JP2003303978A - 光電変換素子および光電変換装置 - Google Patents

光電変換素子および光電変換装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通信帯の高速光パルス信号を高周波もしくは
電磁波の信号に直接変換する光電変換素子および光電変
換装置を提供すること。 【解決手段】 基板12と、基板12の表面に設けら
れ、高速光パルス信号を受光して高周波に変換する受光
体2と、を備え、受光体2が、少なくともカーボンナノ
チューブからなることを特徴とする光電変換素子、およ
びそれを有する光電変換装置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光信号処理、光通
信、高周波信号処理、あるいは高周波信号通信におい
て、高速光パルスを高周波もしくは電磁波に変換する光
電変換素子および光電変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、通信分野では、基幹通信網はもと
より、各ユーザーまでの通信網までが光通信に替わろう
としている。しかし、携帯端末や携帯電話に代表される
通信端末では、高周波通信が今後も重要となり、通信網
全体は、光通信網と高周波通信網が混在する形態を取ら
ざるを得ない。
【0003】現在、光通信および高周波通信では、これ
らの信号が一度電気信号に変換されて、増幅やスイッチ
ングが行われている。高速の光変調器やレーザーの光変
調技術も存在する。また、半導体や酸化物超伝導体にフ
ェムト秒の高速パルス光を照射し、波長がTHz程度の
電磁波を発生させる技術もある。
【0004】半導体や酸化物超伝導体によるTHz電磁
波の発生は、100GHz以上の高速領域では有望であ
る。阪井らの報告によれば、低温成長のGaAs薄膜光
スイッチでは、キャリアの寿命が1ps以下で、有望な
光スイッチである。
【0005】一般に、半導体の多くは、バイアス電圧を
印加した場合、表面近傍のエネルギーバンドが曲がった
状態にあり、空乏層を形成し、表面電場が生じる。この
表面電場が生じている半導体表面にフェムト秒レーザー
パルスを照射すると、レーザー光により誘起された電子
と正孔とが、半導体表面の電場で加速されることにより
サージ電流が流れ、双極子放射によりTHz電磁波が発
生する。電磁波の電場成分は、サージ電流の時間微分に
比例し、半導体表面の分極率の2回時間微分に比例す
る。バンドギャップの広いInPやGaAsでは、誘起
される表面電場が大きく、さらに、表面付近での二次の
非線形光学効果による入射光パルスの光整流によるTH
zパルス波も同時に放射される。
【0006】一方、バンドギャップの狭いInSbやI
nAsなどでは、誘起される表面電場は大きくなく、フ
ォトデンバー効果と呼ばれる光パスルで表面を励起した
時に生じる電子と正孔の拡散速度の差によって表面電流
が流れ、THzパルス波を生じるとともに、光整流効果
によるTHzパルス波の放射も起きる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、光変調器やレ
ーザーの光変調技術は、いずれも、数十GHz程度の速
度が上限で、数百GHz帯や数THzといった高速応答
はできない。また、半導体光スイッチは、入射波長が8
00nm近傍の光パルスしか使用できず、実際の通信帯
である波長が1.5μm程度の光については適用できな
い。したがって本発明の目的は、通信帯の高速光パルス
信号を高周波もしくは電磁波の信号に直接変換する光電
変換素子および光電変換装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の本発
明により達成される。すなわち本発明の光電変換素子
は、基板と、該基板の表面に設けられ、高速光パルス信
号を受光して高周波に変換する受光体と、を備え、前記
受光体が、少なくともカーボンナノチューブからなるこ
とを特徴とする。
【0009】本発明の光電変換素子によれば、前記カー
ボンナノチューブに対して、例えば波長1μm以上2μ
m以下の光パルスからなる光信号を照射すると、高周波
もしくは電磁波に変換されて放出される。また、本発明
の光電変換素子によれば、1MHz以上程度は勿論のこ
と、10THzもの高周波の光信号に対しても高速応答
し得るものとなる。
【0010】より具体的には、前記カーボンナノチュー
ブの両端ないしその周辺にそれぞれ接続される一対の電
極を備えていれば、当該電極間に高周波もしくは電磁波
が生成し、一方、電極が接続されていない、あるいは電
極が電気回路に組み込まれていない状態であれば、高速
光パルス信号から変換された高周波もしくは電磁波がさ
らに空気中に放出される。この原理については、明らか
ではないが、バンドギャップが狭く、移動度の高いIn
Asが微粒子となることで、光に対する応答速度が向上
し、高速光パルスに応じた電磁波を放出するものと推定
される。さらにカーボンナノチューブが効率良く電磁波
を吸収することで、高速光パルス信号の電気光変換が実
現されるものと推定される。
【0011】高速光パルスから高周波もしくは電磁波へ
の変換効率(以下、「光電変換効率」と称する。)をよ
り向上させるには、前記カーボンナノチューブと電気的
に接触した状態で、前記受光体としてさらに半導体微粒
子を配置することが好ましく、その位置としては、前記
基板の表面であって、前記一対の電極の間とすることが
好ましい。当該半導体微粒子としては、InAs、Ga
As、InP、InSb、GaN、InN、およびGa
InNからなる群より選ばれるいずれか1の半導体微粒
子を含むことが好ましい。
【0012】前記カーボンナノチューブは、1本であっ
てもよいが、複数本であることが光電変換効率の観点か
らは好ましい。当該カーボンナノチューブとしては、多
層カーボンナノチューブであることが好ましい。多層カ
ーボンナノチューブとすることで、ハンドリングが容易
になり、製造効率が向上するのに加え、各層が並列的な
電気伝送路として機能するため、高速光パルスの変換効
率が向上する。
