JP2003327559A - α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸及びその誘導体、及びそれらの製造方法 - Google Patents

α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸及びその誘導体、及びそれらの製造方法

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JP2003327559A
JP2003327559A JP2003064233A JP2003064233A JP2003327559A JP 2003327559 A JP2003327559 A JP 2003327559A JP 2003064233 A JP2003064233 A JP 2003064233A JP 2003064233 A JP2003064233 A JP 2003064233A JP 2003327559 A JP2003327559 A JP 2003327559A
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naphthyl
acetic acid
racemate
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Makoto Yamae
允 山栄
Hiromichi Yoshikawa
博道 吉川
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Kitakyushu Foundation for Advancement of Industry Science and Technology
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、光学分割剤として有用なα−ヒド
ロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸及
びその誘導体を提供することを目的とする。また、低原
価で製造できるとともに簡便な操作で生産性に優れ、さ
らに高収率で量産できるそれらの製造方法を提供するこ
とを目的とする。 【解決手段】 本発明の化学式(化1)の構造を有する
α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチ
ル)酢酸の製造方法は、2−ナフトールとグリオキシル
酸とを塩基性条件下で反応させてラセミ体(±)−α−
ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢
酸を得るラセミ体合成工程と、前記ラセミ体を光学分割
して光学活性のα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ
−1−ナフチル)酢酸を得る光学分割工程と、を備え
る。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラセミ化合物を光
学分割できる新規なα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロ
キシ−1−ナフチル)酢酸及びその誘導体、及びそれら
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ある種の化合物は左手と右手の関係にあ
る一対の構造を持ち、左手を鏡に映すと鏡の中の像は右
手にかわるので、それらをお互いに鏡像体という。一対
の鏡像体は、偏光を互いに反対方向に回転する性質があ
るので、光学活性体という。生理活性物質の有効成分は
一般にその鏡像体の片方であり、主として医薬、農薬等
として利用されている。例えばアミノ酸の一対の鏡像体
をL−体、D−体とすると、われわれの身体を構成する
アミノ酸はL−体である。ところで通常の化学合成で片
方の鏡像体だけをつくることは難しい。普通はその一対
の鏡像体が等量ずつ混合したもの、つまり、ラセミ体が
できる。そこで、医薬品、農薬を合成化学的につくる場
合は、合成したあと、有効な片方の鏡像体だけを分離し
て取り出す操作が必要になる。この操作に使用する化合
物を光学分割剤という。サリドマイドは、R−体とS−
体という一対の鏡像体のうちR−体が有効成分であり、
市販されたのはR、Sのラセミ体等量混合物であった。
サリドマイドのR−体は催眠性を有するが、S−体は催
奇形成性がある。そのために、ラセミ体を服用した妊婦
から奇形児が生まれた。現在は光学活性な医薬、農薬等
の製品化、その販売にあたっては、事前に両鏡像体のそ
れぞれの生活活性を調べることが義務づけられている。
そのためにラセミ体を分離する光学分割剤が必須とな
り、その応用分野は医薬・農薬用途にとどまらず一般工
業用途にも広がっており、高い収率で製造することがで
きる光学分割剤の製造方法が開発されている。
【0003】例えば、従来の技術としては、(特許文献
1)に「(±)−1−フェニルエチルアミンをマンデル
酸で光学分割する1−フェニルエチルアミンの製造方
法」が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特公平2−4581号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の技術においては以下の課題を有していた。 (1)(特許文献1)に開示の技術では、光学分割剤と
して用いることのできる光学純度94.3〜97.3%
eeの(−)−1−フェニルエチルアミンを収率66.
4〜74.4%でしか得られないという課題を有してい
た。
【0006】本発明は、上記従来の課題を解決するもの
で、ラセミ体を分割する光学分割剤として有用なα−ヒ
ドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸
を提供することを目的とする。また、本発明は、光学活
性剤として用いた場合に操作中のラセミ化が起こり難く
安定性に優れるα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ
