JP2003344286A - 光応答性dna薄膜を用いたセンシング素子 - Google Patents

光応答性dna薄膜を用いたセンシング素子

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JP2003344286A JP2002154388A JP2002154388A JP2003344286A JP 2003344286 A JP2003344286 A JP 2003344286A JP 2002154388 A JP2002154388 A JP 2002154388A JP 2002154388 A JP2002154388 A JP 2002154388A JP 2003344286 A JP2003344286 A JP 2003344286A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光応答性DNA薄膜25をセンシング素子に
使用することにより、気体,液体等の測定対象流体を応
答性良く高感度測定する。 【構成】 蛍光分子を二重螺旋部にインターカレート又
はグルーブに或いは疎水性外周部に取り込んだDNA又
は疎水処理DNAの溶液から成膜される光応答性DNA
薄膜25を、金属薄膜24を介して固体基板22に積層
し、光応答性DNA薄膜25の上方に透光板で閉じられ
た測定空間Vが設ける。全反射角を超えた入射角θで励
起光L1がプリズム21の一面に入射するように、回転
テーブル23の回転量によってプリズム21に対する入
射角θが調整される。ある入射角θで光応答薄膜25に
閉じ込められた励起光L1で励起された光応答薄膜25
から発する蛍光L2の強度は、測定空間Vに送り込まれ
た測定対象流体Sと光応答薄膜25との相互作用により
敏感且つ高速に変化し、蛍光分光光度計33で蛍光強度
が測定され又はスペクトル分析される。高感度蛍光測定
に併せ、励起光の反射強度変化も測定・分析可能であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面プラズモン共鳴励
起蛍光法により気体,液体を高感度,高応答速度で測定
する光応答性DNA薄膜を利用したセンシング素子に関
する。
【0002】
【従来技術及び問題点】NO2ガス等の検出には、有機
又は無機半導体薄膜を用いた電気的方法,多孔質ガラス
の有機化合物を担持させた系で発生する蛍光又は吸収変
化,色素会合体累積膜から発生する蛍光,表面プラズモ
ンの共鳴角変化に応じた反射率変化等を利用した光学的
方法等が採用されている。これらの方法によるとき、p
pm以下からppbオーダの感度で目的物が検出され
る。しかし、数分〜数時間と遅い応答速度のため測定に
時間がかかり、濃度,物性等が短時間で変化する目的物
の検出には適していない。
【0003】応答性は、検出対象の吸着・拡散・脱着を容
易にするため膜厚を可能な限り薄くすることにより改善
される。しかし、薄膜化に応じて感度が低下するので、
感度低下を補う必要がある。そこで、本発明者等は、表
面プラズモン共鳴又は導波モードで増強された光電場に
より光応答性薄膜から発した蛍光を気体,液体等の測定
対象流体に透過させ、蛍光強度又は蛍光スペクトルを測
定するセンシング素子を開発した(特願2001−05
6415号)。この方法では、合成高分子に蛍光色素を
分散させた薄膜を金属薄膜に積層し、金属薄膜との界面
で発生する表面プラズモン共鳴又は導波モードで増強さ
れた光電場による色素の励起を利用して感度を上げてい
る。該センシング素子を使用すると、高速応答性は勿
論、ppbオーダの高感度検出も可能になる。表面プラ
ズモン共鳴又は導波モード励起蛍光法の採用で応答性,
感度が改善されるものの、NO2ガスに応答する高分子
に加わる制約が大きく、蛍光強度に依存する応答性の向
上にも限度がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、先願で提案し
たセンシング素子の感度,応答速度を更に改善すべく案
出されたものであり、二重螺旋部に蛍光分子を取り込ん
だ光応答性DNA薄膜を使用することにより蛍光強度を
増加させ、或いはDNA自体の光励起でDNAのクロモ
フォア間から蛍光分子に効率的にエネルギー移動させる
