JP2003284454A - 肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物 - Google Patents

肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物

Info

Publication number
JP2003284454A
JP2003284454A JP2002091410A JP2002091410A JP2003284454A JP 2003284454 A JP2003284454 A JP 2003284454A JP 2002091410 A JP2002091410 A JP 2002091410A JP 2002091410 A JP2002091410 A JP 2002091410A JP 2003284454 A JP2003284454 A JP 2003284454A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cbp
mice
gene
obesity
deficient
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002091410A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Kadowaki
孝 門脇
Toshimasa Yamauchi
敏正 山内
Yuichi Oike
雄一 尾池
Junji Kamon
淳司 加門
Hironori Waki
裕典 脇
Ryozo Nagai
良三 永井
Satoru Kimura
哲 木村
Kenichi Yamamura
研一 山村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Corp filed Critical Japan Science and Technology Corp
Priority to JP2002091410A priority Critical patent/JP2003284454A/ja
Publication of JP2003284454A publication Critical patent/JP2003284454A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 cAMP反応性エレメント結合タンパク質結
合タンパク質の機能が欠損した非ヒト動物からなる肥満
及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物。 【効果】 本発明のモデル動物を用いれば肥満及び/又
は糖尿病の発生メカニズムが解明できるだけでなく、新
たな肥満及び/又は糖尿病の予防治療剤の開発が可能と
なる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、肥満及び/又は糖
尿病の予防及び/又は治療剤のスクリーニングに有用な
モデル動物に関する。
【0002】
【従来の技術】日本人の糖尿病・肥満患者は、糖尿病患
者だけで推定700万人でその数はなお増加の一途をた
どっている。糖尿病の大部分を占める一般の2型糖尿病
及び肥満は、複数の原因遺伝子が組合わさり、更に生活
習慣などの環境因子が重なって発症する多因子病であ
る。糖尿病・肥満の増加の最大の原因は食生活の欧米
化、特に高脂肪食と身体活動の減少など生活習慣に起因
したインスリン抵抗性の増大と考えられる。したがっ
て、2型糖尿病・肥満の原因遺伝子の同定と共に、欧米
型の生活習慣がインスリン抵抗性、更にはシンドローム
Xや動脈硬化を引き起こす分子機構を解明して、生活習
慣病の根本的予防法や治療法を確立することが急務とな
っている。
【0003】核内受容体型転写因子PPARγ(peroxisome
proleferator-activated receptorγ)が脂肪蓄積の主調
節因子であることを、本発明者らはそのヘテロ欠損マウ
スを作製して世界ではじめて明らかにした。更にその分
子メカニズムとしてPPARγはレプチン、アディポネクチ
ンというエネルギー消費ホルモンを抑制して、脂肪蓄積
を促進していることを報告した(Nature Medicine, Vo
l.7, No.8, p941-946(2001))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、レプチンは脂
肪萎縮性糖尿病モデルに対する投与では劇的にインスリ
ン抵抗性を改善するが、肥満者に対して投与しても明確
な効果が得られない等の点があり、未だ肥満や糖尿病の
分子メカニズムが解明されたとは言えない。従って本発
明は、肥満及び/又は糖尿病に関与する新たな因子を解
明し、これらの疾患に有用なモデル動物及び当該モデル
動物を用いた肥満及び/又は糖尿病の予防及び/又は治
療薬のスクリーニング方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者はcAMP反
応性エレメント結合タンパク質(CREB)結合タンパク質
(以下、「CBP」という)に着目した。CBPは、ステロー
ル調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、CCAAT/エン
ハンサー結合タンパク質(C/EBP)、種々の核内受容体
(ペルオキシソーム増殖因子応答性リセプター(PPAR))
及びシグナルトランスデューサー転写活性化因子群(STA
T)など、広範囲にわたって重要な生理的機能を有する多
数の転写因子に関連するコアクチベーターの1つであ
る。しかし、これら個々の転写因子とは対照的に、CBP
自体の生理的役割はあまりよく分かっていない。そこ
で、本発明者は、CBP欠損マウスを用いて、当該マウス
の脂肪組織量・インスリン感受性と共に、脂肪細胞サイ
ズ、アディポカイン量、組織内中性脂肪含量、脂肪酸代
謝に関わる分子の発現量等を解析した。更にCBPの作用
とレプチンの作用との関係を明らかにする目的で、レプ
チン欠損マウスであるob/obマウスとCBPヘテロ欠損マウ
スのかけ合わせ実験を行うと共に、ob/obマウスにアデ
ィポネクチンを過剰発現したマウスと比較検討した。そ
の結果、全く意外なことにCBPヘテロ欠損マウスでは白
色脂肪組織(WAT)重量の著しい減少を示したが、他の組
織重量は減少していなかった。また、このような脂肪萎
縮にもかかわらず、CBPヘテロ欠損マウスは、インスリ
ン感受性の亢進と良好な耐糖能を示し、高脂肪(HF)食に
