JP2003293075A - 造管後の表面硬度ならびに降伏比が低い高強度鋼管素材およびその製造方法 - Google Patents
造管後の表面硬度ならびに降伏比が低い高強度鋼管素材およびその製造方法Info
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Abstract
伏比が低くかつ表面の硬度が低い高強度鋼管用素材およ
びその製造方法を提案する。 【解決手段】 C:0.04〜0.08mass%を含有し、さらに
Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれる1種または2種
以上を、下記式; Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/32+Mo/7≧0.11 の関係を満たして含有する鋼スラブを、1000〜1250℃に
加熱したのち、850℃以下での累積圧下率を75%以上、
圧延終了温度を750〜800℃とする熱間圧延を行い、その
後、(圧延終了温度〜圧延終了温度−50℃)から650〜750
℃までを冷却速度1〜10℃/secで緩冷却し、引き続き、
200℃以下までを冷却速度10〜30℃/secで強冷却するこ
とにより、アスペクト比≦4.0のマルテンサイト−オー
ステナイト共存組織が5〜20vol%であるベイナイト組
織としかつ表面硬度Hvを300以下とする。
Description
いは建築構造用に使用される大径溶接鋼管素材に関し、
特にAPI-5LX80級を超える強度の低降伏比でかつ表面硬
度が低い高強度鋼管用素材とその製造方法に関するもの
である。
ラインに用いられる鋼管は、厚鋼板をUOE法あるいは
ロールベンダー法で成形・溶接された大径溶接鋼管が主
に使用されている。そして、近年、上記鋼管は、高強度
化して管厚(素材厚)を薄くすることにより、素材コスト
ひいては敷設コストの低減が図られている。従来、上記
鋼管の素材には、特開平08-35011号公報に開示されたよ
うな、Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,Nb,Vといった合金元素を
多量に添加した鋼を熱間圧延し、その後、加速冷却を施
すことにより高強度化した厚鋼板や、特開平08-269544
号公報に開示されたような、Arl変態点〜Ar3変態点間
のいわゆる2相域圧延をしてフェライトの加工強化を付
与した後、加速冷却を行ってさらに高強度化した鋼板が
多く用いられている。
て、例えば、地震発生時における鋼管の座屈防止の観点
からは、パイプラインに用いられる高強度鋼管として
は、鋼管の降伏比(YS/TS)が低い方が好ましいこと
がわかってきた。また、最近、鋼管を高層建築物の柱材
として使用するケースが増えており、この用途において
も、地震時の塑性変形能を確保するために低降伏比が要
求され始めている。なお、現状では、上記降伏比(YS
/TS)は85%以下を望ましい値としている。
来技術で製造される高強度鋼管は、このような低降伏比
の要求を十分に満足できるものとは言い難い。すなわ
ち、合金元素を多量に添加し加速冷却して製造した厚鋼
板は、冷却時にマルテンサイト組織化するために降伏比
が高くなる。また、2相域圧延によりフェライト強化し
た厚鋼板は、特に、高YSとなるため、降伏比が著しく
高くなる。さらに、UOE法やロールベンディング法に
おいては、素材である厚鋼板を曲げ加工するため、さら
にYSが上昇することになる。このため、鋼管段階で低
降伏比を得るためには、元の鋼板の段階で、降伏比をよ
り低くしておかなければならない。
ら、鋼管の内外表面の硬さ規定が設けられ、ビッカース
硬さHv:300以下とする要求もなされるようになってき
た。しかし、上記特開平08-35011号公報に開示された技
術では、圧延後の鋼板は加速冷却されるため、鋼板表面
部は板厚中央部に比較して急冷される。この結果、鋼板
の板厚方向で変態挙動が変化し、表面部は非常に硬いマ
ルテンサイト組織となりやすい。また、特開平08-26954
4号公報に開示された技術では、2相域圧延してフェラ
イトを強化する際、鋼板表面に近いほど剪断歪量が大き
くなるため、結果的に表面近傍ほど硬くなってしまう。
したがって、上記従来技術ではいずれも、表面の硬さを
低く抑えることが難しいという問題があった。