と共に、薄膜化により応答性を一段と改善したセンシン
グ素子を提供することを目的とする。
【0005】本発明のセンシング素子は、その目的を達
成するため、マッチング媒体を介して励起光入射側表面
にプリズムが接合された光透過性固体基板と、光透過性
固体基板の他面に金属薄膜を介して堆積された光応答性
DNA薄膜と、光応答薄膜の上方に透光板で閉じられ、
測定対象流体Sを流動させ又は収容する測定空間と、全
反射角を超えた入射角で励起光がプリズムの一面に入射
するように光応答性固体基板を搭載し、回転量が調節可
能な回転テーブルとを備え、表面プラズモン共鳴又は導
波モード条件を満足する入射角の入射光を閉じ込めるこ
とにより励起された光応答性DNA薄膜から発する蛍光
が測定空間の測定対象流体を透過して測定系に送られる
ことを特徴とする。
【0006】光源一体型測定セルにセンシング素子を組
み込むこともできる。この場合、光透過性固体基板の一
面に金属薄膜を介して光応答性DNA薄膜を堆積し、他
面に集光レンズを装着する。測定対象流体を流動させ又
は収容する測定空間を光透過性固体基板の光応答性DN
A薄膜側に設け、励起光源を内蔵した透明媒質を光応答
性DNA薄膜の上方に配置している。
【0007】光応答性DNA薄膜は、二重螺旋部に蛍光
分子をインターカレート又はグルーブに取り込んだDN
Aの水溶液又は疎水処理DNAの有機溶液を用い、スピ
ンコート法,溶媒蒸発法,LB法,交互吸着法等で成膜
される。DNAには、天然DNA,合成DNA,合成R
NA,DNA/RNA混合系等がある。ナトリウムイオ
ン(Na+)を長鎖アルキルトリメチルアンモニウムイ
オン又は長鎖ジアルキルジメチルアンモニウムイオンで
置換した疎水処理DNAも使用可能である。疎水処理D
NAでは、長鎖アルキルの外周部に蛍光分子を取り込ん
でも良い。
【0008】蛍光分子としては、本発明に制約を加える
ものではないが一つ又は複数の置換基R(R:アミノ
基,モノアルキルアミノ基,ジアルキルアミノ基,モノ
ヒドロキシアルキルアミノ基,ジヒドロキシアルキルア
ミノ基,ピリジル基,キノリル基,イソキノリル基,ア
クリジニル基,ヒドロキシル基,ピリジニウム基,キノ
リニウム基,イソキノリニウム基,アクリジニウム基,
スルホニウム基)をもつ脂肪族,芳香族,複素環族の有
機化合物又はその分子集合体等、既存の蛍光物質,色素
が使用される。具体的には、ローダミンB,エチジウム
色素,クマリン6,ルブレン誘導体,ペリレン誘導体,
フルオロセイン,アクリフラビン,プロフラビン,アク
リジンオレンジ,フェノサフラニン,ナイルブルー,ク
レシルブルー,メチレンブルー,ピレン誘導体,アント
ラセン誘導体,フルオレノン誘導体,フルオレン誘導
体,チオフェン誘導体,ビチオフェン誘導体,バイラニ
ン,ポルフィリン,アミノアクリジン,ルテニウムトリ
スビピリジン錯体等がある。
【0009】
【作用及び実施の形態】適当な濃度のDNA水溶液及び
色素(蛍光分子)の水溶液を混ぜ合わせると、DNAの
塩基対と色素の比や色素の構造等に依存して、DNAの
二重螺旋部にインターカレート又はグルーブに色素(蛍
光分子)が取り込まれる。色素取込み反応は、DNAと
色素との組合せにもよるが、直ちに或いは数時間程度で
完了する。疎水処理DNAを使用する場合、2-メトキシ
エタノール,エタノール等の有機溶媒中で疎水処理DN
A及び蛍光分子を溶解混合すること又は疎水処理DN
A,色素それぞれを溶解した有機溶媒を混合することに
よって色素取込み反応が進行する。疎水処理DNAで
は、疎水外周部に色素が取り込まれることもある。
【0010】蛍光分子を取り込んだDNA又は疎水処理
DNAは、溶液中に比べて蛍光分子の運動を強く抑制
し、蛍光分子周囲の微視的環境を変える。分子運動の抑
制は蛍光強度の増加をもたらす。微視的環境の変化は、
吸収スペクトルを変化させ、蛍光強度を増加させる原因
となる。DNA水溶液又は疎水処理DNA有機溶液から
スピンコート法,溶媒蒸発法,LB法等で成膜すると、
運動が抑制され周囲の微視的環境が変化した状態のまま
で蛍光分子が薄膜に固定された光応答性DNA薄膜又は
光応答性疎水処理DNA薄膜(以下、適宜「光応答性D
NA薄膜」で総称する)が作製される。
【0011】光応答性DNA薄膜を励起光で照射する
