JP2003287685A - 新規光学系、及びその光学系を備える顕微鏡 - Google Patents
新規光学系、及びその光学系を備える顕微鏡Info
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Abstract
光学系、および、この光学系を用いた光学顕微鏡あるい
は蛍光顕微鏡を提供する。 【解決手段】 光源より発生するレーザー光を対物レン
ズへ入射させ、対物レンズを通過したレーザー光を対象
物へ照射する光学系において、上記レーザー光を2つに
分割して対物レンズへ入射させる分光手段を備えるよう
な光学系を提供することによって、細胞全体にわたって
蛍光観察を行えるようにする。さらに、この光学系を光
学顕微鏡あるいは蛍光顕微鏡へ利用することによって、
良好な画像が得られるようにする。
Description
応を観察するために有用な蛍光観察などに使用される新
規光学系、及びその光学系を備える顕微鏡に関するもの
である。
在する膜タンパク質などの分子に担われているため、生
きている細胞の細胞膜で実際に分子が働いている現場を
観察することが、医学・細胞工学の基礎研究および応用
開発において重要である。
有用な方法の一つに、蛍光標識された分子に励起光を照
射することによって発生する蛍光を蛍光顕微鏡にて観察
する蛍光顕微鏡法がある。上記蛍光顕微鏡法としては、
落斜照明法がよく用いられる。しかしながら、上記落斜
照明法では、照明光が試料中の水溶液を通過するので、
背景光が大きくなり、その背景光の中から微弱な蛍光を
捕らえるのは非常に困難であるという問題点がある。
察を行うための装置として、全反射型蛍光顕微鏡が注目
されてきている。上記全反射型蛍光顕微鏡は、エバネッ
セント光を、試料に照射する光として利用している。上
記エバネッセント光とは、後述するように、カバーグラ
スと細胞との界面などにおいて、入射光の入射角を臨界
角よりも大きくすることによって生ずる入射光の全反射
現象で得られる、カバーグラスを通過する光である。上
記エバネッセント光の光強度は、界面から急激に減衰
し、界面より数百nmの範囲までしか届かないため、水
溶液からのラマン散乱などによる背景光を抑えることが
できる。
上の分子を標識している蛍光色素を励起させる全反射型
蛍光顕微鏡によれば、非常に高いコントラストの画像を
得ることができる。従って、全反射型蛍光顕微鏡は、微
弱な蛍光を捕らえることが可能となり、蛍光1分子をも
観察することができる。
レンズ型全反射蛍光顕微鏡が、文献「Biochemical and B
iophysical Research Communications :1997 Jun 9;2
35(1):47-53 :Tokunaga M, Kitamura K, Saito K, Iw
ane AH, Yanagida T.」に記載されている。この対物レン
ズ型全反射蛍光顕微鏡において、試料にエバネッセント
光を照射するための光学系の構成を図2を用いて説明す
る。
射蛍光顕微鏡の光学系は、レーザー光を発生させる光源
であるレーザー発振器20、光路を変更するためのミラ
ーM21、可動ミラーM22、レンズL21、対物レン
ズ23などにより構成される。レーザー発振器20より
放出されたレーザー光は、先ずミラーM21によって反
射され、光路を変更し、レンズL21へ入射する。レン
ズL21を通過したレーザー光は、続いて可動ミラーM
22によって反射され、対物レンズ23へ入射する。
に示すように位置を変化させることができる。これに伴
い、対物レンズ23へ入射するレーザー光は矢印Fに示
すように、対物レンズ23の光軸と平行を保ちながら、
上記光軸と上記レーザー光の光路との間隔を変化させる
ことができる。対物レンズ23を通過するレーザー光
は、上述のように対物レンズ23の光軸とレーザー光の
光路との間隔を変化させることよって、カバーグラスの
配された試料面への入射角を矢印Gに示すように変化さ
せ、エバネッセント光を発生させることができる。カバ
ーグラスの先にある蛍光標識された分子は、このエバネ