となく造管後の降伏比が低く(≦85%)、かつ表面の硬度
が低い(≦Hv300)高強度鋼管用素材およびその製造方法
を提案することにある。
制御による高強度化について鋭意研究を行った。その結
果、素材鋼板のミクロ組織を、ベイナイトを主とし、さ
らにそのベイナイト中に硬いマルテンサイトとオーステ
ナイトが共存状態で存在する低温変態生成相(Martensit
e-Austenite constituentsと呼ばれる。以降、「M−A
共存組織」と略記する)を分散させた場合、特に、この
M−A共存組織を全組織の5vol%以上とした場合、T
Sが顕著に増加することを見いだした。M−A共存組織
は、鋼中のCが、ベイナイト変態の過程で、未変態オー
ステナイト中に拡散、濃化することにより生成する。し
たがって、M−A共存組織の体積率を必要な量確保する
ためには、C量の確保とベイナイト変態を起こすための
合金元素の添加量と冷却条件の適正化が必要である。
を0.04mass%以上とすることにより、安定してベイナイ
ト中にM−A共存組織を生成し得ることを見いだした。
さらに、実験結果の回帰計算の結果、合金元素を、下記
式; Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/32+Mo/7≧0.11 の関係を満たす組成範囲に調整し、圧延後の冷却速度を
10℃/sec以上とすることにより、フェライト変態を起こ
すことなくベイナイト変態を起こせること、さらにその
後、200℃以下まで冷却すると、ベイナイト変態に続い
てM−A共存組織を生成し得ることを知見した。
える冷却速度で水冷することは、前述したように、表層
部の硬さ上昇を避け得ない。そこで、さらに検討を重ね
た結果、比較的高い温度では緩冷却し、その後、急冷す
ることにより、表層部のマルテンサイト変態を抑制しつ
つ、板厚中心部の組織を上述したベイナイトおよびM−
A共存組織とすることが可能であることを見いだした。
脆性破壊の起点となる等の理由で靭性を低下させると考
えられてきた。発明者らは、M−A共存組織の形態に着
目して、この点について調査を進めた結果、アスペクト
比が4を超えるような細長い形状のM−A共存組織が脆
性破壊の起点となっていること、すなわち、アスペクト
比が4以下の塊状のM−A共存組織であれば、M−A共
存組織の体積率が20vol%を超えない範囲において、靭
性への悪影響が少ないことを突き止めた。そして、この
ような塊状のM−A共存組織を優先的に生成させるため
には、オーステナイトが再結晶しないような850℃以下
の温度域で、大変形を加えることにより、ベイナイトの
微細化に伴って塊状のM−A共存組織が生成しやすくな
ることも見出した。
0.04〜0.08mass%、Si:0.05〜0.50mass%、Mn:1.5〜
2.5mass%、Al:0.01〜0.10mass%、Nb:0.01〜0.08mas
s%、Ti:0.005〜0.020mass%を含有し、さらにCu,N
i,CrおよびMoのうちから選ばれる1種または2種以上
を、Cu:0.2〜0.7mass%、Ni:0.2〜1.0mass%、Cr:0.
2〜0.7mass%、Mo:0.2〜0.7mass%で、かつ、下記式; Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/32+Mo/7≧0.11 の関係を満たすように含有し、残部はFeおよび不可避的
不純物よりなり、アスペクト比≦4.0のマルテンサイト
−オーステナイト共存組織が全組織の5〜20vol%であ
るベイナイト組織を主とするミクロ組織を有し、造管後
の鋼板表面の硬さがビッカース硬度Hvで300以下、降伏
比が85%以下であることを特徴とする造管後の表面硬度
ならびに降伏比が低い高強度鋼管素材である。
に加えてさらに、Ca:0.001〜0.003mass%、REM:0.
005〜0.020mass%のうちから選ばれる1種または2種を
含有することが好ましい。
Si:0.05〜0.50mass%、Mn:1.5〜2.5mass%、Al:0.01
〜0.10mass%、Nb:0.01〜0.08mass%、Ti:0.005〜0.0
20mass%を含有し、さらにCu,Ni,CrおよびMoのうちか
ら選ばれる1種または2種以上を、Cu:0.2〜0.7mass
%、Ni:0.2〜1.0mass%、Cr:0.2〜0.7mass%、Mo:0.
