JP2003339230A - 植物育成用フォーム培地およびその製造方法 - Google Patents

植物育成用フォーム培地およびその製造方法

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JP2003339230A
JP2003339230A JP2002151131A JP2002151131A JP2003339230A JP 2003339230 A JP2003339230 A JP 2003339230A JP 2002151131 A JP2002151131 A JP 2002151131A JP 2002151131 A JP2002151131 A JP 2002151131A JP 2003339230 A JP2003339230 A JP 2003339230A
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acid
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foam medium
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Takayuki Asada
隆之 浅田
Yoshiyasu Tatemichi
良泰 立道
Susumu Muramatsu
享 村松
Shinji Hirayama
真二 平山
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Inoac Corp
Inoac Technical Center Co Ltd
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Inoue MTP KK
Inoac Corp
Inoac Technical Center Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来より実用化されている挿し木方法によっ
ては発根させるのが困難な木本・草本植物における採穂
母樹からの挿し木苗を効率的に生産でき、しかもそのま
ま植林工程に利用できて植林に要する手間やコストの節
減が図られ、併せて環境への負荷も低減させ得る植物育
成用フォーム培地を提供する。 【解決手段】 親水性に富むNCO基含有量が3〜26
重量%であるイソシアネート末端プレポリマーと、水
と、毛管現象を生じ得る程度に微細な孔隙及び毛管現象
を生じない程度に粗い孔隙をフォーム中に生成する多孔
質素材とから調整した発泡性フォームの基材に、pH調
節剤、殺菌剤又は抗菌剤、植物成長調節剤及び栄養剤の
群から選択される一種以上の添加剤を分散状態で存在さ
せたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、植物育成用フォ
ーム培地およびその製造方法に関し、更に詳細には、親
水性及び吸水性に優れ、広く挿し木や苗等の植物の育成
に好適に使用し得るフォーム培地と、当該フォーム培地
を製造する方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】CO2の過剰発生や緑地帯の減少等に起
因する地球の温暖化傾向が、人類生存上の大きな問題と
なっている。このため地球環境を修復する世界規模のプ
ロジェクトの一環として、今後植林活動が盛んに行なわ
れるものと予測される。すなわち植林を活発化すること
で、地球表面に占める緑地帯の面積が広がり、地表水分
の早期蒸発を抑制して砂漠化が防止されると共に、炭酸
同化作用の促進による大量の酸素供給が期待される。例
えば、ユーカリ属植物(Eucalyptus spp.)及びアカシア
属植物(Acacia spp.)の多くは成長性及び環境適合性の
何れについても優れている。このため植林用の樹種とし
ての重要性が認識されてきており、特に発展途上国を含
む世界各地で盛んに植林に供されている。これらの点に
ついては、1996年にCSIROPublishingが発行した「環
境の統御:ユーカリ及び他の早期育成種の役割」(「Envir
onmental Management: The Role of Eucalyptus and Ot
herFast Growing Species」 K.G.Eldridge, M.P.Crowe,
K.M.Old 編 1995年10月にオーストラリアで開催
されたオーストラリア/日本の合同研究集会の会報)に
言及されている。
【0003】植物は、木質の茎(木幹)を有する木本(も
くほん)植物と、地上部が柔軟・多漿で木質をなさない
草本(そうほん)植物とに大別される。これらを総称する
植物の植林用苗木としては、一般に種子から芽を出して
成長する実生苗及び挿し木や接ぎ木によるクローン苗が
知られている。殊に、挿し木は最も簡便かつ安価なクロ
ーン苗の生産技術であって、例えば、南米・欧州・東南
アジア・南アフリカ等では前述したユーカリ属植物の挿
し木苗が大量に生産されている。
【0004】例えば、ユーカリ属植物に汎用される挿し
木の従来技術について、1993年にニューヨークで発
行された刊行物「ユーカリの育成と繁殖」(「Eucalypt Do
mestication and Breeding」K.G.Eldridge, J.Davidso
n, C.Harwood, G.v.Wyk 編 Oxford University Press I
nc.,)の237〜246頁に詳細な記述がなされてい
る。すなわち、採穂母樹の枝から1〜4節、2〜8枚の
葉を含む穂木を切り出し、葉の一部を切除して挿し穂を
調製する。この挿し穂は、ベンレートなどの殺菌剤溶液
に浸漬してから、基部に発根促進剤として機能するイン
ドール酪酸等のホルモン粉剤を塗付するか、或いはホル
モン溶液に基部を浸した後、挿し木培地に開設した挿し
付け穴に挿し付ける。ここで挿し木培地としては、バー
ク、砂、木屑、ピートモス、バーミキュライト、パーラ
イト、くん炭等や、これらの混合物が例示され、一般に
育苗ポットやプラグトレー等の容器に充填した形で使用
される。前記挿し木培地は、適度な透水性と保水性を有
する素材であれば何れの素材であってもよく、その通気
性と保湿性のバランスが挿し穂における発根の成否を左
右する。なお、挿し穂の腐敗を避けるには、挿し木培地
に有機物を含まない方がよく、殺菌処理した培地を用い
ることが好ましい。施肥は通常行なわないが、緩効性の
粒状肥料を培地に混ぜておくか、液肥として潅水時に与
えるようにしてもよい。
【0005】しかし、前述した挿し木用の培地を構成す
る各種素材には、挿し木苗を生産する国や地域の実情に
よっては入手が困難なものも多い。従って挿し木培地と
して理想的な素材から離れて、現地で入手し易い素材の
単なる組み合わせで培地を作っているのが現状である。
従って不適切な素材が培地の構成材料として取り込ま
れ、挿し穂の発根率を低下させたり、素材品質の不均一
に起因して発根にばらつきを生じさせる等の不都合を招
いている。このように、大規模に植林される各種植物の
クローン苗を大量かつ安定的に生産する現場では、挿し
木培地を構成する素材の品質にばらつきがあるため、従
来の挿し木培地をこのまま使用するのに不都合で、特に
発根させるのが難しい挿し木苗の効率的な生産は極めて
困難であった。その結果、挿し木苗の生産を諦めざるを
得ない場合も多いが、これは産業上の不利益に繋がるの
で、安定的に挿し穂を発根させ得る挿し木培地の供給が
世界的に求められている。特にポリウレタン発泡体の如
きフォーム培地は、所要形状に成形可能であり、しかも
軽量で作業性が良好なことから、均一な挿し木苗を大量
かつ安定的に生産するクローン苗の分野に好適である。
従って、このようなフォーム培地については、様々な技
術的改良が図られてきている。
【0006】例えば、水耕栽培における育苗床等に用い
られる培地として、天然の輝緑岩を溶融させて繊維状と
したロックウールの成形加工品(Rockwool社の商標 “gr
odan” 「グロダン」)や、フェノール樹脂を発泡させて成
形したフォーム培地(Smithers-Oasis社の商標 “Oasi
s” 「オアシス」)がよく知られている。これらは水耕栽
培向けだけでなく、挿し木のための育苗培地としても広
く利用されている。他方で、これら製品を改良した製品
(例えば松村工芸株式会社の登録商標 “アクアフォー
ム”)や、従来より挿し木苗の生産に使用されてきた多
孔質素材の圧縮成形品、更には全く異質の多孔質素材の
開発及びこれら異質の素材と既存の素材との組合せから
成る製品が数多く提案され、何れも挿し木等の育苗培地
としての利用が期待されている。
【0007】例えば、特開平9−271278号公報に
は、上層と下層の密度を変えることで水分率及び気相率
を調整したロックウール栽培床が開示されている。また
特開2001−37326号公報には、密度が調整され
ると共に、割裂部を有することで苗に好適な環境条件を
与えるロックウール育苗用培地が開示されている。特開