ッセント光が照射されることによって、励起され蛍光を
発する。
記対物レンズ型蛍光顕微鏡は、背景光を抑え、微弱な蛍
光観察を行うことができる。
学系では、細胞膜のような曲面状の界面においては、場
所による入射角の違いのため、エバネッセント光を局所
的にしか発生させることができないので、試料全面に渡
って良好な画像を得ることができないという問題点があ
る。
ス上に培養した細胞に照射するレーザー光の入射角を大
きくしていくと、まず、図3(a)に示すように、細胞
の一部で入射角が臨界角に達しエバネッセント光が発生
する。しかし、入射角が臨界角以下の部分も同時に存在
し、ここからレーザー光が溶液側に抜けてゆくので背景
光が大きくなってしまう。この部分でエバネッセント光
を発生させるために、図3(b)に示すように、さらに
レーザー光の入射角を大きくすると、最初にエバネッセ
ント場が発生した部分では入射角が大きくなり過ぎて、
エバネッセント光は非常に弱くなってしまう。これは、
エバネッセント光の減衰長が、入射角が臨界角のときに
もっとも長く、入射角が大きくなるに従って急激に短く
なってゆく、という性質によるものである。
側、即ちカバーグラスに面している側の細胞膜の蛍光観
察を行うことは可能であるが、細胞の背側、即ちカバー
グラスから離れている側の細胞膜の蛍光観察は不可能で
ある。しかしながら、多くの細胞においては、上記腹側
および上記背側の細胞膜は構成要素、機能とも異なって
おり、生理的に重要な分子が背側にのみ発現している例
も多い。
ものであり、細胞全体にわたって蛍光観察を行えるよう
な光学系、および、この光学系を用いた顕微鏡を提供す
ることを目的としている。
光源より発生するレーザー光を対物レンズへ入射させ、
上記対物レンズを通過した上記レーザー光を対象物へ照
射する光学系において、上記光学系は、上記レーザー光
を2つの経路に分割して異なる位置から対物レンズへ入
射させる分光手段を備えることを特徴としている。
いて、対象物である試料を観察する際に、その試料を照
射するために、レーザー光を試料まで導く光学系であ
り、光源より発生したレーザー光を、対物レンズを通過
させて試料へ照射するものである。そして、上記光学系
は、上記レーザー光を上記対物レンズへ入射させる前
に、2つ経路を有するレーザー光に分割する分光器など
の分光手段を備えることによって、上記レーザー光を上
記対物レンズへ異なる2つの位置から入射させる。
物に2つのレーザー光を照射することができる。従っ
て、例えば全反射蛍型光顕微鏡を用いて、蛍光標識され
た細胞膜を観察する場合に、従来の1つのレーザー光の
みを試料に照射する光学系に比べて、広範囲にエバネッ
セント光を照射することができる。そのため、細胞全体
にわたって、ムラなく背景光を抑えた良好な画像を得る
ことができる。
分割された2つのレーザー光を対物レンズへ導く導光手
段を備え、上記導光手段は、上記2つの経路を有するレ
ーザー光を、上記対物レンズの光軸に対して平行に入射
させる構成としてもよい。
するレーザー光は、上記対物レンズの光軸と平行を保ち
ながら上記対物レンズに入射するため、焦点を含む対象
物の面を通過する上記2つの経路を有するレーザー光の
中心位置を変化させることなく、上記2つのレーザー光
の入射角を変化させることができる。即ち、上記2つの
経路を有するレーザー光の各経路の中心位置を、上記対
物レンズの焦点へ集めるため、目的とする対象物面へず
れることなく上記2つのレーザー光を照射することがで
きる。
対物レンズに対して上記2つの経路を有するレーザー光
を反射させる1つの反射体と、上記2つの経路を有する
レーザー光を経路ごとに受光して上記反射体へ照射する
2つの中継光学部とを有し、前記中継光学部は、前記反
射体に対する前記2つの経路を有するレーザー光の照射
位置を移動させることができる可動型光学部である構成
としてもよい。
部の位置を適宜変更させることによって、上記2つの経
路を有するレーザー光の照射位置を移動させることがで
きる。これによれば、対物レンズを通過し、対象物へ照
射されるレーザー光の入射角を変更することができるた