2〜0.7mass%で、かつ、下記式; Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/32+Mo/7≧0.11 の関係を満たすように含有し、残部Feおよび不可避的不
純物よりなる鋼スラブを、1000〜1250℃に加熱したの
ち、850℃以下での累積圧下率を75%以上、圧延終了温
度を750〜800℃とする熱間圧延を行い、その後、(圧延
終了温度〜圧延終了温度−50℃)から650〜750℃までを
冷却速度1〜10℃/secで緩冷却し、引き続き、200℃以
下までを冷却速度10〜30℃/secで強冷却することによ
り、アスペクト比≦4.0のマルテンサイト−オーステナ
イト共存組織が全組織の5〜20vol%であるベイナイト
組織を主とするミクロ組織を有するとともに、造管後の
鋼板表面の硬さがビッカース硬度Hvで300以下、降伏比
が85%以下のものとすることを特徴とする造管後の表面
硬度ならびに降伏比が低い高強度鋼管素材の製造方法を
提案する。
に加えてさらに、Ca:0.001〜0.003mass%、REM:0.
005〜0.020mass%のうちから選ばれる1種または2種を
含有することが好ましい。
鋼板を450℃以下の温度で焼戻し処理することが好まし
い。
成を上記請求範囲に限定した理由について説明する。 C:0.04〜0.08mass% Cは、ベイナイト中に全組織の5vol%以上のM−A共
存組織を分散させるためには、0.04mass%以上含有させ
ることが必要である。しかし、0.08mass%を超えて添加
すると、後述する合金元素量が多いために溶接部でマル
テンサイト変態が起こりやすく、硬さが高くなり過ぎて
溶接性を損なうおそれがある。このため、Cの上限は0.
08mass%とする。
必要である。また、添加量の増加に伴い、鋼の強度は、
固溶強化により上昇する。しかし、0.50%を超えて添加
すると、靭性に悪影響を及ぼすため、上限は0.50mass%
とする。
添加することでベイナイト変態を促進させることができ
る。また、他の元素と較べて安価であるため、下限を1.
5mass%以上添加することで、コスト増加を抑えて高強
度化が可能となる。しかし、2.5mass%を超えて添加す
ると、溶接部の靭性を劣化させるので、上限は2.5mass
%とした。
る必要がある。しかし、0.10mass%を超えて添加する
と、Al2O3やAlN等の介在物の増加に伴って母材靭性が
劣化し、さらに溶接金属への希釈によって、特にTiO等
から生成するアシキュラフェライトにより高靭性を達成
している溶接金属においては、TiOの形成を阻害して、
溶接金属の靭性を著しく劣化させるので、上限を0.10ma
ss%とした。
るために0.01mass%以上添加する必要がある。このNb添
加の効果により、850℃以下の圧延で、ベイナイト組織
の著しい微細化が起こり、それに伴って、アスペクト比
≦4の塊状M−A共存組織の生成が促進される。一方、
0.08mass%を超えて添加すると、溶接熱影響部の靭性を
著しく劣化させるので、上限は0.08mass%とした。
固定するために、0.005mass%以上の添加が必要であ
る。また、このTiNは、溶接熱影響部のオーステナイト
粒成長抑制にも寄与する。一方、0.020mass%を超えて
添加すると、余剰Tiが炭化物を形成し、鋼のYSの上昇
を引き起こし、降伏比の増大を招くので、上限を0.020m
ass%とする。
進に寄与する。しかし、0.7mass%を超えて添加する
と、特に、焼戻し処理した場合に析出して析出強化を起
こし、YSが上昇して降伏比の増加を招くため、上限を
0.7mass%とする。
促進に寄与する。一方、1.0mass%を超えて添加しても
その効果が飽和するため、上限を1.0mass%とする。
促進に寄与する。一方、0.7mass%を超えて添加する
と、溶接部の靭性に悪影響を及ぼすので、上限を0.7mas
s%とする。
促進に寄与する。一方、0.7mass%を超えて添加する
と、Mo炭化物が析出して析出強化が起こり、特にYSが
増加して降伏比を高めるため、上限は0.7mass%とす
る。
における冷却速度を10℃/sec以上としたときに、フェラ
イト変態を起こすことなくベイナイト変態させ、その後
のM−A共存組織の生成に寄与する。
必要に応じて下記の成分を添加することができる。 Ca:0.001〜0.003mass% Caは、Sの化合物の形態制御元素として添加することが
できる。すなわち、鋼中に不可避的に形成される非金属
介在物MnSが、HAZの靭性等で問題となる場合に、0.