平6−284816号公報には、ロックウールからなる
無機繊維層とパーライトやバーミキュライト等の多孔質
粒子からなる層とを交互に積層・成形することで、保水
性を改善した植物育成用培地が開示されている。特開平
11−137075号公報には、粒状化させた吸水性フ
ェノール樹脂発泡体を接着付与物質で固めてブロック化
させた人工栽培用土が開示され、これは挿し木等の育苗
に好都合である。また特開2000−287536号公
報には、フェノール樹脂発泡体等の多孔質体やロックウ
ール等からなる繊維質成形体、パーライト等の多孔質粒
子成形体、或いはこれらの積層体から選ばれる保水層及
び親水層と透水性を有する不透根シート、更に通気性材
料からなる表面材を積層した植物栽培用培地が開示され
ている。
【0008】更に特開平8−9772号公報には、ピー
トモス等の植物繊維材料、バーミキュライト及びゼオラ
イトを含む植物栽培培地用圧縮成型体が開示されてい
る。特開平11−155362号公報には、ヤシガラの
残滓であるコイアダストを含有する植物栽培用圧縮成型
培地が開示されている。特開2000−201530号
公報には、ピートモス等の植物繊維とバーミキュライト
を混合して圧縮成形された育苗培地が開示されている。
特開2000−324946号公報には、籾殻及び芯鞘
型繊維を混合し、加熱成形してなる園芸用培地が開示さ
れている。国際公開番号WO97/48271号公報に
は、バーミキュライトとセルロース繊維からなる混合物
を成型した植物組織培養用培地が開示されている。また
特開2000−232821号公報には、セルロース繊
維を原料として、吸水性、保水性及び通気性に優れた植
物育苗・成育用成形培地が開示されている。
【0009】更に農園芸用の育苗床として、ポリウレタ
ンフォームの使用も各種試みられている。例えば、特開
平6−25374号公報には、親水性及び吸水性に優れ
ると共に連続気泡構造を有する硬質ウレタンフォームの
製造方法が開示されており、その明細書には植物育成土
壌に代替え利用し得る旨が記載されている。特開平9−
328531号公報には、適度な脆さを有すると共に、
良好な吸水性及び保水性を有する硬質ポリウレタンフォ
ームの製造方法が開示されており、明細書には各種の果
菜類、花卉類等の育苗床に使用できる旨が記載されてい
る。特開平6−178615号公報には、粉砕プラスチ
ックや砂等からなる約2〜6mmのコア粒子の表面に発
泡ウレタン樹脂被覆層の形成された被覆粒子が、互いに
接触して一体的に結合した植物栽培床が開示されてい
る。特開平9−23769号公報には、ポリウレタン等
の軟質発泡体の成形時や裁断時に生ずる屑を集合的に加
圧接着した植物栽培用成形培地が開示されている。また
特開2000−041480号公報には、親水性硬質ウ
レタンフォーム等の連続通気孔を有する多孔性水供給支
持体と吸水性ポリマーとからなる植物の生育に有用な植
物支持体が開示されている。
【0010】前掲した従来技術に係る特許公開公報は、
挿し木された植物が効果的に生育するように、肥料、土
壌改良材、殺菌剤、pH調整剤、植物成長調節物質等を
挿し木培地に添加や塗布を行なって、当該培地における
理化学性を改善する可能性についても述べている。しか
し前記公報には、本発明のように植物の挿し木苗育成に
好適に使用されるフォーム培地に関する記載は全くなさ
れていない。他方で、挿し木の発根を促進するには、適
度な培地の保水性・通気性だけでなく、植物成長調節剤
等のように発根促進作用を有する物質や、病原菌の腐敗
から保護する物質を、挿し穂に与える方法が広く知られ
ている。そこで、このような物質を以下に例示する。
【0011】先ず、植物の成長を調節する物質として、
特開平6−98630号公報には、インドール酪酸が開
示されている。特許1930448号公報には、インド
ール酢酸誘導体が開示されている。特開平6−1996
11号公報には、アデニン誘導体が開示されている。特
許第1144074号公報には、アデノシン誘導体が開
示されている。特許第1286852号公報には、サイ
クリック−3’,5’−アデニル酸及びその誘導体が開
示されている。特開平8−81310号公報には、アブ
シジン酸類塩化合物であるエポキシシクロヘキサン誘導
体及びブラシノステロイド類が開示されている。特開平
8−81310号公報には、アブシジン酸類縁化合物及
びブラシノステロイド類が開示されている。特開昭62
−4207号公報には、コリン類が開示されている。特
開平2−255603号公報及び特開平2−25560
4号公報には、コリン塩化合物と糖類の併用及びコリン
塩化合物とアミノ酸類の併用が開示されている。
【0012】また特許第1152100号公報には、ジ
アミノマレオニトリルが開示されている。特開平6−2
71405号公報には、レブリン酸又はその塩類が開示
されている。特開平8−143406号公報には、グリ
チルリチンとビタミン類の併用が開示されている。特許
第1372124号公報には、モラノリン誘導体が開示
されている。特許第1578371号公報には、シクロ
ヘキサン誘導体が開示されている。特許第140697
4号公報には、β−カルボキシエチルシリコンセスキオ
キサイドが開示されている。特許第1616338号公
報には、新規ヒダントイン化合物が開示されている。特
許第1647694号公報には、ジケトピペラジン誘導
体が開示されている。特開平1−13006号公報に
は、L−フコース特異的レクチンが開示されている。特
開平5−339117号公報には、ポリフェノール類が
開示されている。
【0013】殺菌或いは抗菌作用を有する物質或いは病
原菌の腐敗から挿し穂を保護する作用を有する物質とし
て、特許第1044747号公報には、ヒドロキシメチ
ルイソオキサゾールが開示されている。特許第1466
961号公報には、1,1−ジフェニルエテン誘導体が
開示されている。特許第1751658号公報には、プ
ロピコナゾールとフエンプロピモルフとを含有する殺菌
剤組成物が開示されている。特開平6−183918号
公報には、オキサジアジン誘導体が開示されている。特
許第1833555号公報には、ファイトアレキシン誘
導物質が開示されている。更に本発明者等は、特に発根
させるのが難しい樹種・系統や、高い発根能力を本来有
してはいるが、樹齢を経て発根困難となった樹種・系統
の採穂母樹から得た挿し穂の基部をアルミニウム塩化合
物の水溶液に浸漬することで、該挿し穂を延命させて発
根に至らせる方法を特開2002−010710号公報
中で開示している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし植物の挿し木苗
を育成する場合、挿し穂が発根するに至るには、草花類
のそれに比べて長期間を要するのが通常である。そこで
挿し穂に前述した発根促進物質及び挿し穂の保護物質を
長期かつ継続的に与え得る何等かの工夫をしない限り、
当該物質を挿し穂に与えたからといって必ずしも効果が
得られる訳ではなかった。すなわち挿し穂における発根
を促進したり、挿し穂を侵入する病原菌を殺したり抗菌
性を高めたりするには、これに対し有効に作用する発根
促進物質や殺菌剤、抗菌剤等が多数開発されているが、
挿し木用の培地に長期間に亘り植設状態となる挿し穂に
対し、前記の各種物質の効能作用を同じく長期間に亘り
持続させ得る挿し木培地は提案されておらず、市場にお
いてもそのような培地は全く見掛けなかった。
【0015】更に前述したように、農園芸用の育苗床や
植物育成土壌として(特開平6−25374号公報)、各
種の果菜類等の育苗床として(特開平9−328531
号公報)、植物栽培床として(特開平6−178615号
公報)、植物栽培用成形培地として(特開平9−2376
9号公報)、各種のポリウレタンフォームを使用するこ
との提案がなされている。ところで前記夫々の発明に係
る植物育成用フォーム培地に挿し穂され、該フォーム培
地で或る程度まで生育した植物を、その培地のまま土壌
に植林することができれば手間が省けて便利であるが、
実際には培地ごと植林することは全く行なわれていな
い。その理由は、従来のフォーム培地の水分特性に問題
があったからである。すなわち従来のフォーム培地で
は、これに充分な灌水を施すと含水率が極めて高くなっ
て、植林を行なうに際し運搬その他ハンドリングの妨げ
となる欠点がある。またフォーム培地のまま土に埋めて
植林した後は、周囲の土壌とのpF値の差が大きくなり
過ぎ、挿し木の生育に適さなくなる欠点が指摘される。
ここにpF値は、水が素材に引き付けられている強さの
程度を示す数値であって、水柱の高さ(cm)の常用対数で
表わされる。換言すれば水分保持力(主に毛管力と吸着
力とからなる)を示す指数であって、フォーム培地のp
F値が周囲土壌のpF値より遥かに小さいために、挿し
木の発根部から急激に水が周囲の土壌に奪われる状態と
なり好ましくない、ということである。
【0016】また従来公知のフォーム培地の多くは自然
分解せず、従って土中に未分解成分が長年に亘り残留し
て環境を悪化させる、という問題も生じている。更に、
