JP2003287756A - 機能性膜及びそれを用いた液晶表示素子 - Google Patents

機能性膜及びそれを用いた液晶表示素子

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JP2003287756A
JP2003287756A JP2003114216A JP2003114216A JP2003287756A JP 2003287756 A JP2003287756 A JP 2003287756A JP 2003114216 A JP2003114216 A JP 2003114216A JP 2003114216 A JP2003114216 A JP 2003114216A JP 2003287756 A JP2003287756 A JP 2003287756A
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JP2003114216A
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Inventor
Yukio Nomura
幸生 野村
Kazufumi Ogawa
小川  一文
Tadashi Otake
忠 大竹
Naoko Takebe
尚子 武部
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】シラン系化合物を被膜成分とし、撥水性、耐久
性、耐熱性に優れた機能性膜及びその製造方法、並びに
それを用いた液晶表示素子及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】基材表面に、X−(SiOX2n−SiX
3(ただしXはハロゲン、アルコキシ基およびイソシア
ネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合
物であり、nは0以上の整数である。)で表される、加
水分解させることのできる化合物を含む下地層溶液を接
触させ、300℃未満の温度で乾燥して下地層を形成
し、この下地層の表面にシラン系化合物を含む溶液を接
触させ、シラン系化合物分子を化学吸着させた後、当該
基材を300℃以上の温度で焼成することを特徴とす
る。これにより、基材表面の性質を改質することを目的
とするシラン系化合物からなる機能性膜の撥水性、耐久
性、耐熱性を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基材表面の性質を
改質するために基材表面に形成される機能性膜およびそ
の製造方法、並びにそれを液晶配向膜として用いた液晶
表示素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、基材表面の性質を改質して基
材表面に撥水性、防汚性や液晶を配向させる機能を付与
する手段が用いられており、このような手段の1つとし
て、トリクロロシラン系化合物やシランカップリング剤
等を溶解した溶液を基材に塗布し被膜成分を基材表面に
化学吸着させる方法がある。この方法によると、被膜成
分である溶質分子が化学吸着により基材に強力に結合す
るので、耐久性に優れた被膜が形成できる。しかし、基
材表面に水酸基等の活性水素が少ないと、吸着分子密度
が小さい粗な被膜となる。このような被膜では、十分に
表面改質の目的を達成することはできない。
【0003】そこで、活性水素密度の小さい基材に対し
ては、予めSiO2などを主剤するゾルゲル溶液を塗布
し焼成して、基材表面に活性水素密度の高い下地層を形
成した後、シランカップリング剤等を含むコーティング
溶液を塗布する手法により、下地層を介して基材にコー
ティング膜を結合・固定する方法が採用されている。こ
の方法によると、基材に直接コーティング溶液を塗布す
る方法に比べて、被膜の耐久性を高めることができる。
しかしながら、この手法を用いて作製された従来技術に
かかる機能性膜は、基材との密着性、被膜の均一性、耐
久性等の点で未だ十分とは言えず、更なる改善が望まれ
ている。
【0004】ところで、シランカップリング剤やトリク
ロロシラン系化合物等を含む溶液に、予めSiO2を混
合しておき、混合物を直接基材に塗布することにより、
下地層形成作業を簡便化し、かつ活性水素密度を高める
方法も考えられる。しかしこの方法によると、溶液を乾
燥する過程でシランカップリング剤やトリクロロシラン
系化合物等が基板と機能性膜の間の界面に偏析し、基板
と機能性膜の密着力をあげることはできない。
【0005】また、機能性膜の耐久性は、下地層の耐久
性にも依存し、更なる耐久性の向上にはSiO2膜より
も耐久性に優れた下地層が望まれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記に鑑みな
されたものであり、基材に対する被覆均一性や密着性、
耐久性に優れた機能性膜を作製することのできる機能性
膜およびその製造方法を提供することを目的とする。ま
た、該機能性膜を液晶配向膜として用いた液晶表示素
子、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の機能性膜は以下に述べる構成を有する。
【0008】(1)本発明の第1の態様に係る機能性膜
は、基材表面に下地層を介して形成された機能性膜に於
いて、前記下地層は、X−(SiOX2n−SiX
3(ただし、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイソシ
アネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官
能基であり、nは0以上の整数である。)で表される、
加水分解させることのできる化合物により形成された薄
膜であって、シロキサン結合を介して該基材上に結合固
定され、下記構造式(1)で表される構造単位を含む薄
膜であり、前記機能性膜は、分子末端基に−O−Si結
合基を有するシラン系化合物分子の集合群が前記下地層
に化学結合により化学吸着されてなる薄膜である。
【0009】
【化9】 (但し、nは0以上の整数である。) 上記の構成によれば、上記構造式(1)で示すように、
下地層の構成分子相互が重合すると共に、構成分子の一
部は基材と化学結合しているので、基材に強力に固着し
た下地層とすることができる。さらに、この下地層に、
機能性膜を構成するシラン系化合物分子が高密度に化学
吸着するので、耐久性に優れた均一で良質の機能性膜と
することができる。
【0010】(2)本発明の第2の態様に係る機能性膜
は、基材表面に下地層を介して形成された機能性膜に於
いて、前記下地層は、X'−(AlOX')n−AlX'2
(ただし、X'はアルコキシ基を表し、nは0以上の整
数である。)で表される、加水分解させることのできる
化合物により形成された薄膜であって、−O−Al結合
を介して該基材上に結合固定され、下記構造式(2)で
表される構造単位を含む薄膜であり、前記機能性膜は、
分子末端基に−O−Si結合基を有するシラン系化合物
分子の集合群が前記下地層に化学結合により化学吸着さ
れてなる薄膜である。
【0011】
【化10】 (但し、nは0以上の整数である。) 下地層は、上記構造式(2)で表される構造単位を含
み、−O−Al結合を介して基材上に結合固定されてい
るので、耐久性、例えば耐磨耗性や耐熱性に優れてい
る。よって、上記構成によると、上記下地層上に機能性
膜を形成することにより、極めて耐久性などに優れた薄
膜とすることができる。
【0012】(3)本発明の第3の態様に係る機能性膜
は、基材表面に下地層を介して形成された機能性膜に於
いて、前記下地層は、X−(SiOX2n−SiX
3(ただし、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイソシ
アネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官
能基であり、nは0以上の整数である。)で表される、
加水分解させることのできる化合物、およびX'−(A
lOX')n−AlX'2(ただし、X'はアルコキシ基を
表し、nは0以上の整数である。)で表される、加水分
解させることのできる化合物により形成された薄膜であ
って、シロキサン結合および−O−Al結合を介して前
記基材上に結合固定され、下記構造式(1)および構造
式(2)で表される構造単位を含む薄膜であり、前記機
能性膜は、分子末端基に−O−Si結合基を有するシラ
ン系化合物分子の集合群が前記下地層に化学結合により
化学吸着されてなる薄膜である。
【0013】
【化11】 (但し、nは0以上の整数である。) 上記の構成において、下地層は、上記構造式(1)およ
び(2)で表される、相互に異なる構造単位を含んだ薄
膜であり、Si系とAl系の化合物同士が分子レベルで
相互に入り乱れた緻密な構造を有している。よって、こ
の下地層を介して基材上に設けられる機能性膜は、緻密
性が高く耐久性に優れたものとすることができる。下地
層の緻密性が高いと、表層に於ける吸着部位が高密度に
存在する結果、より多くのシラン系化合物分子が該吸着
部位に化学吸着するからである。
【0014】上記第1〜第3の態様に係る機能性膜にお
いては、さらに以下に述べる構成要素を付加することが
できる。
【0015】すなわち、上記(1)〜(3)に於ける上
記シラン系化合物分子は、トリクロロシラン系化合物分
子とすることができる。トリクロロシラン系化合物分子
であると、それ自身の重合反応を起こすことなく、下地
層に露出したOH基に直接共有結合により結合(化学吸
着)するため、該トリクロロシラン系化合物分子を高密
度に化学吸着させることができ、撥水性、液晶配向性等
の表面改質効果が劣化し難い機能性膜を製造できる。
【0016】また、上記シラン系化合物分子は直鎖状炭
素鎖を有しているのが好ましい。直鎖状炭素鎖を備えて
いると、シラン系化合物分子が基板上で整然と配列し
て、高密度に化学吸着でき、撥水性、液晶配向性等の表
面改質効果が劣化し難いからである。
【0017】上記直鎖状炭素鎖はアルキル基もしくはフ
ルオロアルキル基を備えさせることができる。アルキル
基もしくはフルオロアルキル基を有するシラン化合物か
らなる被膜は撥水性や防汚性に優れる点で好ましく、ま
た撥水性に優れる被膜であると、下地層と基材の間に水
分が侵入するのを防止する。よって、一層耐久性が向上
する。また、液晶配向膜として使用する場合には、ホモ
ジニアス、プレチルト、ホメオトロピック配向などあら
ゆる配向に制御できる。
【0018】上記直鎖状炭素鎖は感光性基を備えさせる
ことができる。
【0019】また、上記直鎖状炭素鎖に於ける感光性基
部は、所望の方向に重合固定させることができる。これ
により、耐久性が向上した機能性膜を提供することがで
きると共に、該機能性膜を液晶配向膜として使用する場
合には、配向安定性に優れたものとすることができる。
【0020】さらに、上記感光性基が、下記化学式
(3)で表されるシンナモイル基とすることができる。
【0021】
【化12】 また、上記感光性基は、下記化学式(4)で表されるカ
ルコニル基とすることも可能である。
【0022】
【化13】 感光性基としてシンナモイル基やカルコニル基を用いれ
ば、少ない偏光紫外線照射量で重合させることができる
ので、紫外線の照射工程におけるタクトタイムの短縮を
図ることが可能である。
【0023】上記(1)〜(3)に於ける機能性膜は、
単分子層状の薄膜とすることができる。単分子層状の薄
膜であると、膜表面側に同一の官能基が配列するので、
該官能基に起因して発揮される機能性膜の機能の向上が
図れる。例えば上記官能基がCF3基である場合、単分
子層でない薄膜に比べてCF3基が機能性膜の膜表面側
に多く露出するため撥水性を向上させることができる。
また、配向性に優れた機能性膜とすることができ、液晶
配向膜として好適に形成することができる。
【0024】上記(1)〜(3)に於ける機能性膜を構
成する上記シラン系化合物分子の集合群は、所定方向に
配向させることができる。この様な構成とすることによ
り、近傍の液晶分子を所望の方向に配向させることが可
能な液晶配向膜とすることができる。
【0025】上記基材は、ガラス、ステンレスおよびア
ルミ酸化物より選択される何れか1つからなるものとす
ることができる。これにより、ガラス、ステンレスまた
はアルミ酸化物からなる基材に、耐久性に優れた機能性
膜を形成することができる。以上に述べた機能性膜を製
造する方法としては、以下に述べる(4)〜(6)の態
様を採用することができる。ここで、(4)〜(6)は
上記した第1〜第3の態様にそれぞれ対応する。
【0026】(4)上記第1の態様に対応する、本発明
の機能性膜の製造方法は、基材表面に、X−(SiOX
2n−SiX3(ただしXはハロゲン、アルコキシ基お
よびイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくと
も一種の官能基であり、nは0以上の整数である。)で
表される、加水分解させることのできる化合物を含む下
地層溶液を接触させ、乾燥して下地層を形成する下地層
形成工程と、前記下地層の形成された基材表面にシラン
系化合物を含む溶液を接触させ、シラン系化合物を基材
表面に化学吸着させることにより薄膜を形成する薄膜形
成工程と、薄膜形成工程の後、当該基材を焼成する焼成
工程と、を備える。
【0027】上記方法では、下地層形成工程においては
下地層の乾燥に止め、焼成を行わないが、この方法であ
ると乾燥過程で下地層の表面近傍に存在するSiX3
水分と反応してOH基を有するものに変化し、シラン系
化合物の吸着部位としての活性水素の密度が高まる一
方、焼成を行わないので焼成時の温度により活性水素が
失われることがない。このような下地層にシラン系化合
物を含む溶液を接触させると、高密度に存在する活性水
素部位にシラン系化合物分子が化学結合(化学吸着とも
いう)するので、シラン系化合物分子が高密度に化学吸
着してなる薄膜を形成させることができる。
【0028】そして、上記方法では、製造工程の最終段
階で基材に対する焼成を行うが、この焼成により、下地
層の構成分子相互が重合固化して一層強く基材に結着す
るとともに、構成分子の一部は基材と化学結合する。よ
って、下地層を基材に強力に固着させることができる。
【0029】以上から、上記製造方法によると、基材に
強力に固着した下地層を介してシラン系化合物からなる
薄膜が均一に基材に結合固定されてなる良質の機能性膜
を製造することができ、この機能性膜は耐久性等に優れ
る。
【0030】なお、シラン系化合物は、RpSi(O
−)3-p(Rは置換基、P は1〜3の整数である。)の
形で下地層を有する基材表面に共有結合により結合(化
