JP2003514946A - 印刷用インク - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本発明は、例えば、ガラスと、セラミックと、カーボネート、ポリ塩化ビニル、アセテート・ブチラート・セルロースなどのプラスチックと、金属などの不浸透性もしくは非多孔性基体上に印刷するインクジェットプリンター用インクに関する。このインクは、樹脂、及び蒸発速度が異なる２種の溶媒を含んで成る。このインクは、熱を必要とせずに急速に乾燥する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、インクジェットプリンター用インクに関する。特に、本発明は、ガ
ラスと、セラミックと、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アセテート・ブチ
ラート・セルロースなどのプラスチックと、金属などの不浸透性または非多孔性
基体上に印刷するインクジェットプリンター用インクに関する。

【０００２】 インクジェット印刷では、１つもしくは複数のインク槽やプリントヘッドから
尖鋭なノズルを通って、インク槽に対して移動する基体上に、黒インクまたはカ
ラーインクの微小液滴が制御下に噴射される。噴射されたインクは、基体上で像
を形成する。高速印刷するには、インクが噴射されると、プリントヘッドにイン
クを補給するために速くインクが流れなければならない。インクが迅速に流れる
ために、インクは低粘性、例えば３０℃で２０ｃＰ、を有さなければならない。
またインクは、インク槽またはノズル部における乾燥化やクラスト形成に対して
復元力を有しなければならない。これら及び他の理由により、通常、インクジェ
ット用インクは、流動性液状ビヒクルまたは溶媒の含有率を高く、例えば約９０
％に調合される。残念ながら、溶媒の含有率が高いインクジェット用インクは、
印刷後、溶媒が蒸発してインクが乾燥するまで触れることができない。ゆえに、
流動性液状ビヒクルまたは溶媒が可能な限り急速に印刷表面から蒸発することが
有益である。例えば紙のような多孔性基体の場合、主に前記液体が基体へ浸透し
、または吸収されることにより、乾燥する。非多孔性または不浸透性の基体の場
合、前記液体または溶媒は、多孔性基体の場合と同程度には吸収されない。分子
拡散によって液状ビヒクルまたは溶媒を吸収できる非多孔性基体もあるが、その
吸収速度は非常に遅いので、実用的でない。これらの問題を克服するために、通
常、メチルエチルケトンまたはエタノールなどの揮発性溶媒をインクジェット用
インクの液状ビヒクルまたは溶媒として用い、インク中の溶媒の蒸発を促進する
ために非多孔性基体上のプリントを加熱ドライヤー中に通す。

【０００３】 ビニル系基体用の印刷インクは、欧州特許第０３１４４０３号に開示されてい
る。前記インクは１０未満の炭素原子を各々有する低級アルカノールと低級ケト
ンの混合物である担体溶媒を含む。メタノール及びメチルエチルケトンを具体例
として挙げている。残念ながら、前記溶媒は引火性が非常に高く、メタノールは
有毒でもある。また前記溶媒はプリントヘッド内で蒸発し易く、インク中の固形
成分のクラストを残し、結果としてプリントヘッドの一部もしくは全てを閉塞す
る。閉塞された、または部分的に閉塞されたプリントヘッドは印刷の質に影響し
、ノズルの閉塞を取り除く間、印刷を中止する必要性が生じることもある。

【０００４】 溶剤型染料(solvent dye)の使用と、揮発性溶媒と不揮発性溶媒との二溶媒混
和性の非水溶性溶媒の使用が欧州特許第０４２４７１４号に開示されている。溶
剤型染料は、揮発性溶媒中では難溶であるが、不揮発性溶媒中ではより可溶であ
る。

【０００５】 不浸透性基体用の他の急速乾燥インクジェット用インクは、紫外線照射により
硬化する不飽和モノマーもしくはオリゴマーを含有する。プリント回路基板用の
このような印刷インクは、米国特許第５，２７０，３６８号に開示されている。
前記組成物は、揮発性溶媒を含むインクから生じるプリント層よりも厚いプリン
ト層を提供する。これは、例えば三色工程印刷のように、数種の色を同じシート
に印刷する場合には、不都合となる。さらに、容認できないほど高い粘性を有す
るインクを生じないモノマーやオリゴマーの配合を見出すことは難しい。紫外線
照射で硬化する物質、及び溶媒、の両方を配合した組成物は、欧州特許第０４０
７０５４号に記載されている。