【0013】前記カーボンナノチューブとしては、その
直径が、0.3nm以上100nm以下であることが好
ましく、その長さが、0.1μm以上100μm以下で
あることが好ましい。また、前記電極としては、Au、
Pt、Ag、Cu、Ta、Nb、Tiからなる群より選
ばれるいずれか1の材料を含むことが望ましい。前記一
対の電極の間隙としては、1nm以上100μm以下で
あることが好ましい。前記カーボンナノチューブと、そ
れが接続する電極との間の接続抵抗値としては、10M
Ω以下であることが好ましい。
【0014】前記基板が、その少なくとも前記カーボン
ナノチューブが配される部位に、分散除去層が形成され
てなることが好ましく、当該分散除去層としては、半導
体超格子層とすることが好ましく、Ga、As、Inお
よびPよりなる群から選ばれる2以上の元素からなる半
導体超格子層からなることが好ましい。
【0015】前記カーボンナノチューブの少なくとも一
部は、保護層により覆われていることが好ましい。この
保護層は、誘電体であることが好ましい。本発明の光電
変換素子は、周波数として1MHz以上10THz以下
の高速光パルスを、また、波長として1μm以上2μm
以下の高速光パルスを、高周波の電磁波に変換すること
ができる。
【0016】一方、本発明の光電変換装置は、上記本発
明の光電変換素子を有し、該光電変換素子により変換さ
れた高周波を電気信号に変換する高周波検出器を備える
ことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の詳細を好ましい
実施の形態を挙げて詳細に説明する。 <本発明の概要>図1および図2に、本発明の光電変換
素子の態様を、カーボンナノチューブ1本のみ用いた例
で、模式断面図にて示す。図1に示される光電変換素子
は、高速光パルスを高周波に変換するものとして用いら
れる。一方、図2に示される光電変換素子は、高速光パ
ルスを電磁波に変換するものとして用いられる。
【0018】図1において、2はカーボンナノチューブ
であり、支持板10に分散除去層8が形成された基板1
2の、分散除去層8が形成された側の表面に設けられた
一対の電極6aおよび6bに橋渡しされた状態で配置さ
れる。また、4は半導体微粒子であり、基板12の分散
除去層8が形成された側の表面であって、一対の電極6
aおよび6bの間に、カーボンナノチューブ2と電気的
に接触した状態で配置されている。
【0019】一方、図2に示される光電変換素子は、図
1に示される光電変換素子から、一対の電極6aおよび
6bを除した構成となっており、相互に電気的に接触し
た状態のカーボンナノチューブ2と半導体微粒子4と
が、支持板10に形成された分散除去層8の表面に配置
されている。
【0020】カーボンナノチューブ2は、外気から遮断
する目的、および/または、物理的に保護する目的で形
成される、保護層により覆われていることも好ましい態
様である。以下、本発明の各構成要素について詳述す
る。
【0021】(カーボンナノチューブ)一般にカーボン
ナノチューブとは、炭素の6角網目のグラフェンシート
が、チューブの軸に平行に管を形成したものを言う。カ
ーボンナノチューブは、さらに分類され、グラフェンシ
ートが1枚の構造のものは単層カーボンナノチューブ
(シングルウォールカーボンナノチューブ)と呼ばれ、
一方、多層のグラフェンシートから構成されているもの
は多層カーボンナノチューブ(マルチウォールカーボン
ナノチューブ)と呼ばれている。どのような構造のカー
ボンナノチューブが得られるかは、合成方法や条件によ
ってある程度決定される。
【0022】本発明において、主要な構成要素であるカ
ーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブで
も、二層以上の多層カーボンナノチューブでも構わない
が、多層カーボンナノチューブであることが好ましい受
光部を多層カーボンナノチューブとすることで、ハンド
リングが容易になり、製造効率が向上するのに加え、各
層が並列的な電気伝送路として機能するため、高速光パ
ルス信号の変換効率が向上し、光電変換効率が向上す
る。
【0023】また、単層カーボンナノチューブの変種で
あるカーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部ま
で連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナ
ノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型
のもの)、カーボンナノビーズ(中心にチューブを有
し、これがアモルファスカーボン等からなる球状のビー
ズを貫通した形状のもの)、カップスタック型ナノチュ
ーブ、カーボンナノホーンやアモルファスカーボンで外
周を覆われたカーボンナノチューブ等、厳密にチューブ
形状をしていないものも、本発明においてカーボンナノ
チューブとして用いることができる。
【0024】さらに、カーボンナノチューブ中に金属等
が内包されている金属内包ナノチューブ、フラーレンま
たは金属内包フラーレンがカーボンナノチューブ中に内
包されるピーポッドナノチューブ等、何らかの物質をカ
ーボンナノチューブ中に内包したカーボンナノチューブ
も、本発明においてカーボンナノチューブとして用いる
ことができる。
【0025】以上のように、本発明においては、一般的
なカーボンナノチューブのほか、その変種や、種々の修
飾が為されたカーボンナノチューブ等、いずれの形態の
カーボンナノチューブでも、その電気特性および高周波
特性等から見て問題なく使用することができる。したが
って、本発明における「カーボンナノチューブ」には、
これらのものが全て、その概念に含まれる。
【0026】これらカーボンナノチューブの合成は、従
来から公知のアーク放電法、レーザーアブレーション
法、CVD法のいずれの方法によっても行うことがで
き、本発明においては制限されない。これらのうち、高
純度なカーボンナノチューブが合成できるとの観点から
は、磁場中でのアーク放電法が好ましい。
