JP2003327888A - カチオン性インキ、それを用いた画像形成方法および印刷物 - Google Patents

カチオン性インキ、それを用いた画像形成方法および印刷物

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JP2003327888A JP2002141787A JP2002141787A JP2003327888A JP 2003327888 A JP2003327888 A JP 2003327888A JP 2002141787 A JP2002141787 A JP 2002141787A JP 2002141787 A JP2002141787 A JP 2002141787A JP 2003327888 A JP2003327888 A JP 2003327888A
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Shigekazu Kitamura
繁和 北村
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Toyo Ink Mfg Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】通電時間が数μ秒以下で高速凝析するカチオン
性インキ、および電極の消耗がなく、長時間に渡って工
業的な高速の画像形成が可能なオンデマンド画像形成方
法の提供。 【解決手段】カチオン性官能基を有するラジカル重合性
モノマー30〜85重量%と他のラジカル重合性モノマー70
〜15重量%との共重合体であり、疎水度が60%以上 100
%未満であり、且つカチオン価が1.0を超え、かつ
2.5 以下であるカチオン性樹脂と、着色剤とを水性
媒体に溶解又は分散してなるカチオン性インキ、面状の
負電極と複数のピン状の正電極との間に前記カチオン性
インキを供給する工程(a)と、電気化学反応により前記
負電極上にカチオン性インキを凝析させる工程(b)と、
前記負電極から非凝析インキを除去して画像を可視化す
る工程(c) と、前記画像を被印刷体上に転写する工程
(d) とを有する画像形成方法および印刷物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速のデジタルオ
ンデマンド画像形成に用いられるカチオン性インキ、そ
れを用いた画像形成方法および印刷物に関する。さらに
詳しくは、正負両電極間に充填されたインキを通電によ
る電気化学反応で不溶化させ画像を形成する方法に用い
られるカチオン性インキ、それを用いた画像形成方法お
よび印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からの印刷技術を大別すると、工業
分野において見られるように予め版を作り特定の画像を
大量印刷するものと、事務機器分野において見られるよ
うに無版で少部数のオンデマンド印刷を行うものに分け
られる。以下に、両者の特長とその欠点を記述する。工
業分野における印刷方式としては、平版印刷,凸版印
刷,グラビア印刷,スクリーン印刷等が知られている。
これらの印刷方式は、予め版を作成しその版を基にして
画像を作るものであり、同一画像の低コスト大量高速印
刷には優れているが、画像を変更する場合その版替え作
業に時間を要し、比較的少部数の即時印刷、いわゆるオ
ンデマンド印刷やデジタル情報の印刷に対応できない。
【0003】一方、事務機器分野における印刷方式とし
ては、コンピューター等の周辺機器として各種の記録方
式を用いたプリンター、例えば電子写真方式によるレー
ザービームプリンター,インキジェットプリンター,感
熱転写プリンター,ワイヤドットプリンター等が知られ
ている。その中でも、電子写真方式は、ページバリアブ
ルなデジタルオンデマンド印刷が可能であり、デジタル
化という市場の流れに追従して発展してきている。しか
し、画像形成速度が遅く、そのコストも割高であり、更
に粉体トナーを使用する乾式電子写真方式では、トナー
粒子径が8μm前後と大きいため画質が劣ること、又液
体トナーを使う湿式電子写真方式では、粒子径が粉体ト
ナーに比べ小さいため高画質化は望めるものの、有機溶
剤を使用することによる環境汚染やPLに対する対策の必
要があると言った現状にある。さらに、電子写真方式以
外の記録方式は、電子写真方式よりもさらに印刷速度が
遅く、印刷速度や低コストを要求される工業印刷の分野
には不向きである。この様に、従来からの実用化された
印刷技術は、「印刷速度が速くコストも低いが、オンデ
マンド印刷が不可能」又は「オンデマンド印刷は可能だ
が、低画質で画像形成速度が遅くコストも高い」又は
「高画質のオンデマンド印刷が可能だが、画像形成速度
が遅く環境への安全性が低くコストも高い」と言った特
徴を有している。
【0004】また、従来からの印刷方式の特徴と印刷情
報のデジタル化の流れを鑑み、さらに今後の環境への影
響を考慮すると、画像を形成するインキは水系のものが
好ましい。これは印刷物としての安全性は勿論、印刷物
を作成する印刷工場の現場や、インキを製造するインキ
工場の現場等全ての段階において求められ、このため水
系の現像剤を用いたデジタルオンデマンド方式でページ
バリアブルな印刷システムを構築しようとする動きがあ
る。これらの印刷システムでは高速性を重要視しない小
部数は勿論のこと、ある程度の大部数の印刷まで印刷速
度を上げて可能にしようと試みられている。この試みの
一つとして、公知の電着技術を応用した画像形成方法
で、環境に優しい水系インキに通電し、電気化学反応に
よる電着現象で、インキを凝集又は析出させて画像形成
する方式が幾つか報告されている。
【0005】このような印刷システムとして具体的に
は、特開平10-119414号公報、特開平11-18
9899号公報、特開平11-105418号公報、特開
平11-24494号公報に、水系電着インキを用いた高
解像度の画像形成方法、画像形成装置及び画像形成材料
が開示されている。しかし、これらの発明では高速の印
刷は出来無い。その第一の理由は、イオン性樹脂を水性
媒体に溶解または分散するためのイオン化量に相当する
中和率が高いため、樹脂が凝集または析出するにはイオ
ン化した部分を逆に不溶化させるに必要な電気化学反応
量が多く、且つインキ抵抗が高い(=インキ伝導度も低
い)ため電気を印加した時の水の電気分解量が小さく電
気化学反応に必要なOH基の発生量が小さくなり非常に反
応効率の悪いインキ中の樹脂設計に成っていることであ
る。第二の理由は、インキの凝集又は析出のための印加
電圧が低いことである。高速の画像形成装置では高解像
度を達成するためには少なくとも20Vの電圧印加が必
要なのに対し、前記公報に開示されている画像形成方法
は、電極間を10V以上の電位差にすると水の電気分解
による気泡の発生により画像が破壊されるインキを使用
するシステムのため、或いは低速で単位面積当たりに電
圧印加する時間が長く気泡が発生蓄積しやすいシステム
のため、第一の理由と組み合わせるとインキ凝集または
析出するに必要な電気化学反応が長くなりさらに長時間
を要す。第三の理由は、非凝析または非析出インキの除
去がいずれの発明においても行われていないことであ
る。非凝析または非析出インキを除去する装置すなわち
非画像部処理する装置が無ければ装置構成はシンプルに
なるが、高速印刷において非画像部を除去するなんらか
の処理をしないで画像を形成することは、非画像部が汚
れた地かぶり画像となるため事実上不可能である。さら
に画像の皮膜中及び表面上に残存する水系の液体量は、
非画像部の処理装置が無ければ画像皮膜固形分に対し9
0%以上となるため、そのままでは直ぐに被印刷体上に
は転写できない。第四の理由は電気化学反応を利用した
画像形成装置において高速性を達成するのに不可欠な技
術情報である電極間距離が明示されていないことであ
る。また印刷速度も明示されてはおらず、印加時間幅と
して直流パルスおよびその短パルスの重箪で行うとあ
り、その実施例において電圧印加時間が直流パルスとし
て数秒〜数十秒又短パルスの重箪として1パルス単位を
パルス幅2ミリ秒/パルス周期3ミリ秒であることから
低速においては高解像度画像が達成出来るであろうが、
高速印刷でないことは明白である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように水系インキ
を用いた従来技術は、「水系でコストは安くオンデマン
ド印刷が可能だが画像形成速度が遅い」という問題を有
している。このため前期公報の発明に記載されているよ
うなパーソナルユースにしか適用できず、工業用ユース
における水系の高速オンデマンド印刷には使えない、と
いう課題があった。また、前期公報には、使用するイン
キの極性を変えることにより画像形成させる電極として
正負両極とも使用可能と記されている。しかし、正電極
を画像形成電極とした場合、水系インキの極性はアニオ
ン系となるが、この場合画像形成時に正電極で水の電解
により電極金属が溶出するという問題点が原理的に発生
する。それは、電着塗料で一般的に指摘されている電極
金属の消費による画像形成電極の消耗や、形成皮膜中に
金属イオンが含まれるために色相の鮮やかさが不足する
という懸念である。さらに、インキに用いられる樹脂の
形態がエマルジョン状だと、一旦その構造が崩れると再
使用が不可能な為、印刷機内外でのインキの取り扱いに
注意を要する。そこで、本発明は、通電時間が数μm以
下で高速凝析し、且つインキとして扱いやすいコロイド
状又は溶解状の樹脂を使用した、オンデマンド印刷が可
能なカチオン性インキの提供を目的とする。また、本発
明は、画像形成電極の消耗がなく、工業的な高速の画像
形成が可能なオンデマンド画像形成方法の提供を目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来のイ
ンキ処方や印刷方法が有する上記問題点を解決するため
鋭意検討した結果、インキ用樹脂をカチオン性樹脂に限
定し、樹脂処方構成の工夫と共に、必要な電気化学反応
量に対応させるため単位時間の反応量を増大させ、尚且
つ樹脂の疎水性を上げて樹脂特性を改善したインキを使
用すること、印刷方法に非画像部処理を導入すること、
および画像形成時の電極間の距離を限定することで、樹
脂形態がコロイド状又は溶解状でも通電時間が数μ秒前
後の高速で、且つ負電極表面への適度な付着力をもっ
て、負電極上で凝析または析出することを見出し、本発
明に至った。
【0008】すなわち、本発明は、カチオン性官能基を
有するラジカル重合性モノマー30〜85重量%と他のラジ
カル重合性モノマー70〜15重量%との共重合体であり、
疎水度が60%以上 100%未満であり、カチオン価が1.0
を超え、かつ 2.5 以下であり、且つ伝導度が10〜100m
S/cmであるカチオン性樹脂と、着色剤とを水性媒体に
溶解又は分散してなるカチオン性インキである。また、
本発明は、カチオン性官能基を有しない他のラジカル重
合性モノマーが、炭素数8〜20の長鎖アルキル基を有
する上記カチオン性インキである。また、本発明は、カ
チオン性官能基を有するラジカル重合性モノマーが、N,
N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルア
ミノエチルメタアクリレート、N,N-ジエチルアミノプロ
ピルアクリレートおよびN,N-ジエチルアミノプロピルメ
タアクリレートよりなる群より選ばれる少なくとも1種
のラジカル重合性モノマーである上記カチオン性インキ
である。また、本発明は、カチオン性樹脂の数平均分子
量が 2,500〜20,000である上記カチオン性インキであ
る。また、本発明は、カチオン性樹脂の平均粒子径が0.