【０００６】 不浸透性基体用の急速乾燥インクの提供における前記問題点のもう１つの解決
法は、いわゆる「ホットメルト」、「半固形」もしくは「ゾルゲル」組成物を用
いることである。プリンターヘッドは周囲より高い温度に熱されるので、前記組
成物はプリンターヘッド中で液体であるが、基体に到着後冷却されて固化する。
このようなインクは、欧州特許第０３０７９３３号、０３２９０２６号、及び０
４７５７０７号に記載されている。またこれらのインクは、上記の紫外線で硬化
するインクと同様に、通常、溶媒系組成物から生じるものよりも厚いプリント層
を提供する。前記インクは、基体に対する接着性が低いことも多く、続いて印刷
物が暖められると汚れやすくなる。

【０００７】 本発明の目的は、上記記載の問題点を克服するインクジェット用インクを提供
することにある。

【０００８】 本発明では、樹脂、第一溶媒、及び第二溶媒を含んで成るインクジェット用イ
ンクを提供する。ただし第一溶媒は第二溶媒の蒸発速度よりも速い蒸発速度を有
し、かつ２５℃で５重量％超、好ましくは１５重量％超の樹脂を溶解可能であり
、第二溶媒は、この様な可溶性を有しない。

【０００９】 不浸透性もしくは非多孔性基体用の急速乾燥する液体インクジェット用インク
を偶然に見出した。樹脂と溶媒の特定の配合を用いて上記のインクジェット用イ
ンクを見出した。配合には下記（ｉ）、（ｉｉ）及び（ｉｉｉ）が必要である： （ｉ）フィルム形成樹脂； （ｉｉ）前記樹脂の溶解性が高く、蒸発速度が相対的に速い溶媒；及び （ｉｉｉ）前記樹脂の溶解性が低く、蒸発速度が相対的に遅い溶媒。

【００１０】 当該インクジェット用インク中で、前記樹脂は第二溶媒よりも第一溶媒により
可溶であり、第一溶媒は第二溶媒よりも高い揮発性を有する。

【００１１】 前記樹脂は、好ましくは、熱可塑性樹脂である。

【００１２】 好ましくは、前記樹脂は、インクジェット用インク中に上限１２％まで存在す
る。さらに好ましくは、前記樹脂は０．３〜１．０％の範囲で存在する。

【００１３】 「高溶解性な溶媒」とは、２５℃において５重量％超、好ましくは１５重量％
超の樹脂（ｉ）を可溶である溶媒を意味する。「低溶解性な溶媒」とは、同温度
において樹脂（ｉ）が溶媒（ｉｉ）よりも溶媒（ｉｉｉ）に難溶であり、好まし
くは非常に僅かの樹脂のみを溶解しうる溶媒を意味する。

【００１４】 「蒸発速度が相対的に速い」溶媒とは、基準とする酢酸ブチルの蒸発速度を１
００として用い、１５〜４５、好ましくは２０〜３０の蒸発速度を有する溶媒を
意味する。「蒸発速度が相対的に遅い」溶媒とは、蒸発速度が相対的に速い溶媒
よりも少なくとも５単位遅い蒸発速度を有する溶媒を意味する。

【００１５】 当該インクジェット用インクを不浸透性基体上に印刷する場合、このインクは
、その中に存在する溶媒の周知の蒸発速度や沸点から予測されるよりも速く乾燥
する。従って、従来技術における溶媒よりも本質的に低い揮発性を有する溶媒か
ら当該溶媒を選択することができ、それゆえに、目詰まりの原因となるプリント
ヘッドでの蒸発を減少できる。また当該インクは、揮発性がより高い溶媒を含む
インクよりも引火性が低く、使用時において安全性に優れる。本発明のインクを
乾燥するために熱源を使用する必要もない。