フォーム培地は植林に一般に用いられるポットの形状に
馴染み難いので、該フォーム培地で発根した後の挿し木
苗を該ポットに移植する作業が必要で、植林全体におけ
る手間とコストを増大させる一因になっている。すなわ
ち挿し木等の苗をフォーム培地からポット等に移植する
ことなく、そのまま植林することができれば、植林に要
する手間やコストの節減に寄与して経済的に大きなメリ
ットを享受し得るものであるが、そのような提案は未だ
全くなされていないのが現状である。
【0017】
【発明の目的】本発明は、前述した従来技術に係る各種
フォーム培地に内在する諸種の欠点に鑑み、これを好適
に解決するべく提案されたものであって、従来より実用
化されている挿し木方法によっては発根させるのが困難
な木本・草本植物における採穂母樹からの挿し木苗を効
率的に生産でき、しかもそのまま植林工程に利用できて
植林に要する手間やコストの節減が図られ、併せて環境
への負荷も低減させ得る植物育成用フォーム培地と、該
フォーム培地の製造方法とを提供することを目的とす
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決して所期
の目的を達成するために、本発明に係る植物育成用フォ
ーム培地は、親水性に富むNCO基含有量が3〜26重
量%であるイソシアネート末端プレポリマーと、水と、
毛管現象を生じ得る程度に微細な孔隙及び毛管現象を生
じない程度に粗い孔隙をフォーム中に生成する多孔質素
材とから調整した発泡性フォームの基材に、pH調節
剤、殺菌剤又は抗菌剤、植物成長調節剤及び栄養剤の群
から選択される一種以上の添加剤を分散状態で存在させ
たことを特徴とする。この場合に、前記群中にHLB値
が2〜16の範囲にある非イオン界面活性剤を存在さ
せ、この群中から前記非イオン界面活性剤を選択し得
る。このHLB値が2〜16の範囲にある非イオン界面
活性剤は、例えば、脂肪族高級アルコールエチレンオキ
サイド付加物、高級アルコールエチレンオキサイド付加
物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、多
価アルコール脂肪族エステルエチレンオキサイド付加
物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂
肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレン
グリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの
脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステ
ル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、蔗
糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテ
ルから選択される。
【0019】前記イソシアネート末端プレポリマーは、
有機イソシアネート及びポリオールから製造するのが好
適である。多孔質素材は、ピートモス、バーミキュライ
ト、パーライト、鹿沼土、くん炭、バーク堆肥、木屑等
の用土類の何れか、またはこれらの任意の混合物とする
のが好ましい。前記群を構成する添加剤としてのpH調
節剤は、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク
酸、乳酸、リンゴ酸、2−オキソグルタル酸、5−アミ
ノレブリン酸等の有機酸類の何れか、またはこれらの任
意の組合わせとするのが好適である。前記群を構成する
添加剤としての殺菌剤や抗菌剤は、硫酸アルミニウムや
乳酸アルミニウム等のアルミニウム塩化合物、低分子キ
トサン、またはヒドロキシイソキサゾール、メタラキシ
ル、ベノミルの何れか、またはこれらの任意の組合わせ
とするのが好ましい。更に前記群を構成する添加剤とし
ての植物成長調節剤は、3−インドール酪酸、α―ナフ
チル酢酸、4−クロロインドール−3−酢酸等のオーキ
シン類、6−ベンジルアミノプリン、ゼアチン等のサイ
トカイニン類、アブシジン酸及びその誘導体、ブラシノ
ステロイド類、パクロブトラゾール、プロヘキサジオン
カルシウム等の植物成長抑制物質の何れか、またはこれ
らの任意の組合わせとするのが好適である。また、前記
群を構成する添加剤としての栄養剤は、アラニン、グリ
シン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸類、
硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、
尿素等の窒素塩類、リン酸二水素ナトリウム、硫酸カリ
ウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機塩
類、ブドウ糖、蔗糖等の糖類の何れか、またはこれらの
任意の組合わせとするのが好ましい。
【0020】同じく前記課題を解決し、所期の目的を達
成するために本発明に係る植物育成用フォーム培地の製
造方法は、100重量%の親水性に富むイソシアネート
末端プレポリマーと、50〜1000重量%の水と、3
0〜400重量%の多孔質素材と、pH調節剤、殺菌剤
または抗菌剤、植物成長調節剤、栄養剤からなる群より
選択される一種以上の添加剤とを混合攪拌し、得られた
混合液を発泡硬化させることで、該プレポリマーと水と
の反応によって得られるフォーム培地の基材中に前記多
孔質素材及び添加剤を分散状態で存在させたことを特徴
とする。得られたフォーム培地は、次いでこれを加熱す
ることで完全硬化させ、水分を除去するのが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る植物育成用フ
ォーム培地およびその製造方法について、好適な実施例
を挙げて以下説明する。実施例に係る植物育成用フォー
ム培地は、親水性に富むNCO基含有量が3〜26重量
%であるイソシアネート末端プレポリマーと、水と、毛
管現象を生じ得る程度に微細な孔隙及び毛管現象を生じ
ない程度に粗い孔隙をフォーム中に生成する多孔質素材
とから調整した発泡性フォームの基材からなり、この発
泡性フォームの基材にpH調節剤、殺菌剤又は抗菌剤、
植物成長調節剤及び栄養剤の群から選択される一種以上
の添加剤を分散状態で存在させたものである。その形
態、すなわち外的な輪郭形状や寸法については、植林に
使用するフォーム培地としての取扱いに支障を来さない
限り自由な成形が可能である。
【0022】(多孔質素材について)前述した植物育成用
フォーム培地の主たる構成要素たる多孔質素材は、毛管
現象を生じ得る程度に微細な孔隙と、毛管現象を生じな
い程度に粗い孔隙とを所要の割合で兼ね備えていること
が要求される。これは、フォーム中に毛管現象を生じ
ない程度に粗い孔隙を生成させることで、発泡したフォ
ーム生地に良好な水捌け機能を具有せしめると共に、
前記毛管現象を生じ得る程度に微細な孔隙中に水及びp
H調節剤等の添加剤を分散状態で存在させることで、挿
し木培地に要求される保水性及び挿し穂の発根促進や抗
菌等の機能を長期に亘って持続せしめるものである。な
お添加剤としては、後述の如く、pH調節剤、殺菌剤又
は抗菌剤、植物成長調節剤及び栄養剤の群から一種以上
が選択されるが、前記群中に整泡剤及び気泡安定剤とし
て機能する非イオン界面活性剤を、そのHLB値が2〜
16となる範囲で存在させ、この群から該非イオン界面
活性剤を添加剤として選択するようにしてもよい。
【0023】実施例に係る植物育成用フォーム培地に関
して、その主たる要素となる多孔質素材は、ピートモ
ス、バーミキュライト、パーライト、鹿沼土、くん炭、
バーク堆肥、木屑等の用土類の何れかが推奨される。ま
たピートモス等の各単体でなく、ピートモス、バーミキ
ュライト、パーライト、鹿沼土、くん炭、バーク堆肥、
木屑等の用土類の任意の混合物としてもよい。ここにピ
ートモス(peat moss)は「草炭」とも云い、草本類を主と
する泥炭の一種である。またバーミキュライト(vermicu
lite)は、多量の水を含んだ黒雲母の変成物で「蛭石」と
も称される。パーライト(pearliteまたはperlite)は「真
珠石」とも称し、黒曜石に類似した一種の天然発泡ガラ
スで建築用骨材に使用される。鹿沼土は、黄色で粒状を
なす軽石層の一種で、多孔性に富んでいる。くん炭(cha
rcoal)は、籾がらやヤシがらを蒸し焼きにして炭化させ
たものをいう。更にバーク堆肥(bark compost)は、広葉
樹や針葉樹の樹皮に鶏ふんや尿素などの窒素源を添加し
て長期間堆積発酵させたものである。
【0024】これらの多孔質素材は、一般に角塊状・板
状・粒状等をなす物質の多数の集合からなり、夫々の物
質の大きさは数mm程度以下の微小体である。そして夫
々の微小物質は毛管現象を生じ得る程度に微細な孔隙を
有しているが、これら微小物質が集合すると毛管現象を
生じない程度に粗い孔隙を作ることになる。ここで毛管