−1−ナフチル)酢酸誘導体を提供することを目的とす
る。また、本発明は、低原価で製造できるとともに簡便
な操作で生産性に優れ、さらに高収率で量産できるα−
ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢
酸の製造方法を提供することを目的とする。また、本発
明は、低原価で製造できるとともに簡便な操作で生産性
に優れ、さらに高収率で量産でき安定性に優れるα−ヒ
ドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸
誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記従来の課題を解決す
るために本発明のα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキ
シ−1−ナフチル)酢酸及びその誘導体、及びそれらの
製造方法は、以下の構成を有している。本発明の請求項
1に記載のα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1
−ナフチル)酢酸は、化学式(化3)で示される構成を
有している。
【化3】 これにより、以下の作用が得られる。 (1)α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナ
フチル)酢酸が不斉炭素を有するため、ラセミ体を分離
するための光学分割剤として優れた分割性能を有する。
【0008】本発明の請求項2に記載のα−ヒドロキシ
−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導体
は、化学式(化4)で示される構成を有している。
【化4】 この構成により、請求項1に記載の作用に加え、以下の
ような作用が得られる。 (1)R1、R2に水素又は炭素数1〜8のアルキル基を
備え、R3に炭素数1〜8のアルキル基を備えているの
で、安定な立体配置をもち光学分割剤として用いた場合
に操作中のラセミ化が起りにくく安定性に優れ光学分割
剤として有用である。R3が水素の場合の誘導体を光学
分割剤として用いた場合は、反応条件によってはR3
水素が脱離して化学式(化5)で示されるo−キノンメ
チド中間体又は化学式(化6)で示されるナフチルカチ
オン中間体等を形成し易くラセミ化が起こる可能性があ
るからである。
【化5】
【化6】
【0009】ここで、R1、R2、R3のアルキル基とし
ては直鎖状、分岐状のものが用いられ、炭素数としては
1〜8が好適とされる。nが8より大きくなるにつれ立
体障害が起こり易く反応性の低下や収率の低下等が発生
し易くなるため好ましくない。
【0010】本発明の請求項3に記載のα−ヒドロキシ
−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸の製造方
法は、2−ナフトールとグリオキシル酸とを塩基性条件
下で反応させてラセミ体(±)−α−ヒドロキシ−α−
(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸を得るラセミ体
合成工程と、前記ラセミ体を光学分割して光学活性のα
−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)
酢酸を得る光学分割工程と、を備えた構成を有してい
る。この構成により、以下の作用が得られる。 (1)2−ナフトールとグリオキシル酸の安価な原料か
ら合成できるので、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデ
ヒドとシアノトリメチルシランからシアンヒドリン法で
合成する方法に比べて原料コストを著しく低減させるこ
とができるとともに操作が簡単で作業性に優れる。シア
ンヒドリン法で合成する方法は、原料コストが高く、ま
た合成操作が煩雑だからである。 (2)2−ナフトールの1位にグリオキシル酸が高確率
で付加するので、高い収率で合成でき生産性に著しく優
れる。
【0011】ここで、ラセミ体合成工程における2−ナ
フトールとグリオキシル酸との反応としては、通常の縮
合反応を用いることができ、溶媒中でアルカリ剤を用い
た塩基性条件下で行うことができる。
【0012】溶媒としては、テトラヒドロフラン,エチ
ルエーテル,ジグリム,アセトン,メチルエチルケト
ン,トルエン,ベンゼン,クロルベンゼン,ジクロルメ
タン,ジクロルエタン,クロロホルム,四塩化炭素,ジ
メチルホルムアミド,ヘキサン,ピリジン等の脂肪族若
しくは芳香族炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水
素、有機アミン等の反応に不活性な溶媒の1種又は2種
以上の混合物を用いることができる。
【0013】アルカリ剤としては、水酸化カリウム,水
酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム等
の炭酸アルカリ、ピペリジン,ジエチルアミン,アルカ
リ金属アミド等の有機若しくは無機塩基性物質が用いら
れる。
【0014】アルカリ剤の使用量としては、2−ナフト
ールとグリオキシル酸の合計に対して1〜5当量倍が好
適に用いられる。2−ナフトールとグリオキシル酸の合
計に対するアルカリ剤の使用量が1当量倍より少なくな
るにつれ反応速度が遅くなり生産性が低下する傾向がみ
られ、5当量倍より多くなるにつれカニッツアーロ反応
等の副反応が起こり易くなる傾向がみられるため好まし
くない。
【0015】反応温度としては、0〜30℃好ましくは
5〜25℃が好適に用いられる。反応温度が5℃より低
くなるにつれ反応速度が遅くなり生産性が低下する傾向
がみられ、25℃より高くなるにつれ副反応が起こり易
く収率が低下する傾向がみられる。特に、反応温度が5
℃より低くなるか30℃より高くなると、これらの傾向
が著しいのでいずれも好ましくない。
【0016】反応時間は、特に制限されず原料の2−ナ
フトールの消失をもって反応終了とすることができる
が、通常は2〜24時間が好適に用いられる。反応時間
が2時間より短くなるにつれ収率が低下する傾向がみら
