する。この場合、宿主細胞のスプライシング装置類は遺伝子
操作されたmRNA転写物を無視するはずである。修正されたHSV−tk D
NA配列は、遺伝子の野生型の配列に由来するものでありサイトを結合する隠れ
たmRNAのアブレーションによる。位置842(GAC CA GGTから
GAC CA GGT)および1070(CCC CA GCCからCCC CA GCC)の2箇所の変異を、突然変異を起こし得るオリゴヌクレオチ
ドの酵素による拡張によって同時に導入した。いずれの例でも、HSV−tk酵
素の野生型アミノ酸配列が保存されている。
【0156】 部位特異的突然変異生成によって修正されたHSV−tk遺伝子は、所望の位
置の隠れたスプライシング・サイトのアブレーションを確認するために配列決定
された。形質導入された細胞の遺伝子操作された蛋白質の発現は、野生型HSV
tk遺伝子が形質導入された細胞の中で得られたそれに似ていることが、細胞増
殖分析における阻害結果によって示されている。形質導入された細胞においてト
ランケートされたHSV−tk遺伝子を特異的に増幅するために開発されたPC
Rは、修正されたHSV−tk遺伝子で形質導入された細胞では、削除されたH
SV−tk遺伝子が識別されなかったことを示した。我々は、修正された遺伝子
を使用して形質導入された細胞に由来するサブクローンをスクリーニングした。
ベクターのHSV−tk遺伝子配列の227−bp削除は、試験されたクローン
のうちのいずれにおいても識別されていない。
【0157】 上述の位置842および1070での変異は、DengおよびNickolo
ff (1992;Anal.Biochem.200:81)の方法で導され
た。商用キット(Transformer(商標)Site−Directed
Mutagenesis Kit;Clontech,Palo Alto,
CA,USA)は、レトロウイルス・ベクターの中でHSV−tk遺伝子の修正
のために使用された。いずれの例でも、HSV−tk酵素の野生型のアミノ酸配
列が保存されている。この方法は、変性された二本鎖プラスミドDNAの一方の
ストランドに2以上のオリゴヌクレオチドプライマーを同時にアニールすること
によって、任意の二本鎖プラスミドに特異的塩基の変化を導入することを可能に
するものである。我々のケースでは、2つの異なるプライマー(MUT1+:C
CGCCTCGACCAAGGTGAGATATCおよびMUT2+:CAGC
ATGACCCCCCAAGCCGTGCTGGCGTTC)が所望の変化を導
入するために使用された(変異源的プライマーと呼ばれる。)。3番めのプライ
マー(選択プライマー;MUT3+:AGTGCACCATGGGCGGTGT
GAAATは選択酵素消化の目的でプラスミド中のユニークな制限酵素サイト(
NdeI)を変化させる。標準的なDNAの伸張およびライゲーションの後に、
変異DNAストランドを部分的に豊富化するために1次選択をNde I消化に
よって行なった。MutS大腸菌細胞(ミスマッチ修復欠損株)は消化された混
合物を使用して形質転換された。プラスミドDNAは混合バクテリアの集団から
抽出され、第2の選択的なNde I消化が行なわれた。この戦略によって、親
の(非変異)DNAは線形化され、バクテリア細胞の形質転換を遥かにしにくい
ものにした。徹底消化されたDNAのDH5αバクテリアの細胞への最終的な形
質転換が行なわれた。DNAは個々の形質転換体から分離された。所望の変異の
存在は、第一に、コロニーから抽出されたプラスミドDNAを制限酵素分析によ
って確認された。EcoNIが、レトロウイルス・ベクターの位置1993で引
き起こされた変化を検知するために使用された。形質転換体#2および#6が、
MvaI消化によってレトロウイルス・ベクターの位置2221で第2の変異の
ためにさらに同定された(図12)。突然変異生成実験中にDNA配列に他の修
正が導入されなかったことを確認するためにこれらのコロニーから分離されたプ
ラスミドDNA中で、配列分析も行なわれた。
【0158】 実施例3:単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ自殺遺伝子からのトランケー
トされたメッセージの除去 標的細胞に導入された単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(HSV−Tk)
遺伝子は、それらをガンシクロビル(GCV)による殺害を受けやすくする。我
々は、造血幹細胞移植においてHSV−Tk−形質が導入されたTリンパ球の使
用を研究している。我々は、以前にin vitroおよびin vivoで、
HSV−Tk遺伝子内の削除によりGCVに耐性を有する形質導入された細胞の
発生を示した。この削除は、隠れたスプライス・ドナーおよび受容体サイトの存
在の結果であり、レトロウイルス生産細胞に由来する。ここに、我々は2つの異
なる方法(それらは隠れたスプライス・サイトに3番目塩基の縮重的変化を導入
し、したがって、スプライシングを防ぐ)を採用する。結果として、HSV−T
kタンパク質は変化せず、GCVへの標的細胞の感度は保存される。また、この
変異されたHSV−Tk遺伝子の使用は、臨床試験において、抵抗する遺伝子組
換え細胞の成長の可能性を縮小するはずである。
【0159】 我々と他の者は、形質導入されたT細胞を使用して、同種(allogene
ic)造血幹細胞移植後に同種異系活性(alloreactivity)を調
整するために単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(HSV−Tk)遺伝子を発
現するドナーT細胞の使用を評価している1,2,3。HSV−Yk遺伝子を含むド
ナーT細胞の、T細胞を消耗した移植片の同時注入は、移植片対白血病効果を有
効に保つが、これらのT細胞は次いで、移植片−対宿主病が開始した時点で、G
CV投与によって除去することができる4。他のグループは、エプスタイン・バ
ー・ウイルスに関連するリンパ−増殖性疾患または移植後の白血病再発を治療す
るために、形質導入されたドナーT細胞を同様に使用した2,5,6
【0160】 我々は、in vitro およびin vivoで、HSV−Tk遺伝子の
トランケートされた形式を含んでいる耐GCV性のHSV−Tkが形質導入され
たヒトTリンパ球の存在を示した7。このトランケーションの出所は、レトロウ
イルス・パッケージング細胞(それらは標的細胞に続いて送られた)内の遺伝子
のスプライシングまでトレースされた。耐GCV性細胞の分子の分析は、隠れた
