JP2003327782A - ケイ素系樹脂組成物及び無機多孔性薄膜の形成方法 - Google Patents

ケイ素系樹脂組成物及び無機多孔性薄膜の形成方法

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JP2003327782A
JP2003327782A JP2002138886A JP2002138886A JP2003327782A JP 2003327782 A JP2003327782 A JP 2003327782A JP 2002138886 A JP2002138886 A JP 2002138886A JP 2002138886 A JP2002138886 A JP 2002138886A JP 2003327782 A JP2003327782 A JP 2003327782A
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polysilane
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Koyo Matsukawa
公洋 松川
Yukito Matsuura
幸仁 松浦
Hiroshi Inoue
弘 井上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】簡便且つ低コストで無機多孔性薄膜を形成する
ために好適に使用できる、ケイ素系樹脂組成物及びこれ
を用いる無機多孔性薄膜の形成方法を提供すること。 【解決手段】ポリシランとビニル系モノマーとのブロッ
ク共重合体及びゾル−ゲル反応性金属化合物を含有する
ことを特徴とするケイ素系樹脂組成物、並びに、基材上
に、上記ケイ素系樹脂組成物を、塗布後、50〜250
℃に加熱して硬化させることによって、ポリシランとビ
ニル系モノマーとのブロック共重合体及び金属酸化物を
含有してなるハイブリッド薄膜を形成し、次いで該薄膜
表面に活性エネルギー線を照射して、該共重合体中のポ
リシラン部分を分解させ、更に該分解物を溶剤により除
去することを特徴とする無機多孔性薄膜の形成方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なケイ素系樹
脂組成物及び無機多孔性薄膜の形成方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】金属酸化物半導体に光を照射すると還元
作用を持つ電子と酸化作用を持つ正孔が生じ、表面に付
着した有機物等を酸化還元作用により分解する。このよ
うな光触媒作用を利用することにより、例えば空気中や
水中の有害物質を除去することができる。このような機
能をもつ光触媒として、例えば酸化チタンの薄膜が提案
されており、光触媒機能を最大限に発揮させるために
は、薄膜の比表面積を大きくする多孔質化が必要であ
る。
【0003】通常、酸化チタンの多孔性薄膜を広い面積
の基材上に形成して、窓ガラスやタイル等の住宅設備に
用いる場合には、例えば、酸化チタン微粒子を含むコー
ティング液を塗布して400℃以上の温度で焼成する方
法、Ti(O-iC3H7)4に酸触媒を加えたゾルを作製し、基材
上に塗布してゲル化を行い、最後に400℃以上の高温
で加熱処理することにより酸化チタンの多孔性薄膜を形
成する方法(アンダーソンら、J. Membrane Sci., 39
巻、243ページ)等が、行われている。
【0004】また、酸化チタンの多孔性薄膜は、色素増
感太陽電池の導電基板上に形成する多孔性半導体薄膜と
しての応用も期待されている。この導電基板上の多孔性
半導体薄膜には、ナノメーターサイズ(10〜30n
m)の細孔を持ち、透明で非常に大きい比表面積を有す
る酸化チタン等の半導体薄膜が必要とされている。その
具体的な作製方法としては、例えば「ゾル−ゲル法の応
用」(作花澄夫著、アグネ承風社)90ページに記載さ
れているように、ゾル−ゲル法により作製した10〜2
0nmの直径を有する酸化チタン粒子のコロイド溶液を
透明電極基板上に塗布して、500℃の高温で加熱焼成
することにより酸化チタンの多孔性薄膜を作製する。
【0005】しかし、これら従来の酸化チタンの多孔性
薄膜の形成方法では、細孔径およびその分布の制御が容
易ではなく、しかも比表面積に限界があり、基材との密
着性が十分でない場合が多く、又400℃以上もの高温
加熱処理が必要であった。
【0006】また、酸化チタン以外の金属酸化物として
は、例えば酸化スズの多孔性薄膜はガスセンサーとして
の需要が大きいが、これも微粉末成形体の焼結、ゾル−
ゲル法、及びコストの高い電気炉等を用いた高温加熱処
理により作製されてきた。そのほか、亜鉛、ゲルマニウ
ム、ジルコニウム等の酸化物は半導体デバイス材料等と
して、またイットリウムの酸化物は光学材料等として応
用が期待されているが、これらの酸化物を多孔性薄膜と
することにより、更にそれぞれの性能が向上するものと
考えられている。
【0007】従って、上記酸化チタン等の各種金属酸化
物の多孔性薄膜の簡便で低コストの形成方法が要望され
ているのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡便
且つ低コストで無機多孔性薄膜を形成するために好適に
使用できる、ケイ素系樹脂組成物及びこれを用いる無機
多孔性薄膜の形成方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリシランと
ビニル系モノマーとのブロック共重合体及びゾル−ゲル
反応性金属化合物を含有するケイ素系樹脂組成物を、基
材に塗布後、加熱硬化させて、該共重合体及び金属酸化
物を含有してなるハイブリッド薄膜を形成し、それに活
性エネルギー線を照射して該共重合体中のポリシラン部
分を分解後、該分解物を溶剤除去することにより、無機
多孔性薄膜が効率的に形成されることを見出し、かかる
知見に基づき更に研究して、本発明を完成するに至っ
た。
【0010】本発明は、以下のケイ素系樹脂組成物、該
組成物を用いる無機多孔性薄膜の形成方法及び該形成方
法により得られる無機多孔性薄膜に、係るものである。
【0011】1.ポリシランとビニル系モノマーとのブ
ロック共重合体及びゾル−ゲル反応性金属化合物を含有
することを特徴とするケイ素系樹脂組成物。
【0012】2.ポリシランが、ポリ(メチルフェニル
シラン)、ポリ(エチルフェニルシラン)、ポリ(n−
プロピルフェニルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラ
ン−co−ジメチルシラン)及びポリ(メチルフェニル
シラン−co−ジ−n−ヘキシルシラン)からなる群か
ら選ばれる少なくとも一種である上記項1に記載のケイ
素系樹脂組成物。
【0013】3.ポリシランが、ポリ(メチルフェニル
シラン)である上記項2に記載のケイ素系樹脂組成物。
【0014】4.ビニル系モノマーが、加水分解性シラ
ン官能基含有ビニル系モノマー及び水素結合性官能基含
有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも
一種である上記項1に記載のケイ素系樹脂組成物。
【0015】5.加水分解性シラン官能基含有ビニル系
モノマーが、(メタ)アクリル酸のアルコキシシラン基
含有アルキルエステルである上記項4に記載のケイ素系
樹脂組成物。
【0016】6.ポリシランとビニル系モノマーとのブ
ロック共重合体が、ポリ(メチルフェニルシラン)と3
−(メタ)アクリロキシプロピルアルコキシシランとの
ブロック共重合体である上記項1に記載のケイ素系樹脂
組成物。
【0017】7.ポリシランとビニル系モノマーとの共
重合体の共重合組成が、両者の合計量に対する重量%
で、ポリシラン:ビニル系モノマー=10:90〜9
0:10である上記項1に記載のケイ素系樹脂組成物。
【0018】8.ゾル−ゲル反応性金属化合物が、チタ
ン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合
物、ゲルマニウム化合物及びイットリウム化合物からな
る群から選ばれる少なくとも一種である上記項1に記載
のケイ素系樹脂組成物。
【0019】9.チタン化合物が、チタンアルコキシ
ド、チタンキレート錯体及びチタンアシラートからなる
群から選ばれる少なくとも一種である上記項8に記載の
ケイ素系樹脂組成物。
【0020】10.ジルコニウム化合物が、ジルコニウ
ムアルコキシド、ジルコニウムキレート錯体及びジルコ
ニウムアシラートからなる群から選ばれる少なくとも一
種である上記項8に記載のケイ素系樹脂組成物。
【0021】11.亜鉛化合物が、亜鉛アルコキシド、
亜鉛キレート錯体及び亜鉛アシラートからなる群から選
ばれる少なくとも一種である上記項8に記載のケイ素系
樹脂組成物。
【0022】12.スズ化合物が、スズアルコキシド、
スズキレート錯体及びスズアシラートからなる群から選
ばれる少なくとも一種である上記項8に記載のケイ素系
樹脂組成物。
【0023】13.ゲルマニウム化合物が、ゲルマニウ
ムアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種
である上記項8に記載のケイ素系樹脂組成物。
【0024】14.イットリウム化合物が、イットリウ