【００１６】 前記フィルム形成樹脂は、好ましくは溶媒に可溶な熱可塑性樹脂である。この
フィルム形成樹脂は、例えば、ポリ（メチルメタクリレート）のようなアクリル
樹脂、ビニルアセテートと塩化ビニルとの共重合体のようなビニル樹脂、または
アセテート・ブチラート・セルロースのようなセルロース樹脂でよい。

【００１７】 当該インクは、好ましくは０．１〜１２％、さらに好ましくは０．３〜１．０
％の前記樹脂を含有する。

【００１８】 本発明に有用である、溶媒の特定の組合せは、樹脂の化学的性質によって決め
る。例えば、樹脂がポリアクリレートならば、蒸発速度が相対的に速い溶媒は、
エチルラクテートのような乳酸エステルであり、蒸発速度が相対的に遅い溶媒は
、例えばエチルヘキシルアセテートのような、炭素原子数２〜４個のモノカルボ
ン酸と炭素原子数５〜１０個の脂肪族アルコールとのエステルである。当該イン
ク中の二溶媒の量比は、好ましくは１０：１〜１：１０であり、さらに好ましく
は３：１〜１：３である。当該成物中の溶媒の総量は、好ましくは７０〜９８重
量％であり、さらに好ましくは８５〜９５重量％である。

【００１９】 当該インクは、上記記載の樹脂（ｉ）の他に、印刷基体にインクフィルムの接
着を促すためのフィルム形成樹脂をも含有する。この樹脂は、組成物中に用いる
濃度において、溶媒（ｉｉ）及び溶媒（ｉｉｉ）に可溶でなければならない。そ
の溶解度は、樹脂（ｉ）に関する上記の制限を受けないが、前記二溶媒中の２種
の樹脂の溶解度が異なることは当然あり得る。この樹脂（ｉｖ）は、印刷基体上
に良好に接着する樹脂から選択され、例えばアクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリビ
ニルブチラール樹脂、またはセルロース樹脂でよい。例えばビニル系のシート上
に印刷する場合には、樹脂（ｉｖ）はビニル共重合体でよい。当該組成物中の樹
脂（ｉｖ）の量は０．３〜１０重量％であり、好ましくは１〜４重量％である。

【００２０】 本発明のインクジェット用インクは、さらに着色料を含有する。着色料は、好
ましくは、当業者に周知である市販の分散性顔料(dispersible pigment)であり
、例えば商標名パリオトール（Ｐａｌｉｏｔｏｌ）（ＢＡＳＦ社から入手可能）
、シンカシア（Ｃｉｎｑｕａｓｉａ）（チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社
Ｃｉｂａ Ｓｐｅｃｉａｌｉｔｙ Ｃｈｅｍｉｃａｌｓから入手可能）、ホスタ
パーム（Ｈｏｓｔａｐｅｒｍ）（クラリアント社Ｃａｒｉａｎｔ ＵＫより入手
可能）などである。顔料は、所望するいかなる色でもよく、例えばＰｉｇｍｅｎ
ｔ Ｙｅｌｌｏｗ １３、Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｙｅｌｌｏｗ ８３、Ｐｉｇｍｅｎ
ｔ Ｒｅｄ ９、Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｒｅｄ １８４、Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｂｌｕｅ
１５：３、Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｇｒｅｅｎ ７、Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｖｉｏｌｅｔ
１９、Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｂｌａｃｋ ７である。黒及び三色工程印刷で必要と
される色が特に有用である。顔料を混合して使用してもよい。当該組成物は、主
要な着色料として、インク中の溶媒に可溶な染料を含有しない。インク中の顔料
の総量は１〜１２重量％であり、好ましくは３〜８重量％である。

【００２１】 当業者に知られている他の成分を、特性や効能を改善するためにインク中に含
有してもよい。前記成分は、例えば界面活性剤、脱泡剤、分散剤、熱や光による
劣化を防止するための安定剤、消臭剤、フロー助剤またはスリップ助剤、殺生剤
、識別用トレーサーである。本発明のインクは、紫外線照射により硬化するモノ
マーもしくはオリゴマーを含有する必要はなく、紫外線照射で乾燥する必要もな
い。