1μm未満である上記カチオン性インキである。また、本
発明は、被印刷体上に、上記カチオン性インキを用いて
画像形成してなる印刷物である。
【0009】また、本発明は、面状の負電極と該負電極
から 10 〜100 μmの距離をおいて配置された複数のピ
ン状の正電極との間に、上記カチオン性インキを供給す
る工程(a) と、前記負電極を移動させながら前記複数の
正電極のうちの任意の電極と前記負電極との間に通電し
電気化学反応により前記負電極上にカチオン性インキを
凝析させる工程(b) と、前記負電極から非凝析インキを
除去して画像を可視化する工程(c) と、前記負電極上に
形成された画像を被印刷体上に転写する工程(d) とを有
する画像形成方法である。また、本発明は、上記方法で
画像形成された印刷物である。
【0010】正負両電極間に水を媒体として含むインキ
を供給して水の電解電圧以上の電圧を掛けた場合、水の
電気分解により相対的に電位が高い電極側(=正電極)
では水素イオンと酸素ガスが発生し、相対的に電位が低
い電極側(=負電極)では水酸化物イオンと水素ガスが
発生し、さらに正電極では電極の素材によっては金属イ
オンの溶出が発生する。よってインキとしてアニオン性
インキを使用し、正電極を画像形成電極とした場合、金
属イオンの溶出による正電極表面の消耗は避けられな
い。これに対して、本発明のようにカチオン性インキを
正負両電極間に供給し、水の電解電圧以上の電圧を掛け
た場合は、負電極で発生する水酸化物イオンとの反応に
よりインキ中のカチオン性樹脂のカチオン性基が電荷を
失い、カチオン性樹脂が不溶−固体化して負電極上に画
像形成を行うため、原理的に負極では金属の溶出は発生
せず、電極の消耗は起こらない。
【0011】なお、本発明の画像形成方法でも正電極側
からは金属イオンが溶出するため、金属イオンが溶出し
ない材料で正電極を構成する必要があるが、正電極はピ
ン状のため電極材料の使用量が圧倒的に少なく、強度面
での補強も容易に行えることから、高価な貴金属や、強
度が弱いカーボン等から構成される金属イオンを溶出し
ない正電極を使用することができる。この様にインキと
してカチオン性インキを使用すると、金属イオンの溶出
による電極の消耗現象やインキへの金属イオンの混入現
象を原理的に皆無にすることができる。
【0012】しかし、単純に電着塗料に用いられている
カチオン性樹脂を含むインキを作成し凝析させようとす
ると、通常の電着塗装の様に分単位の長い通電時間が必
要であったり、負電極上に凝析させたインキの負電極に
対する付着力が強すぎるため、凝析インキを被印刷体上
に転写することができない。また、従来の電着塗料に主
として用いられているカチオン性樹脂はエマルジョン状
態であり、使用時の最適濃度に希釈すると状態安定性に
欠け、さらに顔料等の着色剤を分散させたものもエマル
ジョン状態を保ったままで長期間保存することができな
いという問題がある。
【0013】これに対して、カチオン性インキに含まれ
るカチオン性樹脂を構成するモノマーの組成、樹脂の疎
水度、カチオン価および伝導度を特定範囲にコントロー
ルすることにより、樹脂形態がコロイド状又は溶解状で
ありながら通電時間が数μ秒前後の高速で負電極上に凝
析可能で、顔料等の着色剤を長期間安定してインキ中に
分散可能なカチオン性樹脂が得られる。上記の特定のカ
チオン性樹脂を含むカチオン性インキを用いて通電によ
る電気化学反応を利用して画像を形成する場合には、凝
析インキが負電極に対して適度な付着力を有するため凝
析インキを被印刷体上に転写することが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明のカチオン性インキが適用
される画像形成方法は、いわゆる「印刷物」を作成する
方法で、負電極上に画像情報に応じたインキ皮膜を形成
させ、その画像を表すインキ皮膜を紙等の被印刷体上へ
転写したのち、インキ皮膜が転写されずに残った場合は
これを除去して負電極表面を奇麗な平面に戻し、必要に
応じてこれらの工程を繰り返して画像を形成する方法で
ある。この方法によれば、一枚一枚異なった画像を形成
することができ、いわゆるオンデマンド印刷が可能であ
る。負電極上でのインキ皮膜の形成は、正負電極間にカ
チオン性インキを供給して通電し、電極反応や電気泳動
などの電気化学反応によりカチオン性インキを凝析させ
ることにより行われる。本発明で「凝析する」とは、着
色剤およびカチオン性樹脂が安定に水性媒体に溶解また
は分散した状態で正負両電極間に存在しているカチオン
性インキが、通電により起こる電気化学反応で、負電極
表面上において水に不溶な固体状皮膜に変化する現象を
いう。具体的には、水の電気分解により負電極上にOH
− イオンが発生し、このOH− イオンでインキ中に含
まれる樹脂のカチオン性官能基が加水分解されて電荷を
失い、樹脂が安定した状態で水性媒体中に存在できなく
なり、不溶−固体化すると考えられる。
【0015】本発明のカチオン性インキは、正に荷電し
た原子又は原子団を有するカチオン性樹脂と着色剤とを
水性媒体に溶解又は分散してなり、電場下に置いたとき
負電極へ向かって移動する陽イオンの性能をインキ全体
として持つインキである。カチオン性インキは、インキ
中での樹脂の存在形態や樹脂粒子の大きさにより、溶解
状,コロイド状,エマルジョン(乳化)状に分類され
る。樹脂が水性媒体に溶解する場合(透明な樹脂溶液が
得られる場合)を溶解状、樹脂が水性媒体中で粒子とし
て存在し粒子径が0.1μm未満の場合をコロイド状、
粒子径が0.1μm以上の場合をエマルジョン状と称
し、本発明のインキはコロイド状又は溶解状であり、エ
マルジョン状であってはならない。ここで言う溶解状で
は個々の単体樹脂分子が水溶性を有するため、水分散性
を得るために分子が会合したエマルジョン状の様な構造
を形成する必要は無く、機械的な外部からの作用に強
い。又コロイド状はエマルジョン状と同じ会合系ではあ
るがその粒子が小さいため、溶解状同様に機械的な外部
からの作用に強くその状態が壊れないものを指し、一般
的な物理量で表現すると、粒子径が0.1μm未満で示
される。電着印刷において、カチオン性インキは 10 〜
100 μmの距離をおいた電極間を通ったり、高速回転す
るシリンダー上で非常に薄い皮膜状態になったり、画像
形成後に非凝析インキが強力なエアカーテンやブレード
等で除去される等の物理的な処理を受けるため使用条件
がかなり厳しく、エマルジョン状態が壊されやすい状況
下にある。一方、エマルジョン状インキは、一旦エマル
ジョン粒子が水性溶媒中で集合し粒径が増大すると、高
速電気化学反応性が失われる。また、エマルジョンが壊
れ樹脂粒子が凝集してできた樹脂の塊は、水には溶解せ
ず再度エマルジョンに戻すのは困難であるため、印刷機
上でエマルジョンが壊れると、インキとしての再利用は
事実上不可能である。これに対して、コロイド状又は溶
解状インキは、物理的に大きな処理を受けても樹脂のそ
れぞれの状態が壊れることはなく性能も変化しない。コ
ロイド状又は溶解状の樹脂を含むインキは、一度印刷に
使用した後の回収インキでも、固形分や添加剤等の増減
量に起因するインキ特性を調整すれば、特別な工夫を印
刷機側で施すことなく再利用できる。そのため、本発明
のカチオン性インキはコロイド状又は溶解状であること
が必要である。本発明では樹脂を水系の中でコロイド状
又は溶解系にするために、イオン化する官能基の量(カ
チオン価)を増やすが、このままだと固体化の為の必要
反応量も増加するため電着反応速度は劣化する。そこ
で、固体化の為の必要総反応量は大きくても、単位時間
の反応量を増大させる事で、コロイド状又は溶解状の状
態の維持と電着速度向上を両立させた。つまり、樹脂液
の伝導度を上げる事により、電気を印加した時の電流値
を上げ、電極上での水の電気分解を促進させ、樹脂を不