001mass%以上添加することで、より高温で生成するCa
Sに介在物形態を制御し、その悪影響をなくすことがで
きる。しかし、0.003mass%を超えて添加すると、CaS
がクラスター状に生成して逆に悪影響を及ぼすので、上
限を0.003mass%とする。
5mass%以上添加することができる。しかし、0.020mass
%を超える添加は、鋼の清浄度を劣化させるため、上限
を0.020mass%とした。
について説明する。 ベイナイト中のアスペクト比≦4.0のM−A共存組織の
体積率≧5vol% 本発明の目的とするAPI-5LX80級を超える大径溶接鋼管
の強度を満足させるためには、少なくとも鋼のミクロ組
織はベイナイトを基本とすることが必要である。さら
に、UOE法あるいはロールベンダー法で鋼管に成形す
る場合、曲げ加工によるYSの上昇が起きても、降伏比
≦85%を安定して満たすためには、鋼板段階での降伏比
をさらに低下させておく必要がある。
硬いM−A共存組織を分散させると、分散強化により鋼
板のTSを著しく上昇させることができ、その結果、鋼
板段階で高強度かつ低降伏比を達成することができる。
ここで、M−A共存組織の硬さはベイナイトの約2〜3
倍であることから、上記目標とする降伏比85%以下を達
成するためには、少なくとも5vol%以上のM−A共存
組織の分散が必要である。また、M−A共存組織が脆性
破壊の起点となって、鋼板の靭性を著しく低下させるこ
とを防止するためには、M−A共存組織の形態を、アス
ペクト比>4.0のような細長い形態からアスペクト比≦
4.0の塊状の形態に制御する必要がある。しかしなが
ら、塊状の形態制御を行っても、M−A共存組織の体積
率が20vol%を超えると、靭性の劣化が起こるので、そ
の体積率の上限は20vol%とする。以上のように、従来
材並の靭性を確保しつつ、低降伏比を達成するために
は、アスペクト比≦4.0のM−A共存組織を全組織の5
〜20vol%とすることが必要である。
鋼管の特性について説明する。鋼管の降伏比は、85%以
下である必要がある。この降伏比が85%超えると、API-
5LX80級を超えるような高強度鋼管では、地震発生時の
塑性変形能を確保することが難しくなるためである。
す必要がある。特に、地下に埋設されるようなパイプラ
インにおいては、土壌環境によっては、鋼管表面で腐食
反応が生じるケースが考えられる。このとき発生した水
素が原子化して鋼中に拡散し、水素割れ感受性の高い領
域に到達するといわゆる水素脆性破壊の原因となる。一
般に、硬さが高くなるにつれて水素割れ感受性が高くな
ることが知られており、溶接部の最高硬さ試験でのしき
い値はHv:350であるが、安全代を考慮して、硬さの上
限はHv≦300とした。
は、M−A共存組織が存在するにもかかわらず、靭性特
性の劣化が少ないという特徴を有している。そのために
は、造管後における温度−20℃でのシャルピー特性は、
母材部でvE-20≧250(J)、溶接部(HAZ)部でvE-20
≧150(J)以上であることが好ましい。
ついて説明する。 スラブ加熱温度:1000〜1250℃ 熱間圧延前のスラブ加熱温度は、1000℃以上とすること
により、均一なオーステナイト組織となることから、下
限温度を1000℃とする。一方、1250℃以上に加熱する
と、オーステナイト粒が粗大化し、そのまま熱間圧延す
ると、鋼板の靭性の劣化が大きいので、上限温度を1250
℃とした。なお、好ましくは1050〜1150℃の温度範囲が
望ましい。
% 加熱されたスラブは、直ちに熱間圧延を行い、降伏比を
制御するのに重要なM−A共存組織を生成させる。この
際、母材靭性に悪影響を及ぼさないようM−A共存組織
を形態制御するため、オーステナイトが再結晶しない低
温域で強加工してベイナイトを微細化することが重要で
ある。具体的には、850℃以下での累積圧下率を75%以
上とすることで、M−A共存組織の形態がアスペクト比
≦4.0が主となり、これにより靭性劣化が少ない鋼板を
得ることができる。
圧延温度は低いほど効果が大きいが、表面硬さの上昇を
抑えるためには、適正な冷却開始温度を確保する必要が
あるため、圧延終了温度は750℃以下とした。また、熱
間圧延温度が800℃を超えると、850℃〜圧延終了温度ま
での間に、累積圧下率75%以上の圧延を加えることが困
難となるので、圧延終了温度の上限は800℃とする。
圧延終了温度−50℃) 熱間圧延した板をベイナイト変態させるためには、直ち
に水冷を開始する必要がある。水冷開始温度が低いと、
水冷開始までにフェライト変態が起き、表面硬さは低下
するが、同時にYSおよびTSが低下する。このため、
冷却開始温度は圧延終了温度−50℃以上とする。
