JP2003342410A - ポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法 - Google Patents
ポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法Info
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Abstract
系熱可塑性樹脂と、水溶性気泡形成材と、水溶性高分子
化合物との混合体から、以下の諸特性を発現し得るポリ
エステル系熱可塑性樹脂多孔体と、該ポリエステル系熱
可塑性樹脂多孔体の製造方法を提供する。 【解決手段】 熱可塑性樹脂、水溶性気泡形成材および
水溶性高分子化合物との加熱混合物から、水抽出法によ
り得られる多孔体において、前記熱可塑性樹脂としてポ
リエステル系熱可塑性樹脂12を使用し、前記水溶性気
泡形成材および水溶性高分子化合物として該樹脂12の
熱溶融温度において熱的に安定な物質を使用すること
で、0.8MPa以下の引張応力により少なくとも10
0%以上の伸び率を発現し得るようにする。
Description
熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法に関し、更に詳
細には、該ポリエステル系熱可塑性樹脂から水抽出法に
より得られる3次元連通気泡構造に起因して、容易に伸
縮し得るポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体と、該ポリ
エステル系熱可塑性樹脂多孔体を好適に製造可能な方法
とに関するものである。
種の樹脂が知られており、これは様々な部材の素材用途
に好適に使用されている。前記樹脂は、成形性が容易な
一方で、熱に弱い、固い、弾性に乏しい、低温屈曲性に
劣る等の物性上の欠点も有している。これに対して、硫
黄による架橋構造を有する所謂ゴムを素材としたもので
は、前述した欠点は殆ど問題とならないが、樹脂の特徴
である易成形性、更には着色性や臭いの点で大きく劣っ
てしまう難点がある。
前述の各物性を高い水準で併有することが望まれてお
り、例えばポリエステル系熱可塑性樹脂等のエラストマ
が適宜採用されるようになっている。前記エラストマ
は、樹脂とゴムの物性、すなわち弾性限界内における所
要の伸び率と引張強度とを併有し、かつ粘弾性のバラン
スが優れている。具体的には、柔軟性によるフィット感
と肌触りの良さとを併有すると共に、不快なゴム臭が無
く、着色性や成形性に優れて意匠性を向上させ易い、と
いった特徴を有し、例えばベルト等の人体に接触し得る
部材等の用途に好適に採用可能である。
エラストマを素材として使用した製品は、ゴム部材の如
く高い伸び率等を発現し得る一方で、基本的にはソリッ
ド体であるために、該伸び率を有効に利用するには非常
に大きな応力を必要とする。従って、例えば使用者が人
力で前記エラストマ素材の製品を伸ばすことは困難であ
った。またソリッド体であるが故に、通気性は皆無であ
り、例えば人体に密着させて使用する用途には向かなか
った。更に密度が高く、重いことも取り扱いの点で不利
な要素になっていた。
て、前記樹脂を多孔体とする使用する方法が考えられ
る。一般に熱可塑性樹脂から多孔体を製造する方法とし
て、主材料、すなわち骨格を形成する熱可塑性樹脂中に
発泡材を混入し、該発泡材から発生した窒素等のガスに
より気泡を形成させる発泡法が知られている。しかし前
記発泡法では、多数形成された前記気泡が、所謂独立気
泡状態となってしまい、気泡相互間に通気性が得られな
い欠点が指摘される。また発生した気泡径を均一にする
制御が難しく、数十μmといった微小径の気泡形成が困
難であるため、該気泡径によって大きく変動する表面状
態、すなわち表面摩擦係数や機械的強度等の、得られる
多孔体の各物性値を制御し得ず、結果として肌触り等の
触感が大きく悪化してしまう。更に気泡率の制御が困難
であるため、気泡率と密接に関係して変化する硬度や、
弾性限界に至るまでの伸び率といったゴム特有の物性の
好適な制御も困難であった。
とを併有するエラストマを使用するに際し顕在化する前
記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたも
のであって、骨格を形成する主材料としてのポリエステ
ル系熱可塑性樹脂と、水溶性気泡形成材と、水溶性高分
子化合物との混合体から、以下の諸特性を発現し得るポ
リエステル系熱可塑性樹脂多孔体と、該ポリエステル系
熱可塑性樹脂多孔体の製造方法を提供することを目的と
する。肌触り等の触感、着色性および無臭性に代表され