ムアルコキシド、イットリウムキレート錯体及びイット
リウムアシラートからなる群から選ばれる少なくとも一
種である上記項8に記載のケイ素系樹脂組成物。
【0025】15.ゾル−ゲル反応性金属化合物に、β
−ジケトン類を反応調節剤として併用する上記項1に記
載のケイ素系樹脂組成物。
【0026】16.ポリシランとビニル系モノマーとの
ブロック共重合体及びゾル−ゲル反応性金属化合物の配
合割合が、前者100重量部に対して後者が10〜1
0,000重量部である上記項1に記載のケイ素系樹脂
組成物。
【0027】17.基材上に、上記項1〜16のいずれ
かに記載のケイ素系樹脂組成物を、塗布後、50〜25
0℃に加熱して硬化させることによって、ポリシランと
ビニル系モノマーとのブロック共重合体及び金属酸化物
を含有してなるハイブリッド薄膜を形成し、次いで該薄
膜表面に活性エネルギー線を照射して、該共重合体中の
ポリシラン部分を分解させ、更に該分解物を溶剤により
除去することを特徴とする無機多孔性薄膜の形成方法。
【0028】18.活性エネルギー線が、紫外光である
上記項17に記載の無機多孔性薄膜形成方法。
【0029】19.活性エネルギー線照射の際、該ハイ
ブリッド薄膜表面の全面に活性エネルギー線を照射する
ことによって、全表面が多孔化された無機多孔性薄膜を
得る上記項17に記載の無機多孔性薄膜形成方法。
【0030】20.活性エネルギー線照射の際、所望の
パターンが得られるように、該ハイブリッド薄膜表面に
活性エネルギー線を、マスクを介して又は介さず直接
に、照射することによって、パターニングされた無機多
孔性薄膜を得る上記項17に記載の無機多孔性薄膜形成
方法。
【0031】21.得られた無機多孔性薄膜を、更に、
150〜800℃で加熱処理する上記項17に記載の無
機多孔性薄膜形成方法。
【0032】22.上記項17〜21のいずれかに記載
の無機多孔性薄膜形成方法により形成された無機多孔性
薄膜。
【0033】
【発明の実施の形態】ケイ素系樹脂組成物 本発明のケイ素系樹脂組成物は、ポリシランとビニル系
モノマーとのブロック共重合体及びゾル−ゲル反応性金
属化合物を含有するものであり、基材に塗布後、50〜
250℃に加熱して硬化させることによって、ポリシラ
ンとビニル系モノマーとのブロック共重合体及び金属酸
化物を含有するハイブリッド薄膜を形成するものであ
る。
【0034】ここで、上記加熱硬化は、上記ブロック共
重合体の存在下で、上記金属化合物が、ゾル−ゲル反応
により加水分解及び重縮合反応を起こして、金属酸化物
を生成することにより、行われるものである。
【0035】上記ポリシランとビニル系モノマーとのブ
ロック共重合体の構成成分であるポリシランは、主鎖に
Si−Si結合を有するものであり、紫外光等の活性エ
ネルギー線照射により分解するブロック成分として機能
するものである。かかるポリシランとしては、ポリ(ジ
メチルシラン)、ポリ(ジエチルシラン)、ポリ(ジ−
n−プロピルシラン)、ポリ(ジ−n−ブチルシラ
ン)、ポリ(ジ−n−ヘキシルシラン)、ポリ(メチル
フェニルシラン)、ポリ(エチルフェニルシラン)、ポ
リ(n−プロピルフェニルシラン)、ポリ(ジフェニル
シラン)等や、これらの共重合体であるポリ(メチルフ
ェニルシラン−co−ジメチルシラン)、ポリ(メチル
フェニルシラン−co−ジ−n−ヘキシルシラン)など
を使用できる。これらのポリシランとしては、500〜
200,000程度の範囲の分子量を有するものが好ま
しい。上記ポリシランは、通常、共重合体の合成時にお
いて、結合開裂による分子量低下を経て、ブロック成分
として導入される。
【0036】上記ポリシランとしては、ポリ(メチルフ
ェニルシラン)、ポリ(エチルフェニルシラン)、ポリ
(n−プロピルフェニルシラン)、ポリ(メチルフェニ
ルシラン−co−ジメチルシラン)、ポリ(メチルフェ
ニルシラン−co−ジ−n−ヘキシルシラン)等のフェ
ニル基を含んだものが、有機溶剤への溶解性、耐熱性等
の観点からより好ましく、更に、ポリ(メチルフェニル
シラン)(略称:PMPS)はコストの点からも特に好まし
い。
【0037】上記共重合体のモノマー成分であるビニル
系モノマーとしては、例えば、加水分解性シラン官能基
含有ビニル系モノマー及び水素結合性官能基含有ビニル
系モノマー等から選ばれた少なくとも一種を使用するの
が好ましい。その理由は、ゾル−ゲル反応性金属化合物
がゾル−ゲル反応して生成する金属酸化物と前記ブロッ
ク共重合体中の加水分解性シラン官能基とが共有結合す
ること、又は該金属酸化物と該共重合体中の水素結合性
官能基とが水素結合することにより、得られるハイブリ
ッド薄膜が、均一化、安定化するからである。
【0038】上記加水分解性シラン官能基含有モノマー
としては、(メタ)アクリル酸のアルコキシシラン基含
有アルキルエステルが好ましい。
【0039】メタクリル酸のアルコキシシラン基含有ア
ルキルエステルとしては、例えば、3−メタクリロキシ
プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロ
ピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル
トリイソプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピ
ルトリ(n−プロポキシ)シラン、3−メタクリロキシ
プロピルトリ(n−ブトキシ)シラン、3−メタクリロ
キシプロピルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン等の
3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン;3
−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3
−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の
3−メタクリロキシプロピルモノアルキルジアルコキシ
シラン;3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシ
シラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシ
シラン等の3−メタクリロキシプロピルジアルキルモノ
アルコキシシラン;2−メタクリロキシエチルトリメト
キシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシ
ラン、2−メタクリロキシエチルトリ(n−プロポキ
シ)シラン等の2−メタクリロキシエチルトリアルコキ
シシラン;2−メタクリロキシエチルメチルジメトキシ
シラン、2−メタクリロキシエチルメチルジエトキシシ
ラン等の2−メタクリロキシエチルモノアルキルジアル
コキシシラン;2−メタクリロキシエチルジメチルメト
キシシラン、2−メタクリロキシエチルジメチルエトキ
シシラン等の2−メタクリロキシエチルジアルキルモノ
アルコキシシラン;メタクリロキシメチルトリメトキシ
シラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン等の
メタクリロキシメチルトリアルコキシシラン;3−メタ
クリロキシプロピルトリアセトキシシラン等の3−メタ
クリロキシプロピルトリアシロキシシラン;O−(メタ
クリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピ
ル)ウレタン等が挙げられる。
【0040】また、アクリル酸のアルコキシシラン基含
有アルキルエステルとしては、例えば、3−アクリロキ
シプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロ
ピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルト
リイソプロポキシシラン、3−アクリロキシプロピルト
リ(n−プロポキシ)シラン、3−アクリロキシプロピ
ルトリ(n−ブトキシ)シラン、3−アクリロキシプロ
ピルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン等の3−アク
リロキシプロピルトリアルコキシシラン;3−アクリロ
キシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキ
シプロピルメチルジエトキシシラン等の3−アクリロキ
シプロピルモノアルキルジアルコキシシラン;3−アク
リロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリ
ロキシプロピルジメチルエトキシシラン等の3−アクリ
ロキシプロピルジアルキルモノアルコキシシラン;2−
アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロ
キシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチ
ルトリ(n−プロポキシ)シラン等の2−アクリロキシ
エチルトリアルコキシシラン;2−アクリロキシエチル
メチルジメトキシシラン、2−アクリロキシエチルメチ
ルジエトキシシラン等の2−アクリロキシエチルモノア
ルキルジアルコキシシラン;2−アクリロキシエチルジ
