JP2003300982A - 分子集合体、及び分子集合体の製造方法 - Google Patents
分子集合体、及び分子集合体の製造方法Info
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Abstract
ベルで制御した分子集合体およびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 基板上に分子集合体を形成する工程を含
む分子集合体の製造方法であって、電子吸引性または電
子供与性の置換基を所定の位置に導入した分子集合体を
形成し得る分子を用いることにより、分子集合体の集合
様式を制御する分子集合体の製造方法。
Description
し得る新規化合物及びその製造方法およびその化合物な
どに関する。
物質の特性を活かすナノ材料・加工技術により、新素材
の開発やそれまで限界とされていた技術開発が可能にな
り、その応用は材料・デバイスのみならず、光、IT・エ
レクトロニクス、医療、バイオ、環境・エネルギーなど
幅広い分野に及ぶことが期待されている。そして、近
年、分子デバイス開発を目指した、金属表面上で分子の
自己組織化を利用して分子配列を制御する試みが盛んで
ある。したがって、分子レベルで、分子の集合様式を制
御することは産業上大きく期待されている。
に、5,10,15,20,−テトラキス−(3,5−
ジ−ターシャリーブチルフェニル)ポルフィリン(H2
−TBPP)などは、金(111)表面上に規則正しく
集合することが知られている(Barth. J. V. et. Al.,
Pys. Rev. B42, 9307-9318 (1990))。
板表面上で分子が集合する様子を、分子レベルで制御す
ることは、困難であった。
決する、基板表面上に分子集合体を形成する方法などに
関する。より具体的には、ポルフィリン類やフタロシア
ニン類などの分子集合体を構成する分子に電子吸引性ま
たは電子供与性の置換基を導入し、構成分子の立体構造
や双極子モーメントなど分子間相互作用に関連する要因
を制御し、分子集合体のサイズや形状などの集合様式を
制御する方法によって、上記課題を解決するものであ
る。
5,20,−テトラキス−(3,5−ジ−ターシャリー
ブチルフェニル)ポルフィリン(H2−TBPP)など
は、金(111)表面上に規則正しく集合することが知
られている(図1)。このH2−TBPPは、分子の対
称性がよいため、分子全体として平面方向への双極子モ
ーメントを持たない。このH2−TBPPに、例えば電
子吸引性の置換基を設けることにより、分子に双極子モ
ーメントを持たせることができる。すなわち、本発明に
よれば、基板表面に形成される試料分子の双極子モーメ
ントや、立体構造など分子間の相互作用を決定付ける要
因を制御することにより、分子が集合する様子(集合様
式)を分子レベルで制御することができる。
子供与性の置換基、または非共有結合性の基を導入する
ことにより分子が集合する分子の集合様式を制御する方
法を説明する。なお集合様式とは、分子集合体における
分子の並び方のことをいい、例えば、単層か複数層かな
どの層状態、直線状、三角形状、蜂の巣状、格子状など
特異的な集合形式、分子集合体のサイズや、水素結合、
配位結合、イオン結合やファンデルワールス結合などの
結合様式などを意味する。
縁体や、金属の表面上に分子集合体が形成される。金属
は、雲母やガラスなどの基板の上に金属が蒸着等により
薄膜として形成されたものであっても良い。試料が形成
される基板としては、雲母やガラスなどが挙げられる。
これらのうちでも、雲母が好ましい。雲母の表面粗さと
しては、50nm以下、より好ましくは1nm以下、さ
らに好ましくは0.5nm以下が好ましい。平面が平滑
であれば、試料分子が表面上の凹凸に入りこむ事態を避
けられるからである。本明細書において、表面粗さと
は、2乗平均粗さ(Rs)を意味する。
金、銅、白金、銀、タングステン、などが挙げられる。
これらのうちでも、金が好ましく、金の(111)表面
に試料が形成されることがより好ましい。金(111)
表面は、不活性であり試料分子との化学反応等を防止す
ることができるからである。さらに、その基板に金属薄
膜が形成された場合その表面の粗さが、50nm以下で
あれば好ましく、10nm以下であればより好ましく、
5nmであればさらに好ましく、1nm以下であればさ
らに好ましく、0.5nm以下でれば特に好ましい。こ
のように基板上に形成された金属薄膜の表面粗さが小さ
ければ、金属膜上に試料膜を形成した際に、試料分子が
金属膜上の窪みにはまる事態を回避することができる。
またこのようにしてより均一な試料膜を得ることができ
る結果、好適な測定状況を得ることができる。
ては、ポルフィリン類やフタロシアニン類などが挙げら
れる。これらの中でも、分子に電子吸引性または電子供
与性の置換基を有する分子を用いる。
下記一般式(Ia)〜(Ic)で表される分子が挙げられ