る樹脂特性と、硬度(柔軟性)に代表されるゴム特性との
併有。従来のゴム部材と同様の使用形態とした際に、通
気性を有し、また大きな応力をかけることなく引き延ば
せる等の良好な取り扱い性。
の目的を達成するため本願の発明に係るポリエステル系
熱可塑性樹脂多孔体は、熱可塑性樹脂と、水溶性気泡形
成材と、滑材として作用する水溶性高分子化合物とを加
熱状態下で混合して得られる混合物から、前記水溶性気
泡形成材および水溶性高分子化合物を水で抽出除去し
て、3次元連通気泡構造とするようにした多孔体におい
て、前記熱可塑性樹脂として、ポリエステル系熱可塑性
樹脂を使用すると共に、前記水溶性気泡形成材および水
溶性高分子化合物として、前記ポリエステル系熱可塑性
樹脂の熱溶融温度において熱的に安定な物質を使用する
ことで、0.8MPa以下の引張応力により少なくとも
100%以上の伸び率を発現し得るようにしたことを特
徴とする。
成するため、本願の別の発明に係るポリエステル系熱可
塑性樹脂多孔体の製造方法は、熱可塑性樹脂と、水溶性
気泡形成材と、滑材として作用する水溶性高分子化合物
とを加熱状態下で混合して得られた混合物を水に接触さ
せ、該混合物から前記水溶性気泡形成材および水溶性高
分子化合物を抽出除去して、3次元連通気泡構造とする
ようにした多孔体の製造方法において、前記熱可塑性樹
脂として、ポリエステル系熱可塑性樹脂を使用すると共
に、前記水溶性気泡形成材および水溶性高分子化合物と
して、前記ポリエステル系熱可塑性樹脂の熱溶融温度に
おいて熱的に安定な物質を使用し、得られたポリエステ
ル系熱可塑性樹脂多孔体における伸び率が、0.8MP
a以下の引張応力で少なくとも100%以上となるよう
制御したことを特徴とする。
系熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法につき、好適
な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明す
る。本願の発明者は、ポリエステル系熱可塑性樹脂、水
溶性気泡形成材および水溶性高分子化合物を加熱状態下
で混練し、そのままで、または所定形状に成形した後、
水に浸漬して該水溶性気泡形成材および水溶性高分子化
合物を抽出・除去することで、図1に示す如く、ポリエ
ステル系熱可塑性樹脂12の骨格内に、微細な気泡16
を3次元的に連通させた3次元連通気泡構造が形成さ
れ、これは例えば通気性および低い硬度を有すると共
に、大きな力をかけることなく引き延ばせる等の良好な
取り扱い性を発現し、しかも軽量なポリエステル系熱可
塑性樹脂多孔体10が得られることを知見したものであ
る。
最終的に得られる多孔体10の骨格部分となる主材料で
ある。そして前記ポリエステル系熱可塑性樹脂12は、
前述の如く、得られる多孔体10の骨格部分を形成する
材質であるから、これに該多孔体10が示す伸び率その
他の各物性値は依存している。
は、基本的には、該多孔体10の骨格を形成する前記ポ
リエステル系熱可塑性樹脂12の物性値によって変動す
る。しかし本発明の場合、樹脂自体の物性値ではなく、
前記多孔体10内における気泡率および気泡径を変化さ
せることにより、得られる多孔体10の物性値を任意に
制御し得るものである。ここで本発明に係る多孔体は、
樹脂特性およびゴム特性を併有すると共に、大きな力を
かけることなく引き延ばせる、といった良好な取り扱い
性を表す物性指標として、0.8MPa以下の引張応力
により少なくとも100%以上の伸び率を規定してい
る。その理由は、作業者の力によっても、1MPa程度
の引張応力をかけることは容易に可能であり、しかも1
00%程度の伸び率を示す多孔体であれば、実際の使用
に際してもほぼゴム部材と同様の取扱いが可能だからで
ある。
性であって、かつ前記ポリエステル系熱可塑性樹脂12
が熱溶融する際に熱的に安定な物質であれば各種のもの
が使える。例えば無機物としては、NaCl、KCl、
CaCl2、NH4Cl、NaNO3、NaNO2等が挙げ
られる。有機物としては、TME(トリメチロールエタ
ン)、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタ
ン、しょ糖、可溶性でんぷん、ソルビトール、グリシン
または各有機酸(リンゴ酸、クエン酸、グルタミン酸ま
たはコハク酸)のナトリウム塩等が挙げられる。
チレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレ
ート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチ
レングリコールジアセテート等のポリエチレングリコー
