JP2003313124A - アポトーシスに起因するドライアイにより生じる眼障害の予防および/または治療のための組成物 - Google Patents

アポトーシスに起因するドライアイにより生じる眼障害の予防および/または治療のための組成物

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JP2003313124A
JP2003313124A JP2003040807A JP2003040807A JP2003313124A JP 2003313124 A JP2003313124 A JP 2003313124A JP 2003040807 A JP2003040807 A JP 2003040807A JP 2003040807 A JP2003040807 A JP 2003040807A JP 2003313124 A JP2003313124 A JP 2003313124A
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eye
caused
composition
apoptosis
dry eye
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JP2003040807A
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English (en)
Inventor
Yasukazu Saito
靖和 齋藤
Hideo Nakajima
英雄 中嶋
Shigeru Nakamura
滋 中村
Kazuo Tsubota
一男 坪田
Akihiro Higuchi
明弘 樋口
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Ophtecs Corp
Original Assignee
Ophtecs Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アポトーシスに起因するドライアイにより生
じる眼障害の予防および/または治療のための組成物を
提供する。 【解決手段】 アポトーシスに起因するドライアイによ
り生じる眼障害の予防および/または治療のための組成
物であって、該組成物が3−ヒドロキシ酪酸および/ま
たはその塩類を有効成分として含有することを特徴とす
る組成物により達成できる。さらには、上記有効成分を
含有する、簡便で且つ効果的な、アポトーシスに起因す
るドライアイにより生じる眼障害、特には角結膜の障害
の予防および/または治療のための組成物により達成で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、アポトーシスに
起因するドライアイにより生じる眼障害の予防および/
または治療のための組成物であって、該組成物が3−ヒ
ドロキシ酪酸および/またはその塩類を有効成分として
含有することを特徴とする組成物に関する。さらに詳し
くは、上記有効成分を含有し、簡便で且つ効果的な、ア
ポトーシスに起因するドライアイにより生じる眼障害、
特には角結膜の障害の予防および/または治療のための
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】 アポトーシス(apoptosis)
は、細胞の遺伝子に制御された細胞自壊プログラムが発
動することによって起こる細胞死である。このアポトー
シスの特徴は、細胞縮小、クロマチン凝集、クロマチン
DNAの断片化、アポトーシス小体の出現・細胞断片化
等があり、短時間のうちに進行する能動的な細胞死の形
態であると考えられている。
【0003】 また、アポトーシスは、生物の発生過程
やホメオスタシスの維持等において必須の現象である
が、自然発生、栄養因子や増殖因子といった諸因子の欠
乏、放射線等の物理的ストレス等により誘導され、その
他にも、例えば細胞培養において、培地より血清を除去
することにより誘導されることも知られている。
【0004】 現在、このアポトーシスは、様々な疾患
に関与していることが示唆されているが、なかでも、眼
に関する疾患としては、虚血・再灌流による網膜障害、
緑内障、視神経切断、網膜剥離、網膜変性症、白内障、
さらには、近年急速に増加してきた眼障害の1つである