る。
子、2価の金属、3価の金属誘導体、又は4価の金属誘
導体のいずれかを表し、水素原子、Ag、Cu、Zn、
Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、M
n、Sn、Au、Mg、Cd、AlCl、InCl、F
eCl、MnCl、SiCl2、GeCl2、Vo、Ti
O、SnCl2、Fe−Ph、SnC≡C−Ph,Rh
−Clのいずれかが好ましく、これらの中でも水素原子
が好ましい。
ケニルオキシ基、C3-6ジエニル基、C2-12アルキニル
基、C2-12アルキニルオキシ基、水酸基、C1-12アルコ
キシ基、C1-12アシル基、C1-30アシルオキシ基、カル
ボキシル基、C1-12アルコキシカルボニル基、カルバモ
イル基、C1-12アルキルカルバモイル基、アミノ基、C
1-12アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、
イソシアノ基、C1-12アシルアミノ基、ニトロソ基、ニ
トロ基、メルカプト基、C1-12アルキルチオ基、スルホ
基、スルヒノ基、C1-12アルキルスルホニル基、チオシ
アナト基、イソチオシアナト基、チオカルボニル基、ス
ルファモイル基、C1-12アルキルスルファモイル基、ヒ
ドロキシイミノメチル基(−CH=NOH)、C1-12ア
ルコキシイミノメチル基、C1-12アルケニルオキシイミ
ノメチル基、C1-12アルキニルオキシイミノメチル基、
C1-12アルキルイミノメチル基、スルファモイルイミノ
メチル基、チオカルボキシル基、ヒドロキシアミノカル
ボニル基、アルコキシアミノカルボニル基、ハロゲン原
子のいずれかを表し、電子吸引性基または電子供与性基
であることが好ましい。電子吸引性または電子供与性の
置換基としては、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、
アミノ基、ホルミル基、カルバモイル基、ニトロ基、ヒ
ドロキシイミノメチル基(−CH≡NOH)、又はC
1-6アルキルイミノメチル基、C1-6スルファモイルイミ
ノメチル基のいずれかであることが更に好ましい。さら
に分子に分極をもたらす基、または水素結合を形成しや
すい置換基が特に好ましい。より具体的には、シアノ
基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ホルミル基、
カルバモイル基、ニトロ基、ヒドロキシイミノメチル基
(−CH≡NOH)、又はC1-6アルキルイミノメチル
基、C1-6スルファモイルイミノメチル基のいずれかで
あることが更に好ましい。本明細書において、分子に分
極をもたらす基とは、電子吸引基、電子供与基、共鳴効
果を表す基をいい、具体的には、ニトロ基、シアノ基、
ホルミル基、スルホ基、スルファモイル基、アミノ基、
アルコキシ基、エチニル基、ニトロソ基、アルキルスル
ホニル基、アシル基、ハロゲン原子などが挙げられ、こ
れらのうちでも、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル
基、ホルミル基、アミノ基、エチニル基などが好まし
い。また、本明細書において、非共有結合を形成する基
とは、水素結合、配位結合、イオン結合を形成する基、
または双極子相互作用、π−π相互作用などの分子間相
互作用を誘起する基をいい、具体的には、水酸基、カル
ボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル
基、ヒドロキシイミノメチル基、ヒドロキシアミノカル
ボニル基、シアノ基、イソシアノ基、ホルミル基、スル
ホ基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうちで
も、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ホ
ルミル基、カルバモイル基、ヒドロキシイミノメチル
基、ヒドロキシアミノカルボニル基が好ましい。
シ基、トリアルキルシリールオキシ基、アルキルジフェ
ニルシリールオキシ基、フェニルジアルキルシリールオ
キシ基のいずれかを表しす。C1-8アルキル基として
は、C1-6アルキル基が好ましい。C1-8アルコキシ基と
しては、C1-6アルコキシ基が好ましい。Xとしては、
ターシャリーブチル基が好ましい。
シ基、C2-30アルケニルオキシ基、C2-30アルキニルオ
キシ基、C1-30アシルオキシ基のいずれかを表す。
-)としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキ
シ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブト
キシ基、iso−ブトキシ基、ter-ブトキシ基、ペンチル
オキシ基、アミルオキシ基、オクチルオキシ基、デシル
オキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、
ドコサン−1−イル基、ペンタコサン−1−イル基、ト
リアコンタン−1−イル基などが挙げられる。C1-30ア
ルコキシ基としては、C1-30アルコキシ基が好ましく、
C1-10アルコキシ基がより好ましく、C1-8アルコキシ
基がさらに好ましく、C1-6アルコキシ基が特に好まし
い。C2-30アルケニルオキシ基としては、2−プロペニ
ルオキシ、2−ブテニルオキシ、3-ブテニルオキシ、4-
ペンテニルオキシ、9-デセン-1-イルオキシ、11−ド
デセン−1−イルオキシ、9,12−テトラデカジェン
−1−イルオキシ、9−ヘキサデセン−1−イルオキ
シ、9,12−テトラデカジェン−1−イルオキシ、1
0,12−ペンタジェン−1−イルオキシなどが挙げら
れる。C2-30アルケニルオキシ基としては、C2-10アル
ケニルオキシ基が好ましく、C2-8アルケニルオキシ基
がさらに好ましく、C2-6アルケニルオキシ基がより好
ましく、C2 -4アルケニルオキシ基が特に好ましい。C
2-30アルキニルオキシ基としては、1-プロピニルオキシ
基、2-プロピニルオキシ基、1-ブチニルオキシ基、2-ブ
チニルオキシ基、3-ブチニルオキシ基、3-プロピニルオ
キシ基、4-プロピニルオキシ基、1-メチル-2-プロピニ
ルオキシ基、5−ヘキシン−1−イルオキシ基、9−デ
シン−1−イルオキシ基、11−ドデシン−1−イルオ
キシ基、10,12−ペタコサンジイル−1−イルオキ
シ基、2,9−トリアコンティン−1−イルオキシ基な
どが挙げられる。C1-30アシルオキシ基(RCOO-)として
は、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基(CH3COO-)、
プロピオニルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、オクタ
ノイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、パルミトイルオ
キシ基、ステアロイルオキシ基、ペンタコサイノイルオ
キシ基、トリアコンタノイルオキシ基、メタクリロイル
オキシ基、9−デセノイルオキシ基、9−オクタデセノ
イルオキシ基、9,12−オクタデカジェノイルオキシ
基、10,12−ペンタコサジェノイルオキシ基、プロ
ピオイルオキシ基、9−デシノイルオキシ基、2,4−
ペンタデカジイノイルオキシ基、10,12−ペンタコ
サジイノイルオキシ基などが挙げられる。C 1-30アシル
オキシ基としては、C1-10アシルオキシ基が好ましく、
C1-8アシルオキシ基がより好ましく、C1-6アシルオキ
シ基がさらに好ましく、C1-4アシルオキシ基が特に好
ましい。
ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ
基、置換基を有しても良いC1−C3アルキル基を表わ
す。これらの中でも水素原子がより好ましい。
フェニル)−10,15,20,−トリス(3,5−ジ
ターシャリーブチルフェニル)ポルフィリン、5,15
−ビス(4−シアノフェニル)−10,20,−ビス
(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフィリ
ン、及び5,10−ビス(4−シアノフェニル)−15,
20,−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフェニ
ル)ポルフィリン、(2)5−(4−カルボキシフェニ
ル)−10,15,20,−トリス(3,5−ジターシ
ャリーブチルフェニル)ポルフィリン、5,15−ビス
(4−カルボキシフェニル)−10,20,−ビス(3,
5−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフィリン、及
び5,10−ビス(4−カルボキシフェニル)−15,2
0,−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)
ポルフィリン、(3)5−(4−ホルミルフェニル)−1
0,15,20,−トリス(3,5−ジターシャリーブ
チルフェニル)ポルフィリン、5,15−ビス(4−ホ
ルミルフェニル)−10,20,−ビス(3,5−ジタ
ーシャリーブチルフェニル)ポルフィリン、及び5,1
0−ビス(4−ホルミルフェニル)−15,20,−ビス
(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフィリ
ン、(4)5−(4−ヒドロキシフェニル)−10,1
5,20,−トリス(3,5−ジターシャリーブチルフ
ェニル)ポルフィリン、5,15−ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)−10,20,−ビス(3,5−ジターシ
