JP2003342833A - ポリ乳酸系繊維とその製造方法 - Google Patents
ポリ乳酸系繊維とその製造方法Info
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Abstract
ことができる良好な柔軟性を有するポリ乳酸系繊維とそ
の製造方法を提供する。 【解決手段】 平均分子量が5万〜10万、光学純度95.0
〜99.5%のポリ−L−乳酸を溶融紡糸し、2500m/分以
上の速度で引き取り、延伸して得られた繊維であり、単
糸繊度が0.5 〜 1.5dtex、糸条の総繊度が30〜600 dtex
で、糸条の曲げ剛性が下記式(1) を満足するポリ乳酸系
繊維。 B≦ 8.0×10-6×TD (1) ただし、B :糸条の曲げ剛性(g/cm2 /yarn) TD:糸条の総繊度(dtex)
Description
織編物にしたときにソフトで柔軟な風合いを得ることが
できるポリ乳酸系繊維とその製造方法に関するものであ
る。
防止すために、生分解性(微生物分解性又は自然分解
性)の素材を用いることが注目されており、その中で脂
肪族ポリエステルからなる生分解性繊維が注目されてい
る。生分解性繊維は、生ゴミ水切りネットやコンポスト
用バッグのような生活資材、紙おむつや生理用品のよう
な衛生材料等の分野においての使用が検討され、実用化
されている。
高まっており、その可能性が種々検討されているが、脂
肪族ポリエステルからなる繊維は製糸上の制約が多く、
風合いを制御し難いため、衣料用途として拡大し難いの
が現状である。また、原料ポリマーのコストが高く、工
業的に安価に製造することが困難なものが多い。
は、比較的安価にポリマーが得られ、実用的な強度と耐
熱性の成型物を製造することが可能な生分解性樹脂であ
り、種々の成型品の実例があるとともに、繊維化の提案
も多数されている(例えば特開平6-264344号公報等参
照)。しかし、ポリ乳酸からなる繊維も他の脂肪族ポリ
エステルからなる繊維と同様に、ナイロン6やポリエチ
レンテレフタレートのような汎用の繊維素材とは風合い
が異なり、衣料用素材として求められるソフト感を得る
ことが難しかった。
を解決し、生分解性を有しながら、衣料用途にも供する
ことができるソフトで柔軟な風合いを有するポリ乳酸系
繊維とその製造方法を提供することを技術的な課題とす
るものである。
解決するために、次の構成を有するものである。 (イ)平均分子量が5万〜10万、光学純度95.0〜99.5%
のポリ−L−乳酸を溶融紡糸し、2500m/分以上の速度
で引き取り、延伸して得られた繊維であり、単糸繊度が
0.5 〜 1.5dtex、糸条の総繊度が30〜600 dtexで、糸条
の曲げ剛性が下記式(1) を満足することを特徴とするポ
リ乳酸系繊維。 B≦ 8.0×10-6×TD (1) ただし、B :糸条の曲げ剛性(g/cm2 /yarn) TD:糸条の総繊度(dtex) (ロ)平均分子量が5万〜10万、光学純度95.0〜99.5%
のポリ−L−乳酸を紡糸口金より溶融紡糸し、口金面か
ら20〜40cmの位置の雰囲気温度を70〜90℃の範囲とした
雰囲気中を通過させた後、2500m/分以上の速度で引き
取り、延伸することを特徴とするポリ乳酸系繊維の製造
方法。
する。本発明のポリ乳酸系繊維を形成するポリ乳酸は、
L−乳酸とD−乳酸の光学異性体の共重合体を主成分と
し、このうち、L−乳酸の光学純度が95.0〜99.5%、好
ましくは97.5〜99.0%であることが必要である。このL
体とD体の比率は、耐熱性や生分解性に影響する要因で
あり、L体の純度がこの範囲より低いと結晶性が低下
し、融点が低下して耐熱性の劣った繊維となると同時に
生分解速度が高くなる。また、L体の純度がこの範囲よ
り高いと、結晶化が高いため分解速度が低く、生分解性
に劣った繊維となる。
万、好ましくは6万〜9万の範囲にあることが必要であ
る。平均分子量がこの範囲より低いと、実用に供する強
度が発現せず、平均分子量がこの範囲より高いと、生分
解性が低下するので好ましくない。
げ剛性が低く、糸条の総繊度と曲げ強度との関係が前記
式(1) 、好ましくは下記(2) 式を満足することである。 B≦6.0 ×10-6×TD (2) 曲げ強度が前記式(1) を満足することにより、織編物に
したときにソフトで柔軟な風合いを得ることができ、衣
料用素材として汎用的に使用することが可能となる。曲
げ剛性が前記式(1) の値を超えると、織編物にしたとき
の風合いが硬く、限定した用途にしか使用できないもの
となる。
1.5dtex、好ましくは0.7 〜1.dtex、糸条の総繊度が30
〜600 dtex、好ましくは30〜200 dtexであることが必要
である。単糸繊度がこの範囲にあることにより、実用的
な強度を保持しつつ、曲げ方向の柔らかさを付与するこ
とが可能となり、前記式(1) を満足する曲げ剛性を得る
ことが可能となる。単糸繊度が0.5dtex より小さいと、
織編物にする際の加工時に加わる負荷に耐えるだけの強
度を保持することができず、また、単糸間の均整度を保
つことが困難となる。また、単糸繊度が1.5dtex より大
きいと、曲げ方向の剛性を低くすることができず、本発
明の重要用件である前記式(1) を満足することができな