メチルメトキシシラン、2−アクリロキシエチルジメチ
ルエトキシシラン等の2−アクリロキシエチルジアルキ
ルモノアルコキシシラン;アクリロキシメチルトリメト
キシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等
のアクリロキシメチルトリアルコキシシラン;3−アク
リロキシプロピルトリアセトキシシラン等の3−アクリ
ロキシプロピルトリアシロキシシラン;O−(アクリロ
キシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウ
レタン等が挙げられる。
【0041】更に、(メタ)アクリル酸のアルコキシシ
ラン基含有アルキルエステル以外の加水分解性シラン官
能基含有モノマーとしては、例えば、スチリルメチルト
リメトキシシラン、スチリルメチルトリエトキシシラ
ン、スチリルメチルトリイソプロポキシシラン、スチリ
ルエチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリエト
キシシラン、スチリルエチルトリイソプロポキシシラ
ン、スチリルプロピルトリメトキシシラン、スチリルプ
ロピルトリエトキシシラン、3−(N−スチリルメチル
−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラ
ン塩酸塩等のスチリル系トリアルコキシシラン;ビニル
トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニ
ルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ(2−メトキ
シエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン等
のビニルアルコキシシラン;アリルトリメトキシシラ
ン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシシラ
ン、アリロキシウンデシルトリメトキシシラン等のアリ
ルアルコキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン等の
ビニルアシロキシシラン;ビニルトリス(メチルエチル
ケトオキシミノ)シラン等が挙げられる。
【0042】上記(メタ)アクリル酸のアルコキシシラ
ン基含有アルキルエステルの中でも、特に、3−メタク
リロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロ
キシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシ
プロピルトリ(n−プロポキシ)シラン、3−メタクリ
ロキシプロピルトリ(n−ブトキシ)シラン、3−メタ
クリロキシプロピルトリ(2−メトキシエトキシ)シラ
ン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3
−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アク
リロキシプロピルトリ(n−プロポキシ)シラン、3−
アクリロキシプロピルトリ(n−ブトキシ)シラン、3
−アクリロキシプロピルトリ(2−メトキシエトキシ)
シラン等の3−(メタ)アクリロキシプロピルアルコキ
シシランが、ゾル−ゲル反応性金属化合物がゾル−ゲル
反応して生成する金属酸化物と前記ブロック共重合体と
が、より強固に共有結合することにより、得られるハイ
ブリッド薄膜がより均一化、安定化するので、好まし
い。
【0043】また、水素結合性官能基含有ビニル系モノ
マーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメ
チルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミ
ド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルア
ミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイル
モルホリン、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミ
ド等のアクリルアミド及びその誘導体;メタクリルアミ
ド、N−メチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド
及びその誘導体;メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタ
クリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒド
ロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピ
ル、メタクリル酸グリセリン、アクリル酸ヒドロキシメ
チル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3
−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシプロ
ピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステ
ル;N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0044】上記加水分解性シラン官能基含有ビニル系
モノマー及び水素結合性官能基含有ビニル系モノマー
は、一種を単独で又は二種以上を混合して使用できる
が、更にその他のビニル系モノマーを併用することもで
きる。
【0045】上記のその他のビニルモノマーとしては、
例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタク
リル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリ
ル酸のアルキルエステル;アクリル酸フェニル、メタク
リル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸のアリールエス
テル;アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル等の
(メタ)アクリル酸のアラルキルエステル;アクリル酸
シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メ
タ)アクリル酸のシクロアルキルエステル;(メタ)ア
クリル酸;メチルビニルケトン、メチルイソプロペニル
ケトン等のビニルケトン類;アクリロニトリル、メタク
リロニトリル;スチレン;α−メチルスチレン、p−メ
チルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ビニルフ
ェノール等のスチレン誘導体等を挙げることができる。
【0046】上記ポリシランとビニル系モノマーとの共
重合体の共重合組成は、通常、両者の合計量に対する重
量%で、ポリシラン:ビニル系モノマー=10:90〜
90:10程度であるのが好ましく、30:70〜7
0:30程度であるのがより好ましい。
【0047】ポリシランとビニル系モノマーとの共重合
体は、例えば、ポリシランを高分子ラジカル重合開始剤
として用いるビニル系モノマーとの光ラジカル重合法に
より、好適に合成できる。この方法により得られたポリ
シランとビニル系化合物とのブロック共重合体は、ポリ
シランとビニル系モノマーの濃度、光照射強度、光照射
時間等を適宜選択することによって、ブロック共重合
体、そのポリシランブロック及びビニル系モノマーブロ
ックのそれぞれの分子量を調節できるという利点を有す
る。この方法は、ポリシランが紫外光で分解してシリル
ラジカルを発生する反応を利用するものである。
【0048】光ラジカル重合は、ポリシランとビニル系
モノマーとを溶媒に溶かし、紫外光を照射して行われ、
これによりビニル系モノマーとポリシランとのブロック
共重合体が合成される。紫外光源としては通常の高圧水
銀灯が用いられるが、Si−Si結合を切断しビニル系
モノマーのラジカル重合を開始するものであれば他の光
源であってもよい。紫外光の照射時間は、出発物質の種
類、仕込み比、溶液の濃度によって異なるが、1〜12
0分程度が好ましい。また、溶媒としては、ベンゼン、
トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、
メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチ
ル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルセロ
ソルブ、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテ
ル−2−アセテート、テトラヒドロフランなどの有機溶
剤を使用できるが、ポリシランに対する溶解性が高い点
から、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、
酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルセロソル
ブ等を用いるのが望ましい。
【0049】ポリシランとビニル系モノマーとのブロッ
ク共重合体としては、例えば、ポリシラン/3−(メ
タ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシランブロッ
ク共重合体が、ハイブリッド薄膜中で金属酸化物と強固
な共有結合を形成する点から、好ましい。また、当該共
重合体の内でも、ポリ(メチルフェニルシラン)/3−
メタクリロキシプロピルトリエトキシシランブロック共
重合体(略称:P(MPS-co-MPTES))は、保存安定性、コ
スト等に優れる点から、特に好ましい。
【0050】本発明組成物におけるゾル−ゲル反応性金
属化合物としては、ゾル−ゲル反応を起こし得る化合物
であれば、特に限定されることなく使用できる。好まし
い金属化合物としては、特に、ゾル−ゲル反応により、
上記ブロック共重合体と均一なハイブリッド薄膜を好適
に形成できる点から、チタン化合物、ジルコニウム化合
物、亜鉛化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物、イ
ットリウム化合物等を挙げることができ、これらの一種
を又は二種以上を混合して用いるのが望ましい。
【0051】チタン化合物としては、例えば、チタンテ
トラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテト
ラ(n−プロポキシド)、チタンテトライソプロポキシ
ド、チタンテトラ(n−ブトキシド)、チタンテトライ
ソブトキシド、チタンテトラ(2−エチルヘキソキシ
ド)、チタンテトラメトキシエトキシド、チタンメチル
トリプロポキシド、チタンメタクリラートトリイソプロ
ポキシド、チタンアクリラートトリイソプロポキシド、
チタン(トリエタノールアミナト)トリイソプロポキシ
ド、チタン(2−メタクリロキシ)エチルアセトアセテ
ートトリイソプロポキシド、チタンジイソプロポキシド
ジアセチルアセトネート等のチタンアルコキシド;チタ
ンテトラステアレート、チタンテトラ(2−エチルヘキ
サノエート)等のチタンアシラート;チタニルアセトア
セテート、チタニルエチルアセトアセテート等のチタン
キレート錯体等を挙げることができる。
【0052】ジルコニウム化合物としては、例えば、ジ
ルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエト
キシド、ジルコニウムテトラ(n−プロポキシド)、ジ
ルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテト
ラ(n−ブトキシド)、ジルコニウムテトラ(t−ブト
キシド)、ジルコニウムテトラ(2−メチル−2−ブト
キシド)、ジルコニウムテトラ(2−エチルヘキソキシ
ド)等のジルコニウムアルコキシド;ジルコニウムテト
ラアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−(n−ブト
キシド)ビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテト
ラ(ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオネート)、
ジルコニウムテトラ(トリフルオロ−2,4−ペンタン
ジオネート)等のジルコニウムキレート錯体;ジルコニ
ウムテトラメタクリレート、ジルコニウムテトラ(2−
エチルヘキサノエート)等のジルコニウムアシラート等
を挙げることができる。
【0053】亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛ジメト
キシド、亜鉛ジエトキシド、亜鉛ジ(n−プロポキシ
ド)、亜鉛ジイソプロポキシド、亜鉛ジ(n−ブトキシ
ド)、亜鉛ジイソブトキシド、亜鉛ジ(t−ブトキシ
ド)、亜鉛ジ−(メトキシエトキシド)等の亜鉛アルコ
キシド;亜鉛ジアセチルアセトネート、亜鉛2,2,
6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、
亜鉛ヘキサフルオロアセチルアセトネート等の亜鉛キレ
ート錯体;酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜
鉛、亜鉛ジ(ネオデカノエート)、亜鉛(2−エチルヘ
キサノエート)等の亜鉛アシラート等を挙げることがで
きる。
【0054】スズ化合物としては、例えば、テトラメト
キシスズ、テトラエトキシスズ、テトラ(n−プロポキ
シ)スズ、テトライソプロポキシスズ、テトラ(n−ブ
トキシ)スズ、テトラ(t−ブトキシ)スズ、テトラ
(2−エチルヘキサオキシ)スズ等のスズアルコキシ
ド;アセチルアセトネートスズ、ヘキサフルオロ−2,
4−ペンタンジオネートスズ等のスズキレート錯体;ビ
ス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカ
ノエート)スズ、テトラアセトキシスズ等のスズアシラ
ート等を挙げることができる。
【0055】ゲルマニウム化合物としては、例えば、ゲ
ルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエト
キシド、ゲルマニウムテトラ(n−プロポキシド)、ゲ
ルマニウムテトライソプロポキシド、ゲルマニウムテト
ラ(n−ブトキシド)、ゲルマニウムテトラ(i−ブト
キシド)、ゲルマニウムテトラ(t−ブトキシド)、ゲ
ルマニウムテトラ(2−エチルヘキソキシド)等のゲル
マニウムアルコキシド等を挙げることができる。
【0056】イットリウム化合物としては、例えば、イ
ットリウムトリエトキシド、イットリウムトリイソプロ
ポキシド、イットリウムトリ(n−ブトキシド)、イッ
トリウムトリ(メトキシエトキシド)、イットリウムヘ
キサフルオロイソプロポキシド等のイットリウムアルコ
キシド;イットリウムアセチルアセトネート、イットリ
ウムヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオネート等の
イットリウムキレート錯体;酢酸イットリウム、イット
リウムトリフルオロアセテート等のイットリウムアシラ
ート等を挙げることができる。
【0057】これらのゾル−ゲル反応性金属化合物の中
でも、特に、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコ
キシド、亜鉛アルコキシド、スズアルコキシド、ゲルマ
ニウムアルコキシド及びイットリウムアルコキシドは、
透明なハイブリッド薄膜を作製し易く、入手が容易でし
かも安全に取り扱うことができる点から、有用である。
更に、これらの金属アルコキシドの内、チタンアルコキ
シドは、製膜性、薄膜の透明性、表面硬度等に優れる点
からより好ましい。
【0058】また、上記金属化合物の内、チタンアルコ
キシド、ジルコニウムアルコキシド等の金属アルコキシ
ドは、ゾル−ゲル反応性が高いので、その反応性を抑制
するため、β−ジケトン類を反応調節剤として併用する
ことが、これらの金属アルコキシドの保存性が格段に向
上する点から、有効である。β−ジケトン類の具体例と
しては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセ
ト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ヘキサフルオロ−
2,4−ペンタンジオン等を挙げることができる。β−
ジケトン類の使用量としては、通常、金属アルコキシド
に対して、200重量%以下、好ましくは10〜100
重量%程度とするのが適当である。
【0059】本発明ケイ素系樹脂組成物の必須成分であ
るポリシランとビニル系モノマーとのブロック共重合体
及び金属アルコキシドの配合割合は、通常、前者100
重量部に対して後者が10〜10,000重量部程度、
好ましくは50〜1,000重量部程度であるのが、得
られる無機多孔性薄膜における細孔径、細孔の量及び該
薄膜の基材密着性等の観点から、好適である。
【0060】本発明のケイ素系樹脂組成物には、必要に
応じて、ゾル−ゲル反応用の触媒を含有させることがで
きる。この触媒としては、酸、塩基等を用いることがで
きるが、ゲル化後のハイブリッド薄膜中に残存しない酸
又は塩基を使用することが好ましい。このような触媒と
しては、低沸点であるか又は容易に熱分解することによ
り、薄膜中に残留しないものが好ましく、かかる酸触媒
として希塩酸、ギ酸、シュウ酸等を、又塩基触媒として
アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシ
ド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等を例示す
ることができる。触媒の添加量としては、通常、金属ア
ルコキシドに対して、0.01〜10重量%程度である
のが適当である本発明のケイ素系樹脂組成物は、前記ポ
リシランとビニル系モノマーとの共重合体及びゾル−ゲ
ル反応性金属化合物を含有するものであり、例えば、該
共重合体、該金属化合物及び必要に応じて上記触媒を有
機溶媒に溶かして溶液状の組成物とすることにより、好
適に調製できる。この有機溶媒としては、該共重合体製
造時の反応溶媒をそのまま使用しても良く、この場合は
