JP2003514997A - アルカリ性過酸化水素溶液及び二酸化塩素の製造方法 - Google Patents

アルカリ性過酸化水素溶液及び二酸化塩素の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は正極3を備えた正極区画2及び酸素還元負極5を備えた負極区画4を含む電解槽中のアルカリ性過酸化水素溶液及び塩素酸塩を含む酸性にされたアルカリ金属塩溶液の製造方法に関する。負極区画中で、水性アルカリ金属水酸化物及び過酸化水素が生成され、これらの正味の製造に関するモル比MOH:H2O2が約0.1:1から約2:1までに維持される。また、二酸化塩素の同時の製造方法が開示される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本発明は酸素の負極還元による電解槽中の過酸化水素の製造方法に関する。更
に、本発明は二酸化塩素の製造に関する。
【0002】 (背景技術) 過酸化水素のアルカリ性溶液は普通セルロースパルプの漂白及び/又は脱リグ
ニンに使用される。過酸化水素は通常大きいプラントでアントラキノン方法に従
って製造され、パルプ工場に輸送される。アントラキノン方法は非常に有効であ
るが、高い投資を必要とし、しかも小規模の現場製造に適しない。
【0003】 アルカリ性過酸化水素溶液の電解製造が米国特許第5702585号、“酸素の還元
による苛性ソーダ及び過酸化水素の混合物の製造方法”, P. C. Follerら, Jou
rnal of Applied Electrochemistry, 25 (1995), 613-627頁及びC. Oloman,“パ
ルプ及び紙工業に関する電解加工”, The Electrochemical Consultancy 1996
143-152頁に開示されている。しかしながら、これらの文献のいずれもがパルプ
工場で使用し得る一種以上のその他の薬品の製造と組み合わせて種々の比NaOH:H 2 O2を得るのに融通性である方法を開示していない。
【0004】 また、二酸化塩素はパルプ工場で普通に使用される漂白剤である。二酸化塩素
の化学不安定性のために、それは常に現場で製造され、多くの異なる方法、例え
ば、米国特許第5770171号、同第5091166号、同第5091167号及びEP 612686に記載
された方法が商業的に使用される。商業的方法の殆どが酸性反応媒体中の鉱酸、
通常硫酸、及び還元剤、例えば、塩化物イオン、二酸化硫黄、メタノール又は過
酸化水素との塩素酸ナトリウムの反応を伴う。硫酸ナトリウムが通常酸性もしく
は中性の固体塩ケーキとしての、又は酸性残留溶液の形態の副生物として得られ
る。多くの最新のパルプ工場では、硫酸塩副生物は廃棄される必要がある無用の
廃物と考えられるが、蒸解液の補給のために硫酸塩の幾つかに対する需要が依然
としてある。
【0005】 硫酸塩副生物の生成は、WO 93/25470に記載されたように、塩素酸ナトリウム
の一部又は全部を塩素酸で置換することにより減少又は完全に回避し得る。また
、米国特許第5198080号に記載されたように、得られた固体硫酸ナトリウムを電
解により酸性にし、又は米国特許第5487881号に記載されたように、結晶化しな
いで、減少された反応媒体を電解により酸性にすることが可能である。しかしな
がら、これらの方法のいずれもが今までのところ商業化されていなかった。
【0006】 (発明の開示) 本発明の目的は多種の漂白方法、例えば、セルロースパルプの漂白及び/又は
脱リグニン、特にECF(元素塩素を含まない)シーケンス又はTCF(完全に塩素を
含まない)シーケンス、又はメカニカルパルプの増白に使用し得るアルカリ性過
酸化水素溶液を製造するための電解方法を提供することである。
【0007】 本発明の別の目的はパルプ工場で使用し得る一種以上のその他の薬品、特に二
酸化塩素の製造における使用のための酸性にされた塩素酸塩を含む溶液が得られ
るアルカリ性過酸化水素溶液を製造するための電解方法を提供することである。
【0008】 本発明の更に別の目的は二酸化塩素製造からの一種以上の副生物が供給物質と
して使用し得るアルカリ性過酸化水素溶液を製造するための電解方法を提供する
ことである。
