JP2003342607A - ニッケル粉末分散体およびその調製方法並びにそれを用いた導電ペーストの調製方法 - Google Patents

ニッケル粉末分散体およびその調製方法並びにそれを用いた導電ペーストの調製方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ペースト形成用分散剤を使用して導電ペース
トを形成した際には優れた分散性を示し、結果として積
層セラミックコンデンサを作成した際に、電極表面の凹
凸によるショートやデラミネーションを防止する。 【解決手段】 平均粒径1μm以下の超微粉ニッケル粉
末と水溶媒からなる水分散体に、有機溶媒を添加し、こ
の有機溶媒によって水溶媒を少なくとも部分的に置換
し、次いで極性溶媒を添加してニッケル粉末を処理す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば積層セラミ
ックコンデンサの内部電極の形成に用いられる導電ペー
ストに用いて好適な超微粉ニッケル粉末分散体に関す
る。また、本発明は、そのような超微粉ニッケル粉末分
散体の調製方法および分散性に優れた導電ペーストの調
製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子材料用導電ペースト、特に積
層セラミックコンデンサの内部電極形成用導電ペースト
として、銀、パラジウム、白金、金等の貴金属粉末、あ
るいはニッケル、コバルト、鉄、モリブデン、タングス
テン等の卑金属粉末が用いられている。一般に、積層セ
ラミックコンデンサは、誘電体セラミック層と、内部電
極として使用される金属層とを交互に配列し、両外側誘
電体セラミック層の両端面に、内部電極の金属層に接続
される外部電極を形成した構成となっている。ここで誘
電体を構成する材料としては、チタン酸バリウム、チタ
ン酸ストロンチウム、酸化イットリウム等の誘電率の高
い材料を主成分とするものが用いられている。一方、内
部電極を構成する金属としては、前述した貴金属粉末あ
るいは卑金属粉末が用いられるが、最近はより安価な電
子材料が要求されているため、後者の卑金属粉末が有用
視され、特にニッケル粉末膜を誘電体セラミック層に形
成して電極とした積層セラミックコンデンサの開発が盛
んに行われている。
【0003】ところで、ニッケル粉末塗膜を電極とした
積層セラミックコンデンサは、一般に次のような方法で
製造されている。すなわち、チタン酸バリウム等の誘電
体粉末を有機バインダーと混合し懸濁させ、これをドク
ターブレード法によりシート状に成形して誘電体グリー
ンシートを作成する。一方、内部電極用のニッケル粉末
を有機溶剤、可塑剤、有機バインダー等の有機化合物と
混合・分散してニッケル粉末ペーストを形成し、これを
前記グリーンシート上にスクリーン印刷法で印刷する。
次いで、乾燥、積層および圧着し、そして加熱処理にて
有機成分を除去した後、1300℃前後またはそれ以上
の温度で焼成し、この後、誘電体セラミック層の両端面
に外部電極を焼き付けて積層セラミックコンデンサを得
る。
【0004】上記層セラミックコンデンサは、携帯電
話、パソコン等電子機器に広く使われており、近年これ
ら電子機器の軽量化、小型化、また高機能化が急速に進
んでいる。これに伴い、積層セラミックコンデンサの小
型化かつ大容量化が要求され、このためには積層数を数
百層と多くする必要があり、必然的に電極一層の厚さを
薄くし、低抵抗化していかなければならない。このとき
の一層の厚みは1〜2μmであり、今後さらなる薄層化
が要求される。
【0005】上記のような積層セラミックコンデンサの
製造方法において、ニッケル粉末の電極を作成する際ペ
ースト形成用分散剤と混合・分散させるが、このとき粗
いニッケル粉末粒子が存在したり、あるいは混合・分散
の際ニッケル粒子が凝集し、1〜2μmの一層の厚みよ
りも粒径の大きい二次ニッケル粉末粒子が存在すると、
電極層表面に凹凸が生じ、最終的に積層セラミックコン
デンサにしたときショートの原因となり、製品としては
使用できなくなる。またニッケル粉末ペーストから有機
成分を蒸発させて除去する工程や、その後の焼結工程の
際に、金属粉末が膨張・収縮することによって体積変化
が生じる。一方、誘電体自身にも焼結によって同様に体
積変化が生じる。すなわち、誘電体とニッケル粉末とい
う異なった物質を同時に焼結するため、焼結過程でのそ
れぞれの物質が異なる温度で膨張・収縮の体積変化を生
じるため、積層膜にクラックまたは剥離等のいわゆるデ
ラミネーションと云われる層状構造の破壊が起きるとい
う問題を抱えていた。このデラミネーションの現象は、
前記したような粗粒のニッケル粉末粒子あるいは過大に
凝集したニッケル粉末粒子が存在すると顕著になる。
【0006】上記のようなデラミネーションの問題を解
決する手段として、従来、種々の方法が提案されてい
る。例えば、特開平8−246001号公報では、塩化
ニッケル蒸気の気相水素還元方法によって製造された、
平均粒径が0.1〜1.0μmで、かつタップ密度が特
定の式で表される条件を満足するニッケル超微粉を積層
セラミックコンデンサの電極に使用することにより、デ
ラミネーションが少なくなることが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術は、あ
る程度デラミネーションを防止する効果はあるものの、
ニッケル粉末をペースト形成用分散剤と混合・分散した
際の分散性は必ずしも十分ではなく、ニッケル粉末同士
が凝集し、粗粉粒子が増加することにより、内部電極の
薄層化が困難となり、さらに、電極表面に凹凸が生じる
ことによりショートの原因となったり、また、結果とし
てデラミネーションの原因となったりしていた。このよ
うにニッケル粉末の導電ペーストを形成する際のニッケ
ル粉末粒子のペースト形成用分散剤に対する分散性につ