学吸着)する。
【0031】(5)上記第2の態様に対応する、本発明
の機能性膜の製造方法は、基材表面に、X'−(AlO
X')n−AlX'2(ただし、X'はアルコキシ基を表
し、nは0以上の整数である。)で表される加水分解さ
せることのできる化合物を含む下地層溶液を接触させ、
乾燥して、下地層を形成する下地層形成工程と、前記下
地層の形成された基材表面にシラン系化合物を含む被膜
形成溶液を接触させ、シラン系化合物分子を基材表面に
化学吸着させることにより被膜となす被膜形成工程と、
前記被膜形成工程の後、当該基材を焼成する焼成工程
と、を備える。
【0032】上記方法における下地層形成工程において
は、下地層の乾燥に止め、焼成を行わないことを特徴と
する。この構成であると、乾燥過程で下地層の表面近傍
に存在するAl−X'が水分と反応してAl−OH基を
有するものに変化し、シラン系化合物分子の吸着部位と
しての活性水素の密度が高まる一方、焼成を行わないの
で焼成時の温度により活性水素が失われることがない。
このような下地層にシラン系化合物を含む溶液を接触さ
せると、高密度に存在する活性水素部位にシラン系化合
物分子が化学結合(化学吸着ともいう)する。よって、
シラン系化合物分子が高密度かつ均一に化学吸着してな
る薄膜を形成することができる。
【0033】また、上記方法では、製造工程の最終段階
で基材に対する焼成を行うが、この焼成により、下地層
の構成分子相互が重合・固化して一層強く基材に結着す
るとともに、構成分子の一部は基材と化学結合する。よ
って、下地層を基材に強力に固着させることができる。
【0034】更に、機能性膜の耐久性、例えば耐磨耗性
や耐熱性は、下地層の耐磨耗性や耐熱性などにより大き
く影響されるが、X'−(AlOX')n−AlX'2で表
される化合物からなる下地層は、SiO2単独層(機能
性膜の本体)よりも耐久性に優れるので、上記構成によ
ると耐久性に優れた機能性膜が得られる。すなわち、上
記構成によると、強力に基材に固着した下地層を介して
シラン系化合物分子を基材に高密度かつ均一に結合固定
させることができる。そして、このようにして形成した
機能性膜は極めて耐久性等に優れたものとなる。
【0035】なお、シラン系化合物は、RpSi(O
−)3-p(Rは置換基、pは1〜3の整数である。)の
形で下地層を有する基材表面に共有結合により結合(化
学吸着)する。
【0036】(6)上記第3の態様に対応する、本発明
の機能性膜の製造方法は、基材表面に、X−(SiOX
2n−SiX3(ただしXはハロゲン、アルコキシ基お
よびイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくと
も一種の官能基であり、nは0以上の整数である。)で
表される加水分解させることのできる化合物と、X'−
(AlOX')n−AlX'2(ただし、X'はアルコキシ
基、nは0以上の整数である。)で表される加水分解さ
せることのできる化合物とからなる2成分系混合物を含
む下地層溶液を接触させ、乾燥して、下地層を形成する
下地層形成工程と、前記下地層の形成された基材表面に
シラン系化合物を含む被膜形成溶液を接触させ、シラン
系化合物分子を基材表面に化学吸着させることにより被
膜となす被膜形成工程と、前記被膜形成工程の後、当該
基材を焼成する焼成工程と、を備える。
【0037】この方法は、下地層形成用としてX−(S
iOX2n−SiX3とX'−(AlOX')n−AlX'2
とを含む2成分系下地層溶液を用いることを特徴とす
る。そしてその他の事項については前記請求項1の場合
と同様にして機能性膜を製造する方法である。この構成
であると乾燥過程で下地層の表面近傍に存在するAl−
X'とSi−Xとがそれぞれ水分と反応してAl−OH
基、Si−OH基を有する化合物に変化し、シラン系化
合物分子の吸着部位としての活性水素の密度を高める。
また、この構成においても前記請求項1と同様、焼成を
行わないので焼成時の温度により活性水素が失われるこ
とがない。
【0038】更に、この構成では、化合物〔X−(Si
OX2n−SiX3〕と化合物〔X'−(AlOX')n
AlX'2〕との2成分系下地層溶液を使用するが、上記
Si系とAl系の化合物からなる2成分系であると、異
なる構造の化合物同士が分子レベルで相互に入り乱れ
て、各々単独で使用する場合に比較して、緻密な構造の
下地層を形成する。この下地層は、緻密性が高い分、表
層の水酸基密度が大きいので、より多くの被膜形成分子
が化学吸着する。よって、より緻密な機能性膜が形成さ
れ、その結果として熱エネルギーに起因する撥水性の劣
化が小さくなる。上記第1〜第3の態様に係る機能性膜
の製造方法においては、さらに以下に述べる構成要素を
付加することができる。
【0039】すなわち、前記2成分系混合物のSiとA
lのモル比Si/Alを1以上とすることができる。即
ち、Si系化合物とAl系化合物よりなる2成分系下地
層溶液を用いてなる下地層のSiとAlのモル比Si/
Alを1以上とすると、SiO2単独の下地層や、Al2
3単独の下地層に比較して、耐摩耗性、耐熱性に優れ
るとともに、モル比Si/Alが1未満の2成分系下地
層よりも耐摩耗性、耐熱性に優れた下地層が形成でき
る。そして、前記したように機能性膜の耐久性は下地層
の耐久性等に大きく依存するので、この構成によると、
耐摩耗性、耐熱性に優れた機能性膜を製造することがで
きる。
【0040】また、前記X−(SiOX2n−SiX3
で示される化合物は、アルコキシシランとすることがで
きる。アルコキシシランは、水分との反応や重合反応を
温度で制御しやすいとともに、水分と反応する際に塩酸
等の有害生成物を生じないので取り扱い易いという利点
を有する。したがって、上記構成であると、製造作業性
よく化学吸着部位の多い良質の下地層を形成することが
できる。また、製造の最終段階で行う焼成により下地層
を基材に強固に固着させることができ、その結果として
撥水性や耐久性に優れた機能性膜が製造できる。
【0041】上記下地層形成工程に於ける乾燥は、下地
層溶液に含まれる溶媒を蒸発させることを特徴とする。
上記下地層形成工程における前記乾燥は300℃未満の
温度で行うことができる。下地層の乾燥を300℃未満
の温度で行うと、下地層の表面に露出したAl−X'、
またはSi−Xを適度に水分と反応させてAl−OHや
Si−OHとなすことができる一方、無用な分解反応に
より水酸基(OH)が失われない。よって、この構成で
あると基材表面の活性水素密度が顕著に高まり、その結
果、薄膜形成工程において、シラン系化合物分子を高密
度に化学吸着させることができる。
【0042】上記焼成工程は、上記下地層に於ける構成
分子相互を重合・固化させることを特徴とする。焼成工
程における前記焼成は300℃以上の温度で行うことが
できる。焼成温度が300℃以上であると、下地層に含
まれる未反応分子の重合反応が十分に促進される。よっ
て、上記構成によると、下地層の硬度を高め、下地層を
基材に強力に固着させることができ、その結果として、
密着性、耐久性に優れた機能性膜が形成できる。
【0043】被膜形成用の前記シラン系化合物として、
トリクロロシラン系化合物を用いることができる。トリ
クロロシラン系化合物は、OH基との反応性が高いの
で、無水雰囲気下で基板と接触させると、下地層表面の
OH基のみに化学結合する。したがって、被膜形成させ
るに際して、酸、アルカリ、水等を使用する必要がない
ので、トリクロロシラン系化合物自体の重合反応を生じ
させない。つまり、被膜形成成分がトリクロロシラン系
化合物であると、下地層表面のOH基に結合すべき官能
基が、重合反応によって失われてしまうということがな
いので、被膜形成物質が高密度に存在する下地層表面の
OH基に確実に結合する。この結果、撥水性や耐久性に
優れた機能性膜が製造できる。
【0044】被膜形成用の前記シラン系化合物として、
アルキル基またはフルオロアルキル基を有するシラン系
化合物を用いることができる。アルキル基もしくはフル
オロアルキル基系のシラン化合物からなる被膜は撥水性
や防汚性に優れる点で好ましく、また撥水性に優れる被
膜であると、下地層と基材との間に水分が侵入するのを
防止する。よって、一層耐久性が向上する。
【0045】前記被膜形成溶液の溶剤として、非水系溶
剤を使用することができる。非水溶剤を用いる上記構成
であると、溶剤によりトリクロロシラン系化合物が加水
分解して反応性を失うことがないので、シラン系化合物
が下地層表面の親水性基部分に効率的に化学吸着する。
よって、下地層に強固に結合してなる機能性膜を形成す
ることができる。
【0046】さらに、前記非水系溶剤はシリコーンとす
ることができる。シリコーンは、水分の存在が少なく、
吸湿しにくいとともに、クロロシラン系化合物と溶媒和
してクロロシラン系化合物が水分と直接接触するのを防
止するように作用する。したがって、クロロシラン系化
合物とシリコーンからなる溶液であると、下地層に接触
させる際に、周囲雰囲気中の水分による悪影響を防止し
つつ、下地層の親水性基(OH基)部分にクロロシラン
系化合物を化学吸着させることができる。
【0047】前記被膜形成工程に於いては、前記基材表
面に対する被膜形成溶液の接触を、相対湿度35%以下
の雰囲気中で行うことが好ましい。相対湿度を35%以
下に保持した雰囲気中でトリクロロシラン化合物を含む
溶液を接触させる上記構成であると、実質的に雰囲気中
の水分の悪影響(水分とトリクロロシラン化合物との反
応)を抑制できる。
【0048】上記焼成工程の後、未吸着のシラン系化合
物分子を除去する洗浄工程を行うことができる。これに
より、基板上に化学吸着したシラン系化合物からなる均
一な単分子膜を形成することができ、均一な配向性を備
えた機能性膜を実現できる。
【0049】上記洗浄工程における洗浄剤として非水系
溶剤を使用することができる。これにより、未反応のシ
ラン系化合物を水と反応させることなく除去できる。
【0050】さらに、上記非水系溶剤として、クロロホ
ルムを用いることができる。クロロホルムは低沸点であ
るため、洗浄後の乾燥性に優れるので好ましい。
【0051】また、上記非水系溶剤として、N−メチル
−2ピロリジノンを用いることができる。N−メチル−
2ピロリジノンは、例えばシラン系化合物としてクロロ
シラン化合物を使用した場合に、薄膜形成工程または焼
成工程で該クロロシランと水との反応で生じたクロロシ
ランポリマーを溶解させるなど除去性に優れている。ま
た、本発明の液晶表示素子は、以下に述べる構成を有す
る。
【0052】(7)本発明の第4の態様に係る液晶表示
素子は、それぞれ電極と液晶配向膜とを備え、対向して
配置された一対の基板の間に、液晶層が設けられた液晶
表示素子に於いて、前記液晶配向膜は、前記電極表面に
下地層を介して形成されており、前記下地層は、X−
(SiOX2n−SiX3(ただし、Xはハロゲン、ア
ルコキシ基およびイソシアネート基からなる群より選ば
れる少なくとも一種の官能基であり、nは0以上の整数
である。)で表される、加水分解させることのできる化
合物により形成された薄膜であって、シロキサン結合を
介して前記基材上に結合固定され、下記構造式(1)で
表される構造単位を含む薄膜であり、前記液晶配向膜
は、分子末端基に−O−Si結合基を有するシラン系化
合物分子の集合群が前記下地層に化学結合により化学吸
着されてなる配向膜である。
【0053】
【化14】 (但し、nは0以上の整数である。) 上記の構成によれば、基板に強力に固着した下地層を介
して、該基板にシラン系化合物分子が高密度にかつ均一
に結合固定されている。そして、この様にして液晶配向
膜が基板上に設けられることにより、耐久性等に優れた
ものとすることができる。
【0054】上記構成により、超薄膜の液晶配向膜を提
供でき、電気光学特性に優れた液晶表示素子を実現する
ことができる。
【0055】(8)本発明の第5の態様に係る液晶表示
素子は、それぞれ電極と液晶配向膜とを備え、対向して
配置された一対の基板の間に、液晶層が設けられた液晶
表示素子に於いて、前記液晶配向膜は、前記電極表面に
下地層を介して形成されており、前記下地層は、X'−
(AlOX')n−AlX'2(ただし、X'はアルコキシ
基を表し、nは0以上の整数である。)で表される、加
水分解させることのできる化合物により形成された薄膜
であって、−O−Al結合を介して前記基材上に結合固
定され、下記構造式(2)で表される構造単位を含む薄
膜であり、前記液晶配向膜は、分子末端基に−O−Si
結合基を有するシラン系化合物分子の集合群が前記下地
層に化学結合により化学吸着されてなる配向膜である。
【0056】
【化15】 (但し、nは0以上の整数である。) 上記の構成によれば、下地層は、その構成分子相互が重
合・固化して一層強く基板に結合固定されることにより
基板に固着して形成されているので、耐摩耗性や耐熱性
に優れたものとすることができる。これにより、該下地
層上に形成された液晶配向膜は、耐摩耗性や耐熱性に優
れたものとすることができる。
【0057】また、従来の、例えばポリイミド樹脂など
からなる配向膜を備えた液晶表示素子に於いては、液晶
層に電界を印加する際に、該配向膜での自発分極によっ
て電荷が蓄積される結果、焼き付き現象が視認されてい
た。しかし、本発明に係る液晶配向膜は、上記構成のよ
うに、シラン系化合物分子の集合群が下地層に化学吸着
してなる構成であるため、超薄膜とすることができる。
これにより、自発分極にて蓄積される電荷は、上記従来
の配向膜と比較して極めて小さく、よって焼き付きの発
生を低減し、電気光学特性に優れた液晶表示素子を実現
することができる。
【0058】(9)本発明の第6の態様に係る液晶表示
素子は、それぞれ電極と液晶配向膜とを備え、対向して
配置された一対の基板の間に、液晶層が設けられた液晶
表示素子に於いて、前記液晶配向膜は、前記電極表面に
下地層を介して形成されており、前記下地層は、X−
(SiOX2n−SiX3(ただし、Xはハロゲン、ア
ルコキシ基およびイソシアネート基からなる群より選ば
れる少なくとも一種の官能基であり、nは0以上の整数
である。)で表される、加水分解させることのできる化
合物、およびX'−(AlOX')n−AlX'2(ただ
し、X'はアルコキシ基を表し、nは0以上の整数であ
る。)で表される、加水分解させることのできる化合物
により形成された薄膜であって、シロキサン結合および
−O−Al結合を介して前記基材上に結合固定され、下
記構造式(1)および構造式(2)で表される構造単位
を含む薄膜であり、前記液晶配向膜は、分子末端基に−
O−Si結合基を有するシラン系化合物分子の集合群が
前記下地層に化学結合により化学吸着されてなる薄膜で
ある。
【0059】