溶化させるOH基側の単位時間内の発生量を増大させる事
で、カチオン性官能基とOH基の反応効率が上昇し反応速
度向上が可能になる。一般的に樹脂液の伝導度を上げた
場合、樹脂の親水性がある程度高くないと樹脂の水分散
安定性が壊れ、直ぐ凝析して沈降物が発生しインキとし
て用いることが出来ない。この意味でもエマルジョン状
の様な低いカチオン価の樹脂液では、伝導度を上げる事
は可能であってもその値はかなり制限され、効果も小さ
い。樹脂のカチオン価を上げて親水性を高くすれば、樹
脂は溶解状になり電解等質の伝導度を上げる添加剤を増
量しても凝析等が発生し難く、且つ樹脂の溶解状態が維
持する事が可能に成る。つまり、コロイド状又は溶解状
でも高速電着反応が可能なインキの設定が可能に成る。
【0016】本発明のカチオン性インキに含まれるカチ
オン性樹脂は、カチオン性官能基を有するラジカル重合
性モノマー30〜85重量%と他のラジカル重合性モノマー
70〜15重量%との共重合体であり、疎水度が60%以上10
0%未満、カチオン価が1.0 を超え、かつ 2.5 以下であ
り、且つ伝導度が10〜100mS/cmの樹脂である。カチ
オン性官能基を有するラジカル重合性モノマーは、水中
でカチオン性を示すカチオン性官能基およびエチレン性
不飽和二重結合を有し、ラジカルにより重合が誘起され
る化合物である。
【0017】カチオン性官能基としては、1級アミノ
基、2級アミノ基、3級アミノ基、第4アンモニウム塩
基等が挙げられる。中でも、炭素数2以上のアルキル基
を有する3級アミノ基であるN,N-ジアルキルアミノ基を
有するラジカル重合性モノマーは、これを構成要素とす
るカチオン性樹脂を凝析させたものの疎水度が高いため
樹脂の凝析速度が速く、特に好ましい。特に、N,N-ジエ
チルアミノ基を有するラジカル重合性モノマーは、製造
コストおよび入手の容易さの点から最も優れている。
【0018】N,N-ジエチルアミノ基を有するラジカル重
合性モノマーとして具体的には、N,N-ジエチルアミノエ
チル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピ
ル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、N,N-ジ
エチルアミノ基以外のカチオン性官能基を有するラジカ
ル重合性モノマーとして具体的には、N,N-ジメチルアミ
ノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチ
ル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのカチ
オン性官能基を有するラジカル重合性モノマーは、単独
でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】他のラジカル重合性モノマーは、エチレン
性不飽和二重結合を有しラジカルにより重合が誘起され
る化合物であって、カチオン性官能基を有さない化合物
である。他のラジカル重合性モノマーとして具体的に
は、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)ア
クリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒド
ロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチ
ル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)ア
クリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アク
リルアミド、スチレン等が挙げられ、これらは単独でま
たは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】他のラジカル重合性モノマーは、n−オク
チル基,n−ドデシル基,n−オクタデシル基、n−エ
イコシル基等の炭素数8〜20の長鎖アルキル基を有す
ることが好ましい。長鎖アルキル基を有する他のラジカ
ル重合性モノマーを共重合成分とするカチオン性樹脂
は、長鎖アルキル基の影響で疎水度が高く凝析速度が速
い。また、長鎖アルキル基は顔料へのヌレが良く、カチ
オン性樹脂が顔料を水性媒体中に良好に分散させる働き
もするため、別に界面活性剤等の顔料分散剤を用いる必
要は基本的にはない。さらに、長鎖アルキル基は、カチ
オン性樹脂の造膜性や、凝析したインキ皮膜表面の粘着
性を向上させる効果も併せ持つことが出来る。
【0021】カチオン性樹脂のモノマー組成は、要求物
性に応じて適宜選択することができる。例えば、インキ
皮膜の粘着性を下げたり、皮膜硬度を上げるために樹脂
のガラス転移点(Tg)を上げたい場合や、顔料分散性
を上げたい場合には、スチレンを選択する。スチレン
は、他のラジカル重合性モノマーの全量を基準として、
10〜40重量%の範囲で用いることが好ましい。スチレン
の量が他のラジカル重合性モノマーの全量を基準として
10重量%未満では、Tg向上の効果がインキ皮膜に現れ
ず、40重量%を越えると、逆にインキ皮膜が脆くなる。
また、水への溶解性や電極への付着力を上げたい場合に
はメタクリル酸ヒドロキシエチルやアクリロニトリルや
アクリルアミド、後架橋性を付与したい場合にはグリシ
ジル(メタ)アクリレート、皮膜に柔軟性を付与したい
場合にはメタクリル酸エトキシエチル等のモノマーを選
択する。
【0022】各モノマーは、モノマーの全量を基準とし
て、カチオン性官能基を有するラジカル重合性モノマー
が30〜85重量%、他のラジカル重合性モノマーが70〜15
重量%となるような比率で共重合させなければならない
が、得られる共重合体は、ランダム, ブロック, グラフ
ト共重合体のいずれであっても良い。カチオン性官能基
を有するラジカル重合性モノマーの比率が多いほど、得
られるカチオン性樹脂の水性媒体中での分散安定性が良
好となるが、85重量%を越えると電極反応によりイオン
性が消失させてカチオン性樹脂を凝析させようとして
も、凝析した樹脂自体が親水性のため不溶化状態になら
ず固体化しない。反対に、カチオン性官能基を有するラ
ジカル重合性モノマーの比率が30重量%未満となると、
得られるカチオン性樹脂が水性媒体中で安定して存在で
きず沈殿してしまう。
【0023】また、カチオン性樹脂の分子量は、数平均
分子量で2500〜20000の範囲、特に3000〜
8000の範囲であることが好ましい。カチオン性樹脂
の数平均分子量が2500未満の場合は、通電によりカ
チオン性官能基が加水分解して電荷を失わせても固体に
ならないことがあり、固体になっても皮膜物性が不十分
になる。また、数平均分子量が8000〜20000の
範囲であると凝析皮膜の強度は高くなるが、樹脂を凝析
させるに必要な電気量が多くなり(樹脂1分子を凝析さ
せるに必要な水酸化物量が増加)凝析速度が遅くなる傾
向があると同時に、皮膜の平滑性が劣る傾向がある。さ
らに、カチオン性樹脂の数平均分子量が20000を越
えると、水性媒体中にカチオン性樹脂を安定して溶解ま
たは分散することが困難となる。
【0024】また、本発明のカチオン性インキを構成す
るカチオン性樹脂は、疎水度が60%以上 100%未満であ
ることが必要である。疎水度は、カチオン性樹脂の水に
対する親和性を評価するものであり、疎水度が高いほど
電気化学反応により凝析させた樹脂の親水性が低くな
り、水性媒体に対する凝析樹脂の不溶性が相対的に向上
してカチオン性樹脂の凝析速度が速くなると共に、凝析
物の体積も大きくなる。そのため、高速での画像形成を
可能とするためには、疎水度が60%以上でなければなら
ず、凝析速度と凝析前のカチオン性樹脂の水性媒体に対