現象を生じ得る程度に微細な孔隙と、毛管現象を生じな
い程度に粗い孔隙とを分かつ境界は、使用される多孔質
素材の性状にもよるが、一般に30〜100ミクロン程
度の孔径が目安とされる。また微細な孔隙と粗い孔隙と
の存在割合は、一般に1対1程度とされる。これら多孔
質素材を添加する部数は、特に限定的なものではない
が、最終製品たる植物育成用フォーム培地の乾燥時の重
量を100%とした場合に、その30〜75重量%の範
囲で添加するのが好ましい。何れにしても、先に具体的
に挙げた多孔質素材以外に、毛管現象を生じ得る程度に
微細な孔隙及び毛管現象を生じない程度に粗い孔隙をフ
ォーム中に生成し得る素材があれば、本実施例に云う多
孔質素材として好適に使用可能である。
【0025】(イソシアネート末端プレポリマーについ
て)次に、発泡性フォームの基材となる前記親水性に富
むイソシアネート末端プレポリマーとしては、有機イソ
シアネートとポリオールと架橋剤とを公知のプレポリマ
ー製造方法に従い反応させて得られるもの(重合体)であ
って、或る程度の流動状態を有しているものが使用され
る。ここに「或る程度の流動状態」とは、前記イソシアネ
ート末端プレポリマーを、水、多孔質素材及び各種の添
加剤と共に混合攪拌することで、均一な混合物が得られ
る程度をいう。また有機イソシアネートとしては、イソ
シアネート末端プレポリマーに対する含有量が3〜26
重量%のイソシアネート基(NCO基)を備えるものであ
るならば特に制限はない。具体的には、2,4−トリレ
ンジイソシアネート或いは2,6−トリレンジイソシア
ネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(MDI)、更には、4,4’−ジフェニルメタンジイソ
シアネート(HMDI)及び異性体、多核体が含まれるク
ルードMDI、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネー
ト(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイ
ソシアネート(TMDI)、p−フェニレンジイソシアネ
ート、4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート(HM
DI)、3,3’−ジメチルジフェニル 4,4’−ジイソ
シアネート(TODI)、m−キシレンジイソシアネート
(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(T
MXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、
1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、或いは
これらのウレタン、アロファネート、ビゥレット各変性
体の外、2核体等が挙げられる。
【0026】またポリオールとしては、ポリエーテル
系、ポリエステル系、ポリカプロラクトン系、ポリカー
ボネート系等の公知のものを使用可能である。また、約
2〜8のヒドロキシル官能基と約200〜20000の
重量平均分子量を有するものが使用し得る。ここで好ま
しくは、2官能の開始剤にエチレンオキサイド、プロピ
レンオキサイドの双方、或いは何れか一方を付加して得
られる分子量800〜4000のポリオールである。更
に、3次元網目構造の発泡体を構成するために、前記イ
ソシアネート末端プレポリマーの製造に際しては、架橋
剤として多官能で且つイソシアネート基と反応性を有す
るものの使用が好ましい。その架橋剤として、例えばジ
エチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラ
エチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、グリセリ
ン、トリメチロールプロパン、トリレン−2,4,6−
トリアミン、エチレンジアミン、アミノエタノール、ト
リメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタ
メチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エタノー
ルアミン、ジエタノールアミン、ヒドラジントリエタノ
ールアミン、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、
ニトリロトリ酢酸、クエン酸、4,4’−メチレンビス
(o−クロロアニリン)等が挙げられる。これらの中で
も、グリセリンやトリメチロールプロパンが広く使用さ
れていることから好ましい。
【0027】更に、前記イソシアネート末端プレポリマ
ー100重量%に対し水50〜1000重量%とされ
る。
【0028】(添加剤一般について)前記親水性に富むN
CO基含有量が3〜26重量%であるイソシアネート末
端プレポリマーと、水と、毛管現象を生じ得る程度に微
細な孔隙及び毛管現象を生じない程度に粗い孔隙をフォ
ーム中に生成する多孔質素材とから調整した発泡性フォ
ームの基材に分散状態で存在させられる添加剤は、pH
調節剤、殺菌剤又は抗菌剤、植物成長調節剤及び栄養剤
の群から一種以上が選択されるが、これに限定されるも
のではない。HLB値が2〜16の範囲にある非イオン
界面活性剤を、添加剤として使用してもよい。また必要
に応じて、例えば窒素質肥料、りん酸質肥料、カリ質肥
料、石灰質肥料、けい酸質肥料、苦土質肥料、マンガン
質肥料、ほう素質肥料、有機質肥料等から選ばれる少な
くとも1種の肥料成分や、アルギニン、グルタミン酸、
グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、アラニ
ン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニ
ン等から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸や、チアミ
ン、ビオチン、リボフラビン、ニコチン酸、ピリドキシ
ン、アスコルビン酸、トコフェロール等から選ばれる少
なくとも1種のビタミン類や、単糖類、オリゴ糖類、低
分子量の水溶性多糖類から選ばれる少なくとも1種の糖
類の1種以上を含有させてもよい。
【0029】(pH調節剤について)前記の群を構成する
添加剤としてのpH調節剤は、例えば、酒石酸、アスコ
ルビン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、2−
オキソグルタル酸、5−アミノレブリン酸等の有機酸類
の何れか、またはこれらの任意の組合わせが好適に使用
される。その添加部数としては、特に限定されるもので
はないが、最終製品たる植物育成用フォーム培地のpH
を4.2〜5.8の範囲で調節すると良好な結果が得られ
る。
【0030】(殺菌剤または抗菌剤について)前記群を構
成する添加剤としての殺菌剤または抗菌剤は、一例とし
て、硫酸アルミニウムや乳酸アルミニウム等のアルミニ
ウム塩化合物、低分子キトサン、またはヒドロキシイソ
キサゾール、メタラキシル、ベノミルの何れか、または
これらの任意の組合わせが好適に使用される。その添加
部数としては、薬剤の種類や作用、メカニズムにより、
特に限定されないが、植物育成用フォーム培地の乾燥時
の重量を100%とした場合に、0.01〜0.1重量%
の範囲で添加すると良好な結果が得られる。
【0031】(植物成長調節剤について)前記群を構成す
る添加剤としての植物成長調節剤は、例えば、3−イン
ドール酪酸、α―ナフチル酢酸、4−クロロインドール
−3−酢酸等のオーキシン類、6−ベンジルアミノプリ
ン、ゼアチン等のサイトカイニン類、アブシジン酸及び
その誘導体、ブラシノステロイド類、パクロブトラゾー
ル、プロヘキサジオンカルシウム等の植物成長抑制物質
の何れか、またはこれらの任意の組合わせが好適に使用
される。その添加部数としては、特に限定されないが、
植物育成用フォーム培地の乾燥時の重量を100%とし
た場合に、0.000001〜0.0001重量%の範囲
で添加すると良好な結果が得られる。
【0032】(栄養剤について)前記群を構成する添加剤
としての栄養剤は、一例として、アラニン、グリシン、
アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸類、硝酸カ
リウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素等
の窒素塩類、リン酸二水素ナトリウム、硫酸カリウム、
塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機塩類、ブド
ウ糖、蔗糖等の糖類の何れか、またはこれらの任意の組
合わせが好適に使用される。その添加部数は、特に限定
されないが、植物育成用フォーム培地の乾燥時の重量を
100%とした場合に、0.001〜1.0重量%の範
囲で添加すると良好な結果が得られる。