いては、なお改善の余地が残されている。
【0008】また、ニッケル粉末を直接ペースト形成用
分散剤に加えずに、ニッケル粉末粒子を水にあらかじめ
分散させた状態のニッケル粉末分散体として提供するこ
とも考慮しうるが、ニッケル粉末ペースト形成時のニッ
ケル粉末の分散程度は満足しうるものではない。
【0009】本発明は、ペースト形成用分散剤を使用し
て導電ペーストを形成した際には優れた分散性を示し、
結果として積層セラミックコンデンサを作成した際に、
電極表面の凹凸によるショートやデラミネーションを防
止することを可能とするニッケル粉末体を提供すること
を課題としている。また、本発明は、ニッケル粉末が高
分散した導電ペーストの調製方法を提供することも課題
としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
達成するために鋭意研究を重ねた結果、超微粉ニッケル
粉末水分散体を有機溶媒で置換し、さらに極性有機溶媒
を添加して処理することにより得られたニッケル粉末分
散体が、導電ペースト形成用分散剤に添加した際に極め
て高いニッケル粉末の分散性を示し、導電ペースト用
途、特に積層セラミックコンデンサ用導電ペースト用と
して好適であることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0011】すなわち、本発明のニッケル粉末分散体
は、平均粒径1μm以下の超微粉ニッケル粉末と水溶媒
からなる水分散体に、有機溶媒を添加し、この有機溶媒
によって上記水溶媒を少なくとも部分的に置換し、次い
で極性溶媒を添加してニッケル粉末が処理されているこ
とを特徴としている。なお、ニッケル粉末分散体には、
界面活性剤をさらに添加すると好適であり、ニッケル粉
末水分散体が予め炭酸水溶液で処理されたものであると
さらに好適である。
【0012】また、本発明のニッケル粉末分散体の調製
方法は、塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触反応さ
せる気相反応により、または熱分解性のニッケル化合物
の溶液を噴霧して熱分解することにより平均粒径1μm
以下の超微粉ニッケル粉末を生成し、該ニッケル粉末を
水洗し、純水を添加して、水溶媒濃度が1重量%以上の
ニッケル水分散体を生成し、次いで炭酸ガスを該ニッケ
ル水分散体に溶存させ、その後極性有機溶媒を添加して
ニッケル粉末を洗浄し、界面活性剤の存在下に有機溶媒
を添加して水溶媒を少なくとも部分的に置換して有機溶
媒濃度が5〜200重量%であるニッケル粉末分散体を
生成することを特徴としている。
【0013】また、本発明の導電ペーストの調製方法
は、上記のニッケル粉末分散体に導電ペースト形成用有
機分散剤を添加・混練することを特徴とするものであ
る。
【0014】本発明において「分散性に優れる」とは、
超微粉ニッケル粉末粒子の二次粒子への凝集の程度が少
なく、レーザー光散乱回折法粒度測定機(Coulte
rLS230:コールター社製)を用いて溶媒に懸濁さ
せたときの積算粒度分布を測定した場合、平均粒径(D
50)および粗粉側粒径(例えばD90)がより小さい
ことを意味する。さらに、導電ペーストからニッケル粉
末の薄膜を形成させた場合、このときの膜密度がより大
きいことを意味する。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に従うニッケル超
微粉の水分散体並びに導電ペーストの調製のプロセス例
を示すフローシートである。以下、このフローシートの
工程順に本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0016】1.ニッケル粉末 本発明で用いられるニッケル粉末の平均粒径は1μm以
下の超微粉である。平均粒径が1μm以下であれば、導
電ペースト用、あるいは積層セラミックコンデンサ用と
して支障のない限り平均粒径に特に制限はない。ただ
し、近年の電子製品の軽量小型化に伴い、その部品であ
る積層セラミックコンデンサも小型化が要求されるの
で、その内部電極に使用されるニッケル粉末の粒径もよ
り小さいものが要求される。平均粒径があまりにも小さ
く、比表面積が大きくなると、導電ペーストあるいは積
層セラミックコンデンサを作成する際、粉末粒子同士の
凝集が起きたり、また焼結する際の揮発成分が多くなる
などの不具合が生じ易くなる。このような観点から、本
発明で用いられるニッケル粉末の平均粒径は、好ましく
は0.01〜1μm、より好ましくは0.1〜0.6μ
mの範囲が良く、0.15〜0.4μmであればさらに
好適である。
【0017】また、ニッケル粉末のBETによる比表面
積は1〜20m/gのものが好ましい。さらに、ニッ
ケル粉末の粒子形状は、焼結特性および分散性を向上さ
せるために球状であることが望ましい。
【0018】本発明で用いられるニッケル粉末は、気相
法や液相法など公知の方法により製造することができ
る。特に、塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触させ
ることによりニッケル粉末を生成させる気相還元法、あ
るいは熱分解性のニッケル化合物の溶液を噴霧して熱分
解する噴霧熱分解法が好ましい。このような方法によれ
ば、生成するニッケル粉末の粒子径を容易に制御するこ
とができ、さらに球状の粒子が効率よく製造することが
できる。
【0019】気相還元法においては、気化させた塩化ニ
ッケルのガスと水素等の還元性ガスとを反応させる。こ
の場合、固体の塩化ニッケルを加熱し蒸発させて塩化ニ
ッケルガスを生成してもよい。ただし、塩化ニッケルの
酸化防止や吸湿防止、およびネルギー効率を考慮する
と、金属ニッケルに塩素ガスを接触させて塩化ニッケル
ガスを連続的に発生させ、この塩化ニッケルガスを還元
工程に直接供給し、次いで還元性ガスと接触させ塩化ニ