する分散安定性の点から70%以上98%以下であることが
好ましい。
【0025】本発明における樹脂の疎水度は、以下の方
法で算出されるものである。樹脂を混合溶剤(イソプロ
ピルアルコール:テトラヒドロフラン=1:3(重量
比))に溶解し、固形分20重量%の樹脂の透明溶液を調
製する。得られた樹脂溶液5gに純水を滴下し、白濁が
発生した時の純水量αから、混合溶剤量とα量の比β
(IPA/THF混合溶剤量:α量=1:β)を求め、
以下の計算式から疎水度を算出する。 疎水度=(1/1+β)×100
【0026】また、本発明のカチオン性インキを構成す
るカチオン性樹脂は、カチオン価がカチオン価が1.0 を
超え、かつ 2.5 以下であることが必要である。カチオ
ン価は、カチオン性樹脂を水中で中和処理して、イオン
化状態となっているカチオン性官能基の絶対量を測定し
たものである。凝析反応はイオン化したカチオン性官能
基を還元して不溶化させ固体化させる反応であるため、
高速凝析性の観点からは少ない電気化学反応量で凝析さ
せるべく、樹脂のカチオン価は小さい事が好ましい。し
かし、樹脂を水系の中でコロイド状又は溶解状で得る為
には樹脂のカチオン価は1.0 を超え、かつ 2.5 以下で
あることが必要である。樹脂のカチオン価が2.5を越え
る場合は樹脂は凝析しなくなり、好ましくは1.1以上
1.8以下である。
【0027】本発明における樹脂のカチオン価は、以下
の方法で測定-算出されるものである。先ず、合成して
得られた樹脂を後述する方法で任意の割合で中和処理
し、カチオン基をイオン化させ水に可溶或いは分散させ
た樹脂濃度a重量%の中和処理液を調製する。得られた
中和処理液bgを秤量して精製水を加え 100mlの測定試
料を作成する。これを20ml容器に取り、トルイジンブル
ー指示薬を加え攪拌しながら 0.0025mol/lのポリビニル
硫酸カリウム溶液を滴下し、変色するまでに加えたポリ
ビニル硫酸カリウム溶液量(cml)から、下記の計算式
によってカチオン価を算出する。
【数1】
【0028】さらに、本発明のカチオン性インキを構成
するカチオン性樹脂は、伝導度が 10mS/cm以上 100
mS/cm 以下であることが必要である。伝導度は、樹
脂液の伝導度(=抵抗値の逆数)を測定した物で、電極
間に樹脂液を満たし電気を印加した際の電気の通り易さ
を示している。伝導度10mS/cm以下では、コロイド状
又は溶解状を維持した状態での、水の電気分解の促進効
果が小さいためOH発生量が小さく反応速度向上は不十分
になる。又100mS/cm以上だと電極間での電気印加時
に電気の短絡(=ショート)が起きやすくなり危険であ
り、又後述する本発明のインキを用いた画像形成方法に
おいて、インキを凝析させる時に一本一本のピン状の正
電極に流れる電流が多くなる。電流が多くなると、電気
供給装置の電気容量的な関係から、印加電圧を高くする
ことや印加時間を長くすることが難しく成り、印刷機側
の電気的条件の負担に繋がる。好ましくは20mS/cm以
上80mS/cm以下である。伝導度を上げるために添加す
る添加剤としては電界質や界面活性剤や酸等の水中でイ
オン化するものが良い。例えばKClやNaCl等と言
った電解質類、或いはカチオン系やアニオン系の界面活
性剤、又は酢酸等の酸類等が挙げられる。ノニオン系の
活性剤の添加は伝導度上昇には効果無いが、樹脂系の親
水性が高まる為伝導度を上げる電解質等と併用すると、
電解質等の添加量を増やす事が可能に成る。伝導度は市
販の伝導度測定器で測定する。本発明では堀場製の伝導
度計CONDUCTIVITY METER DS-15 (25℃)で測定した。
【0029】カチオン性官能基を有するラジカル重合性
モノマー30〜85重量%と他のラジカル重合性モノマー70
〜15重量%との共重合体であり、疎水度が60%以上、カ
チオン価が1.0 を超え、かつ 2.5 以下であり、且つ伝
導度が10〜100mS/cmのカチオン性樹脂の量は、イン
キの全量を基準として 5〜50重量%の範囲であることが
好ましい。カチオン性樹脂の量が 5重量%未満の場合
は、凝析インキの転写性が低く、50重量%を越える場合
は、インキの粘度が高くなるため非凝析インキの除去が
しにくくなる。
【0030】カチオン性樹脂を水性媒体に溶解または分
散する際には、水性媒体中におけるカチオン性樹脂のカ
チオン性官能基の解離度が小さいため、カチオン性樹脂
を酸で中和してカチオン性官能基をイオン化する。酸と
しては、酢酸,塩酸,シュウ酸,蟻酸,リン酸,吉草
酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,プロピオン酸等が用いら
れる。カチオン性樹脂の中和率は、樹脂のカチオン価に
関連する値だが、水性媒体中のカチオン性樹脂のコロイ
ド状又は溶解状を維持する観点から、カチオン性樹脂中
のカチオン性官能基の30%以上、特に40%以上が中和さ
れていることが好ましい。また、単位時間のOH発生量を
増加させるにしても、より少ない電気化学反応量で樹脂
を凝析させる樹脂の高速凝析性の観点から、カチオン性
樹脂中のカチオン性官能基の95%以下、特に75%以下の
範囲で中和されていることが好ましい。いわゆる中和率
で表現すれば中和率30%以上95%以下、好ましくは中
和率40%以上75%以下の範囲が特に良い。
【0031】本発明のカチオン性インキには、印刷物の
物性を調整するため、他のカチオン性樹脂を添加するこ
とができる。他のカチオン性樹脂としては、エポキシ樹
脂,アルキド樹脂,フェノール樹脂,アミノアルキド樹
脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリアミド
樹脂,ポリブタジエン樹脂,ポリエステルイミド樹脂,
シリコン樹脂,ビニル樹脂等のカチオン性官能基を有す
る樹脂を単独で、または2種以上組み合わせて用いるこ
とができる。
【0032】本発明のカチオン性インキを構成する着色
剤としては、水に溶解性の低い或いは溶解しない染料や
顔料が適している。染料としては、油溶性の染料で、特
に塩基性を示す染料が好ましい。また、顔料としては、
アゾ系,フタロシアニン系,アントラキノン系,キノク
リドン系,ジオキサン系,インジゴ系,チオインジゴ
系,ペリレン系,イソインドリノン系,アニリンブラッ
ク系,アゾメチン系,ケイ光顔料系等の有機顔料や、酸
化鉄,酸化チタン,亜鉛華,炭酸カルシウム,硫酸バリ
ウム,水酸化アルミニウム,べんがら,バリウムイエロ
ー,群青,黄鉛,金属粉,カーボンブラック等の無機顔
料が挙げられる。これらの着色剤は、単独で又は2種以
上を組み合わせて用いることができる。着色剤の量は、
インキ中に含まれる樹脂の全量に対して5〜50重量%が
適している。着色剤を水性媒体に分散する際には、イン
キ業界や塗料業界で用いられている分散剤を必要に応じ
て用いることも可能である。
【0033】本発明のカチオン性インキを構成する水性
媒体は、カチオン性インキの全量を基準として25〜96重
量%の水を含有し、カチオン性樹脂の分散性、凝析速
度、皮膜形成時の流動性、凝析皮膜物性を調整する等の
目的で、必要に応じて水混和性の極性溶剤を含有するも
のである。極性溶剤は、凝析したカチオン性樹脂を溶解
し得るもので、その量は、インキの全量を基準として
0.1〜10.0重量%の範囲であることが好ましい。凝析し
たカチオン性樹脂を溶解し得る極性溶剤の含有量が10.0
重量%を越えると、電気化学反応で凝析したカチオン性
樹脂の水性媒体に対する溶解性が高くなるため、凝析し
た樹脂がカチオン性インキに再溶解する現象が発生し、
カチオン性樹脂を高速で凝析させることが困難となる。
また、 0.1重量%未満であると、目的とする効果が充分
に発揮されない。
【0034】凝析したカチオン性樹脂を溶解し得る極性