スプライス・ドナー・サイトおよび受容体サイトの存在により227−bp断片
の削除を実証した7。ここに、我々は、形質導入されたT細胞中のGCV感度を
保存しつつ、パッケージング細胞株中でのプライシングを防ぐためにHSV−T
k遺伝子を変異させることができることを実証する。
【0161】 材料と方法 部位特異的突然変異生成によるドナー・スプライス・サイトおよび受容体スプ
ライス・サイトの両方の訂正 スプライスされていない変異生産のための第1の戦略は部位特異的突然変異生
成を用いる(Transformer(商標)Site−directed m
utagenesis kit,Clontech,Palo Alto,Ca
.USA)8。2つのプライマー、Mutl(5’−CCGCCTCGACCA
AGGTGAGATATC−3’)およびMut2(5’−CAGCATGAC
CCCCCAAGCCGTGCTGGCGTTC−3’)が、スプライス・ドナ
ー・サイト(267)および受容体サイト(494)(ATGである開始コドン
から数た塩基の番号)で所望の第3塩基変異(太字)pSFCMM3ベクター内
に含まれるHSV−Tk遺伝子中に導入するために用いられた9。訂正されたク
ローン(p−scSFCMM3)からのDNAは、記載されているように配列決
定された7
【0162】 最小のPCRによるスプライス・アクセプター・サイトの修正 スプライス・アクセプター・サイトの側面は、位置417と534においてB
glIサイトを有する。137個のDNA塩基対断片は、プライマーMut3(
5−CGTGACCGACGCCGTTCTGGCTCCT−3)およびMut
4(5−GGCCACGAACGCCAGCACGGCTTGGGG−3)(B
glIサイト)を使用して増幅された。下流のプライマーは三番目塩基の縮退点
変異(太字)を含んでいる。プラスミド、pBSCK+(Stratagene
,La Jolla,CA.USA)はBglIで消化された、平滑末端化され
、pBSCdBglIを形成するために再ライゲートされた。HSV−Tk遺伝
子は、Bgl11とXho1を使用し、pSP65Tk(GTI Gaithe
rsburg,MD,USA)から取り出され、pBSCdBglのBamH/
Xho1サイトへクローン化された。このプラスミドはBgl1で消化され、増
幅されBgl1消化されたHSV−Tkによる変異断片とのライゲーションの前
にゲル精製された。野生型および修正されたHSV−Tk遺伝子は配列確認され
た後、Not1/xho1消化によりレトロウイルス・ベクターpSF/SV/
neo(pSF1Nベクター10の修正版であり、クローニング・サイトおよび内
部SV40プロモーターから発現されたネオマイシンホスホトランフェラーゼ遺
伝子を含んでいる)に転送され、それぞれpSF/Tk/wtおよびpSF/T
k/mutを形成した。
【0163】 ウイルス生産細胞株の生成 p−scSCMM3でトランスフェクトされたGP+E86自己指向性(ec
otropic)パッケージング細胞11からの上清を使用してGP+env A
m12 amphotropic細胞株を感染させた12。pSF/Tk/mut
およびpSF/Tk/wtは、Ψクリップ(crip)13に感染し、400μg
/mlのG418(Life−technologies,Cergy,Pon
toise,France)中で選択された7
【0164】 形質導入された細胞中でのスプライス分析 主要T細胞およびT細胞株、HuT78(ATCC TIB−161)および
CEM(ATCC CRL 2265)]がG1Tk1SVNa、SF/Tk/
wt、SF/Tk/mut、SFCMM3またはscSFCMM3ベクターで形
質導入された。HSV−Tk PCR(上記7に記載されているように)は形質
導入された標的細胞上で行なった。さらに、5’プライマーを使用してHSV−
Tk遺伝子の削除形を選択的に増幅するプライマーを使用してPCRを行なった (それは切断ポイントを測る)[TrTk1:5’CTCGACCAGG§G
CCGTGCT。(§は結合(junction)を指す)および前述のRTk
2 3’プライマー7。7に記述されるように、形質導入された細胞株からのス
プライシングの量が計られた。
【0165】 結果と議論 我々は、HSV−Tk遺伝子内のスプライシングを除去するために2つの成功
したアプローチを採用した。これは、パッケージング細胞株を含む訂正されたH
SV−Tkによって生産されたウイルスで形質導入されたT細胞株または主要な
T細胞におけるトランケートされたHSV−Tk遺伝子の欠如によって証拠づけ
られる。
【0166】 図17Aでは、GITk1SVNa(SF/Tk/wt+/−GCV)で形質
導入したHut78細胞に由来するPCR産物のサザン・ブロットが、GCVの
集中が増すにつれて、完全長HV−Tk遺伝子からの信号の減少と削除された遺
伝子からの増加した信号を示す(さらにin vivoでの観察結果も参照7
。対照的に、トランケートされた遺伝子は、SF/Tk/mutで形質導入され
た細胞では検知されない。同一の知見は、CEM細胞を標的細胞(データは示し
ていない)として、SF/TK/wt、SF/Tk/mutおよびSFCMM3
とscSFCMM3のウイルスと同様に使用して観察された。
【0167】 SFCMM3またはscSFCMM3ベクターで形質導入された主要T細胞の
分析でも、訂正された遺伝子で形質導入された細胞中で全長遺伝子を示し、一方
、野生型のベクター(図17B)を含む細胞では全長およびトランケートされた
かたちが見られた。トランケーション特異的プライマーを使用するPCRは同様
の結果(図17C)を与えた。
【0168】 我々は、SCFMM3およびG1Tk1SVNaのベクターで形質導入された
CEM細胞においてはスプライシングの起こる頻度がそれぞれ15.5%および
9.2%であると以前に報告した7。訂正されたベクターの使用は、すべてのス
クリーニングされたコロニーのスプライシングが存在しない(SF/Tk/mu
tを含むもの0/46およびscSFCMM3を含むもの0/126)ことを確
認した。
【0169】 図18では、我々は、形質導入された細胞のGCVへの感度が、変異によって
も低減しない(これは、HSV−Tkアミノ酸配列が保存されていたことから予
想できた)ことを示す。変異したHSV−Tk遺伝子を発現する、T細胞株およ
び主要T細胞のGCV感度は、野生型遺伝子によって形質導入された集団と比較
して、わずかに増加したのみであった。このGCVが誘導する細胞増殖の阻害に
ついての特定の分析結果は、野生型の遺伝子を発現する細胞で達成された、80