れ、24時間より長くなるにつれ生産性が低下したり副
反応が起こり収率が低下する傾向がみられるため、いず
れも好ましくない。
【0017】反応終了後、通常の分離手段、例えば抽
出、分別、濃縮等の操作により反応混合物から目的とす
る化学式(化3)で示されるラセミ体α−ヒドロキシ−
α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸を単離する
ことができる。必要により、カラムクロマトグラフィ、
再結晶等で精製することもできる。
【0018】光学分割工程としては、1−フェニルエチ
ルアミン、ブルシン、ストリキニーネ、キニン、シンジ
コニン等の塩基性の光学分割剤を用いて分割する化学分
割法、酵素を用いて分割する生物学的分割法、キラルカ
ラムを用いる高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用
いて分割する直接分割法を用いることができる。なかで
も、1−フェニルエチルアミン、ブルシン、ストリキニ
ーネ、キニン、シンジコニン等の塩基性の光学分割剤を
用いると、酸・塩基の塩形成によって簡便に分割できる
ので特に好ましい。
【0019】本発明の請求項4に記載のα−ヒドロキシ
−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導体の
製造方法は、請求項3に記載のラセミ体合成工程で得ら
れるラセミ体とR1又はR2を有するアルコール類とを酸
性条件下で反応させて前記ラセミ体をエステル化、又
は、エステル化及びアルコキシル化する工程と、前記工
程でエステル化、又は、エステル化及びアルコキシル化
されたラセミ体と水酸化アルカリとを反応させ、次いで
3を有する硫酸ジアルキル,ジアルキルカーボネー
ト,ヨウ化アルキルのいずれか1種以上を反応させる誘
導体合成工程と、を備えた構成を有している。この構成
により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような
作用が得られる。 (1)ラセミ体とアルコール類とを酸性条件下で反応さ
せるので、R2及び/又はR1をアルキル基に置換するこ
とができ、さらに誘導体合成工程を備えているので簡便
な常圧下の操作でR3をアルキル基に置換して誘導体を
製造することができ作業性に優れるとともに高収率が得
られ生産性に著しく優れる。 (2)R3をアルキル基に置換するので、得られた誘導
体を光学分割する際に誘導体がラセミ化するのを防止し
光学純度を高めることができ安定性に優れる。
【0020】ここで、ラセミ体をエステル化、又は、エ
ステル化及びアルコキシル化する工程で用いられるR1
又はR2を有するアルコール類としては、炭素数1〜8
の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有する1価又は2価
のアルコール類であり、メタノール,エタノール,1−
プロパノール,2−プロパノール,1−ブタノール,2
−ブタノール,2−メチル−2−プロパノール,1−ペ
ンタノール,2−ペンタノール,3−ペンタノール,1
−ヘキサノール,2−ヘキサノール,3−ヘキサノー
ル,1−ヘプタノール,2−ヘプタノール,3−ヘプタ
ノール,1−オクタノール,2−オクタノール,エチレ
ングリコール,ブタンジオール等が用いられる。アルキ
ル基の炭素数が8より大きくなるにつれ、立体障害が起
こり易く反応性や収率が低下する傾向がみられるため好
ましくない。
【0021】ラセミ体をエステル化、又は、エステル化
及びアルコキシル化する工程におけるラセミ体とアルコ
ール類との反応は、通常のエステル化法を用い、酸性剤
を用いた酸性条件下で行うことができる。この反応は、
化学式(化5)で示されるo−キノンメチド中間体や化
学式(化6)で示されるナフチルカチオン中間体を経由
するエステル反応又はエステル反応とアルコキシル反応
の同時反応によって進行すると推察している。その結
果、反応に用いたアルコール類のアルキル基の炭素数に
応じた化学式(化7)で示される化合物が生成される。
【化7】
【0022】酸性剤としては、パラトルエンスルホン
酸,メタンスルホン酸,硫酸等の有機酸若しくは無機酸
を用いることができる。
【0023】反応温度としては、5℃以上アルコール類
の沸点以下、好ましくは40℃以上アルコール類の沸点
以下が好適に用いられる。反応温度が40℃より低くな
るにつれアルコキシル化が起こり難く化学式(化5)で
示されるo−キノンメチド中間体や化学式(化6)で示
されるナフチルカチオン中間体を経由するエステル反応
とアルコキシル反応の同時反応が起こり難いため誘導体
の収率が低くなる傾向がみられ、特に5℃より低くなる
と収率の低下が著しくなるとともに反応速度が遅く生産
性が著しく低下するため好ましくない。また、反応温度
がアルコール類の沸点より高くなると、オートクレーブ
等の高圧反応装置を要し生産性が低下するとともに副反
応が発生し易くなるため好ましくない。反応時間は、特
に制限されず原料のラセミ体の消失をもって反応終了と
することができる。
【0024】誘導体合成工程において用いられる水酸化
アルカリとしては、LiOH,NaOH,KOH等が用
いられる。水酸化アルカリによって、ナフタレンと結合
したヒドロキシル基がアルカリ塩に変換される。水酸化
アルカリの使用量としては、ラセミ体に対して1〜20
当量倍が好適に用いられる。1当量倍より少なくなるに
つれ未反応のラセミ体が増加し収率が低下する傾向がみ
られ、20当量倍より増加するにつれ副反応が起こり易
くなるため好ましくない。なお、水酸化アルカリは一度
に加えるのではなく、複数回に分けて加えるのが好まし
い。副反応等の発生を抑制し収率を高めることができる
からである。特に、硫酸ジアルキル,ジアルキルカーボ
ネート,ヨウ化アルキルのいずれか1種以上を加える反
応の前後に分けて加えるのが好ましい。硫酸ジアルキル
等を加える反応の前に加えた水酸化アルカリは、ヒドロ
キシル基をアルカリ塩にして硫酸ジアルキル等によるア
ルコキシル化を促進する働きを有し、硫酸ジアルキル等
を加える反応の後に加えた水酸化アルカリは、カルボン
酸エステルを選択的に加水分解する働きを有する。この