【0009】 更に別の目的は得られる硫酸塩副生物の量についての融通性を与える過酸化水
素及び二酸化塩素の製造方法を提供することである。 これらの目的は特許請求の範囲に特定された方法により達成される。
【0010】 一側面によれば、本発明は正極を備えた正極区画及び酸素還元負極を備えた負
極区画を含む電解槽中のアルカリ性過酸化水素溶液及び酸性にされたアルカリ金
属塩溶液の連続製造方法に関する。その方法は (a)塩素酸塩を含むアルカリ金属塩水溶液を正極区画に供給する工程、 (b)正極で前記アルカリ金属塩水溶液を反応させてH+を得、正極区画中で酸性
にされたアルカリ金属塩水溶液を生成する工程、 (c)H+及びアルカリ金属イオンを正極区画から負極区画に移す工程、 (d)酸素又は酸素含有液及び水を負極区画に供給する工程、 (e)負極で前記酸素及び水を反応させて負極区画中で過酸化水素(H2O2)及びア
ルカリ金属水酸化物(MOH)を含むアルカリ性水溶液を生成する工程、 (f)正極区画中で生成された酸性にされたアルカリ金属塩水溶液を回収する工
程、及び (g)負極区画中で生成されたアルカリ性過酸化水素水溶液を回収する工程を含
み、 工程(e)における負極区画中のアルカリ金属水酸化物及び過酸化水素の正味の
製造に関するモル比MOH:H2O2を約0.1:1から約2:1まで、好適には約0.1:1から約1.8 :1まで、好ましくは約0.1:1から約1.7:1まで、最も好ましくは約0.5:1から約1.7
:1までに維持する。Mはアルカリ金属、例えば、ナトリウム、カリウム又はこれ
らの混合物を表し、その中でナトリウムが最も好ましい。
【0011】 本明細書に使用される正極区画及び負極区画という用語はまた正極液及び負極
液のための任意の循環ループを含む。この正極区画及び負極区画はH+イオン及び
アルカリ金属イオンに対し透過性、しかし好ましくは水酸化物イオン及びペルヒ
ドロキシルイオンの如き陰イオンに対し不透過性の少なくとも一つのバリヤー、
例えば、膜又は隔膜により分離されることが好適である。このバリヤーは好まし
くは少なくとも一つのイオン交換膜、最も好ましくは少なくとも一つの陽イオン
交換膜である。通常のポリマーのイオン交換膜が好ましいが、セラミック膜の如
き高イオン伝導膜が有益であり得る。殆どの場合、2区画電解槽が使用されるが
、正極区画と負極区画の間に一つ以上の区画を含む電解槽がまた考えられるかも
しれない。
【0012】 あらゆる酸素還元負極が使用し得るが、それは必要により不活性な耐薬品性ポ
リマー(例えば、PTFE)又は触媒活性材料(例えば、金、亜鉛等)(後者はカー
ボンの部分被覆物として使用されることが好適である)のようなその他の材料が
組み込まれてもよいカーボン、例えば、グラファイト又はカーボンブラックから
つくられることが好ましい。負極液中の酸素の低溶解性のために、三次元電極が
負極として好ましい。三次元電極の一つのグループは大きい多孔度を有する固定
床、例えば、網状床(例えば、網状ガラス質カーボン)、粒状床もしくはフェル
ト(例えば、グラファイトフェルト)床、又は不織繊維(例えば、炭素繊維)の
床を含み、これらは全て市販されている。これらの種類の固定床は細流(trickle
)床負極として設計してもよい。三次元電極の別のグループは微孔質の、必要に
より層状の、ガス拡散電極であり、これらは、例えば、多孔性カーボンからつく
られていてもよい。このようなガス拡散電極が市販されており、例えば、燃料電
池に使用されるものと同様である。
【0013】 正極としては、あらゆる通常の型の電極、例えば、貴金属酸化物、例えば、DS
A O2 TMで被覆されたチタン、又は分極水素正極のようなガス電極が使用し得る
【0014】 工程(a)で正極区画に供給される水溶液は、必要によりまたアルカリ金属硫酸
塩及び/又はその他のアルカリ金属塩を含んでもよい、アルカリ金属塩素酸塩を
含む必要により酸性の溶液である。その溶液は好適には約0.5モル/lから飽和まで 、好ましくは約1モル/lから約12モル/lまでのアルカリ金属塩を含む。酸性度は好ま しくは約0Nから約11Nまで、最も好ましくは約0Nから約9Nまでである。一つ
の好ましい実施態様において、その溶液は二酸化塩素発生装置に直接又は間接に