〜90%の阻害以上の増加したGCV感度を実証するのには最適ではないかもし
れない14。この仮説と一致するように、ラットHSV−Tk遺伝子組換えT細胞15 (ここで、両者とも全長およびトランケートされたメッセージが同じ野生型H
SV−Tk遺伝子から生産される(データは示していない))のGCV阻害もま
た80〜90%であった16。結局、in vivoでの評価だけが増加したGC
V感度を実証していると言えるであろう。
【0170】 DNAメチル化17、mRNAの転写後のプロセッシングや3ステップ経路での
変異18、19などのその他のメカニズムでこれらのケース(完全なHSV−Tkメ
ッセージが形質導入された細胞に検出されている)を説明することも可能である
【0171】 さらに、代替メカニズムによるGCV耐性が主要T細胞に生じているのかもし
れない。完全なHSV−Tkメッセージが生産されているにも拘わらず、形質導
入された細胞は、DNAメチル化による遺伝子沈黙などのメカニズムによってG
CV耐性を引き起こしているのかもしれない17、18。さらに、GCVが細胞周期
からの一時的撤退によってGCVの影響を結局回避しているのかもしれない19
最後に、GCVは3ステップ経路によって代謝されているので20、他の遺伝子に
おける変異も関わっているのかもしれない。
【0172】 これらの留保にもかかわらず、耐GCV性のトランケートされたHSV−Tk
発現細胞は、我々の患者においてはGCV処置後に循環する遺伝子の重要な割合
を構成した7。したがって、隠れたスプライシングが廃止された、訂正されたH
SV−Tk遺伝子の使用が、GCV耐性遺伝子に修正されたドナーT細胞の数を
in vivoで著しく減少させるであろうと予測することができる。さらに細
胞を発現するHSV−Tkを使用する臨床試験は、そのような変異させられたH
SV−Tk遺伝子の使用から利益を得るはずである。
【0173】 実施例4:治療 遺伝子治療は体細胞のゲノムを治療目的のために修正する、臨床的戦略である
。遺伝子的に操作された細胞の受容者にとって直接臨床的利益が焦点となってい
ない場合でも、ヒトの生理学についての価値のある情報が、遺伝子転送(tra
nsfer)研究から得ることができる。本質的に、遺伝子の転送は、1つまた
は複数の遺伝子とそれらの発現の制御のために必要な配列とを含む発現ベクター
を細胞を標的として送達することを含んでいる。一般に、発現ベクターは、標的
細胞へin vitroで転送される。その後、発現ベクターを運ぶ修正された
細胞は、受容者に投与される。最近では、個体中で発現ベクターをin viv
oで細胞投与することが、実現可能な代替案となっている。
【0174】 大多数の臨床試験では、組換えレトロウイルスが遺伝子送達のためにビヒクル
としてより一般的に使用されるベクター・システムである。遺伝子情報は、RN
Aの形をして運ばれ、特定の受容体によって標的細胞に入る。感染した細胞の内
部では逆転写によってDNAに変換される。次いで、ウイルス由来のDNAは宿
主細胞(プロウイルス)ゲノムにランダムに取り込まれ、発現カセットが治療用
遺伝子にコードし始める。
【0175】 臨床の遺伝子トランスファー研究で使用されるレトロウイルス・ベクターは、
ネズミ白血病ウイルス(MLV)に由来する。レトロウイルス・ベクター・シス
テムはほとんどすべて2つの部分から成っている。第1のコンポーネントは治療
の遺伝子を含む発現ベクターである。これは、RNAの形をしてレトロウイルス
・ベクター粒子のゲノムを構成する。gag、polおよびenvはウイルスか
ら削除され、複製不能になる。システムの第2の部分、パッケージング細胞株は
ベクター・ウイルス粒子の生産のために必要になる。これらの細胞は2種の異な
る発現構築体から失われたレトロウイルス構造のタンパク質(gag、polお
よびenv)を生産するために遺伝子操作される(第3世代の生成レトロウイル
ス・ベクター・システム)。これらのタンパク質は(形質導入する)標的細胞を
感染させることができるウイルスをパッケージにするために必要とされる。
【0176】 遺伝子的に操作された哺乳類細胞のHSV−tk遺伝子の発現は、それらをプ
ロドラッグGCVに対し感受性にする。HSV由来のチミジンキナーゼはGCV
をリン酸化できる。モノリン酸化されたGCVは、細胞キナーゼによって鎖の終
端(図13)によってDNA複製を阻害するGCV三リン酸塩に形質導入される
。この戦略は様々な動物モデルで移植された腫瘍の軽減を引き起こすために使用
された(Freeman SM et al,1996;Semin Onco
l 23:31−45)。ヒトにおいても脳と腎臓の腫瘍の治療で評価されてい
る(Culver KW,Blaese RM Trends.Genet.1
0:174,1994;Moolten FL,Wells JM:J.Nad
.Cancer Inst.82:297,1990)。
【0177】 同種骨髄移後に、造血組織悪性腫瘍の寛解または再発があった患者には、HS
V−tk形質導入されたドナーTリンパ球を現在注入されている。このアプロー
チは、移植片対宿主病(GvHD)の原因である同種異系活性(allorea
ctive)なドナーT細胞を循環(血中)から選択的に消耗除去することを可
能にするものである。GvHDは、免疫療法採用上の主要な問題である(Gra
ft−versus−host−disease:Immunology,pa
thophysiology and treatment.New York
,Marcel Dekker,1990)。
【0178】 本明細書で記載するベクターは、これらのアプローチの中で使用される。
【0179】 実施例5: 臨床試料中のトランケートされたHSV−tk遺伝子の識別 単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子を運ぶレトロウイルス・ベクター
で形質導入されたドナーヒトTリンパ球の中のガンシクロビル耐性と同じ分子の
メカニズムが、実施例1に記載したin vitro研究での臨床試料において
観察された。
【0180】 実施例1と同様な検討が、別のレトロウイルス・ベクター(G1Tk1SvN
a;その構造図1参照;ベクターはHSV−tkおよびNeoRを含む遺伝子)
で形質導入されたin vivoの循環(血中)ドナーT細胞において行なわれ
た。下記に知見を要約する。また適宜、実施例1と比較して方法論の違いを述べ
る。
【0181】 レトロウイルス・ベクターG1Tk1SvNaは多くの治療的臨床試験で使用
されてきた(Packer et al(2000)J.Neurosurg.