結果、誘導体のほぼ全量をカルボキシル基が不斉炭素に
結合した誘導体に変換することができ、誘導体の収率を
飛躍的に高めることができるからである。
【0025】誘導体合成工程において用いられるR3
有する硫酸ジアルキルとしては、硫酸ジメチル,硫酸ジ
エチル等が用いられる。R3を有するジアルキルカーボ
ネートとしては、化学式(化8)で示すジメチルカーボ
ネート等が用いられる。
【化8】 3を有するヨウ化アルキルとしては、ヨウ化メチル等
が用いられる。
【0026】硫酸ジアルキル,ジアルキルカーボネー
ト,ヨウ化アルキルの使用量としては、ラセミ体に対し
て1〜5当量倍が好適に用いられる。硫酸ジアルキル等
の使用量がラセミ体に対して1当量倍より少なくなるに
つれ未反応のラセミ体が増加し収率が低下する傾向がみ
られ、5当量倍よりより多くなるにつれ副反応が起こり
易くなる傾向がみられるため好ましくない。
【0027】反応終了後、通常の分離手段、例えば抽
出、分別、濃縮等の操作により反応混合物から目的とす
る化学式(化4)で示されるα−ヒドロキシ−α−(2
−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導体を単離するこ
とができる。必要により、カラムクロマトグラフィ、再
結晶等で精製することもできる。
【0028】誘導体合成工程で得られたα−ヒドロキシ
−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導体は
ラセミ体なので、請求項3で説明した光学分割工程を用
いることにより光学分離することができる。
【0029】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。 (実施例1)以下に説明する操作で(化9)に示す反応
を利用して、α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−
1−ナフチル)酢酸を製造した。ラセミ体合成工程にお
いて、2−ナフトール5.76g(0.040mol)
を2N水酸化カリウム水溶液50ml(0.10mo
l)に溶解して攪拌しながら、グリオキシル酸一水和物
5.22g(0.06mol)を蒸留水20mLに溶か
した溶液を10〜15℃で滴下した。室温で6時間攪拌
後、0〜6℃に冷却して2N塩酸50mLで中和した。
これをジエチルエーテル30mLで3回抽出した。エー
テル抽出物を蒸留水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥
後、エーテルを留去するとラセミ体(±)−α−ヒドロ
キシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸が白
色固体として8.1g得られた。これは92%という高
収率であった。これをトルエン/ジエチルエーテル(8
0/20)から再結晶して分析用の結晶を得た。
【化9】
【0030】次に、この結晶を分析して実施例1で製造
した化合物を同定した。分析装置としては以下のものを
用いた。 微量融点測定装置:株式会社ヤナコ器機開発研究所製
MP−500D フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR):日本分
光株式会社製HerschelシリーズFT/IR―2
30 紫外可視分光光度計(UV/VIS):パーキンエル
マー製Lambda20 高分解能質量分析装置(MS):日本電子株式会社製
JMS−SX102A 有機元素分析装置(CHN):ヤナコ分析工業株式会
社製CHNコーダーMT−5 超伝導核磁気共鳴装置(SC−NMR):日本電子製
JNM−A500(観測核:1H,13C、1H:500M
Hz、13C:125.65MHz) 旋光計:日本分光株式会社製P1010 高速クロマトグラフ(HPLC):日本分光株式会社
製高速クロマトグラフGULLIVERシリーズ、日本
分光株式会社製ODSカラムC18T−5、ダイセル株
式会社製キラルカラムOD−H
【0031】分析結果は以下の通りであった。 微量融点測定装置を用いた測定の結果、融点は13
3.5−135.5℃であった。 FT−IRスペクトルのチャートを図1に示す。 FT−IR(KBr):ν 3200、3060、29
70、2740−2400、1730(カルボニル伸縮
振動)、1630、1520cm-1。 UV/VISスペクトルのチャートを図2に示す。 UV/VIS(H2O):λmax(logε)227
(4.99)。 MSスペクトルのチャートを図3に示す。 MS(FAB)m/z:218(M+ 、79%)、20
1(100)、173(87)、200(5.2)。 CHN C12104 の測定結果は、実測値、C6
5.81;H、4.70であり、計算値はC、66.0
5;H、4.62である。1 H−NMRスペクトルのチャートを図4に示す。な
お、SC−NMRにおいて、δ値をppmで示した。記
号は以下の意味を有する。s:シングレット、m:マル
チプレット、Ar:芳香族環。1 H−NMR(500MHz、DMSO−d6 ):δ
5.71(s、1H、CH−OH)、5.95(s、1
H、CH−OH)、7.16−8.10(m、6H、A
rH)、9.84(m、6H、ArOH)、12.3p
pm(s、1H、COOH)。13 C−NMRスペクトルのチャートを図5に示す。13 C−NMR(125.65MHz、DMSO−
6 ):δ 65.1(CH−OH)、118−153
(ArC)、176ppm(s、1H、COOH)。 HPLC(ODSカラム)測定により1本のピークを
与えた。これらの結果から、実施例1において製造した
化合物は(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキ
シ−1−ナフチル)酢酸であることが確認された。
【0032】(実施例2)実施例1とは異なる操作で
(化9)に示す反応を利用して、α−ヒドロキシ−α−
(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸を製造した。ラ
セミ体合成工程において、まず、2−ナフトール5.8
g(0.040mol)とグリオキシル酸一水和物5.