【0027】用いられるカーボンナノチューブの直径と
しては、0.3nm以上100nm以下であることが好
ましい。カーボンナノチューブの直径が、当該範囲を超
えると、合成が困難であり、コストの点で好ましくな
い。カーボンナノチューブの直径のより好ましい上限と
しては、30nm以下である。
【0028】一方、一般的にカーボンナノチューブの直
径の下限としては、その構造から見て、0.3nm程度
であるが、あまりに細すぎると合成時の収率が低くなる
点で好ましくない場合もあるため、1nm以上とするこ
とがより好ましく、3nm以上とすることがさらに好ま
しい。
【0029】用いられるカーボンナノチューブの長さと
しては、0.1μm以上100μm以下であることが好
ましい。カーボンナノチューブの長さが、当該範囲を超
えると、合成が困難、もしくは、合成に特殊な方法が必
要となりコストの点で好ましくなく、当該範囲未満であ
ると、図1に示す構成のように一対の電極を備える場
合、電極に接続することが困難になる点で好ましくな
い。カーボンナノチューブの長さの上限としては、10
μm以下であることがより好ましく、下限としては、1
μm以上であることがより好ましい。
【0030】電極に接続されるカーボンナノチューブの
本数は、図1および図2ではいずれも1本のものを例示
しており、勿論1本でも光電変換効果を発揮するが、複
数本でも構わない。光電変換効率を高めるには、この本
数は多い方が好ましい。
【0031】(半導体微粒子)光電変換効率をより向上
させるには、前記カーボンナノチューブと電気的に接触
した状態で、受光体として半導体微粒子を配置すること
が好ましい。半導体微粒子を配置することで、高速光パ
ルスを直接、かつ高い効率で高周波もしくは電磁波に変
換することができる。
【0032】当該半導体微粒子としては、特に制限され
ないが、InAs、GaAs、InP、InSb、Ga
N、InN、およびGaInNからなる群より選ばれる
いずれか1の半導体微粒子を含むことが好ましく、なか
でもInAsもしくはInSbの半導体微粒子が好まし
い。
【0033】当該半導体微粒子の直径(球でない場合に
は、球相当とした場合の直径)としては、0.1nm以
上100nm以下の範囲が好ましく、2nm以上10n
m以下の範囲がより好ましい。当該半導体微粒子と前記
カーボンナノチューブとは、電気的に接触した状態で、
受光体として機能する。ここで電気的に接触した状態と
は、物理的に接触している場合は勿論のこと、物理的に
は離間していても、電気的に導通可能な程度に近接して
いることを指す。
【0034】かかる半導体微粒子が配置される位置とし
ては、一対の電極を有する場合、基板の表面(図1およ
び図2に示すように、支持板10に分散除去層8が形成
されている場合には、さらにその上層として。本発明に
おいて、「基板の表面」といった場合に同様。)であっ
て、前記一対の電極(6a,6b)の間とすることが好
ましい。当該半導体微粒子と前記カーボンナノチューブ
との位置関係としては、どちらが上下であっても構わな
いし、双方とも基板の表面に位置していてもよい。すな
わち、図1や図2の態様では、半導体微粒子4が支持板
10(さらには分散除去層8)の表面に配され、その上
にカーボンナノチューブが位置しているが、この関係に
限定されるものではない。
【0035】配置される半導体微粒子の量としては、当
該半導体微粒子からなる層(微粒子層)の厚さとして、
0.1nm以上1μm以下の範囲が好ましく、1nm以
上10nm以下の範囲がより好ましい。
【0036】(電極)本発明の光電変換素子について、
前記受光体としてのカーボンナノチューブが受光した高
速光パルス信号を高周波に変換させるには、図1に示す
構成のように、カーボンナノチューブの両端ないしその
周辺がそれぞれ接続する一対の電極が必要となる。当該
電極を端子として、変換された高周波を外部回路に取り
出すことができる。本発明の光電変換素子について、前
記高速光パルス信号を電磁波に変換させる場合には、か
かる一対の電極は必須ではないが、配されていても構わ
ない。一対の電極を配することにより、生じる電磁波を
放射するいわゆるアンテナの機能の一部を当該一対の電
極に担わせることができる。また、さらに電極に他の放
射アンテナを取り付けてもよい。
【0037】本発明において電極は、導電性を有するも
のであれば制限なく、従来公知の材料を問題なく使用す
ることができるが、Au、Pt、Ag、Cu、Ta、N
b、Tiからなる群より選ばれるいずれか1の材料を含
むことが好ましい。これら材料は、単独のものであって
もよいが、2以上の材料からなる合金や、これらの材料
の1以上と他の金属との合金であっても好ましいもので
ある。これら材料は、電導性が良好であり、加工性や安
定性も高く、従来から電子デバイスの電極として用いら
れている。また、電極を基板表面に形成する際に、電極
と基板との接着を十分に確保できない場合には、電極と
基板との間に接着層を設けることもできる。
【0038】図1に示されるように、基板12の表面に
一対の電極6a,6bが設けられる場合、両者の間隙
(電極間距離)としては、1nm以上100μm以下と
することが好ましい。電極間距離が大きすぎると、それ
を橋渡しし得る長さのカーボンナノチューブの調達が困
難である点で好ましくない。一方、電極間距離が小さす
ぎると、実質的に両電極が導通状態になってしまう場合
があり、また、電極作製が極めて困難となり、コストの
点で好ましくない。電極間距離の上限としては10μm
以下とすることがより好ましく、電極間距離の下限とし
ては10nm以上とすることがより好ましく、50nm
以上とすることがさらに好ましい。本発明において電極
の厚みとしては、特に制限はないが、10nm〜100
μmの範囲が適当であり、50nm〜1μmの範囲がよ
り好ましい。
【0039】なお、本発明において、電極は、図1に示
されるように明確に電極として形成されていることは要
求されない。例えば、プリント基板におけるプリント配
線を一方もしくは双方の電極として、これにカーボンナ
ノチューブを接続しても構わないし、その他リード線や