【化16】 (但し、nは0以上の整数である。) 上記構成により、焼き付きの発生を低減し、電気光学特
性に優れた液晶配向膜を実現することができる。
【0060】ここで、上記第4〜第6の態様に係る液晶
表示素子においては、さらに以下に述べる構成要素を付
加することができる。
【0061】上記液晶配向膜を構成するシラン系化合物
分子の集合群は、パターン状となるように所定の方向
に、または複数の方向に配向させることができる。
【0062】上記シラン系化合物分子が、感光性基を備
えた直鎖状炭素鎖を有しており、該感光性基が所望の方
向に重合固定させることができる。
【0063】上記液晶層はプレチルト配向とすることが
できる。また、上記液晶層はホモジニアス配向とするこ
とができる。さらに、上記液晶層はホメオトロピック配
向とすることができる。
【0064】上記液晶表示素子は、対向する上記電極が
片方の基板表面に形成されているインプレーンスイッチ
ング型液晶表示素子とすることができる。これによりイ
ンプレーンスイッチングモードで焼き付きの少ない電気
光特性に優れた液晶表示素子を提供できる。
【0065】以上に述べた液晶表示素子を製造する方法
としては、以下に述べる(10)〜(12)の態様を採
用することができる。ここで、(10)〜(12)は上
記した第4〜第6の態様に対応する製造方法である。
【0066】(10)上記第4の態様に対応する液晶表
示素子の製造方法は、少なくとも何れか一方の内側に液
晶配向膜を備えた一対の基板と、上記基板間に設けられ
た液晶層であって、上記液晶配向膜により所定の配向構
造を有する液晶層とを備えた液晶表示素子の製造方法に
おいて、上記基板上に、X−(SiOX2n−SiX 3
(ただしXはハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネ
ート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基
であり、nは0以上の整数である。)で表される、加水
分解させることのできる化合物を含む下地層溶液を接触
させ、乾燥して下地層を形成する下地層形成工程と、前
記下地層の形成された基板表面にシラン系化合物を含む
溶液を接触させ、シラン系化合物分子を基板表面に化学
吸着させることにより液晶配向膜を形成する薄膜形成工
程と、上記基板を焼成する焼成工程と、上記液晶配向膜
を配向処理する配向処理工程と、を備える。
【0067】(11)上記第5の態様に対応する液晶表
示素子の製造方法は、少なくとも何れか一方の内側に液
晶配向膜を備えた一対の基板と、上記基板間に設けられ
た液晶層であって、上記液晶配向膜により所定の配向構
造を有する液晶層とを備えた液晶表示素子の製造方法に
おいて、上記基板上に、X'−(AlOX')n−AlX'
2(ただし、X'はアルコキシ基を表し、nは0以上の整
数である。)で表される、加水分解させることのできる
化合物を含む下地層溶液を接触させ、乾燥して下地層を
形成する下地層形成工程と、前記下地層の形成された基
板表面にシラン系化合物を含む溶液を接触させ、シラン
系化合物分子を基板表面に化学吸着させることにより液
晶配向膜を形成する薄膜形成工程と、上記基板を焼成す
る焼成工程と、上記液晶配向膜を配向処理する配向処理
工程と、を備える。
【0068】(12)上記第6の態様に対応する液晶表
示素子の製造方法は、少なくとも何れか一方の内側に液
晶配向膜を備えた一対の基板と、上記基板間に設けられ
た液晶層であって、上記液晶配向膜により所定の配向構
造を有する液晶層とを備えた液晶表示素子の製造方法に
おいて、上記基板上に、X−(SiOX2n−SiX 3
(ただしXはハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネ
ート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基
であり、nは0以上の整数である。)で表される、加水
分解させることのできる化合物と、X'−(AlOX')
n−AlX'2(ただし、X'はアルコキシ基、nは0以上
の整数である。)で表される加水分解させることのでき
る化合物とからなる2成分系混合物を含む下地層溶液を
接触させ、乾燥して下地層を形成する下地層形成工程
と、前記下地層の形成された基板表面にシラン系化合物
を含む溶液を接触させ、シラン系化合物分子を基板表面
に化学吸着させることにより液晶配向膜を形成する薄膜
形成工程と、上記基板を焼成する焼成工程と、上記液晶
配向膜を配向処理する配向処理工程と、を備える。
【0069】上記第4〜第6の態様に係る液晶表示素子
の製造方法においては、さらに以下に述べる構成要素を
付加することができる。
【0070】すなわち、上記焼成工程の後、未吸着のシ
ラン系化合物分子を除去する洗浄工程を行うことができ
る。
【0071】さらに、上記洗浄工程の後、上記洗浄剤を
所望の液切り方向に液切りして、上記液晶配向膜を構成
するシラン系化合物分子を該液切り方向に配向させる液
切り配向工程を行うことができる。これにより、液晶配
向膜を構成するシラン系化合物分子を液切り方向に配向
させることができるので、液切り配向工程後に配向処理
を行う際に、例えば光配向法に於いては紫外線の照射量
を低減させたり、或いはラビング処理法に於いては処理
回数を低減させるなど、該配向処理の処理条件を緩和す
ることができる。
【0072】さらに、上記配向処理工程は、ラビング処
理により上記液晶配向膜に於けるシラン系化合物分子を
所望の方向に配向させるラビング配向工程とすることが
できる。これにより、ラビング条件が緩和され、ラビン
グ法により膜が削りとられることなく所望の方向にシラ
ン系化合物分子を配向させた液晶配向膜を製造できる。
【0073】また、上記液晶配向膜が感光性基を備えた
シラン系化合物分子の集合群からなる場合、上記配向処
理工程は、上記液晶配向膜の形成された基板面に偏光を
照射し、シラン系化合物分子相互を架橋反応させること
により、液晶分子を特定方向に配向させることができる
配向規制力を付与する偏光配向工程とすることができ
る。化学吸着した感光性基を有する膜を配向させる液切
り配向工程あるいはラビング配向工程により、感光性基
を所望の方向へ異方的な光反応を起こしやすくなり、従
来の光配向法(偏光配向工程)よりも偏光紫外線照射量
を少なくすることができる。また、静電気の発生の原因
となるラビング処理を行うことなく配向処理を行うこと
ができ、焼き付きの発生を抑制するなど電気光学特性に
優れた液晶表示素子を提供することができる。
【0074】さらに、上記偏光配向工程において照射す
る偏光の光強度は波長365nmで1J/cm2以上と
することができる。これにより、液晶層の配向構造をホ
モジニアス配向とすることができ、インプレーンスイッ
チングモードの液晶表示素子などに好適に適用すること
ができる。
【0075】また、上記シラン系化合物を含む溶液に、
5mol%以下のフロオロアルキル基を有するシラン化
合物を混合することができる。これにより、液晶層に於
ける配向構造をホメオトロピック配向とすることができ
る。
【0076】
【発明の実施の形態】本発明の機能性膜の製造方法で
は、 (1)X−(SiOX2n−SiX3(ただし、Xはハ
ロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート基からなる
群より選ばれる少なくとも一種の官能基であり、nは0
以上の整数である。)で表される、加水分解させること
ができる化合物、 (2)X'−(AlOX')n−AlX'2(但し、X'はア
ルコキシ基、nは0以上の整数である。)で表される加
水分解させることができる化合物(以下、下地層形成物
質)、または (3)X−(SiOX2n−SiX3(但し、Xはハロ
ゲン、アルコキシ基およびイソシアネート基からなる群
より選ばれる少なくとも一種の官能基であり、nは0以
上の整数である。)で表される加水分解させることがで
きる化合物と、X'−(AlOX')n−AlX'2(但
し、X'はアルコキシ基、nは0以上の整数である。)
で表される加水分解させることのできる化合物との混合
物を用いて作製した下地層溶液を、例えばガラス製の基
板表面に塗布し、溶剤を乾燥することにより、ガラス製
基板上に下地層を形成する。
【0077】次いで、この下地層の上にシラン系化合物
を含む溶液を塗布し、溶剤を乾燥する。これにより、シ
ラン系化合物の分子が下地層表面に化学吸着するので、
この後、ガラス製基材を焼成し、下地層を基板に強固に
固着させる。
【0078】この製造方法によると、シラン系化合物分
子を下地層に強力かつ均一に結合させることができると
ともに、製造の最終段階で行う焼成により下地層を基材
に強力に固着させることができる。よって、全体として
ガラス製基板に強固かつ均一に結合固定された機能性膜
を製造することができる。このような機能性膜である
と、長期に渡って表面改質被膜として好適に機能する。
これに対し、下地層形成時に焼成を行う従来の製法によ
ると、焼成時の温度により下地層表面の水酸基が失われ
るため、十分にシラン系化合物の吸着部位(OH基)を
確保できない。したがって、従来法で製造された機能性
膜は、本発明法で製造された機能性膜に比べ、密着性、
均一性、耐久性が劣るものとなる。
【0079】ここで、上記本発明製造方法においては、
下地層形成時の乾燥を300℃未満の温度で行うのがよ
く、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80
℃〜150℃で行うのがよい。乾燥温度を300℃以上
とすると、下地層成分であるX'−(AlOX')n−A
lX'2が重合し、またはX'−(AlOX')n−AlX'
2とX−(SiOX2n−SiX3とが重合し、下地層表
面の活性水素が失われるからである。そして、乾燥効率
と下地層形成物質の重合の両面を考慮すると、50℃〜
200℃の温度が好ましく、より好ましい乾燥温度とし
ては80℃〜150℃が推奨される。80℃〜150℃
の温度であると、下地層表面のAl−X'、または2成
分系におけるAl−X'とSi−Xが適度に水分と反応
して下地層表面の活性水素が増加する一方、過度な分解
を招かない。
【0080】他方、製造の最終段階で行う焼成工程にお
ける焼成は、300℃以上の温度で行うのがよく、好ま
しくは300℃〜500℃、より好ましくは400℃〜
500℃の温度で行うのがよい。300℃未満の温度で
あると、下地層成分であるX'−(AlOX')n−Al
X'2の重合反応、またはX'−(AlOX')n−AlX'
2とX−(SiOX2n−SiX3との重合反応が十分に
進行しないため、硬度の小さい下地層となり、基材との
結合力も弱いものとなる。その一方、焼成温度を500
℃以上とすると、下地層形成物質や薄膜成分であるシラ
ン系化合物が分解する恐れが生じる。よって、焼成効率
と分解の両面からすると、400℃〜500℃の温度で
焼成するのがよい。
【0081】なお、上記シラン系化合物を含む溶液と
は、シラン系化合物が溶剤に溶解した溶液を意味する
が、シラン系化合物の一部が未溶解状態であってもよ
い。このような溶液の典型としては、過飽和状態の溶液
がある。
【0082】上記本発明製造方法において、X−(Si
OX2n−SiX3(ただしXはハロゲン、アルコキシ
基およびイソシアネート基からなる群より選ばれる少な
くとも一種の官能基であり、nは0以上の整数であ
る。)で示される化合物としては、例えば下記する一般
式で表される化合物が挙げられる。
【0083】なお、上記したごとく、水分との反応や重
合反応を温度で制御し易いとともに、水分と反応した際
に塩酸等の有害生成物を生じないので取扱い易い等の理
由から、下記化合物のうち特にアルコキシシランが好ま
しい。 (1)SiX4 (n=0に相当) (2)SiX3−O−SiX3 (n=1に相当) さらに具体的な化合物としては (3)Si(OC254 (4)Si(OCH33−O−Si(OCH33 (5)Si(OC253−O−Si(OCH33 (6)Si(OC253−O−Si(OC253 (7)Si(NCO)4 (8)Si(NCO)3−O−Si(NCO)3 (9)SiCl4 (10)SiCl3−O−SiCl3 (11)Si(OCH33−O−Si(OC253 上記本発明製造方法において、X'−(AlOX')n
AlX'2(但し、X'はアルコキシ基、nは0以上の整
数である。)で示される化合物としては、例えば下記す
る一般式で表される化合物が挙げられる。 (12)AlX'3(n=0に相当) (13)AlX'2−AlX'2(n=1に相当) さらに具体的な化合物としては (14)Al(OC253 (15)Al(OCH32−O−Al(OCH32 (16)Al(OCH32−O−Al(OC252 他方、本発明で用いることができるシラン化合物として
は、下記の化合物を例示することができる。 (17)SiYpCl3-p (18)CH3(CH2sO(CH2tSiYqCl3-q (19)CH3(CH2u−Si(CH32(CH2v
−SiYqCl3-q (20)CF3COO(CH2wSiYqCl3-q (21)CH3−(CH2rSiYqCl3-q 但し、pは0〜3の整数、qは0〜2の整数、rは1〜
25の整数、sは0〜12の整数、tは1〜20の整
数、uは0〜12の整数、vは1〜20の整数、wは1
〜25の整数を示す。また、Yは、水素、アルキル基、
アルコキシル基、含フッ素アルキル基または含フッ素ア
ルコキシ基である。
【0084】トリクロロシラン系化合物の具体例して
は、下記(22)−(34)に示す化合物が例示でき
る。 (22)CH3CH2 O(CH215SiCl3 (23)CH3(CH22Si(CH32(CH215
iCl3 (24)CH3(CH26Si(CH32(CH29
iCl3 (25)CH3COO(CH215SiCl3 (26)CF3(CF27−(CH22−SiCl3 (27)CF3(CF25−(CH22−SiCl3 (28)CF3(CF27−C64−SiCl3 (29)CF3(CH29SiCl3 (30)CH3(CH29OSiCl3 (31)CH3(CH29Si(CH32(CH210
iCl3 (32)C65−CH=CH−CO−O−(CH26
O−SiCl3 (33)C65−CO−CH=CH−C64−O−(C
26−O−SiCl3 (34)C65−CH=CH−CO−C64−O−(C
26−O−SiCl3 ここで化合物(32)は感光性基としてのシンナモイル
基を有し、化合物(33)および(34)も感光性基と
してのカルコニル基を有しており、紫外線を照射するこ
とにより、感光性基部を重合させることができる。
【0085】さらに、上記クロロシラン系化合物の代わ
りに、クロロシリル基をイソシアネート基に置き扱えた
下記一般式(35)−(39)で表されるイソシアネー