ル誘導体、その他水に溶解し、樹脂に対して粘度を低下
させる働きをする化合物であれば如何なるものであって
も使用可能である。殊にポリエチレングリコールは、メ
ルトフローが高く、かつ水溶性が高いので好適に使用し
得る。また水溶性気泡形成材として有機系物質を選択し
た場合は、該水溶性気泡形成材の抽出・除去を促進する
作用も確認されている。更に押出成形方法で成形を行な
う場合、前記ポリエチレングリコールの分子量は2,0
00〜30,000、好ましくは5,000〜25,00
0、更に好ましくは15,000〜25,000の範囲が
好適であるとの知見が得られている。
水溶性気泡形成材および水溶性高分子化合物(水溶性物
質)との混合割合は、体積百分率で10:90〜40:
60の範囲内が好ましく、殊に12:88〜35:65
の範囲内が好適である。前記ポリエステル系熱可塑性樹
脂12が体積百分率で10%未満の場合には、水溶性物
質の抽出・除去時に成形体自体が分離してしまう。一
方、前記ポリエステル系熱可塑性樹脂12が体積百分率
で40%以上の場合、すなわち該ポリエステル系熱可塑
性樹脂12以外の前記水溶性物質が体積百分率で60%
未満の場合には、成形体内に充分な数の気泡が形成され
なくなってしまう。
ル系熱可塑性樹脂12の割合は、体積百分率で10〜4
0%、すなわち気泡率は60〜90%とされる。この気
泡率は、得られる多孔体の密度、伸び率および硬度等の
各物性値に大きな影響を与える。基本的には、100−
気泡率(%)=骨格(%)の存在割合として捉えられるた
め、気泡率が体積百分率で80%であれば骨格の存在割
合は20%、従って前述の物性値は、基本的にポリエス
テル系熱可塑性樹脂12の20%程度の値を示すことに
なる。
他、前記気泡の大きさ、すなわち気泡径によって大きな
影響を受ける。具体的には、前記骨格の存在が同一であ
る場合、前記気泡径が50〜80μmの間に設定される
際に、大きな伸び率、すなわち良好なゴム弾性を示す。
は骨格の部分的な構造の変化が、伸び率に与える影響
を、図2を用いて以下説明する。この影響は、具体的に
は、得られる多孔体がマクロ的に示す機械的強度が、該
多孔体内に形成される一本の骨格が発現する機械的強度
×単位面積当たりの骨格数で変動することで説明され
る。なお図2(a)は、最も大きな伸び率および引張強度
を示す気泡径が50〜80μmの範囲にある骨格構造示
し、これは後述する図2(b)および図2(c)との比較の
ために作成したものである。
(b)参照))基本的に前記骨格は、気泡16が大きくなる
に伴って、その平均太さは大きくなる。しかし前記気泡
16が順次隣接して形成される骨格には、該気泡16の
形状(すなわち球形状)に沿って部分的に細い部分が形成
される。このため前記気泡が80μm以上に大きくなっ
ても、一本の骨格が発現する機械的強度は殆ど変わらな
い。その一方で、前記気泡径の増加に伴って、単位面積
当たりの骨格数は減少する。このため前述の「多孔体が
マクロ的に示す機械的強度=一本の骨格が発現する機械
的強度×単位面積当たりの骨格数」で考えると、該単位
面積当たりの骨格数が大きな決定因子となる。すなわち
伸び率等の機械的強度が決定され、その結果、気泡径の
増加に伴って機械的強度は悪化する。前記機械的強度が
低い値であれば、充分な伸び率を示す前に前記骨格が断
絶してしまう。この他、前記気泡径が大きくなることに
より形成される骨格が長くなり、このため圧縮強度も悪
化するが、これは物性的に捉えれば硬度の低下を意味
し、ゴム物性的にはより良好な状態と云い得る。
(c)参照))前記気泡径が小さくなるに従って、図2(c)
に示す如く、単位面積当たりの骨格数は大きく増加す
る。しかし、その骨格太さにおける最も細い部分も更に
細くなり、一本の骨格が発現する機械的強度も大きく低
下する。そして50μm以下の領域においては、骨格太
さの最も細い部分の減少による機械的強度の低下は、前
述の骨格数の増加による機械的強度の向上を上回ってい
ると考えられる。このため前述の「多孔体がマクロ的に
示す機械的強度=一本の骨格が発現する機械的強度×単
位面積当たりの骨格数」で考えると、該骨格太さが最も
細い部分、すなわち個々の骨格における引っ張りに対す
る強度が最も弱い部分が大きな決定因子となる。すなわ
ち伸び率等の機械的強度が決定され、その結果、気泡径
の減少に伴って機械的強度は悪化することになる。前述
の如く、機械的強度が低い値であれば、充分な伸び率を
示す前に前記骨格が断絶してしまう。
は、前述の80μmを越える場合と反対に、細かな気泡
径により形成される骨格は短く、このため多孔体が発現
する硬度は高くなる変化も無視できない。具体的には、
前記硬度の上昇により、弾性限界外での伸び率、すなわ