ッケルガスを連続的に還元してニッケル粉末を製造する
方法が有利である。
【0020】気相還元反応によるニッケル粉末の製造過
程では、塩化ニッケルガスと還元性ガスとが接触した瞬
間にニッケル原子が生成し、ニッケル原子同士が衝突・
凝集することによって超微粒子が生成し、成長してゆ
く。そして、還元工程での塩化ニッケルガスの分圧や温
度等の条件によって、生成されるニッケル粉末の粒径が
決まる。上記のようなニッケル粉末の製造方法によれ
ば、塩素ガスの供給量に応じた量の塩化ニッケルガスが
発生するから、塩素ガスの供給量を制御することで還元
工程へ供給する塩化ニッケルガスの量を調整することが
でき、これによって生成するニッケル粉末の粒径を制御
することができる。さらに、金属塩化物ガスは、塩素ガ
スと金属との反応で発生するから、固体金属塩化物の加
熱蒸発により金属塩化物ガスを発生させる方法と異な
り、キャリアガスの使用を少なくすることができるばか
りでなく、製造条件によっては使用しないことも可能で
ある。したがって、気相還元反応の方が、キャリアガス
の使用量低減とそれに伴う加熱エネルギーの低減によ
り、製造コストの低減を図ることができる。
【0021】また、塩化工程で発生した塩化ニッケルガ
スに不活性ガスを混合することにより、還元工程におけ
る塩化ニッケルガスの分圧を制御することができる。こ
のように、塩素ガスの供給量もしくは還元工程に供給す
る塩化ニッケルガスの分圧を制御することにより、ニッ
ケル粉末の粒径を制御することができ、よって、ニッケ
ル粉末の粒径を安定させることができるとともに、粒径
を任意に設定することができる。
【0022】上記のような気相還元法によるニッケル粉
末の製造条件は、平均粒径1μm以下になるように適宜
設定される。この場合、例えば、出発原料である金属ニ
ッケルの粒径は約5〜20mmの粒状、塊状、板状等が
好ましく、また、その純度は慨して99.5%以上が好
ましい。この金属ニッケルを、まず塩素ガスと反応させ
て塩化ニッケルガスを生成させる。その際の温度は、反
応を十分進めるために800℃以上とし、かつニッケル
の融点である1453℃以下とする。反応速度と塩化炉
の耐久性を考慮すると、実用的には900℃〜1100
℃の範囲が好ましい。次いで、この塩化ニッケルガスを
還元工程に直接供給し、水素ガス等の還元性ガスと接触
反応させる。この場合、窒素やアルゴン等の不活性ガス
を塩化ニッケルガスに対し1〜30モル%混合し、この
混合ガスを還元工程に導入してもよい。また、塩化ニッ
ケルガスと共にまたは独立に塩素ガスを還元工程に供給
することもできる。このように塩素ガスを還元工程に供
給することによって、塩化ニッケルガスの分圧が調整で
き、生成するニッケル粉末の粒径を制御することが可能
となる。還元反応の温度は、反応完結に十分な温度以上
であればよい。ただし、固体状のニッケル粉末を生成す
る方が取扱いが容易であるので、ニッケルの融点以下が
好ましく、経済性を考慮すると900℃〜1100℃が
実用的である。
【0023】このように還元反応を行ってニッケル粉末
を生成した後、生成ニッケル粉末を冷却する。冷却に際
しては、還元反応を終えた1000℃付近のガス流に窒
素ガス等の不活性ガスを吹き込むことにより、400〜
800℃程度まで急速冷却することが望ましく、これに
より、生成したニッケルの一次粒子同士の凝集による二
次粒子の生成を防止して所望の粒径のニッケル粉末を得
ることができる。その後、生成したニッケル粉末を、例
えばバグフィルター等により分離、回収する。
【0024】また、噴霧熱分解法によるニッケル粉末の
製造方法では、熱分解性のニッケル化合物を原料とす
る。具体的には、ニッケルの硝酸塩、硫酸鉛、オキシ硝
酸塩、オキシ硫酸鉛、塩化物、アンモニウム錯体、リン
酸塩、カルボン酸塩、アルコキシ化合物などの1種また
は2種以上を用いることができる。このニッケル化合物
を含む溶液を噴霧して微細な液滴を作る。このときの溶
媒としては、水、アルコール、アセトン、エーテル等が
用いられる。また、噴霧の方法は、超音波または二重ジ
ェットノズル等の噴霧方法により行うことができる。こ
のようにして微細な液滴とし、これを高温に加熱してニ
ッケル化合物を熱分解し金属ニッケル粉末を生成する。
このときの加熱温度は、使用される特定のニッケル化合
物が熱分解する温度以上であり、好ましくはニッケルの
融点付近である。
【0025】2.ニッケル粉末水分散体 本発明では、上記のようにして得られたニッケル粉末に
純水を添加し、ニッケル粉末水分散体を形成する。この
ニッケル粉末水分散体は、水溶媒濃度が1重量%以上、
好ましくは5〜300重量%、さらに好ましくは10〜
100重量%の水溶媒に、ニッケル粉末を分散させたも
のである。ここで、「水溶媒濃度」とは分散体中のニッ
ケル粉末の重量に対する水溶媒の重量%を表す。つまり
ニッケル粉末水分散体は、ニッケル粉末100重量部当
たり、水が1重量部以上、好ましくは5〜300重量
部、さらに好ましくは10〜100重量部のスラリー状
の混合物である。
【0026】また、本発明ではニッケル粉末水分散体を
形成する際、炭酸水溶液で処理を行うことが望ましい。
具体的には、ニッケル粉末を炭酸水溶液に懸濁させる処
理であり、気相還元法、噴霧熱分解法による金属ニッケ
ルの製造方法において、生成したニッケル粉を通常純水
で洗浄する際に、その洗浄を炭酸水溶液で行うか、ある
いは純水で洗浄を行った後、純水中にニッケル粉を残留
させた水スラリー中に炭酸ガスを吹き込むか、あるいは
水スラリー中に炭酸水溶液を添加して処理することもで
きる。特に、気相還元法を採用した場合、このように純
水による洗浄の途中あるいは後に、水スラリーの状態で
炭酸水溶液と接触して処理することが好適であり、製造
工程の簡略化の面において有利である。
【0027】炭酸水溶液での処理におけるpHは、5.