溶剤としては、樹脂の組成に多少影響されるが、メタノ
ール、エタノール, イソプロピルアルコール等の一価の
低級アルコール類が挙げられる。また、他の水混和性の
極性溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、
プロピレングリコール等の多価アルコール類、メチルセ
ルソルブ、ブチルセルソルブ等の多価アルコールの誘導
体類、アセトン,メチルエチルケトン等のケトン類、エ
タノールアミン,ジメチルアミン等の各種アミン類が挙
げられる。なかでも、多価アルコール類は、湿潤作用を
有するため多価アルコール類を含むカチオン性インキは
印刷機上で乾燥しにくく、凝析インキの被印刷体に対す
る転写性が良いため好適に用いられる。これらの極性溶
剤は、単独または2種以上を混合して用いることができ
る。
【0035】なお、水性媒体が全体として親水性となる
ならば、イソホロン、メチルイソブチルケトン、トルエ
ン、キシレン、プロピレンジクロライド、1-フェノキシ
−2-プロパノール等の親油性の溶剤が含まれていても良
い。親油性溶剤は、カチオン性樹脂が水性媒体中に分散
している場合には樹脂粒子中に、カチオン性樹脂が水性
媒体中に溶解している場合には樹脂分子に付着して存在
している。親油性溶剤は、樹脂への溶解性や凝析樹脂皮
膜の成膜性や電極への付着力向上に効果がある。本発明
のカチオン性インキは、カチオン性樹脂、着色剤および
水性媒体と、必要に応じて顔料分散剤等の添加剤と、ガ
ラスビーズ等の分散媒体とをペイントシェーカー等の分
散機に入れ、数時間分散することにより製造することが
できる。
【0036】また、本発明のカチオン性インキは、高速
凝析性の観点から、なるべく凝析現象が起こるpH値に
近いpH値に調整することが好ましく、具体的にはpH
値が4.0〜8.0 、特に 5.0〜7.0 になるよう調整するこ
とが好ましい。カチオン性インキは、電気化学反応で負
電極側に発生するOH− イオンでインキ中のカチオン
性樹脂の陽イオン(カチオン性官能基)が電荷を失い樹
脂が不溶化する凝析現象により固体皮膜となるためであ
る。さらに、本発明のカチオン性インキの固形分は、印
刷機内でのインキの挙動を決めるインキの粘性の点から
3〜50重量%が好ましく、特に10〜30重量%が好まし
い。
【0037】本発明のカチオン性インキは、面状の負電
極と該負電極から 10 〜100 μmの距離をおいて配置さ
れた複数のピン状の正電極との間にカチオン性インキを
供給する工程(a) と、前記負電極を移動させながら前記
複数の正電極のうちの任意の電極と前記負電極との間に
通電し電気化学反応により前記負電極上にカチオン性イ
ンキを凝析させる工程(b) と、前記負電極から非凝析イ
ンキを除去して画像を可視化する工程(c) と、前記負電
極上に形成された画像を被印刷体上に転写する工程(d)
を有する画像形成方法により、被印刷体上に画像を形成
することができる。以下に、本発明のカチオン性インキ
を用いた画像形成方法について、図1に基づいて詳細に
説明する。
【0038】カチオン性インキを供給する工程(a)で
は、インキタンク1で性能調整されたインキ2が、回転
するイメージングドラム3(円筒状負電極)の表面に、
インキ供給部4から供給され、イメージングドラム3か
ら10〜100 μmの距離をおいて配置されているピン状電
極5との間(正負電極間)がインキで満たされる。正負
電極間距離が100 μmを超えると、ピン電極から負電極
への電界が広がり過ぎて、面積階調により高解像度の画
像を表現することが不可能になる。また、10μm未満の
場合は、各電極に高度な加工精度が要求されるため、高
価となる。
【0039】負電極は、金属,合金,半導体,金属酸化
物、黒鉛、ガラス状のカーボンなどの種々の物質で構成
することができる。負電極の形状は、面を構成する形状
であればよく、円筒状の他にシート状又はエンドレスベ
ルト状等であってもよい。また、負電極の表面には物理
的なパターンの無いものが好ましく、プロセススピード
である負電極の移動速度は、高速印刷が求められる場合
には 0.5〜5.0 m/秒であるが、 0.5m/秒未満の速度
で移動させることもできる。
【0040】ピン状の正電極5は、図2に示すように、
相互に電気的に絶縁され、等間隔で一列に配置されて印
刷ユニット6を構成しているが、正電極は数列に並べて
配列する複数列でも構わない。ピン状電極は静電プロッ
ター等で既に用いられている公知のものでも良い。正電
極は、負電極に対し相対的に電位の高い状態で使用され
る電極のことであり、金属,合金,半導体,金属酸化物
などの種々の物質で構成することができる。「ピン状」
とは線状形で、その断面形状は円、楕円、正方形、長方
形等のいずれの形状でも構わないが、インキと接する電
極の断面積が 100〜10000 μm2 のものが好ましい。
インキ供給部4は、図1に示した様なインキパンへのド
ブ漬け法、スリットによる落下法、シャワーによる吹き
付け法、ポンプによりノズル口から吐出させる方法、或
いはローラによる供給法等の公知の方法を用いたもので
も良い。
【0041】次いで、負電極上にカチオン性インキを凝
析させる工程(b)において、ピン状電極5を正極側と
しイメージングドラム3を負極側として画像情報に基づ
いた画像信号に応じた電圧パルスを印加し、電気化学反
応によりイメージングドラム3上にインキを凝析させ
る。この時の電圧印加パルスは、図3に示す電圧Aが20
〜300 V、パルス幅Bが10n秒〜250 μ秒であり、パル
ス周期Cは印刷速度と印刷物の解像度に応じて調整す
る。例えば印刷速度が0.5m/秒で解像度が200dpi必要な
らパルス周期は約254μ秒、又印刷速度が1.0m/秒で解
像度が400dpi必要ならパルス周期は約64μ秒、又印刷
速度が3.0m/秒で解像度が400dpi必要ならパルス周期
は約21μ秒である。電極反応又は電気泳動等によるイン
キ凝析量は、電圧印加パルス波形の面積に相関し、凝析
したインキの面積や成膜厚(濃度)が異なる凝析インキ
の画素の集合体からなる画像パターンが負電極上に形成
される。なお、画像を形成しない白紙に相当するエリア
には、電圧印加パルスを与えない。
【0042】次いで、負電極から非凝析インキを除去し
て画像を可視化する工程(c)において、凝析による画
像形成に関わらなかった余剰の非凝析インキを、被印刷
体に転写される前に負電極上から除去する。余剰インキ
の除去は、図1の7に示すようにエアーをカーテン状に
吹き付けて未凝析(=未硬化)で液状の非画像部を吹き
飛ばすエアカーテン法で行われ、エアカーテン法以外で
はロール法や掻き取りブレード法等を用いて行うことが
できる。本発明のカチオン性インキは、負電極表面への
適度な付着力を有する特定のカチオン性樹脂を含むの
で、工程(c)では非凝析インキのみが除去され、凝析
インキ皮膜は除去されないで負電極表面に残存する。工
程(c)で除去されたインキは、インキ回収受け8で集
められインキタンクに戻して調整し再利用することがで
きる。
【0043】最後に、画像を被印刷体に転写する工程
(d)において、イメージングドラム3上に形成された
画像9は、転写位置において印圧ロール11の圧力で被
印刷体10と接触させられ被印刷体10上に転写される。画
像の転写は、凝析インキ皮膜の特性に応じて、凝析イン
キ皮膜の粘着性を利用した圧力転写、凝析インキ皮膜の
電気特性を利用した電気転写、加熱による凝析インキ皮
膜の軟化を利用した熱転写等、またはこれらの組み合わ
せにより行うことができる。また、負電極上に形成され
た画像は、イメージングドラム3から直接被印刷体上に
転写せずに、円筒状或いはエンドレスベルト状の中間転
写体表面に一旦転写させ、それから被印刷体上へ印刷し
ても良い。
【0044】イメージングドラム3から被印刷体への画