め、各対象物に適した入射角を有するレーザー光を照射
させることができる。従って、対象物によって屈折率が
異なる場合にも、レーザー光の入射角を適宜調節するこ
とによって、例えば、蛍光観察に最適なエバネッセント
光を発生させることができる。
は、レーザー光を受光する中継レンズと、上記中継レン
ズを通過したレーザー光を上記反射体に照射する中継ミ
ラーとを有し、上記中継レンズと上記中継ミラーとが、
常に同じ距離を保ちながら、上記対物レンズの光軸に対
して平行に移動するような構成としてもよい。
記対物レンズとの距離を一定に保つことができ、上記対
物レンズへ入射するレーザー光の収束度が変化すること
を防止できる。
の距離は、両レンズによって導かれるレーザー光の光路
長が、上記両レンズの焦点距離の和に等しくなる位置に
配されることが好ましい。上記のような光学系を全反射
型蛍光顕微鏡に用いれば、収束度の変化によるレーザー
光の強度変化、全反射条件を満たさない入射光の混入お
よび、光散乱の増加による背景光の増大を防ぐことがで
きる。
の断面が直角二等辺三角形の形状を有し、かつ上記直角
二等辺三角形の等辺を含む2つの面が少なくとも反射面
であり、上記2つの中継光学部は、上記2つの経路を有
するレーザー光を、経路ごとに上記2つの面にそれぞれ
照射する位置関係となるように配置される構成としても
よい。
継ミラーによって反射されたレーザー光が上記反射体に
よって反射される場合に、レーザー光の光路が取り得る
面によって上記反射体を切断したときに得られる断面の
ことを意味する。従って、上記反射体は、上述のような
断面を有するものであれば特に限定されるものではない
が、例えば、三角柱や、四角錐のような形態を有するも
のであることが好ましい。
射面を有する1つの反射体によって、上記2つの中継光
学部より導かれた2つの経路を有するレーザー光を、上
記対物レンズへ異なる位置から入射させることができ
る。また、上記の構成によれば、上記2つの中継光学部
が可動型光学部である場合に、上記2つの可動型光学部
を上記反射体を挟んで向き合うように配置することがで
きるため、可動範囲を大きくすることができる。
角形の頂点が、上記対物レンズの光軸上に配される構成
としてもよい。
部が位置を変えることで、上記対物レンズの中心位置
(光軸の位置)から、あらゆる距離を持たせて、上記2
つの可動型光学部からのレーザー光を対物レンズへ入射
させることができる。従って、上記対象物への入射角を
さらに自由に変化させることができる。さらに、上記の
構成によれば、上記2つの経路を有するレーザー光の各
経路を共に、上記直角二等辺三角形の頂点の部分に導け
ば、1つのレーザー光を対象物へ照射することも可能で
あり、上記光学系の利用範囲を広げることができる。
路の上記対象物への入射角が臨界角となったときの、上
記対物レンズ上での上記レーザー光の光路と上記対物レ
ンズの光軸との距離をdとし、上記対物レンズの径をD
としたときに、上記反射体の直角二等辺三角形の断面に
おける底辺の長さlは、2d≦l≦Dを満たすことが好
ましい。
辺の長さlが、上記レーザー光の中心位置の光路と上記
光軸との距離dの2倍以上であるということを意味す
る。従って、これによれば、上記レーザー光の対象物へ
の入射角を、光軸上の0度からエバネッセント光が起こ
る臨界角まで、自由に変化させることができる。
の底辺の長さlが、上記対物レンズの径D以下であるこ
とを意味する。なお、ここで言う対物レンズの径Dと
は、光軸を中心として上記レーザー光が入射する位置の
方向における、対物レンズの一方の端から他方の端まで
の長さのことである。これによれば、上記反射体によっ
て反射された上記2つのレーザー光を、ともに対物レン
ズから外れることなく確実に入射させることができる。
上記レーザー光を偏光の異なる2つの直線偏光、あるい
は、回転方向の異なる2つの円偏光に分割する構成とし
てもよい。
2つのレーザー光に分割し、対象物に入射すると、上記
2つのレーザー光間に干渉が起こり、均一な照明を得る
ことができない。上記の構成によれば、異なる偏光を有