ト系シラン化合物を用いることができる。 (35)SiYp(NCO)4-p (36)CH3−(CH2rSiYq(NCO)3-q (37)CH3(CH2sO(CH2tSiYq(NC
O)3-q (38)CH3(CH2u−Si(CH32(CH2v
−SiYq(NCO)3-q (39)CF3COO(CH2vSiYq(NCO)3-q 但し、p、q、r、s、t、u、v、wおよびxは、前
記と同様である。イソシアネート系シラン化合物の具体
例しては、下記(40)−(47)に示す化合物が例示
できる。 (40)CH3CH2 O(CH215Si(NCO)3 (41)CH3(CH22Si(CH32(CH215
i(NCO)3 (42)CH3(CH26Si(CH32(CH29
i(NCO)3 (43)CH3 COO(CH215Si(NCO)3 (44)CH3(CH29Si(OC253 (45)CF3(CF27−(CH22−Si(NC
O)3 (46)CF3(CF25−(CH22−Si(NC
O)3 (47)CF3(CF27−C64−Si(NCO)3 さらに、本発明では、一般式SiYk(OA)4-k(但
し、Yは前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2
または3)で表されるアルコキシ系シラン化合物を用い
ることが可能である。中でも、CF3−(CF2n
(R)l−SiYp(OA)3-p(nは1以上の整数、好
ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、ビニル基、
エチニル基、アリール基、シリコンもしくは酸素原子を
含む置換基、lは0または1、Y、Aおよびpは前記と
同様)で表されるアルコキシ系シラン化合物が、防汚性
を高める点で優れている。但し、本発明で使用できるア
ルコキシ系シラン化合物は上記に限定されるものではな
く、これ以外にも、例えば一般式CH3−(CH2r
SiYq(OA)3- qおよびCH3−(CH2s−O−
(CH2t−SiYq(OA)3-q、CH3−(CH2u
−Si(CH32−(CH2v−SiYq(OA)3-q
CF3COO−(CH2v−SiYq(OA)3-q(但
し、p、q、r、s、t、u、v、w、YおよびAは、
前記と同様)などが使用できる。アルコキシ系シラン系
化合物の具体例としては、たとえば下記に示す(47)
−(71)を挙げることができる。 (47)CH3CH2O(CH215Si(OCH33 (48)CF3CH2O(CH215Si(OCH33 (49)CH3(CH22Si(CH32(CH215
i(OCH33 (50)CH3(CH26Si(CH32(CH29
i(OCH33 (51)CH3(CH29Si(NCO)3 (52)CH3COO(CH215Si(OCH33 (53)CF3(CF25(CH22Si(OCH33 (54)CF3(CF27−C64−Si(OCH33 (55)CH3CH2O(CH215Si(OC253 (56)CH3(CH22Si(CH32(CH215
i(OC253 (57)CH3(CH26Si(CH32(CH29
i(OC253 (58)CF3(CH26Si(CH32(CH29
i(OC253 (59)CH3COO(CH215Si(OC253 (60)CF3COO(CH215Si(OC253 (61)CF3COO(CH215Si(OCH33 (62)CF3(CF29(CH22Si(OC253 (63)CF3(CF27(CH22Si(OC253 (64)CF3(CF25(CH22Si(OC253 (65)CF3(CF2764Si(OC253 (66)CF3(CF29(CH22Si(OCH33 (67)CF3(CF25(CH22Si(OCH33 (68)CF3(CF27(CH22SiCH3(OC2
52 (69)CF3(CF27(CH22SiCH3(OCH
32 (70)CF3(CF27(CH22Si(CH32
25 (71)CF3(CF27(CH22Si(CH32
CH3 なお、イソシアネート系またはアルコキシ系のシラン化
合物として例示した(20)−(71)の化合物を用い
ると、化学結合に際し塩酸が発生しないため、装置の損
傷がなく作業がしやすいというメリットがある。
【0086】ここで、シラン化合物を用いて基材表面に
薄膜を形成するプロセスを説明するとともに、本発明を
実施するための要素としての溶剤および基材について説
明する。シラン系化合物としてCF3−(CF27
(CH22−SiCl3をガラス製基板(ガラス板)に
接触させた場合の反応を、下記化学反応式に示す。な
お、このガラス製基板にはすでに下地層が形成されてい
るものとする。
【0087】
【化17】 上記化学反応式に示す最初の反応ステップ(脱塩化水素
反応)は、一般に化学吸着反応と呼ばれている反応であ
り、OH基を有する基材にシラン化合物溶液を接触させ
ると、脱塩化水素反応が生じてシラン化合物分子の一端
が基材表面のOH基部分に化学結合する。この反応はシ
ラン化合物のSiCl基とOH基との反応であるから、
シラン化合物溶液中に水分が多く含まれていると、基材
との反応が阻害される。よって、反応を円滑に進行させ
るには、OH基等の活性水素を含まない非水系溶剤を用
いるのが好ましく、また湿度の低い雰囲気中で行うこと
が好ましい。なお、湿度条件については、下記実験の部
で詳細に説明する。
【0088】本発明で好適に使用できるシラン化合物の
溶剤としては、水を含まない炭化水素系溶剤、フッ化炭
素系溶剤、シリコーン系溶剤などが例示でき、石油系の
溶剤で使用可能なものとしては、例えば石油ナフサ、ソ
ルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパ
ラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリ
ン、灯油、リグロイン、ジメチルミリコーン、フェニル
シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエステルシ
リコーンなどを挙げることができる。また、フッ化炭素
系溶剤としては、フロン系溶剤や、フロリナート(3M
社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)などが使用で
きる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、或い
は相溶するもの同志を2種以上組み合わせて用いてもよ
い。
【0089】また、本発明を適用できる基材の要件とし
ては、組成式X'−(AlOX')n−AlX'2(但し、
X'はアルコキシ基、nは0以上の整数である。)で表
される化合物を含む溶液、または組成式X−(SiOX
2n−SiX3(但し、Xはハロゲン、アルコキシ基お
よびイソシアネート基、nは0以上の整数である。)で
表される化合物と、組成式X'−(AlOX')n−Al
X'2(但し、X'はアルコキシ基、nは0以上の整数で
ある。)で表される化合物との混合物を含む2成分系溶
液を塗布、添着、付着等(これらを接触と総称する)と
することができ、かつ焼成に耐えるのであればよい。こ
のような条件を満たす基材としては、ガラス、セラミッ
クス、アルミ酸化物や、アルミニウム、ステンレスなど
の金属が例示できる。なお、耐熱性を有するプラスチッ
クに対しても本発明製造方法が適用できることは勿論で
ある。
【0090】また、本発明の機能性膜を液晶配向膜とし
て液晶表示素子に適用する場合には、該機能性膜は以下
の方法で製造することができる。
【0091】先ず、上記したのと同様の手順にて、IT
Oからなる電極などが形成された基板上に下地層を形成
する(下地層形成工程)。さらに、該下地層上に液晶配
向膜としての機能性膜を形成した後(薄膜形成工程)、
基板を焼成する(焼成工程)。
【0092】焼成工程の後、未反応のシラン系化合物を
除去するため、液晶配向膜が形成された基板を、洗浄剤
にて洗浄する(洗浄工程)。ここで、前記洗浄剤として
は、水を含まない炭化水素系溶剤、フッ化炭素系溶剤、
シリコーン系溶剤などが例示でき、石油系の溶剤として
使用可能なものとしては、たとえば石油ナフサ、ソルベ
ントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフ
ィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、
灯油、リグロイン、ジメチルシリコーン、フェニルシリ
コーン、アルキル変性シリコーン、ポリエステルシリコ
ーンなどを挙げることができる。また、フッ化炭素系溶
媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製
品)、アフルード(旭ガラス社製品)などが使用でき
る。これらは単独で用いてもよく、或いは相溶するもの
なら2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、クロ
ロホルムは洗浄後の乾燥性に優れるため好ましい。ま
た、N−メチル−2ピロリジノンは薄膜形成工程もしく
は焼成工程でクロロシランと水との反応で生じたクロロ
シランポリマーの除去性に優れる。
【0093】続いて、上記洗浄工程の後、洗浄剤の液切
りを行う。すなわち、洗浄液の液切り方向が、液晶配向
膜を配向処理する際の配向処理方向に概ね一致するよう
に、基板を引き上げる(液切り配向方向)。これによ
り、液晶配向膜を構成する膜構成分子を液切り方向に傾
斜させ、仮配向させることができる。続いて、上記基板
を乾燥させることにより、洗浄剤を除去する。
【0094】次に、液切り方向に仮配向させた液晶配向
膜を配向処理する。例えば、液晶配向膜を構成する膜構
成分子が感光性基を有する場合には、偏光紫外線を照射
することにより配向処理する(偏光配向工程)。このと
き、液切り方向と偏光紫外線の偏光方向とはほぼ一致す
るように設定されている。これにより、感光性基同士に
よる光重合反応により、偏光方向に沿うようにして架橋
結合させることができ、膜構成分子の配向を固定させる
ことができる。ここで、上記感光性基としては、下記化
学式(5)に示すシンナモイル基や、下記化学式(6)
に示すカルコニル基等が例示できる。
【0095】
【化18】 これらの感光性基が偏光紫外線を照射されると、上記化
学式(5)および(6)に於ける炭素−炭素二重結合部
分の少なくとも1つの結合手を介して隣り合う膜構成分
子が架橋結合した構造となる。尚、上記カルコニル基が
シンナモイル基よりも偏光紫外線に対する感度が良好な
点を勘案すると、感光性基としてカルコニル基を使用す
るが好ましい。これにより、偏光紫外線の照射量を低減
することができ、偏光配向工程に於けるタクトタイムの
短縮が図れる。上記偏光配向工程に於ける、偏光紫外線
の照射条件としては、偏光紫外線の波長分布が300〜
400nm付近に分布していればよく、また照射量は波
長365nmにおいて約50〜2000mJ/cm2
範囲内であればよい。特に、1000mJ/cm2以上
では、ホモジニアス配向構造とすることができる。その
反対に100mJ/cm2未満ではプレチルト配向構造
とすることができる。
【0096】一方、液晶配向膜を構成する膜構成分子に
感光性基が存在しない場合には、光配向法に代えてラビ
ング処理をする。この場合においても、液切り方向とラ
ビング処理方向とがほぼ一致するように設定する。これ
により、膜構成分子は予めラビング処理方向に配向して
いるため強く擦る必要がなく、従来のラビング処理と比
較してラビング条件を緩和することができる。上記ラビ
ング処理に於けるラビング条件としては、ラビングの溝
部分の幅および深さが概ね0.01〜0.5μmの範囲
内であればよい。
【0097】
【実施例】以下、実施例に基づいて、本発明の内容を具
体的に説明する。 (実施例1)本実施例は、第1の態様に係る機能性膜に
対応する。
【0098】X−(SiOX2n−SiX3(ただしX
はハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート基から
なる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であり、n
は0以上の整数である。)で示される化合物として、S
i(OC254を用意し、Si(OC254/HCl
/水/イソブロピルアルコール=1/0.01/5/2
5(モル比)の下地層溶液を作製した。この下地層溶液
にガラス板を浸漬した後、1mm/秒の速度で引き上げ
ガラス板の表面に下地層溶液を塗布し、80℃の温度で
15分間乾燥してSi(OC254からなる未焼成の
下地層をガラス板の表面に形成した。
【0099】次に、シラン化合物としてC81724
SiCl3を用意し、C81724SiCl3/C818
=1/99(体積比)のシラン化合物溶液を作製した。
そして、相対湿度を5%以下とした無水雰囲気下で、こ
のシラン化合物溶液に、下地層(未焼成)の形成された
前記ガラス板を浸漬し、1mm/秒の速度で引き上げる
手法によりガラス板表面にシラン化合物溶液を塗布し
た。この後、ガラス板表面の溶剤(C818)を蒸発さ
せ、更にこのガラス板を400℃で15分焼成した。こ
のようにして機能性膜を有する基板A1を作製した。
【0100】この方法の製造フローを説明する概念図を
図1に示す。図1(a)はガラス板に下地層溶液を塗布
し乾燥したとき、下地層成分であるSi(OC254
が加水分解してOH基が導入された様を示している。ま
た、図1(b)は、前記下地層にシラン化合物溶液を塗
布したとき、シラン系化合物(C81724SiC
3)がOH基部分に化学吸着した様を示している。更
に、図1(c)は、基板を焼成することにより、下地層
成分が重合した様を示している。
【0101】なお、以下では、機能性膜の形成されたガ
ラス板を基板と称し、また下地層形成時に焼成を行わず
に、シラン化合物溶液を塗布した後に焼成を行う方法を
後焼成法と称することとする。 (比較例1)前記下地層溶液が塗布されたガラス板に対
し、80℃・15分間の乾燥に代えて、400℃・15
分間の焼成を行う方法により下地層(焼成下地層)を形
成したこと、及びシラン化合物溶液が塗布されたガラス
板に対し、400℃・15分間の後焼成を行わなかった
こと以外は、前記実施例1と同様にして、機能性膜を有
する基板B1を作製した。
【0102】この方法の概念図を図2に示す。図2
(a)はガラス板に下地層溶液を塗布し乾燥したとき、
下地層成分であるSi(OC254が加水分解してO
H基が導入された様を示している。また図2(b)は、
前記下地層を焼成したために、下地層表面のOH基の一
部が失われた様を示している。更に、図2(c)は、少
ないOH基にシラン系化合物(C81724 SiCl
3)が化学吸着した様を示している。
