JP2003328231A - ポリヒドロキシアルカン酸の高強度かつ高弾性率である繊維およびその製造法 - Google Patents

ポリヒドロキシアルカン酸の高強度かつ高弾性率である繊維およびその製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 PHA類産生微生物の野生株産生物、遺伝子組
換え株産生物あるいは化学合成物等、その由来によって
異なる、PHA類の分子量などに関わらず、高強度かつ高
弾性率である繊維が得られる方法および該方法により製
造される繊維を提供することを課題とする。 【解決手段】 ポリヒドロキシアルカン酸を溶融押出
し、該ポリヒドロキシアルカン酸のガラス転移点温度+
15℃以下に急冷、固化し非晶質の繊維を作製し、該非
晶質の繊維をガラス転移点温度+20℃以下で冷延伸
し、更にガラス転移点温度以上で延伸し、更に緊張熱処
理をすることを特徴とする繊維の製造方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリヒドロキシア
ルカン酸類(以下、「PHA類」ともいう。)を原料と
する繊維およびその製造方法に関する。詳しくは、破壊
強度、ヤング率が高い、高強度かつ高弾性率である繊維
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】PHA類は生分解性および生体適合性を
有することから、繊維やフィルムなどの各種成形品への
利用が検討されている。PHA類を原料とする繊維は、
生分解性および生体適合性を持つために、手術用縫合糸
などの医療用用具、釣り糸、漁網などの水産業用用具、
繊維などの衣料用材料、不織布、ロープなどの建築用材
料、食品その他の包装用材料などとして大きな需要を見
込むことができる。
【0003】PHA類のなかでも、ポリ(3−ヒドロキ
シブタン酸)(以下、「P(3HB)」ともいう。)
は、多くの微生物により菌体内貯蔵物質として合成さ
れ、細胞質内にグラニュールの形で蓄積することが知ら
れている(非特許文献1)。また、本発明者らはポリ
(3−ヒドロキシブタン酸)合成遺伝子の遺伝子組換え
大腸菌を用いて、P(3HB)産生微生物の野生株に比
べ、分子量が飛躍的に向上したP(3HB)を得ること
に成功している(特許文献1)。これらのP(3HB)
産生微生物から得られるP(3HB)は、生分解性製品
の原料として期待されている。
【0004】これまで、P(3HB)を原料とする繊維
は、重量平均分子量60万(数平均分子量30万)程度
のP(3HB)を原料として、溶融押出し、高温延伸
し、熱処理をする方法により製造されてきた。このよう
な方法として、具体的には、非特許文献2に、重量平均
分子量30万のP(3HB)をクロロホルム精製し、4
段階の溶融ゾーン温度(170℃-175℃-180℃-182℃)で
溶融押出し、110℃で、延伸倍率800%で延伸し、
155℃で、1時間保温し、結晶化させて、繊維を作製
する方法が記載されている。得られた繊維の物性は、破
壊強度190MPa、破壊伸び54%、ヤング率5.6GPaである。
また、非特許文献3には、粘度平均分子量54万のP
(3HB)を精製することなく、一旦、粘度平均分子量
36万のペレットにし、そのペレットを173℃で溶融
押出し、2000-3500m/minあるいは250m/minの巻き取り速
度で巻き取り、40−60℃で、延伸倍率400%ある
いは690%で延伸し、40−60℃で保温し、結晶化
させて、繊維を作製する方法が記載されている。得られ
た繊維の物性は、破壊強度330MPa、破壊伸び37%、ヤン
グ率7.7GPaである。しかしながら、これらの繊維は汎用
高分子に匹敵する物性を有するものではなく、実用化に
は至っていない。
【0005】これに対し、非特許文献4には、P(3H
B)グラニュールを未精製にて使用し、溶融温度180
℃、ノズル温度170℃で溶融押出し、28m/minの巻き
取り速度で巻き取り、110℃で延伸倍率600%まで
延伸し、0MPa、50MPa、100MPaの張力下で、75,10
0,125,150℃で2.5分間保温し、結晶化させ
て、繊維を作製する方法が記載されている。得られた繊
維の破壊強度310MPa、破壊伸び60%、ヤング率は3.8GPa
である。しかしながら、精製したP(3HB)や、重量
平均分子量60万以上の高分子量のP(3HB)を含めたあら
ゆる分子量のP(3HB)を原料とする高強度かつ高弾性率で
ある繊維およびその製造方法は見出されていない。
【0006】したがって、PHA類産生微生物の野生株