ドライアイもまた、アポトーシスが関与していると考え
られている。
【0005】 これまで、ドライアイに対する治療法と
しては、主に自覚症状を軽減させる対症療法が行われて
いる。そのような対症療法としては、例えば人工涙液等
(ヒアルロン酸ナトリウム含有人工涙液等)の点眼、涙
点閉鎖、ドライアイ保護用眼鏡の使用といった方法等が
挙げられる。
【0006】 近年、ドライアイ患者、特に重症ドライ
アイ患者の症状を改善するために、血清を用いる方法が
注目されつつあり、特に患者本人の血清(自己血清)を
用いて治療する方法が注目を浴びつつある。さらに、こ
の自己血清点眼においては、20%自己血清を点眼する
ことにより、ドライアイ患者の症状改善に、優れた効果
があることが知られている(例えば、非特許文献1参
照)。また、現在では、この自己血清を点眼することに
より、角膜上皮細胞のアポトーシスが抑制されることも
示唆されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】 しかしながら、上述した対症療法は、一
時的な症状軽減といった効果はあるものの、ドライアイ
そのものの治療効果はなく、根治的な治療ができるもの
ではなかった。また、血清を用いる方法においては、血
清は保存可能期間が長くはないため、たびたび患者より
採血を行い、血清を得る必要があり、手間がかかること
や、患者自身の負担も大きいといった問題点があった。
さらに、採取した自己血清の管理を十分に行わなければ
ならないといった問題もあった。それゆえ、ドライアイ
患者の症状を改善するにあたり、人工涙液等の点眼とい
った対症療法ではなく、簡便で且つ効果的にドライアイ
により生じる眼障害を治療する点眼剤の開発が待たれて
いる。
【0008】 また、アポトーシスが関連するドライア
イの治療剤および治療方法が提案されている。そのよう
な例としては、抗Fasモノクローナル抗体を有効成分
とするドライアイ治療剤が開示されている(例えば、特
許文献1参照)。しかしながら、本発明の有効成分であ
る3−ヒドロキシ酪酸および/またはその塩類が、アポ
トーシスに起因するドライアイにより生じる眼障害の予
防および/または治療に有効であることは知られていな
い。
【0009】
【特許文献1】特開平10−194989号公報
【非特許文献1】Kazuo Tsubota,et al.、「Treatment
of dry eye by autologous serum application in Sjog
ren's syndrome」、Br. J. Ophthalmol.、1999年、
83巻、p390−395
【非特許文献2】坪田一男、「眼科研究のたのしいアプ
ローチ」、あたらしい眼科、株式会社メディカル葵出
版、2001年4月30日、18巻、4号、p491−
492
【0010】
【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、ア
ポトーシスに起因するドライアイにより生じる眼障害の
予防および/または治療のための組成物であって、該組
成物が3−ヒドロキシ酪酸および/またはその塩類を有
効成分として含有することを特徴とする組成物を提供す
ることにある。さらに詳しくは、上記有効成分を含有
し、簡便で且つ効果的な、アポトーシスに起因するドラ
イアイにより生じる眼障害、特には角結膜の障害の予防
および/または治療のための組成物を提供することにあ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】 本発明によれば、本発
明の上記目的および利点は、以下により達成される。 (1)アポトーシスに起因するドライアイにより生じる
眼障害の予防および/または治療のための組成物であっ
て、該組成物が3−ヒドロキシ酪酸および/またはその
塩類を有効成分として含有することを特徴とする組成
物。 (2)3−ヒドロキシ酪酸がD−体であることを特徴と
する上記(1)記載の組成物。 (3)3−ヒドロキシ酪酸の塩類が、ナトリウム塩、カ
リウム塩、L−リジン塩、L−ヒスチジン塩およびL−
アルギニン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種で
ある上記(1)または上記(2)記載の組成物。 (4)3−ヒドロキシ酪酸および/またはその塩類の濃
度が、0.1〜1000mmol/Lである上記(1)