ち延性も小さな値となってしまうため、弾性限界内にお
いても大きな伸び率は期待できなくなってしまう。従っ
て前記気泡径が50μm未満の場合、前記硬度をアスカ
ーC硬度で30を越えないようにすることが必要であ
る。
強度および伸び率が高くなる気泡径50〜80μmの範
囲であるなしに関わらず、前述した0.8MPa以下
の引張応力により少なくとも100%以上の伸び率は発
現し得るため殊に問題はないが、弾性限界内および限
界外での伸び率が400%を越える一方で、そのために
必要とされる引張応力は大きくなっているため、殊に小
さい力で100%以下の伸び率を達成する場合には留意
が必要である。これは前記気孔径の制御により、得るべ
き多孔体の伸び率および引張強度における最大値を向上
させ得ることを意味している。また前述した如く、前記
気泡径を小さくすることで、前記各物性を制御する場
合、該気泡径が小さくなると、得られる多孔体硬度が高
くなる。このため、気泡径を大きくすることで同様の物
性を達成した場合に較べて、延性の悪化、すなわち弾性
限界内における伸び率の悪化が問題となる畏れがあるの
で留意が必要である。
全体としての構造的な考え方からも、前記気泡径として
50〜80μmが最適である理由付けがなされる。本発
明に係る多孔体10が良好な伸び率を示すのは、部分構
造的には、前述した如く、個々の骨格が引っ張られる力
に対してちぎれる等の損傷を生じることがないためと考
えられる。一方、前記骨格を形成する前記ポリエステル
系熱可塑性樹脂12自体が有する引張強度から考えれ
ば、人力によって充分な伸び率を発現することは考え難
い。
多孔体10の骨格全体の構造が、図3に示す如く、例え
ば全く伸びない糸を使用して網で構成されており、その
全体構造を変化させることで、網全体として伸びる構造
を有していると仮定すれば、個々の骨格が全く伸びない
場合であっても、該多孔体10に全体として所要の伸び
率が発現されると考えられる。
骨格の引張強度が重要である。すなわち前記個々の骨格
が太過ぎる(80μm以上)と、図4(a)に示す如く、1
つの気泡16に関連して得られる伸びは大きな数値とな
るが、この際には縦(図4(a)における上下方向)の縮も
うとする方向について充分に縮む必要がある。しかし骨
格が太い場合には、圧縮に対する抗力も大きく容易には
圧縮されない。従って骨格全体の構造から見ても、伸び
難い結果となる。
は、図4(b)に示す如く、1つの気泡16に関連した骨
格を縮ませるのに必要な力は小さいが、大きな伸びを得
るべく多数の気泡16を一度に変形させる場合、該多数
の気泡16を縮ませるのに関連している多数の骨格を一
度に縮め得るだけの力を考える必要がある。この多くの
気泡16を縮め得る力が、該気泡16の数に比例して大
きくなるものであることは自明である。従って前記気泡
16は小さ過ぎても、骨格全体の変形は困難となり、こ
の場合も伸び率が悪化する。
の触感については、材質がゴムである場合、その摩擦係
数が0.8〜0.9と高い数値となってしまい、その結
果、所謂「つっぱり感」や「ネバつき感」が高く、該触
感が良好とはいえない。しかし本発明に係る多孔体10
の場合、基本的に樹脂であるので、基となる樹脂自体の
摩擦係数も0.43程度と低いため、良好な触感が期待
できる。
材と、水溶性高分子化合物との混合割合は、体積百分率
で45:55〜95:5の範囲内が好ましく、殊に6
5:35〜88:12の範囲内が好適である。前記水溶
性気泡形成材が体積百分率で45%未満の場合には、主
として気泡を形成する該水溶性気泡形成材が少ないた
め、3次元的に連通した多孔体構造が得られなくなる。
一方、前記水溶性気泡形成材の体積百分率が95%を越
える場合には、主として気泡を形成する該水溶性気泡形
成材同士を連通させて溶媒である水を多孔体内部に充分
に導くようにしている前記水溶性高分子化合物が少ない
ため、水溶性物質全体の抽出割合が低下、すなわち得ら
れる多孔体内部に多量に残留して充分な多孔度、すなわ
ち充分な気泡率とし得なくなる。
溶性気泡形成材および水溶性高分子化合物の混合割合を
上述の範囲に設定した場合、これら混合物を成形した成
形体へ水を浸漬させることで、該水溶性気泡形成材およ
び水溶性高分子化合物は容易かつ充分に抽出・除去可能
である。すなわち前記ポリエステル系熱可塑性樹脂を主
材料とし、樹脂物性とゴム物性を併有する3次元連通気
泡構造を有するポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体10
が得られる。
多孔体10を製造するには、図4に示す如く、先ず原料
となるポリエステル系熱可塑性樹脂12、水溶性気泡形