くなる。また、糸条の総繊度が30dtexより小さいと、糸
条全体の強度を保持することが困難となり、また、総繊
度が600 dtexより大きいと、単糸繊度を制御しても織編
物にしたときのソフト感を得難くなる。
について説明する。本発明で使用されるポリ乳酸は、L
−乳酸とD−乳酸の光学異性体の共重合体を主成分と
し、L−乳酸の光学純度が95.0〜99.5%であることが必
要である。L体の純度がこの範囲より低いと、耐熱性の
劣った繊維しか得られず、また、L体の純度がこの範囲
より高いと、高速製糸性に劣り、本発明で採用する製造
方法には適さない。
時に5万〜10万の範囲にあることが必要である。平均分
子量がこの範囲より低いと、十分な強度や弾性率の繊維
を得ることができず、平均分子量がこの範囲より高い
と、高速で紡糸を行う際、糸切れが起こりやすい。な
お、本発明においては、各成分それぞれの基本特性を損
なわない範囲内で、少量の無機物や他の熱可塑性生分解
性成分等を添加することができる。
融押出機から紡出することによって目的とする繊維を得
ることができるが、紡出した後、冷却固化するまでの糸
条近傍の雰囲気温度を一定温度範囲に保つことが重要で
あり、具体的には、紡糸口金面から20〜40cmの位置の雰
囲気温度を70〜90℃の範囲とすることが必要である。
レフタレートのような汎用の合成繊維素材と比較して融
点と固化温度の差が小さいため、一般的な溶融紡糸方法
では、紡出されると急激に冷却固化される。そのため、
繊維の表層付近が断面の中心付近と比べて分子配向が高
くなりやすいスキンコア構造を形成しやすい。したがっ
て、繊維軸方向の弾性率は高くないにもかかわらず、曲
げ方向の剛性が高くなるという特性を有する繊維とな
り、この特性が衣料用素材としては不向きなものとなる
のである。
向差を低減し、曲げ方向の剛性を低くするべく鋭意検討
を重ねた結果、紡糸中の糸条の温度を固化温度よりやや
高い状態で保持することにより、目的の効果が得られる
ことを見出し、前記した雰囲気温度の制御を行う製法に
到達したものである。本発明で使用する光学純度が95.0
〜99.5%ポリ−L−乳酸の場合、固化温度は60〜70℃付
近にあるため、紡糸中の糸条近傍の雰囲気温度を固化温
度よりやや高い70〜90℃に保つことにより、繊維の表層
付近と中心付近との配向差を緩和することができるので
ある。
の表層付近と中心付近との配向差を緩和することができ
ず、曲げ剛性の低い繊維を得ることができず、また、雰
囲気温度が90℃より高いと、紡糸中の細化挙動が不安定
になり、糸斑が大きい繊維となる。
外周部から5mmの距離における温度をいう。雰囲気温度
を制御する方法としては、温風吹付装置を用いて、風温
を制御した温風を糸条に吹付けるか、あるいはヒータ型
加熱筒により温度制御した雰囲気中に繊維を通過させる
方法等があり、前記した温度制御が可能な方法であれば
特に限定されるものではない。
上、好ましくは2500〜4000 m/分であることが必要であ
る。 2500m/分以上の速度で引き取った後に延伸を施す
ことにより、本発明で必要とする単糸繊度の糸条を均整
度よく巻き取り、かつ、目的とする柔軟な構造の繊維を
得ることが可能となる。引取速度が2500m /分未満にな
ると、単糸毎の繊度のばらつきが大きくなり、均整度の
よい繊維を得ることができず、また、引き取った時点で
の残留伸度が高いため、延伸時に配向結晶化を伴いなが
ら変形率の高い延伸を施す必要があるため、これによっ
て得られる繊維は剛性が高く、本発明の目的とする柔軟
な繊維を得ることが困難となるため、好ましくない。ま
た、引取速度が過剰に高いと、繊維の残留伸度が低くて
実用的な繊維が得られず、極端な場合は過剰な張力が紡
糸中に加わるため切断を引き起こし、繊維を得ることが
できなくなる。したがって、引取速度は 6000m/分以下
とすることが好ましい。
き、引き取った繊維を一旦捲取機で巻き取った後、延伸
機に供給するか、あるいは、引き取った繊維を巻き取ら
ずに引き続き熱延伸ローラを介して延伸した後に捲取機
で巻き取る紡糸直接延伸法を採用することもできる。
強度(3.0cN/dtex以上)と伸度(25〜40%)を有し、か
つ、前記式(1) を満足する曲げ方向の柔軟性を有する、
自然環境下で分解する生分解性繊維となる。
る。なお、実施例における諸物性の測定法と評価法は、
次のとおりである。 (a)曲げ剛性 カトーテック社製純曲げ試験機KES−FB2を用いて
測定した。 (b)引張強伸度特性 JIS L 1013 に準じて測定した。 (c)糸斑( U%) ウースター糸斑測定装置を用いて測定し、2.0 %以下を
合格とした。 (d)沸水収縮率 沸騰水中に15分間浸漬した後、自然乾燥し、1/30
(g/dtex) の荷重を掛けて、その前後の長さ変化の割合
を求めた。 (e)平均分子量 試料のクロロホルム0.4質量%溶液のGPC分析によ
る分散の数平均値とした。 (f)生分解性 試料を土壌中に6カ月間埋設した後、取り出し、引張強
度を測定して初期引張強度に対する強度保持率で評価し
た。
エクストルーダー型溶融紡糸機に供給し、紡糸温度 210
℃で紡糸口金より溶融紡出し、口金面より20cmの位置に
ある長さ20cmの吹付装置より温風を吹き付け、吹付装置
の入口と出口の雰囲気温度が表1、2の値になるように