ャリーブチルフェニル)ポルフィリン、及び5,10−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−15,20,−ビス
(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフィリ
ンが挙げられる。
分子集合体の製造方法の例を説明する。本発明における
分子集合体の製造方法の一例としては、基板に金属膜を
形成する金属膜形成工程と、基板上に試料分子からなる
分子集合体を形成する分子集合体形成工程とを含む。な
お、基板に金属膜を形成せず、絶縁体である基板をその
まま用いても良いし、基板上に絶縁性の膜を形成しても
良い。
る方法としては、固体反応法、沈殿法、塗布法、液相エ
ピタキシー法、融液エピタキシー法、ゾルゲル法、陽極
酸化法や、真空蒸着、スパッター法、イオンプレーティ
ング法などの物理蒸着法や、CVD法、MOCVD法、
プラズマCVD法などの化学蒸着(CVD)法など、公
知の金属膜形成方法を用いることができる。これらの中
でも金属膜形成方法としては、物理蒸着法が好ましく、
スパッター法がより好ましく、超高真空中で行われるス
パッター法が特に好ましい。
金属膜の凹凸に分子が入り込む事態や、不規則な分子−
金属表面の相互作用を避けるためにも金属膜が平らな方
が好ましい。表面を平らにするためには、例えば、雲母
などの基板の上に、金属膜を蒸着し、その後焼きなまし
(加熱工程)を加え、ゆっくり冷やすこと(アニールす
ること)で、金の再結晶化を図る方法が挙げられる。こ
のようにすることで、原子配列が整った金属膜を形成す
ることができる。加熱としては、例えば、ガスバーナー
で1秒から10分程度(好ましくは、10秒から1分程
度)加熱する方法が挙げられるが、金属膜の温度を上げ
ることができる方法であれば限定されない。
子からなる分子集合体を形成する方法としては、固体反
応法、沈殿法、塗布法、液相エピタキシー法、融液エピ
タキシー法、ゾルゲル法、陽極酸化法や、真空蒸着、ス
パッター法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法
や、CVD法、MOCVD法、プラズマCVD法などの
化学蒸着(CVD)法など、公知の膜形成方法や、ガス
中蒸発法、プラズマ中蒸発法、水素プラズマ反応法、ハ
イブリッドプラズマ法などの気相化学反応法、通電加熱
蒸発法などの気相法や、沈殿法、アルコキシド法、還元
法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法など液相法などを用いるこ
とができる。これらの中でもガス中蒸発法、プラズマ中
蒸発法、水素プラズマ反応法、ハイブリッドプラズマ法
などの気相化学反応法が真空を破らずに作業できるので
好ましく、ガス中蒸発法がより好ましく、クヌーセンセ
ルやるつぼを用いたガス中蒸発法が特に好ましい。分子
集合体は、1層〜10層程度の厚みをもつものが好まし
く、1層〜3層がより好ましく、1層のみのものが特に
好ましい。なお、分子集合体を製造する際に、分子集合
体を構成する分子のとして施光度が同じ分子を用いる
と、さらに特異的な分子集合体を形成するため好まし
い。また、分子集合体の濃度を制御することは、特異的
な分子集合体を形成する場合があるので好ましい。
する場合、一般に安定構造をとって存在する。このよう
な安定構造は分子軌道計算によって予測を立てることが
できる。したがって、分子軌道計算を用いて好ましい分
子を探すことは本発明の好ましい実施形態のひとつであ
る。なお、金属表面上の分子および分子集合体(分子の
モノマー、ダイマー、トライマー、テトラマーなど)
は、金属表面との相互作用がある。したがって、真空中
での分子集合体の安定構造と、金属表面に形成された分
子集合体の安定構造とは異なる。しかしながら、金属表
面に形成された分子集合体の安定構造を求める場合に
も、真空中での安定構造を算出した後、その構造を出発
構造として、金属表面上の分子集合体の構造に関する量
子化学計算を行うことも本発明の好ましい実施形態のひ
とつである。ここで、分子軌道計算としては、GAUS
SIANなどのプログラムを用いたab initio分子軌道
計算が挙げられる。
は、分子導電性デバイスなどとして利用することができ
る。5−(4−シアノフェニル)−10,15,20,−
トリス(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)ポル
フィリンなど、H2−TBPPにシアノ基を1つまたは
2つ導入した化合物と金(111)表面又は絶縁体との
組合せが特に好ましい。H2−TBPP誘導体は、ポル
フィリンのコアの他に、ジターシャリーブチルフェニル
基(t−BP)を有しており、t−BP基がポルフィリ
ン平面に対して、約20度の角度を持って存在するとい
う立体構造をもつ。この、t−BPが金表面と相互作用
し、ポルフィリン環は、金表面と接しない。したがっ