成材および水溶性高分子化合物を、所定の機器を使用し
て混合・混練し、得られた混合物を押出機等を使用して
所定形状の成形体に成形する。これにより得られた成形
体または混合・混練後の混合物を水または所定温度の温
水に浸漬させ、前記水溶性気泡形成材および水溶性高分
子化合物を抽出・除去して、微細な気泡を多数備えて3
次元連通気泡構造を有するポリエステル系熱可塑性樹脂
多孔体10を得るものである。
水溶性気泡形成材および水溶性高分子化合物の混合・混
練には、1軸式または2軸式押出機、ニ一ダ、加圧式ニ
一ダ、コニーダ、バンバリーミキサ、ヘンシェル型ミキ
サあるいはロータ型ミキサその他の混練機等が好適に使
用される。この混練について、特殊な装置は必要なく、
また混練速度等も限定されない。混練時の温度は、使用
するポリエステル系熱可塑性樹脂等の熱溶融点によって
適宜設定されるが、本発明においては、このポリエステ
ル系熱可塑性樹脂12の熱溶融温度(160℃)で前記水
溶性気泡形成材が溶融または昇華することがないので、
如何なる温度であっても設定可能になっている。混練時
間は各種混合物の物性により左右されるが、該混合物が
充分に混合・混練されればよく、通常では30〜40分
程度で充分である。この際に過度の時間に亘る混練は、
主材料であるポリエステル系熱可塑性樹脂12の劣化を
引き起こす原因となるので注意が必要である。混練され
た原料は、押出、射出、プレス、ローラーまたはブロー
等により所要形状への成形が可能であるが、殊に量産性
が高い押出成形または複雑形状となし得る射出成形が好
適である。
形体は、前記水溶性気泡形成材および水溶性高分子化合
物を、溶媒である水に所定時間(成形体の形状・厚さ等
にもよるが、例えば24〜48時間、)浸漬させること
で抽出・除去される。この際の浸漬は、どのような方法
であってもよいが、前記混合物全体を水に接触させる水
中浸漬による抽出・除去が好適である。このとき使用さ
れる水の温度についても、殊に限定がなく、室温程度の
ものであってもよいが、前記各水溶性物質の効率的な除
去のために、15〜60℃の温水を利用してもよい。
は、基本的に公知の分級等により実施される。具体的に
は分級されるべき粒径にもよるが、一般的に必要とされ
る粒子寸法の上限を設定した篩いにより篩い分級を実施
し、次いで必要とされる粒子寸法の下限を設定した篩い
分級またはエアー分級を実施して、設定された範囲の粒
子寸法物を得る。基本的に篩い分級はエアー分級より時
間当りの分級効率が高い一方で、40μm以下といった
細かい粒子寸法では目詰まりが心配されるので、分級す
べき粒径によって適宜選択して使用される。ここでは水
溶性気泡形成材の粒径制御について述べたが、前記水溶
性高分子化合物についても、該水溶性気泡形成材と同様
の粒径制御を施すようにしてもよい。
通気性および肌触り等の触感にも大きな影響を与える。
基本的に抽出法により製造される多孔体の気泡率は、本
発明においては混合する水溶性物質の体積百分率に大き
く依存し、また得られる多孔体における気泡の連通度
は、該水溶性物質を抽出により除去する機構上100%
に近く、結果として3次元的に連通した気泡構造が得ら
れる。このため得られる多孔体が示す通気性は、気泡率
とほぼ比例的に相関することになる。前記通気性として
は、人体に接触的に使用する状態を想定した場合、局所
的な発汗量は運動時においても1g/cm2/min以
下と極少量であるので、本発明に係る多孔体であれば問
題は生じない。
触する多孔体の表面における接触面積によるが、この接
触面積も前記気泡率と正の相関関係をもって変動するこ
とは明らかである。そして得られる多孔体の表面におけ
る接触面積の減少により、該表面の形状的な摩擦性が低
下してより良好な触感を期待できることになる。
性樹脂多孔体の実験例を示す。このポリエステル系熱可
塑性樹脂多孔体は、ポリエステル系熱可塑性樹脂、水溶
性気泡形成材および水溶性高分子化合物を、下記の表1
に示す内容(気泡形成材径および混合割合)で混合し、得
られた混合物を汎用の押出機または射出機を使用して所
要形状に成形し、この成形体に加工を施すことで所要の
試験片(幅 100mm、長さ100mm、厚さ1.7m
m)とした後、水による48時間の抽出処理および熱風
乾燥機による乾燥処理を施して得られるものである。得
られた実施例1〜4および比較例1〜3の各試験片につ
いて、目視または各種測定機器を使用して成形性(成形
可能:○、不可能:×)、引張強度(MPa)、伸び率
(%)および硬度(アスカーC)を夫々観察・測定した。そ
して更に得られた試験体を腕等に巻き付けてその触感等
を官能(良好:○、不良:×)により評価した。使用した