由来のPHA類をはじめ、種々のPHA類を原料とし
た、生分解性を保持したまま物性の改善された高強度か
つ高弾性率である繊維の製造方法の開発が望まれてい
た。
【0007】
【非特許文献1】Anderson, A.J. and Dawes, E.A., Mi
crobiol. Rev., 54:450-472(1990)
【非特許文献2】Gordeyev et al., J. Mater. Sci. Le
tt., 18, 1691(1999)
【非特許文献3】Schmack et al., J. Polym. Sci. Pol
ym. Phys. Ed., 38, 2841(2000)
【非特許文献4】Yamane et al., Polymer, 42, 3241(2
001)
【特許文献1】特開平10-176070号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、PHA
類産生微生物の野生株産生物、遺伝子組換え株産生物あ
るいは化学合成物等、その由来によって異なる、PHA類
の分子量などに関わらず、高強度かつ高弾性率である繊
維が得られる方法および該方法により得られる高強度か
つ高弾性率である繊維を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
を行った結果、ポリヒドロキシアルカン酸を溶融押出
し、該ポリヒドロキシアルカン酸のガラス転移点温度+
15℃以下に急冷、固化して非晶質の繊維を作製し、該
非晶質の繊維をガラス転移点温度+20℃以下で冷延伸
し、更にガラス転移点温度以上で延伸し、更に緊張熱処
理することにより上記課題を解決できることを見出し、
本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明の要旨は以下の通りであ
る。 (1) ポリヒドロキシアルカン酸を溶融押出し、該ポ
リヒドロキシアルカン酸のガラス転移点温度+15℃以
下に急冷、固化して非晶質の繊維を作製し、該非晶質の
繊維をガラス転移点温度+20℃以下で冷延伸し、更に
ガラス転移点温度以上で延伸し、更に緊張熱処理をする
ことを特徴とする繊維の製造方法。 (2) ガラス転移点温度以上での延伸を二段階以上の
多段階で行うことを特徴とする、(1)に記載の方法。 (3) ガラス転移点温度以上での延伸の各段階の温度
は、それぞれの段階の前段階の温度より高い温度である
ことを特徴とする、(2)に記載の方法。 (4) 冷延伸を2本の巻き取りローラーにより張力を
かけて行うことを特徴とする、(1)〜(3)いずれか
一項に記載の方法。 (5) ポリヒドロキシアルカン酸がポリ(3−ヒドロ
キシブタン酸)である、(1)〜(4)のいずれか一項
に記載の方法。 (6) ポリヒドロキシアルカン酸を溶融押出し、該ポ
リヒドロキシアルカン酸のガラス転移点温度+15℃以
下に急冷、固化して非晶質の繊維を作製し、該非晶質の
繊維をガラス転移点温度+20℃以下で冷延伸し、更に
ガラス転移点温度以上で延伸し、更に緊張熱処理するこ
とにより製造される、破壊強度350MPa以上、ヤング
率2GPa以上であることを特徴とする繊維。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。 (1)本発明の繊維の製造方法 (i)本発明に用いるPHA類 本発明の製造方法では、ポリヒドロキシアルカン酸類を
繊維成形材料として用いる。好ましいポリヒドロキシア
ルカン酸としては、ポリヒドロキシブタン酸(以下、
「PHB」ともいう)が挙げられる。PHBを得る方法
としては、一般に、発酵合成法と化学合成法とがある。
化学合成法は、通常の有機合成の手法に従って化学合成
する方法であり、ポリ[(R)−3−ヒドロキシブタン
酸]とポリ[(S)−3−ヒドロキシブタン酸]との混
合物(ラセミ体)が得られる。これに対し発酵合成法
は、PHB生産能を有する微生物を培養しその菌体内に
蓄積されるPHBを取り出す方法である。発酵合成法に
より得られるPHBは、ポリ[(R)−3−ヒドロキシ
ブタン酸]ホモポリマーである。
【0012】発酵合成法で利用できる微生物としては、
PHB生産能を有する微生物であれば特に限定されな
い。PHBは、ラルストニア・ユートロファ(Ralstoni
a eutropha)、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes
latus)、アルカリゲネス・ファエカリス(Alcaligenes
faecalis)等のアルカリゲネス属をはじめ60種以上
の天然微生物の菌体内に蓄積されることが知られてい