て、ポリフィリンコアは浮いた状態で存在している。金
属の配位したポルフィリン誘導体には、触媒作用等が期
待される。したがって、金属が配位したH2−TBPP
誘導体によって形成される分子集合体は、触媒として用
いることができる。
ス(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフィ
リン(化合物(A))、5,15−ビス(4−シアノフ
ェニル)−10,20,−ビス(3,5−ジターシャリ
ーブチルフェニル)ポルフィリン(化合物(B))、
5,10−ビス(4−シアノフェニル)−15,20,−
ビス(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフ
ィリン(化合物(C))の製造
ル)ジピロメタン〔Meso- (4-cyanophenyl) dipyrromet
hane〕の製造 化合物(A)〜(C)の合成に先立ち、中間体であるメソ
−(4−シアノフェニル)ジピロメタンを以下のように
して製造した。200mlの三口フラスコに4−シアノベン
ズアルデヒド(4-cyanobenzaldehyde)5.25g および ピ
ロ-ル(pyrrole) 107gを加え、窒素ガスを流しつつ10
分間撹拌。冷却、撹拌下トリフルオロ酢酸(trifluoroa
cetic acid) 0.46gを滴下した。その後25-26℃で20分
撹拌した後、反応液をジクロルメタン350mlにとかし、
0.1規定NaOH、ついで水で洗浄した。有機層を無水Na2SO
4で乾燥し、濃縮した。残留物を温かいうちにジクロル
メタン20mlにとかし、冷却すると結晶が析出した。これ
らをろ過して5.86gの結晶を得た。ろ液をふたたび濃縮
した後ジクロルメタン8mlにとかし、冷却して結晶をろ
取してさらに1.6gを得た。収率は75.4%融点は168-169.5
℃であった。得られた化合物のガスクロマトグラフィー
質量分析器による質量分析の結果及び、重クロロホルム
中でのプロトンNMRの結果を以下に示す。
MHz):1Hδ5.522(1H, s), 5,860(2H, J=2.1Hz), 6.151,
6.161, 6.171, 6.181, 6.718, 6.723, 6.727, 6.732,
6.742,7.255, 7.289, 7.296, 7.316, 7.323, 7.572, 7.
579, 7.601, 7.606, 7.614, 7.945.
5,20,−トリス(3,5−ジターシャリーブチルフ
ェニル)ポルフィリン(化合物(A))、5,15−ビ
ス(4−シアノフェニル)−10,20,−ビス(3,5
−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフィリン(化合
物(B))、及び5,10−ビス(4−シアノフェニル)
−15,20,−ビス(3,5−ジターシャリーブチル
フェニル)ポルフィリン(化合物(C))の製造 200ml三口フラスコに上記製造例1−1)で製造した、
メソ−(4−シアノフェニル)ジピロメタン 989mg, 及
び、3,5−ジターシャリーブチル−ベンズアルデヒド
(3,5-ditertiarybutyl- benzaldehyde) 873mg, トリ
ブチルべンジルアンモニウムクロライド(tributhylben
zylammonium chloride) 7.5mg を入れ、ジクロルメタ
ン80mlを加えて溶かした。窒素ガスを流しつつ10分間撹
拌したのち、ドロントリフルオリド・エーテレート(bo
rontrifluoride etherate:BF3・OEt2) の1M溶液
を0.8mlを滴下した。この溶液を24-25℃で10分間撹拌し
た後、DDQ1.4gを加え、24-25℃で1時間撹拌した。トリ
エチルアミン 0.65ml を加えて濃縮し、液量約30mlにし
た。これをアルミナをつめたカラム(内径 55x105mm)
の上に注ぎ、ジクロルメタンで溶出した。つぎにジクロ
ルメタン+エーテル 10:1 の溶媒で溶出した。後者の溶
媒による溶出物が0.6g得られ、化合物A,B,Cの混合物で
あった。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで
分離精製し(溶媒:シクロヘキサン+ジクロルメタン
5:4, 5:5, 4:5, 1:2 の混合比に順次かえた。)、溶出
される順に化合物A 125mg(収率9.6%), B 146.9mg(8.2
6%), C 165.4mg(9.3%) を得た。融点:300℃でA,B,Cと
もに溶融、分解しなかった。得られた化合物の飛行時間
型質量分析器による質量分析の結果及び、重クロロホル
ム中でのプロトンNMRの結果を以下に示す。
7.804(3H, s ), 8.041-8.077(8H, m), 8.360(2H, d,J=
8.1), 8.716(2H, d, J=5.1Hz), 8.902-8.919(6H, m).