機器および原料については下に記す。なお比較例とし
て、ポリエステル系熱可塑性樹脂だけからなるソリッド
体(比較例1)、多孔体の骨格を形成するポリエステル系
熱可塑性樹脂の混合割合を前述[0016]の範囲外とし
たもの(比較例2および3)を用いた。また参考的に引張
応力0.8MPa時の伸び率(%)と、伸び率(%)が10
0%時の引張応力(MPa)とを併せて示した。
洋紡製 水溶性気泡形成材:商品名 うず塩(NaCl);鳴門塩
業製 水溶性高分子化合物:商品名 PEG2000(PE
G);三洋化成製
この表1から、基本的に骨格を構成する物質としてポリ
エステル系熱可塑性樹脂を使用すると共に、多孔体とし
て成形等して得ることが可能な混合割合、すなわち該ポ
リエステル系熱可塑性樹脂と、水溶性気泡形成材および
水溶性高分子化合物(水溶性物質)との混合割合が体積百
分率で10:90〜40:60の範囲内であれば本発明
に係る内容、すなわち3次元連通気泡構造を有し、0.
8MPa以下の引張応力によりに少なくとも100%以
上の伸び率を発現し得る多孔体を得ることができると確
認された。
わち粒径を50〜80μmの範囲とすることで、50μ
m未満または80μmを越える場合に較べて良好な伸び
率を示すことが確認された。なお実施例3および4につ
いては、引張強度が0.8MPaに至らなかったため、
参考として記載した「引張応力0.8MPa時の伸び率
(%)」は測定不能であった。
エステル系熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法によ
れば、抽出法を用いることで、ポリエステル系熱可塑性
樹脂、水溶性気泡形成材および水溶性高分子化合物の混
合成形体から、樹脂特性とゴム特性、例えば良好な引張
強度、肌触り等の触感、着色性および無臭性並びに硬度
(柔軟性)および伸び率を併有するポリエステル系熱可塑
性樹脂多孔体が得られた。また得られた前記多孔体は、
微細な気泡が3次元的に連通した構造を有しているた
め、軽量であると共に、通気性および良好な触感を発現
する効果も奏する。
可塑性樹脂多孔体の骨格構造を示す概略図である。
体の製造に使用される水溶性気泡形成材の大きさを変化
させた際に、その大きさが得られる多孔体の伸び率等に
与える影響を、骨格の部分的な構造から説明する概略図
である。
体が伸びる際の骨格の全体的な変化を示す概略図であ
る。
変形させるのに必要な力を模式的に示す概略図である。
体の製造方法を示すフローチャート図である。
Claims (13)
- 【請求項1】 熱可塑性樹脂と、水溶性気泡形成材と、
滑材として作用する水溶性高分子化合物とを加熱状態下
で混合して得られる混合物から、前記水溶性気泡形成材
および水溶性高分子化合物を水で抽出除去して、3次元
連通気泡構造とするようにした多孔体において、 前記熱可塑性樹脂として、ポリエステル系熱可塑性樹脂
(12)を使用すると共に、前記水溶性気泡形成材および水
溶性高分子化合物として、前記ポリエステル系熱可塑性
樹脂(12)の熱溶融温度において熱的に安定な物質を使用
することで、 0.8MPa以下の引張応力により少なくとも100%
以上の伸び率を発現し得るようにしたことを特徴とする
ポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体。 - 【請求項2】 前記水溶性気泡形成材の粒径は、50〜
80μmに設定される請求項1記載のポリエステル系熱
可塑性樹脂多孔体。 - 【請求項3】 最終的に得られるポリエステル系熱可塑
性樹脂多孔体の気泡率は、体積百分率で60〜90%の
範囲に設定される請求項1または2記載のポリエステル
系熱可塑性樹脂多孔体。 - 【請求項4】 最終的に得られるポリエステル系熱可塑
性樹脂多孔体の硬度は、アスカーC硬度で30以下に設
定される請求項1〜3の何れかに記載のポリエステル系
熱可塑性樹脂多孔体。 - 【請求項5】 熱可塑性樹脂と、水溶性気泡形成材と、
滑材として作用する水溶性高分子化合物とを加熱状態下
で混合して得られた混合物を水に接触させ、該混合物か
ら前記水溶性気泡形成材および水溶性高分子化合物を抽
出除去して、3次元連通気泡構造とするようにした多孔
体の製造方法において、 前記熱可塑性樹脂として、ポリエステル系熱可塑性樹脂
(12)を使用すると共に、前記水溶性気泡形成材および水
溶性高分子化合物として、前記ポリエステル系熱可塑性
樹脂(12)の熱溶融温度において熱的に安定な物質を使用
し、 得られたポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体における伸
び率が、0.8MPa以下の引張応力で少なくとも10