由来する。例えば、このアルカリ金属溶液は、必要により電解方法により更に酸
性にされてもよい、二酸化塩素発生装置からの減少された酸性反応媒体、又は二
酸化塩素の製造において副生物として得られた中性もしくは酸性のアルカリ金属
硫酸塩であってもよい。別の好ましい実施態様において、好ましくは実質的に中
性のアルカリ金属塩素酸塩の溶液が正極区画に供給される。
【0015】 正極では、溶液中の水が工程(b)で反応させられてH+そしてまた通常酸素を生
じる。下記の反応が起こると考えられる。 H2O→2 H+ + 1/2 O2 + 2 e-
【0016】 電解槽の電圧が工程(c)で陽イオンを負極に向かって移動させる。こうして、
アルカリ金属イオン及びH+の両方が正極区画から負極区画に移動される。しかし
ながら、生成されたH+の全量が移動されず、こうして、好ましくは硫酸塩、塩素
酸塩又はこれらの混合物を含む、酸性にされたアルカリ金属塩生成物溶液を正極
区画中に残す。
【0017】 酸素は、好適にはそれを負極液に少なくとも部分的に溶解するのに充分に高い
圧力、例えば、約100kPaから約2000kPaまでの圧力で、工程(d)で負極液の供給原
料と一緒に負極区画に供給されてもよい。高圧は電流密度を改善するが、一層複
雑な構成のために電解槽のコストをまた増大する。ガス拡散電極が負極として使
用される場合、酸素が好ましくはガスとして、最も好ましくは水蒸気と一緒に、
ガスチャンバーに供給され、そこからそれが負極中に拡散する。酸素の一部は工
程(b)で正極で得られた酸素に由来してもよい。また、還元剤としての過酸化水
素による二酸化塩素の製造時に得られた酸素を使用することが可能である。
【0018】 工程(e)で、水及び酸素が負極で反応させられてペルヒドロキシルイオン及び
水酸化物イオンを生じる。下記の反応が起こると考えられる。 H2O + O2 + 2e-→ HO2 - + OH-
【0019】 正極区画から移動されたH+及びアルカリ金属イオンと一緒に、反応生成物は、
好適には約1重量%から約15重量%まで、好ましくは約2重量%から約10重量%ま
での過酸化水素及び好適には約2重量%から約20重量%まで、好ましくは約4重量
%から約15重量%までのアルカリ金属水酸化物の濃度を有する、過酸化水素及び
アルカリ金属水酸化物を含む生成物水溶液を負極区画中で形成するであろう。ア
ルカリ金属水酸化物及び過酸化水素の正味の製造で得られたモル比MOH:H2O2は正
極区画から移動されたアルカリ金属イオン対H+の比に依存し、これは正極区画中
の相当する比により決定される。正極区画中で得られるアルカリ金属塩溶液の酸
性度をセットすることにより、モル比MOH:H2O2がこうして調節し得る。更に、正
極区画中の滞留時間をセットすることにより、転化率及び得られるアルカリ金属
溶液の酸性度が調節でき、それによりまた負極区画中で生じられるモル比MOH:H2 O2が調節し得る。低モル比、即ち、多量の過酸化水素がその溶液を種々の漂白方
法、例えば、ECFシーケンス及びTCFシーケンス又はメカニカルパルプの増白に適
するようにする。一方で、これは負極区画に移動されるアルカリ金属イオン対H+ の低モル比を必要とし、これが電流効率を低下する。どのアルカリ金属塩が使用
されるのかに若干依存して、約0.05%から約90%まで、最も好ましくは約0.1%
から約80%までの正極区画中のアルカリ金属イオンからH+への転化率で操作する
ことが好ましい。塩素酸ナトリウム溶液について、転化率は好適には約2%から
約80%まで、好ましくは約7%から約60%まで、最も好ましくは約7%から約40%
までである。アルカリ金属水酸化物の製造に関する電流効率(正極区画から負極
区画へと移動されるアルカリ金属イオンに関する電流効率に相当する)は好まし
くは約3%から約85%まで、最も好ましくは20%からほぼ70%までである。
【0020】 工程(f)及び(g)において、正極区画及び負極区画で得られた生成物溶液は単に
回収される。正極区画で得られた酸性にされたアルカリ金属溶液はその後に二酸
化塩素製造のための供給原料として使用でき、一方、負極区画で得られたアルカ
リ性過酸化水素溶液はセルロースパルプを漂白し、かつ/又は脱リグニンするの
に使用し得る。