る。重量平均分子量100万(数平均分子量50万)以
上の高分子量PHBを生産するものとしては、メチロバ
クテリウム(Methylobacterium)属に属する菌種の菌
株、具体的にはMethylobacterium extorquens ATCC5536
6が挙げられる(Bourque, D. et al., Appl. Microbio
l. Biotechnol(1995))。これらの菌株はAmerican Type
Culture Collection(ATCC)にて市販されてい
る。
【0013】発酵合成法においては、通常これらの微生
物を、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその
他の有機成分を含有する通常の培地で培養することによ
り菌体内にPHBを蓄積させることができる。菌体から
のPHBの採取は、クロロホルム等の有機溶媒による抽
出や、菌体成分をリゾチーム等の酵素で分解した後PH
Bグラニュールを濾別する方法等により実施できる。
【0014】また、発酵合成法の一態様として、PHB
合成遺伝子を含む組換えDNAを導入して形質転換させ
た微生物を培養し、その菌体内に生成したPHBを採取
する方法が挙げられる。この方法においては、ラルスト
ニア・ユートロファ等を直接培養する場合と異なり、組
換えDNAを導入して形質転換させた微生物は菌体内に
PHB分解酵素を持たないため、格段に高分子量のPH
Bを蓄積することができる。このような形質転換株とし
て、例えば、特開平10-176070号において、Escherichia
coli XL1-Blueに、ラルストニア・ユートロファのPH
B合成遺伝子、phbCABを含むプラスミドpSYL105を導入
して得られる形質転換株Escherichia coli XL1-Blue(pS
YL105)が開示されている。また、該形質転換株Escheric
hia coli XL1-Blue(pSYL105)は、Stratagene Cloning S
ystem(11011 North Torrey Pines Road La Jolla CA92
037, USA)から入手することができる。
【0015】形質転換体は好適な培地で培養し、PHB
を菌体内に蓄積させる。使用する培地としては、炭素
源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成
分を含有する通常の培地が挙げられる。大腸菌を用いる
場合、炭素源としてはグルコース等が挙げられ、窒素源
としてはイーストエキス、トリプトン等の天然物由来の
ものが挙げられる。その他、アンモニウム塩などの無機
の窒素化合物等が含まれていてもよい。培養は好気的条
件下で12〜20時間、培養温度は30〜37℃、培養
中のpHは6.0〜8.0に制御することが好ましい。
菌体からのPHBの採取は、クロロホルム等の有機溶媒
による抽出や、菌体成分をリゾチーム等の酵素で分解し
た後PHBグラニュールを濾別する方法等により実施で
きる。具体的には、例えば培養液から分離回収した乾燥
菌体からPHBを適当な貧溶媒で抽出した後沈殿剤で沈
殿させることにより実施できる。
【0016】本発明に用いられるPHA類としては、市販
されているポリヒドロキシアルカン酸類を用いてもよ
い。
【0017】本発明に用いられるポリヒドロキシアルカ
ン酸類の分子量としては、本発明の効果を損なわない限
り特に制限されないが、好ましくは重量平均分子量40万
(数平均分子量20万)以上である。重量平均分子量の上
限は特に制限されないが、入手容易性及び成形性の点か
ら、好ましくは重量平均分子量400万(数平均分子量200
万)以下、特に好ましくは重量平均分子量100万(数平
均分子量50万)以下のものが用いられる。
【0018】本発明に用いられるポリヒドロキシアルカ
ン酸類としては、PHA類を含むグラニュールを精製せ
ずに用いてもよく、以下に記載する精製方法などにより
精製してポリマー化したものを用いてもよい。
【0019】(ii)本発明の製造方法 本発明の方法においては、上記したPHA類を溶融押出
し、該PHA類のガラス転移点温度+15℃以下に急
冷、固化して非晶質の繊維を作製し、該非晶質の繊維を
ガラス転移点温度+20℃以下で冷延伸し、更にガラス
転移点温度以上で延伸し、更に緊張熱処理し、繊維を製
造する。
【0020】PHA類の溶融押出の方法としては、通常
のプラスチック繊維の溶融技術を用いて行うことがで
き、例えば、PHA類を加熱、溶融し、加重をかけて、
押出口より押し出すことにより行うことができる。溶融