と、蛍光分子が励起され蛍光が発生する。発生した蛍光
は、DNA又は疎水処理DNAに蛍光分子を取り込むこ
とにより分子運動が抑制されること、蛍光分子間やDN
A又は疎水処理DNA自体の発色団と蛍光分子の間に生
じるエネルギー移動等が応答速度,感度の双方を向上さ
せ、結果としてセンシング素子の繰返し耐久性,ガス応
答性,検出限界が改善される。
【0012】光応答性DNA薄膜の励起には、DNA,
疎水処理DNA又は蛍光分子の吸収波長に当る波長の励
起光L1が使用される。励起光L1の照射に際し、酸素
(O2),二酸化窒素(NO2),酸化窒素(NO),笑
気ガス(N2O),二酸化硫黄(SO2),硫化水素(H
2S),一酸化炭素(CO),二酸化炭素(CO2),水
(H2O),アンモニア(NH3),メタノール(CH3
OH),エタノール(C25OH),アミン類,アルデ
ヒド類,各種炭化水素,メルカプタン類,光化学オキシ
ダント,酸化性化合物、還元性化合物,酸化還元酵素,
ハロゲン誘導体麻酔ガス等を含むガス又は液体が光応答
性DNA薄膜に吸収され或いは薄膜中を拡散すると、蛍
光分子が測定対象流体と相互作用し、特定波長での蛍光
強度変化,スペクトル変化又は励起光の反射強度変化と
して測定対象流体が検出される。
【0013】光応答性DNA薄膜は、表面プラズモン共
鳴励起蛍光測定システム(図1)の測定セル20に組み
込まれる。この表面プラズモン共鳴励起蛍光測定システ
ムは、励起光源11で発生した励起光L1を偏光板1
2,半波長板13,偏光板14,チョッパー15,ミラ
ー16,17を経て測定セル20に導く光学系10を備
えている。励起光L1には、連続発振レーザ光,パルス
発振レーザ光又は分光された定常光が使用される。測定
セル20では、励起光L1の入射側にプリズム21を接
触させた固体基板22が回転テーブル23に搭載されて
いる。固体基板22には、光透過性に優れたガラス,石
英,サファイア,透明プラスチック等が使用される。
【0014】測定系30では、測定セル20から発する
蛍光L2を集光レンズ31で集光し、光電子増倍管32
に入力する。光電子増倍管32で電気変換・増幅された
蛍光L2は、蛍光分光光度計33で蛍光強度が測定さ
れ、或いはスペクトル分析される。蛍光L2の一部は、
光電子増倍管32で電気信号に変換・増幅され、デジタ
ルメモリ34に送られ、時間変化が記録される。
【0015】プリズム21の一面に対する励起光L1
入射角θは、全反射条件を超える入射角θにおいて表面
プラズモン共鳴を満足して反射率が最小となるように回
転テーブル23の回転量で調整される。回転テーブル2
3は、コンピュータ37で駆動制御されるステージコン
トローラ36により回転量が制御される。励起光L1
反射光L3はフォトダイオード38によって検出・電気変
換され、チョッパー15に同期した信号がロックイン増
幅器35で増幅され、デジタルメモリ34で記録され
る。
【0016】固体基板22には、Ag,Au,Al等の
金属薄膜24を介して光応答性DNA薄膜25が堆積さ
れている。固体基板22は、プリズム21,金属薄膜2
4,光応答性DNA薄膜25を除く表面部がシリコンシ
ート26で覆われ、プリズム21との間にマッチング媒
体27が充填されている。マッチング媒体27は、プリ
ズム21の屈折率に固体基板22の屈折率を一致させる
ために設けられる層であり、市販の屈折液等が使用され
る。
【0017】固体基板22を保持するホルダー28に
は、ガラス板29で閉じられた測定空間Vにガス,液体
等の測定対象流体Sを導く流入管28in及び測定空間V
から測定対象流体Sを送り出す排出管28outが形成さ
れている。測定対象流体Sには、酸素,二酸化窒素,酸
化窒素,笑気ガス,二酸化硫黄,硫化水素,一酸化炭
素,二酸化炭素,水,アンモニア,メタノール,エタノ
ール,アミン類,アルデヒド類,各種炭化水素,メルカ
プタン類,光化学オキシダント,酸化性化合物,還元性
加工物,酸化還元酵素,ハロゲン誘導体麻酔ガス等を含
む気体又は液体が使用される。また、流入管28in及び
排出管28outを介して循環させることなく、測定空間
Vに測定対象流体Sを静置させた状態での測定も可能で
ある。
【0018】測定セルとしては、光源一体型のセル(図