有機溶媒を更に追加してもしなくても良い。得られる組
成物の固形分濃度(不揮発分濃度)は、特に限定され
ず、塗布方法等に応じて、適宜決定すれば良いが、通
常、1〜50重量%程度とするのが適当である。
【0061】上記有機溶媒としては、例えば、トルエ
ン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトン、シクロヘキサノン、エタノール、イ
ソプロパノール、メトキシエタノール、エトキシエタノ
ール、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、酢酸
メチルセロソルブ、プロピレングリコール−1−モノメ
チルエーテル−2−アセテート等を好適に使用できる。
これらの有機溶媒の内、上記共重合体、金属化合物及び
触媒に対する溶解性、安定性等を考慮するとテトラヒド
ロフラン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロ
パノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、
トルエン又はこれらの少なくとも一種を含む混合溶媒を
用いることが特に好ましい。
【0062】無機多孔性薄膜の形成方法 本発明の無機多孔質薄膜形成方法は、基材上に、上記本
発明のケイ素系樹脂組成物を、塗布後、50〜250℃
程度、好ましくは80〜200℃程度に加熱して硬化さ
せることによって、ポリシランとビニル系モノマーとの
ブロック共重合体及び金属酸化物を含有してなるハイブ
リッド薄膜を形成し、次いで該薄膜表面に活性エネルギ
ー線を照射して、該共重合体のポリシラン部分を分解さ
せ、更に該分解物を溶剤により除去することにより、無
機多孔性薄膜を形成するものである。
【0063】上記のポリシランとビニル系モノマーとの
ブロック共重合体及び金属酸化物を含有してなるハイブ
リッド薄膜は、該共重合体と金属酸化物とがナノメータ
ーオーダーで分散した均一な薄膜であり、透明性、基材
との密着性、耐溶剤性に優れており、本発明組成物を塗
布後、加熱硬化させるのみで、大面積に簡便に形成する
ことができる。
【0064】上記加熱硬化は、上記ブロック共重合体の
存在下で、上記金属化合物が、ゾル−ゲル反応により加
水分解及び重縮合反応を起こして、金属酸化物を生成す
ることにより、起こるが、このゾル−ゲル反応は、通
常、該ブロック共重合体のポリシラン部分の分解が起こ
りにくい200℃以下の温度でも容易に生じるため、そ
の後の多孔化を容易に行うことができる。
【0065】本発明のケイ素系樹脂組成物は、基材上
に、塗布後、通常、50〜250℃程度、好ましくは8
0〜200℃程度の温度で1〜120分間程度、好まし
くは5〜60分間程度加熱して、上記ブロック共重合体
の存在下に金属化合物のゾル−ゲル反応を行うことによ
って、上記ハイブリッド薄膜を好適に形成できる。この
ゾル−ゲル反応において、上記共重合体と生成した金属
酸化物とが数〜数百ナノメーターオーダーで均一に分散
したハイブリッド薄膜が形成される。
【0066】特に、共重合体がビニル系モノマーに由来
するトリアルコキシシラン基を有している場合には、ゾ
ル−ゲル反応により、該ブロック共重合体が、ハイブリ
ッド薄膜中で金属酸化物と強固な共有結合を形成し、更
に均一且つ基材密着性に優れたハイブリッド薄膜が形成
される。このような場合の一例として、ポリ(メチルフ
ェニルシラン)/3−メタクリロキシプロピルトリエト
キシシランブロック共重合体(略称:P(MPS-co-MPTE
S))及びとTi(OC2H5)4を含有する組成物を、塗布後、加
熱してゾル−ゲル反応させたときの反応を模式的に示し
た反応式を、下記に示す。
【0067】
【化1】
【0068】上記反応式に示される通り、この例におい
ては、ゾル−ゲル反応により、P(MPS-co-MPTES)−酸化
チタンハイブリッドが形成される。
【0069】上記基材としては、特に限定されないが、
例えば、シリコン基板、石英基板、ガラス基板や、IT
O(インジウム・スズ酸化物)ガラス、FTO(フッ素
ドープ酸化スズ)ガラス、ITO蒸着ポリエチレンテレ
フタレートフィルム等の導電基板を挙げることができ
る。
【0070】上記樹脂組成物の塗布方法としては、公知
の方法を適用でき、例えば、スピンコート、ディップコ
ート、スプレーコート等の方法を用いることができる。
また、塗布膜厚は、通常、ハイブリッド薄膜の乾燥膜厚
で、0.01〜5μm程度とするのが好適である。
【0071】次に、上記で形成されたハイブリッド薄膜
に、活性エネルギー線を照射して、ポリシランとビニル
系モノマーとのブロック共重合体中のポリシラン部分を
分解させ、更に該分解物を溶剤により、除去して、数〜
数百ナノメーターオーダーの多孔性薄膜を得る。
【0072】ここで、上記活性エネルギー線照射の際、
該ハイブリッド薄膜表面の全面に活性エネルギー線を照
射することによって、表面全体が多孔化された無機多孔
性薄膜を得ることができる。
【0073】また、上記活性エネルギー線照射の際、所
望のパターンが得られるように、該ハイブリッド薄膜表
面に活性エネルギー線を、マスクを介して又は介さず直
接に、照射することによって、パターニングされた無機
多孔性薄膜を得ることができる。
【0074】上記ハイブリッド薄膜に照射する活性エネ
ルギー線としては、上記共重合体中のポリシラン部分を
分解するエネルギーを有するものであればどのようなエ
ネルギー線でも用いることができるが、ポリシランは紫
外域に吸収を持つので光源の簡便性や経済性を考慮し
て、365nmの波長の紫外線(I線)を照射すること
が望ましい。また、248nmの波長のKrFエキシマ
レーザー、198nmの波長のArFエキシマレーザ
ー、157nmの波長のF2レーザー等の他、電子線お
よびX線等を用いることも可能である。
【0075】パターニングされた無機多孔性薄膜を得よ
うとする場合、活性エネルギー線として、通常、電子線
を用いる場合はマスクを介さず直接描画され、紫外線、
X線等を用いる場合はフォトマスクを介して照射され
る。露光量は、活性エネルギー線の種類、ケイ素系樹脂
組成物の成分等に応じて、適宜決定される。
【0076】ここで、得られるパターニングされた無機
多孔性薄膜は、ポリシランとビニル系モノマーとのブロ
ック共重合体中のポリシラン含有量を増やせば活性エネ
ルギー線照射部分の薄膜の体積減少が大きくなるので、
レジストパターンとして利用できる。また、ポリシラン
含有量を減らせば活性エネルギー線照射部分の体積減少
が比較的小さくなるが、この場合には屈折率パターンと
して利用できる。
【0077】レジストパターンの場合は、光触媒用や色
素増感太陽電池用途での多孔性半導体薄膜の形成におい
て、後加工しなくても所定形状の光触媒部品や太陽電池
部品が薄膜形成と同時に製造できるという工程上の利点
を持っている。また、屈折率パターンの場合は、光情報
処理において必要とされる発光素子、受光素子、光スイ
ッチなどの機能を一体化した光導波路への応用が考えら
れる。また、ホログラフィーやフィードバックレーザー
などの光デバイスへの応用も考えられる。
【0078】次に、活性エネルギー線を照射して生じ
た、ポリシランとビニル系モノマーとのブロック共重合
体中のポリシラン部分の分解物を、溶剤を用いて、洗浄
することにより、除去して、所望の無機多孔性薄膜を得
る。使用される溶剤としては、照射部分を溶かして未照
射部分を溶かさない溶剤であればどのような溶剤でも使
用可能である。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、
オクタン、トルエン、キシレン、石油エーテル、リグロ
イン、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロ
ピルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルエチ
ルケトン、テトラヒドロフラン等の各種有機溶剤を挙げ
ることができる。これらの有機溶剤の内、溶解性、コス
ト等の点から、n−ヘキサン、トルエン、イソプロピル
アルコール、メチルエチルケトン等を用いることが好ま
しい。
【0079】上記により、無機多孔性薄膜を得た後は、
必要に応じて、金属酸化物の結晶化を進めるため、15
0〜800℃程度の温度で、加熱処理しても良い。
【0080】上記本発明方法により得られる無機多孔性
薄膜は、原料として用いた金属アルコキシドに由来する
金属酸化物を主成分とする無機系薄膜であって、透明
性、基材との密着性、耐溶剤性等に優れ、比表面積が大
きいという特長を有している。また、原料組成、製造条
件、熱処理条件等を変えることにより、無機多孔性薄膜
表面の細孔径、その分布、比表面積、結晶化度等を制御
することができる。
【0081】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を
より一層具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施
例に限定されるものではない。
【0082】実施例1 (i)ポリ(メチルフェニルシラン)/3−メタクリロキ
シプロピルトリエトキシシランブロック共重合体(P(MP
S-co-MPTES))の合成 ポリメチルフェニルシラン(PMPS、分子量はMn=5.