【0103】なお、比較例1は従来技術にかかる方法で
あり、この方法で下地層形成時に行う焼成を前焼成法と
称することとする。 (比較例2)下地層を全く施さない無処理のガラス板を
用い、このガラス板を前記シラン化合物溶液に浸漬し1
mm/秒の速度で引き上げ、C818を蒸発させて比較
例2にかかる機能性膜を有する基板C1を作製した。こ
の方法における概念図を図3に示す。
【0104】図3(a)はガラス板表面におけるOH基
の存在状態を示すものであり、図3(b)は、少ないO
H基にシラン系化合物(C81724SiCl3)が化
学吸着した様を示している。
【0105】〔膜作製条件と耐久性〕上述の基板A1、
B1、C1を用いて、下地層の有無、焼成条件の違いと
接触角との関係を調べた。接触角の測定は次のようにし
て行った。基板A1〜C1の各々について、食器洗い用
スポンジを用い2kgfの荷重を加えて10000回擦
り、この間、2000回毎に基板の汚れをエタノールを
用いた超音波洗浄により除去し、しかる後に被膜形成面
に水10μlを滴下し接触角を測定した。測定結果を図
4に示す。
【0106】図4より明らかなように、本発明にかかる
製造方法で製造した基板A1(実施例1)は、当初の接
触角が大きく、またスポンジでの擦りによっても接触角
の低下が殆ど認められなかった。これに対し、前焼成法
にかかる基板B1(比較例1)は、上記基板A1に比較
し当初の接触角が小さく、またスポンジでの擦りによっ
て接触角が大幅に低下する傾向が認められた。更に、下
地層を設けなかった基板C1(比較例2)は、上記基板
B1よりも当初の接触角が小さく、またスポンジでの擦
りによる接触角の低下も大きかった。
【0107】以上の結果から、本発明にかかる製造方法
によると、撥水性および耐久性に優れた機能性膜が形成
できることが確認された。
【0108】なお、上記結果は次のように考察できる。
すなわち、基板A1では、下地層が基板面に強固に固着
され、この下地層にシラン化合物の分子が均一かつ強力
に化学結合し、良質の薄膜を形成しているために、当初
の接触角が大きく、かつ擦りによっても接触角の低下を
招く薄膜の剥離が生じなかったものと考えられる。他
方、下地層を前焼成した基板B1では、焼成により基板
表面の水酸基が失われために、基板A1に比べ均一性や
結着強度の小さい被膜が形成されたと考えられる。ま
た、下地層を有しない基板C1では、シラン化合物分子
が結合すべき活性水素部位が少ないために、基板に直接
結合していない宙ぶらりんのシラン化合物分子を有する
不均一な薄膜が形成され、その結果として当初の接触角
が小さく、擦りに対する抵抗性が小さくなったものと考
えられる。 (実施例2)X−(SiOX2n−SiX3(ただしX
はハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート基から
なる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であり、n
は0以上の整数である。)で示される化合物として、S
i(OC254に代えて、Si(NCO)4を用いたこ
と以外は前記実施例1と同様にして、実施例2にかかる
基板D1を作製した。
【0109】〔下地層成分の違いと耐久性〕上記実施例
1にかかる基板A1と実施例2にかかる基板D1とを、
300℃に加熱した空気中に100時間放置した。この
間、20時間毎に基板の汚れをエタノールを用いて超音
波洗浄し除去し、しかる後に被膜形成面に水10μlを
滴下して接触角を測定した。この測定法を以下、加熱耐
久試験法という。
【0110】測淀結果を図5に示す。なお、基板A1と
基板D1とは、下地層を形成する物質が異なるのみであ
る。
【0111】図5から明らかなように、下地層成分とし
て、Si(OC254を用いた実施例1の基板A1
が、Si(NCO)4を用いた実施例2の基板D1より
当初の接触角が大きく、また接触角の経時的な低下も小
さかった。この結果より、下地層成分としてはイソシア
ネートシランよりもアルコキシランの方が、機能性膜の
撥水性および耐久性を高めることができる点で優れてい
ることが判る。 (実施例3)シラン化合物(薄膜成分)として、C8
1724SiCl3に代えて、C81 724Si(OC
253を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、
実施例3にかかる基板E1を作製した。
【0112】〔シラン化合物の違いと耐久性〕実施例3
の基板E1と前記実施例1の基板A1を用いて、薄膜成
分の違いと耐久性の関係を、上記加熱耐久試験法で調べ
た。
【0113】測淀結果を図6に示す。図6より、両基板
の当初の接触角は同じであったが、シラン化合物として
81724SiCl3を用いた基板A1(実施例1)
は、C81724Si(OC253を用いた基板E1
(実施例3)よりも経時的な接触角の低下が少ないこと
が認められた。この結果から、シラン化合物としては、
耐久性の点でトリクロロシラン系化合物が優れているこ
とが判る。 (実施例4)シラン系化合物を溶解するための溶剤とし
て、C818に代えてヘキサメチルジシロキサン(直鎖
状シリコーン)を用いたこと以外は、実施例1と同様に
して、実施例4にかかる基板F1を作製した。
【0114】〔溶剤の違いと耐久性〕前記加熱耐久試験
法を用いて、実施例4の基板F1と実施例1の基板A1
の性能を比較した。
【0115】測淀結果を図7に示す。図7より、両基板
の当初の接触角は同じであったが、シラン化合物を溶解
するための溶剤として、ヘキサメチルジシロキサンを用
いた基板F1(実施例4)は、C818を用いた基板A
1(実施例1)よりも経時的な接触角の低下が少ないこ
とが認められた。この結果から、シラン化合物を溶解す
るための溶剤としては、高温耐久性の機能性膜が得られ
る点で、ヘキサメチルジシロキサンが優れていることが
判る。
【0116】なお、シクロヘキサメチルトリシロキサン
(環状シリコーン)を用いた場合においても、上記と同
様な結果が得られた。 (実施例5)シラン系化合物として、C1021SiCl
3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例
5にかかる基板G1を作製した。 (実施例6)シラン化合物としてSiCl4を用いたこ
と以外は前記実施例1と同様にして、実施例6にかかる
基板H1を作製した。
【0117】〔防汚性試験〕上記基板G1(実施例5)
と基板H1(実施例6)、及び前記基板A1(実施例
1)の被膜性能を比較するため、各々の基板について防
汚性試験を行った。防汚性試験の方法は、次の通りであ
る。先ず、砂糖/醤油=1/1(重量比)からなるシロ
ップを基板上に0.2cc滴下し、300℃で15分焼
き付ける。この後、こびりつきを濡れふきんで拭き取
り、再び上記シロップ0.2ccを基板上に滴下し、3
00℃で15分焼き付け、上記と同様にしてこびりつき
を拭き取る。このサイクルをこびりつきが拭き取れなく
なるまで繰り返し、その回数を数えた。その結果を表1
に示す。
【0118】
【表1】 表1の結果をシラン化合の種類と防汚性との関係で防汚
性が良い順に表すと、C81724SiCl3(基板A
1)>>C1021SiCl3(基板G1)>>SiCl4
(基板H1)であり、C81724SiCl3とC10
21SiCl3とが良好な防汚性を示し、特にC8172
4SiCl3の防汚性が優れていた。他方、SiCl4
は、殆ど防汚性を有していなかった。
【0119】これらの結果から、防汚性を高めるために
は、アルキル基やフルオロアルキル基を有するシラン系
化合物を用いるのが好ましい。
【0120】〔実験〕以上に記載した実施例ではシラン
化合物溶液への浸漬引き上げを無水雰囲気下で行った
が、ここでは下地層の形成された基板にシラン化合物溶
液を塗布する際における周囲雰囲気中の湿度の影響を調
べた。実験方法としては、シラン化合物溶液への基板の
浸漬引き上げ時における周囲雰囲気の相対湿度を5、1
0、15、20、25、30、35、40%の8通り設
定して行ったこと以外は、上記実施例4と同様にして機
能性膜の形成された基板の作製を行い、機能性膜の形成
時と形成後における基板の外観状態を肉眼観察するとい
うものである。
【0121】上記各湿度条件で作製した基板を観察した
ところ、30%以下の湿度条件では、無水雰囲気下(5
%以下)と同様な外観の基板が得られた。その一方、4
0%以上の湿度条件では、明らかに雰囲気中の水分とシ
ラン化合物との反応物と思われる白色の生成物が確認さ
れた。また、このような白色生成物は、湿度35%では
殆ど観察されなかった。これらのことから、基板に対す
るシラン化合物溶液の接触は、相対湿度35%以下の雰
囲気中で行うことが好ましい。 (実施例7)本実施例は、第2の態様に係る機能性膜に
対応する。
【0122】X'−(AlOX')n−AlX'2(但し、
X'はアルコキシ基、nは0以上の整数である。)で表
される化合物として、Al(OC253を用意し、A
l(OC253/HCl/水/イソプロピルアルコー
ル=1/0.01/5/25(モル比)の下地層溶液を
作製した。この下地層溶液にガラス板を浸漬した後、1
mm/秒の速度で引き上げガラス板の表面に下地層溶液
を塗布し、80℃の温度で15分間乾燥してAl(OC
253からなる未焼成の下地層をガラス板の表面に形
成した。
【0123】次に、シラン化合物としてC81724
SiCl3を用意し、またこの化合物を溶解する溶剤と
てC818を用意して、C81724SiCl3/C8
18=1/99の組成比(容積比)のシラン化合物溶液を
作製した。そして、相対湿度を5%以下とした無水雰囲
気下で、このシラン化合物溶液に、下地層(未焼成)の
形成された前記ガラス板を浸漬し、1mm/秒の速度で
引き上げる手法によりガラス板表面にシラン化合物溶液
を塗布した。この後、ガラス板表面の溶剤(C818
を蒸発させ、更にこのガラス板を400℃で15分焼成
した。このようにして機能性膜を有する基板A2を作製
した。
【0124】この方法の製造フローを説明するための概
念図を図8に示す。図8(a)はガラス板に下地層溶液
を塗布し乾燥したときにおける下地層の状態を模式的に
表した図である。図8(a)に示すように、下地層溶液
を塗布し焼成温度以下の温度で乾燥すると、先ずガラス
板表面近傍に位置するAl(OC253がガラス板表
面のOH基と脱アルコール反応して結合(−O−)する
一方、基板のOH基と結合しない大多数のAl(OC2
53分子は、周囲に微量に存在する水分(例えば空気
中の湿度)と反応する。これにより下地層が基板に結合
固定されるとともに、下地層の表面のOH基が増大す
る。
【0125】図8(b)は、前記下地層にシラン化合物
溶液を塗布したときの状態を示す模式図であり、シラン
系化合物(C81724SiCl3)が下地層表面のO
H基部分に化学結合(吸着)した様子を示している。更
に、図8(c)は、焼成後の基板の状態を示す図であ
り、下地層の構成分子同士が重合した様子を示してい
る。
【0126】なお、以下では、機能性膜の形成されたガ
ラス板を基板と称し、また下地層形成時に焼成を行わず
に、シラン化合物溶液を塗布した後に焼成を行う方法を
後焼成法と称することとする。 (比較例3)前記下地層溶液が塗布されたガラス板に対
し、80℃・15分間の乾燥に代えて、400℃・15
分間の焼成を行う方法により下地層(焼成下地層)を形
成したこと、及びシラン化合物溶液が塗布されたガラス
板に対し、400℃・15分間の後焼成を行わなかった
こと以外は、前記実施例7同様にして、機能性膜を有す
る基板B2を作製した。
【0127】この方法の概念図を図15に示す。図15
(a)はガラス板に下地層溶液を塗布し乾燥したときの
様子を模式的に示した図であり、この図は前記図1
(a)と同様である。図15(b)は、前記下地層を焼
成した状態を示しており、焼成により下地層表面のOH
基の一部が失われる様子を示している。更に、図15
(c)は、少ないOH基にシラン系化合物(C8172
4SiCl3)が化学吸着した様子を示している。
【0128】なお、比較例3は従来技術にかかる方法で
あり、この方法で下地層形成時に行う焼成を前焼成法と
称することとする。 (比較例4)下地層を全く施さない無処理のガラス板を
用い、このガラス板を前記シラン化合物溶液に浸漬し1
mm/秒の速度で引き上げ、C818を蒸発させて比較
例4にかかる機能性膜を有する基板C2を作製した。こ
の方法を説明するための概念図を図16に示す。
【0129】図16(a)はガラス表面の状態を示す図
であり、図16(b)はガラス板表面に下地層成分であ
るAl(OC253を塗布した様子を示す図である。
図16(b)に示すがごとく、ガラスに直接被膜形成用
のシラン系化合物(C81724SiCl3)を塗布し
た場合には、ガラス基板上に存在する少ない量のOH基
にシラン系化合物(C81724SiCl3)が化学吸
着することになるので、密度が粗な被膜が形成されるこ
とになる。
【0130】〔膜作製条件と耐久性〕上述の基板A2、
B2、C2を用いて、下地層の有無、焼成条件の違いと
接触角との関係を調べた。接触角の測定は次のようにし
て行った。基板A2〜C2の各々について、食器洗い用
スポンジを用い2kgfの荷重を加えて50000回擦
り、この間、5000回毎に基板の汚れをエタノールを
用いた超音波洗浄により除去し、しかる後に被膜形成面
に水10μlを滴下し接触角を測定した。この測定法を
以下、擦り耐久試験法という。測定結果を図9に示し
た。
【0131】図9より明らかなように、本発明にかかる
製造方法で製造した基板A2(実施例7)は、当初の接
触角が大きく、またスポンジでの擦りによっても接触角
の低下が殆ど認められなかった。これに対し、前焼成法
にかかる基板B2(比較例3)は、上記基板A2に比較
し当初の接触角が小さく、またスポンジでの擦りにより
接触角が低下する傾向が認められた。更に、下地層を設
けなかった基板C2(比較例4)については、上記基板
B2よりも当初の接触角が小さく、スポンジでの擦りに
よる接触角の低下も大きかった。
【0132】以上の結果から、本発明にかかる製造方法
によると、撥水性および耐久性に優れた機能性膜が形成
できることが確認された。
【0133】上記結果を図8、15、16に基づいて考
察する。前焼成を行わない基板A2において優れた接触
角および擦り耐久性が得られたのは、被膜形成溶液の塗
布時に下地層表面のOH基密度が高いので、下地層表面
にシラン化合物の分子が均一かつ高密度に化学結合した
良質の薄膜が形成され、かつその後の焼成により下地層
構成分子相互や被膜構成分子相互が重合して強固な構造
を形成するためであると考えられる。
【0134】これに対し、基板A2に比較し下地層を前