5〜6.5の範囲が好ましく、5.5〜6.0であれば
さらに好適である。また、その際の炭酸水溶液の温度
は、0〜100℃、好ましくは10〜50℃、特に好ま
しくは10〜35℃が良い。さらに、処理の方法として
は、ニッケル粉末を水に懸濁させたスラリーに炭酸ガス
を吹き込みながら炭酸ガスをスラリー中に溶存させると
同時に、スラリーを対流させて処理する方法、あるい
は、炭酸水溶液にニッケル粉末を懸濁させたスラリーを
攪拌して処理する方法が挙げられる。いずれにしても、
炭酸水溶液で処理する前または処理の最中に、ニッケル
粉末に付着している塩化ニッケル等を除去するために水
洗し、必要に応じて液体サイクロン等の湿式分級機によ
り粗粉を除去し、ニッケル粉末の粒度を調整することが
望ましい。このように炭酸水溶液中でニッケル粉末を処
理することにより、ニッケル粉末表面に付着あるいは吸
着した水酸化物が除去され、その結果としてニッケル粉
末の分散性がさらに向上する。なお、ニッケル粉末の表
面に水酸化物が吸着していると、OH基の極性により粉
末どうしが互いに引き合うとともに、親水性(懸濁性)
が低下し、その結果、ニッケル粉末が凝集し易くなると
推測される。
【0028】上記のように炭酸水溶液で処理した後、必
要に応じて純水で置換あるいは洗浄してニッケル粉末水
分散体を形成する。従来のニッケル粉末の製造方法で
は、上記のようにニッケル粉末を生成した後、同様に水
洗するが、ニッケル粉末を製品とするため、この後ニッ
ケル粉末を分離および乾燥し水を含まない粉末状態とし
ていた。しかしながら、本発明では上記のようにニッケ
ル粉末を炭酸水溶液で処理して水分散体を調製した後、
ニッケル粉末の乾燥は行わない。具体的には水溶媒濃度
が1重量%未満にならないようにすることにより、最終
的なニッケル粉末の分散性を向上させる。つまり、本発
明におけるニッケル粉末水分散体の好ましい調製方法で
は、塩化ニッケルガスと水素などの還元性ガスを接触さ
せる気相還元法等によりニッケル粉末を生成し、次いで
水洗し、その後炭酸水溶液で処理して、その後ニッケル
粉末を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除
去しその後ニッケル粉末を乾燥せずに水溶媒濃度が1重
量%以上の水分散体を調製する。
【0029】また、本発明では、上記のような方法で調
製したニッケル粉末の水分散体に界面活性剤を添加する
ことも好ましい態様の一つである。すなわち、界面活性
剤の添加により、後述する有機溶媒による水溶媒の置換
が容易になるとともに、最終的に優れたペースト特性を
発揮する。界面活性剤としては、カチオン性界面活性
剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非
イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤および反応性
界面活性剤から選ばれる1種または2種以上を使用する
ことができる。
【0030】具体的には、カチオン性界面活性剤として
は、脂肪族の1〜3級アミン塩、脂肪族4級アンモニウ
ム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリ
ジニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0031】アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸石
石鹸、N−アシルアミノ酸またはその塩、ポリオキシエ
チレンアルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸
塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレ
ンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル
塩、スルホコハク酸アルキル二塩、アルキルスルホ酢酸
塩等のスルホン酸塩、硫酸化油、高級アルコール硫酸エ
ステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸
塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸
塩、モノグリサルフェート等の硫酸エステル塩、ポリオ
キシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエ
チレンフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等
のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0032】両イオン性界面活性剤としては、カルボキ
シベタイン型、アミノ化ルボン酸塩、イニダジリニウム
ベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイド等が挙
げられる。
【0033】非イオン性界面活性剤としては、アルキル
基の炭素数が1〜18のポリオキシエチレンモノまたは
ジアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコー
ルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエー
テル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオ
キシエチレンラノリン誘導体等のエーテル型、ポリオキ
シエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチ
レンひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エ
ステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステ
ル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸
塩等のエーテルエステル類、ポリエチレングルコール脂
肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂
肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、
ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪
酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型、脂
肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸ア
ミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の含窒素型
等が挙げられる。
【0034】また、フッ素系界面活性剤としては、フル
オロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボ
ン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン
酸ジナトリウム等が挙げられる。
【0035】反応性界面活性剤としては、ポリオキシエ
チレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル、ポリ
オキシエチレンプロペニルフェニルエーテル等が挙げら
れる。
【0036】上記の界面活性剤は、単独での使用の他、
2種以上の組み合わせで使用することもできる。これら
の中でも特に、HLB(親水親油バランス)価が通常3
〜20である非イオン性界面活性剤が好ましく用いら
れ、好ましくはHLB価が10〜20の親水性の非イオ
ン界面活性剤が用いられる。具体的には、ノニルフェノ
ールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニル
エーテルおよびそのリン酸塩またはこれらの混合物、ポ
リオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリ
オキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセ
リンモノステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステ
ル、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸
エステルから選ばれる1種または2種以上が特に好まし
く用いられる。特に好ましい界面活性剤は、ポリオキシ
エチレンアルキルフェニルエーテルおよびそのリン酸塩
またはこれらの混合物である。
【0037】3.有機溶媒による水置換 次に、上記のようにして調製したニッケル粉末の水分散
体に有機溶媒を添加する。本発明で用いる有機溶媒とし
ては、アルコール類、フェノール類、エーテル類、アセ
トン類、炭素数5〜18の脂肪族炭化水素、灯油、軽
油、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シリコン
オイル等が挙げられる。この中でも水に対する溶解度を
ある程度もつ有機溶媒が好ましく、アルコール類、エー
テル類、またはアセトン類が好ましい。
【0038】有機溶媒の具体例としては、メタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノー
ル、2−エチルヘキサノール、2−メチル−1−プロパ
ノール、イソブタノール、2−(エチルアミノ)エタノ
ール、2−エチル−1−ブタノール、3−エチル−3−
ペンタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−エ
トキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−メ
トキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メト
キシエタノール、2−メトキシメトキシエタノール、1
−オクタデカノール、n−オクタノール、2,3−エポ
キシ−1−プロパノール、シクロヘキサノール、ジメチ
ルブタノール、ジメチルプロパノール、2,6−ジメチ
ル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタ
ノール、1,3−ジメトキシ−2−プロパノール、ジメ
トキシプロパノール、1−デカノール、1−ドデカノー
ル、トリメチルブタノール、3,5,5−トリメチルヘ
キサノール、ノナノール、フェニルエタノール、2−メ
チル−2−プロパノール、t−ブタノール、メチルプロ
パノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エト
キシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノ
ール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、t−ペン
チルアルコール、メチルシクロヘキサノール、2−メチ
ル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3
−メチル−3−ペンタノール、3−メトキシブタノー
ル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、アニリ
ノエタノール、アミノエタノール、アミノプロパノー
ル、アミノブタノール、2−(ブチルアミノ)エタノー
ル、2−(メチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2
−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2
−メチル−1,3−プロパンジオール、ジフェニルエタ
ンジオール、エチレングリコール、グリセリン、2−エ
チル−1,3−ヘキサンジオール、2−クロロ−1,3
−プロパンジオール、cis−1,2−シクロヘキサン
ジオール、cis−1,4−シクロヘキサンジオール、
3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、テルピ
ネオール、ブタンジオール、ブテンオール、ブトキシプ
ロパンジオール、プロパンジオール、ヘキサンジオー
ル、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、α−テ
ルピオネール、ジエチルエーテル、アセトン、重合度2
のポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレ
ングルコール、ポリオキシエチレングリコールモノエス
テルなどが挙げられる。特に、エタノール系のアルコー
ル類を使用することが好ましい。
【0039】これらの有機溶媒は、単独または2種以上
組み合わせて使用することもできる。組み合わせとして
は、例えば複数の異種のアルコール類を混合したり、ま
た、水に溶解するアルコール類と水に不溶の例えば飽和
炭化水素溶媒などを組み合わせることも好ましい態様で
ある。これとは逆に水に溶解しないα−テルピオネール
のような有機溶媒でも、界面活性剤を水分散体あるいは
有機溶媒に添加するなど界面活性剤の存在下で用いるこ
とによって、水と有機溶媒とを効率的に置換することが
できる。 4.極性有機溶媒による処理 次に、上記のようにして調製したニッケル粉末の有機溶
媒置換体に極性有機溶媒を添加しニッケル粉末を洗浄処
理などの処理をする。このとき、できる限り水分を除去
することがニッケル粉末の分散性向上のために望まし
い。具体的には、ニッケル粉末の水分散体に有機溶媒を
添加し、水溶媒を置換する際、数回デカンテーションあ
るいは濾過によりニッケル粉末を同じ有機溶媒で洗浄し
置換する方法、または有機溶媒を添加した後、加熱ある
いは減圧下で水を蒸発させる方法を採用することができ
る。次いで、極性有機溶媒を添加しニッケル粉末を洗浄
する。
【0040】極性溶媒としては、アルコール類、フェノ
ール類、エーテル類、アセトン類などが挙げられ、具体
的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノ
ール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、2−メ
チル−1−プロパノール、イソブタノール、2−(エチ
ルアミノ)エタノール、2−エチル−1−ブタノール、
3−エチル−3−ペンタノール、2−イソプロポキシエ
タノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエ
タノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタ
ノール、2−メトキシエタノール、2−メトキシメトキ
シエタノール、1−オクタデカノール、n−オクタノー
ル、2,3−エポキシ−1−プロパノール、シクロヘキ
サノール、ジメチルブタノール、ジメチルプロパノー
ル、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、2,4−ジ
メチル−3−ペンタノール、1,3−ジメトキシ−2−
プロパノール、ジメトキシプロパノール、1−デカノー
ル、1−ドデカノール、トリメチルブタノール、3,
5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、フェニ
ルエタノール、2−メチル−2−プロパノール、t−ブ
タノール、メチルプロパノール、1−メトキシ−2−プ
ロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブ
トキシ−2−プロパノール、ヘキサデカノール、ヘプタ
デカノール、t−ペンチルアルコール、メチルシクロヘ
キサノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル
−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3
−メトキシブタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)
エタノール、アニリノエタノール、アミノエタノール、
アミノプロパノール、アミノブタノール、2−(ブチル
アミノ)エタノール、2−(メチルアミノ)エタノー
ル、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオー
ル、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオー
ル、ジフェニルエタンジオール、エチレングリコール、
グリセリン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、
2−クロロ−1,3−プロパンジオール、cis−1,
2−シクロヘキサンジオール、cis−1,4−シクロ
ヘキサンジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−
3−オール、テルピネオール、ブタンジオール、ブテン
オール、ブトキシプロパンジオール、プロパンジオー
ル、ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、ペンタ
ンジオール、α−テルピオネール、ジエチルエーテル、
アセトンなどが挙げられ、これらの中でも好ましくはア
セトン、ジエチルエーテルである。
【0041】洗浄の具体的手段としては攪拌による方
法、超音波による洗浄などが挙げられる。また洗浄温度
は0〜100℃、好ましくは10〜50℃、特に好まし
くは10〜35℃である。
【0042】上記のように極性溶媒でニッケル粉末を洗
浄処理してニッケル粉末分散体を形成する。上記の洗浄
処理に用いた極性溶媒を最終的な分散媒としてもよい
が、上述した有機溶媒、好ましくはα−テルピオネール
などのペースト形成用に用いる有機溶媒でニッケル粉末
分散体を形成することが望ましい。従って洗浄処理に用
いた極性有機溶媒と有機溶媒が異なる場合、洗浄処理の
後、極性有機溶媒をろ過、デカンテーションあるいは加
熱処理などにより除去し、その後有機溶媒を添加して、
再度有機溶媒で置換をして本発明のニッケル粉末分散体
を得る。好ましくは極性溶媒で洗浄処理をした後、デカ
ンテーションで極性溶媒を除去した後、有機溶媒を添加
し、さらに加熱して残存している極性有機溶媒を蒸発さ
せて除去する。このように極性有機溶媒でニッケル粉末
を洗浄処理することにより粉末表面の水酸化物を除去
し、結果としてペースト形成用有機溶媒中での分散性が
向上する。
【0043】本発明では、ニッケル粉末分散体中に水溶
媒が残留していてもよいが、好ましくは上記有機溶媒を
添加した後、分散体から水を除去し、溶媒を添加した有
機溶媒と置換することが望ましい。このとき分散体中の
水の残留量は、分散体中のニッケル粉末の重量に対し1
0重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましく
は2重量%以下である。従って、本発明のニッケル粉末
分散体は、ニッケル粉末と上記有機溶媒から成る場合
と、ニッケル粉末、上記有機溶媒および水から成る場合
がある。置換方法としては、上述したニッケル粉末水分
散体に有機溶媒を添加して水を有機溶媒に置換する方法
と同様に、有機溶媒を添加した後、数回デカンテーショ
ンあるいは濾過によりニッケル粉末を同じ有機溶媒で洗
浄し置換する方法、または有機溶媒を添加した後、加熱
あるいは減圧下で水を蒸発させる方法を採用することが
できる。このように有機溶媒と置換することによって、
導電ペーストを調製する際、導電ペースト形成用に使用
する有機分散剤との相溶性が良好となり、分散性を向上
させニッケル粉末の凝集が防止できる。
【0044】本発明におけるニッケル粉末分散体の有機
溶媒の濃度は任意である。ただし、導電ペーストを調製
する際の操作性、または保存性を考慮すると有機溶媒濃
度は5〜200重量%、好ましくは10〜100重量
%、特に好ましくは20〜60重量%が良い。ここで、
「有機溶媒濃度」とは、分散体中のニッケル粉末の重量
に対する有機溶媒の重量%である。つまり本発明のニッ
ケル粉末分散体は、ニッケル粉末100重量部に対して
有機溶媒が5〜200重量部、好ましくは10〜100
重量部、特に好ましくは20〜60重量部のスラリー状
の混合物である。
【0045】また、本発明のニッケル粉末分散体中に
は、前記したものと同じ界面活性剤を添加してもよく、
添加方法は、有機溶媒を添加した後界面活性剤を添加す
るか、あるいは添加する有機溶媒に予め界面活性剤を添
加し混合しておき、この混合物をニッケル粉末の水分散
体に添加する。このとき、界面活性剤は、アルコールや
アセトンなどの上述した有機溶媒で希釈または有機溶媒
に溶解させて添加することが望ましく、界面活性剤1重
量部に対し希釈する有機溶媒は1〜50重量部、好まし
くは10〜40重量部である。界面活性剤を添加するこ
とによって、ニッケル粉末水分散体の有機溶媒による置
換が促進され、効果的である。また、界面活性剤の作用
効率を考慮すると、ニッケル水分散体に予め界面活性剤
を添加し、ニッケル粉末表面に界面活性剤を良く分散さ
せた後、有機溶媒を添加し、置換することが望ましい。
さらに、上述した気相還元法等の方法で製造したニッケ
ル粉末を水で洗浄し、ニッケル粉末水分散体を調製する
際においても、上記界面活性剤を添加することが、最終
的に分散性の高いニッケル粉末分散体および導電ペース
トを調製するために望ましい。
【0046】界面活性剤の量比については特に制限はな
いが、ニッケル粉末の粒子表面に界面活性剤の単一分子
被膜が形成され得る程度の量を添加する。通常、ニッケ
ル粉末1kg当たりに使用する界面活性剤は0.000
1〜100g、好ましくは0.1〜50g、特に好まし
くは0.5〜25gである。
【0047】以下に、本発明のニッケル粉末分散体の具
体的な調製方法を例示する。 (1)炭酸水溶液で処理したニッケル粉末水分散体にア
ルコール等の有機溶媒を添加し、攪拌し、その後静置し
て水をデカンテーションにて分離し、更に50〜150
℃に加温して水分を除去し、これにアセトンを添加し洗
浄する。その後アセトンを除去して、再度α−テレピネ
オールなどの有機溶媒を添加しニッケル粉末分散体を得
る。
【0048】(2)炭酸水溶液で処理したニッケル粉末
水分散体にポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテ
ル等の界面活性剤を添加し攪拌した後、α−テルピオネ
ール等の有機溶剤を添加し攪拌する。その後静置して水
をデカンテーションにて分離し、更に50〜150℃に
加温して水分を除去し、アセトンを添加し洗浄する。そ
の後アセトンを除去し、再度α−テレピネオールなどの
有機溶媒を添加してニッケル粉末分散体を得る。
【0049】(3)炭酸水溶液で処理したニッケル粉末
水分散体にポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテ
ル等の界面活性剤を添加し攪拌した後、α−テルピオネ
ール等の有機溶剤を添加し、更にポリオキシエチレンア
ルキルフェニルエーテルを含む界面活性剤を添加して攪
拌する。その後静置して水をデカンテーションにて分離
し、更に50〜150℃に加温して水分を除去し、アセ
トンを添加し洗浄する。その後アセトンを除去し、再度
α−テレピネオールなどの有機溶媒を添加してニッケル
粉末分散体を得る。
【0050】(4)炭酸水溶液で処理したニッケル粉末
水分散体にポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテ
ル等の界面活性剤を添加し攪拌した後、更にポリオキシ
エチレンアルキルフェニルエーテルを含む界面活性剤を
添加して攪拌し分散させた後、α−テルピオネール等の
有機溶剤を添加する。その後静置して水をデカンテーシ