92,249−254;Tiberghien et al(1996)Hem
atol.Cell Ther.38, 221−224)。我々は、T細胞消
耗除去allo−SCT(Tiberghien et al(1996)He
matol.Cell.Ther.38,221−224)後にG1Tk1Sv
Naを受け取った患者中のHSV−Tk RNAの隠れたスプライシングにより
227のbp削除の存在を識別した。これらの観察は、将来の臨床使用において
必要とされるベクター設計に特に重要である。
【0182】 材料および方法 レトロウイルス・ベクターおよび生産株 G1Tk1SvNaレトロウイルス・ベクターを含むPA317由来生産細胞
は、Genetic Therapy,Inc.Novartis,(Gait
hersburg,MD,USA)(図1)により提供される。ベクターおよび
それらの生産細胞株は以前に記載されている(Tiberghien et a
l(1997)Hum.Gene Ther.8,615−624;Verze
letti et al(1998)Hum.Gene Ther.9,224
3−2251;Lyons et al(1995)Cancer Gene
Ther.2,273−280)。
【0183】 ヒトT細胞株および主要Tリンパ球の単離と培養 PBMNCは、EDTAチューブに集められた。細胞は、第0日から第3日ま
で1000U/mlのペニシリン、 500U/mlのrhIL−2で培養した
【0184】 G1Tk1SvNaレトロウイルス・ベクターによるドナーT細胞の形質導入
は、以前に記載されているもの(Robinet et al(1998)J.
Hematother.7,205−215)と同様に行なった。PBMNCは
、OKT3(10ng、オルト酸塩)およびrhIL−2(500U/mL、C
hiron)とともに3日間培養した。レトロウイルス上清による感染24時間
後、形質導入された細胞のG418(800 μg/mL,Sigma)選択を
7日間行なった。死亡した細胞は除去され、また、有効な形質導入産物は、将来
の使用のために凍結保存された。G1Tk1SvNaベクターによるCEM細胞
の形質導入は、SFCMM3ベクターについて記載されているのと同一の感染条
件とし、7〜14日間、G418(800μg/ml)中の選択を後に続けた。
【0185】 G1Tk1SvNaで形質導入された細胞は、7〜14日間G418(800
μg/ml)への接触によって選択された。形質導入効率はNeoR遺伝子のた
めの競争的PCR分析によって評価した。
【0186】 ポリメラーゼ連鎖反応および配列分析 G1Tk1SvNaの形質導入した細胞におけるHSV−Tk遺伝子の存在を
プライマー(図1B)を使用して、以下のPCRによって調べた: pTK(5’TAGACGGTCCTCACGGGATGGGGA 3’)およ
びRTK2(5’GCCAGCATAGCCAGGTCAAG 3’)。PCR
分析は、DNAを500ng、15mM MgCl2含有1×Taqポリメラー
ゼ・バッファ(Eurogentec,Seraing,Belgium)、d
NTP各200μM、0.25μMの各プライマーおよびTaq DNAポリメ
ラーゼ(Eurogentec)0.5Uを含む50μl反応混合物中で行なっ
た。熱サイクル条件は、94℃、45秒間、60℃、1分間、および72℃、1
分間を35サイクル、最後に72℃、5分間の伸張とした。PCR産物(18μ
l)は、2%のアガロース・ゲル上で電気泳動にかけEtBr染色した。標準条
件を使用してナイロン・フィルタにゲノムDNAを移行した。ブロットはα−32 P−dCTPエンド・テイリング標識されたオリゴプローブ:Tk2プローブ(
5’ATCGTCTACGTACCCGAGCCGATGA 3’)でハイブリ
ダイズし、オートラジオグラフィ前に0.1×SCC− 0.1%SDS中60
℃で洗った。この分析の感度は、パッケージング細胞株から抽出され希釈された
DNA増幅によって決定されたが、105個の修正されていない細胞中に1個の
形質導入された細胞を検出することができた(ゲノム当たり1つのTK遺伝子コ
ピーと仮定(Brodie et al(1999)Nat.Med.5,34
−41)。
【0187】 PCR産物は、Promega(Charbonnieres,France
)からのpGEMT Easy vector中に複製してクローン化した。自
動蛍光DNA配列分析は、PE Biosystems(COURTABOEU
F,France)によって行なわれた。
【0188】 トランケーション発生頻度 G1Tk1SvNaまたはSFCMM3ベクターのいずれかによって形質導入
され、G418またはイムノマグネティックな操作によって選択した300個の
CEM細胞をメチルセルロース(MethoCult H4320;Stem
Cell Technologies,Vancouver,Canada)1
mLに対してRF10の150μlと混合した。その後、細胞は35mmのペト
リ皿中に三重に植菌され、5%CO2中37℃で15日間成長し、15日目に評
点された。個々のコロニーは24枚のウェル・プレートに取られ、3日間拡張し
た。その後、上記のような全長またはトランケートされたTk遺伝子の存在を調
べるためにPCRによる分析のために細胞を収穫した。
【0189】 臨床研究 増大するCD3+量の遺伝子で修正された細胞に、T細胞消耗除去骨髄を灌注
した。造血組織悪性腫瘍を有する12人の患者が、2×105(n=5)、6×
105(n=5)または20×105(n=2)形質導入ドナーCD3+細胞/k
gを受けた(HLA同一の兄弟からの骨髄を用いた)。急性毒性は観察されなか
った。NeORについての定量的PCRは、形質導入T細胞の循環(血中)が当
初増加し、時間経過により減少していくことを明らかにした。しかし、遺伝子修
正された細胞は、循環(血中)に固執的に長期間(800日以上)検出された。
3人の患者が急性GvHD等級≧IIであり、一方、1人の患者が慢性のGvH
D(皮膚と唾液腺)を発症した。GCVのみによる治療は急性GvHDに罹患し
た2人の患者については完全な寛解(CR)を伴ったが、最後のケースではCR
を達成するのにステロイドの追加が必要だった。慢性のGvHDに罹患する患者
においては、長期間のCRはGCV治療に関係していた。ガンシクロビル処理は
、循環(血中)形質導入T細胞を著しく迅速に減少させた。GCVを受けた患者
において、HSV−Tk遺伝子の野生型またはHSV−Tk遺伝子のトランケー
トされた形式を発現する遺伝子に修正された細胞を検出するための血液サンプル
を、GCV治療に先立っておよび規則的に2週間間隔で収穫した。
【0190】 結果 主要細胞の結果形質導入効率 G418選択に先立ち、G1Tk1SvNaによる主要T細胞の形質導入効率