3)も使用可能である。光源一体型測定セル40は、固
体基板41の一面に金属薄膜42及び光応答性DNA薄
膜43を堆積しており、固体基板41の他面に集光レン
ズ48が配置されている。励起光L1の反射光L3は、フ
ォトダイオード49で検出され、電気信号に変換され
る。金属薄膜42及び光応答性DNA薄膜43がシリコ
ンシート44で取り囲まれ、プラスチック等の透明媒質
45で覆われている。透明媒質45に励起光源46及び
偏光板47が配置されている。固体基板41の内部にあ
る測定空間Vに測定対象流体Sを供給しながら、励起光
源46から励起光L1が光応答薄膜43に向けて出射さ
れる。
【0019】光応答性DNA薄膜25,43が励起光L
1によって励起されると、光応答性DNA薄膜25,4
3から蛍光L2が発せられる。蛍光L2は、測定空間Vに
ある測定対象流体Sを透過した後、測定系30の集光レ
ンズ31で集光され、光電子増倍管32に入力される。
光電子増倍管32で電気変換・増幅された蛍光L2は、蛍
光分光光度計33で蛍光強度が測定され、或いはスペク
トル分析される。光応答性DNA薄膜25,43に測定
対象流体Sが吸着又は拡散されることにより光応答性D
NA薄膜25,43の蛍光強度を高速且つ敏感に変化す
る。また、測定対象流体Sの吸着又は拡散で光応答性D
NA薄膜25,43の屈折率が変わり表面プラズモン共
鳴角度がシフトすることにより、励起光L1の反射光L3
が強度変化することもある。したがって、蛍光L2又は
反射光L3の強度は、測定対象流体Sに応じた変化を取
り込んだ信号として扱われる。
【0020】たとえば、プリズム21を介し金属薄膜2
4,42にP偏光を入射すると、ある角度で金属薄膜2
4,42中にある金属の自由電子のプラズマ振動とP偏
光が結合し、ほとんど反射光L3のない表面プラズモン
共鳴が生じる。また、金属薄膜24,42上に膜厚が約
100nm以下の光応答性DNA薄膜25,43を配置
すると、光応答性DNA薄膜25,43の膜厚に応じて
表面プラズモン共鳴が生じる入射角θが次第に広角度に
移っていく。更に、薄膜25,43の膜厚を光の波長の
半分程度以上にすると、P偏光,S偏光の何れにおいて
も膜厚に応じて厚み方向に一つ又は複数のノードをもつ
定在波ができ、反射光L3がほとんどでなくなる導波モ
ードとなる。
【0021】DNA又は疎水処理DNAに取り込まれた
蛍光性色素は、二重螺旋部にインターカレート又はグル
ーブに、或いは長鎖アルキル基の疎水外周部に捕捉され
る。そのため、励起波長及び蛍光分子を適切に選択する
と、DNA自体の光励起によってDNAのクロモファ間
から蛍光分子に効率の良いエネルギー移動が生じる。蛍
光分子へのエネルギー移動は、センシングの観点から検
出対象流体に対する応答分子の著しい増加に対応する。
更に、表面プラズモン共鳴により反射率が極小になる入
射角では、金属薄膜24,42で電場増強され薄膜2
5,43に閉じこまれた光によって蛍光分子中の色素が
非常に強く励起される。その結果、100nm以下の超
薄膜においても高感度蛍光測定が可能になり、気体,液
体等の測定対象流体の吸着,拡散,脱着が厚膜に比較し
て一層高速化される。
【0022】この点、特願2001−056415号で
提案したセンシング素子では,通常の高分子に色素を無
秩序分散させているので,高分子のクロモファ間又は高
分子と色素間の効率的なエネルギー移動がほとんど期待
できない。そのため、実質的には表面プラズモン共鳴条
件より数倍厚い数百nm程度の薄膜で生じる導波モード
に依らざるを得ない。これに対し、光応答性DNA薄膜
25,43を使用したセンシング素子は、繰返し応答
性,応答速度等が格段に改善される。また、表面プラズ
モン共鳴センサーで一般に実施されている測定対象流体
の吸着,拡散,脱着に伴う屈折率変化による反射光の強
度変化を蛍光測定に併用できることも利点である。
【0023】表面プラズモン共鳴を満足する入射角θで
は、入射光(励起光L1)が光応答性DNA薄膜25,
43に閉じ込められた状態にあるので、光応答性DNA
薄膜25,43に含まれている蛍光性分子が効率よく励
起される。光応答性DNA薄膜25,43の内部に拡散
し、或いは表面に吸着した気体,液体等の測定対象流体
Sと蛍光性分子との相互作用の影響を受け、励起で生じ