フレーム等、あらゆるものにカーボンナノチューブを接
続して、これらを電極と見立てることができる。
【0040】これら一対の電極には、前記カーボンナノ
チューブの両端ないしその周辺が、それぞれ接続されて
いる。ここで「カーボンナノチューブの両端ないしその
周辺」とは、カーボンナノチューブの両方の端部から、
長手方向における中途までのいずれかの部位、を意味
し、それが「接続している」とは、かかるいずれかの部
位において、一部でも接続していれば足りることを意味
し、かかる部位の全てが接続している必要はない。ま
た、ここで言う「接続」とは、電気的な接続を意味し、
必ずしも物理的に接続されることを要求するものではな
い。
【0041】なお、「長手方向における中途」の位置の
範囲については、特に制限はなく、例えばカーボンナノ
チューブの長手方向におけるほとんどの部位が一方の電
極と接続していても(すなわち、「中途」の位置が、接
続する側の端部よりも他方の端部からの方が近くて
も)、全体として、カーボンナノチューブにより一対の
電極が橋渡しされていれば構わない。
【0042】前記カーボンナノチューブと、それが接続
する電極との間の接続抵抗値としては、10MΩ以下で
あることが好ましく、1MΩ以下であることがより好ま
しい。当該接続抵抗値が大きすぎると、導電性が不十分
となるため好ましくない。なお、当該接続抵抗値は、小
さければ小さいほど好ましいため、好適な下限値は存在
しないが、カーボンナノチューブと電極の場合、一般的
には10kΩ程度が限界である。
【0043】前記カーボンナノチューブと、それが接続
する電極との成す角としては、10°以上であることが
好ましく、30°以上であることがより好ましく、45
°以上であることがさらに好ましく、垂直であることが
最も好ましい。この成す角を垂直に近づけることは、カ
ーボンナノチューブを2つの電極間に配する場合、当該
2つの電極間の最短距離でカーボンナノチューブを橋渡
しする状態となり、カーボンナノチューブの長さを短く
することができる点で好ましい。
【0044】ここで「成す角」とは、カーボンナノチュ
ーブと電極とが接続している箇所において、カーボンナ
ノチューブと電極との間に形成される角のことを言う。
直線状のカーボンナノチューブと矩形の電極とを想定し
て、成す角について説明すると、カーボンナノチューブ
の一方の端部において、その端部から長手方向の中途ま
でが、電極の平面に直線状に当接し、電極の縁端から突
出している場合には、前記電極の縁端と前記カーボンナ
ノチューブとの間に形成される最小の角度のことを言
う。
【0045】カーボンナノチューブが湾曲している場合
や、カーボンナノビーズのように直線状でないものを用
いた場合等、明確な直線相互の関係として角度を求める
ことが困難な場合には、上記成す角は、カーボンナノチ
ューブおよび電極の当接部と非当接部との境界におい
て、必要に応じて接線を引いて求められる。
【0046】カーボンナノチューブと電極との接続は、
図1のように両者が線で当接する場合には、特に固定し
なくてもある程度の接着が期待できるが、より強固な接
続を企図して、あるいは、両者の当接部が短い場合に
は、両者を何らかの方法で固定することが望ましい。具
体的な固定方法としては、特に制限はないが、例えば、
固定対象部位に電子線を照射することにより、アモルフ
ァスカーボンが照射部に堆積し、電極とカーボンナノチ
ューブとを固定化する方法が挙げられる。また、カーボ
ンナノチューブの製造時、電極を触媒として、これに直
接カーボンナノチューブを成長させる、あるいは、電極
に触媒金属を固定し、これにカーボンナノチューブを成
長させる、といった方法により、カーボンナノチューブ
の製造と共にカーボンナノチューブと電極とを固定化す
る方法も挙げられる。
【0047】(基板)本発明において、必要に応じて電
極が形成される基板としては、特に制限はないが、変換
対象となる高速光パルス信号を基板側から照射する場合
には、当該高速光パルス信号の波長の光を透過する材質
であることが要求される。また、少なくとも前記カーボ
ンナノチューブが配される側の表面が、絶縁性であるこ
とが要求される。これら要件を満たす範囲内で、従来公
知の電子基板をいずれも用いることができる。
【0048】前記カーボンナノチューブが配される側の
表面の具体的な抵抗率としては、1×106Ω・cm以
上であることが好ましく、5×106Ω・cm以上であ
ることがより好ましい。前記表面の抵抗率が1×106
Ω・cm未満では、実質的に導電性に近くなり、例えば
図1の場合、電極6a−6b間の絶縁が確保できなくな
るため、好ましくない。一方、前記表面の抵抗率の上限
に制限はないが、一般的には1×1012Ω・cm程度で
ある。
【0049】また、信号光を基板側から入射させる場
合、光の分散により遅延が生じてしまい、パルス信号な
どが崩れてしまう場合があるため、基板は分散除去層が
形成されてなることが好ましい。
【0050】図1および図2の構成の光電変換素子を例
に挙げて、好ましい基板の構成を説明する。図1および
図2に示されるように、基板12は、少なくともカーボ
ンナノチューブ2が配される部位に、分散除去層8が形
成されてなる。
【0051】ここで、「カーボンナノチューブ2が配さ
れる部位」とは、図1のようにカーボンナノチューブ2
が電極6a,6bに橋渡しされている場合には、基板1
2の表面において、電極6a,6bではなくカーボンナ
ノチューブ2が、接触の有無は問わず上方(地球の重力
に関係なく、基板12の表面を基準として相対的に上
方。以下同様。)に位置している部位をいう。図2のよ
うに電極を有しない場合にも、基板12の表面におい
て、カーボンナノチューブ2が、接触の有無は問わず上
方に位置している部位をいう。以上の解釈においては、
半導体微粒子4の存在は考慮しない。
【0052】支持板10は、本例ではSドープInP基
板を用いているが、これに限定されるものではない。支
持板の厚みとしては、形状保持性が十分となるように、
用いる材料により適宜調整すればよく、通常は、一般の