制御し、糸条を通過させた後、冷却固化し、油剤付与装
置で集束と同時に油剤を付与し、表面速度を表1に示す
速度に設定した引取りローラ及び捲取機により繊維を巻
き取った。引き続き、巻き取った繊維を延伸機に供給
し、表面温度が90℃の第1ローラと表面温度が 125℃の
第2ローラの間で延伸を施し、巻き取った。得られたポ
リ乳酸繊維の特性値を表1、表2に示す。
得られたポリ乳酸繊維は、いずれも曲げ剛性が低くて柔
軟性があり、衣料用途にも十分供し得る値を有する繊維
であった。
較例1は、繊維の単糸繊度が小さいため、製糸時に糸切
れが多発して採取できず、比較例2、3は繊維の単糸繊
度が大きいため、曲げ剛性が高かった。比較例4は引取
速度が遅いため、繊維の曲げ剛性が高くなった。比較例
5は雰囲気温度が低いため、繊維の曲げ剛性が高くな
り、比較例6は雰囲気温度が高いため、繊維の糸斑が大
きかった。
を使用し、実施例1と同様の製造法で56dtex/48fのポリ
乳酸繊維を得た。得られたポリ乳酸繊維の特性値と生分
解性を表3、4に示す。
得られたポリ乳酸繊維は、いずれも衣料用途に適した柔
軟性と強度を有し、かつ、良好な生分解性を有してい
た。
いため、繊維の耐熱性が劣り、沸水中で融着してしまっ
た。また、比較例8はL体の比率が高いため、繊維の生
分解性が劣り、強度の低下が少なかった。比較例9は平
均分子量が小さいため、強度が低く、比較例10は平均
分子量が高いため、生分解性が不十分であった。
ができる柔軟性と強度を有し、かつ、安価で生分解性を
有するポリ乳酸系繊維が提供される。
して使用できる他、水産資材、農園芸資材、生活資材、
衛生材料、その他一般産業資材用としても好適であり、
使用後は微生物が存在する環境下に放置しておけば一定
期間後には完全に分解するため、この繊維を使用すれば
特別な廃棄物処理を必要とすることなく、廃棄物処理に
よる公害を防止することが可能となる。
Claims (2)
- 【請求項1】 平均分子量が5万〜10万、光学純度95.0
〜99.5%のポリ−L−乳酸を溶融紡糸し、2500m/分以
上の速度で引き取り、延伸して得られた繊維であり、単
糸繊度が0.5 〜 1.5dtex、糸条の総繊度が30〜600 dtex
で、糸条の曲げ剛性が下記式(1) を満足することを特徴
とするポリ乳酸系繊維。 B≦ 8.0×10-6×TD (1) ただし、B :糸条の曲げ剛性(g/cm2 /yarn) TD:糸条の総繊度(dtex) - 【請求項2】 平均分子量が5万〜10万、光学純度95.0
〜99.5%のポリ−L−乳酸を紡糸口金より溶融紡糸し、
口金面から20〜40cmの位置の雰囲気温度を70〜90℃の範
囲とした雰囲気中を通過させた後、2500m/分以上の速
度で引き取り、延伸することを特徴とするポリ乳酸系繊
維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002152389A JP4033714B2 (ja) | 2002-05-27 | 2002-05-27 | ポリ乳酸系繊維 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002152389A JP4033714B2 (ja) | 2002-05-27 | 2002-05-27 | ポリ乳酸系繊維 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003342833A true JP2003342833A (ja) | 2003-12-03 |
JP4033714B2 JP4033714B2 (ja) | 2008-01-16 |
Family
ID=29769731
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002152389A Expired - Lifetime JP4033714B2 (ja) | 2002-05-27 | 2002-05-27 | ポリ乳酸系繊維 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4033714B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010084286A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Unitika Trading Co Ltd | ポリ乳酸系モノフィラメント糸及び織物 |
-
2002
- 2002-05-27 JP JP2002152389A patent/JP4033714B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010084286A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Unitika Trading Co Ltd | ポリ乳酸系モノフィラメント糸及び織物 |
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JP4033714B2 (ja) | 2008-01-16 |
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