る蛍光L2の強度が敏感に変化する。しかも、光応答性
DNA薄膜25,43が薄いため、光応答性DNA薄膜
25,43に対する測定対象流体Sの吸着又は拡散が迅
速に進行し、相互作用の影響が高応答速度で蛍光強度の
変化に反映される。したがって、蛍光L 2の蛍光強度又
はスペクトル分析結果から、或いは反射光強度の変化か
ら測定対象流体Sが高感度且つ高応答速度で検出又は測
定される。
【0024】
【実施例】DNA:81.3mg及びエチジウムブロミ
ド:0.99mgをそれぞれ純水:5mlに溶かした水
溶液を用意した。水溶液を相互に混合した後でエチジウ
ムブロミドの吸収スペクトルを測定したところ、吸収ス
ペクトルが長波長側にシフトしており、図4の蛍光スペ
クトル(a,b)にみられるように蛍光強度も増加して
いた。この測定結果は、エチジウムブロミドがDNAに
取り込まれていることを示す。また、エチジウムブロミ
ド単独系(d)に比較してDNAとの混合系水溶液の蛍
光励起スペクトル(c)がDNAの吸収波長帯域で著し
く増大している結果から、DNAからエチジウムブロミ
ドへのエネルギー移動が読み取れる。疎水処理DNA:
58.7mg及びローダミンB:0.48mgを2-メトキ
シエタノール:10mlに溶解した有機溶液について吸
収スペクトルを測定したところ、疎水処理DNAがない
場合に比較してローダミンBの蛍光強度が増加してお
り、ローダミンBが疎水処理DNAに取り込まれている
ことを確認できた。更に、円偏光二色性スペクトル測定
からも、発光色素のDNA又は疎水処理DNAへの取込
みが確認された。
【0025】固体基板22にスライドガラスを使用し、
固体基板22上に膜厚50nmのAg薄膜(金属薄膜2
4)を真空蒸着法で設けた後、疎水処理DNA,ローダ
ミンBの有機溶液を膜厚50nmの銀蒸着膜にスピンコ
ート法で塗布し、膜厚20nmの光応答性DNA又は疎
水処理DNA薄膜を積層した。プリズムを介し波長54
3.5nmのHe−Neレーザ光を入射させたところ、
入射角55度近傍で表面プラズモン共鳴に起因する反射
率の極小域(ディップ)が検出された。反射率が極小と
なる55度の入射角で蛍光スペクトルを測定した結果、
直接励起に比較して2桁も大きな蛍光強度が得られ(図
5)、表面プラズモン共鳴励起の効果が確認された。。
【0026】固体基板22を測定セル20に組み込み、
0.5ppmの二酸化窒素ガス(NO2)を測定空間Vに
送り込みながら入射角θ=55度で励起光L1をプリズ
ム21の一面に入射させた。励起光L1で誘起された表
面プラズモン励起により、光応答性DNA薄膜25から
蛍光L2が発した。蛍光は1分間で約40%減少し、二
酸化窒素ガス(NO2)の供給を止めて排気すると1分
以内に元の状態に完全復帰した。短時間での完全復帰
は、高速応答性に優れた光応答性DNA薄膜25である
ことを示す。検出精度は約10ppb程度であり、高濃
度側では約100ppmまで同様な応答性で検出でき
た。
【0027】そこで、二酸化窒素ガス(NO2)の給
気,排気を繰り返しながら蛍光L2の強度変化を調査し
た。図6の調査結果にみられるように、二酸化窒素ガス
(NO2)の給気,排気サイクルに高い一致性で蛍光強
度が周期的に変化し、ローダミンBを含む疎水処理DN
A薄膜25の優れた高速応答性,高感度,繰返し耐久性
が確認された。DNA,エチジウムブロミドの水溶液か
ら作製された光応答性DNA薄膜も、同様に高速応答
性,高感度,繰返し耐久性に優れ、二酸化窒素ガスの高
性能測定が可能であった。
【0028】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のセンシ
ング素子では、金属により電場増強された表面プラズモ
ン共鳴で光応答性DNA薄膜を励起し、光応答性DNA
薄膜から発した蛍光を気体,液体等の測定対象流体に透
過させ、蛍光強度又は蛍光スペクトルを高感度測定して
いる。光応答性DNA薄膜の使用により、高速応答性で
測定対象流体を高感度測定できる。薄膜化した光応答性
DNA薄膜の表面プラズモン共鳴励起蛍光が短時間で大
幅に減少するため、短時間で物性や濃度が変化する測定
対象流体に対しても適用でき、オンラインの環境ガスモ
ニタ,呼吸器ガスモニタ,医療用ガスモニタ,光化学オ