が、NeORについて定量的PCRによって測定され、8.3±1.4%(n=
12)であった。G418選択後の細胞のGCV感度は、87±1.2%(n=
12)であった。1つの代表的な形質導入/選択実験からのコントロールおよび
形質導入された細胞の相対的な細胞成長を、図16に示す。
【0191】 形質導入された主要Tリンパ球のPCRおよび配列分析 G1Tk1SvNaベクターで形質導入されたヒト主要Tリンパ球から抽出さ
れたゲノムDNAも、HSV−Tk遺伝子を求めてPCRによって分析された。
この研究では、2本のバンドが、選択された(TK800)または未選択の形質
導入された細胞(TK0)(図14A)の中で識別された。560bp断片は全
長HSV−Tk遺伝子に相当し、HSV−Tk遺伝子の削除された形式に対応す
る333bpのより小さなバンドと比較して、最も強い信号を与えた。より大量
にある標的が優先的に増幅されるのであれば、これは全長とトランケート形とで
Tk形式間のPCR分析中の競争によるものかもしれない。しかし、形質導入さ
れた細胞が最初にG418で選択され、次いで、GCV(TK800+GCV)
存在下に培養されると、333bpバンドはより強くなった。これは、GCV処
置が、トランケートされたHSV−Tk遺伝子(図14B)を発現する細胞の集
団の豊富化をもたらしたことを示す。興味深いことに、333bpPCR産物の
配列決定では、HSV−Tk配列内で、CEMおよびSCFMM3ベクターで形
質導入した主要なT細胞と正確に同一の227bpの削除が示された(ドナーと
受容体は、G1Tk1SvNaベクター中の位置でそれぞれ1871と2098
)。
【0192】 トランケーションの発生頻度 G1Tk1SvNaベクターを用いて、153個のCEMが形質導入したコロ
ニーのPCR分析を行なったところ、139個のコロニーが完全長HSV−Tk
遺伝子を有する一方、14個がHSV−Tk遺伝子のトランケートされた形式を
含んだことを示し、9.15%のトランケーション頻度を与えた。SFCMM3
ベクターで形質導入された45個のコロニーがPCRによって分析され、7個が
トランケートされた遺伝子を含むと分かった(頻度15.5%)。
【0193】 臨床試料中のトランケートされたHSV−Tk遺伝子の識別 HSV−Tk遺伝子のトランケートされた形式を含むin vivo循環(血
中)形質導入T細胞が、移植の後800日までの注入後早くも30分後に12人
の患者すべての観察された。HSV−Tk遺伝子の両方の形式の定量化は行なわ
なかったが、サザン・ブロット分析が後続するPCRでは、トランケートされた
HSV−Tk遺伝子を発現する、in vivoで形質導入されたT細胞の割合
がin vitroでの観察結果と同様またはそれ未満(<10%)であること
が示された(図15(レーンA))。1人の患者からの代表的な資料中で例証さ
れるように(図15)、GvHDのための治療として投与されたGCVは、完全
長HSV−Tk遺伝子によって生成された信号を減少させ、一方、HSV−Tk
遺伝子のトランケートされた形式と結び付けられる信号を次第に増加させた。重
要なことは、GCV治療は、常に著しくNeoR遺伝子17の定量的PCRによっ
て決定されるような循環(血中)形質導入されたT細胞のパーセンテージを大き
く(85−98%)減少させ絶対数(76−99.5%)をも減少させることで
ある。したがって、トランケートされたHSV−Tk遺伝子を含む、形質導入さ
れたT細胞の割合の増加に対しては、循環する形質導入された細胞の減少数の中
にあった。
【0194】 結論 我々は、T細胞が消耗されたallo−SCTとともに形質導入されたドナー
T細胞を受け取った12人の患者の中に、隠れたスプライス・ドナーおよび受容
体サイトの存在によるHSV−Tk遺伝子中の227bpの削除が存在すること
を確認した。トランケートされたHSV−Tk遺伝子を含むin vivoの循
環(血中)形質導入T細胞は、移植の後800日以内の注入直後にすべての患者
において識別された。GvHDのための治療としてGCVを受けた患者では、削
除されたHSV−Tk遺伝子を運ぶ、形質導入されたドナーT細胞の割合の漸進
的な増加が観察された。これらの結果は、HSV−Tk/GCVシステム内の制
限は、HSV−Tkを形質導入した細胞を確実に殺害すべく最適化されたレトロ
ウイルス・ベクターを開発することにより、改善することができるということを
示唆する。
【参考文献】
【図面の簡単な説明】
【図1】 CEM細胞および主要Tリンパ球の形質導入のために使用された
、SFCMM3(A)およびG1Tk1SvNa(B)ベクターのプロウイルス
形を示す模式図である。LTR、長い末端反復配列はモロニー(Moloney
)ネズミ白血病ウイルス(MLV)およびMoloney肉腫ウイルス(MSV
)に由来する。HSV−Tkは単純疱疹ウイルス遺伝子配列である。SV40は
サルウイルス40の初期プロモーターである。ΔLNGFRは、細胞質領域中で
トランケートされた低親和性神経成長因子受容体cDNAである。NeoR:ネ
オマイシンホスホトランスフェラーゼcDNAである。CEM−Tkサブクロー
ンに由来するゲノムDNAの消化のために使用したEcoRIとSacIのため
の制限酵素サイトが示されている。Tk1とNGFのプローブは、ゲノムDNA
中のプロウイルス配列を識別するために使用した。Tk2プローブもPCR産物
の特異性を確認するために使用した。SFCMM3を増幅することを目指したP
CRプライマーの位置およびG1Tk1SvNaプロウイルス配列を、PCR産
物のサイズとともに示す。
【図2】 レトロウイルスによって形質導入されたT細胞株であり、FAC
S分析によるΔLNGFR発現の検出結果を示す。CEMおよびJurkat細
胞(ヒトの細胞株)は未選択の集団(それぞれAおよびC)を形質導入した。磁
気ビーズ(それぞれBおよびD)による1回のポジティブなイムノマグネティッ
ク選択後、ΔLNGFR発現CEMおよびJurkat細胞の豊富化。示された
結果は、1つの代表的な実験に相当する。
【図3A】 TK−CEM(A)およびTK−Jurkat(B)誘導サブ
クローン中でのΔLNGFR導入遺伝子のFACS分析による発現を示す。細胞
は、非結合性(unconjugated)マウス抗ヒトLNGFR MoAb
とインキュベートし、次いでFITCで標識されたヤギ抗マウスMoAbで染色
した。
【図3B】 TK−CEM(A)およびTK−Jurkat(B)誘導サブ
クローン中でのΔLNGFR導入遺伝子のFACS分析による発現を示す。細胞
は、非結合性(unconjugated)マウス抗ヒトLNGFR MoAb
とインキュベートし、次いでFITCで標識されたヤギ抗マウスMoAbで染色
した。