【0033】(非イオン界面活性剤について)発泡させた
フォームに対する気泡安定剤及び整泡剤として、前記群
中にHLB値が2〜16の範囲にある非イオン界面活性
剤を存在させ、この群から該非イオン界面活性剤を選択
するようにしてもよい。このHLB値が2〜16の範囲
にある非イオン界面活性剤としては、例えば脂肪族高級
アルコールエチレンオキサイド付加物、高級アルコール
エチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレ
ンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪族エステルエ
チレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレン
オキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付
加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付
加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリ
トールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタン
の脂肪酸エステル、蔗糖の脂肪酸エステル、多価アルコ
ールのアルキルエーテルから選択するのが好適である。
その添加部数は、特に限定されないが、水100重量%
に対して0.1〜3.0重量%の範囲で添加すると良好
な結果が得られる。
【0034】(アルミニウム塩化合物について)特許請求
範囲には記載してないが、前記群を構成する添加剤とし
てアルミニウム塩化合物を選択してもよい。このアルミ
ニウム塩化合物としては、例えば硫酸アルミニウム、乳
酸アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸
カリウムアルミニウムが挙げられる。その添加部数とし
ては、植物育成用フォーム培地の乾燥時の重量を100
%とした場合に、0.1〜0.5重量%の範囲で添加する
と良好な結果が得られる。
【0035】(実施例のフォーム培地を適用し得る植物
について)実施例に係るフォーム培地に挿し木し得る植
物は限定的なものではないが、殊に前述したように、地
球環境の修復のため植林活動が今後盛んになると予測さ
れるユーカリ属植物及びアカシア属植物が挙げられる。
ユーカリ属植物としては、ユーカリ・カマルドレンシス
(Eucalyptus camaldulensis)、ユーカリ・グランディス
(E. grandis)、ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、
ユーカリ・ナイテンス(E. nitens)、ユーカリ・テルテ
ィコルニス(E. tereticornis)、ユーカリ・ユーロフィ
ラ(E. urophylla)等、及びこれらを片親とする交雑種
や、これらの亜種・変種が例示される。またアカシア属
植物としては、製紙原料用樹種に好適なアカシア・アウ
リカリフォルミス(Acacia auriculiformis)、アカシア
・マンギウム(A. mangium)、アカシア・メアランシー
(A. mearnsii)、アカシア・クラシカルパ(A. crassicar
pa)、アカシア・アウラコカルパ(A. aulacocarpa)等、
及びこれらを片親とする交雑種や、これらの亜種・変種
等が例示される。
【0036】なお、ユーカリ属植物の挿し木に関して
は、[0004]の項で言及した刊行物「ユーカリの育成
と繁殖」に詳述してある。しかし前記刊行物に述べられ
た方法に従い挿し木を行なっても、発根させるのが特に
難しい樹種・系統や、高い発根能力を有する樹種・系統
であるが高樹齢のため発根困難となる採穂母樹が依然と
して存在する。このような場合であっても、実施例に係
る植物育成用フォーム培地を使用すると共に、その環境
条件として適度の温度(10〜30℃)、高い相対湿度
(70〜100%)及び良好な空気循環を確保すること
で、該フォーム培地に挿し付けられた挿し穂は良好な発
根性を示すことが確認された(後述)。
【0037】(製造方法について)実施例に係る植物育成
用フォーム培地を製造する方法としては、次の工程を経
ることで行なった。 (1) ポリエチレングリコール(分子量1000)1モル、
グリセリン1モル、及び市販の2,4−及び2,6−ト
リレンジイソシアネート(TDI)の80/20混合物5
モルからイソシアネート末端プレポリマーを製造した。
得られたイソシアネート末端プレポリマーは淡黄色で、
比重1.10、25℃で粘度13400cps(ブルッ
クスフィールド粘度計、ロータ4)、イソシアネート基
(NCO基)含有量が11.2重量%であった。 (2) 前記(1)記載の親水性に富むイソシアネート末端プ
レポリマー100重量%を準備した。このイソシアネー
ト末端プレポリマーは、先に[0025]で述べた如く、
有機イソシアネート及びポリオールの重合体であって、
或る程度の流動状態を有していた。 (3) 100重量%のイソシアネート末端プレポリマーに
対し、900重量%の水を準備した。 (4) 100重量%のイソシアネート末端プレポリマーに
対し、300重量%の多孔質素材を準備した。ここで使
用した多孔質素材は、毛管現象を生じ得る程度に微細な
孔隙及び毛管現象を生じない程度に粗い孔隙をフォーム
中に生成し得るものであって、バーミキュライトとパー
ライトとを85対15の割合で混合した混合物であっ
た。 (5) 添加剤としてpH調節剤、殺菌剤、植物成長調節
剤、栄養剤を準備した。
【0038】前記(1)〜(5)に述べたイソシアネート末端
プレポリマーと、水と、多孔質素材と、添加剤とを混合
攪拌して混合液を作成し、該混合液を容器に注いで発泡
させた。これにより前記イソシアネート末端プレポリマ
ーは、水と反応して発泡硬化し、該プレポリマーからな
るフォーム培地の基材が作成された。前記添加剤は、前
記多孔質素材における毛管現象を生じ得る程度に微細な
孔隙にトラップされて分散状態で存在するに至った。次
いで前記フォーム培地を加熱硬化させ、最終製品として
の植物育成用フォーム培地を製造した。この場合に、前
記混合液を育苗ポットやプラグトレー等の容器に充填し
て所要の形態を付与するようにしてもよい。
【0039】
【実験例と比較例】次に、植物育成用フォーム培地及び
その製造方法につき、諸種の仕様を変更した実験例と比
較例を対比的に挙げて検討した。なお、実験例及び比較
例における部及び重量%は、基本的に植物育成用フォー
ム培地の乾燥時の重量を100%とした場合の重量部数
及び重量%を示す。
【0040】(フォーム培地の製造について) (実験例1)多孔質素材としてのバーミキュライトを必要
重量部(50%〜90%)だけ専用容器に移し、このバー
ミキュライトに水及び殺菌剤としての硫酸アルミニウム
を必要重量部入れて攪拌した。次いで、これにイソシア
ネート末端プレポリマーを必要重量部入れて攪拌し、攪
拌した原料をポット状の専用容器に流し込んで反応(発
泡)が終わるまで放置した。反応の終了により得られた
フォーム培地を前記専用容器から取り出し、70℃のオ
ーブン中で加温して硬化させた後、該フォーム培地の密
度を測定した。乾燥したフォーム培地を約150cm3
の多数の小片にカットし、このカット片を500ml容
器に入れた後、300mlのイオン交換水を注いで30
分間浸漬放置した。前記イオン交換水からフォーム培地
を取り出し、該フォーム培地を絞って50〜80mlの
水を採取し、そのpH測定を行なった。
【0041】その結果を表1に示す。実験例1に係るフ
ォーム培地では、これに含有させるバーミキュライトの
量を30%(実験例1a),50%(実験例1b),60%
(実験例1c),65%(実験例1d),70%(実験例1e)
の各範囲で変化させた。比較例1では、バーミキュライ
トの含有量を80及び90%の範囲で変化させた。
【0042】
【表1】 実験例1a〜1eのフォーム培地は、バーミキュライト
の含有量を前記範囲内で変化させても、良好な発泡状態
となっていることが判明した(評価○)。
【0043】しかるに比較例1aのバーミキュライトを
90%含有したフォーム培地は、フォーム発泡時及び乾
燥時に樹脂分が少なくボロボロになり不適合であった
(評価×)。また比較例1bのバーミキュライトを80%
含有したフォーム培地は、フォームが乾燥している時は
良いが、発泡時(湿潤時)には樹脂分が少なくボロボロに
なる傾向にあった(評価△)。以上の結果から、フォーム
発泡時(湿潤時)及び乾燥時にフォーム培地に或る程度の
製品強度を保有させるには、バーミキュライトの如き多
孔質素材の含有量を30−70%(実験例1)に設定する
のが適当であり、かつ最大添加量は75%の付近に限界
のあることが判った。
【0044】(フォーム培地の評価試験について) (実験例2・・・発根率の評価)実験例1で述べた製造方法
に従って、親水性に富むイソシアネート末端プレポリマ