31×104、Mw/Mn=2.01)1gと3−メタ
クリロキシプロピルトリエトキシシラン(MPTES)1g
をあらかじめ蒸留したトルエン5mlに溶かした。その
溶液を、ガラス管に封入し凍結真空脱気を3回行った後
に、紫外線(10mW/cm2)を20分間照射した。
生成したポリマーを、n−ヘキサン200mlで再沈殿
を行った後に濾過、減圧乾燥を行って、P(MPS-co-MPTE
S)(分子量はMn=1.31×104、Mw/Mn=
1.83)0.56gを得た。なお、ポリマーの構造
は、GPC測定、1H−NMRスペクトル、紫外−可視
吸収スペクトル、FT−IRスペクトルで確認した。
【0083】(ii)ケイ素系樹脂組成物の調製 上記のP(MPS-co-MPTES)30mgを無水テトラヒドロフ
ラン(THF)1mlに溶解して、これに8wt%塩酸
THF溶液を20μl加えて1時間撹拌した。この溶液
にTi(O-iC3H7)490mgをTHF1mlに溶かした溶液
を加えて1時間撹拌して、本発明のケイ素系樹脂組成物
を調製した。
【0084】(iii)無機多孔性薄膜の形成 上記ケイ素系樹脂組成物を、2cm×2cmの石英基板
に、1,500回転30秒の条件でスピンコートして塗
布後、120℃で30分間加熱して膜厚が約0.1μm
の透明なハイブリッド薄膜を作製した。続いて、この薄
膜表面の全面にウシオ電機製「SPOT CURE S
P−V」を用いて、140mW/cm2の照射強度の紫
外光を10秒間照射した後に、n−ヘキサンで30秒間
洗浄後、乾燥して、酸化チタンを主成分とする無機多孔
性薄膜を形成した。
【0085】図1に、得られた酸化チタン多孔性薄膜の
表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面
を示す。図1より明らかな通り、薄膜表面に直径が約1
0〜20nm程度の大きさの細孔が多数確認できる。
【0086】実施例2 (i)ケイ素系樹脂組成物の調製 Ti(OC2H5)430mgとアセチルアセトン30mgをTH
F1.5mlに溶かして1時間撹拌した後に、蒸留水を
10μl加えて、再度24時間撹拌した。この溶液に、
実施例1の(i)と同様にして得たP(MPS-co-MPTES)(分子
量はMn=1.47×104、Mw/Mn=1.86)
30mgをTHF0.5mlに溶解した溶液を加えて1
時間撹拌して、本発明のケイ素系樹脂組成物を調製し
た。
【0087】(ii)無機多孔性薄膜の形成 上記ケイ素系樹脂組成物を、2cm×2cmの石英基板
に、2,000回転30秒の条件でスピンコートして塗
装後、120℃で30分間加熱して膜厚が約0.1μm
の透明なハイブリッド薄膜を作製した。続いて、この薄
膜表面の全面にウシオ電機製「SPOT CURE S
P−V」を用いて、140mW/cm2の照射強度の紫
外光を10秒間照射した後に、n−ヘキサンで30秒間
洗浄後、乾燥して、酸化チタンを主成分とする無機多孔
性薄膜を形成した。
【0088】図2に、得られた酸化チタン多孔性薄膜の
表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面
を示す。図2より明らかな通り、薄膜表面に直径が約1
00〜200nm程度の大きさの凹凸が多数確認でき
る。
【0089】なお、ケイ素系樹脂組成物の調製におい
て、上記アセチルアセトンの代わりにベンゾイルアセト
ン、アセト酢酸メチル又はアセト酢酸エチルを用いた場
合にも、同様の結果が得られた。
【0090】実施例3 (i)ケイ素系樹脂組成物の調製 Zr(O-nC4H9)430mgとアセチルアセトン30mgをT
HF1.5mlに溶かして1時間撹拌した後に、蒸留水
を10μl加えて、再度24時間撹拌した。この溶液
に、実施例1の(i)と同様にして得たP(MPS-co-MPTES)
(分子量はMn=1.47×104、Mw/Mn=1.