7.826(2H, t, J=1.8Hz),8.050-8.075(8H, m), 8.350(4
H, d,J=8.1Hz), 8.738(4H, d, J=5.1Hz), 8.937(4H, d,
J=4.5).
(2H, t J=1.8Hz), 8.058-8.087(8H, m), 8.350(4H, d,J
=8.1Hz), 8.733(2H, d, J=5.1Hz), 8.763(2H, s), 8.92
9-8.941(4H, m).
高真空チャンバー中での低温STM(走査型トンネル顕
微鏡)を用いて行った。低温STMでは、プローブとし
て電気化学的にエッチングをしたタングステン(W)チ
ップを用いた。STMは、63Kに維持した。実験に用
いた装置は、試料導入室、試料処理室、低温STM観察
室の3室から構成されており、全て超高真空(10-9 Pa
以下)を維持することができ、試料や探針を真空移動す
ることが出来る装置である。試料導入室は、試料や探針
を大気から導入することが可能である。導入後、ポンプ
などを用いて超高真空を得ることができる。そして、試
料導入室は、分子蒸着源も備えている。試料処理室は、
スパッタ法による金属表面清浄化が可能である。低温S
TM観察室は、室温から低温(液体窒素温度や液体ヘリ
ウム温度)でのSTM観察が可能である。
1)を蒸着した雲母を用いた。金薄薄膜は、金イオンを
スパッタリングすることにより雲母の表面上に形成し、
700Kでアニールした。500〜590Kに維持した
クヌーセンセルを用いて5,10,15,20,−テト
ラキス−(3,5−ジ−ターシャリーブチルフェニル)
ポルフィリン(H2−TBPP)を、常温の金薄膜表面
上に形成した。蒸着時間は5分から20分であった。蒸
着中の真空度は、10-6Pa程度であった。このように
して得られた試料を、冷却STMを用いて測定した。金
属表面上に形成した分子のSTM写真を図1、および図
2に示す。図2は、分子が比較的密に集合している部位
のSTM写真である。また、金属表面上の分子の様子を
模式的に図3に示す。(なお、本願の図面は、Natu
re 413,p619−p621(2001)に記載
のものと同一である。)
2−TBPPである、5−(4−シアノフェニル)−1
0,15,20,−トリス(3,5−ジターシャリーブ
チルフェニル)ポルフィリン(化合物(A))を用いた
以外は参考例1と同様にして金薄膜(111)上に分子
集合体を形成した。金属表面上に形成した分子集合体の
STM写真を図4、図5に示す。図5は、図4に示され
るような分子集合体部分を拡大して示すSTM写真であ
る。また、分子集合体の様子を模式的に図6に示す。電
子吸引性のシアノ基を導入したことにより化合物(A)
の分子内に双極子モーメントが生じ、その結果分子集合
体を構成する化合物(A)の立体構造も変化し、金薄膜
表面上で特異的な集合体を形成することがわかった。そ
の化合物(A)の三量体は、シアノ基を中心に三角形を
構成するように会合している。これは、シアノベンゼン
の真空中での三量体のようにシアノ基を中心として会合
した構造であった。
2−TBPP(5,15−ビス(4−シアノフェニル)−
10,20,−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフ
ェニル)ポルフィリン(化合物(B))を用いた以外は
参考例1と同様にして金(111)表面上に分子集合体
を形成した。図7、図8、及び図10は、金属表面上に
形成した分子集合体のSTM写真である。図8は、図7
に示されるような分子集合体を拡大するものであり、図
10は、ナノワイヤー(分子ワイヤー)を形成する分子
集合体部分を示す。また、分子集合体の様子を模式的に
図9に示す。図8に示されるように化合物(B)は、金
薄膜上で、分子ワイヤーのような集合形式をとることが
わかった。この分子ワイヤーは、化合物(B)が直線状
に配列したものであり、図10からわかるとおり長いも
ので100nm以上であった。
2−TBPP(5,10−ビス(4−シアノフェニル)−
15,20,−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフ
ェニル)ポルフィリン(化合物(C)))を用いた以外
は参考例1と同様にして金(111)表面上に分子集合
体を形成した。金属表面上に形成された分子集合体のS
TM写真を図11、及び図12に示す。図12は、図1
1に示すような分子集合体部分を拡大して示すSTM写
真である。また、分子集合体の様子を模式的に図13に
示す。化合物(C)は、金薄膜上で4量体の分子集合体
を形成していた。この四量体の各分子は、図13に示す
ように4個の分子が環状構造を形成するように集合して
いた。なお、化合物(C)は施光性を示さないが、分子
集合体は不斉(施光性を有する)となっていた。すなわ
ち、施光性のない分子から、施光性のある分子集合体を
形成することができた。本発明によれば、施光性という
情報を制御した分子デバイスを製造することができる。