【図4】 TK−CEM由来のサブクローン中でHSV−tk導入遺伝子を
測定するためのGCV誘導細胞毒素の分析結果を示す。細胞は、GCVの濃度を
増加させ(0.05μg/mLから12.5μg/mLまでの範囲)、4日間イ
ンキュベートした。細胞増殖は細胞DNAの中への3H−チミジンの取り込みに
よって測定した。結果をGCVが存在しない状態で得られた3H−チミジンの取
込量に対する各GCV濃度における3H−チミジンの取込量によってパーセンテ
ージで表わす。(◆)は形質導入されていないCEM細胞であり、(■)はSF
CMM3形質導入TK−CEMサブクローンである。
【図5】 TK−CEM(AおよびB)およびTK−Jurkat(Cおよ
びD)サブクローンのサザン・ブロット分析結果を示す。ゲノムDNAをSac
I制限酵素で消化した。サザン・ブロットは、TK(AおよびC)およびΔLN
GFR(BおよびD)特異的プローブでハイブリダイズした。
【図6】 TK−CEM(AおよびB)およびTK−Jurkat(Bおよ
びC)サブクローンのサザン・ブロット分析結果を示す。ゲノムDNAはEco
RI制限酵素で消化した。サザン・ブロットは、TK(AおよびC)およびΔL
NGFR(BおよびD)特異的プローブでハイブリダイズした。
【図7】 TK−CEMおよびTK−Jurkatサブクローンに由来する
ゲノムDNAからのSFCMM3プロウイルス配列のPCR増幅を示す。プロウ
イルスの異なる4つの領域を特定のプライマーを使用して、PCRによって増幅
した(図1を参照)。断片1:LTR+/HTK5-(912bp);断片2:H
TK4+/HTK1-(998bp);断片3:HTK1+およびNGF2-(75
3bp)および断片4:NGF2+およびNGF3-(852bp)。
【図8】 形質導入され選択された主要Tリンパ球から得られたゲノムDN
AからHSV−tk遺伝子配列(断片2:HTK4+/HTK1-;998 bp
)のPCR増幅を示す。TK−CEMおよびTK−Jurkatサブクローンか
らのポジティブおよびネガティブ・コントロールを使用した。
【図9】 TK−CEMおよびTK−Jurkatサブクローンに由来する
ゲノムDNAからのトランケートされたHSV−tk遺伝子のPCR増幅結果を
示す。PCRは、耐GCV性のTK−CEMおよびTK−Jurkatクローン
中のHSV−tk遺伝子のスプライスされた形を特異的に増幅するプライマー(
HTK8+/HTK1-;640 bp)を使用してセット・アップした。
【図10】 形質導入され選択された主要Tリンパ球から得られたゲノムD
NAからのトランケートされたHSV−tk遺伝子のPCR増幅結果を示す。P
CRは、耐GCV性のTK−CEMおよびTK−Jurkatクローン中のHS
V−tk遺伝子のスプライスされた形を特異的に増幅するプライマー(HTK8+ /HTK1-;640bp)を使用してセット・アップした。
【図11A】 HSV−tk遺伝子(V00467と呼ぶ)の野生型配列、
実施例で用いた発現ベクター中の完全長HSV−tk遺伝子(tkgene)お
よび実施例記載の実験で見出された削除された遺伝子(tkgene−del)
を示す。
【図11B】 HSV−tk遺伝子(V00467と呼ぶ)の野生型配列、
実施例で用いた発現ベクター中の完全長HSV−tk遺伝子(tkgene)お
よび実施例記載の実験で見出された削除された遺伝子(tkgene−del)
を示す。
【図11C】 HSV−tk遺伝子(V00467と呼ぶ)の野生型配列、
実施例で用いた発現ベクター中の完全長HSV−tk遺伝子(tkgene)お
よび実施例記載の実験で見出された削除された遺伝子(tkgene−del)
を示す。
【図12】 癌遺伝子治療、および骨髄移植の後に、同種異系反応性(al
loreactivity)の調整のために用いるドナーTリンパ球によって腫
瘍細胞を殺すために提案された、HSV−tk/GCVシステムを示す模式図で
ある。
【図13】 部位特異的突然変異生成によるmSFCMM−3ベクターの修
正を示す。トランスフェクタント(transfectant)#2および#6
の制限酵素分析。EcoNIおよびMvaI制限酵素はベクターの位置1994
および2221で引き起こされた変化をそれぞれ検知するために使用した。野生
型のHSV−tk遺伝子配列を含む未修正ベクターを、ネガティブ・コントロー
ルとして使用した。
【図14】 GCVを含むまたはGCVを含まない培養液中で形質導入され
た主要なT細胞からのpTK/RTK2 PCR(35サイクル)産物のサザン
・ブロット。(A)形質導入されたか未選択のT細胞(TK0)中のHSV−T
k配列のPCR増幅、形質導入されたかGCVがない状態で、および1μg/m
L GCVで7日間培養したG418選択のT細胞(TK800+GCV)。(
B)GCVの存在(1μg/ml)または不存在培地で8、11、16日間の培
養後の形質導入された主要なT細胞。ポジティブ(G1Tk1SvNaベクター
生産細胞からのDNA)およびネガティブ・コントロール(形質導入されていな
い主要なT細胞)を使用した。
【図15】 GCV治療中のGvHD(30日目には同種移植片(allo
graft)を記入する)時における臨床試験の代表的な患者からの抹消血単核
細胞のTK PCR産物のサザン・ブロット分析。レーンA〜D:GCV治療開
始後、GVHD(A)、2日目(B)、4日目(C)、11日目(D)の時点で
患者のPBMCから抽出されたDNAサンプル。レーンE:ネガティブ・コント
ロール(形質導入されていない主要なT細胞);レーンF:ポジティブ・コント
ロール(G1Tk1SvNaベクター生産細胞からのDNA)。
【図16】 G1Tk1SvNaベクターで形質導入された異なる細胞集団
の相対的な細胞成長を示す代表的な実験の結果を示す。C0:形質導入されてお
らず選択されていない細胞;C800: 形質導入されておらずG418(80
0mg/ml)で選択された細胞;TK0:形質導入されて、選択されていない
細胞;TK800:形質導入しG418−選択した。
【図17】 T細胞株および訂正されているか訂正されていないHSV−7
kベクターで形質導入した主要なT細胞のPCR分析結果。(A)訂正されてい
ないベクターG1Tk1SvNaまたはSF/Tk/wtで、または訂正された
ベクターpSF/Tk/mutで形質導入された、GCV濃度(0、1、2また
は5μAg/ml)の増加が存在する、Hut−78細胞株からのHSV−Tk PCR産物のサザン・ブロット分析。(+)および(−)は、PCR反応のポ
ジティブ・コントロールおよびネガティブ・コントロールである。 MWは、明るいバンドを有する600bp(100bp DNA ladde
r、Life Technologies)に等しい分子量マーカーを表わす。