電気配線基板と同様の範囲から適宜選択される。
【0053】分散除去層8の材料は、本例ではInP
(アンドープ)を用いているが、これに限定されるもの
ではない。分散除去層8の材料としては、光の分散を除
去する機能を有する材料であればよく、支持板10との
密着性が確保しやすいものが好ましい。光の分散を除去
する機能を有する材料としては、半導体超格子層が好ま
しいものとして例示される。
【0054】半導体超格子層を形成する材料としては、
Ga、As、InおよびPよりなる群から選ばれる2以
上の元素からなるものが好ましく、本例のようにInP
が特に好ましい。これら材料は、アンドープの状態で用
いられる。なお、このように基板12の最表面に分散除
去層8を形成することで、支持板10の導電性の有無に
かかわらず、基板12に電気的絶縁性を付与することが
できる。
【0055】前記分散除去層の厚さとしては、100n
m以上10μm以下であることが好ましく、500nm
以上2μm以下であることがより好ましい。前記分散除
去層が薄すぎると、分散除去効果が薄れ、逆に厚すぎる
と、光の散乱や吸収が大きくなるので、それぞれ好まし
くない。
【0056】(保護層)前記カーボンナノチューブの少
なくとも一部は、保護層により覆われていることが望ま
しい。図3は、図1に示される本発明の光電変換素子に
保護層を形成した状態を示す断面図である。図3におい
ては、カーボンナノチューブ2全体を覆い、かつ電極6
a,6bの表面にまで及ぶように、保護層14が形成さ
れている。また、図4は、図2に示される本発明の光電
変換素子に保護層を形成した状態を示す断面図である。
図4においても、カーボンナノチューブ2全体を覆うよ
うに、保護層14が形成されている。
【0057】この保護層14としては、誘電体であるこ
とが好ましい。保護層として好ましい誘電体としては、
外気遮断機能あるいは機械的保護機能の観点から、酸化
シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化チタ
ン、酸化ニオブ、ニオブ酸リチウム、チタン酸ストロン
チウム、ダイヤモンド等の無機物や、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ア
ミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタ
ン、ポリスチレン等の各種樹脂を挙げることができる。
【0058】保護層は、図3および図4に示す保護層1
4のように、カーボンナノチューブ2全体を覆うように
形成されることが好ましいが、カーボンナノチューブの
少なくとも一部が覆われていれば構わない。一部さえ覆
われていれば、当該覆われた部分について、外気の遮断
あるいは機械的な保護が期待できる。なお、外気の遮断
について、完全密閉であることは要求されないが、勿論
完全密閉であることが好ましい。保護層の厚みとして
は、その材料の選択により異なり一概には言えないが、
概して100nm〜0.1mmの範囲とすることが好ま
しい。
【0059】<本発明の光電変換素子の作製>以上説明
した本発明の光電変換素子の作製方法は、特に限定され
ない。分散除去層が形成された基板表面に、カーボンナ
ノチューブの他、一対の電極および半導体微粒子を配す
る具体例を以下に列記するが、本発明はこれらに限定さ
れるものではない。
【0060】適当な支持板の表面に分散除去層を形成す
る方法としては、半導体超格子層を形成するためには、
有機気相法やハロゲン化学気相成長法を採用してエピタ
キシャル成長させることができる。基板の表面に電極を
形成する方法としては、マスク蒸着法が簡便であるが、
より精密に形成したいとき、特に一対の電極を形成する
場合、両電極の間隙をより狭いギャップとしたいときに
は、電子線リソグラフィー法によることが望ましい。
【0061】形成した1つの電極あるいは一対の電極間
に、半導体微粒子の層を形成するには、各種蒸着法が挙
げられる。具体的には、分子線ビーム蒸着法が、微粒子
の粒径や微粒子層の膜厚の制御の点で好ましい。
【0062】形成した1つの電極あるいは一対の電極間
に、受光体として機能させるカーボンナノチューブを配
置させるには、走査電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡で
見ながら、マニピュレータを用いてカーボンナノチュー
ブを直接並べる方法や、カーボンナノチューブを適当な
分散媒に分散させ、その分散液を一対の電極間に滴下し
乾燥する方法等が挙げられる。特に、一対の電極間にカ
ーボンナノチューブを高配向させたい場合には、前記分
散液を一対の電極間に滴下させた後、当該一対の電極間
に電場を与えて配列させる方法が挙げられる。当該配列
させる方法について、図5を用いて説明する。
【0063】図5は、一対の電極間に電場を与えてカー
ボンナノチューブを配列させる方法を説明するための模
式平面図であり、(a)〜(c)の順に時系列で示して
いる。まず、カーボンナノチューブを適当な分散媒に分
散させて分散液を調製する。使用可能な分散媒に特に制
限はないが、例えばイソプロピルアルコールやジメチル
ホルムアミド等が好ましいものとして例示可能である。
得られた分散液を、図5(a)に示すように電極16
a,16b間に滴下して、分散液18を両電極間に橋渡
しさせた状態とする。
【0064】次に、図5(b)に示すように、電極16
a,16b間に高周波装置RFにより高周波を印加しつ
つ、分散液18中の分散媒を揮発させて、カーボンナノ
チューブ2を電極16a,16b間で配列させる。する
と、図5(c)に示すように、カーボンナノチューブは
電極16a,16bに対して直交する方向に整列する。
このとき印加する高周波の波長としては、50MHz程
度である。さらに、図5(c)に示すように、電極16
a,16b間に直流電源装置DCにより2〜5V程度の
直流電圧を印加することで、カーボンナノチューブ2の
うち、金属性のものを焼き切り、半導体性の物のみを残
す。
【0065】以上のようにして、電極16a,16b間
に、カーボンナノチューブを配列させることができる。