【0021】 多くの場合、二つ以上の上記の電解槽を直列に連結することが有利であり得る
。次いで正極液のみ(最初の電解槽の工程(f)から次の電解槽の工程(a)に)、負
極液のみ(最初の電解槽の工程(g)から次の電解槽の工程(d)に)、又は正極液及
び負極液の両方を直列にすることが可能である。 本明細書に言及されるアルカリ金属は好適にはナトリウム、カリウム又はこれ
らの混合物、好ましくはナトリウムである。
【0022】 本発明の好ましい実施態様は (i)上記のように工程(a)〜工程(g)を行なうことによりアルカリ性過酸化水素
溶液及び酸性にされたアルカリ金属塩溶液を製造する工程、 (ii)上記工程(f)で正極区画から回収された酸性にされたアルカリ金属塩水溶
液を反応器中の反応媒体に供給する工程、 (iii)反応媒体中の塩素酸イオンを、好ましくは還元剤、最も好ましくは過酸
化水素により還元して二酸化塩素を生じる工程、及び (iv)二酸化塩素を反応器から回収する工程 を含むことを特徴とする反応器中に維持された酸性反応媒体中の塩素酸イオンの
還元による過酸化水素の製造及び同時の二酸化塩素の製造のための連続方法に関
する。
【0023】 この実施態様において、工程(a)におけるアルカリ金属塩溶液は好適には約0.5
モル/lから飽和まで、好ましくは約2モル/lから約12モル/lまで、最も好ましくは約3モル /lから約8モル/lまでの濃度を有する。その溶液がアルカリ金属塩素酸塩である場 合、その酸性度は好ましくは約0Nから約5Nまで、最も好ましくは約0Nから約4
Nまでである。その溶液が硫酸塩及び塩素酸塩の混合物である場合、その酸性度
は好適には約0Nから約11Nまで、好ましくは約0.5Nから約9Nまでである。
【0024】 実質的に中性のアルカリ金属塩素酸塩溶液を工程(a)で正極区画に供給し、そ
れにより工程(f)で回収され、工程(ii)で供給される塩素酸及びアルカリ金属塩
素酸塩の混合物を得ることが特に好ましい。
【0025】 二酸化塩素は、先に記載された米国特許第5770171号、同第5091166号、同第5091
167号及びWO 93/25470に記載された方法を含む、塩素酸イオンが還元剤又は電解
により還元されるあらゆる既知の方法に従って工程(iii)及び(iv)で生成し得る。
これらの好ましい方法は還元剤、好ましくはメタノール、過酸化水素又はこれらの
混合物、及びアルカリ金属塩素酸塩及び/又は塩素酸を酸性反応媒体硫酸に供給す
ることを伴う。好ましくは大気圧以下の圧力に維持された、反応媒体中で、塩素酸
イオンが二酸化塩素に還元され、これがガスとして回収され、一方、アルカリ金属
硫酸塩が副生物、通常固体の酸性又は中性の塩ケーキとして生成される。また、
EP612686に記載されたように、又はその他の還元剤、例えば、塩化物イオン、二
酸化硫黄もしくはエタノール、イソプロパノール、その他のアルコール及びホル
ムアルデヒドのような有機物質を単独で、又は混合して使用することにより、二
酸化塩素を実質的に大気圧の方法で製造することが可能である。工程(ii)で供給
される酸性にされたアルカリ金属塩溶液の酸性度は供給される必要がある硫酸の
量を決定し、それによりまた生成される硫酸塩副生物の量を決定する。こうして
、その方法を適合させて夫々の特別なパルプ工場で必要とされる量の硫酸塩副生
物を製造することが可能である。
【0026】 二酸化塩素発生からの硫酸塩副生物の正味の量はまたアルカリ金属塩素酸塩と
組み合わせて、その溶液を工程(a)で正極区画への供給原料として使用すること
により減少し得る。工程(g)で回収され、工程(ii)で供給される酸性にされたア
ルカリ金属塩溶液はその後にアルカリ金属硫酸塩、硫酸、アルカリ金属塩素酸塩
及び塩素酸を含む混合物であろう。外部源から添加される硫酸の量はその後に工
程(b)における正極区画中の転化率に依存する程度に減少されるであろう。こう
して、この場合にも、硫酸塩副生物の正味の生成を調節し、それを夫々の特別な
パルプ工場の需要に適合させることが可能である。
【0027】 この実施態様の変化において、工程(iii)における二酸化塩素発生からの減少
された反応媒体が、好ましくはアルカリ金属塩の結晶化を実質的に生じないで、
反応器から回収され、工程(a)で正極区画への供給原料として使用される。この