押出する際の温度としては、通常、溶融するポリヒドロ
キシアルカン酸の融点以上であり、好ましくは融点+10
℃以上、より好ましくは融点+15〜20℃以上である。P
HBの場合、融点は175℃以上である。
【0021】上記溶融ポリヒドロキシアルカン酸をガラ
ス転移点温度+15℃以下、好ましくはガラス転移点温
度+10℃以下、より好ましくはガラス転移点温度以下
の冷却媒体中に押出し、急冷、繊維化する。急冷、繊維
化の温度としては、特に下限はないが、経済性の点から
通常−180℃以上で行うことができる。同急冷工程に
より、溶融ポリヒドロキシアルカン酸は非晶質の繊維と
なる。得られた繊維を冷却溶媒中で巻き取ることができ
る。ガラス転移点温度は、例えば、動的粘弾性測定を行
うことにより評価することができる。動的粘弾性は、例
えば、セイコー電子DMS210を用い、窒素雰囲気下、周波
数1Hz、昇温速度2℃/minの条件で、-100〜120℃の範囲
で測定することができる。低分子量のPHBでは、ガラ
ス転移点温度は4℃以下である。高分子量のPHBで
は、ガラス転移点温度は10℃以下である。さらに高分子
量のPHBでは、ガラス転移点温度は20℃以下である。
なお、ガラス転移点温度は高い方が、加工しやすいとい
う点で有用である。冷却媒体としては、例えば、空気、
水(氷水)、不活性気体などが挙げられる。本発明にお
いて、急冷は、例えば、溶融ポリヒドロキシアルカン酸
をガラス転移点温度+15℃以下の空気中または氷水中
に押出し、巻き取りながら同溶媒中を通過させておこな
うことができる。巻き取りの速度としては、通常3〜150
m/min、好ましくは3〜30m/minである。非晶質繊維であ
ることは、例えば、X線回折などの方法により確認する
ことができる。X線回折において、結晶に由来するピー
クが確認できなければ、非晶質であるといえる。
【0022】得られた非晶質繊維を、冷延伸する。好ま
しくは、冷延伸は、ガラス転移点温度+20℃以下、よ
り好ましくはガラス転移点温度+10℃以下、さらに好
ましくはガラス転移点温度以下で行うことができる。冷
延伸の温度としては、特に下限はないが、経済性の点か
ら通常−180℃以上で行うことができる。延伸は、例
えば、延伸器などに固定して、好ましくは2つの巻き取
りローラー(two rollset)などにより巻き取りながら
張力をかけて行うことができる。延伸器などに固定して
延伸する場合、延伸倍率は通常200%以上、好ましくは4
00%以上である。延伸倍率としては、特に上限はなく、
破断しない程度であればよい。延伸の時間としては通常
1〜10秒であり、延伸倍率に従って延伸の時間を決定す
ることができる。巻き取りローラーなどで巻き取りなが
ら延伸する場合、延伸倍率は通常300%以上、好ましく
は600%以上である。延伸倍率としては、特に上限はな
く、破断しない程度であればよい。巻き取りローラーな
どで巻き取りながら延伸する場合、延伸時間は特に限定
されず、常法の範囲で行うことができる。
【0023】冷延伸後、更に延伸を行う。好ましくは、
延伸は、ガラス転移点温度以上、より好ましくはガラス
転移点温度+5℃以上、さらに好ましくはガラス転移点
温度+10℃以上で行うことができる。ガラス転移点温
度以上の延伸の温度としては、特に上限はないが、通常
融点以下で行うことができる延伸は、例えば、張力、固
定などによって行うことができる。延伸器などに固定し
て延伸する場合、延伸倍率は通常200%以上、好ましく
は400%以上である。延伸の時間としては通常1〜10秒で
あり、延伸倍率に従って延伸の時間を決定することがで
きる。なお、本発明の方法においては、冷延伸後の延伸
を一段あるいは二段以上の多段階で行うことができる。
各段階の温度は、前段階の温度に対してより高い温度で
あることが好ましく、通常前段階の温度+5℃以上、好
ましくは前段階の温度+10℃以上で行うことができる。
各段階の温度としては、特に上限はなく、通常融点以下
で行うことができる。
【0024】延伸後、緊張熱処理を行う。緊張熱処理
は、温風熱処理、乾燥機熱処理などにより行うことがで
きる。なお、緊張熱処理とは、緊張下で熱処理を行うこ
とであり、緊張は、例えば、固定、加重、張力などによ
って行うことができる。固定熱処理とは、繊維の両端を
固定した状態で熱処理を行うことである。また、繊維の
先に重りを吊して加重して行う場合、加重は繊維が切断
しなければ、重ければ重い程良い。加重は延伸後の繊維
に加重をかけて切断しない程度までの範囲で決定するこ
とができる。なお、加重0gとは、繊維が伸びない加重の
ことである。また、巻き取りローラーにより張力をかけ