像の転写率が 100%である場合を除いて、図1に示すよ
うに、画像転写後のイメージングドラム3表面に残存す
る凝析インキ画像はクリーニングブレード12等で掻き
取られて処理され、清浄なイメージングドラムの状態で
画像形成に繰り返し用いられる。被印刷体上に転写され
た画像は、インキ中に含まれる樹脂の特性に応じて、そ
のまま溶液成分の自然蒸発や空気中の酸素吸収による樹
脂の酸化重合により被印刷体上で硬化し定着したり、或
いは加熱や風力による強制蒸発、 又は加熱や電子照射等
による樹脂硬化反応等の機能を持つ装置で処理され被印
刷体上で硬化し定着する。
【0045】以上の画像形成方法を実施することにより
単色の画像を形成することができるが、異なる色相のイ
ンキを用いて工程(a)から工程(d)を繰り返すこと
により多色の画像を形成することができる。具体的に
は、円筒状の負電極の周囲に、ピン状の正電極、インキ
供給手段、非凝析インキ除去手段、転写手段等から構成
される色別の現像ユニットを複数設置する所謂サテライ
ト方式や、面状の負電極、ピン状の正電極、インキ供給
手段、非凝析インキ除去手段、転写手段等から構成され
る色別の画像形成装置を並べたタンデム方式を採用する
ことにより、フルカラーのオンデマンド印刷が可能とな
る。
【0046】
【実施例】《カチオン性樹脂の合成例》丸型フラスコ
に、表1に示す組成のカチオン性官能基を有するモノマ
ー(a)、カチオン性官能基を有しないアクリル酸エス
テルモノマー(b)、モノマーの全量に対して 3.0重量
%のアゾビスイソブチルニトリル(AIBN)およびモ
ノマーの全量に対して 150重量%のイソプロピルアルコ
ール(IPA)を入れて窒素雰囲気下で加熱攪拌し、加
熱還流してから表1に示す組成の(a)、(b)、モノ
マーの全量に対して 1.5重量%のAIBNおよびモノマ
ーの全量に対して90重量%のIPAを混合して、15分毎
に5回に分けて滴下して共重合し、カチオン性樹脂溶液
を得た。AIBNはラジカル開始剤として用い、IPA
は合成溶媒として用いた。カチオン性樹脂の分子量は、
実施例の中で特に断わりの無い場合、滴下物の量と滴下
時期を変えて、数平均分子量が約4200、分子量分布が約
1.5 になるように調整した。合成後、固形分が約74重量
%となるようにIPAを除去した。得られた樹脂の疎水
度および数平均分子量を表1に示す。なお、樹脂の疎水
度は、先に説明した方法で求めた。また、樹脂の分子量
は、昭和電工社製カラム「Shodex Asahip
ak GF−310HQ」(7.6×300mm2本)
を使用して、移動相DMF5mM・LiBr添加、流量
0.6ml/分の条件で測定した。
【0047】
【表1】 * IPA 7重量%+イソホロン 8重量%
【0048】(a)カチオン性官能基を有するラジカル
重合性モノマー t−B;N−t−ブチルアミノエチルメタクリレート DM ;2−(N, N−ジメチルアミノ)エチルメタク
リレート DE ;2−(N, N−ジエチルアミノ)エチルメタク
リレート (b)カチオン性官能基を有しないアクリル酸エステル
モノマー M;メチルメタクリレート B;n−ブチルメタクリレート O;n−オクチルメタクリレート S;n−ステアリル(=n−オクタデシル)メタクリレ
ート St;スチレン
【0049】《カチオン性樹脂の中和処理》得られたカ
チオン性樹脂溶液に、カチオン性樹脂のカチオン価が表
1に示す値になるように適量の酢酸を攪拌しながら少し
ずつ加え、最後に固形分が40重量%になるように適量の
精製水を入れてカチオン性樹脂の水溶解液又はコロイド
液又はエマルジョン液を得た。カチオン価は、特に断わ
りの無い限り0.80に成る様にした。 《カチオン性樹脂の伝導度調整》中和処理したカチオン
性樹脂溶液に、伝導度が表1に示す値になるように適量
の電解質KClを攪拌をしながら少しずつ加え、カチオン
性樹脂の水溶液又は懸濁液を得た。伝導度<5.0mS/cm
のものは電解質未添加品である。なお、樹脂の伝導度
は、先に説明した方法で求めた。
【0050】 《ブラックインキの作成例》 カチオン性樹脂(100重量%固形分換算) 50g 黒色顔料(三菱化学社製「カーボンブラック#2650」) 10g 界面活性剤(花王社製「コータミン24P」 5g IPA(極性溶剤) 14g 精製水 121g 上記の原料を秤量し、同量のガラスビーズと共にペイン
トシェーカーに入れ、3時間分散させインキ化した。I
PA量は実施例の中で特に断わりの無い場合、樹脂合成
後に残留する量も含め、インキの全量に対し7重量%に
なるように調整した。
【0051】中和処理後に得られたカチオン性樹脂水溶
液又は懸濁液の分散安定性を目視で評価し、中和処理後
に沈降して樹脂が固まったものは不可とした。水性媒体
に対する分散性の良い樹脂だけをインキ化し、その凝析
速度、印刷濃度、顔料分散性、皮膜品質および印刷適性
を評価した。結果を表2〜9に示す。インキの顔料分散
性は、インキを60℃で保存してゲル化の有無を目視で観
察し、3日後にゲル化していたものを×,2ヶ月後にゲ
ル化していたものを△,6ヶ月後にゲル化していたもの
を○,6ヶ月後もゲル化していなかったものを◎とし
た。
【0052】凝析速度の評価は、直径50μmで回りを絶
縁性の樹脂でモールドした白金製の針電極とそれに対向
し垂直の位置関係にあるSUS 製の板状面電極を50μmの
間隙を持って固定した、簡単な針電極実験装置を用いて
行った。まず、針電極実験装置の電極間にインキをスポ
イトで滴下して充填した。次に、電極間に直流電圧100
Vをアンプとパルスジェネレーターでパルス幅を変えて
印加しインキの一部を凝析させ、非凝析インキをエアー
で吹き飛ばす又は水で洗い流す等の処理で除去し、凝析
物の厚みを測定した。印加する電圧のパルス幅は、少し
ずつ小さくして行き、凝析物の厚みが1μm以上になる
最小のパルス幅(μ秒)を凝析速度とした。
【0053】凝析速度が2000μ秒以下のインキについて
は、さらに図1に示す画像形成装置を用いて、負電極の
移動速度1m/秒,印加電圧 100Vの条件で、コート紙
上に全ベタの画像を形成し、反射濃度計(X-Rite 社製
「X-Rite408」)を用いて印刷濃度を測定し、4段階で
評価した。すなわち、印刷濃度が1.60以上は◎,1.30以
上1.60未満は○,1.00以上1.30未満は△,1.00未満以下
或いはベタ画像を形成しなかった場合は×とした。実用
上は印刷濃度 1.3以上を合格とした。なお、負電極の
移動速度が遅くなれば印刷濃度が高くなり、評価基準は
変わる。
【0054】(比較例1〜8)カチオン性樹脂を構成す
るカチオン性官能基含有モノマーの種類を固定し、カチ
オン性官能基を有しないアクリル酸エステルモノマーの
種類と量をそれぞれ替え、カチオン性樹脂のモノマー組
成、疎水度およびカチオン価がインキの性能に及ぼす影
響を比較した。カチオン性樹脂のモノマー組成、疎水
度、カチオン価、樹脂液状態およびインキの評価結果を
表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】比較例1〜5では、カチオン性樹脂を構成
するモノマーの組成の影響を確認するためアクリル酸エ
ステルモノマーの重量比を変化させた。なお、疎水度お
よびカチオン当量の影響を排除するため、疎水度が60前
後になるようにアクリル酸エステルモノマーの種類を選
択し、カチオン価が 0.8前後になるように中和処理を行
った。カチオン性樹脂を構成するモノマー中のカチオン
性官能基含有モノマーの量が30重量%未満である比較例
1では、カチオン性樹脂の分散安定性が悪く、インキを
作成することができなかった。また、カチオン性官能基
含有モノマーの量が85重量%を越えている比較例5で
は、得られるインキが凝析しなかった。
【0057】また、カチオン性樹脂の疎水度60%未満で