水溶液はその後に好適にはアルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属塩素酸塩を含み、
好適には約0.5Nから約11Nまで、好ましくは約3Nから約9Nまで、最も好まし
くは約3〜約8の酸性度を有するであろう。この硫酸塩濃度は好適には約0.5モル/l から飽和まで、好ましくは約1モル/lから約8モル/lまで、最も好ましくは約1モル/lか ら約6モル/lまでであり、一方、塩素酸塩濃度は好適には約0.5モル/lから飽和まで、 好ましくは約1モル/lから約5モル/lまで、最も好ましくは約1モル/lから約4モル/lまで である。好ましくは、モル比H+:SO4 2-は約0.5から約1.5まで、最も好ましくは約
0.7から約1.3までである。正極区画におけるアルカリ金属イオンからH+への転化
率は好ましくは約0.05%から約20%まで、最も好ましくは約0.1%から約10%ま
でである。酸性にされたアルカリ金属溶液はその後に工程(ii)で供給原料として
使用される。硫酸塩副生物の正味の生成を実質的に回避することが可能である。
全方法は、電解酸性化工程が上記のように行なわれ、こうしてまたアルカリ性過
酸化水素溶液の同時の生成を伴う以外は、先に記載された米国特許第5487881号
に記載された方法と同じ様式で実施し得る。
【0028】 この実施態様の更に別の変化において、工程(iii)からの減少された反応媒体
が上記と同じ様式で同じ好ましい組成で二酸化塩素反応器から回収される。回収
された反応媒体は最初に電解槽中で電解により酸性にされて、またアルカリ金属
水酸化物を生じ、その後に酸性にされた反応媒体が工程(i)に従って電解槽中で
更に酸性にされ、最後に工程(ii)で供給原料として使用される。また、その方法
のこの変化は、減少された反応媒体の酸性化が少なくとも二つの工程、アルカリ
金属水酸化物の同時生成を伴う第一工程、及びアルカリ性過酸化水素溶液の同時
生成を伴う第二工程で行なわれる以外は、米国特許第5487881号に記載されたよ
うに実施し得る。その変化はまた (i)上記の工程(a)〜工程(g)を行なうことによりアルカリ性過酸化水素溶液及
び酸性にされたアルカリ金属塩溶液を製造する工程、 (ii)工程(i)の工程(f)で正極区画から回収された酸性にされたアルカリ金属塩
水溶液を反応器中の反応媒体に供給する工程、 (iii)反応媒体中の塩素酸イオンを還元して二酸化塩素を生じる工程、 (iv)二酸化塩素を反応器から回収する工程、 (v)減少された反応媒体を反応器から回収する工程、 (vi)工程(v)からの減少された反応媒体を電解槽中でアルカリ金属水酸化物の
同時の製造のもとに酸性にする工程、及び (vii)工程(vi)からの酸性にされた反応媒体を工程(i)の工程(a)における供給
原料として使用する工程 を含むことを特徴とする反応器中に維持された酸性反応媒体中の塩素酸イオンの
還元による過酸化水素の製造及び同時の二酸化塩素の製造のための連続方法と記
載し得る。
【0029】 工程(i)と工程(vi)の間でアルカリ金属水酸化物生成を変化させることにより
、純粋なアルカリ金属水酸化物の生成及びアルカリ金属水酸化物対過酸化水素の
比が調節されて夫々個々のパルプ工場における特別な需要を満足し得る。またこ
こで、硫酸塩副生物の正味の生成を実質的に回避することが可能である。
【0030】 (発明を実施するための最良の形態) 幾つかの好ましい実施態様が図面を参照して今詳しく記載される。 図1は循環ループ7を含み、DSATM正極3を備えた正極区画2、及び循環ループ8
を含み、酸素還元ガス拡散負極5を備えた負極区画4を有する2区画電解槽1を示す
。区画2、4は陽イオン交換膜6により分離される。ガス拡散負極5に隣接して、ガ
スチャンバー9がある。別の種類の三次元負極が使用される場合、ガスチャンバ
ー9が通常省かれる。
【0031】 操作において、硫酸ナトリウム及び塩素酸ナトリウムの酸性水溶液21(こうし
てNa+、H+、ClO3 -、SO4 2-及びH2Oを含む)が正極区画2に連続的に供給される。
この溶液21は、例えば、二酸化塩素反応器からの減少された反応媒体であっても
よい。正極3で、H2OがO2及びH+に分けられ、こうして溶液の酸性度を更に増大す