8g(0.060mol)を蒸留水20mLに懸濁した
懸濁液に、0〜6℃の冷却下で2N水酸化カリウム50
mL(0.1mol)を滴下ロートから滴下した。この
混合物を10〜15℃で4時間撹拌後、0〜6℃に冷却
して2N塩酸50mL(0.1mol)で中和した。こ
れをジエチルエーテル40mLで3回抽出した。エーテ
ル抽出物を蒸留水で洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥後、
溶媒を留去すると、ラセミ体(±)−α−ヒドロキシ−
α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸が白色固体
として8.6g得られた。これは98%という高収率で
あった。これをトルエン/ジエチルエーテル(80/2
0)から再結晶して分析用の結晶を得た。
【0033】実施例1で説明したものと同様の分析装置
を用いて結晶の分析を行った。その結果は以下のとおり
であった。 微量融点測定装置を用いた測定の結果、融点は133
−135℃であった。 FT−IR(KBr):ν 3280、1730、1
630cm-1。 UV/VIS(MeOH):λmax(logε)2
29nm(5.15)。 MS(FAB)m/z:218(79、M+)、20
1(100)、173(87)。 CHN C12104 の測定結果は、実測値、C6
5.81;H、4.70であり、計算値はC、66.0
5;H、4.62であった。1 H−NMR(500MHz、DMSO−d6 ):δ
5.71(s、1H、CH−OH)、5.95(s、
1H、CH−OH)、7.16−8.10(m、6H、
ArH)、9.84(brs、1H、ArOH)、1
2.3ppm(brs、1H、ArOH)。13 C−NMR(125.65MHz、DMSO−
6 ):δ 65.0(CHCOOH)、117.8、
118.2、122.4、124.1、125.9、1
28.1、128.3、129.2、132.8、15
2.8、175.5ppm(COOH)。 HPLC(ODSカラム)測定により1本のピークを
与えた。これらの結果から、実施例2において製造した
化合物はラセミ体(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−
ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸であり、実施例1より
も高い収率で製造できることが確認された。
【0034】(実施例3)次に、実施例1のラセミ体合
成工程で製造したラセミ体(±)−α−ヒドロキシ−α
−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸を用い、光学
分割工程で光学分割した。(±)−α−ヒドロキシ−α
−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸1.00g
(4.6mmol)をエタノール20mLに溶解して3
℃で攪拌しながら(R)−(+)−1−フェニルエチル
アミン0.3mL(2.3mmol)を滴下すると約5
分で沈殿が析出し始めた。添加後さらに1時間攪拌し
た。析出した白色塩を吸引ろ過、アセトンで洗浄して乾
燥すると(+)−[α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロ
キシ−1−ナフチル)酢酸]塩0.730g(94%)
を得た。この塩を蒸留水10mLに溶解し、3℃に冷却
して攪拌しながら0.5N 水酸化カリウム水溶液10
mL(5.0mmol)を滴下して解塩した。水層にジ
エチルエーテル10mLを加えて未反応のフェニルエチ
ルアミンの抽出除去を2回行い、3℃に冷却して、0.
5N塩酸水溶液10mL(5.0mmol)を加えて中
和した。ジエチルエーテル10mLで2回抽出して、抽
出物を水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を除去す
ると、(+)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ
−1−ナフチル)酢酸が0.384g[77%、mp
137.8−138.8℃(トルエン−エタノール)、
[α]20 D +3.5°(c 1.0MeOH)]得られ
た。同様にして、(S)−(−)−1−フェニルエチル
アミンを使用して、(−)−塩0.759g(97%)
を得た後、解塩すると(−)−α−ヒドロキシ−α−
(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸が0.418g
[83%、mp 137.1−138.3℃(トルエン
−エタノール)、[α]20 D −3.5°(c1.0 M
eOH)]得られた。なお、本実施例においては(+)
体と(−)体を別々に採取したが、光学分割剤を用いて
(+)体又は(−)体を分割した後、分割した残渣から
(−)体又は(+)体を採取することもできる。この場
合は、残渣中に(−)体又は(+)体が濃縮されている
ので採取効率を高めることができ好ましい。なお、本実
施例では比旋光度が小さく不安定だったので、(+)体
と(−)体を別々に採取した。
【0035】(実施例4)次に、実施例2で製造した
(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−
ナフチル)酢酸を用い、α−ヒドロキシ−α−(2−ヒ
ドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導体としてのα−メト
キシ−α−(2−メトキシ−1−ナフチル)酢酸を製造
した。まず、実施例2で製造したラセミ体(±)−α−
ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢
酸5.0g(0.023mol)のメタノール溶液50
mLに、0〜5℃の冷却下で濃硫酸2.0mLを滴下し
た。反応混合物を64℃で3時間加熱還流した後に冷却
してNaHCO3飽和水溶液で中和し、水(100m
L)を加えると沈殿が生じた。沈殿物をろ過して水で洗
浄し、乾燥して化学式(化10)で示されるα−メトキ
シ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸メチル
を得た。
【化10】
【0036】得られたα−メトキシ−α−(2−ヒドロ
キシ−1−ナフチル)酢酸メチル5.0g(0.023
mol)のテトラヒドロフラン(THF)50mL溶液