〜上記(3)のいずれかに記載の組成物。 (5)3−ヒドロキシ酪酸および/またはその塩類の濃
度が、1〜150mmol/Lである上記(1)〜上記
(4)のいずれかに記載の組成物。 (6)ドライアイにより生じる眼障害が、角結膜の障害
である上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の組成
物。
【0012】
【発明の実施の形態】 本発明において、有効成分とし
て用いられる3−ヒドロキシ酪酸は、生体成分として知
られており、肝臓で脂肪酸が酸化されることにより生成
され、末梢組織においてエネルギー源として用いられる
ことが知られている(山科郁男監修、「レーニンジャー
の新生化学(上)」、第2版、廣川書店、1993年4
月15日、p625−626参照)。3−ヒドロキシ酪
酸の化学構造式のC3位の立体配置に関しては、D−
体、D,L−ラセミ体およびL−体が知られている。本
発明においては、これら全てを使用することができる
が、アポトーシスに起因するドライアイにより生じる眼
障害の予防および/または治療の上で、これらのうちD
−体が最も好ましい。また、3−ヒドロキシ酪酸の塩類
は、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、L−リジ
ン塩、L−ヒスチジン塩およびL−アルギニン塩からな
る群より少なくとも1種が適宜選択される。これら3−
ヒドロキシ酪酸および/またはその塩類は、適宜単独で
あるいは2種類以上併用することができる。本発明の組
成物における3−ヒドロキシ酪酸および/またはその塩
類の濃度は、患者の年齢や症状、またその用途に応じて
0.1〜1000mmol/L、より好ましくは0.5
〜500mmol/L、さらには1〜150mmol/
Lの範囲にあるのが特に好ましい。
【0013】 本発明において、有効成分である3−ヒ
ドロキシ酪酸は、アポトーシスに起因するドライアイに
より生じる眼障害の予防および/または治療に対して有
効である。さらに詳しくは、上記有効成分を含有する本
発明の組成物は、アポトーシスに起因するドライアイに
より生じる眼障害、特には角結膜の障害の予防および/
または治療に対して有効である。
【0014】 本発明の組成物は、経口的(錠剤、顆粒
等)にあるいは非経口的(点眼剤、点滴剤等)に適宜使
用される。本発明の組成物からなる製剤の形態として
は、例えば、点眼剤、点滴剤、注射剤、眼軟膏剤、錠
剤、顆粒、散剤、カプセル剤等が挙げられ、いずれも公
知の方法で適宜調製することができる。これら製剤には
通常用いられる等張化剤、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、
粘稠剤、pH調整剤、賦形剤、結合剤、分散剤、再吸収
促進剤、界面活性剤、溶解補助剤、乳化剤、保湿剤、着
色剤、香料、有機溶媒(例えばアルコール類、油類)、
シリコーン類、重合体、固体脂肪物質(例えばワックス
類)等を含有することができ、用途に応じて適宜選択
し、調製することができる。
【0015】 本発明の組成物は、上記に挙げた製剤の
形態のなかでも、特に眼に対して局所投与する上で、点
眼剤または眼軟膏剤とするのが好ましく、さらには、点
眼剤とするのがより好ましい。
【0016】 例えば、本発明の組成物を点眼剤とする
場合には、点眼剤の安定性およびさし心地の良さを得る
ことを目的として、必要に応じて等張化剤、緩衝剤、安
定化剤、粘稠剤、pH調整剤等を含有することができ
る。なお、これらの成分は単独であるいは2種類以上適
宜含有することができ、多くの場合その方が好ましい。
【0017】 本発明の組成物を点眼剤とする場合に含
有することができる等張化剤としては、一般に点眼剤と
して用いられているものであれば特に差し支えない。等
張化剤は本発明の組成物を点眼剤とする場合に、該点眼
剤の浸透圧を調製する目的等で含有することができる。
そのような等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウ
ム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム
および硫酸マグネシウム等からなるアルカリまたはアル
カリ土類金属塩の如き無機塩、およびグルコース、マン
ニトール、ソルビトール、キシリトールおよびデキスト