て熱処理を行う場合、送りと巻き取りのローラー速度を
変えて、張力をかけながら行うことができる。張力によ
り繊維は延伸されながら熱処理される。巻き取りローラ
ーにより張力をかけて熱処理を行う場合、通常延伸倍率
0%以上、好ましくは300%以上で行うことができ
る。なお、倍率0%での延伸とは、繊維が伸びないように
延伸を行うことである。延伸倍率としては、特に上限は
なく、破断しない程度であればよい。巻き取りローラー
などで巻き取りながら延伸する場合、延伸時間は特に限
定されず、常法の範囲で行うことができる。
【0025】これまでは、重量平均分子量60万(数平
均分子量30万)程度の低分子のPHBの繊維化に関する
報告例はあるが、汎用高分子に匹敵する物性が得られて
いないものがほとんどであった。また、このような方法
に関し、重量平均分子量60万(数平均分子量30万)
以上の高分子のPHBに応用されたという報告例はない。
しかし、本発明の方法によれば、PHBの分子量や精製
の有無などに関係なく、高強度かつ高弾性率である繊維
を得ることが可能となった。
【0026】(2)本発明の繊維 本発明の繊維は、PHA類を溶融押出し、該PHA類の
ガラス転移点温度+15℃以下に急冷、固化して非晶質
の繊維を作製し、該非晶質の繊維をガラス転移点温度+
20℃以下で冷延伸し、更にガラス転移点温度以上で延
伸し、更に緊張熱処理することにより製造される繊維で
ある。このような繊維のうち好ましい形態として、上記
方法によって得られる、破壊強度350MPa以上、ヤン
グ率2GPa以上であることを特徴とする繊維である。
【0027】ここでいう破壊強度は、JIS-K-6301に沿っ
て測定されたものであり、本発明の繊維では350MP
a以上、好ましくは400MPa以上である。ヤング率
はJIS-K-6301に沿って測定されたものであり、本発明の
繊維では2GPa以上、好ましくは4GPa以上、より
好ましくは6GPa以上である。
【0028】本発明の繊維は、PHA類繊維中の結晶部の
向きが一定方向である配向結晶性繊維である。従来の製
造方法によって得られる低分子量のPHA類を原料として
製造される繊維は、汎用高分子繊維に匹敵する物性が得
られていないものがほとんどであった。また、このよう
な従来の製造方法は、重量平均分子量60万(数平均分
子量30万)以上の高分子のPHBに応用されたことはな
かった。しかしながら、本発明の方法によって、分子量
に関わらず汎用高分子繊維に匹敵する物性を有する配向
結晶性繊維を得ることができる。
【0029】本発明における繊維の成形材料としては、
上記PHA類以外に通常繊維に用いられる各種添加剤、
例えば滑剤、紫外線吸収剤、耐候剤、帯電防止剤、酸化
防止剤、熱安定剤、核剤、流動改良剤、着色剤等を必要
に応じて含有させることができる。
【0030】本発明の繊維は、上述したように十分な強
度と柔軟性を有し、かつ生分解性および生体適合性に優
れたPHA類からなるものであり、手術用縫合糸などの
医療用用具、釣り糸、漁網などの水産業用用具、繊維な
どの衣料用材料、不織布、ロープなどの建築用材料、食
品その他の包装用材料などに有用である。
【0031】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明は、その要旨をこえない限り、これ
らの実施例に限定されるものではない。
【0032】
【実施例1〜4】遺伝子組換え大腸菌Escherichia coli
XL1-Blue(pSYL105)を特開平10-176070号に記載の方法
に従って作製、培養し、菌体よりPHBを得た。得られ
たPHBの重量平均分子量を特開平10-176070号に記載
の方法に従って測定した結果、重量平均分子量は300
万(数平均分子量150万)であった。
【0033】これらのPHBを、200℃にて溶融し、加
重押出にて押出口より氷水中(3℃)に押出し、急冷
し、繊維化した。得られた繊維を氷水中(3℃)で巻き
取った。この操作に使用される装置の一例を模式図とし
て図1Aに示す。PHBグラニュールおよびポリマーを
ヒーターにて加温しながら溶融し、氷水浴槽に押出し、
得られた繊維をローラーにて巻き取る。押出し口径は1
mmのものを用いた。巻き取り速度は、6m/minとした。
得られた繊維を、two roll setで、氷水中(3℃)で延
伸した。延伸倍率を表1に示すとおりとした。この操作
に使用されるtwo roll setの一例を模式図として図1B
に示す。1つの巻き取りローラーに巻き取られた繊維を
もう一つのローラーにて氷水浴槽中にて巻き取りながら