0%以上となるよう制御したことを特徴とするポリエス
テル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。 - 【請求項6】 前記水溶性気泡形成材としては、その粒
径が50〜80μmのものが使用される請求項5記載の
ポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。 - 【請求項7】 前記水溶性気泡形成材および水溶性高分
子化合物の混合割合は、体積百分率で60〜90%の範
囲に設定される請求項5または6記載のポリエステル系
熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。 - 【請求項8】 前記混合物は、水による抽出に先立ち所
要形状に成形される請求項5〜7の何れかに記載のポリ
エステル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。 - 【請求項9】 前記所要形状への成形は、押出成形また
は射出成形により行なわれる請求項8記載のポリエステ
ル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。 - 【請求項10】 前記水溶性気泡形成材として、無機物
が使用される請求項5〜9の何れかに記載のポリエステ
ル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。 - 【請求項11】 前記水溶性気泡形成材として、トリメ
チロールエタンが使用される請求項5〜9の何れかに記
載のポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。 - 【請求項12】 前記水溶性高分子化合物として、ポリ
エチレングリコールが使用される請求項5〜11の何れ
かに記載のポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方
法。 - 【請求項13】 前記水溶性気泡形成材および水溶性高
分子化合物の抽出除去に使用される水の温度は、15〜
60℃である請求項5〜12の何れかに記載のポリエス
テル系熱可塑性樹脂多孔体の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2002156504A JP2003342410A (ja) | 2002-05-29 | 2002-05-29 | ポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法 |
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---|---|---|---|
JP2002156504A JP2003342410A (ja) | 2002-05-29 | 2002-05-29 | ポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法 |
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JP2002156504A Pending JP2003342410A (ja) | 2002-05-29 | 2002-05-29 | ポリエステル系熱可塑性樹脂多孔体およびその製造方法 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003342410A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005103128A1 (ja) * | 2004-04-23 | 2005-11-03 | Ntn Corporation | 樹脂製多孔体およびその製造方法 |
-
2002
- 2002-05-29 JP JP2002156504A patent/JP2003342410A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2005103128A1 (ja) * | 2004-04-23 | 2005-11-03 | Ntn Corporation | 樹脂製多孔体およびその製造方法 |
US7910198B2 (en) | 2004-04-23 | 2011-03-22 | Ntn Corporation | Resinous porous article and method for production thereof |
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