する2つのレーザー光に分割するため、上述のような干
渉を防ぐことができる。さらに、レーザー光を分割する
際、あるいは、統合する際(一つの対象物に照射する
際)の光量の浪費を防ぐことできるため、有用である。
微鏡も含まれる。そして、上記顕微鏡は、光学顕微鏡あ
るいは蛍光顕微鏡であることが好ましい。
で、2つのレーザー光を対象物へ照射することができる
ため、例えば、複数のレーザー光を必要とする光学顕微
鏡において、光源の数を減らすことができる。また、上
記の構成によれば、照明光の角度を自由に変化させるこ
とができるため、多目的に使用することができる。
全反射法によって広範囲にエバネッセント光を照射でき
るため、例えば細胞を観察する際などに、細胞全体にム
ラなく背景光を抑えた良好な画像を得ることができる。
図面に基づいて以下に説明する。なお、本発明は、以下
の記載に限定されるものではない。
型蛍光顕微鏡に接続して用いられる光学系を例に挙げて
説明する。蛍光顕微鏡は、観察対象となる試料中の分子
(例えば、細胞膜上に存在する膜タンパク質など)を蛍
光標識し、励起光を照射して得られる蛍光画像を観察す
るために用いられるものである。そして、上記全反射型
蛍光顕微鏡は、光の全反射現象を利用して蛍光観察を行
う。従って、上記光学系は、光の全反射現象によって得
られる励起光を試料に照射するために用いられる。
光は、エバネッセント光と称される。上記エバネッセン
ト光について、以下に説明する。
を通過するとき、その境界面において屈折する。例え
ば、第1媒質、第2媒質の屈折率をそれぞれn1、n
2(n1>n2)とし、境界面への光の入射角をθとする
と、図4(a)に示すように、θが小さいとき(即ち、
θが臨界角より小さいとき)、光は境界面で屈折して進
む。しかし、θが大きくなるに従って屈折角は90°に
近づき、図4(b)に示すように、sinθ=n1/n2
のとき、屈折角は90°になる。このときの入射角を、
臨界角という。さらに、θを大きくする(即ち、θを臨
界角より大きくする)と、図4(c)に示すように、光
は境界面で全て反射する。この現象を全反射と呼ぶ。
第2媒質中に全く入射しないわけではなく、第2媒質中
には境界面からの距離に比例して、指数関数的に急激に
強度が減衰する光波が存在する。このような光波が、エ
バネッセント光と呼ばれるものである。上述のように、
エバネッセント光は、微弱な光であるため、背景光を抑
えたい蛍光観察などには、好適に用いられる。なお、上
述のような光の全反射現象により発生するエバネッセン
ト光を利用する方法を、全反射法(全反射蛍光顕微鏡
法)と称する。
用いて説明する。図1に示すように、上記光学系は、レ
ーザー光を発生させる光源であるレーザー発振器10、
光路を変更するためのミラーM2・M3、分光手段であ
る偏光ビームスプリッター14、中継ミラーM1および
中継レンズL1によって構成される第1可動型光学部1
8、中継ミラーM1’および中継レンズL1’によって
構成される第2可動型光学部19、反射体である直角反
射プリズム15、対物レンズ13などを含んで構成され
る。さらに上記光学系は、レーザー光の偏光を変換する
偏光板として、3つのλ/4板11・12・12’を有
している。なお、上記第1可動型光学部、上記第2可動
型光学部および上記直角反射プリズムを併せた部分が導
光手段である。
いて、以下に説明する。レーザー発振器10とミラーM
2との間に、λ/4板11が配されている。λ/4板1
1は、レーザー発振器10より出された直線偏光のレー
ザー光を円偏光に変換する。また、ミラーM2とミラー
M3との間に偏光ビームスプリッター14が配されてい
る。上記偏光ビームスプリッター14は、入射したレー
ザー光をレーザー発振器10より出されたレーザー光と
同方向の偏光と、上記レーザー光に対して垂直方向の偏
光とに分割させるような位置に配されている。
は、上記垂直方向の偏光を有するレーザー光が入射する
ような位置に配されている。すなわち、第1可動型光学
部18内の中継レンズL1は、その光軸上を上記垂直方
向の偏光を有するレーザー光が通過するような位置に配
されている。