に、0〜6℃に冷却して3.5gのLiOH・H2
(0.083mol)を蒸留水30mLに溶解した水溶
液を滴下した。次に、ジメチル硫酸6.0mL(0.0
6mol)をTHF10mLに溶解した溶液を加え、6
2℃で2時間加熱還流した後に50℃まで放冷し、さら
に5.0gのLiOH・H2O(0.12mol)を蒸
留水40mLに溶解した水溶液を加えて62℃で2時間
加熱還流した。反応混合物を冷却して2N塩酸75mL
(0.15mol)で酸性にし、ジエチルエーテル40
mLで3回抽出した。有機層を合わせて蒸留水で洗浄
し、硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去した。油状の
残渣をトルエン10mLに溶かし溶媒を留去すると、化
学式(化11)で示す(±)−α−メトキシ−α−(2
−メトキシ−1−ナフチル)酢酸が固体として4.9g
得られた。これは98%という高収率であった。これを
トルエン/ジエチルエーテル(80/20)から再結晶
して分析用の純粋な針状結晶を得た。
【化11】
【0037】実施例1で説明したのと同様の分析装置を
用いて結晶の分析を行った。その結果は以下のとおりで
あった。 微量融点測定装置を用いた測定の結果、融点は135
−137℃であった。 FT−IRスペクトルのチャートを図6に示す。 FT−IR(KBr):ν 1720、1630c
-1。 UV/VISスペクトルのチャートを図7に示す。 UV/VIS(CH3CN):λmax(logε)2
29nm(4.67)。 MSスペクトルのチャートを図8に示す。 MS(EI)m/z:246(90、M+)、214
(14)、201(100)、185(66)、171
(67)。 CHN C14144 の測定結果は、実測値、C6
8.19;H、5.78であり、計算値はC、68.2
8;H、5.73であった。1 H−NMRのチャートを図9に示す。1 H−NMR(400MHz、DMSO−d6 ):δ
3.31(s、3H、CHOCH3)、3.93(s、
3H、ArOCH3)、5.70(s、1H、CHCO
OH)7.35−8.18(m、6H、ArH)、1
2.6ppm(brs、1H、COOH)。13 C−NMRのチャートを図10に示す。13 C−NMR(100.4MHz、DMSO−d6 ):
δ 56.9(CHOCH3)、57.0(ArOC
3)、73.6(CHOCH3)、114.0、11
8.0、123.4、124.1、126.4、12
8.1、128.8、130.3、131.9、15
5.1、172.4ppm(COOH)。 HPLC(ODSカラム)測定により1本のピークを
与えた。これらの結果から、実施例4において製造した
化合物はα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−
ナフチル)酢酸誘導体のひとつであるα−メトキシ−α
−(2−メトキシ−1−ナフチル)酢酸であることが確
認された。また、水酸化アルカリを、硫酸ジアルキル,
ジアルキルカーボネート,ヨウ化アルキルのいずれか1
種以上を加えて反応させた後にさらに加えることで、カ
ルボン酸エステルの加水分解を促進し98%もの高収率
で不斉炭素にカルボキシル基が結合した誘導体を製造で
きることが確認された。なお、実施例2で製造したラセ
ミ体(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−
1−ナフチル)酢酸5.0g(0.023mol)のメ
タノール溶液50mLに、0〜5℃の冷却下で濃硫酸
2.0mLを滴下した後、反応混合物を室温で3時間反
応させた以外は実施例4と同様の操作を行うと、アルコ
キシル化が進行せず、ラセミ体α−ヒドロキシ−α−
(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸メチルが収率7
4%で製造された。この結果から、反応温度が低いとエ
ステル化は進行するがアルコキシル化が起こり難く、収
率も低下することがわかった。
【0038】(実施例5)次に、実施例4で製造したラ
セミ体(±)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−1
−ナフチル)酢酸を光学分割した。光学分割工程におい
て、まず、実施例4で得た(±)−α−メトキシ−α−
(2−メトキシ−1−ナフチル)酢酸6.0g(0.0
24mol)のアセトン溶液280mLを50℃に温
め、これに(−)−1−フェニルエチルアミン1.6m
L(0.012mol)のアセトン溶液20mLを加え
て5分間撹拌した。この混合溶液をろ過し、母液を0〜
5℃の冷蔵庫内で一晩静置すると針状結晶が析出した。
これをろ過して少量のアセトンで洗浄し乾燥して難溶性
のアミン塩3.2gを得た。このアミン塩をアセトンか
ら再結晶させると(+)−α−メトキシ−α−(2−メ
トキシ−1−ナフチル)酢酸・(−)−1−フェニルエ
チルアミン塩2.3gを得た。比旋光度を測定すると
[α]20 D +119°(c 0.2、MeOH)であっ
た。これを水に懸濁させ0〜5℃に冷却しアミン塩と等
モル量の2N水酸化カリウム溶液を滴下して溶解し、ジ
エチルエーテル20mLで3回抽出してアミンを除去し
た。水層を2N塩酸で中和してジエチルエーテル20m
Lで3回抽出した後にエーテル抽出物を合わせて蒸留水
で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥して溶媒を留
去した。残渣を0〜5℃の冷蔵庫内で一晩静置すると
(+)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−1−ナフ
チル)酢酸の球状結晶を得た。キラルカラムを用いたH
PLC測定により光学純度は99%ee以上であること
が確認された。比旋光度は[α]20 D +162°(c
0.2、MeOH)であった。結晶をろ別した母液を容
量が1/2になるまで減圧濃縮し0〜5℃の冷蔵庫内で
一晩静置すると、光学的に不純なアミン塩が析出した。
このアミン塩をろ別した母液にアセトンを追加して容量
を280mLにした。これを50℃に温め(+)−1−
フェニルエチルアミン1.6mL(0.012mol)
のアセトン溶液20mLを加えて5分間撹拌した。この
混合溶液をろ過し、ろ液を0〜5℃の冷蔵庫内で一晩静
置すると針状結晶が析出した。これを1回再結晶する
と、(−)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−1−