当該方法については、”Enginnering Ca
rbon Nanotubes and Nanotu
be Circuits Using Electri
cal Breakdown”Science,vo
l.292,p.706〜709,(2001年)に詳
細が記されており、当該方法をそのまま適用することが
できる。
【0066】<本発明の光電変換素子の用途>以上説明
した本発明の光電変換素子は、高速光パルスを直接高周
波もしくは電磁波に変換する素子として、光信号処理、
光通信、高周波信号処理、あるいは高周波信号通信にお
いて、用いることができる。したがって、例えば光ファ
イバーにより得られる高速光パルス信号から、必要に応
じて増幅した上で、本発明の光電変換素子により直接、
高周波あるいは電磁波による各種検出装置で検出して、
利用することができる。
【0067】本発明においては、変換対象となる高速光
パルスの周波数としては、1MHz以上10THz以下
の範囲のものが対象となり、特に100MHz以上1T
Hz以下の範囲のものについて好適に光電変換すること
ができる。また、本発明においては、変換対象となる高
速光パルスの波長が、1μm以上2μm以下の範囲のも
のが対象となり、特に0.4μm以上1.8μm以下の
範囲のものについて好適に光電変換することができる。
【0068】本発明の光電変換素子は、それにより変換
された高周波を電気信号に変換する高周波検出器を備え
る光電変換装置に適用することで、本発明の光電変換装
置とすることができる。このとき用いることができる高
周波検出器としては、光電変換後の高周波を検地しうる
ものであれば特に制限はなく、従来公知のものを用いる
ことができる。
【0069】
【実施例】次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的
に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により限定
されるものではない。 (実施例1)本実施例では、カーボンナノチューブの本
数が複数であることを除き、図1に示す構造と同様の光
電変換素子を作製した。
【0070】まず、サイズ20mm×20mmで厚さ5
00μmのSドープn型InP基板((100)面)を
アルゴンビームスパッタリング法で約30nm程度スパ
ッタエッチングした。その後、H2SO4:H2O:H2
2=3:1:1(質量比)溶液で約80秒間(温度25
℃に保持)化学エッチングを行い、超純水で洗浄後、イ
ソプロピルアルコール乾燥を行い、支持板10とした。
次いで、ハロゲン化学気相成長法で、アンドープInP
層(厚さ約1μm)をエピタキシャル成長させて、分散
除去層8を形成した。分散除去層8の上に、フォトレジ
ストとマスクアライナー露光装置で平行電極用パターン
(サイズ500μm×200μm)を形成させ、電子ビ
ーム蒸着法でAuを100nmの厚さで堆積させ、電極
6a,6bを形成した。電極6a,6bの電極間距離は
3μmとした。さらに、分子線ビーム蒸着法で電極6
a,6b間に、直径約20nmのInAs微粒子(半導
体微粒子4)からなる層(厚さ100nm)を形成させ
た。
【0071】次に、アーク放電法で作製した平均直径約
3nmの単層カーボンナノチューブの複数本を、電極6
a,6b間に橋渡しする状態で接続した。このとき、高
い配向性を得るために、カーボンナノチューブをイソプ
ロピルアルコール水溶液(イソプロピルアルコール:水
=10:1(質量比))に濃度10mg/lで分散させ
分散液を調製し、この分散液を電極6a,6b間に1
滴、滴下し、50MHzの高周波(peak to p
eak電圧150V)を印加した。カーボンナノチュー
ブを電極に接続した状態の走査電子顕微鏡(SEM)像
(倍率約30000倍)を図6に示す。以上のようにし
て、本実施例の光電変換素子を得た。
【0072】得られた本実施例の光電変換素子を図7に
示す光学系および測定系の中に組み込み、光電変換特性
を測定した。図7において、Mはミラー、HMはハーフ
ミラー、AOは音響光変調器を表し、X1が本実施例の
光電変換素子である。レーザー光源から発せられた超高
速パルス光は、時間遅延系でパルス幅が調節された上
で、光電変換素子X1の基板側から、ほぼ全反射する角
度で照射される。また、前記超高速パルス光は、その一
部がハーフミラーHMを透過して音響光変調器を経由し
て検出器に供されるようになっており、これにより超高
速パルス光の検出タイミングを調整する構成となってい
る。レーザー光源には、ファイバーレーザー(IMRA
社、Femtolight、出力30mW)を用い、こ
こから発せられる前記超高速パルス光は、波長λ=15
32nm、パルス幅0.55psのものとした。
【0073】このとき、発生した電磁波を検出器で検出
し、これをロックインアンプで測定した電流値(イベン
ト信号)と、時間との関係を示すグラフを図8に示す。
図8のグラフにおいて、横軸は時間を、縦軸は、測定系
で測定された電流値(任意単位)を、それぞれ示すもの
である。なお、図8のグラフにおいて、折れ線Yは照射
された超高速パルス光のパルスを模式的に示すものであ
り、縦軸の電流値との相関はない。
【0074】図8のグラフから、光パルスに応じた高周
波信号のイベントが検出されており、サブピコ秒の光パ
ルス信号が高周波信号に、良好なSN比で変換されてい
ることがわかる。
【0075】(実施例2)本実施例では、各要素の材質
等が異なることを除き、実施例1と同様の構造の光電変
換素子を作製した。ただし、支持板(石英基板)表面に
形成される層は、分散除去層ではなく、誘電体層として
の窒化シリコン層である。また、窒化シリコン層表面に
金電極を直接形成しようとすると、接着性が十分でない
ため、Ti層を接着層として間に挟んだ。
【0076】まず、サイズ10mm×10mmで厚さ5
00μmの石英基板の片面に、窒化シリコン層(厚さ2
00nm)をプラズマ化学気相成長法で成長させて、最
表面層を形成した。次いで、Ti層を接着層とする一対
のAu電極(Ti/Au電極、Ti層の厚さ100n