る。電解槽の電圧がNa+及びH+の一部を正極2から、膜6を通って、負極区画4に移
動させる。結果として、正極区画2中で生成され、ループ7中を循環する水溶液、
即ち、正極液は供給原料溶液と同じ成分を含むが、H+の高含量及びNa+の低含量
を有するであろう。この溶液の一部が酸素と一緒に生成物22として回収される。
【0032】 同時に、湿った酸素、即ち、ガス形態のO2及びH2Oが負極区画4に連続的に供給
され、その間、NaOH、H2O2及びH2Oを含む負極液がループ8中を循環している。ガ
ス成分が負極5に拡散し、反応してOH-及びHO2 -を生成し、これらが正極区画2か
ら膜6を通って移動されたNa+及びH+と化合し、過酸化水素及び水酸化ナトリウム
を生成する。負極液の一部が生成物23として回収され、一方、補給水がループ8
に供給される。
【0033】 ガス拡散電極とは別の種類の三次元負極を備えた電解槽の操作は同様の方法で
行なわれるが、酸素がガスチャンバーに供給されるのではなく、負極液に供給さ
れ、その中にそれが少なくとも部分的に溶解される。負極区画の圧力は約100kPa
から約2000kPaまでであることが好ましく、一方、わずかに高い圧力を正極区画
中で有することが好ましい。何となれば、これは膜の漏出がある場合の安全性、
そしてまたおそらく電流効率を改善するからである。
【0034】 操作の一つの様式において、正極区画2中のナトリウム塩溶液は下記の組成を
有する:4.2モル/lの硫酸塩、3.5モル/lの塩素酸塩及び5.2Nの酸性度。触媒を含ま ず、低〜中間表面積のカーボンからつくられたガス拡散負極5を使用し、過剰の
湿った酸素を供給し、約500A/m2の電流密度で操作し、6重量%のNaOHのアルカリ
度で負極液濃度を一定に保って、負極区画4中の正味の製造は約1.6のNaOH:H2O2
モル比及び6重量%の水酸化ナトリウム濃度を有する生成物23であろう。Na+から
H+への転化率は正極液1リットル当り270A分の供給電流で1.6%であり、一方、水
酸化ナトリウム生成に関する電流効率は約65%であろう。
【0035】 操作の別の様式において、硫酸塩を実質的に含まない中性塩素酸ナトリウム溶
液を酸性にして、正極区画2中の溶液は5モル/lの塩素酸塩を含み、0.5Nの酸性度 を有する。触媒を含まず、低〜中間表面積のカーボンからつくられたガス拡散負
極5を使用し、過剰の湿った酸素を供給し、約500A/m2の電流密度で操作し、6重
量%のNaOHのアルカリ度で負極液濃度を一定に保って、負極区画4中の正味の製
造は1.4のNaOH:H2O2モル比及び6重量%の水酸化ナトリウム濃度を有する生成物2
3であろう。Na+からH+への転化率は10%であり、一方、水酸化ナトリウム生成に
関する電流効率は60%であろう。
【0036】 図2は二酸化塩素、過酸化水素及び水酸化ナトリウムの同時製造方法の変化を
示す。先に記載された米国特許第5487881号に記載されたように操作し、Na+、H+ 、ClO3 -及びSO4 2-を含む水性の酸性反応媒体を保持する二酸化塩素反応器10は、
NaClO3、H2O2並びにNa+、H+、ClO3 -及びSO4 2-を含む酸性水溶液22を連続的に供
給される。反応器10中で、ClO3 -がH2O2及びH+と反応させられてClO2及びO2を生
成し、これらがガスとして回収される。反応器10内と実質的に同じ組成を有する
減少された反応媒体20が結晶化しないで回収され、また米国特許第5487881号
に記載されたように操作する電解槽11に供給され、こうして供給原料溶液20と同
じ成分を含むが、高含量のH+及び低含量のNa+を有する酸性にされた溶液21を製
造する。同時に、水酸化ナトリウムが電解槽11中で水及び供給原料溶液20から除
去されたナトリウムイオンから製造される。製造される水酸化ナトリウムの量は
酸性化に関する転化率につれて増大する。操作の好ましい様式において、溶液20
から溶液21への酸性化は陽イオン交換膜で分割された2区画電解槽11の正極区画
中で行なわれ、その間に水酸化ナトリウムが負極区画中で生成される。酸性にさ
れた溶液21は図1に示され、上記のように操作する電解槽1中の正極区画に供給
される。次いで酸性にされた生成物溶液22が二酸化塩素反応器10に循環され、こ