ナフチル)酢酸・(+)−1−フェニルエチルアミン塩
2.2gを得た。比旋光度を測定すると[α]20 D −1
18°(c 0.2、MeOH)であった。このアミン
塩を複分解して(−)−α−メトキシ−α−(2−メト
キシ−1−ナフチル)酢酸を得た。キラルカラムを用い
たHPLC測定により光学純度は97%eeであった。
その比旋光度は[α] 20 D −161°(c 0.2、M
eOH)であった。以上のように本実施例によれば、光
学純度が97〜99%eeと著しく高く比旋光度も大き
な光学活性α−メトキシ−α−(2−メトキシ−1−ナ
フチル)酢酸が得られることが明らかになった。
【0039】(実施例6)実施例5で得られたα−メト
キシ−α−(2−メトキシ−1−ナフチル)酢酸を光学
分割剤として用い、ラセミ体である(±)−1−(1−
ナフチル)エチルアミンの光学分割を行った。まず、
(±)−1−(1−ナフチル)エチルアミン1.4g
(0.079mol)のエタノール溶液50mLを50
℃に温めて、実施例5で得られた(+)−α−メトキシ
−α−(2−メトキシ−1−ナフチル)酢酸1.0g
(0.004mol)のエタノール溶液10mLを滴下
した。この混合溶液をしばらく放置すると白色沈殿が析
出した。これをろ過して少量のエタノールで洗浄し乾燥
して(+)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−1−
ナフチル)酢酸・(−)−1−(1−ナフチル)エチル
アミン塩1.6g(96%)を得た。この難溶性のアミ
ン塩を水に懸濁させて0〜5℃に冷却した後、アミン塩
の5倍モル量の2N水酸化カリウムを滴下すると(−)
−1−(1−ナフチル)エチルアミンが遊離した。これ
をジエチルエーテル10mLで2回抽出した。エーテル
抽出物を合わせて蒸留水で洗浄し、次いで硫酸マグネシ
ウムで乾燥して溶媒を留去すると、(−)−1−(1−
ナフチル)エチルアミン0.63gを得た。キラルカラ
ムを用いたHPLC測定によると光学純度が89%ee
であることが確認された。次いで、難溶性アミン塩をろ
別したろ液を容量が1/2になるまで減圧濃縮した。生
じた白色沈殿をろ過で取り除き、ろ液の溶媒を留去する
と、未反応の(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミ
ン0.6gを得た。キラルカラムを用いたHPLC測定
によると光学純度が81%eeであることが確認され
た。抽出後の水層を2N塩酸で中和してジエチルエーテ
ル10mLで2回抽出した。次いで、エーテル抽出物を
合わせて蒸留水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾
燥して溶媒を留去した。残渣を0〜5℃の冷蔵庫内で一
晩放置すると固化して、(+)−α−メトキシ−α−
(2−メトキシ−1−ナフチル)酢酸0.92gが回収
された。以上のように本実施例によれば、α−メトキシ
−α−(2−メトキシ−1−ナフチル)酢酸を光学分割
剤として用いることで、ラセミ体を高い光学純度で光学
分割できることが明らかになった。
【0040】なお、実施例4〜6においてはα−ヒドロ
キシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導
体として、R1が炭素数1のアルキル基、R2が水素、R
3が炭素数1のアルキル基の場合について説明したが、
それに限定されるものではなく、R1が水素又は炭素数
2〜8のアルキル基、R2が炭素数1〜8のアルキル
基、R3が炭素数2〜8のアルキル基の場合も同様の操
作で誘導体が製造できることを確認した。
【0041】
【発明の効果】以上のように本発明のα−ヒドロキシ−
α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸及びその誘
導体、及びそれらの製造方法によれば、以下の優れた効
果を実現できる。請求項1に記載の発明によれば、
(1)α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナ
フチル)酢酸が不斉炭素を有するため、ラセミ体を分離
するための光学分割剤として優れた分割性能を有するα
−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)
酢酸を提供することができる。
【0042】請求項2に記載の発明によれば、請求項1
の効果に加え(1)R1、R2に水素又は炭素数1〜8の
アルキル基を備え、R3に炭素数1〜8のアルキル基を
備えているので、安定な立体配置をもち光学分割剤とし
て用いた場合に操作中のラセミ化が起りにくく安定性に
優れ光学分割剤として有用なα−ヒドロキシ−α−(2
−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導体を提供するこ
とができる。
【0043】請求項3に記載の発明によれば、 (1)2−ナフトールとグリオキシル酸の安価な原料か
ら合成できるので、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデ
ヒドとシアノトリメチルシランからシアンヒドリン法で
合成する方法に比べて原料コストを著しく低減させるこ
とができるとともに操作が簡単で作業性に優れたα−ヒ
ドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸
の製造方法を提供することができる。 (2)2−ナフトールの1位にグリオキシル酸が高確率
で付加するので、高い収率で合成でき生産性に著しく優
れたα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフ
チル)酢酸の製造方法を提供することができる。
【0044】請求項4に記載の発明によれば、請求項3
の効果に加え、 (1)ラセミ体とアルコール類とを酸性条件下で反応さ
せるので、R2及び/又はR1をアルキル基に置換するこ
とができ、さらに誘導体合成工程を備えているので簡便
な常圧下の操作でR3をアルキル基に置換して誘導体を
製造することができ作業性に優れるとともに高収率が得
られ生産性に著しく優れたα−ヒドロキシ−α−(2−
ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導体の製造方法を提
供することができる。 (2)R3をアルキル基に置換するので、得られた誘導
体を光学分割する際に誘導体がラセミ化するのを防止し