HSV−Tk遺伝子の両方のかたち(白い矢印=全長、黒い矢印はトランケート
された遺伝子を示す)に対するプライマーを用いたPCRによる増幅結果。(B
)またはHSV−7k遺伝子のトランケートされた形式に特異的なプライマーを
用いた。(C)訂正されていないSCFMM3(wt)または訂正されたsc−
SCFMM3(mut)ベクターで形質導入した主要なT細胞のバルク集団。T
k−CEM#2およびTk−CEM#3はトランケートされていないPCRコン
トロールおよびトランケートされたPCRコントロールを表わす。形質導入され
ていないT細胞をネガティブ・コントロールとして用いた。
【図18】 T細胞株および訂正されたHSV−Tkベクターまたは訂正さ
れていないHSV−Tkベクターで形質導入した主要なT細胞のGCV感度。訂
正されたSF/Tk/mut(?)または訂正されていないベクターG1Tk1
SvNa(○)またはSF/Tk/wt(△)で形質導入されたHut−78(
A)およびCEM(B)細胞株のGCV感度を形質導入されていないT細胞株(
■)と比較して示す。データは、細胞活力の阻害を表わし、CEMおよびHut
−78細胞株について、それぞれ8つおよび3つの異なる独立した実験の平均±
SDである。(C)訂正されたsc−SFCMM3(△)または訂正されていな
いSFCMM3ベクター(?)で形質導入された主要なT細胞のGCV感度を形
質導入されていないT細胞(■)と比較して示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 45/00 A61K 48/00 4C087 48/00 A61P 35/00 A61P 35/00 43/00 105 43/00 105 C12N 1/15 C12N 1/15 1/19 1/19 1/21 1/21 9/12 5/10 15/00 ZNAA 9/12 5/00 A (72)発明者 マリーナ・イマキュラーダ・ガリン イギリス・ロンドン・W12・0NN・デ ュ・ケイン・ロード・(番地なし)・ハマ ースミス・ホスピタル・インペリアル・カ レッジ・スクール・オブ・メディシン・デ パートメント・オブ・イミュノロジー Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 AA20 BA10 CA03 CA09 CA20 DA02 DA03 EA02 FA02 GA11 GA25 HA11 HA13 HA14 HA17 4B050 CC04 DD01 EE01 LL01 LL05 4B065 AA01X AA58X AA72X AA93X AA95Y AB01 AC14 AC20 BA02 BA16 BA24 CA29 CA44 4C084 AA13 AA17 AA18 MA02 MA05 NA13 NA14 ZB211 ZB212 ZB261 ZB262 4C086 AA02 CB07 EA17 MA02 MA04 MA05 NA13 NA14 ZB21 ZB26 4C087 AA02 BC83 MA02 MA05 NA13 NA14 ZB21 ZB26

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チミジンキナーゼ・コード領域が機能性スプライス・アクセ
    プター・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトを含まない、チミジ
    ンキナーゼをコードするポリヌクレオチド。
  2. 【請求項2】 チミジンキナーゼがヘルペスビリダエ・チミジンキナーゼで
    ある請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  3. 【請求項3】 チミジンキナーゼが単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼで
    ある請求項2に記載のポリヌクレオチド。
  4. 【請求項4】 チミジンキナーゼが単純疱疹ウイルス1型チミジンキナーゼ
    である請求項3に記載のポリヌクレオチド。
  5. 【請求項5】 チミジンキナーゼ・コード領域が野生型チミジンキナーゼを
    コードする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
  6. 【請求項6】 チミジンキナーゼ・コード領域が野生型チミジンキナーゼと
    比べて酵素活性を増強する変異を含むチミジンキナーゼをコードする請求項1か
    ら4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
  7. 【請求項7】 野生型配列と比べて、スプライス・サイトが存在しないよう
    に図11の842番および1070番の位置のヌクレオチドのいずれか1つが別
    のヌクレオチドに置換されている請求項4に記載のポリヌクレオチド。
  8. 【請求項8】 野生型配列のヌクレオチドと比べて、842番の位置のスプ
    ライス・ドナー・サイトがGAC CAG GGTからGAC CAA GGT
    に変更されている請求項7に記載のポリヌクレオチド。
  9. 【請求項9】 野生型配列ヌクレオチドと比べて、1070番の位置のスプ
    ライス・アクセプター・サイトがCCC CAG GCC からCCC CAA GCCに変更されている請求項7に記載のポリヌクレオチド。
  10. 【請求項10】 野生型配列ヌクレオチドと比べて、842番の位置のスプ
    ライス・ドナー・サイトがGAC CAG GGTからGAC CAA GGT
    に変更され、1070番の位置のスプライス・アクセプター・サイトがCCC
    CAG GCCからCCC CAA GCCに変更されている請求項6に記載の
    ポリヌクレオチド。
  11. 【請求項11】 操作可能に結合してコード領域を発現させるプロモーター
    をさらに含む請求項1ないし10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし11のいずれか一項で定義されたポリヌク
    レオチドを含む発現ベクター。
  13. 【請求項13】 ウイルス・ベクターである請求項12に記載の発現ベクタ
    ー。
  14. 【請求項14】 レトロウイルス・ベクターである請求項13に記載の発現
    ベクター。
  15. 【請求項15】 患者への送達に適合している請求項12から14のいずれ
    か一項に記載の発現ベクター。
  16. 【請求項16】 請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチ
    ドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベクターを含む宿主細