学部19は、上記同方向の偏光を有するレーザー光が、
ミラーM3に反射された後に入射するような位置に配さ
れている。すなわち、第2可動型光学部19内の中継レ
ンズL1’は、その光軸上を上記同方向の偏光を有する
レーザー光が通過するような位置に配されている。
学部18・第2可動型光学部19は、図1に示すよう
に、直角反射プリズム15を挟んで対称な位置に配され
ている。即ち、直角反射プリズム15は、上記2つの可
動型光学部の中間の位置に配されている。
直角二等辺三角形の形状を有する三角柱である。そし
て、上記三角柱の断面である二等辺三角形の等辺のうち
の一辺を含む面と平行な位置に、第1可動型光学部18
内の中継ミラーM1は配されている。また、上記三角柱
の断面である二等辺三角形の等辺のうちの他の一辺を含
む面と平行な位置に、第2可動型光学部19内の中継ミ
ラーM1’は配されている。なお、上記直角反射プリズ
ム15の断面の直角二等辺三角形の頂点は、対物レンズ
13の光軸が通過するような位置に配されている。
可動型光学部19は、それぞれ矢印Aあるいは矢印A’
に示すように、対物レンズ13の光軸と平行に独立して
移動することができる。これにより、偏光ビームスプリ
ッター14によって偏光された2つの経路を有するレー
ザー光を、対物レンズ13の光軸と平行を保ちながら、
上記2つの経路を有するレーザー光を矢印Bあるいは
B’のように光軸からの距離を変更することができる。
従って、対物レンズ13を通過した上記2つの経路を有
するレーザー光は、試料面における入射角を矢印Cある
いはC’のように変化させることができる。
継レンズL1および中継ミラーM1、あるいは、上記第
2可動型光学部19内の中継レンズL1’および中継ミ
ラーM1’は、常に一定の距離を保ちながら移動する。
これにより、中継レンズL1あるいはL1’から対物レ
ンズ13までの光路長を常に一定にすることができる。
を試料まで照射する方法について説明する。先ず、レー
ザー発振器10は、所定の方向の直線偏光(これをP偏
光と称する)であるレーザー光を発生させる。続いて、
λ/4板11が、上記P偏光のレーザー光を円偏光に変
換する。λ/4板11を通過した円偏光のレーザー光
は、ミラーM2によって反射され、光路を変更し、偏光
ビームスプリッター14へ入射する。上記ミラーM2
は、光軸調整を行うために適宜角度を変更することがで
きる。これにより、レーザー発振器10自体を動かして
光軸調整を行う手間を省くことができる。
偏光のレーザー光を2つの直線偏光、即ちP偏光と上記
P偏光と垂直に交差する方向の直線偏光であるS偏光と
に分割する。次に、上記S偏光のレーザー光は、偏光方
向による反射率の違いの影響を避けるために、λ/4板
12で再び円偏光に変換され、第1可動型光学部18へ
入射する。一方、上記P偏光のレーザー光は、ミラーM
3によって光路を変更された後、λ/4板12’で再び
円偏光に変換され、第2可動型光学部19へ入射する。
なお、上記λ/4板12・12’によって変換された2
つの円偏光は、互いに逆回りの円偏光を有している。こ
れによって、2つのレーザー光間の干渉を防ぐことがで
き、観察する試料に含まれる蛍光色素を偏りなく励起す
ることができる。
光は、中継レンズL1を通過した後、中継ミラーM1に
よって反射され、直角反射プリズム15の一つの反射面
へ入射する。第2可動型光学部19へ入射したレーザー
光は、中継レンズL1’を通過した後、中継ミラーM
1’によって反射され、直角反射プリズム15の他の反
射面へ入射する。
路のレーザー光は、それぞれ反射され、上述のように対
物レンズ13の光軸と平行を保ちながら、対物レンズ1
3の異なる位置へ入射する。
は、上記2つのレーザー光を、対物レンズ13の光軸か
ら離れた別々の位置から入射させることができる。その
ため、試料面の広範囲に渡って全反射現象を生ずるよう
な入射角を有して、試料に入射することが可能であり、
試料の全体にエバネッセント光を照射することができ
る。さらに、上記光学系は、試料面への入射角を適宜変
更することができるため、エバネッセント光が発生する