ある比較例6では、凝析速度が遅く、印刷濃度も低いた
め実用レベルにはなかった。さらに、比較例3と同様の
モノマー組成のカチオン性樹脂の中和率を約3.5倍に
し、カチオン性樹脂のカチオン価が 2.5 を越える比較
例8では、凝析せず画像形成できなかった。なお、カチ
オン性樹脂の中和率を約2倍にし、カチオン性樹脂のカ
チオン価が1.0を超えるようにした比較例7は、凝析速
度が遅く印刷濃度も低いため実用レベルにはなかった。
また、これら表2に示す樹脂は全て伝導度が5.0mS/cm
以下であり、樹脂の状態としては比較例1〜4と比較例
6はエマルジョン状で、比較例5はコロイド状、比較例
7,8は溶解状であった。すなわち、表2に示す結果か
ら、カチオン性樹脂を水性媒体中に安定して分散するた
めには、カチオン性樹脂を構成するモノマー中のカチオ
ン性官能基含有モノマーの量が30〜85重量%の範囲であ
り、高速で凝析するためにはカチオン性樹脂の疎水度が
60%以上で、且つカチオン価が 1.0以下であることが確
認できたが、これらで高速凝析が可能なのはエマルジョ
ン状のみであり、コロイド状又は溶解状で高速凝析を満
足するものは得られなかった。
【0058】(比較例3、9、10)カチオン性樹脂を構
成するカチオン性官能基を有しないアクリル酸エステル
モノマーのアルキル基の長さがインキの性能に及ぼす影
響を比較した。結果を表3に示す。その結果、アルキル
基が長くなるとカチオン性樹脂の疎水度が上昇し、凝析
速度が速くなると共に、顔料に対するヌレが良くなるた
め顔料分散性も向上し、性能が向上したインキが得られ
ることが確認できた。特に、アルキル基の長さがオクチ
ル基以上の場合に良好な結果が得られた。ただこれら表
3に示めす樹脂は全て伝導度が5.0mS/cm以下であり、
樹脂の状態として比較例9,10はエマルジョン状で、コ
ロイド状又は溶解状のものは得られなかった。
【0059】
【表3】
【0060】(比較例10〜12)カチオン性樹脂を構成
するカチオン性官能基を有しないアクリル酸エステルモ
ノマーの種類と量を固定し、カチオン性官能基含有モノ
マーの種類を替えて、カチオン性樹脂を構成するカチオ
ン性官能基含有モノマーの種類がインキの性能に及ぼす
影響を比較した。結果を表4に示す。カチオン性官能基
含有モノマーの種類によって、得られるカチオン性樹脂
の疎水度が大きく異なり、カチオン性官能基含有モノマ
ーの組成比を60重量%に固定した場合には、カチオン性
官能基含有モノマーとして2−(N, N−ジメチルアミ
ノ)エチルメタクリレートを用いた比較例11では、得ら
れるカチオン性樹脂の疎水度が60%未満となり、インキ
の凝析速度が遅く、印刷濃度も低かった。これに対し
て、カチオン性官能基含有モノマーとしてN−t−ブチ
ルアミノエチルメタクリレートを用いた比較例10および
2−(N, N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート
を用いた比較例12では、得られるカチオン性樹脂の疎
水度が60%以上でインキの凝析速度が速く、印刷濃度も
高いことから、実用レベルであった。特に、2−(N,
N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレートを構成成分
とするカチオン性樹脂を用いた比較例12のインキは、
凝析速度が速い上に印刷濃度も高く向上していた。ただ
し、これら表4に示めす樹脂は全て伝導度が5.0mS/cm
以下であり、樹脂の状態としては比較例11,12はエマ
ルジョン状で、コロイド状又は溶解状のものは得られな
かった。
【0061】
【表4】
【0062】(比較例12〜15)カチオン性樹脂を構
成するカチオン性官能基含有モノマーとカチオン性官能
基を有しないアクリル酸エステルモノマーの種類と量を
固定して、分子量の異なる樹脂を合成し、カチオン性樹
脂の分子量がインキの性能に及ぼす影響を比較した。結
果を表5に示す。比較例12〜15の結果から、数平均
分子量が2500〜20000 の範囲にあるカチオン性樹脂を用
いたインキは、凝析速度が速く印刷濃度も十分であった
が、分子量の増加と共に凝析速度は低下傾向にある。た
だし、これら表5に示めす樹脂は全て伝導度が5.0mS/c
m以下であり、樹脂の状態としては高速凝析が可能な比
較例12,14,15 はエマルジョン状で、比較例13はコ
ロイド状だが高速凝析が出来ず、高速凝析が可能でコロ
イド状又は溶解状のものは得られなかった。
【0063】
【表5】
【0064】(比較例12、16、17)カチオン性樹
脂を構成するモノマー組成が同一のカチオン性樹脂を用
いて、凝析したカチオン性樹脂を溶解し得る極性溶剤の
量が異なるインキを作成し、極性溶剤の量がインキの性
能に及ぼす影響を比較した。結果を表6に示す。インキ
の全量に対する極性溶剤(IPA)の量が10.0重量%以
下である比較例12のインキは、極性溶剤(IPA)の
量が10.0重量%を越える比較例16のインキと比較し
て、凝析速度が速く印刷濃度も高く優れていた。また、
インキの全量に対する極性溶剤(IPA)の量が10.0重
量%以下であり、さらに非極性溶剤(イソホロン)を含
む比較例17のインキの凝析速度は、非極性溶剤(イソ
ホロン)を含まない比較例12のインキと同様のレベル
であり、非極性溶剤がインキの凝析速度に及ぼす影響は
認められなかった。しかし、非極性溶剤(イソホロン)
を含む比較例17のインキの印刷濃度は、非極性溶剤
(イソホロン)を含まない比較例12のインキより優れ
ており、インキへの非極性溶剤の添加は、 凝析インキ皮
膜の負電極表面に対する付着性(耐非画像部処理)や皮
膜の成膜性を向上させ、電極から紙への転写能を上げる
効果があった。ただし、これら表6に示す樹脂は全て伝
導度が5.0mS/cm以下であり、樹脂の状態としては比較
例16,17 はエマルジョン状で、コロイド状又は溶解
状のものとしては得られなかった。
【0065】
【表6】
【0066】(比較例17〜19)カチオン性樹脂を構
成するカチオン性官能基含有モノマーの種類と量、アク
リル酸エステルモノマーの種類および添加溶剤の種類と
量を固定して、スチレンの共重合比率が異なる樹脂を合
成し、カチオン性樹脂の構成モノマーであるスチレンの
共重合比率がインキの性能に及ぼす影響を比較した。結
果を表7に示す。他のラジカル重合性モノマーの全量を
基準として25重量%のスチレンを共重合したカチオン性
樹脂を用いた比較例18のインキは、スチレンを共重合
しないカチオン性樹脂を用いた比較例17のインキに比
べ、印刷物表面のべたつき感がほとんどなく優れてい
た。一方、他のラジカル重合性モノマーの全量を基準と
して50重量%のスチレンを共重合したカチオン性樹脂を
用いた比較例19のインキは、印刷物表面のべたつき感
はなく優れているが、柔軟性がなく脆いインキ皮膜のた
め、はがれやすかった。なお、印刷物の皮膜品質は、印
刷物表面のべたつき感と脆さで評価し、べたつき感はな
いが脆いものを△、脆さはないが少しべたつき感のある
ものを○、べたつき感も脆さもなくバランスのとれたも
のを◎とした。ただし、これら表7に示す樹脂は全て伝
導度が5.0mS/cm以下であり、樹脂の状態としては比較
例18,19 はエマルジョン状で、コロイド状又は溶
解状のものは得られなかった。
【0067】
【表7】
【0068】(実施例1〜4、比較例18〜23)カチ
オン性樹脂を構成するモノマー組成と樹脂分子量と添加
する溶剤量が同一のカチオン性樹脂を用いて、中和処理
と電解質添加量が異なるインキを作成し、カチオン価と
伝導度がインキの性能に及ぼす影響を比較した。モノマ
ー組成と樹脂分子量と添加する溶剤量が同一の基準イン
キとして比較例18を用いた。電解質としてはKClを使
用し、添加量は伝導度に合わせて調整した。カチオン性