を抑制しつつ鋼板内部でベイナイト変態を起こさせるた
めには、冷却速度を10℃/sec以下とする必要がある。一
方、冷却速度が1℃/sec以下となると、フェライト変態
が生じてしまい、目的の鋼板強度が確保できなくなる。
そこで、1段目の冷却における冷却速度の1〜10℃/sec
とする。
望ましいベイナイトおよびM−A共存組織の量を確保す
ることができなくなるため、緩冷却を終了する温度は65
0℃以上とする必要がある。一方、750℃より高い温度で
緩冷却を終了し、強冷却を開始すると、表層部の過冷度
が大きく、マルテンサイト変態が生じて表面硬さが上昇
してしまうため、緩冷却の終了温度の上限は750℃とす
る。
よび1段目の緩冷却を行った後、水冷において10℃/sec
以上の冷却速度が確保できればフェライト変態を起こさ
ずベイナイト変態を起こさせ、さらにその後M−A共存
組織を生成させることができるため、2段目の冷却速度
の下限は10℃/secとする。一方、冷却速度が30℃/secを
超えると、ベイナイト変態が起こらずにマルテンサイト
変態が生じてしまい、YS,TSとも上昇するが、降伏
比も高くなり、かつ表面硬度も上昇するため、本発明の
目的は達成できなくなる。よって、冷却速度の上限は30
℃/secとする。
〜200℃の間と考えられ、200℃以上で水冷を停止する
と、必要なM−A共存組織の体積率が確保できなくな
る。このため、冷却停止温度は200℃以下とした。
性の改善を目的として、焼戻処埋を施すことができる。
この場合の焼戻温度は、450℃を超えると、ベイナイト
中に生成させたM−A共存組織が分解してしまい、焼戻
し後の鋼板の降伏比が高くなってしまう。よって、焼戻
温度の上限は450℃とする。
については特に限定することなく、従来実施されている
転炉法あるいは電炉法で鋼の成分調整を行った後、連続
鋳造法あるいは造塊法のいずれで鋳造してもよい。ま
た、製造した鋼板を、鋼管に成形する方法は、UOE法
あるいはロールベンダー法のいずれでも、本発明の目的
とする高強度かつ低降伏比が達成できるので、どちらを
用いてもよい。
い、表2に示す条件で、スラブ加熱、熱間圧延、冷却お
よび焼戻し処理を行い、板厚15〜30mmの厚鋼板を製造し
た。この鋼板から、ミクロ組織観察用の全厚×20mm幅×
10mm長さのブロックを採取した。この試料について、圧
延方向と平行な断面の表面を鏡面研磨した後、エチレン
ジアミン4酢酸5g、NaF0.5gを蒸留水100mlに溶解した
電解液中で、電圧3Vにて3秒間電解腐食を行い、さら
にNaOH25g、ピクリン酸5gを蒸留水100mlに溶解した
電解液中で、電圧6Vにて30秒間電解腐食を行って、M
−A共存組織を現出させた。その後、この試料の腐食面
を、走査型電子顕微鏡を用いて、800〜2000倍の適当な
倍率で無作為に4視野以上写真撮影を行い、それぞれの
写真に映ったM−A共存組織の形態および面積率を画像
解析処理で計算した。なお、本発明で製造した鋼板中の
M−A共存組織は3次元的に等方であると考えられるの
で、2次元断面像である走査型電子顕微鏡写真で得られ
た面積率を体積率と見なした。
に示すようにUOE法またはロールベンダー法により鋼
管に成形した後、溶接部から時計回りに180°の位置か
ら鋼管の長手方向に平行に、引張試験片(JIS4号試験
片)を採取し引張特性を調査した。また、溶接部および
溶接部から時計回りに180°の位置から、周方向にシャ
ルピー試験片(JIS4号試験片、Vノッチ)を採取し、温
度−20℃でのシャルピー特性も評価した。なお、溶接部
のシャルピー試験片は、溶接熱影響部の中心にノッチが
入るように採取した。
接部から時計回りに180°の位置から、鋼管の長手方向
と平行な断面が測定面となるように、硬さ測定試験片を
採取し、鏡面研磨を施した後、表裏面下1.5mmの位置お
よび板厚中央部でそれぞれ10点ずつ荷重10kgfのビッカ
ース硬さHvを測定し、その平均値で表面硬さを評価し
た。
示す。この表から明らかなように、本発明の条件を満た
した素材から製造された鋼管は、いずれもベイナイト主
体の組織でかつM−A共存組織が全組織の5〜20vol%
のベイナイト組織からなり、しかも降伏比が85%以下、
表面硬度Hvが300以下でかつシャルピー衝撃特性も母材
部vE-20:250J以上、溶接部vE-20:150J以上の良好
な値を示している。一方、本願発明の成分組成または製
造条件を外れた素材から製造された鋼管は、いずれも降
伏比が85%を超えているかまたは表面硬さHvが300超え
ているかあるいは母材部または溶接部のいずれかのシャ
ルピー特性が劣るものしか得られていない。
成分組成と熱間圧延後の冷却を適正化し、鋼管素材のミ