ラン等の糖質等が挙げられる。これらは単独であるいは
2種類以上併用することができる。これら等張化剤の濃
度としては、0.001〜5w/v%であるのが好まし
く0.01〜3w/v%であるのがより好ましい。
【0018】 本発明の組成物を点眼剤とする場合に含
有することができる緩衝剤としては、一般に点眼剤とし
て用いられているものであれば特に差し支えない。緩衝
剤は本発明の組成物を点眼剤とする場合に、該点眼剤の
pHを安定化する目的等で含有することができる。その
ような緩衝剤としては、例えば、リン酸一水素二ナトリ
ウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二カリウ
ムおよびリン酸二水素カリウムの如きリン酸系緩衝剤、
ホウ酸およびホウ酸ナトリウムの如きホウ酸系緩衝剤な
らびにトリスアミノメタンと希塩酸およびトリスマレー
トと希カセイソーダ液の如きトリス系緩衝剤等が挙げら
れる。これらは単独であるいは2種類以上併用すること
ができる。これら緩衝剤の濃度としては、0.001〜
5w/v%であるのが好ましく、0.01〜1w/v%
であるのがより好ましい。
【0019】 本発明の組成物を点眼剤とする場合に含
有することができる安定化剤としては、一般に点眼剤と
して用いられているものであれば特に差し支えない。安
定化剤は本発明の組成物を点眼剤とする場合に、該点眼
剤の有効成分を安定化する目的等で含有することができ
る。そのような安定化剤としては、例えばエチレンジア
ミン四酢酸二ナトリウム、クエン酸およびクエン酸塩等
が挙げられる。これらは単独であるいは2種類以上併用
することができる。これら安定化剤の濃度としては、
0.001〜5w/v%であるのが好ましく、0.01
〜1w/v%であるのがより好ましい。
【0020】 本発明の組成物を点眼剤とする場合に含
有することができる粘稠剤としては、一般に点眼剤とし
て用いられているものであれば特に差し支えない。粘稠
剤は本発明の組成物を点眼剤とする場合に、該点眼剤の
粘度を調製する目的等で含有することができる。そのよ
うな粘稠剤としては、例えば、グリセリン、エチレング
リコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコ
ールおよびポリビニルアルコールなどのポリオール類、
トレハロース、シュクロース、カルボキシメチルセルロ
ース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロースおよびシクロデキストリン等の糖質
類、カルボキシビニルポリマー、クエン酸塩およびエデ
ト酸塩等のポリカルボン酸/塩等が挙げられ、その他ヒ
アルロン酸塩、ポビドン等も含有することができる。こ
れらは単独であるいは2種類以上併用することができ
る。これら粘稠剤の濃度としては、0.001〜10w
/v%であるのが好ましく、0.01〜5w/v%であ
るのがより好ましい。
【0021】 本発明の組成物を点眼剤とする場合に含
有することができるpH調整剤としては、一般に点眼剤
として用いられているものであれば特に差し支えない。
pH調整剤は本発明の組成物を点眼剤とする場合に、該
点眼剤のpHを調製する目的等で含有することができ
る。そのようなpH調整剤としては、例えば、塩酸、ク
エン酸またはその塩、ホウ酸またはその塩、リン酸また
はその塩、酢酸またはその塩、酒石酸またはその塩、水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これ
らは単独であるいは2種類以上併用することができる。
本発明の組成物は、これらpH調整剤を適量添加し、目
的のpHに調製する。
【0022】 一方、本発明の組成物を点眼剤とする場
合には防腐剤を含有することもできる。その際、含有す
ることができる防腐剤としては、一般に点眼剤として用
いられているものであれば特に差し支えない。防腐剤は
本発明の組成物を点眼剤とする場合に、該点眼剤に防腐
効果を持たせる目的等で含有することができる。そのよ
うな防腐剤としては、例えばエチルパラベン、ブチルパ
ラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、
グルコン酸クロルヘキシジン、クエン酸およびホウ酸等
が挙げられる。これらは単独であるいは2種類以上併用
することができる。これら防腐剤の濃度としては、0.