樹脂のカチオン価、伝導度、インキの評価及び印刷機適
性評価の結果を表8に示す。
【表8】 伝導度の値を約29mS/cm前後に合わせ、カチオン価を
高めていくと溶解状の樹脂が得られるが、カチオン価が
2.7の比較例20では凝析速度が遅く凝析しなかった。
又カチオン価が0.8の比較例21では凝析速度は上がっ
たが、樹脂状態がエマルジョン状であった。これらの間
のカチオン価を持つ実施例1と2は凝析速度が高速且つ
樹脂状態が溶解状のカチオン性インキを得ることが可能
であった。一方、カチオン価を1.3に固定し、伝導度を
変えていくと108.6の比較例22は凝析速度の高速化が
可能だったが樹脂状態がエマルジョン状になり、伝導度
が5.0の比較例23では樹脂状態は溶解状が得られた
が、凝析速度が遅く十分な印刷濃度が得られなかった。
これらの間の伝導度を持つ実施例3と4は凝析速度が高
速且つ樹脂状態がコロイド状又は溶解状のカチオン性イ
ンキを得ることが可能であった。これらのインキを用い
た印刷では、エマルジョン状樹脂を用いた比較例18、
21、22は印刷開始直後では問題なかったが、2000枚
を過ぎる頃から印刷機内部のブレード等の各所にエマル
ジョンが壊され凝集した溶液状樹脂の塊が溜まりだし、
印刷物濃度が不安定になり薄く成っていった。これらは
水溶性が無いため樹脂を溶解する溶剤を用いないと清掃
不可で、インキも全部取替える必要が生じた。一方、コ
ロイド状又は溶解状の樹脂を用いた実施例1〜4と比較
例23では、100,000枚を過ぎても特に問題なく印刷が
続けることが可能で、固形分と添加剤の成分調整を続け
る限り、インキの継ぎ足し方式での連続印刷が可能であ
り、印刷機内部の汚れた部分も未乾燥状態なら水での清
掃が可能であった。すなわち、表8に示す結果から、カ
チオン性樹脂として凝析速度の高速性を維持し、且つ樹
脂状態をコロイド状又は溶解状で水性媒体中に安定して
分散又は溶解させるためには、カチオン性樹脂を構成す
るモノマー中のカチオン性官能基含有モノマーの量が30
〜85重量%の範囲であり、カチオン性樹脂の疎水度が60
%以上100%未満で、カチオン価が 1.0 を超えかつ2.5
以下であり、且つ伝導度が10〜100mS/cmである必要
があることが確認できた。 (実施例2、5)カチオン性樹脂を構成するモノマー組
成と添加する溶剤量とカチオン価と伝導度が同一のカチ
オン性樹脂を用いて、樹脂分子量が異なる樹脂を用い
て、インキの性能に及ぼす影響を比較した。電解質とし
てはKClを使用し、評価結果を表9に示す。
【表9】 実施例2、5の結果から、樹脂状態がコロイド状又は溶
解状の場合、樹脂の数平均分子量が4000前後より 8000
前後にあるカチオン性樹脂を用いたインキの方が、凝析
速度が速く他適性上も問題は無く優れていた。
【発明の効果】本発明のカチオン性インキは、正負電極
間に存在させて通電すると、水の電気分解によるpH変
化で負電極上に高速で凝析するため、本発明のカチオン
性インキを用いることと、画像形成方法のプロセス条件
を規定することにより、工業用途としてより実用可能な
レベルの高速で、電気化学反応により画像を形成するこ
とが可能となった。また、本発明のカチオン性インキを
正負電極間に存在させ通電すると、その電気量に応じて
所望の大きさの凝析インキ皮膜が形成されるため、画像
情報を電気信号に変えて印刷をするいわゆるデジタル印
刷が可能となる。すなわち、本発明の画像形成方法によ
れば、画像が固定されたいわゆる版を用いる必要がな
く、電子写真方式の感光体のように、電極表面に電気的
な画像(潜像) を形成して画像形成を行う。そのため、
電気信号を変えることで、1枚1枚が異なった画像の形
成を連続して行うオンデマンド方式の印刷が可能にな
る。
【0069】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法を実施するための画像形
成装置の側面図。
【図2】ピン電極が配置された印刷ユニットの電極露出
面から見た正面図。
【図3】正負電極間に印加される電圧パルスの波形を示
す概念図。
【符号の説明】
1:インキタンク 2:インキ 3:イメージングドラム(負電極) 4:インキ供給部 5:ピン電極(正電極) 6:印刷ユニット 7:エアーブロワー(非画像部処理) 8:非画像部処理インキ回収ユニット 9:画像 10:被印刷体 11:印圧ロール 12:クリーニングブレード

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カチオン性官能基を有するラジカル重合性
    モノマー30〜85重量%と他のラジカル重合性モノマー70
    〜15重量%との共重合体であり、疎水度が60%以上 100
    %未満であり、カチオン価が 1.0 を超え、かつ 2.5 以
    下であり、且つ伝導度が10〜100mS/cmであるカチオ
    ン性樹脂と、着色剤とを水性媒体に溶解又は分散してな
    るカチオン性インキ。
  2. 【請求項2】カチオン性官能基を有しない他のラジカル
    重合性モノマーが、炭素数8〜20の長鎖アルキル基を
    有する請求項1記載のカチオン性インキ。
  3. 【請求項3】カチオン性官能基を有するラジカル重合性
    モノマーが、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、
    N,N-ジエチルアミノエチルメタアクリレート、N,N-ジエ
    チルアミノプロピルアクリレートおよびN,N-ジエチルア
    ミノプロピルメタアクリレートよりなる群より選ばれる
    少なくとも1種のラジカル重合性モノマーである請求項
    1または2記載のカチオン性インキ。
  4. 【請求項4】カチオン性樹脂の数平均分子量が 2,500〜
    20,000である請求項1ないし3いずれか記載のカチオン
    性インキ。
  5. 【請求項5】カチオン性インキが、凝析したカチオン性
    樹脂を溶解し得る極性溶剤を、カチオン性インキの全量
    を基準として 0.1〜10.0重量%の範囲で含有する請求項
    1ないし4いずれか記載のカチオン性インキ。
  6. 【請求項6】他のラジカル重合性モノマーの10〜40重量
    %がスチレンである請求項1ないし5いずれか記載のカ
    チオン性インキ。
  7. 【請求項7】 カチオン性樹脂の平均粒子径が0.1μ
    m未満である請求項1ないし6記載のカチオン性イン
    キ。
  8. 【請求項8】面状の負電極と該負電極から 10 〜100 μ
    mの距離をおいて配置された複数のピン状の正電極との
    間に、請求項1ないし6いずれか記載のカチオン性イン
    キを供給する工程(a) と、前記負電極を移動させながら
    前記複数の正電極のうちの任意の電極と前記負電極との
    間に通電し電気化学反応により前記負電極上にカチオン
    性インキを凝析させる工程(b) と、前記負電極から非凝
    析インキを除去して画像を可視化する工程(c) と、前記
    負電極上に形成された画像を被印刷体上に転写する工程
    (d) とを有する画像形成方法。
  9. 【請求項9】被印刷体上に、請求項1ないし7いずれか
    記載のカチオン性インキを用いて画像形成してなる印刷
    物。
  10. 【請求項10】請求項7記載の方法で画像形成された印
    刷物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011005771A (ja) * 2009-06-26 2011-01-13 Ricoh Co Ltd 画像形成装置

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