m、金層の厚さ300nm)を形成した。一対のTi/
Au電極の形成は、実施例1と同様に電子ビーム蒸着法
で行った。電極サイズは500μm×200μm、電極
間距離は3μmとした。さらに一対の電極間に、実施例
1と同様にして、直径約20nmのInAs微粒子(半
導体微粒子4)からなる層(厚さ100nm)を形成さ
せた。次に、実施例1と同様にして、単層カーボンナノ
チューブの複数本を、一対の電極間に橋渡しする状態で
接続した。以上のようにして、本実施例の光電変換素子
を得た。
【0077】得られた本実施例の光電変換素子を図9に
示す光学系および測定系の中に組み込み、光電変換特性
を測定した。図9における各符号は図7と同様であり、
X2が本実施例の光電変換素子である。レーザー光源か
ら発せられた超高速パルス光は、時間遅延系でパルス幅
が調節され、音響光変調器を経由した上で、光電変換素
子X2の基板側から、ほぼ全反射する角度で照射され
る。音響光変調器の経由により、超高速パルス光の検出
タイミングを調整する構成となっている。レーザー光源
には、ファイバーレーザー(IMRA社、Femtol
ight、出力30mW)を用い、ここから発せられる
前記超高速パルス光は、波長λ=1532nm、パルス
幅0.55psのものとした。
【0078】このとき、発生した電磁波を検出器で検出
し、これをロックインアンプで測定した電流値(イベン
ト信号)と、時間との関係を示すグラフを図10に示
す。図10のグラフにおいて、横軸は時間を、縦軸は、
測定系で測定された電流値(任意単位)を、それぞれ示
すものである。
【0079】図10のグラフから、光パルスに応じた高
周波信号のイベントが検出されており、サブピコ秒の光
パルス信号が高周波信号に、良好なSN比で変換されて
いることがわかる。
【0080】(比較例1)本比較例では、カーボンナノ
チューブを配置せず、受光体としてInAs微粒子のみ
を用いたこと以外は、実施例1と同様の構造の光電変換
素子を作製した。すなわち、実施例1と同様にして、ア
ンドープInP層(厚さ約1μm)をエピタキシャル成
長させたSドープn型InP基板((100)面)上
に、一対のAu電極を100nmの厚さで堆積させ、さ
らに、分子線ビーム蒸着法で一対のAu電極間にInA
s微粒子(直径約20nm)層を形成させて、本比較例
の光電変換素子を得た。
【0081】得られた本比較例の光電変換素子を実施例
1と同様の光学系および測定系の中に組み込み、光電変
換特性を測定した。ただし、波長λは1560nmと
し、光電変換素子のAu電極間に放射アンテナを装着
し、発生する電磁波を直径50cmのパラボラアンテナ
で計測した。測定された電流値(イベント信号)と、時
間との関係を示すグラフを図11に示す。図11のグラ
フにおいて、横軸は時間を、縦軸は、測定系で測定され
た電流値(任意単位)を、それぞれ示すものである。
【0082】図11のグラフから、光パルスに応じた高
周波信号のイベントが検出されており、サブピコ秒の光
パルス信号が高周波信号に変換されているが、信号のS
N比が悪いことがわかる。
【0083】(実施例3)本実施例では、電極間にIn
As微粒子層を形成せず、受光体としてカーボンナノチ
ューブのみを用いたこと以外は、実施例2と同様の構造
の光電変換素子を作製した。すなわち、実施例2と同様
にして、石英基板上に窒化シリコン層(厚さ200n
m)をプラズマ化学気相成長法で成長させ、電子ビーム
蒸着法でTi/Au電極を形成し、さらに、この電極間
にアーク放電法で作製した直径約3nmの単層カーボン
ナノチューブの複数本を一対の電極間に橋渡しする状態
で接続した。以上のようにして、本実施例の光電変換素
子を得た。
【0084】得られた本実施例の光電変換素子を実施例
1と同様の光学系および測定系の中に組み込み、光電変
換特性を測定した。ただし、光電変換素子のAu電極間
に放射アンテナを装着し、発生する電磁波を直径50c
mのパラボラアンテナで計測した。測定された電流値
(イベント信号)と、時間との関係を示すグラフを図1
2に示す。図12のグラフにおいて、横軸は時間を、縦
軸は、測定系で測定された電流値(任意単位)を、それ
ぞれ示すものである。
【0085】図12のグラフから、光パルスに応じた高
周波信号のイベントが検出されており、サブピコ秒の光
パルス信号が高周波信号に変換されているが、信号のS
N比が、実施例1や2の光電変換素子に比べると悪く、
比較例1に比べると良好であることがわかる。
【0086】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
通信帯の高速光パルス信号を高周波もしくは電磁波の信
号に、良好なSN比で直接変換し得る光電変換素子およ
び光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面
図である。
【図2】 本発明の光電変換素子の他の一例を示す模式
断面図である。
【図3】 図1の光電変換素子に保護層を形成した状態
を示す断面図である。
【図4】 図2の光電変換素子に保護層を形成した状態
を示す断面図である。
【図5】 一対の電極間に電場を与えてカーボンナノチ
ューブを配列させる方法を説明するための模式平面図で
ある。
【図6】 実施例1の光電変換素子のSEM写真像(倍
率約30000倍)である。
【図7】 実施例1の光電変換素子の光電変換特性を測
定するための光学系および測定系の概略を示す模式構成
図である。
【図8】 実施例1の光電変換素子について、光電変換
特性を測定した結果を示すグラフであり、横軸は時間
を、縦軸は、測定系で測定された電流値(任意単位)
を、それぞれ示すものである。
【図9】 実施例2の光電変換素子の光電変換特性を測
定するための光学系および測定系の概略を示す模式構成
図である。
【図10】 実施例2の光電変換素子について、光電変
換特性を測定した結果を示すグラフであり、横軸は時間
を、縦軸は、測定系で測定された電流値(任意単位)
を、それぞれ示すものである。
【図11】 比較例1の光電変換素子について、光電変
換特性を測定した結果を示すグラフであり、横軸は時間