クロ組織を、アスペクト比≦4.0のM−A共存組織が全
組織の5〜20vol%であるベイナイトを主とする組織と
することにより、鋼管の靭性特性を劣化させることな
く、造管後の降伏比が85%以下でかつ表面硬度Hvが300
以下の高強度鋼管用素材を得ることができる。
Claims (5)
- 【請求項1】C:0.04〜0.08mass%、Si:0.05〜0.50ma
ss%、Mn:1.5〜2.5mass%、Al:0.01〜0.10mass%、N
b:0.01〜0.08mass%、Ti:0.005〜0.020mass%を含有
し、さらにCu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれる1種
または2種以上を、Cu:0.2〜0.7mass%、Ni:0.2〜1.0
mass%、Cr:0.2〜0.7mass%、Mo:0.2〜0.7mass%で、
かつ、下記式; Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/32+Mo/7≧0.11 の関係を満たすように含有し、残部はFeおよび不可避的
不純物よりなり、アスペクト比≦4.0のマルテンサイト
−オーステナイト共存組織が全組織の5〜20vol%であ
るベイナイト組織を主とするミクロ組織を有し、造管後
の鋼板表面の硬さがビッカース硬度Hvで300以下、降伏
比が85%以下であることを特徴とする造管後の表面硬度
ならびに降伏比が低い高強度鋼管素材。 - 【請求項2】上記成分組成に加えてさらに、 Ca:0.001〜0.003mass%、REM:0.005〜0.020mass% のうちから選ばれる1種または2種を含有してなる請求
項1に記載の高強度鋼管素材。 - 【請求項3】C:0.04〜0.08mass%、Si:0.05〜0.50ma
ss%、Mn:1.5〜2.5mass%、Al:0.01〜0.10mass%、N
b:0.01〜0.08mass%、Ti:0.005〜0.020mass%を含有
し、さらにCu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれる1種
または2種以上を、Cu:0.2〜0.7mass%、Ni:0.2〜1.0
mass%、Cr:0.2〜0.7mass%、Mo:0.2〜0.7mass%で、
かつ、下記式; Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/32+Mo/7≧0.11 の関係を満たすように含有し、残部Feおよび不可避的不
純物よりなる鋼スラブを、1000〜1250℃に加熱したの
ち、850℃以下での累積圧下率を75%以上、圧延終了温
度を750〜800℃とする熱間圧延を行い、その後、(圧延
終了温度〜圧延終了温度−50℃)から650〜750℃までを
冷却速度1〜10℃/secで緩冷却し、引き続き、200℃以
下までを冷却速度10〜30℃/secで強冷却することによ
り、アスペクト比≦4.0のマルテンサイト−オーステナ
イト共存組織が全組織の5〜20vol%であるベイナイト
組織を主とするミクロ組織を有するとともに、造管後の
鋼板表面の硬さがビッカース硬度Hvで300以下、降伏比
が85%以下のものとすることを特徴とする造管後の表面
硬度ならびに降伏比が低い高強度鋼管素材の製造方法。 - 【請求項4】上記成分組成に加えてさらに、 Ca:0.001〜0.003mass%、REM:0.005〜0.020mass% のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特
徴とする請求項3に記載の高強度鋼管素材の製造方法。 - 【請求項5】上記製造方法において、熱間圧延後の鋼板
を450℃以下の温度で焼戻し処理することを特徴とする
請求項3または4に記載の高強度鋼管素材の製造方法。
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JP2002106696A JP2003293075A (ja) | 2002-04-09 | 2002-04-09 | 造管後の表面硬度ならびに降伏比が低い高強度鋼管素材およびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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- 2002-04-09 JP JP2002106696A patent/JP2003293075A/ja active Pending
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