ョンにて分離し、更に50〜150℃に加温し、アセト
ンを添加し洗浄する。その後アセトンを除去し、再度α
−テレピネオールなどの有機溶媒を添加して水分を除去
してニッケル粉末分散体を得る。
【0051】(5)炭酸水溶液で処理したニッケル粉末
水分散体にポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテ
ル等の界面活性剤を添加し攪拌した後、更にアセトンな
どの有機溶媒で希釈したポリオキシエチレンアルキルフ
ェニルエーテルを含む界面活性剤を添加して攪拌し分散
させた後、α−テルピオネール等の有機溶剤を添加す
る。その後静置して水をデカンテーションにて分離し、
更に50〜150℃に加温して水分を除去し、アセトン
を添加し洗浄する。その後アセトンを除去し、再度α−
テレピネオールなどの有機溶媒を添加してニッケル粉末
分散体を得る。
【0052】上記方法のうち、(3)〜(5)において
は、ニッケル分散体に界面活性剤を添加するが、このと
き添加する界面活性剤は0.1μm程度またはこれ以下
の微粉側のニッケル粉末を或る程度凝集させるものが好
ましく、これによって後工程での有機溶媒との置換を効
率的に行うことができ、最終的に分散性の良い導電ペー
ストを調製することができる。また、ニッケル分散体を
調製する際、デカンテーションにより上澄み液を除去す
るが、0.1μm以下の微粉は除去しにくく、最終的に
得られるニッケル粉末分散体の歩留まりが低下してしま
うが、上記のように界面活性剤などで微粉を或る程度凝
集させて調製することによって、歩留まりを向上させる
ことができる。
【0053】以上のように本発明のニッケル粉末分散体
は、ニッケル粉末分散性が極めて良好であり、これを用
いて導電ペーストを形成した際には優れた分散性を示
し、結果として積層セラミックコンデンサにした際、電
極表面の凹凸によるショートやデラミネーションの防止
が図られる。
【0054】5.導電ペーストの調製 本発明の導電ペーストの調製方法は、上記ニッケル粉末
分散体を用い、これに有機分散剤を添加混練する。
【0055】すなわち、導電ペーストは、上記ニッケル
粉末分散体を、テレピネオール、デシルアルコール等の
有機溶媒およびエチルセルロースなどのセルロース系の
有機樹脂といった有機分散剤に添加し混練させることに
より調製する。またフタル酸エステル等の可塑剤も添加
することができる。
【0056】上記のようにして得られた本発明のニッケ
ル粉末分散体は、導電ペーストを形成した際には優れた
分散性を示し、その結果、積層セラミックコンデンサを
作成した際、ショートやデラミネーションを防止するこ
とができる。また、前記ニッケル粉末分散体を用いるこ
とにより、ニッケル粉末が高度に分散した導電ペースト
の調製が可能となる。
【0057】
【実施例】以下、具体的な実施例を参照して本発明をさ
らに詳細に説明する。なお、平均粒径、分散剤中に分散
させたときの粒度分布、膜密度は以下の方法で測定し
た。
【0058】(平均粒径の測定)電子類微鏡によりニッ
ケル粉末の写真を撮影し、その写真から金属粉末粒子2
00個の粒径を測定してその平均を算出した。粒径は粒
子を包み込む最小円の直径とした。
【0059】(ペースト形成用分散剤中に分散させたと
きの粒度分布の測定)レーザー光散乱回折法粒度測定機
(Coulter LS230:コールター社製)を用
い、適量のニッケル粉末分散体または乾燥ニッケル粉末
をα−テルピネオールに懸濁させてから超音波をかけて
3分間分散させ、サンプル屈折率1.8にて金属粉末の
粒度を測定し、体積統計値の粒度分布を求めた。なお、
表1の粒度分布において、D90、D50、D10は、
それぞれ積算粒度で90%、50%、10%のところの
粒径(μm)を示しており、特にD90の値(積算粒度
が90%の粒径)が大きいほど導電ペースト形成用分散
剤であるα−テルピネオール中でニッケル粉末が凝集し
ていることを示し、逆に値が小さい場合はニッケル粉末
が高分散していることを示す。
【0060】(膜密度の測定)α-テレピネオールを分
散媒としたニッケル粉末55重量%含有したニッケル粉
末分散体、または乾燥ニッケル粉末をα-テレピネオー
ルに添加し形成した分散体に、エチルセルロースを10
重量%添加し混練してペーストを作成した。一方、表面
が平滑なガラス板上に離形フィルムを貼り、その両端を
中央に離形フィルムの面が残るように貼り固定した。こ
の離形フィルム上に上記ペーストを表面が均一になるよ
うにフィルムアプリケーターで印刷し膜を形成した。そ
の後80〜200℃で乾燥し、その後乾燥した膜から離
形フィルムを剥がし、膜を円形の型で打ち抜いた。打ち
抜いた膜の重量および体積を測定して膜密度を算出し
た。このとき膜の容積は円の面積を測定し、また厚さを
マイクロメーターで膜の厚さを数ヶ所測定して平均を求
め算出した。
【0061】[実施例1] (ニッケル粉末の製造)図2に示す金属粉末の製造装置
によりニッケル粉末を製造する工程を以下説明する。
【0062】塩化工程 塩化炉1内に、出発原料である平均粒径5mmのニッケ
ル粉末M15kgを、塩化炉1の上端に設けられた原料
充填管11から充填するとともに、加熱手段10により
炉内雰囲気温度を1100℃とした。次いで、塩素ガス
供給管14から塩素ガスを4Nl/minの流量で塩化
炉1内に供給し、金属ニッケルを塩化して塩化ニッケル
ガスを発生させた。この塩化ニッケルガスに、塩化炉1
の下側部に設けられた不活性ガス供給管15から塩素ガ
ス供給量の10%(モル比)の窒素ガスを塩化炉1内に
供給して混合した。なお、塩化炉1の底部に網16を設
け、この網16の上に原料のニッケル粉末Mが堆積する
ようにした。
【0063】還元工程 上記のようにして生成された塩化ニッケル−窒素混合ガ
スを、加熱手段20により1000℃の炉内雰囲気温度
とされた還元炉2内に、ノズル17から流速2.3m/
秒(1000℃換算)で導入した。同時に還元炉2の頂
部に設けられた還元性ガス供給管21から水素ガスを流
速7Nl/minで還元炉2内に供給し、塩化ニッケル
ガスを還元した。塩化ニッケルガスと水素ガスによる還
元反応が進行する際、ノズル17先端部からは、LPG
等の気体燃料の燃焼炎に似た下方に延びる輝炎Fが形成
された。
【0064】冷却工程 還元反応により生成されたニッケル粉末Pに、還元炉2
の下側部に設けられた冷却ガス供給管22から供給した
窒素ガスを接触させニッケル粉末Pを冷却し、分離回収
した。
【0065】(ニッケル粉末水分散体の調製)次いで、
回収したニッケル粉末Pを水で洗浄し、最後に純水を加
え、次いで炭酸ガスを純水中にバブリングさせることに
より溶存させ炭酸水溶液とし、pH5.5〜6.5、4
0℃で60分処理した。その後ニッケル粉末を沈降さ
せ、デカンテーションにより上澄み液を除去し、さらに
純水を加えニッケル粉末の水分散体を得た。このときの
水溶媒濃度は60重量%であった。
【0066】(ニッケル粉末有機溶媒分散体の調製)上
記ニッケル粉末水分散体を2.5kg(ニッケル粉末1
kg、水1.5kg)分取し、これにα-テレピネオー
ル1kgを添加した。室温にて攪拌しニッケル粉末を分
散させ、120℃で16時間、さらに100℃で48時
間乾燥を行い、水分を除去した。これにアセトンを50
0ml添加し、超音波洗浄機においてニッケル粉末を洗
浄した。その後100℃で48時間乾燥しアセトンを除
去してニッケル粉末分散体を得た。このニッケル粉末分
散体では、残留水は実質上存在せず、水の全量がα-テ
レピネオールにより置換された。得られたニッケル粉末
分散体中ニッケル粉末の平均粒径、粒度分布、および膜
密度を測定し、その結果を表1に示した。
【0067】
【表1】
【0068】[比較例1]実施例1で得られたニッケル
粉末の水分散体を、有機溶媒を添加することなく加熱乾
燥して水分を除去し、ニッケル粉末を得た。このニッケ
ル粉末を実施例1と同様にα-テレピネオールに分散さ
せ、かつ、アセトンで洗浄後これを除去したきの粒度分
布および膜密度の測定を行ない、その結果を表1に併記
した。
【0069】[比較例2]実施例1で得られたニッケル