フェニル)−10,20,−ビス(3,5−ジターシャ
リーブチルフェニル)ポルフィリン(化合物(B))を
用い、蒸着時間を1時間とした以外は参考例1と同様に
して金(111)表面上に分子集合体を形成した。その
結果、化合物(B)は、蜂の巣状に集合した。
ムアップ式の分子集合体の製造方法であり、所望の集合
様式の分子集合体を設計できるという利点がある。ま
た、本発明の分子集合体は、触媒や分子導電性デバイス
などとして利用可能であるほか、分子レベルで集合様式
を制御しているため、外観が美麗であり、装飾品などに
利用できる。
面に変わるSTM写真である。
面に変わるSTM写真である。
模式図である。
体の図面に変わるSTM写真である。
体(分子集合体部分)の図面に変わるSTM写真であ
る。
様式を表す模式図である。
体の図面に変わるSTM写真である。
を形成する分子集合体部分のSTM写真である。
様式を表す模式図である。
ー)を形成する分子集合体部分のSTM写真である。
合体の図面に変わるSTM写真である。
合体(分子集合体部分)の図面に変わるSTM写真であ
る。
合様式を表す模式図である。
Claims (12)
- 【請求項1】基板上に分子集合体を形成する工程を含む
分子集合体の製造方法であって、 電子吸引性または電子供与性の置換基、または非共有結
合性の基を所定の位置に導入した分子集合体を形成し得
る分子を用いることにより、分子集合体の集合様式を制
御する分子集合体の製造方法。 - 【請求項2】前記基板が、絶縁体である請求項1に記載
の分子集合体の製造方法 - 【請求項3】基板上に金属膜を形成する工程と、 金属膜上に分子集合体を形成する工程とを含む金属表面
上の分子集合体の製造方法であって、 分子集合体を形成する分子として、電子吸引性または電
子供与性の置換基、または非共有結合性の基を有する分
子を用いることを特徴とする分子集合体の製造方法。 - 【請求項4】前記分子集合体は、金属表面上に1〜10
層形成されるものである請求項1〜3のいずれかに記載
の分子集合体の製造方法。 - 【請求項5】前記分子集合体を形成する分子が、ポルフ
ィリン骨格又はフタロシアニン骨格を有する分子である
請求項1〜4のいずれかに記載の分子集合体の製造方
法。 - 【請求項6】前記分子集合体は、分子集合体を形成する
分子が3つ集合し3角形状となる分子集合体部分、又は
分子集合体を形成する分子が4つ集合し4角形状となる
分子集合体部分のいずれかを有する分子集合体である請
求項1〜5のいずれかに記載の分子集合体の製造方法。 - 【請求項7】前記分子集合体を形成する分子は、それ自
体は施光性を示さないが、分子集合体となった場合に不
斉な分子集合体となる請求項1〜4のいずれかに記載の
分子集合体の製造方法。 - 【請求項8】前記分子集合体を形成する分子が、下記一
般式(Ia)〜(Ic)で表される分子のいずれかである請
求項5に記載の分子集合体の製造方法。 【化1】 【化2】 【化3】 (式中、Mは、2個の水素原子、2価の金属、3価の金
属誘導体、又は4価の金属誘導体のいずれかを表し、 R’は、C2-12アルケニル基、C2-12アルケニルオキシ
基、C3-6ジエニル基、C2-12アルキニル基、C2-12ア
ルキニルオキシ基、水酸基、C1-12アルコキシ基、C
1-12アシル基、C1-30アシルオキシ基、カルボキシル
基、C1-12アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、
C1-12アルキルカルバモイル基、アミノ基、C1-12アル
キルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、イソシア
ノ基、C1-12アシルアミノ基、ニトロソ基、ニトロ基、
メルカプト基、C1-12アルキルチオ基、スルホ基、スル
ヒノ基、C1-12アルキルスルホニル基、チオシアナト
基、イソチオシアナト基、チオカルボニル基、スルファ
モイル基、C1-12アルキルスルファモイル基、ヒドロキ
シイミノメチル基(−CH=NOH)、C1-12アルコキ
シイミノメチル基、C1-12アルケニルオキシイミノメチ
ル基、C1-12アルキニルオキシイミノメチル基、C1-12
アルキルイミノメチル基、C1-12アルキルスルファモイ
ルイミノメチル基、チオカルボキシル基、ヒドロキシア
ミノカルボニル基、アルコキシアミノカルボニル基、ハ
ロゲン原子のいずれかを表し、Xは、C1-12アルキル
基、C1-12アルコキシ基、トリアルキルシリールオキシ
基、フェニルジアルキルシリールオキシ基、アルキルジ
フェニルシリールオキシ基のいずれかを表し、 Yは、水素原子、水酸基、C1-30アルコキシ基、C2-30
アルケニルオキシ基、C2-30アルキニルオキシ基、C
1-30アシルオキシ基のいずれかを表し、 R5〜R12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原
子、アミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を