焼成した基板B2の擦り耐久性等が劣るのは、前焼成に
より基板表面の水酸基が失われるために不均一で結着点
の少ない被膜が形成されるためと考えられる。また、下
地層を有しないガラス基板をそのまま用いた基板C2で
は、シラン化合物分子が結合すべき活性水素部位が少な
いために、基板に直接結合していない宙ぶらりんのシラ
ン化合物分子を有する不均一な薄膜が形成され、その結
果として当初の接触角が小さく、擦りに対する抵抗性が
小さくなったものと考えられる。 (実施例8)本実施例は、第3の態様に係る機能性膜に
対応する。
【0135】X−(SiOX2n−SiX3(但し、X
はハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート基から
なる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であり、n
は0以上の整数である)で示される化合物と、X'−
(AlOX')n−AlX'2(但し、X'はアルコキシ
基、nは0以上の整数である。)で表される化合物から
なる混合物(加水分解できるもの)として、Si(OC
254およびAl(OC253を用意して、両化合物
の混合比をSiのモル数/Alモル数(分子/分母)で
表すとき、10/90、25/75、50/50、75
/25、90/10、100/0の6通りの混合比の2
成分系下地層溶液を作製した。そして、これらの2成分
系下地層溶液を用いて下地層を形成した。これ以外の事
項については、前記実施例7と同様にして、実施例8に
かかる基板D2、E2、F2、G2、H2、I2を作製
した。
【0136】〔下地層成分の違いと擦り耐久性〕上記実
施例7にかかる基板A2と実施例8にかかる基板D2〜
I2の耐久性の違いを、上記擦り耐久試験法で調べた。
測定結果を図10に示した。
【0137】図10から明らかなように、Al(OC2
53を単独で用いた基板A2は、Si(OC254
を単独で用いた基板I2よりも、初期接触角および擦り
耐久性が顕著に優れていた。また、接触角の経時的低下
は、基板A2(実施例7)、基板D2、基板E2、基板
F2、基板G2、基板H2、基板I2(基板D2〜I
2;実施例8)の順に大きくなった。
【0138】上記結果から、X'−(AlOX')n−A
lX'2(但し、Xはアルコキシ基、nは0以上の整数で
ある。)で表される化合物を単独で使用すると、耐磨耗
性に優れた機能性膜を得ることができることが判った。
なお、擦りによって接触角が小さくなるのは、表面改質
被膜を構成する分子(C81724−)が擦りによっ
て次第に基板表面から失われるためと考えられる。この
ことから上記結果は、下地層の強度ないし硬度を反映し
たものであり、Siの配合割合が増加するに従い下地層
の強度ないし硬度が小さくなり、その結果として擦りに
よって接触角がより大きく劣化したものと考えられる。
【0139】〔下地層成分の違いと温度耐性〕上記実施
例7にかかる基板A2と実施例8にかかる基板D2〜I
2の温度耐性の違いを加熱耐久試験法で調べた。具体的
には、300℃に加熱した空気中に1000時間放置し
た。この間、100時間ごとに基板の汚れをエタノール
を用いて超音波洗浄して除去し、しかる後に被膜形成面
にに水10μlを滴下して接触角を測定した。測定結果
を図11に示した。
【0140】図11より、加熱耐久試験法における接触
角の経時的変化は、基板I2(100/0)>基板A2
(0/100)>基板D2(10/90)>基板E2
(25/75)>基板F2(50/50)>基板G2
(75/25)>基板H2(90/10)の順に小さく
なることが認められた。
【0141】これらの結果から、下地層溶液をX−(S
iOX2n−SiX3(但し、X'はハロゲン、アルコキ
シ基およびイソシアネート基、nは0は以上の整数であ
る。)で表される化合物と、X'−(AlOX')n−A
lX'2(但し、Xはアルコキシ基、nは0は以上の整数
である。)で表される化合物とを混合して用いると、撥
水性における耐熱性が向上することが確認された。更
に、上記2成分系下地層溶液におけるSi/Al比を1
以上にすると、一層耐熱性に優れた機能性膜が製造でき
ることが判った。なお、上記結果は、下地層の緻密性と
密接に関係しており、下地層が緻密な基板ほど優れた温
度耐性が得られるものと考えられる。 (実施例9) X−(SiOX2n−SiX3(但し、Xはハロゲン、
アルコキシ基およびイソシアネート基)で表される化合
物として、Si(OC254に代えてSi(NCO)4
を用いたこと以外は前記実施例8の基板H2(Si/A
l=90/10)と同様にして、実施例9にかかる基板
J2を作製した。
【0142】[下地層成分の種類と耐久性]上記実施例
8にかかる基板H2と実施例9にかかる基板J2の温度
耐性を上記加熱耐久試験法で調べた。その結果を図12
に示した。
【0143】図12から明らかなように、下地層の成分
として、Si(OC254とAl(OC253を用い
た実施例8の基板H2は、Si(NCO)4とAl(O
253を用いた実施例9の基板J2に比較し、当初
の接触角が大きいとともに、接触角の経時的変化も小さ
かった。この結果より、イソシアネートシランを用いた
2成分系下地層溶液よりもアルコキシシランを用いた2
成分系下地層溶液の方が、機能性膜の撥水性および耐久
性を高めることができる点で優れていることが判る。 (実施例10)シラン化合物(機能性膜の主剤)とし
て、C81724SiCl3に代えて、C81724
Si(OC253を用いたこと以外は、実施例7と同
様にして実施例10にかかる基板K2を作製した。な
お、実施例10は1成分系の下地層が用いられたもので
ある。
【0144】[シラン化合物の違いと耐久性]実施例1
0にかかる基板K2と前記実施例7の基板A2を用い
て、薄膜成分(機能性膜の主剤)の違いと耐久性の関係
を、上記加熱耐久試験法で調べた。その結果を図13に
示した。
【0145】図13より両基板の当初の接触角は同じで
あったが、シラン化合物としてC81724Si(O
253を用いた基板K2(実施例10)よりも、C8
1724SiCl3を用いた基板A2(実施例7)の
方が、接触角の経時的な低下が顕著に少ないことが認め
られた。この結果から、機能性膜の主剤としてのシラン
化合物としては、耐久性の点でトリクロロシラン系化合
物が好ましい。 (実施例11)シラン化合物を溶解させる溶剤として、
818に代えて、ヘキサメチルジシロキサン(直鎖状
シリコーン)を用いたこと以外は、実施例7と同様にし
て実施例11にかかる基板L2を作製した。
【0146】[溶剤の違いと耐久性]上記加熱耐久試験
法を用いて、実施例11の基板L2と実施例7の基板A
2の性能を比較し、シラン化合物を溶解させる溶剤の違
いと耐久性の関係を調べた。その結果を図14に示し
た。
【0147】図14より両基板の当初の接触角は同じで
あったが、ヘキサメチルジシロキサンを用いた基板L2
(実施例11)は、C818を用いた基板A2(実施例
7)よりも経時的な接触角の変化が少ないことが認めら
れた。この結果から、シラン化合物を溶解するための溶
剤としては、高温耐久性に優れた機能膜が得られる点
で、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。なお、シク
ロヘキサメチルトリシロキサン(環状シリコーン)を用
いた場合においても、上記と同様な結果が得られた。 (実施例12)機能性膜の主剤としてのシラン化合物と
して、C81724SiCl3に代えて、C1021Si
Cl3を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、実
施例12にかかる基板M2を作製した。 (実施例13)機能性膜の主剤としてのシラン化合物と
して、C81724SiCl3に代えて、SiCl4
用いたこと以外は、実施例7と同様にして、実施例13
にかかる基板N2を作製した。
【0148】〔シラン化合物の種類と防汚性の関係〕機
能性膜の主剤としてのシラン化合物の種類のみが相違す
る上記基板A2(実施例7)、基板M2(実施例1
2)、基板N2(実施例13)を用いて、基板表面の防
汚性の良否を防汚性試験により調べた。
【0149】防汚性試験は、次のようにして行った。ま
ず、砂糖/醤油=1/1(重量比)からなるシロップを
基板上に0.2cc滴下し、300℃で15分間焼き付
ける。この後、こびりつきを濡れふきんで拭き取り、再
び上記シロップ0.2ccを基板上に滴下し、300℃
で15分焼き付け、上記と同様に拭き取る。このサイク
ルをこびりつきが拭き取れなくなるまで繰り返し、その
回数を数えた。その結果を表2に示した。
【0150】
【表2】 表2から明らかなように、防汚性(良い順)は、基板A
2(C81724SiCl3)>>基板M2(C1021
SiCl3)>>基板N2(SiCl4)であり、基板N
2に比較して基板A2、M2が高い防汚性を示し、特に
基板A2の防汚性が優れていた。この結果から、機能性
膜の防汚性を高めるためには、好ましくはアルキル基や
フルオロアルキル基を有するシラン化合物を用い、より
好ましくはフルオロアルキル基を有するシラン化合物を
用いるのがよいことが判る。
【0151】〔製造雰囲気中の湿度の影響〕以上の実施
例7〜13等ではシラン化合物溶液への浸漬・引き上げ
を相対湿度5%以下の無水雰囲気下で行った。しかし、
シラン化合物溶液を塗布する際における周囲雰囲気中の
相対湿度の高低は、薄膜形成反応に大きく影響を与え
る。そこで、下地層の形成された基板にシラン化合物溶
液を塗布する際における周囲雰囲気中の湿度の影響を調
べる実験を行った。
【0152】実験方法としては、シラン化合物溶液への
基板の浸漬・引き上げ時における周囲雰囲気の相対湿度
を5、10、15、20、25、30、35、40%の
8通り設定して行ったこと以外は、上記実施例11と同
様にして機能性膜の形成された基板の作製を行い、機能
性膜の形成時と形成後における基板の外観状態を肉眼観
察するというものである。
【0153】上記各湿度条件で作製した基板を観察した
ところ、30%以下の湿度条件では、無水雰囲気下(5
%以下)と同様な外観の基板が得られた。その一方、4
0%以上の湿度条件下では、明らかに雰囲気中の水分と
シラン化合物との反応物と思われる白色の生成物が認め
られた。これらのことから、基板に対するシラン化合物
溶液の接触は、相対湿度35%以下の雰囲気中で行うこ
とが好ましい。次に、本発明の機能性膜を液晶配向膜に
適用した場合の実施例について述べる。 (実施例14)本実施例に係る液晶表示素子は、以下に
述べる方法にて作製した。先ず、図17に示すように、
マトリックス状に形成された第1の電極群1と、この電
極を駆動するトランジスタ群2とを有する第1の基板3
上に、下地層7を形成した。
【0154】すなわち、X−(SiOX2n−SiX3
(但し、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネ
ート基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基
であり、nは0以上の整数である。)で表される化合物
として、Si(OC254を用意し、Si(OC
254/HCl/水/イソブロピルアルコール=1/
0.01/5/25(モル比)の下地層溶液を調製し
た。そして、この下地層溶液を、第1の基板3に於ける
第1の電極群1が形成されている領域に印刷機を用いて
塗布した。このときの塗布膜は約1μmとなるようにし
た。さらに、この塗布膜を80℃で15分間乾燥してS
i(OC254からなる未焼成の下地層7を第1の基
板3の表面に形成した(下地層形成工程)。
【0155】次に、シラン系化合物としてC65−CH
=CH−CO−C64−O−(CH 26−O−SiCl
3を用意し、またこの化合物を溶解させる溶剤としてヘ
キサメチルジシロキサンを用意して、10-3mol/L
のC65−CH=CH−CO−C64−O−(CH2
6−O−SiCl3/ヘキサメチルジシロキサンのシラン
化合物溶液を調製した。そして、相対湿度を5%以下と
した無水雰囲気下で、このシラン化合物溶液に、下地層
7(未焼成)の形成された第1の基板3に印刷機を用い
て塗布した(薄膜形成工程)。塗布した液膜の厚みは約
1μmとした。この後、第1の基板3表面に残存する溶
剤(ヘキサメチルジシロキサン)を蒸発させ、さらにこ
の第1の基板3を300℃で15分間焼成して液晶配向
膜4を形成した(焼成工程)。
【0156】上記焼成工程の後、液晶配向膜4が形成さ
れた第1の基板3を、非水系溶剤であるクロロホルム中
に浸漬して洗浄した(洗浄工程)。さらに、第1の基板
3を所望の方向に立てた状態でクロロホルムより引き上
げてクロロホルムを液切りした(液切り配向工程)。こ
れにより、液晶配向膜4を構成する分子を、引き上げ方
向とは反対側の液切り方向に傾斜させて配向させること
ができた。
【0157】液切り配向工程の後、液切り方向と偏光方
向が同じ方向になるように、400mJ/cm2(波
長:365nm)の偏光紫外線を照射した(偏光配向工
程)。これにより、液晶配向膜4としての機能性膜を構
成する分子を、偏光方向に沿って感光性基の部分で架橋
結合させた。このようにして、第1の基板3上に、膜構
成分子が偏光方向に配向した液晶配向膜4としての機能
性膜を形成した。
【0158】一方、順にカラーフィルター群13と、第
2の電極14とが設けられた第2の基板6についても、
上記と同様の工程を行うことにより、下地層5および所
定の方向に配向処理された液晶配向膜5を形成した。
【0159】さらに、第1の基板3上にビーズを散布し
ておき、かつ該基板3の縁部に、塗布形状が枠状となる
ようにスペーサ入り接着剤8を塗布した。続いて、第1
の電極群1と第2の電極14とが平行に相対し、セルギ
ャップが約5μmとなるように第1の基板3と第2の基
板6とを貼り合わせた。このとき、第1の基板3上に設
けられた液晶配向膜4の配向処理方向と、第2の基板6
上に設けられた液晶配向膜5に於ける配向処理方向との
相対的な交差角が、90°となるように位置合わせして
おいた。
【0160】次いで、第1の基板3および第2の基板6
間に、液晶材料を注入して捻れ角が90°のTN配向を
有する液晶層10を形成した。また、第1の基板3およ
び第2の基板6の外面には、ノーマリーホワイトモード
となるように光学軸方向を設定した偏光板11・12を
それぞれ設けた。以上により、本実施例に係るTN型の
液晶表示素子Oを作製した。
【0161】この方法の製造フローを説明するための概
念図を図18に示す。図18(a)は第1の基板3に下
地層溶液を塗布し乾燥したときにおける下地層7の状態
を模式的に表した図である。図18(a)に示すよう
に、下地層溶液を塗布し焼成温度以下の温度で乾燥する