粉末の水分散体について、有機溶媒を添加することな
く、実施例1と同様にペースト形成用分散剤(α-テレ
ピネオール)に分散させたときの粒度分布および膜密度
の測定を行ない、その結果を表1に併記した。
【0070】[比較例3]実施例1のニッケル粉末水分
散体の調製において、アセトンによる洗浄を行わなかっ
た以外は実施例1と同様にα-テレピネオールに分散さ
せたときの粒度分布および膜密度の測定を行ない、その
結果を表1に併記した。
【0071】[比較例4]実施例1のニッケル粉末水分
散体の調製において、炭酸水溶液での処理およびアセト
ンによる洗浄を行わなかった以外は実施例1と同様にα
-テレピネオールに分散させたときの粒度分布および膜
密度の測定を行ない、その結果を表1に併記した。
【0072】表1に示すように、実施例1のニッケル粉
末のSEMによる平均粒径は比較例1〜4のニッケル粉
末と同じである。しかしながら、ニッケル粉末の有機溶
媒分散体では、比較例1,2は、ニッケル粉末の水分散
体に有機溶媒を添加して水と置換しなかったため、D1
0、D50、D90のいずれも実施例1と比較して大き
く、導電ペースト形成用分散剤中でのニッケル粉末の凝
集により粒子が粗大化していることが確認された。ま
た、比較例3では、ニッケル粉末の水分散体に有機溶媒
を添加して水と置換しているため、比較例1,2と比べ
るとニッケンル粉末粒子の粗大化はやや抑制されている
が、アセトンによる洗浄を行わなかったため、実施例1
と比較すると粒子は大きい。また、比較例4では、ニッ
ケル粉末の水分散体に有機溶媒を添加して水と置換して
いるため、比較例1,2と比べるとニッケル粉末粒子の
粗大化はやや抑制されているが、アセトンによる洗浄と
炭酸ガスによる処理を行わなかったため、実施例1と比
較すると粒子はさらに大きい。特に、実施例1では、D
90とD50との差が0.64であることからも、粗粉
の比率が少なく導電ペースト形成用分散剤中での凝集が
抑えられていることが確認された。さらに、これらペー
ストを用いて実際に電極層を形成した結果、実施例の本
発明のニッケル粉末分散体により形成した導電ペースト
では、電極膜の膜密度が大きく、かつ電極層の表面粗さ
が小さく、導電ペーストを形成した際のニッケル粉末の
凝集が少なく、分散性が非常に優れていることが判明し
た。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のニッケル
粉末分散体は、ニッケル粉末分散性が極めて良好であ
り、これを用いて導電ペーストを形成した際には導電ペ
ースト分散材中で優れた分散性を示し、結果として積層
セラミックコンデンサを作成した際、電極表面の凹凸に
よるショートやデラミネーションの防止を図ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従うニッケル超微粉の水分散体なら
びに導電ペーストの調製のプロセス例を示すフローシー
トである。
【図2】 本発明の実施例で用いた金属粉末の製造装置
の構成を示す縦断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01B 1/22 H01B 1/22 A H01G 4/12 361 H01G 4/12 361 Fターム(参考) 4K017 AA03 BA03 CA07 DA01 DA08 EG04 FB05 4K018 BA04 BB04 BC29 BD04 BD10 KA32 KA39 5E001 AB03 AC09 AH01 AJ01 5G301 DA10 DA42 DD01

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒径1μm以下の超微粉ニッケル粉
    末と水溶媒からなる水分散体に、有機溶媒を添加し、こ
    の有機溶媒によって上記水溶媒を少なくとも部分的に置
    換し、次いで極性溶媒を添加してニッケル粉末が処理さ
    れていることを特徴とするニッケル粉末分散体。
  2. 【請求項2】 前記有機溶媒を添加する際に、界面活性
    剤を存在させることを特徴とする請求項1に記載のニッ
    ケル粉末分散体。
  3. 【請求項3】 前記ニッケル粉末の平均粒径が0.1〜
    0.6μmであることを特徴とする請求項1または2に
    記載のニッケル粉末分散体。
  4. 【請求項4】 前記ニッケル粉末水分散体が予め炭酸水
    溶液で処理されていることを特徴とする請求項1〜3の
    いずれかに記載のニッケル粉末分散体。
  5. 【請求項5】 前記極性有機溶媒がアルコール類、アセ
    トン類、エーテル類から選ばれる少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッ
    ケル粉末分散体。
  6. 【請求項6】 前記界面活性剤がポリオキシエチレンア
    ルキルフェニルエーテルまたはそのリン酸塩またはこれ
    らの混合物である請求項2〜5のいずれかに記載のニッ
    ケル粉末分散体。
  7. 【請求項7】 前記ニッケル粉末分散体の有機溶媒濃度
    が5〜200重量%であることを特徴とする請求項1〜
    6のいずれかに記載のニッケル粉末分散体。
  8. 【請求項8】 前記有機溶媒がアルコール類であること
    を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のニッケル
    粉末分散体。
  9. 【請求項9】 前記ニッケル粉末が、塩化ニッケルガス
    と還元性ガスとを接触反応させた気相反応生成物、また
    は、熱分解性のニッケル化合物の溶液を噴霧して熱分解
    する噴霧熱分解生成物であることを特徴とする請求項1
    〜8のいずれかに記載のニッケル粉末分散体。
  10. 【請求項10】 導電ペースト用であることを特徴とす
    る請求項1〜9のいずれかに記載のニッケル粉末分散
    体。
  11. 【請求項11】 積層セラミックコンデンサの内部電極
    用であることを特徴とする請求項10に記載のニッケル
    粉末分散体。
  12. 【請求項12】 塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接
    触反応させる気相反応により、または、熱分解性のニッ
    ケル化合物の溶液を噴霧して熱分解することにより平均
    粒径1μm以下の超微粉ニッケル粉末を生成し、このニ
    ッケル粉末を水洗し、純水を添加して、水溶媒濃度が1
    重量%以上のニッケル水分散体を生成し、次いで炭酸ガ
    スを上記ニッケル水分散体に溶存させ、その後、界面活
    性剤の存在下に有機溶媒を添加して水溶媒を少なくとも
    部分的に置換して有機溶媒濃度が5〜200重量%であ
    るニッケル粉末分散体を生成し、次いで極性有機溶媒を
    添加してニッケル粉末を処理することを特徴とするニッ
    ケル粉末分散体の調製方法。
  13. 【請求項13】 前記ニッケル水分散体に界面活性剤を
    添加するか、または前記有機溶媒に界面活性剤を予め混
    合するか、もしくは有機溶剤添加後に界面活性剤を添加
    することを特徴とする請求項12に記載のニッケル粉末
    分散体の調製方法。
  14. 【請求項14】 前記界面活性剤がポリオキシエチレン
    アルキルフェニルエーテルおよびそのリン酸塩またはこ
    れらの混合物である請求項12または13に記載のニッ
    ケル粉末分散体の調製方法。
  15. 【請求項15】 請求項1に記載のニッケル粉末分散体
    に導電ペースト形成用有機分散剤を加え、添加・混練す
    ることを特徴とする導電ペーストの調製方法。
  16. 【請求項16】 請求項1に記載のニッケル粉末分散体
    に導電ペースト形成用有機分散剤と可塑剤を加え、添加
    ・混練することを特徴とする導電ペーストの調製方法。
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