ーと、水、多孔質素材としてバーミキュライト75%
と、各種添加物として硫酸アルミニウム0.5%(pH調
整剤及び殺菌剤を兼ねるものとして使用)と、殺菌剤と
して三共株式会社の登録商標「タチガレエース」0.1%
とを混合し、これにより実験例2に係る植物育成用フォ
ーム培地を製造した。このフォーム培地は、アスコルビ
ン酸を添加してpHを4.2〜5.8になるように調節し
た。
【0045】実験用の温室でポットに入れた状態で養成
されているユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulen
sis)のクローン苗の採穂母樹から当年度に伸長した枝を
選び出し、成長が緩慢になる12月の時期に当該枝を切
り出した。この枝の穂先に対となる2枚の葉が残るよう
に調整して、長さ7.0cmの挿し穂を得た。この挿し穂
を、予めプラグトレーに詰めて湿らせた前記実験例2に
係るフォーム培地へ挿し付けた。また、前記と同様に調
整した挿し穂を、予めプラグトレーに詰めて湿らせた比
較例2aに係るバーミキュライトと、比較例2bに係る
挿し木用培地として市販されているオアシス−P培地
と、比較例2cに係るグロダン培地(ロックウール)とに
挿し付けた。なお挿し木試験は、室温15〜25℃で相
対湿度80%以上に制御された温室内で行なった。
【0046】挿し穂を挿し付けた後、5ヵ月経過した時
点での発根率(%)を表2に示す。ここに発根率(%)は、
(挿し付け5ヵ月後までに発根した挿し穂数)÷(挿し穂
の供試数)×100に依拠した。
【0047】
【表2】 表2から判明するように、実験例2に係るフォーム培地
に前記ユーカリ・カマルドレンシスから採取した挿し穂
を挿し付けた場合、その発根率は44%で良好であっ
た。
【0048】しかるに、実験例2と同じ採穂母樹から同
時期に採取した挿し穂を、比較例2aのバーミキュライ
ト、比較例2bのオアシス−P培地及び比較例2cのグ
ロダン培地(ロックウール)に挿し付けた場合、各対応の
発根率は15%、27%及び33%であった。以上によ
れば、バーミキュライト等の多孔質素材を単独で挿し木
培地とする場合や、市販の挿し木培地を使用する場合に
比較して、実験例2に係るフォーム培地は同等以上の性
能を有することが判った。
【0049】(実験例3・・・生存率及び発根率の評価)実
験例1で述べた製造方法に従って、親水性に富むイソシ
アネート末端プレポリマー及び多孔質素材としてのバー
ミキュライト30%を基材とし、これに殺菌剤として機
能する硫酸アルミニウムを0.1重量%、0.5重量%、
1.0重量%と変化させて添加することにより、実験例
3aに係る植物育成用フォーム培地を製造した。また実
験例3aにおける多孔質素材としてのバーミキュライト
を50%とした植物育成用フォーム培地を実験例3bと
し、更に実験例3aにおけバーミキュライトを70%と
した植物育成用フォーム培地を実験例3cとして用意し
た。
【0050】実験圃場に植栽されているユーカリ・カマ
ルドレンシス(E. camaldulensis)のクローン採穂園にお
いて、採穂母樹から当年度に伸長した枝を選び出し、成
長が緩慢になる1月の時期に当該枝を切り出して荒穂を
採取した。この荒穂を水道水中で穂先に対をなす2枚の
葉が残るように調整し、長さ7.0cmの挿し穂を得
た。この挿し穂の基部はナイフで切り返した。次に、前
記挿し穂を実験例3a〜3cに係るフォーム培地に挿し
付けた。なお比較例3として、前記と同様に調整した挿
し穂を、予めプラグトレーに詰めて湿らせたバーミキュ
ライトへ挿し付けた。このプラグトレーを、室温15〜
25℃に制御されている温室内のベンチに載置し、アク
リル箱を被せて高い湿度を保ちつつ挿し木試験を行なっ
た。
【0051】挿し穂を挿し付けた後、9週間経過した時
点における生存と発根の状況を観察した。その結果を表
3に示す。表3中の数字は生存率(%)及び発根率(%)で
ある。ここで生存率(%)は、以下の如く表わされる。生
存率(%)=(挿し付け9週間後に生存している挿し穂数)
÷(挿し付けた全挿し穂数)×100、発根率(%)=(挿
し付け9週間後に発根している挿し穂数)÷(挿し付けた
全挿し穂数)×100
【0052】
【表3】 表3から判明する如く、比較例3に係るバーミキュライ
トに前記ユーカリ・カマルドレンシスから採取した挿し
穂を挿し付けた場合、その生存率は67%で、発根率は
22%であった。
【0053】しかるに比較例3と同じ採穂母樹から同時
期に採取した挿し穂を、実験例3a〜3cに係るフォー
ム培地に同一条件下で挿し付けた場合は、バーミキュラ
イト70%含有でかつ硫酸アルミニウム含有量が0.1
%及び0.5%処理区において発根率は夫々44%であ
った。
【0054】(実験例4・・・生存率及び発根率の評価)実
験例1で述べた製造方法に従って、親水性に富むイソシ
アネート末端プレポリマー及び多孔質素材としてバーミ
キュライトとピートモスの混合物(1対1)50重量%を
基材とし、これに殺菌剤としての硫酸アルミニウム0.
1重量%を添加することで、実験例4に係る植物育成用
フォーム培地を製造した。温室で栽培されているユーカ
リ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)のクローン苗
から当年度に伸長した枝を選び出し、成長が緩慢になる
2月の時期に当該枝を切り出して荒穂を採取した。この
荒穂を水道水中で穂先に対をなす2枚の葉が残るように
調整し、長さ7.0cmの挿し穂を得た。この挿し穂の
基部はナイフで切り返し、実験例4のフォーム培地に挿
し付けた。なお比較例4として、前記と同様に調整した
挿し穂を、予めプラグトレーに詰めて湿らせたバーミキ
ュライトへ挿し付けた。このプラグトレーを、室温15
〜25℃に制御されている温室内のベンチに載置し、ア
クリル箱を被せて高い湿度を保ちつつ挿し木試験を行な
った。
【0055】挿し穂を挿し付けた後、9週間経過した時
点における生存と発根の状況を観察した。その結果を表
4に示す。表4中の数字は生存率(%)及び発根率(%)で
ある。ここで生存率(%)は、以下の如く表わされる。 生存率(%)=(挿し付け9週間後に生存している挿し穂
数)÷(挿し付けた全挿し穂数)×100、発根率(%)=
(挿し付け9週間後に発根している挿し穂数)÷(挿し付
けた全挿し穂数)×100
【0056】
【表4】 表4から判明する如く、比較例4に係るバーミキュライ
トに前記ユーカリ・カマルドレンシスから採取した挿し
穂を挿し付けた場合、その生存率は55%で、発根率は
22%であった。
【0057】しかるに比較例4と同じ採穂母樹から同時
期に採取した挿し穂を、実験例4に係るフォーム培地に
同一条件下で挿し付けた場合は、その生存率は78%
で、発根率は55%であった。このように、実験例3及
び実験例4の結果から、バーミキュライト等の多孔質素
材を単独で挿し木培地とする場合と比較して、実施例に
係るフォーム培地は優れた性能を有し、特に硫酸アルミ
ニウム等のアルミニウム塩化合物を0.1〜0.5%添加
した場合により植物の生育に好適であることが判明し
た。
【0058】(実験例5・・・生存率及び発根率の評価)実
験例1で述べた製造方法に従って、親水性に富むイソシ
アネート末端プレポリマー及び多孔質素材としてのバー
ミキュライト50%を基材とし、これに硫酸アルミニウ
ムを0.1重量%及び殺菌剤として登録商標「タチガレエ
ース」0.1%を添加することにより、実験例5aに係る
植物育成用フォーム培地を製造した。また実験例5aに
おけるバーミキュライトを70%とした植物育成用フォ
ーム培地を、実験例5bとして用意した。更に比較例5
a及び比較例5bとして、前記登録商標「タチガレエー
ス」を含まないものも同様に製造した。なお、フォーム
培地のpHは酒石酸で調節した。前述したユーカリ・カ
マルドレンシス(E. camaldulensis)の採穂母樹から調製
した挿し穂を、実験例5a及び実験例5bに係るフォー
ム培地に挿し付けた。なお前記と同様に調整した挿し穂
を、予めプラグトレーに詰めて湿らせた比較例5a及び
比較例5bに係るバーミキュライトへ挿し付けた。これ
らのプラグトレーは、室温15〜25℃に制御されてい
る温室内のベンチに載置し、アクリル箱を被せて高い湿
度を保ちつつ挿し木試験を行なった。
【0059】挿し穂を挿し付けた後、9週間経過した時
点における生存と発根の状況を観察した。その結果を表
5に示す。表5中の数字は生存率(%)及び発根率(%)で
ある。ここで生存率(%)は、以下の如く表わされる。 生存率(%)=(挿し付け9週間後に生存している挿し穂
数)÷(挿し付けた全挿し穂数)×100、発根率(%)=
(挿し付け9週間後に発根している挿し穂数)÷(挿し付
けた全挿し穂数)×100
【0060】
【表5】 表5から判明するように、比較例5aのバーミキュライ
トに前記ユーカリ・カマルドレンシスからの挿し穂を挿
し付けた場合、その生存率は67%で、発根率は22%
であった。また比較例5bのバーミキュライトに前記挿