    胞。
  17. 【請求項17】 請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチ
    ドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベクターおよび薬剤と
    して許容される担体を含む医薬組成物。
  18. 【請求項18】 医薬に用いるための請求項1から11のいずれか一項に記
    載のポリヌクレオチドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベ
    クター。
  19. 【請求項19】 請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチ
    ドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベクターを細胞内に導
    入すること、細胞にチミジンキナーゼを発現させること、およびチミジンキナー
    ゼにより毒性の薬剤に変換される実質的に無毒の薬剤と細胞を接触させることを
    含む細胞の破壊方法。
  20. 【請求項20】 請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチ
    ドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベクターを患者に導入
    すること、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを細胞に取り込ませること、そ
    の細胞にチミジンキナーゼを発現させること、およびチミジンキナーゼにより毒
    性の薬剤に変換される実質的に無毒の薬剤を患者に投与することを含む、破壊の
    必要な細胞を有する患者の治療方法。
  21. 【請求項21】 (1)患者またはドナーから細胞を取り出すこと、(2)
    細胞内にex vivoで請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌクレ
    オチドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベクターを導入す
    ること、(3)このように導入されたときにチミジンキナーゼを発現していても
    していなくてもよい修飾した細胞を患者に導入すること、(4)このように発現
    していない場合には任意選択で細胞にチミジンキナーゼを発現させること、およ
    び(5)チミジンキナーゼにより毒性の薬剤に変換される実質的に無毒の薬剤を
    患者に投与することを含む、破壊の必要な細胞を有する患者の治療方法。
  22. 【請求項22】 実質的に無毒の薬剤が、ガンシクロビル、アシクロビル、
    トリフルオロチミジン、1−[2−デオキシ,2−フルオロ,β−D−アラビノ
    フラノシル]−5−ヨードウラシル、ara−A、ara 1、1−β−D−ア
    ラビノフラノシルチミン、5−エチル−2’−デオキシウリジン、5−ヨード−
    5’−アミノ−2,5’−ジデオキシウリジン、ヨードキシウリジン、AZT、
    AIV、ジデオキシシチジン、Ara Cおよびブロモビニルデオキシウリジン
    (BVDU)のいずれか1つである請求項19から21のいずれか一項に記載の
    方法。
  23. 【請求項23】 患者がチミジンキナーゼにより毒性の薬剤に変換される実
    質的に無毒の薬剤の投与を受けてきており、現在受けており、または将来受ける
    ものである、患者内で細胞を破壊する医薬の製造における、請求項1から11の
    いずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項12から15のいずれか一
    項に記載の発現ベクターの使用。
  24. 【請求項24】 患者が請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌク
    レオチドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベクターの投与
    を受けてきており、現在受けており、または将来受けるものである、患者内で細
    胞を破壊する医薬の製造における、チミジンキナーゼにより毒性の薬剤に変換さ
    れる実質的に無毒の薬剤の使用。
  25. 【請求項25】 請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチ
    ドまたは請求項12から15のいずれか一項に記載の発現ベクターおよびチミジ
    ンキナーゼにより毒性の薬剤に変換される実質的に無毒の薬剤を含む治療剤シス
    テム。
  26. 【請求項26】 実質的に無毒の薬剤が、ガンシクロビル、アシクロビル、
    トリフルオロチミジン、1−[2−デオキシ,2−フルオロ,β−D−アラビノ
    フラノシル]−5−ヨードウラシル、ara−A、ara 1、1−β−D−ア
    ラビノフラノシルチミン、5−エチル−2’−デオキシウリジン、5−ヨード−
    5’−アミノ−2,5’−ジデオキシウリジン、ヨードキシウリジン、AZT、
    AIV、ジデオキシシチジン、Ara Cおよびブロモビニルデオキシウリジン
    (BVDU)のいずれか1つである請求項23もしくは24記載の使用または請
    求項25記載のシステム。
  27. 【請求項27】 (1)チミジンキナーゼの天然のコード領域が機能性スプ
    ライス・アクセプター・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトを含
    むか否かを決定すること、および、(2)もし含むのであれば、スプライス・ア
    クセプター・サイトおよび/またはスプライス・ドナー・サイトの少なくとも1
    つを変異させて非機能性にすることを含む請求項1に記載のポリヌクレオチドの
    製造方法。
  28. 【請求項28】 ステップ(1)が天然のコード領域の少なくとも1つから
    転写されたmRNAを分析することを含む請求項27に記載の方法。
  29. 【請求項29】 ステップ(2)で変異の導入のために部位特異的変異生成
    が用いられる請求項27または28に記載の方法。
  30. 【請求項30】 本明細書に開示されるすべての新規な遺伝子治療ベクター
    またはシステム。
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