ような入射角となるように、各試料の屈折率に応じて入
射角を変えることができる。従って、確実に蛍光観察を
行うことができる。
系は、図5に示すように2つに分割されたレーザー光
を、異なる位置からカバーグラスを通して、試料となる
細胞へ照射することができる。そして、対物レンズ13
の光軸からの距離を自由に調節することができるため、
試料への入射角を調節することが可能となる。従って、
細胞の全体にわたって全反射条件を満たすようなレーザ
ー光を照射でき、エバネッセント光を発生させることが
できる。なお、図5においては、比較的細いレーザー光
を使用した場合の様子を示しているが、より太いレーザ
ー光を使用することによって、細胞全体にエバネッセン
ト光を照射することが可能である。
察対象となる試料として、細胞に限らず、屈折率の異な
る材料が湾曲した界面で接している部分を全反射法で観
察する場合にも、好適に用いることができる。
体の一例として、直角反射プリズム15を用いている。
この構成によれば、直角反射プリズム15の先端にレー
ザー光の2つの経路を導くことによって、光軸とレーザ
ーの光路が重なり入射角が0度になるまで2本のレーザ
ーの間隔を小さくすることができる。これは通常の落斜
型蛍光顕微鏡と同じ状態であり、本発明の利用範囲を広
げるものである。即ち、本実施の形態に係る光学系は、
落斜照明法による蛍光観察にも使用することができる。
また、上記直角反射プリズム15を用いることによっ
て、上記光学系は、上記2つのレーザー光と上記光軸と
の間隔を小さくすることもできるため、瞳の大きさが制
限される蛍光顕微鏡の入射光学系に好適に用いることが
できる。
レーザー光の光路が取り得る面である二等辺三角形の断
面の底辺の長さをlとすると、上記lは、次のような条
件を満たすことが好ましい。
なるような位置から、対物レンズ13へ入射できること
が好ましい。つまり、対物レンズ13への入射時に、レ
ーザー光の光路が、対物レンズ13の光軸位置と、試料
面への入射角が臨界角となる程度に離れていなければ、
上記レーザー光が試料面を照射した場合に、エバネッセ
ント光を効率よく発生させることができない。従って、
レーザー光における光路の試料面への入射角が臨界角と
なったときの、対物レンズ13上におけるレーザー光の
中心と対物レンズ13上の光軸位置との距離をdとする
と、lとdとの間で、d≦l/2という関係を満たすこ
とが好ましい。
面に対する底辺の長さ、即ち底辺lの半分の長さに相当
するl/2が、距離d以上となることによって、第1可
動型光学部18より反射されたレーザー光は、上記入射
角を臨界角以上とすることができる。また、第2可動型
光学部19より反射されたレーザー光においても同様の
ことが言えるため、結果として、底辺l長さは、2d≦
lを満たすことが好ましい。なお、レーザー光が取り得
る光路と対物レンズ13の光軸とは、互いに平行な関係
にあるため、上記距離dは上記光路と上記光軸との距離
とも言える。
きに、上記2つの可動型光学部18・19からの2つの
レーザー光を、ともに対物レンズ13へ外れることなく
確実に入射させるために、底辺lは径D以下であること
が好ましい。即ち、底辺lの長さが、l≦Dを満たすこ
とが好ましい。
二等辺三角形の底辺lの長さは、2d≦l≦Dを満たす
ことが好ましい。
2およびλ/4板12・12’を備えた構成としている
が、本発明に係る光学系は、上記の構成を省いてもよ
い。また、本実施の形態において用いられる分光手段と
しての上記偏光ビームスプリッター14は、各々逆回り
の円偏光に分割するようなものであってもよい。これに
よれば、分割されたレーザー光を、λ/4板12・1
2’を使用することなく、直接2つの可動型光学部18
・19へ入射させることができる。
記光学系は、図6に示すように、直角反射プリズム15
と対物レンズ13との間に、さらに2つのレンズ16・
17を有する構成としてもよい。上記の構成によれば、
上記光学系を蛍光観察などに用いた場合に、試料面への
レーザー光の入射角をより調節しやすくすることができ
る。
離をKとし、上記第1可動型光学部18を通過して対物