し穂を挿し付けた場合、その生存率は22%で、発根率
は0%であった。
【0061】しかるに比較例5a及び比較例5bと同じ
採穂母樹から同時期に採取した挿し穂を、実験例5aの
フォーム培地に同一条件下で挿し付けた場合、バーミキ
ュライト含有量50%で、かつ硫酸アルミニウム含有量
0.5%、登録商標「タチガレエース」含有量0.1%の処
理区において、生存率が100%、発根率は33%であ
った。また実験例5bのフォーム培地に同一条件下で挿
し付けた場合、バーミキュライト含有量70%で、かつ
硫酸アルミニウム含有量0.5%、登録商標「タチガレエ
ース」含有量0.1%の処理区において、生存率が89
%、発根率は22%であった。すなわち実験例5a及び
実験例5bの生存率及び発根率は、バーミキュライト含
有量70%及び硫酸アルミニウム含有量0.5%で、か
つ殺菌剤である登録商標「タチガレエース」を含有しない
比較例5aの生存率67%及び発根率22%を上回って
いた。以上の結果から、バーミキュライト等の多孔質素
材を単独で挿し木培地とする場合と比較して、実施例に
係るフォーム培地は優れた性能を有し、特に硫酸アルミ
ニウム等のアルミニウム塩化合物と殺菌剤とを併用した
場合に、植物の挿し穂の生存率が高くなる、という優れ
た効果が奏されることが判明した。
【0062】(実験例6・・・2ケ月,3ケ月後の発根率)実
験例1で述べた製造方法に従って、親水性に富むイソシ
アネート末端プレポリマー及び多孔質素材としてのバー
ミキュライト75%を基材とし、これに硫酸アルミニウ
ム0.5重量%及び殺菌剤としての登録商標「タチガレエ
ース」0.1%を添加することで、実験例6に係る植物育
成用フォーム培地を製造した。なお、実験例6の植物育
成用フォーム培地において、発根促進作用を有する植物
成長調節物質を添加しないフォーム培地を実験例6aと
し、植物成長調節物質としてα−ナフチル酢酸(NAA)
を0.00001%添加したフォーム培地を実験例6b
とし、植物成長調節物質として3−インドール酪酸(I
BA)を0.00001%添加したフォーム培地を実験例
6cとした。これら実験例6a〜実験例6cに係るフォ
ーム培地は、何れもアスコルビン酸を添加してpHが
4.2〜5.8になるよう調節した。
【0063】実験温室でポットに入れた状態で養成され
ているアカシア・アウリカリフォルミス(A. auriculifo
rmis)のクローン苗の採穂母樹から当年度に伸長した枝
を選び出し、成長が緩慢になる2月の時期に当該枝を切
り出した。その穂先に対をなす2枚の葉が残るよう調整
し、長さ7.0cmの挿し穂を得た。この挿し穂を、予め
プラグトレーに詰めて湿らせた実験例6a〜実験例6c
に係るフォーム培地へ挿し付けた。同様に調整した前記
挿し穂を、市販されている挿し木培地である比較例6a
のオアシス−H培地、比較例6bのオアシス−P培地及
び比較例6cのグロダン培地(ロックウール)に挿し付け
た。これらを室温15〜25℃、相対湿度80%以上に
制御した温室内に入れ、挿し木試験を行なった。
【0064】前記挿し穂を挿し付けた後、2ヵ月及び3
ヵ月が経過した時点での発根率(%)を表6に示す。ここ
で発根率(%)=(挿し付けnヵ月後までに発根した挿し
穂数)÷(供試数)×100である。
【0065】
【表6】 表6から判明するように、前記アカシア・アウリカリフ
ォルミスから採取した挿し穂を、比較例6に係る既製の
挿し木培地に挿し付けて2ヶ月後の発根率は、比較例6
aのオアシス−H培地で12%、比較例6bのオアシス
−P培地で20%、比較例6cのグロダン培地(ロック
ウール)で16%であった。また挿し付け3ヶ月後の発
根率は、比較例6aで76%、比較例6bで76%、比
較例6cで84%であった。
【0066】しかるに比較例6と同じ採穂母樹から同時
期に採取した挿し穂を、実験例6のフォーム培地に同一
条件下に挿し付けた場合、発根促進作用を有する植物成
長調節物質を添加しない実験例6aの培地では、2ヶ月
後における発根率は28%であった。また植物成長調節
物質としてα−ナフチル酢酸(NAA)を0.00001
%添加した実験例6bの培地では、2ヶ月後の発根率は
68%であった。植物成長調節物質として3−インドー
ル酪酸(IBA)を0.00001%添加した実験例6c
の培地では、2ヶ月後の発根率は68%であった。更
に、挿し穂を挿し付けてから3ヶ月後の発根率は、実験
例6a(発根促進剤なし)で52%、実験例6b(NAA
添加)で92%、実験例6c(IBA添加)で84%であ
った。以上の結果から、市販されている既製の挿し木培
地に比較して、実施例に係るフォーム培地は同等以上の
性能を有し、特に発根促進作用を有する植物成長調節物
質として3−インドール酪酸(IBA)、α−ナフチル酢
酸(NAA)等を添加した場合に速やかに発根する、とい
う優れた効果が奏されることが判明した。
【0067】(実験例7・・・活着生存率の評価)アカシア
・アウリカリフォルミス(A. auriculiformis)及びユー
カリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)の挿し穂
を、実験例7に係る植物育成用フォーム培地に挿し付
け、発根した挿し木苗を育成した。また、前記と同じ挿
し穂を、既製の挿し木培地である比較例7aのオアシス
培地及び比較例7bのグロダン培地(ロックウール)に挿
し付け、発根した挿し木苗を育成した。これら発根後の
挿し木苗を同一条件下で実験圃場に5月に植栽し、1ヶ
月後の6月に活着生存率を調査した。
【0068】挿し木苗を植付けた後に、1ヵ月を経過し
た時点での活着生存率(%)を表7に示す。ここに活着生
存率(%)=(植付1ヵ月後に活着している挿し木苗数)÷
(供試数)×100である。
【0069】
【表7】 表7に示すように、アカシア・アウリカリフォルミス及
びユーカリ・カマルドレンシスの挿し木苗に関して、比
較例7aのオアシス培地での活着生存率は共に30%で
あった。また比較例7bのグロダン培地(ロックウール)
での活着生存率は、アカシア・アウリカリフォルミスの
挿し木苗は40%、ユーカリ・カマルドレンシスの挿し
木苗は33%であった。これらの数値は、植林事業を行
なうのには著しく低くて不適である。
【0070】しかるに、比較例7と同じ採穂母樹から同
時期に、実験例7のフォーム培地に同一条件下で挿し付
けて発根させた挿し木苗を同一条件下で植栽した場合、
アカシア・アウリカリフォルミスの活着生存率は86
%、ユーカリ・カマルドレンシスの活着生存率は85%
であった。これらは植林事業向けとして充分満足できる
数値であり、実施例7に係る植物育成用フォーム培地で
発根した挿し木苗は、移植することなくそのまま植林で
きることを示している。
【0071】
【発明の効果】本発明に係る植物育成用フォーム培地お
よびその製造方法によれば、パルプ材や緑化用の樹木と
して使われる木本植物等の苗木生産、殊に挿し木苗を生
産するに際して、従来から使用されてきたフォーム培地
では発根させるのが困難な採穂母樹からの挿し穂であっ
ても、高い確率で発根に至らせて生産効率を著しく改善
し、挿し木苗の大量生産が可能になった。しかも、植林
事業に即したポット形状その他任意の形状に成形できる
ため、発根後の挿し木苗を移植することなく、そのまま
植林に供することが可能である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年6月11日(2002.6.1
1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】(イソシアネート末端プレポリマーについ
て)次に、発泡性フォームの基材となる前記親水性に富
むイソシアネート末端プレポリマーとしては、有機イソ
シアネートとポリオールと架橋剤とを公知のプレポリマ
ー製造方法に従い反応させて得られるもの(重合体)であ
って、或る程度の流動状態を有しているものが使用され
る。ここに「或る程度の流動状態」とは、前記イソシアネ
ート末端プレポリマーを、水、多孔質素材及び各種の添
加剤と共に混合攪拌することで、均一な混合物が得られ
る程度をいう。また有機イソシアネートとしては、イソ
シアネート末端プレポリマーに対する含有量が3〜26
重量%のイソシアネート基(NCO基)を備えるものであ
るならば特に制限はない。具体的には、2,4−トリレ
ンジイソシアネート或いは2,6−トリレンジイソシア
ネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(MDI)、更には、4,4’−ジフェニルメタンジイソ
シアネート(MDI)及び異性体、多核体が含まれるクル
ードMDI、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソ
シアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,
4’−ジシクロメタンジイソシアネート、3,3’−ジ
メチルジフェニル4,4’−ジイソシアネート(TOD