有しても良いC1−C3アルキル基を表わす。) - 【請求項9】前記分子集合体を形成する分子が、5−
(4−シアノフェニル)−10,15,20,−トリス
(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)ポルフィリ
ン、5,15−ビス(4−シアノフェニル)−10,2
0,−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)
ポルフィリン、及び5,10−ビス(4−シアノフェニ
ル)−15,20,−ビス(3,5−ジターシャリーブ
チルフェニル)ポルフィリンのいずれかである請求項5
に記載の金属表面上の分子集合体の製造方法。 - 【請求項10】5−(4−シアノフェニル)−10,1
5,20,−トリス(3,5−ジターシャリーブチルフ
ェニル)ポルフィリンが集合し3角形状となる分子集合
体部分を有し、 前記分子集合体部分が集合してなる分子集合体。 - 【請求項11】5,10−ビス(4−シアノフェニル)−
15,20,−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフ
ェニル)ポルフィリンが4つ集合し4角形状となる分子
集合体部分を有し、 前記分子集合体部分が集合してなる分子集合体。 - 【請求項12】5,15−ビス(4−シアノフェニル)−
10,20,−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフ
ェニル)ポルフィリンが直線状に連結したことを特徴と
する直線状分子集合体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002107690A JP2003300982A (ja) | 2002-04-10 | 2002-04-10 | 分子集合体、及び分子集合体の製造方法 |
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JP2002107690A JP2003300982A (ja) | 2002-04-10 | 2002-04-10 | 分子集合体、及び分子集合体の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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ID=29391647
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JP2002107690A Pending JP2003300982A (ja) | 2002-04-10 | 2002-04-10 | 分子集合体、及び分子集合体の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003300982A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005294543A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | National Institute For Materials Science | 単一電子素子とその製造方法 |
US7884281B2 (en) | 2004-01-19 | 2011-02-08 | Sony Corporation | Photoelectric transfer material, manufacturing method thereof, photoelectric transfer element and manufacturing method thereof |
JP2014534953A (ja) * | 2011-09-26 | 2014-12-25 | ポハン ユニバーシティー オブ サイエンス アンド テクノロジー インダストリー アカデミー コーペレーション コープス | 水溶解度及び水分散性が向上されたα型亜鉛フタロシアニンナノワイヤー、α型亜鉛フタロシアニンナノワイヤー/フェノチアジン複合体、及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-04-10 JP JP2002107690A patent/JP2003300982A/ja active Pending
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JP2005294543A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | National Institute For Materials Science | 単一電子素子とその製造方法 |
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