レンズ13へ入射するレーザー光の移動距離をkとする
と、図1に示す光学系の場合、各移動距離Kおよびkは
等しくなる(即ち、K=k)。一方、図6に示す光学系
のように、レンズ16・17を備える構成の場合、レン
ズ16および17に異なる焦点距離のレンズを選択する
ことによって、上記第1可動型光学部18の移動距離K
と上記レーザー光の移動距離kとの間に比例関係が成立
する(即ち、K=ak)。
れf16、f17とすると、a=f17/f16となる。従っ
て、例えば、f16<f17とすると、a>1となるため、
上記レーザー光の移動距離kは上記第1可動型光学部1
8の移動距離Kよりも大きくなる(即ち、K<k)。つ
まり、第1可動型光学部18を少し動かしただけで、対
物レンズ13へ入射するレーザー光の光路を大きく移動
させることができる。また、逆にf16>f17とすると、
a<1となり、上記レーザー光の移動距離kを上記第1
可動型光学部18の移動距離Kよりも小さくすることが
できるため、入射角の微妙な調整が可能となる。なお、
上記の構成によれば、第2可動型光学部19を通過した
レーザー光についても、上記第1可動型光学部18を通
過したレーザー光と同様に、試料面への入射角を調節し
やすくすることができる。
微鏡に接続して使用する光学系を例に挙げている。しか
しながら、本発明に係る光学系はこれに限らず、例え
ば、複数の入射光を必要とする光学顕微鏡、より具体的
には、スタンディングウェーブ顕微鏡やCARS顕微鏡
などに使用することができる。上記の構成によれば、一
つの光源によって、2つの入射光を得ることができるた
め、用いる光学系の数を減らすことができる。
度を変化させることが必要な暗視野顕微鏡、低角照明顕
微鏡、光トモグラフィー顕微鏡などにも利用することが
できる。上記の構成によれば、入射光の角度を自由に変
化させることが可能であるため、試料の広範囲に良好な
入射光を照射することができるようになり、有用であ
る。
光源より発生するレーザー光を対物レンズへ入射させ、
上記対物レンズを通過した上記レーザー光を対象物へ照
射する光学系において、上記光学系は、上記レーザー光
を2つの経路に分割し、異なる位置から対物レンズへ入
射させる分光手段を備える構成である。
の光学系を備えた構成であり、具体的には、上記各構成
の光学系を備える光学顕微鏡または蛍光顕微鏡を挙げる
ことができる。
象物に2つのレーザー光を個別の経路で照射することが
できる。従って、1つの経路のみで対象物にレーザー光
を照射する従来の光学系に比べて、広範囲にレーザー光
を照射することができる。そのため対象物を良好に照射
することができるという効果を奏する。
て、蛍光標識された細胞膜を観察する場合に、従来の光
学系に比べて広範囲にエバネッセント光を照射すること
ができる。そのため、全ての膜内在性分子および、細胞
内外から膜と相互作用する分子の蛍光観察に利用するこ
とも可能であり、非常に広範囲に及ぶ研究に利用できる
という効果を奏する。
う生物学的研究に利用するだけでなく、屈折率の異なる
材料が湾曲した界面で接しているような物を試料として
全反射法により蛍光観察する場合にも利用することがで
きるという効果を奏する。
す模式図である。
の構成を示す模式図である。
して試料となる細胞にレーザー光が照射された場合に、
発生するエバネッセント光の様子を示した模式図であ
る。(a)は、入射角が小さい場合の、また、(b)
は、入射角を大きくした場合の試料に照射されるエバネ
ッセント光の様子を示した模式図である。
光の性質を示した模式図である。なお、(a)は、光の
入射角が臨界角よりも小さい場合、(b)は、光の入射
角が臨界角と等しい場合、(c)は、光の入射角が臨界
角よりも大きい場合を示す。
レーザー光が照射された場合の様子を示す模式図であ
る。
示す模式図である。
学部) 19 第2可動型光学部(中継光学部、又は可動型光
学部) L1・L1’ 中継レンズ M1・M1’ 中継ミラー M2・M3 ミラー
Claims (10)
- 【請求項1】光源より発生するレーザー光を対物レンズ