光学純度を高めることができ安定性に優れたα−ヒドロ
キシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸誘導
体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキ
シ−1−ナフチル)酢酸のFT−IRスペクトルのチャ
ート
【図2】(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキ
シ−1−ナフチル)酢酸のUV/VISスペクトルのチ
ャート
【図3】(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキ
シ−1−ナフチル)酢酸のMSスペクトルのチャート
【図4】(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキ
シ−1−ナフチル)酢酸の 1H−NMRスペクトルのチ
ャート
【図5】(±)−α−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキ
シ−1−ナフチル)酢酸の13C−NMRスペクトルのチ
ャート
【図6】(±)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−
1−ナフチル)酢酸のFT−IRスペクトルのチャート
【図7】(±)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−
1−ナフチル)酢酸のUV/VISスペクトルのチャー
【図8】(±)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−
1−ナフチル)酢酸のMSスペクトルのチャート
【図9】(±)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ−
1−ナフチル)酢酸の1H−NMRスペクトルのチャー
【図10】(±)−α−メトキシ−α−(2−メトキシ
−1−ナフチル)酢酸の13C−NMRスペクトルのチャ
ート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 57/00 346 C07B 57/00 346 C07M 7:00 C07M 7:00 Fターム(参考) 4H006 AA01 AA02 AC41 AC43 AC48 AC83 BB11 BB14 BB15 BB16 BB31 BE01 BE03 BE10 BJ50 BN10 BN30 BP10 BP30 BS10 KA06 KC14 KF00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学式(化1) 【化1】 で示されるα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1
    −ナフチル)酢酸。
  2. 【請求項2】 化学式(化2) 【化2】 で示されるα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1
    −ナフチル)酢酸誘導体。
  3. 【請求項3】 2−ナフトールとグリオキシル酸とを塩
    基性条件下で反応させてラセミ体(±)−α−ヒドロキ
    シ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸を得る
    ラセミ体合成工程と、前記ラセミ体を光学分割して光学
    活性のα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナ
    フチル)酢酸を得る光学分割工程と、を備えていること
    を特徴とするα−ヒドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−
    1−ナフチル)酢酸の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載のラセミ体合成工程で得
    られるラセミ体とR1又はR2を有するアルコール類とを
    酸性条件下で反応させて前記ラセミ体をエステル化、又
    は、エステル化及びアルコキシル化する工程と、前記工
    程でエステル化、又は、エステル化及びアルコキシル化
    されたラセミ体と水酸化アルカリとを反応させ、次いで
    3を有する硫酸ジアルキル,ジアルキルカーボネー
    ト,ヨウ化アルキルのいずれか1種以上を反応させる誘
    導体合成工程と、を備えていることを特徴とするα−ヒ
    ドロキシ−α−(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)酢酸
    誘導体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014502270A (ja) * 2010-11-26 2014-01-30 アミノロジックス カンパニー リミテッド 光学的に純粋な2,2´‐ジヒドロキシ‐1,1´‐ビナフチル‐3‐カルボン酸の製造方法{syntheticmethodofenantiomericallypure2,2´‐dihydroxy‐1,1´‐binaphthyl‐3‐carboxylicacid}

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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014502270A (ja) * 2010-11-26 2014-01-30 アミノロジックス カンパニー リミテッド 光学的に純粋な2,2´‐ジヒドロキシ‐1,1´‐ビナフチル‐3‐カルボン酸の製造方法{syntheticmethodofenantiomericallypure2,2´‐dihydroxy‐1,1´‐binaphthyl‐3‐carboxylicacid}
US9725391B2 (en) 2010-11-26 2017-08-08 Aminologics Co., Ltd. Synthetic method of enantiomerically pure 2,2′-dihydroxy-1,1′-binaphthyl-3-carboxylic acid

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