0001〜0.1w/v%であるのが好ましく、0.0
01〜0.05w/v%であるのがより好ましい。
【0023】 しかしながら、一般にドライアイにより
生じる眼障害がある場合には、防腐剤を含有する点眼剤
を点眼することにより、さらに眼障害が悪化する可能性
があるため、防腐剤は含有しない方がより好ましい。ま
た、眼に障害を生じていない場合であっても、頻回点眼
を必要とする場合には、同様に防腐剤により眼に障害を
生じる可能性があるため、防腐剤を含有しない方がより
好ましい。なお、防腐剤を含有しない場合には、本発明
の点眼剤を1回の使用で使い捨てるタイプの容器、いわ
ゆる「ディスポ容器」に充填するのが好ましい。
【0024】 また、本発明の組成物を点眼剤とする場
合には、その他の成分として、眼科用剤として一般に用
いられる抗ヒスタミン剤、血管収縮剤、消炎・収斂剤、
潤滑剤、アミノ酸、抗アレルギー剤、ビタミン類、サル
ファ剤、局所麻酔剤および縮瞳剤等を含有することもで
きる。なお、これらの成分を含有する際には、患者の年
齢や症状等に応じて、有効成分である3−ヒドロキシ酪
酸の効果に影響がでない成分・濃度とする必要がある。
【0025】 また、本発明の組成物を点眼剤とする場
合には、各種成分を組み合わせてpH範囲をpH5〜8
とするのが好ましい。pH5以下の酸性またはpH8以
上のアルカリ性領域では眼刺激や眼障害を生じる可能性
があるので好ましくない。また、浸透圧については、眼
に対して安全であるように、150〜700mOsm.
の範囲とするのが好ましい。
【0026】 本発明の組成物を点眼剤とする場合に
は、眼科的に供与される範囲内であれば投与量が特に制
限されるものではなく、通常、1回につき1〜3滴を1
日数回程度投与するのが好ましい。
【0027】
【実施例】 以下、本発明を実施例および比較例により
具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
【0028】 実施例1 ラットドライアイモデルを用いて、本発明の有効成分で
あるD−3−ヒドロキシ酪酸(以下、HBAと略す)の
ドライアイにより生じる眼障害に対する効果を調べた。
【0029】 ラットドライアイモデルは以下のように
して作製した。まず、8週齢の雄性SDラットを、通常
環境下(温度:23±2℃、相対湿度60±10%)に
て1週間馴化した。馴化後、SDラットの角膜上皮中央
部を約0.4mm 程度円状に剥離した。その剥離した
SDラットを乾燥環境下(温度:23±2℃、相対湿
度:28±2%)にて飼育し、さらにその間においては
ラットに向けて扇風機にて風速2〜4m/sの送風を行
った。この方法により、ドライアイ症状に近いラットド
ライアイモデルを作製することができた。
【0030】 上記方法にて作製したラットドライアイ
モデルを用い、40mmol/Lおよび80mmol/
LのHBAをリン酸緩衝溶液(以下PBSと略す)に溶
解した点眼液(浸透圧300mOsm.、pH7.
4)、0.3%ヒアルロン酸ナトリウム配合の医薬品A
(以下、医薬品Aと略す)、20%ラット血清溶液、P
BS(浸透圧300mOsm.、pH7.4)を用い
て、それぞれの点眼液の角膜上皮剥離面積拡大抑制効果
について調査した。なお、点眼においては、各ラットド
ライアイモデルの左眼にコントロールとしてPBSを点
眼し、同個体の右眼に各種の点眼液を点眼した。また、
点眼は各点眼液を10μLずつとした。
【0031】 各種の点眼液は、ラットドライアイモデ
ル作成直後に1回目の点眼を行い、その後1時間おき
に、計12回点眼を行った。最後の点眼から1時間後
に、ラット前眼部に1%フルオレセインナトリウムを点
眼し、強制的に瞬目させた後、0.9%塩化ナトリウム
1mLで前眼部を2回洗浄し、余分なフルオレセインナ
トリウムを洗い流した。その後、コバルトブルーライト
をあて、写真撮影を行った。撮影した写真をスキャナー
にて取り込み、画像処理ソフト(Photoshop;
Adobe社製、NIH Image;NIH製)を用
いて解析し、フルオレセイン染色面積(pixel数)
を求めた。その面積を換算式(1pixel=0.00
133mm)にて換算し、換算後の値を角膜上皮剥離