と、先ず第1の基板3表面近傍に位置するSi(OC2
53が第1の基板3および第1の電極群1表面のOH
基と脱アルコール反応して結合(−O−)する一方、第
1の基板3のOH基と結合しない大多数のSi(OC2
53分子は、周囲に微量に存在する水分(例えば空気
中の湿度)と反応する。これにより下地層7が第1の基
板3に結合固定されるとともに、下地層7の表面のOH
基が増大する。
【0162】図18(b)は、前記下地層7にシラン化
合物溶液を塗布したときの状態を示す模式図であり、シ
ラン系化合物(C65−CH=CH−CO−C64−O
−(CH26−O−SiCl3)が下地層7表面のOH
基部分に化学結合(吸着)した様子を示している。更
に、図18(c)は、焼成後の基板の状態を示す図であ
り、下地層7の構成分子同士が重合した様子を示してい
る。
【0163】図18(d)は、下地層7表面に化学吸着
したシラン系化合物を液切り配向したときの状態を示す
模式図であり、洗浄液の液切り方向に液晶配向膜5の構
成分子が傾斜して配向している様子を示している。さら
に、図18(e)は、偏光配向工程後の液晶配向膜5の
配向状態を示す図であり、液晶配向膜5の構成分子にお
ける感光性基同士が偏光方向に平行な方向に沿うように
して架橋した状態を示している。 (比較例5)前記下地層溶液が塗布された第1および第
2の基板に対し、80℃・15分間の乾燥に代えて、3
00℃・15分間の焼成を行う方法により下地層(焼成
下地層)を形成したこと、及びシラン化合物溶液が塗布
された第1および第2の基板に対し、400℃・15分
間の後焼成を行わなかったこと以外は、前記実施例14
と同様にしてTN型の液晶表示素子Pを製作した。 (比較例6)下地層を全く施さない第1および第2の基
板を用い、これらの基板に前記シラン化合物溶液を実施
例7と同様に塗布し、ヘキサメチルジシロキサンを蒸発
させて、液晶配向膜としての機能性膜を形成した。さら
に、前記実施例14と同様にして比較例6に係るTN型
の液晶表示素子Qを製作した。
【0164】[膜作製条件と表示特性]上述の液晶表示
素子O、P、Qを用いて、液晶の初期配向と、表示特性
を評価するためのコントラストとを調べた。結果を表3
に併記する。
【0165】
【表3】 この表から明らかなように、本発明の機能性膜を液晶配
向膜として用いた液晶表示素子Oには、配向欠陥が全く
みられないことが確認された。
【0166】一方、液晶表示素子Qの液晶の初期配向お
よび表示特性がかなり劣化しているのは、第1および第
2の基板表面の電極材料ITOには、シラン化合物の吸
着サイトとなる活性水素を有する表面水酸基がほとんど
存在しないためと考えられる。よって、シラン系化合物
が下地層に吸着するための吸着サイトを増やす本発明の
効果は、液晶配向膜として使用した場合においても極め
て高いと言える。
【0167】なお、本願発明者等は、洗浄工程および液
切り配向工程を行わない以外は、上記実施例14と同様
の方法で作製した液晶表示素子についても、初期配向お
よびコントラストを調べた。また、液切り配向工程に於
ける液切り方向と偏光配向工程に於ける偏光方向とを相
違させた以外は、上記実施例14と同様の方法で作製し
た液晶表示素子についても同様に調べた。その結果、液
晶配向膜を構成する分子は偏光方向に配向し、該液晶配
向膜近傍の液晶分子も偏光方向に配向することがわかっ
たが、液晶表示素子Oと同様の初期配向性および表示特
性は得られなかった。そこで、偏光配向工程に於ける偏
光紫外線照射量を、上記実施例14の場合よりも増やす
ことで、液晶表示素子Oの特性に近づけることが分かっ
た。以上のことから、予め洗浄剤の液切り方向を偏光紫
外線の偏光方向と平行となるようにすることで、従来の
光配向法よりも偏光紫外線の照射量を低減できることが
分かった。これは、偏光紫外線を照射する前に、洗浄剤
の液切りにより液晶配向膜の膜構成分子を偏光方向に平
行となるように予め仮配向させた結果、偏光紫外線照射
の際には偏光方向に感光性基の異方的な光反応が起こし
やすくなり、これにより偏光紫外線照射量を少なくでき
たと考えられる。
【0168】また、下地層溶液X−(SiOX2n−S
iX3(ただしXはハロゲン、アルコキシ基およびイソ
シアネート基、nは0は以上の整数である。)で表され
る化合物とX'−(AlOX')n−AlX'2(ただしX'
はアルコキシ基)で表される化合物との、加水分解させ
ることができる混合物の組成を変えて、実施例7の同様
にして液晶表示素子を作製したが、いずれの場合も、液
晶表示素子Oとほぼ同じ表示液晶の初期配向および表示
特性を示した。
【0169】また、X−(SiOX2n−SiX3(但
し、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート
基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であ
り、nは0以上の整数である)で示される化合物と、
X'−(AlOX')n−AlX' 2(但し、X'はアルコキ
シ基、nは0以上の整数である。)で表される化合物か
らなる混合物(加水分解できるもの)として、Si(O
254およびAl(OC253を用意して、両化合
物の混合比を変えて、上記実施例14と同様にして液晶
表示素子を作製した場合も、液晶表示素子Oとほぼ同様
の初期配向および表示特性を示すことが分かった。 (実施例15)シラン化合物(薄膜成分)として、C6
5−CH=CH−CO−C64−O−(CH26−O
−SiCl3(カルコニル基含有)に代えて、C65
CH=CH−CO−O−(CH26−O−SiCl
3(シンナモイル基含有)を用いた以外は、実施例14
と同様にして、実施例15に係るTN型の液晶表示素子
Rを製作した。 (実施例16)シラン化合物(薄膜成分)として、C6
5−CH=CH−CO−C64−O−(CH26−O
−SiCl3(カルコニル基含有)に代えて、C1021
SiCl3(感光性基なし)を用いた以外は、実施例1
4と同様にして、実施例16に係るTN型の液晶表示素
子Sを製作した。
【0170】[シラン化合物の違いと表示特性]実施例1
5および実施例16にかかるTN型の液晶表示素子R、
Sと、上記実施例14に係る液晶表示素子Oを用いて、
液晶の初期配向および表示特性としてコントラストを調
べた。その結果を表4に併記する。
【0171】
【表4】 表4から明らかな様に、カルコニル基を有するシラン化
合物のほうが、シンナモイル基を有するものより、液晶
の初期配向および表示特性が優れていることがわかる。
ただし、シンナモイル基を有するシラン化合物からなる
液晶配向膜の場合でも、偏光紫外線の照射量を増大させ
ることにより、液晶分子の初期配向状態および表示特性
を改善できることがわかった。これは、偏光紫外線に対
する感光性基の感度がカルコニル基>シンナモイル基で
あるためと考えられる。また、感光性基を有しないシラ
ン化合物からなる液晶配向膜を備えた液晶表示素子Sで
は、液晶分子が所望の方向に配向せず、配向特性が劣化
していることが分かった。以上のことから、液晶表示素
子O、Rに於いては、偏光紫外線の照射よりに偏向方向
に沿うようにして感光性基が重合した結果、液晶分子が
配向したためと考えられる。 (実施例17)偏光配向工程をラビング配向工程に代え
たこと以外は、実施例14と同様にしてTN型の液晶表
示素子Tを製作した。なお、ラビング処理に於けるラビ
ング方向は、液切り配向方向と平行として、ナイロン布
(繊維経16〜20μm、毛の長さ3mm)を使用し、
押し込み0.4mm、スピード500m/分で液晶配向
膜表面をこすった。
【0172】[配向方法と表示特性]実施例17にかか
るTN型の液晶表示素子Tと、上記実施例14に係るT
N型の液晶表示素子Oを用いて、液晶の初期配向および
表示特性としてコントラストを調べた。その結果を表5
に併記する。
【0173】
【表5】 表5から明らかな様に、顕微鏡観察では液晶配向膜の表
面に多数のラビング筋が見られたが、液晶配向膜Oと同
様に液晶分子は所望の方向に配向し、配向欠陥は確認さ
れなかった。また、コントラストの高い表示特性も得ら
れた。
【0174】なお、シラン化合物(薄膜成分)として、
65−CH=CH−CO−C64−O−(CH26
O−SiCl3(カルコニル基含有)に代えて、C10
21SiCl3(感光性基なし)を用いることにより、液
晶表示素子Tに於いて感光性基の存在が液晶分子の初期
配向や表示特性に影響を与えるかどうかについて検討し
た。その結果、C1021SiCl3を用いた場合であっ
ても、液晶表示素子Tと同様の初期配向を示し、かつ表
示特性が得られた。よって、液晶分子の初期配向はラビ
ング処理によるものと確認された。
【0175】また、本願発明者等は、洗浄工程および液
切り配向工程を行わない以外は、上記実施例14と同様
の方法で作製した液晶表示素子についても、初期配向お
よびコントラストについて調べた。また、液切り配向工
程に於ける液切り方向とラビング工程に於けるラビング
処理方向とを相違させた以外は、上記実施例14と同様
の方法で作製した液晶表示素子についても同様に調べ
た。その結果、液晶配向膜を構成する分子はラビング処
理方向に配向する結果、該液晶配向膜近傍の液晶分子も
ラビング処理方向に配向することがわかったが、液晶表
示素子Tと同様の良好な初期配向性および表示特性は得
られなかった。そこで、ラビング工程に於けるラビング
条件を変え、強く擦ることで、上記実施例17の液晶表
示素子Tの特性に近づけることが分かった。ただし、こ
のとき液晶配向膜表面にラビングくずが認められた。以
上のことから、予め洗浄剤の液切り方向をラビング処理
方向と平行となるようにすることで、従来のラビング処
理よりも強く擦らないで済み、かつ液晶配向膜が削り取
られるのを防止できることが分かった。これは、ラビン
グ処理を行う前に、洗浄剤の液切りにより液晶配向膜の
膜構成分子をラビング処理方向に平行となるように予め
仮配向させた結果、ラビング処理の際には膜構成分子を
配向処理しやすくなったことによる。
【0176】[実験2]以上に記載した実施例では、洗
浄工程における洗浄剤として非水系溶剤を使用した場合
について述べたが、本実験では洗浄剤として水を使用し
た。実験方法としては、洗浄工程における洗浄剤を水で
行ったこと以外は、上記実施例14と同様にして液晶配
向膜を形成した。さらに、形成された液晶配向膜の外観
状態を肉眼観察を行った。
【0177】上記洗浄工程で作製した基板を観察したと
ころ、明らかに水とシラン化合物との反応によると思わ
れる白色の生成物が確認され、それを取り除くことがで
きなかった。これらのことから、洗浄工程における溶媒
として水を含まない非水系溶剤で行うことが好ましい。 (実施例18)洗浄工程における洗浄剤としてクロロホ
ルムに代えて、N−メチル−2−ピロリジノンを用いた
以外は、上記実施例14と同様にして液晶表示素子を製
作した。
【0178】本実施例では、洗浄工程に於いて、過剰に
存在する未反応のシラン化合物の除去性を観察した。実
施例14に使用したクロロホルムに比べ、本実施例に於
いて使用したN−メチル−2−ピロリジノンは、その除
去性に優れていることがわかった。したがって、洗浄工
程におけるN−メチル−2−ピロリジノンの使用は薬液
の安全性を考慮すれば量産性を向上させることができ
る。 (実施例19)シラン化合物(薄膜成分)として、C6
5−CH=CH−CO−C64−O−(CH26−O
−SiCl3(カルコニル基含有)に、混合比で1mo
l%のC81724SiCl3を混合させた混合物を使
用した以外は、上記実施例14と同様にして、本実施例
19に係る液晶表示素子Uを作製した。 (実施例20)偏光配向工程に於いて偏光紫外線の照射
量として400mJ/cm2に代えて、100mJ/c
2にした以外は、上記実施例14と同様にして本実施
例に係るTN型の液晶表示素子Vを製作した。 (実施例21)偏光配向工程に於いて偏光紫外線の照射
量として400mJ/cm2に代えて、1000mJ/
cm2にした以外は、上記実施例14と同様にして本実
施例に係るTN型の液晶表示素子Wを製作した。
【0179】[液晶の配向モード]上記実施例19にか
かる液晶表示素子U、実施例20にかかる液晶表示素子
Vおよび実施例21にかかる液晶表示素子Wと、前記実
施例14の液晶表示素子Oとについて、液晶配向膜近傍
の液晶分子のプレチルト角をそれぞれ調べた。その結果
を、下記表6に併記する。
【0180】
【表6】 以上のことから、シラン化合物に5mol%以下のフロ
オロアルキル基を有するシラン化合物を混合することに
より、ホメオトロピック配向が可能な液晶配向膜にでき
ることが確認された。
【0181】また、本発明の機能性膜では、偏光配向工
程で1J/cm2(波長:365nm)以上の照射量に
て偏光紫外線を照射することより、ホモジニアス配向が
可能な液晶配向膜にできることが確認された。さらに、
照射量が100mJ/cm2以下では、TN液晶に最適
なプレチルト角5〜10゜のプレチルト配向にできるこ
とが確認された。
【0182】
【発明の効果】以上で説明したように、本発明では、ガ
ラス板等の基材に水酸基等を有する下地層を形成し、こ
の下地層を焼成することなく、その表面にシラン系化合
物を化学吸着させ、しかる後に焼成を行う製造方法を採
用した。このような製造方法であると、下地層表面によ
り多くの活性水素を存在させることができるので、シラ
ン系化合物の接触により、高密度でシラン系化合物分子
を化学結合させることができる。
【0183】そして、本発明では製造の最終段階で行う
焼成により、下地層を強力に固化させ基材に強固に結着
させる。このような本発明製造方法によると、均一かつ
強力に基材に結合固定してなる機能性膜が形成でき、こ
のような機能性膜であると、撥水性や液晶配向性等の所
望の表面改質効果が長期にわたって発揮される。
【0184】更に、本発明では、X−(SiOX)n
SiX2(但し、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイ
ソシアネート基、nは0以上の整数である。)を下地層
形成成分として使用するが、この化合物を用いると極め
て堅固な下地層を形成でき、その結果として撥水性や擦
り耐久性に優れた機能性膜とすることができる。
【0185】更に、本発明の他の態様では、X'−(A
lOX')n−AlX'2(但し、X'はアルコキシ基、n
は0以上の整数である。)を下地層形成成分として使用
するが、この化合物を用いると極めて堅固な下地層を形
成でき、その結果として撥水性や擦り耐久性に優れた機
能性膜とすることができる。
【0186】また、本発明のさらに他の態様では、X'
−(AlOX')n−AlX'2(但し、Xはアルコキシ
基、nは0以上の整数である。)と、X−(SiO