うして酸を外部源から供給する必要をなくし、硫酸塩副生物の正味の生成を回避
する。反応器10から回収されたガスのClO2及びO2は吸収器12に移され、その中で
ClO2が水に吸収され、一方、O2が電解槽1に移され、H2O2及びNaOHの製造に使用
される。二つの電解槽11と1の間で酸性化に関する転化率を変化させることによ
り、水酸化ナトリウム及び過酸化水素の製造が夫々の特別の場合の需要にフィッ
トするように調節し得る。
【0037】 本発明が以下の実施例により更に記載されるが、これらの実施例は本発明の範
囲を限定すると解されるべきではない。特にことわらない場合、全ての部数及び
%は重量部及び重量%を表す。
【0038】 (実施例) 塩素酸及びアルカリ性過酸化水素をTi/DSATM正極(240cm2)、酸素還元グラフ
ァイトフェルト負極(240cm2見掛、104cm2実際)及びナフィオンTM450陽イオ
ン交換膜を備えた2区画実験室電解槽中で同時に製造した。塩素酸ナトリウム及
び塩素酸の水溶液を正極区画に供給し、一方、水酸化ナトリウムの水溶液及び酸
素を負極区画に供給した。正極液出口で、温度は約35-40℃であり、圧力は約240
-500kPaであった。負極液出口で、温度は約40-44℃であり、圧力は約101-450kPa
であった。実用的な理由のために、電解槽を負極液の単一通過で操作し、その間
に電解槽を出る正極液を循環し、正極区画に再度入る前に水酸化ナトリウムで部
分中和した。正極液及び負極液のサンプルを夫々の出口で採取し、過酸化水素生
成に関する電流効率(C.E.)及び膜に関するナトリウム輸送(水酸化ナトリウム
生成に相当する)を分析した。下記の表に、異なる実験に関する定常状態数値が
見られる。
【0039】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 酸性にされたアルカリ金属塩溶液及びアルカリ性過酸化水素溶液
の製造のための電解槽を図示する。
【図2】 二酸化塩素、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ性過酸化水素溶
液の製造方法に関するフローシートを図示する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 スンドストァーム ゴァラン スウェーデン国、エス−862 33 クウィ ッスレビー、セルペンティンウェーゲン 13 (72)発明者 スンドクウィスト ヨハン スウェーデン国、エス−821 50 ボルネ ス、ファルクウェーゲン 3 Fターム(参考) 4K021 AB06 AB15 BA04 BA17 BB01 BC01 DB05 DB06 DB13 DB16 DB18 DB21 DB31 DC11

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極を備えた正極区画及び酸素還元負極を備えた負極区画を
    含む電解槽中のアルカリ性過酸化水素溶液及び酸性にされたアルカリ金属塩溶液
    の連続製造方法であって、その方法が (a)塩素酸塩を含むアルカリ金属塩水溶液を正極区画に供給する工程、 (b)正極で前記アルカリ金属塩水溶液を反応させてH+を得、正極区画中で酸性
    にされたアルカリ金属塩水溶液を生成する工程、 (c)H+及びアルカリ金属イオンを正極区画から負極区画に移す工程、 (d)酸素又は酸素含有液及び水を負極区画に供給する工程、 (e)負極で前記酸素及び水を反応させて負極区画中で過酸化水素(H2O2)及び
    アルカリ金属水酸化物(MOH)を含むアルカリ性水溶液を生成する工程、 (f)正極区画中で生成された酸性にされたアルカリ金属塩水溶液を回収する工
    程、及び (g)負極区画中で生成されたアルカリ性過酸化水素水溶液を回収する工程を含
    み、 工程(e)における負極区画中のアルカリ金属水酸化物及び過酸化水素の正味の
    製造に関するモル比MOH:H2O2を約0.1:1から約2:1までに維持することを特徴とす
    る上記の連続製造方法。
  2. 【請求項2】 工程(e)における負極区画中のアルカリ金属水酸化物及び過