86)30mgをTHF0.5mlに溶解した溶液を加
えて1時間撹拌して、本発明のケイ素系樹脂組成物を調
製した。
【0091】(ii)無機多孔性薄膜の形成 上記ケイ素系樹脂組成物を、2cm×2cmの石英基板
に、2,000回転30秒の条件でスピンコートして塗
装後、120℃で30分間加熱して膜厚が約0.1μm
の透明なハイブリッド薄膜を作製した。続いて、この薄
膜表面の全面にウシオ電機製「SPOT CURE S
P−V」を用いて、140mW/cm2の照射強度の紫
外光を10秒間照射した後に、n−ヘキサンで30秒間
洗浄後、乾燥して、酸化ジルコニウムを主成分とする無
機多孔性薄膜を形成した。
【0092】図3に、得られた酸化ジルコニウム多孔性
薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理し
た図面を示す。図3より明らかな通り、薄膜表面に直径
が約10nm程度の大きさの凹凸が多数確認できる。
【0093】実施例4 (i)ケイ素系樹脂組成物の調製 Y(OCH2CH2OCH3)3(ゲレスト社製市販品、イットリウム
トリ(メトキシエトキシド)の15〜18重量%メトキ
シエタノール溶液)500mgに、実施例1の(i)と同
様にして得たP(MPS-co-MPTES)(分子量はMn=1.2
4×104、Mw/Mn=1.81)20mgをTHF
2mlに溶解した溶液を加えて1時間撹拌して、本発明
のケイ素系樹脂組成物を調製した。
【0094】(ii)無機多孔性薄膜の形成 上記ケイ素系樹脂組成物を、2cm×2cmの石英基板
に、1,500回転30秒の条件でスピンコートして塗
装後、150℃で30分間加熱して膜厚が約0.1μm
の透明なハイブリッド薄膜を作製した。続いて、この薄
膜表面の全面にウシオ電機製「SPOT CURE S
P−V」を用いて、140mW/cm2の照射強度の紫
外光を10秒間照射した後に、n−ヘキサンで30秒間
洗浄後、乾燥して、酸化イットリウムを主成分とする無
機多孔性薄膜を形成した。
【0095】図4に、得られた酸化イットリウム多孔性
薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理し
た図面を示す。図4より明らかな通り、薄膜表面に直径
が約10nm程度の大きさの凹凸が多数確認できる。
【0096】実施例5 (i)ケイ素系樹脂組成物の調製 Ge(O-nC4H9)430mgと、実施例1の(i)と同様にして
得たP(MPS-co-MPTES)(分子量はMn=1.31×1
4、Mw/Mn=1.83)30mgをTHF2ml
に溶解した溶液を加えて1時間撹拌して、本発明のケイ
素系樹脂組成物を調製した。
【0097】(ii)無機多孔性薄膜の形成 上記ケイ素系樹脂組成物を、2cm×2cmの石英基板
に、1,500回転30秒の条件でスピンコートして塗
装後、150℃で30分間加熱して膜厚が約0.1μm
の透明なハイブリッド薄膜を作製した。続いて、この薄
膜表面の全面にウシオ電機製「SPOT CURE S
P−V」を用いて、140mW/cm2の照射強度の紫
外光を10秒間照射した後に、n−ヘキサンで30秒間
洗浄後、乾燥して、酸化ゲルマニウムを主成分とする無
機多孔性薄膜を形成した。
【0098】図5に、得られた酸化ゲルマニウム多孔性
薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理し
た図面を示す。図5より明らかな通り、薄膜表面に直径
が約100nm程度の大きさの凹凸が多数確認できる。
【0099】実施例6 実施例2で作製した酸化チタン多孔性薄膜を、更に、空
気中で700℃で1時間加熱を行った。図6に、この加
熱処理により得られた酸化チタン多孔性薄膜の表面の原
子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面を示す。
図6より明らかな通り、加熱前の薄膜表面に存在した直
径約100〜200nm程度の大きさの凹凸が、ほぼ同
じ大きさで維持されていることが確認できる。
【0100】実施例7 実施例1において紫外光を照射する際に、0.5mmの
ラインアンドスペースの形状を有するクロムマスクを光
源と薄膜の間に設置して140mW/cm2の照射強度
の紫外光を10秒間照射することにより、パターニング
された酸化チタン多孔性薄膜を得た。この薄膜は、照射
部分と未照射部分との間で、表面形状の違いにより、
0.5mmのラインアンドスペースのパターンを有して
いた。
【0101】実施例8 (i)ケイ素系樹脂組成物の調製 実施例1の(i)で得たP(MPS-co-MPTES)30mgをTHF
1mlに溶解し、これに8wt%塩酸THF溶液を20
μl加えて1時間撹拌した。この溶液にTi(O-iC3H7)4
0mgをTHF1mlに溶かした溶液を加えて1時間撹
拌した後、更に亜鉛ジアセチルアセトネート1mgを添
加して、本発明のケイ素系樹脂組成物を調製した。
【0102】(ii)無機多孔性薄膜の形成 上記ケイ素系樹脂組成物を、2cm×2cmの石英基板
に、1,500回転30秒の条件でスピンコートして塗
装後、150℃で30分間加熱して膜厚が約0.1μm
の透明なハイブリッド薄膜を作製した。続いて、0.5
mmのラインアンドスペースの形状を有するクロムマス
クを光源と薄膜の間に設置し、ウシオ電機製「SPOT
CURE SP−V」を用いて、140mW/cm2
の照射強度の紫外光を10秒間照射した後に、n−ヘキ
サンで30秒間洗浄後、乾燥して、パターニングされた
酸化チタン−酸化亜鉛を主成分とする複合多孔性薄膜を
得た。この薄膜は、照射部分と未照射部分との間で、表
面形状の違いにより、0.5mmのラインアンドスペー
スのパターンを有していた。
【0103】実施例9 (i)ケイ素系樹脂組成物の調製 実施例1の(i)で得たP(MPS-co-MPTES)30mgをTHF
1mlに溶解し、これに8wt%塩酸THF溶液を20
μl加えて1時間撹拌した。この溶液にTi(O-iC3H7)4
0mgをTHF1mlに溶かした溶液を加えて1時間撹
拌した後、更にテトラ(t−ブトキシ)スズ15mgを
添加して、本発明のケイ素系樹脂組成物を調製した。
【0104】(ii)無機多孔性薄膜の形成 上記ケイ素系樹脂組成物を、2cm×2cmの石英基板
に、1,500回転30秒の条件でスピンコートして塗
装後、150℃で30分間加熱して膜厚が約0.1μm
の透明なハイブリッド薄膜を作製した。続いて、0.5
mmのラインアンドスペースの形状を有するクロムマス
クを光源と薄膜の間に設置し、ウシオ電機製「SPOT
CURE SP−V」を用いて、140mW/cm2
の照射強度の紫外光を10秒間照射した後に、2−プロ
パノールで60秒間洗浄後、乾燥して、パターニングさ
れた酸化チタン−酸化スズを主成分とする複合多孔性薄
膜を得た。この薄膜は、照射部分と未照射部分との間
で、表面形状の違いにより、0.5mmのラインアンド
スペースのパターンを有していた。
【0105】比較例1 (i)チタンアルコキシド溶液の調製 Ti(OC2H5)430mgとアセチルアセトン30mgをTH
F1.5mlに溶かして1時間撹拌した後に、蒸留水を
10μl加えて、再度24時間撹拌して、濃度2重量%
のチタンアルコキシド溶液を調製した。
【0106】(ii)無機多孔性薄膜の形成 上記チタンアルコキシド溶液を、2cm×2cmの石英
基板に、2,000回転30秒の条件でスピンコートし
て塗装後、120℃で30分間加熱して膜厚が約0.0
5μmの透明な酸化チタン薄膜を作製した。
【0107】図7に、得られた酸化チタン薄膜の表面の
原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面を示
す。図7より明らかな通り、この薄膜は表面粗さが約3
nm程度の非常に平坦な薄膜であることが確認できる。
【0108】
【発明の効果】本発明により、簡便且つ低コストで無機
多孔性薄膜を形成するために好適に使用できる、ケイ素
系樹脂組成物、これを用いる無機多孔性薄膜の形成方法
及び当該無機多孔性薄膜が提供されるという顕著な効果
が得られる。
【0109】本発明の無機多孔性薄膜形成方法は、従来
のように400℃以上という高温加熱を必要とせず、上
記樹脂組成物の塗布、低温加熱、光照射、溶剤処理とい
う簡便なプロセスによるため、製造コストが大幅に軽減
され、金属酸化物を主成分とするナノメーターサイズの
多孔性薄膜を、より安価に且つ安全に得ることができ
る。また、原料や製造条件を変えることにより、無機多
孔性薄膜表面の細孔径、その分布、比表面積等を制御す
ることができる。
【0110】本発明方法により得られる無機多孔性薄膜
は、原料として用いた金属化合物に由来する金属酸化物
を主成分とする無機系薄膜であって、透明性、基材との
密着性、耐溶剤性等に優れ、比表面積が大きいという特
長を有しており、各種の環境材料や光機能性薄膜として
有用である。この無機多孔性薄膜は、例えば、住宅設備