面積とした。その結果を表1および表2に示す。なお、
1つの処理につき各12個体を用い、さらにその角膜上
皮剥離面積について、左眼と右眼での検定を行った。検
定は、対応のあるt検定を行った。また、表中の値は、
平均値±標準偏差で示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】 上記の結果より、左眼をPBS、右眼を
点眼なしとしたNo.1においては、検定においては有
意差はなかった。また、右眼をヒアルロン酸製剤である
医薬品Aで点眼したNo.4においては、医薬品AとP
BSにおいて有意差は見られなかった。一方、右眼を4
0mmol/L HBAで点眼したNo.2において
は、PBSに比べて有意に角膜上皮剥離面積拡大を抑制
しており、さらに右眼を80mmol/L HBAで点
眼したNo.3においても、PBSに比べて有意に角膜
上皮剥離面積拡大を抑制することが示された。
【0035】 また、No.3、No.4および20%
血清溶液を用いたNo.5のそれぞれで左眼(PBSを
点眼)の角膜上皮剥離面積と、右眼(各種の点眼液を点
眼)の角膜上皮剥離面積とを比較した。その結果、ヒア
ルロン酸製剤である医薬品Aでは、左眼に比べ85.7
%(14.3%の抑制)であったのに対し、80mmo
l/L HBAでは、左眼に比べ65.4%(34.6
%の抑制)であった。また、20%血清では、左眼に比
べ53.6%(46.4%の抑制)であった。これらの
結果より、D−3−ヒドロキシ酪酸は、ドライアイによ
り生じる眼障害を抑制する効果、特には角結膜の障害を
治療する効果を有しており、現在、対処療法として用い
られているヒアルロン酸製剤の点眼よりも優れた効果を
示した。また、血清点眼よりは若干劣るものの、その有
用性は確保され、本発明の有効成分であるD−3−ヒド
ロキシ酪酸は、ドライアイにより生じる眼障害の予防お
よび/または治療、特には角結膜の障害の予防および/
または治療のための組成物として有用であることが分か
った。
【0036】 実施例2 アポトーシスに起因するドライアイにより生じる眼障害
において、このアポトーシスに特徴的なクロマチン凝集
について、HBAを用いて調査した。なお、本実施例は
下記の方法にて行った。 実施例1に示した方法にてラットドライアイモデルを
作製し、該モデル作製直後に1回目の点眼を行い、その
後1時間おきに、計6回点眼を行った。なお、点眼液
は、80mmol/L HBA溶液(浸透圧300mO
sm.、pH7.4)およびPBS(浸透圧300mO
sm.、pH7.4)を使用した。また、点眼は各点眼
液を10μLずつとした。 最後の点眼を行った後、各ラットドライアイモデルの
角膜上皮細胞を採取し、該細胞にHoechst333
42(以下Hoと略す)色素をPBSに溶解し10μg
/mLとした溶液を、wellあたり100μL加え
て、COインキュベータ内にて30分間インキュベー
トした。 溶液を回収し、蛍光プレートリーダー(Applie
d Bio Systems社製)にて、励起波長36
0nm、蛍光波長450nmにおける各溶液の蛍光強度
を測定した。 測定後のサンプルを回収し、PBSで細胞を洗浄後、
ニュートラルレッド(以下Nrと略す)を199培地
(日水製薬社製)に溶解し0.005%とした溶液を、
wellあたり200μL加えて、COインキュベー
タ内にて3時間インキュベートした。 染色液を除去し、PBSで細胞を2回洗浄した後、室
温にて15分間、着色した細胞を1%酢酸・50%エタ
ノール溶液で処理し、Nrを抽出した。 抽出液を蛍光プレートリーダー(Applied B
io Systems社製)にて、励起波長535n
m、蛍光波長600nmにおける各溶液の蛍光強度を測
定した。 各溶液(Ho液およびNr液)の蛍光強度からブラン
クとして求めた各溶液の蛍光強度(Ho液のみおよびN
r液のみで測定した値)を引いたものをHo値およびN
r値とした。 無処置群のHo値およびNr値の平均値を1.0とし
た場合の、処置群の各個体のHo相対値およびNr相対
値を算出した。 Ho相対値をNr相対値で割り、各個体のHo/Nr