【００２２】 本発明のインクは、例えば高速水冷式攪拌機で撹拌するか、または水平ビーズ
ミルで練るなどの既知の方法で製造される。

【００２３】 当該インクは室温で流動性の液体であり、３０℃で５０ｃＰ未満、好ましくは
、３０℃で８〜２０ｃＰの粘性を有する。該インクは、非多孔性基体に対して良
好な接着性を有し、急速に乾燥する。該インクは、例えば、紙もしくは板などの
多孔質基体上にでもインクジェット印刷可能である。

【００２４】 以下の実施例を参照して、本発明を例示的に説明する（含有量を百分率で表示
する）。

【００２５】 実施例１ Heggmanゲージを用い、ニブ(nib)が見えなくなるまで、以下の成分を水冷式攪拌
機ですばやく撹拌した。 エチルヘキシルアセテート ４６．８３％ エチルラクテート ４６．８３％ Elvacite 2021（デュポン社製アクリル樹脂） ０．８４％ UCAR VYHH（ユニオンカーバイト社製ビニル共重合体樹脂） １．５０％ Microlith Blue 4G-K（チバ社製顔料チップ） ４．００％ このインクジェット用インクは、ビニル系基体に対して良好な接着性を呈し、
しかもいかなる熱も必要とせずに乾燥した。 （注：本実施例において、フィルム形成樹脂（ｉ）がElvacite 2021であり；
蒸発速度が相対的に速い溶媒がエチルラクテートであり；蒸発速度が相対的に遅
い溶媒がエチルヘキシルアセテートであり；そして良好な接着性を有するフィル
ム形成樹脂がVYHHである。）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 ＥＰ(ＡＴ，ＢＥ，ＣＨ，ＣＹ， ＤＥ，ＤＫ，ＥＳ，ＦＩ，ＦＲ，ＧＢ，ＧＲ，ＩＥ，Ｉ Ｔ，ＬＵ，ＭＣ，ＮＬ，ＰＴ，ＳＥ)，ＯＡ(ＢＦ，ＢＪ ，ＣＦ，ＣＧ，ＣＩ，ＣＭ，ＧＡ，ＧＮ，ＧＷ，ＭＬ， ＭＲ，ＮＥ，ＳＮ，ＴＤ，ＴＧ)，ＡＰ(ＧＨ，ＧＭ，Ｋ Ｅ，ＬＳ，ＭＷ，ＭＺ，ＳＤ，ＳＬ，ＳＺ，ＴＺ，ＵＧ ，ＺＷ)，ＥＡ(ＡＭ，ＡＺ，ＢＹ，ＫＧ，ＫＺ，ＭＤ， ＲＵ，ＴＪ，ＴＭ)，ＡＥ，ＡＧ，ＡＬ，ＡＭ，ＡＴ， ＡＵ，ＡＺ，ＢＡ，ＢＢ，ＢＧ，ＢＲ，ＢＹ，ＢＺ，Ｃ Ａ，ＣＨ，ＣＮ，ＣＲ，ＣＵ，ＣＺ，ＤＥ，ＤＫ，ＤＭ ，ＤＺ，ＥＥ，ＥＳ，ＦＩ，ＧＢ，ＧＤ，ＧＥ，ＧＨ， ＧＭ，ＨＲ，ＨＵ，ＩＤ，ＩＬ，ＩＮ，ＩＳ，ＪＰ，Ｋ Ｅ，ＫＧ，ＫＰ，ＫＲ，ＫＺ，ＬＣ，ＬＫ，ＬＲ，ＬＳ ，ＬＴ，ＬＵ，ＬＶ，ＭＡ，ＭＤ，ＭＧ，ＭＫ，ＭＮ， ＭＷ，ＭＸ，ＭＺ，ＮＯ，ＮＺ，ＰＬ，ＰＴ，ＲＯ，Ｒ Ｕ，ＳＤ，ＳＥ，ＳＧ，ＳＩ，ＳＫ，ＳＬ，ＴＪ，ＴＭ ，ＴＲ，ＴＴ，ＴＺ，ＵＡ，ＵＧ，ＵＳ，ＵＺ，ＶＮ， ＹＵ，ＺＡ，ＺＷ Ｆターム(参考） 2C056 EA13 FC02 2H086 BA01 BA18 BA19 BA23 BA54 BA55 BA59 BA60 BA61 BA62 4J039 AB02 AD00 AD05 AD07 AD08 AD10 BC20 BE01 BE12 CA07 EA10 EA48 FA01 FA02 FA04 FA06 GA24