I)、m−キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラ
メチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホ
ロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレン
ジイソシアネート(NDI)、或いはこれらのウレタン、
アロファネート、ビゥレット各変性体の外、2核体等が
挙げられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正内容】
【0052】
【表3】 表3から判明する如く、比較例3に係るバーミキュライ
トに前記ユーカリ・カマルドレンシスから採取した挿し
穂を挿し付けた場合、その生存率は67%で、発根率は
22%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C09K 101:00 C09K 101:00 (72)発明者 浅田 隆之 三重県亀山市能褒野町24−9 王子製紙株 式会社森林資源研究所内 (72)発明者 立道 良泰 三重県亀山市能褒野町24−9 王子製紙株 式会社森林資源研究所内 (72)発明者 村松 享 神奈川県秦野市堀山下380番地5号 株式 会社イノアック技術研究所内 (72)発明者 平山 真二 神奈川県秦野市堀山下380番地5号 株式 会社イノアック技術研究所内 Fターム(参考) 2B022 BA02 BA04 BA07 BA14 BA15 BA16 BA22 BB02 EA01 4H026 AA07 AB04 4J034 BA08 CA02 CA04 CA05 CA13 CA14 CA15 CA16 CA24 CA25 CB03 CB04 CB05 CB07 CB08 CC03 CC12 CC61 CC65 CC67 CD13 CE01 DA01 DB03 DF01 DF02 DF12 DG00 HA01 HA07 HC03 HC12 HC13 HC17 HC22 HC46 HC52 HC61 HC64 HC65 HC67 HC71 HC73 JA42 MA01 NA03 QC01 RA01

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水性に富むNCO基含有量が3〜26
    重量%であるイソシアネート末端プレポリマーと、水
    と、毛管現象を生じ得る程度に微細な孔隙及び毛管現象
    を生じない程度に粗い孔隙をフォーム中に生成する多孔
    質素材とから調整した発泡性フォームの基材に、pH調
    節剤、殺菌剤又は抗菌剤、植物成長調節剤及び栄養剤の
    群から選択される一種以上の添加剤を分散状態で存在さ
    せたことを特徴とする植物育成用フォーム培地。
  2. 【請求項2】 前記群中にHLB値が2〜16の範囲に
    ある非イオン界面活性剤を存在させ、この群から前記非
    イオン界面活性剤が選択される請求項1記載の植物育成
    用フォーム培地。
  3. 【請求項3】 前記HLB値が2〜16の範囲にある非
    イオン界面活性剤は、脂肪族高級アルコールエチレンオ
    キサイド付加物、高級アルコールエチレンオキサイド付
    加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、
    多価アルコール脂肪族エステルエチレンオキサイド付加
    物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂
    肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレン
    グリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの
    脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステ
    ル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、蔗
    糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテ
    ルから選択される請求項2記載の植物育成用フォーム培
    地。
  4. 【請求項4】 前記イソシアネート末端プレポリマー
    は、有機イソシアネート、ポリオール及び架橋剤から製
    造される請求項1〜3の何れかに記載の植物育成用フォ
    ーム培地。
  5. 【請求項5】 前記多孔質素材は、ピートモス、バーミ
    キュライト、パーライト、鹿沼土、くん炭、バーク堆
    肥、木屑等の用土類の何れか、またはこれらの任意の混
    合物である請求項1〜4の何れかに記載の植物育成用フ
    ォーム培地。
  6. 【請求項6】 前記群を構成する添加剤としてのpH調
    節剤は、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク
    酸、乳酸、リンゴ酸、2−オキソグルタル酸、5−アミ
    ノレブリン酸等の有機酸類の何れか、またはこれらの任
    意の組合わせからなる請求項1〜5の何れかに記載の植
    物育成用フォーム培地。
  7. 【請求項7】 前記群を構成する添加剤としての殺菌剤
    または抗菌剤は、硫酸アルミニウムや乳酸アルミニウム
    等のアルミニウム塩化合物、低分子キトサン、またはヒ
    ドロキシイソキサゾール、メタラキシル、ベノミルの何
    れか、またはこれらの任意の組合わせからなる請求項1
    〜6の何れかに記載の植物育成用フォーム培地。
  8. 【請求項8】 前記群を構成する添加剤としての植物成
    長調節剤は、3−インドール酪酸、α―ナフチル酢酸、
    4−クロロインドール−3−酢酸等のオーキシン類、6
    −ベンジルアミノプリン、ゼアチン等のサイトカイニン
    類、アブシジン酸及びその誘導体、ブラシノステロイド
    類、パクロブトラゾール、プロヘキサジオンカルシウム
    等の植物成長抑制物質の何れか、またはこれらの任意の
    組合わせからなる請求項1〜7の何れかに記載の植物育
    成用フォーム培地。
  9. 【請求項9】 前記群を構成する添加剤としての栄養剤
    は、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン
    酸等のアミノ酸類、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、
    硫酸アンモニウム、尿素等の窒素塩類、リン酸二水素ナ
    トリウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネ
    シウム等の無機塩類、ブドウ糖、蔗糖等の糖類の何れ
    か、またはこれらの任意の組合わせからなる請求項1〜
    8の何れかに記載の植物育成用フォーム培地。
  10. 【請求項10】 100重量%の親水性に富むイソシア
    ネート末端プレポリマーと、50〜1000重量%の水
    と、30〜400重量%の多孔質素材と、pH調節剤、
    殺菌剤または抗菌剤、植物成長調節剤、栄養剤からなる
    群より選択される一種以上の添加剤とを混合攪拌し、得
    られた混合液を発泡硬化させることで、該プレポリマー
    と水との反応によって得られるフォーム培地の基材中に
    前記多孔質素材及び添加剤を分散状態で存在させたこと
    を特徴とする植物育成用フォーム培地の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記基材中に多孔質素材及び添加剤を
    分散状態で存在させたフォーム培地は、次いで加熱によ
    り完全硬化させて水分の除去がなされる請求項10記載
    の植物育成用フォーム培地の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011522562A (ja) * 2008-06-10 2011-08-04 レクティセル・ホールディング・ノールト・ベー・フェー 植物の基層を製造する方法、及び植物の基層
JP2011217625A (ja) * 2010-04-05 2011-11-04 Nippon Paper Industries Co Ltd 植物の栽培方法
JP2011250733A (ja) * 2010-06-01 2011-12-15 Oji Paper Co Ltd 植物の挿し木苗製造方法
JP2014532405A (ja) * 2011-10-29 2014-12-08 シンブラ・テクノロジー・ベスローテン・フエンノートシヤツプ 植物用の生育基材

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