を、縦軸は、測定系で測定された電流値(任意単位)
を、それぞれ示すものである。
【図12】 実施例3の光電変換素子について、光電変
換特性を測定した結果を示すグラフであり、横軸は時間
を、縦軸は、測定系で測定された電流値(任意単位)
を、それぞれ示すものである。
【符号の説明】
2 カーボンナノチューブ 4 半導体微粒子 6a、6b、16a、16b 電極 8 分散除去層 10 支持板 12 基板 14 保護層 18 分散液 X1、X2 光電変換素子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 真鍋 力 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内 (72)発明者 清水 正昭 神奈川県足柄上郡中井町境430グリーンテ クなかい 富士ゼロックス株式会社内 Fターム(参考) 5F088 AA11 AB01 AB07 BA02 BB01 DA05 FA05

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、該基板の表面に設けられ、高速
    光パルス信号を受光して高周波に変換する受光体と、を
    備え、 前記受光体が、少なくともカーボンナノチューブからな
    ることを特徴とする光電変換素子。
  2. 【請求項2】 前記カーボンナノチューブの両端ないし
    その周辺にそれぞれ接続される一対の電極を備えること
    を特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 【請求項3】 前記カーボンナノチューブと電気的に接
    触した状態で、前記受光体としてさらに半導体微粒子が
    配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記
    載の光電変換素子。
  4. 【請求項4】 前記基板の表面であって、前記一対の電
    極の間に、前記カーボンナノチューブと電気的に接触し
    た状態で、前記受光体としてさらに半導体微粒子が配置
    されてなることを特徴とする請求項2に記載の光電変換
    素子。
  5. 【請求項5】 前記半導体微粒子が、InAs、GaA
    s、InP、InSb、GaN、InN、およびGaI
    nNからなる群より選ばれるいずれか1の半導体微粒子
    を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の光電
    変換素子。
  6. 【請求項6】 前記カーボンナノチューブが、複数本で
    あることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載
    の光電変換素子。
  7. 【請求項7】 前記カーボンナノチューブが、多層カー
    ボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜6
    のいずれか1に記載の光電変換素子。
  8. 【請求項8】 前記カーボンナノチューブの直径が、
    0.3nm以上100nm以下であることを特徴とする
    請求項1〜7のいずれか1に記載の光電変換素子。
  9. 【請求項9】 前記カーボンナノチューブの長さが、
    0.1μm以上100μm以下であることを特徴とする
    請求項1〜8のいずれか1に記載の光電変換素子。
  10. 【請求項10】 前記一対の電極がそれぞれ、Au、P
    t、Ag、Cu、Ta、Nb、Tiからなる群より選ば
    れるいずれか1の材料を含むことを特徴とする請求項2
    〜9のいずれか1に記載の光電変換素子。
  11. 【請求項11】 前記一対の電極の間隙が、1nm以上
    100μm以下であることを特徴とする請求項2〜10
    のいずれか1に記載の光電変換素子。
  12. 【請求項12】 前記カーボンナノチューブと、それが
    接続する電極との間の接続抵抗値が、10MΩ以下であ
    ることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1に記載
    の光電変換素子。
  13. 【請求項13】 前記基板が、その少なくとも前記カー
    ボンナノチューブが配される部位に、分散除去層が形成
    されてなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか
    1に記載の光電変換素子。
  14. 【請求項14】 前記分散除去層が、半導体超格子層か
    らなることを特徴とする請求項13に記載の光電変換素
    子。
  15. 【請求項15】 前記半導体超格子層が、Ga、As、
    InおよびPよりなる群から選ばれる2以上の元素から
    なることを特徴とする請求項14に記載の光電変換素
    子。
  16. 【請求項16】 前記カーボンナノチューブの少なくと
    も一部が、保護層により覆われていることを特徴とする
    請求項1〜15のいずれか1に記載の光電変換素子。
  17. 【請求項17】 前記保護層が、誘電体であることを特
    徴とする請求項16に記載の光電変換素子。
  18. 【請求項18】 変換対象となる高速光パルスの周波数
    が、1MHz以上10THz以下であることを特徴とす
    る請求項1〜17のいずれか1に記載の光電変換素子。
  19. 【請求項19】 変換対象となる高速光パルスの波長
    が、1μm以上2μm以下であることを特徴とする請求
    項1〜18のいずれか1に記載の光電変換素子。
  20. 【請求項20】 請求項1〜19のいずれか1に記載の
    光電変換素子を有し、該光電変換素子により変換された
    高周波を電気信号に変換する高周波検出器を備えること
    を特徴とする光電変換装置。
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