等の用途や、色素増感太陽電池の導電基板上に形成する
酸化チタン多孔性薄膜等としての応用に、好適に使用で
きる。
【0111】また、無機多孔性薄膜の形成の際にパター
ニングする方法を用いることによって、色素増感太陽電
池の電極の作製において、大幅にコスト削減が実現でき
る。また、無機多孔性薄膜を電気回路と一体化してガス
センサーを作製する場合のパターニングが容易になり、
ガスセンサーを安価で市場に提供できる。さらに、屈折
率パターンを、紫外光照射・溶剤洗浄のみで作製するこ
とが可能になったので、設備投資が大幅に削減されて、
安価に光デバイスを作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた酸化チタン多孔性
薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理し
た図面である。
【図2】図2は、実施例2で得られた酸化チタン多孔性
薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理し
た図面である。
【図3】図3は、実施例3で得られた酸化ジルコニウム
多孔性薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像
処理した図面である。
【図4】図4は、実施例4で得られた酸化イットリウム
多孔性薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像
処理した図面である。
【図5】図5は、実施例5で得られた酸化ゲルマニウム
多孔性薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像
処理した図面である。
【図6】図6は、実施例6で得られた酸化チタン多孔性
薄膜の表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理し
た図面である。
【図7】図7は、比較例1で得られた酸化チタン薄膜の
表面の原子間力顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面
である。
フロントページの続き (72)発明者 松川 公洋 大阪府富田林市寺池台5丁目9番21 (72)発明者 松浦 幸仁 奈良県奈良市鳥見町3丁目27番地の33 (72)発明者 井上 弘 奈良県奈良市学園大和町5丁目195 Fターム(参考) 4J002 BG021 CP011 EC076 EZ006 FD206 GQ00

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリシランとビニル系モノマーとのブロッ
    ク共重合体及びゾル−ゲル反応性金属化合物を含有する
    ことを特徴とするケイ素系樹脂組成物。
  2. 【請求項2】ポリシランが、ポリ(メチルフェニルシラ
    ン)、ポリ(エチルフェニルシラン)、ポリ(n−プロ
    ピルフェニルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン−
    co−ジメチルシラン)及びポリ(メチルフェニルシラ
    ン−co−ジ−n−ヘキシルシラン)からなる群から選
    ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のケイ素系
    樹脂組成物。
  3. 【請求項3】ポリシランが、ポリ(メチルフェニルシラ
    ン)である請求項2に記載のケイ素系樹脂組成物。
  4. 【請求項4】ビニル系モノマーが、加水分解性シラン官
    能基含有ビニル系モノマー及び水素結合性官能基含有ビ
    ニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一種
    である請求項1に記載のケイ素系樹脂組成物。
  5. 【請求項5】加水分解性シラン官能基含有ビニル系モノ
    マーが、(メタ)アクリル酸のアルコキシシラン基含有
    アルキルエステルである請求項4に記載のケイ素系樹脂
    組成物。
  6. 【請求項6】ポリシランとビニル系モノマーとのブロッ
    ク共重合体が、ポリ(メチルフェニルシラン)と3−
    (メタ)アクリロキシプロピルアルコキシシランとのブ
    ロック共重合体である請求項1に記載のケイ素系樹脂組
    成物。
  7. 【請求項7】ポリシランとビニル系モノマーとの共重合
    体の共重合組成が、両者の合計量に対する重量%で、ポ
    リシラン:ビニル系モノマー=10:90〜90:10
    である請求項1に記載のケイ素系樹脂組成物。
  8. 【請求項8】ゾル−ゲル反応性金属化合物が、チタン化
    合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、
    ゲルマニウム化合物及びイットリウム化合物からなる群
    から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のケ
    イ素系樹脂組成物。
  9. 【請求項9】チタン化合物が、チタンアルコキシド、チ
    タンキレート錯体及びチタンアシラートからなる群から
    選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載のケイ素
    系樹脂組成物。
  10. 【請求項10】ジルコニウム化合物が、ジルコニウムア
    ルコキシド、ジルコニウムキレート錯体及びジルコニウ
    ムアシラートからなる群から選ばれる少なくとも一種で
    ある請求項8に記載のケイ素系樹脂組成物。
  11. 【請求項11】亜鉛化合物が、亜鉛アルコキシド、亜鉛
    キレート錯体及び亜鉛アシラートからなる群から選ばれ
    る少なくとも一種である請求項8に記載のケイ素系樹脂
    組成物。
  12. 【請求項12】スズ化合物が、スズアルコキシド、スズ
    キレート錯体及びスズアシラートからなる群から選ばれ
    る少なくとも一種である請求項8に記載のケイ素系樹脂
    組成物。
  13. 【請求項13】ゲルマニウム化合物が、ゲルマニウムア
    ルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種であ
    る請求項8に記載のケイ素系樹脂組成物。
  14. 【請求項14】イットリウム化合物が、イットリウムア
    ルコキシド、イットリウムキレート錯体及びイットリウ
    ムアシラートからなる群から選ばれる少なくとも一種で
    ある請求項8に記載のケイ素系樹脂組成物。
  15. 【請求項15】ゾル−ゲル反応性金属化合物に、β−ジ
    ケトン類を反応調節剤として併用する請求項1に記載の
    ケイ素系樹脂組成物。
  16. 【請求項16】ポリシランとビニル系モノマーとのブロ
    ック共重合体及びゾル−ゲル反応性金属化合物の配合割
    合が、前者100重量部に対して後者が10〜10,0
    00重量部である請求項1に記載のケイ素系樹脂組成
    物。
  17. 【請求項17】基材上に、請求項1〜16のいずれかに
    記載のケイ素系樹脂組成物を、塗布後、50〜250℃
    に加熱して硬化させることによって、ポリシランとビニ
    ル系モノマーとのブロック共重合体及び金属酸化物を含
    有してなるハイブリッド薄膜を形成し、次いで該薄膜表
    面に活性エネルギー線を照射して、該共重合体中のポリ
    シラン部分を分解させ、更に該分解物を溶剤により除去
    することを特徴とする無機多孔性薄膜の形成方法。
  18. 【請求項18】活性エネルギー線が、紫外光である請求
    項17に記載の無機多孔性薄膜形成方法。
  19. 【請求項19】活性エネルギー線照射の際、該ハイブリ
    ッド薄膜表面の全面に活性エネルギー線を照射すること
    によって、全表面が多孔化された無機多孔性薄膜を得る
    請求項17に記載の無機多孔性薄膜形成方法。
  20. 【請求項20】活性エネルギー線照射の際、所望のパタ
    ーンが得られるように、該ハイブリッド薄膜表面に活性
    エネルギー線を、マスクを介して又は介さず直接に、照
    射することによって、パターニングされた無機多孔性薄
    膜を得る請求項17に記載の無機多孔性薄膜形成方法。
  21. 【請求項21】得られた無機多孔性薄膜を、更に、15
    0〜800℃で加熱処理する請求項17に記載の無機多
    孔性薄膜形成方法。
  22. 【請求項22】請求項17〜21のいずれかに記載の無
    機多孔性薄膜形成方法により形成された無機多孔性薄
    膜。
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