2n−SiX3(但し、Xはハロゲン、アルコキシ基
およびイソシアネート基、nは0以上の整数である。)
とを混合した2成分系下地層形成成分を使用するが、こ
れによると撥水性等の所望の表面改質効果が熱劣化しに
くい優れた機能性膜とすることができる。
【0187】また、上記機能性膜に、液切り乾燥法や紫
外線を用いた偏光照射法を適用すると、所望の液晶配向
特性を有した液晶配向膜が得られる。
【0188】更にまた、このような本発明にかかる液晶
配向膜を用いると、表示性能に優れた液晶表示素子が提
供できる。
【0189】なお、下地層形成成分としてのX'−(A
lOX')n−AlX'2を単独で使用する製造方法は、擦
り洗い等を必要とする例えば料理器具等に好適に適用で
きる。また、X'−(AlOX')n−AlX'2とX−
(SiOX2n−SiX3との2成分系下地層形成溶液
を使用する製造方法は、例えば電気アイロンの底部に好
適に適用でき、これにより長期にわたって皺伸ばし機能
が劣化しにくいアイロンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる機能性膜の製造方法を説明する
ための概念図である。
【図2】従来の方法にかかる機能性膜の製造方法を説明
するための概念図である。
【図3】下地層を形成しない従来方法にかかる機能性膜
の製造方法を説明するための概念図である。
【図4】擦り回数と接触角の関係を示すグラフである。
【図5】加熱耐久試験における接触角の経時的変化を示
すグラフである。
【図6】加熱耐久試験における接触角の経時的変化を示
すグラフである。
【図7】加熱耐久試験における接触角の経時的変化を示
すグラフである。
【図8】本発明にかかる機能性膜の製造方法を説明する
ための概念図である。
【図9】擦り回数と接触角の関係を示すグラフである。
【図10】擦り回数と接触角の関係を示すグラフであ
る。
【図11】加熱耐久試験における接触角の経時的変化を
示すグラフである。
【図12】加熱耐久試験における接触角の経時的変化を
示すグラフである。
【図13】加熱耐久試験における接触角の経時的変化を
示すグラフである。
【図14】加熱耐久試験における接触角の経時的変化を
示すグラフである。
【図15】従来の方法にかかる機能性膜の製造方法を説
明するための概念図である。
【図16】下地層を形成しない従来方法にかかる機能性
膜の製造方法を説明するための概念図である。
【図17】本発明に係る液晶表示素子の構成を示す断面
模式図である。
【図18】本発明にかかる液晶配向膜の製造方法を説明
するための概念図である。
【符号の説明】
1 第1の電極群 2 トランジスタ群 3 第1の基板 4 液晶配向膜 6 第2の基板 7 下地層 10 液晶層 14 第2の電極
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成15年4月18日(2003.4.1
8)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 機能性膜及びその製造方法、並びにそ
れを用いた液晶表示素子及びその製造方法 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成15年4月18日(2003.4.1
8)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 機能性膜及びそれを用いた液晶表示素
フロントページの続き (72)発明者 大竹 忠 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 武部 尚子 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 2H090 HB12Y HC07 HC08 HC15 HD15 MA01 MA02 MA10 MB01 MB14

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面に下地層を介して形成された
    機能性膜に於いて、 前記下地層は、X−(SiOX2n−SiX3(ただ
    し、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート
    基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であ
    り、nは0以上の整数である。)で表される、加水分解
    させることのできる化合物により形成された薄膜であっ
    て、シロキサン結合を介して該基材上に結合固定され、
    下記構造式(1)で表される構造単位を含む薄膜であ
    り、 前記機能性膜は、分子末端基に−O−Si結合基を有す
    るシラン系化合物分子の集合群が前記下地層に化学結合
    により化学吸着されてなる薄膜である、ことを特徴とす
    る機能性膜。 【化1】 (但し、nは0以上の整数である。)
  2. 【請求項2】 基材表面に下地層を介して形成された
    機能性膜に於いて、前記下地層は、X'−(AlOX')
    n−AlX'2(ただし、X'はアルコキシ基を表し、nは
    0以上の整数である。)で表される、加水分解させるこ
    とのできる化合物により形成された薄膜であって、−O
    −Al結合を介して該基材上に結合固定され、下記構造
    式(2)で表される構造単位を含む薄膜であり、前記機
    能性膜は、分子末端基に−O−Si結合基を有するシラ
    ン系化合物分子の集合群が前記下地層に化学結合により
    化学吸着されてなる薄膜である、 ことを特徴とする機能性膜。 【化2】 (但し、nは0以上の整数である。)
  3. 【請求項3】 基材表面に下地層を介して形成された
    機能性膜に於いて、前記下地層は、X−(SiOX2n
    −SiX3(ただし、Xはハロゲン、アルコキシ基およ
    びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも
    一種の官能基であり、nは0以上の整数である。)で表
    される、加水分解させることのできる化合物、および
    X'−(AlOX')n−AlX'2(ただし、X'はアルコ
    キシ基を表し、nは0以上の整数である。)で表され
    る、加水分解させることのできる化合物により形成され
    た薄膜であって、シロキサン結合および−O−Al結合
    を介して前記基材上に結合固定され、下記構造式(1)
    および構造式(2)で表される構造単位を含む薄膜であ
    り、 前記機能性膜は、分子末端基に−O−Si結合基を有す
    るシラン系化合物分子の集合群が前記下地層に化学結合
    により化学吸着されてなる薄膜である、 ことを特徴とする機能性膜。 【化3】 (但し、nは0以上の整数である。)
  4. 【請求項4】 上記シラン系化合物分子が、トリクロ
    ロシラン系化合物分子であることを特徴とする、請求項
    1、請求項2または請求項3の何れか1つに記載の機能
    性膜。
  5. 【請求項5】 上記シラン系化合物分子が直鎖状炭素
    鎖を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4の
    何れか1つに記載の機能性膜。
  6. 【請求項6】 上記直鎖状炭素鎖がアルキル基もしく
    はフルオロアルキル基を有することを特徴とする請求項
    5記載の機能性膜。
  7. 【請求項7】 上記直鎖状炭素鎖が感光性基を有する
    ことを特徴とする請求項5記載の機能性膜。
  8. 【請求項8】 上記直鎖状炭素鎖に於ける感光性基部
    が所望の方向に重合固定されていることを特徴とする請
    求項7に記載の機能性膜。
  9. 【請求項9】 上記感光性基が、下記化学式(3)で
    表されるシンナモイル基であることを特徴とする請求項
    7または請求項8記載の機能性膜。 【化4】
  10. 【請求項10】 上記感光性基が、下記化学式(4)
    で表されるカルコニル基であることを特徴とする請求項
    7または請求項8に記載の機能性膜。 【化5】
  11. 【請求項11】 上記機能性膜は、単分子層状の薄膜
    であることを特徴とする請求項1ないし請求項10何れ
    か1つに記載の機能性膜。
  12. 【請求項12】 上記機能性膜を構成する上記シラン
    系化合物分子の集合群は、所定方向に配向していること
    を特徴とする請求項1ないし請求項11の何れか1つに
    記載の機能性膜。
  13. 【請求項13】 上記基材は、ガラス、ステンレスお
    よびアルミ酸化物より選択される何れか1つからなるこ
    とを特徴とする請求項1ないし請求項12の何れか1つ
    に記載の機能性膜。
  14. 【請求項14】 それぞれ電極と液晶配向膜とを備
    え、対向して配置された一対の基板の間に、液晶層が設
    けられた液晶表示素子に於いて、 前記液晶配向膜は、前記電極表面に下地層を介して形成
    されており、 前記下地層は、X−(SiOX2n−SiX3(ただ
    し、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート
    基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であ
    り、nは0以上の整数である。)で表される、加水分解
    させることのできる化合物により形成された薄膜であっ
    て、シロキサン結合を介して前記基材上に結合固定さ
    れ、下記構造式(1)で表される構造単位を含む薄膜で
    あり、 前記液晶配向膜は、分子末端基に−O−Si結合基を有
    するシラン系化合物分子の集合群が前記下地層に化学結
    合により化学吸着されてなる配向膜である、ことを特徴
    とする液晶表示素子。 【化6】 (但し、nは0以上の整数である。)
  15. 【請求項15】 それぞれ電極と液晶配向膜とを備
    え、対向して配置された一対の基板の間に、液晶層が設
    けられた液晶表示素子に於いて、 前記液晶配向膜は、前記電極表面に下地層を介して形成
    されており、 前記下地層は、X'−(AlOX')n−AlX'2(ただ
    し、X'はアルコキシ基を表し、nは0以上の整数であ
    る。)で表される、加水分解させることのできる化合物
    により形成された薄膜であって、−O−Al結合を介し
    て前記基材上に結合固定され、下記構造式(2)で表さ
    れる構造単位を含む薄膜であり、 前記液晶配向膜は、分子末端基に−O−Si結合基を有
    するシラン系化合物分子の集合群が前記下地層に化学結
    合により化学吸着されてなる配向膜である、 ことを特徴とする液晶表示素子。 【化7】 (但し、nは0以上の整数である。)
  16. 【請求項16】 それぞれ電極と液晶配向膜とを備
    え、対向して配置された一対の基板の間に、液晶層が設
    けられた液晶表示素子に於いて、 前記液晶配向膜は、前記電極表面に下地層を介して形成
    されており、 前記下地層は、X−(SiOX2n−SiX3(ただ
    し、Xはハロゲン、アルコキシ基およびイソシアネート
    基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であ
    り、nは0以上の整数である。)で表される、加水分解
    させることのできる化合物、およびX'−(AlOX')
    n−AlX'2(ただし、X'はアルコキシ基を表し、nは
    0以上の整数である。)で表される、加水分解させるこ
    とのできる化合物により形成された薄膜であって、シロ
    キサン結合および−O−Al結合を介して前記基材上に
    結合固定され、下記構造式(1)および構造式(2)で
    表される構造単位を含む薄膜であり、 前記液晶配向膜は、分子末端基に−O−Si結合基を有
    するシラン系化合物分子の集合群が前記下地層に化学結
    合により化学吸着されてなる薄膜である、 ことを特徴とする液晶表示素子。 【化8】 (但し、nは0以上の整数である。)
  17. 【請求項17】 上記液晶配向膜を構成するシラン系
    化合物分子の集合群は、パターン状となるように所定の
    方向に、または複数の方向に配向されていることを特徴
    とする請求項14、請求項15または請求項16の何れ
    か1つに記載の液晶表示素子。
  18. 【請求項18】 上記シラン系化合物分子が、感光性
    基を備えた直鎖状炭素鎖を有しており、該感光性基が所
    望の方向に重合固定されていることを特徴とする請求項
    14ないし請求項17の何れか1つに記載の液晶表示素
    子。
  19. 【請求項19】 上記液晶層はプレチルト配向である
    ことを特徴とする請求項14ないし請求項18の何れか
    1つに記載の液晶表示素子。
  20. 【請求項20】 上記液晶層はホモジニアス配向であ
    ることを特徴とする請求項14ないし請求項18の何れ
    か1つに記載の液晶表示素子。
  21. 【請求項21】 上記液晶層はホメオトロピック配向
    であることを特徴とする請求項14ないし請求項18の
    何れか1つに記載の液晶表示素子。
  22. 【請求項22】 上記液晶表示素子は、対向する上記
    電極が片方の基板表面に形成されているインプレーンス
    イッチング型液晶表示素子であることを特徴とする請求
    項14ないし請求項18、または請求項20の何れか1
    つに記載の液晶表示素子。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006276502A (ja) * 2005-03-29 2006-10-12 Seiko Epson Corp 配向膜の形成方法、配向膜、電子デバイス用基板、液晶パネルおよび電子機器
JP2007142005A (ja) * 2005-11-16 2007-06-07 Kagawa Univ 保護膜とその製造方法
JP2007161913A (ja) * 2005-12-15 2007-06-28 Kagawa Univ 接着方法とそれを用いたバイオケミカルチップと光学部品
JP2008297411A (ja) * 2007-05-30 2008-12-11 Kagawa Univ 接着方法並びにそれを用いて作製したバイオケミカルチップ及び光学部品

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