キシダントセンサ等、広範な分野で使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従った表面プラズモン共鳴励起蛍光
測定システムの一例
【図2】 測定セルの詳細
【図3】 光源一体型測定セルの側面図(a)及び平面
図(b)
【図4】 エチジウムブロミドとDNAとの混合系及び
エチジウムブロミド単独水溶液の蛍光スペクトル(a,
b)及び蛍光励起スペクトル(c,d)を示すグラフ
【図5】 ローダミンBを含む疎水処理DNA薄膜の表
面プラズモン共鳴励起及び直接励起で発生した蛍光スペ
クトルを示すグラフ
【図6】 ローダミンBを含む疎水処理DNA薄膜の表
面プラズモン励起蛍光が二酸化窒素ガスの給気,排気に
応じて強度変化することを示したグラフ
【符号の説明】
10:光学系 20:測定セル 21:プリズム
22,41:固体基板 23:回転テーブル 24,42:金属薄膜 2
5,43:光応答性DNA薄膜 27:マッチング媒
体 28:ホルダー 29:ガラス板 30:測定系 40:光源一体型測定セル 45:
透明媒質 L1:励起光 L2:蛍光 θ:入射角 S:測定対象流体 V:測定空間

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マッチング媒体を介して励起光入射側表
    面にプリズムが接合された光透過性固体基板と、光透過
    性固体基板の他面に金属薄膜を介して堆積された光応答
    性DNA薄膜と、光応答薄膜の上方に透光板で閉じら
    れ、測定対象流体Sを流動させ又は収容する測定空間
    と、全反射角を超えた入射角で励起光がプリズムの一面
    に入射するように光応答性固体基板を搭載し、回転量が
    調節可能な回転テーブルとを備え、表面プラズモン共鳴
    又は導波モード条件を満足する入射角の入射光を閉じ込
    めることにより励起された光応答性DNA薄膜から発す
    る蛍光が測定空間の測定対象流体を透過して測定系に送
    られることを特徴とする光応答性DNA薄膜を用いたセ
    ンシング素子。
  2. 【請求項2】 一面に金属薄膜を介して光応答性DNA
    薄膜が堆積され、他面に集光レンズが装着された光透過
    性固体基板と、光透過性固体基板の光応答性DNA薄膜
    側に設けられ、測定対象流体を流動させ又は収容する測
    定空間と、光応答性DNA薄膜の上方に配置され、励起
    光源を内蔵した透明媒質とを備え、表面プラズモン共鳴
    又は導波モード条件を満足する入射角の入射光を閉じ込
    めることにより励起された光応答性DNA薄膜から発す
    る蛍光が測定対象流体及び集光レンズを透過して測定系
    に送られることを特徴とする光応答性DNA薄膜を用い
    たセンシング素子。
  3. 【請求項3】 二重螺旋部に蛍光分子をインターカレー
    ト又はグルーブに取り込んだDNAの水溶液から光応答
    性DNA薄膜が成膜されている請求項1又は2記載のセ
    ンシング素子。
  4. 【請求項4】 対カチオンであるナトリウムイオン(N
    +)を長鎖アルキルトリメチルアンモニウムイオン又
    は長鎖ジアルキルジメチルアンモニウムイオンで置換し
    た疎水処理DNAの二重螺旋部に蛍光分子をインターカ
    レート,グルーブ或いは長鎖アルキル外周部に取り込ん
    だ疎水処理DNAの有機溶液から光応答性DNA薄膜が
    成膜されている請求項1又は2記載のセンシング素子。
  5. 【請求項5】 蛍光分子が一つ又は複数の置換基R
    (R:アミノ基,モノアルキルアミノ基,ジアルキルア
    ミノ基,モノヒドロキシアルキルアミノ基,ジヒドロキ
    シアルキルアミノ基,ピリジル基,キノリル基,イソキ
    ノリル基,アクリジニル基,ヒドロキシル基,ピリジニ
    ウム基,キノリニウム基,イソキノリニウム基,アクリ
    ジニウム基又はスルホニウム基)をもつ脂肪族,芳香
    族,複素環族の有機化合物又はその分子集合体である請
    求項3又は4記載のセンシング素子。
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