へ入射させ、前記対物レンズを通過した前記レーザー光
を対象物へ照射する光学系において、 前記光学系は、前記光源より出された前記レーザー光を
2つの経路に分割し、異なる位置から前記対物レンズへ
入射させる分光手段を備えることを特徴とする光学系。 - 【請求項2】前記光学系はさらに、前記分光手段により
分割された2つの経路を有するレーザー光を対物レンズ
へ導く導光手段を備え、 前記導光手段は、前記2つの経路を有するレーザー光
を、前記対物レンズの光軸に対して平行に入射させるこ
とを特徴とする請求項1に記載の光学系。 - 【請求項3】前記導光手段は、前記対物レンズに対して
前記2つの経路を有するレーザー光を反射させる1つの
反射体と、前記2つの経路を有するレーザー光を経路ご
とに受光して前記反射体へ照射する2つの中継光学部と
を有し、 前記中継光学部は、前記反射体に対する前記2つの経路
を有するレーザー光の照射位置を移動させることができ
る可動型光学部であることを特徴とする請求項2に記載
の光学系。 - 【請求項4】前記可動型光学部は、レーザー光を受光す
る中継レンズと、前記中継レンズを通過したレーザー光
を前記反射体に照射する中継ミラーとを有し、 前記中継レンズと前記中継ミラーとが、常に同じ距離を
保ちながら、前記対物レンズの光軸に対して平行に移動
することを特徴とする請求項3に記載の光学系。 - 【請求項5】前記反射体は、断面が直角二等辺三角形の
形状を有し、かつ前記直角二等辺三角形の等辺を含む2
つの面が少なくとも反射面であり、 前記2つの中継光学部は、前記2つの経路を有するレー
ザー光を、経路ごとに前記2つの面にそれぞれ照射する
位置関係となるように配置されることを特徴とする請求
項3または4に記載の光学系。 - 【請求項6】前記直角二等辺三角形の頂点は、前記対物
レンズの光軸上に配されることを特徴とする請求項5に
記載の光学系。 - 【請求項7】前記2つの経路を有するレーザー光の光路
の前記対象物への入射角が臨界角となったときの、前記
対物レンズ上における前記レーザー光の光路と前記対物
レンズの光軸との距離をdとし、 前記対物レンズの径をDとしたときに、 前記反射体の直角二等辺三角形の断面における底辺の長
さlは、 2d≦l≦Dを満たすことを特徴とする請求項5または
6に記載の光学系。 - 【請求項8】前記分光手段は、前記レーザー光を異なる
2つの直線偏光、あるいは、回転方向の異なる2つの円
偏光に分割することを特徴とする請求項1ないし7の何
れか1項に記載の光学系。 - 【請求項9】請求項1ないし8の何れか1項に記載の光
学系を備えることを特徴とする顕微鏡。 - 【請求項10】前記顕微鏡が、光学顕微鏡または蛍光顕
微鏡であることを特徴とする請求項9に記載の顕微鏡。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007088947A1 (ja) * | 2006-02-02 | 2007-08-09 | National University Corporation NARA Institute of Science and Technology | 円二色性蛍光顕微鏡 |
JP2008098405A (ja) * | 2006-10-12 | 2008-04-24 | Sumitomo Heavy Ind Ltd | レーザ照射装置 |
CN101813822B (zh) * | 2010-01-27 | 2012-05-16 | 深圳大学 | 具有轴向选择性激发的荧光三维纳米分辨成像方法及装置 |
-
2002
- 2002-03-27 JP JP2002090015A patent/JP3857166B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JP2008098405A (ja) * | 2006-10-12 | 2008-04-24 | Sumitomo Heavy Ind Ltd | レーザ照射装置 |
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