    酸化水素の正味の製造に関するモル比MOH:H2O2を約0.5:1から約1.7:1までに維持
    する請求の範囲第1項記載の方法。
  3. 【請求項3】 工程(a)で正極区画に供給されるアルカリ金属塩溶液がまた
    アルカリ金属硫酸塩を含む請求の範囲第1項〜第2項のいずれか一項に記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 工程(e)における負極区画中のアルカリ金属水酸化物及び過
    酸化水素の正味の製造に関するモル比MOH:H2O2を正極区画中で得られるアルカリ
    金属塩溶液の酸性度をセットすることにより調節する請求の範囲第1項〜第3項
    のいずれか一項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 工程(e)における負極区画中のアルカリ金属水酸化物及び過
    酸化水素の正味の製造に関するモル比MOH:H2O2を正極区画中の滞留時間をセット
    することにより調節する請求の範囲第4項記載の方法。
  6. 【請求項6】 その方法を約0.05%から約90%までの正極区画中のアルカリ
    金属イオンからH+への転化率で操作する請求の範囲第1項〜第5項のいずれか一
    項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 その方法を約3%から約85%までのアルカリ金属水酸化物の
    製造に関する電流効率で操作する請求の範囲第1項〜第6項のいずれか一項に記
    載の方法。
  8. 【請求項8】 正極区画中で得られ、工程(f)で回収された酸性にされたア
    ルカリ金属溶液を二酸化塩素製造のための供給原料として使用する請求の範囲第
    1項〜第7項のいずれか一項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 電解槽中の正極区画及び負極区画を陽イオン交換膜により分
    離する請求の範囲第1項〜第8項のいずれか一項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 (i)請求の範囲第1項〜第9項のいずれか一項に従って工程(a)〜工程(g)を行
    なうことによりアルカリ性過酸化水素溶液及び酸性にされたアルカリ金属塩溶液
    を製造する工程、 (ii)工程(i)の工程(f)で正極区画から回収された酸性にされたアルカリ金属塩
    水溶液を反応器中の反応媒体に供給する工程、 (iii)反応媒体中の塩素酸イオンを還元して二酸化塩素を生じる工程、及び (iv)二酸化塩素を反応器から回収する工程 を含むことを特徴とする反応器中に維持された酸性反応媒体中の塩素酸イオンの
    還元による過酸化水素の製造及び同時の二酸化塩素の製造のための連続方法。
  11. 【請求項11】 工程(iii)における塩素酸イオンの還元を還元剤により行
    なう請求の範囲第10項記載の方法。
  12. 【請求項12】 還元剤が過酸化水素である請求の範囲第11項記載の方法
  13. 【請求項13】 (i)請求の範囲第1項〜第9項のいずれか一項に従って工程(a)〜工程(g)を行
    なうことによりアルカリ性過酸化水素溶液及び酸性にされたアルカリ金属塩溶液
    を製造する工程、 (ii)工程(i)の工程(f)で正極区画から回収された酸性にされたアルカリ金属塩
    水溶液を反応器中の反応媒体に供給する工程、 (iii)反応媒体中の塩素酸イオンを還元して二酸化塩素を生じる工程、 (iv)二酸化塩素を反応器から回収する工程、 (v)減少された反応媒体を反応器から回収する工程、 (vi)工程(v)からの減少された反応媒体を電解槽中でアルカリ金属水酸化物の
    同時の製造のもとに酸性にする工程、及び (vii)工程(vi)からの酸性にされた反応媒体を工程(i)の工程(a)における供給
    原料として使用する工程 を含むことを特徴とする反応器中に維持された酸性反応媒体中の塩素酸イオンの
    還元による過酸化水素の製造及び同時の二酸化塩素の製造のための連続方法。
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