Claims (18)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 樹脂、第一溶媒及び第二溶媒を含んで成るインクジェットプ
   リンター用インクであって、 第一溶媒は、第二溶媒の蒸発速度よりも速い蒸発速度を有し、かつ２５℃で５
   重量％超、好ましくは１５重量％超の樹脂を溶解可能であり、 第二溶媒は、２５℃で５重量％超の樹脂を溶解できない、ことを特徴とする、
   インクジェットプリンター用インク。
2. 【請求項２】 第一溶媒が、基準の酢酸ブチルの蒸発速度を１００として、
   １５〜４５、好ましくは２０〜３０の蒸発速度を有する、請求項１に記載のイン
   ク。
3. 【請求項３】 第二溶媒が、第一溶媒の蒸発速度よりも少なくとも５単位遅
   い蒸発速度を有する、請求項１または２に記載のインク。
4. 【請求項４】 前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、好ましくは溶媒に可溶な熱
   可塑性樹脂である、請求項１〜３のいずれかに記載のインク。
5. 【請求項５】 前記樹脂がアクリル樹脂、ビニル樹脂、またはセルロース樹
   脂である、請求項４に記載のインク。
6. 【請求項６】 前記インクが前記樹脂を０．１〜１２％、好ましくは０．３
   〜１．０％含有する、請求項１〜５のいずれかに記載のインク。
7. 【請求項７】 第一溶媒と第二溶媒との量比が１０：１〜１：１０であり、
   好ましくは３：１〜１：３である、請求項１〜６のいずれかに記載のインク。
8. 【請求項８】 第一溶媒及び第二溶媒が前記インク中に合計で７０〜９８重
   量％、さらに好ましくは８５〜９５重量％の量で存在する、請求項１〜７のいず
   れかに記載のインク。
9. 【請求項９】 前記インクがさらにフィルム形成樹脂を含有する、請求項１
   〜８のいずれかに記載のインク。
10. 【請求項１０】 前記フィルム形成樹脂が第一溶媒及び第二溶媒中に可溶で
    ある、請求項９に記載のインク。
11. 【請求項１１】 前記フィルム形成樹脂がアクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリ
    ビニルブチラール樹脂、およびセルロース樹脂の中から選択され、かつ両溶媒中
    で５％超の量で可溶である、請求項９または１０に記載のインク。
12. 【請求項１２】 前記フィルム形成樹脂が０．３〜１０％、好ましくは１〜
    ４％の量で存在する、請求項９〜１１のいずれかに記載のインク。
13. 【請求項１３】 前記インクが分散性顔料を含有する、請求項１〜１２のい
    ずれかに記載のインク。
14. 【請求項１４】 前記分散性顔料が１〜１２重量％、好ましくは３〜８重量
    ％の量で存在する、請求項１３に記載のインク。
15. 【請求項１５】 前記インクが３０℃で５０ｃＰ（センチポアズ）未満、好
    ましくは８〜２０ｃＰの粘性を有する、請求項１〜１４のいずれかに記載のイン
    ク。
16. 【請求項１６】 前記インクが標準圧力下で３５℃より高い引火点を有する
    、請求項１〜１５のいずれかに記載のインク。
17. 【請求項１７】 インクジェットプリンターにおける請求項１〜１６のいず
    れかに記載のインクの使用。
18. 【請求項１８】 インクジェットプリンターを用いる印刷方法であって、請
    求項１〜１６のいずれかに記載のインクを用いること含む方法。