ratioを求めた。 上記の方法に従って行った結果を図1に示す。ここで、
Ho/Nr値は単位細胞あたりのクロマチン凝集度を示
す。また、無処置群ではHo/Nr値は1.0となり、
1.0より値が大きくなると、アポトーシスに起因する
ドライアイにより生じる眼障害が、拡大していることを
示している。さらに、1.0より値が小さくなると、ネ
クローシス(壊死)が起こっていることを示す。
【0037】 図1に示した結果より、80mmol/
L HBA溶液を点眼したラットドライアイモデルの角
膜上皮細胞は、PBSを点眼したラットドライアイモデ
ルの角膜上皮細胞と比べて、有意に単位細胞あたりのク
ロマチン凝集度が少ないことから、HBAは、ドライア
イにより生じる眼障害において見られるアポトーシスに
よる細胞死を抑制していることが分かった。すなわち、
本発明の有効成分であるD−3−ヒドロキシ酪酸は、ア
ポトーシスに起因するドライアイにより生じる眼障害の
予防および/または治療、特には角結膜の障害の予防お
よび/または治療のための組成物として有用であること
が分かった。
【0038】
【発明の効果】 本発明の組成物は、3−ヒドロキシ酪
酸および/またはその塩類を有効成分として含有するこ
とにより、アポトーシスに起因するドライアイにより生
じる眼障害の予防および/または治療をすることができ
る。さらには、上記有効成分を含有することにより、簡
便で且つ効果的に、アポトーシスに起因するドライアイ
により生じる眼障害、特には角結膜の障害の予防および
/または治療をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 HBAおよびPBS点眼処理後のラットドラ
イアイモデルにおける角膜上皮細胞のクロマチン凝集度
を示したグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 坪田 一男 千葉県船橋市西船5丁目26番7号 (72)発明者 樋口 明弘 千葉県柏市西山1丁目15番5号 Fターム(参考) 4C206 DA02 KA13 MA01 MA04 MA78 NA14 ZA33

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アポトーシスに起因するドライアイによ
    り生じる眼障害の予防および/または治療のための組成
    物であって、該組成物が3−ヒドロキシ酪酸および/ま
    たはその塩類を有効成分として含有することを特徴とす
    る組成物。
  2. 【請求項2】 3−ヒドロキシ酪酸がD−体であること
    を特徴とする請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 3−ヒドロキシ酪酸の塩類が、ナトリウ
    ム塩、カリウム塩、L−リジン塩、L−ヒスチジン塩お
    よびL−アルギニン塩からなる群より選ばれる少なくと
    も1種である請求項1または請求項2記載の組成物。
  4. 【請求項4】 3−ヒドロキシ酪酸および/またはその
    塩類の濃度が、0.1〜1000mmol/Lである請
    求項1〜請求項3のいずれかに記載の組成物。
  5. 【請求項5】 3−ヒドロキシ酪酸および/またはその
    塩類の濃度が、1〜150mmol/Lである請求項1
    〜請求項4のいずれかに記載の組成物。
  6. 【請求項6】 ドライアイにより生じる眼障害が、角結
    膜の障害である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の
    組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005032534A1 (ja) * 2003-10-06 2005-04-14 Ophtecs Corporation 涙液異常の治療のための眼科用組成物
JP2019070054A (ja) * 2013-12-25 2019-05-09 株式会社Lttバイオファーマ ドライアイ治療用点眼剤

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