延伸する。このような装置では2つの巻き取りローラー
の速度を変えることにより所望の延伸倍率で繊維を延伸
することができる。延伸繊維を、延伸器に取り付け、2
0℃で、実施例1〜4について6〜8秒間で延伸した。
延伸倍率を表1に示すとおりとした。この操作に使用さ
れる装置の一例を模式図として図1Cに示す。延伸器に
取り付けた繊維を引き延ばしながら延伸する。延伸繊維
を、延伸器に両端を固定したまま、温風に曝し、70
℃、5分間の熱処理を行った。得られた繊維について、
破壊強度、破壊伸び、及びヤング率を測定した。結果を
表1に示す。
【0034】尚、破壊強度、破壊伸び、及びヤング率
は、JIS-K-6301に沿って、今田製作所製SV−200型
引張圧縮試験機を用いて測定した。引張速度は50mm/
分とした。
【0035】これらの結果から、本発明の方法により、
繊維の物性が向上することが分かる。
【0036】
【表1】
【0037】
【実施例5〜8】実施例1〜4と同様の方法で繊維を作
製した。ただし、二段目の延伸を25℃で、実施例5〜
8についてそれぞれ3〜10秒で延伸した。延伸倍率を
表2に示すとおりとした。延伸繊維を、延伸器に両端を
固定したまま、温風に曝し、50℃、5分間の熱処理を
行った。得られた繊維について、破壊強度、破壊伸び、
及びヤング率を測定した。結果を表2に示す。
【0038】これらの結果から、本発明の方法により、
繊維の物性が向上することが分かる。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】PHA類産生微生物の野生株産生物、遺伝
子組換え株産生物あるいは化学合成物等、その由来によ
って異なる、PHA類の分子量などに関わらず、高強度か
つ高弾性率である繊維が得られる方法および該方法によ
って得られる繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aは、溶融押出と氷水中での巻き取りの
方法の模式図である。図1Bは、two roll set(2つの
巻き取りローラー)を用いた氷水中での延伸方法の模式
図である。図1Cは、延伸器を用いた二段階延伸の模式
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土肥 義治 埼玉県和光市広沢2番1号 理化学研究所 内 Fターム(参考) 4L035 BB31 BB57 BB90 EE08 EE20 FF01 FF02 GG01 4L036 MA05 MA33 PA01 PA03 UA07

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリヒドロキシアルカン酸を溶融押出
    し、該ポリヒドロキシアルカン酸のガラス転移点温度+
    15℃以下に急冷、固化して非晶質の繊維を作製し、該
    非晶質の繊維をガラス転移点温度+20℃以下で冷延伸
    し、更にガラス転移点温度以上で延伸し、更に緊張熱処
    理をすることを特徴とする繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 ガラス転移点温度以上での延伸を二段階
    以上の多段階で行うことを特徴とする、請求項1に記載
    の方法。
  3. 【請求項3】 ガラス転移点温度以上での延伸の各段階
    の温度は、それぞれの段階の前段階の温度より高い温度
    であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 冷延伸を2本の巻き取りローラーにより
    張力をかけて行うことを特徴とする、請求項1〜3のい
    ずれか一項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 ポリヒドロキシアルカン酸がポリ(3−
    ヒドロキシブタン酸)である、請求項1〜4のいずれか
    一項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 ポリヒドロキシアルカン酸を溶融押出
    し、該ポリヒドロキシアルカン酸のガラス転移点温度+
    15℃以下に急冷、固化して非晶質の繊維を作製し、該
    非晶質の繊維をガラス転移点温度+20℃以下で冷延伸
    し、更にガラス転移点温度以上で延伸し、更に緊張熱処
    理することにより製造される、破壊強度350MPa以
    上、ヤング率2GPa以上であることを特徴とする繊維。
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