よる体重増加が抑制されていた。またPPARγヘテロ欠損
マウスとの比較、レプチン欠損マウスとのかけ合わせ実
験及びアディポネクチン発現マウスとの比較から、CBP
ヘテロ欠損マウスの脂肪蓄積、体重調節の情報伝達経路
は、PPARγ非依存性、レプチン非依存性かつアディポネ
クチン非依存性の、全く新規な経路を含んだものである
ことが判明した。このような知見に基づき、本発明者
は、CBP機能が欠損した非ヒト動物は肥満及び/又は糖
尿病に対する抵抗性のモデル動物として有用であり、こ
れを用いれば全く新たな肥満及び/又は糖尿病の予防治
療剤のスクリーニングが可能になることを見出し、本発
明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明はCBPの機能が欠損した
非ヒト動物からなる肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗
性のモデル動物を提供するものである。また、本発明は
CBPの機能が欠損した非ヒト動物に被験薬物を投与する
ことを特徴とする肥満及び/又は糖尿病の予防及び/又
は治療剤のスクリーニング方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のモデル動物となるCBPの
機能が欠損した非ヒト動物としては、例えばTanaka, Y.
et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 94, 10215-102
20(1997)、Yao, T. P., et al., Cell 93, 361-372(199
8)、Oike, Y., at al., Hum. Mol. Genet. 8, 387-396
(1999)、Kubota, N. et al., Mol. Cell 4, 597-609(19
99)等に記載のCBP遺伝子欠損動物が挙げられる。
【0008】本発明において、「遺伝子の機能が欠損し
た」とは、該遺伝子の遺伝子産物であるCBPが正常に産
生されないことをいい、CBP自体が産生されないこと及
び一部を欠損するなどして機能を発現し得ないCBP様タ
ンパク質を産生することが含まれる。
【0009】本発明のCBP遺伝子(以下、Crebbpともい
う)の機能欠損動物を得るためには、これらの遺伝子を
クローニングし、インビトロで該遺伝子の機能を欠損さ
せた後に、該欠損遺伝子を動物に戻して染色体上のCBP
遺伝子との間で相同組換えを起こさせ、染色体上のCBP
遺伝子を破壊し、その動物自体又はその子孫の該遺伝子
の機能を欠損させるという方法が一般的に用いられる。
【0010】遺伝子の機能を欠損させる方法としては、
遺伝子に人為的に変異を加えて該遺伝子を破壊する方法
が挙げられ、例えばプロモーター領域及び/又はコード
領域の少なくとも一部の欠失や、他の遺伝子を挿入又は
置換することが挙げられる。
【0011】本発明でいう非ヒト動物は、CBP遺伝子の
機能が欠損したものであればよく、CBP遺伝子がヘテロ
に欠損している動物及びホモに欠損している動物のいず
れもが含まれるが、ホモ欠損動物胎生致死なので、ヘテ
ロ欠損動物が好ましい。また、使用される動物は特に限
定されず、ヒトを除く全ての動物が挙げられ、好ましく
はモルモット、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ、
ブタ等の哺乳動物であり、病態モデルとしての扱いが容
易で且つ生物サイクルが比較的短い齧歯動物、特にマウ
スが好ましい。
【0012】動物に遺伝子を導入してその動物の個体又
は子孫にその遺伝子を発現させる手法としては、従来か
らトランスジェニック動物の作成に常用されている公知
の手法を挙げることができ、例えば遺伝子DNAを受精卵
の前核期胚に注入する方法、組換えレトロウイルスを初
期胚に感染させる方法、相同組換えを起こさせた胚性幹
細胞(ES細胞)を胚盤胞又は8細胞期胚に注入する方法等
によって得られた宿主胚を動物に移植して産仔を得、こ
れを他の個体と交配し、F1ヘテロ変異動物、更にはF2ホ
モ又はヘミ変異動物を作成する方法が挙げられる。この
うち、ES細胞を用いる遺伝子導入の方法は、相同組換え
により遺伝子を破壊(ノックアウト)するのに適してお
り、ES細胞に遺伝子を導入する工程とキメラ動物を作出
する工程とを分けて行えるという利点を有しているので
好ましい。ES細胞を用いる遺伝子導入の方法は、公知の
方法に準じて行えばよい。
【0013】以下、ES細胞を用いた遺伝子の導入の方法
について、マウスを例にして具体的に説明する。マウス
のCBP遺伝子機能の欠損には、プロモーター領域及び/
又はコード領域の少なくとも一部を欠失させるか、いず
れかの部位に他の遺伝子を挿入すればよい。また、これ
らの遺伝子の機能を欠損させることができる限り、欠失
又は他の遺伝子を挿入する部位は、イントロンであって
もよい。そして、CBP遺伝子との間で相同組換えを行う
にあたり、このように遺伝子を破壊するように構築した
DNA配列を有するDNA(ターゲティングベクター)を作製
する。
【0014】挿入する遺伝子としては、CBP遺伝子の欠
損を検出するためのマーカー遺伝子として機能する遺伝
子を用いることが好ましく、そのような遺伝子として
は、ポジティブ選別に用いるマーカー遺伝子として、例
えばネオマイシン(neo)耐性遺伝子が、ネガティブ選別
に用いるマーカー遺伝子として、例えばチミジンキナー
ゼ(tk)遺伝子やジフテリアトキシンAフラグメント(DT-
A)遺伝子等が用いられる。尚、ネオマイシン耐性遺伝子
は、ネオマイシン類似体であるG418を用いることにより
目的遺伝子の選別を可能にする。
【0015】好ましい遺伝子ターゲティングとしては、
ターゲティングベクターとして、ポジティブ選別マーカ
ーが標的遺伝子の上に置換されている置換型ベクターを
用いる方法と、標的遺伝子の上流に選別マーカーを含む
ベクターのバックボーンにあたる非相同領域を挿入する
ことによって、その遺伝子の発現を抑制する挿入型ベク
ターを用いる方法などが挙げられる。尚、これらの遺伝
子の挿入は、インビトロで常用のDNA組換え技術により
行うことができる。
【0016】次に、こうして得られたターゲティングベ
クターと、ES細胞中のCBP遺伝子との間で相同組換えを
行う。相同組換え用DNAのES細胞への導入は、例えば常
用のエレクトロポレーションにより行うことができる。
この相同組換えにおいては、ES細胞中のCBP遺伝子のDNA
と相同組換え用DNAの対応する領域との間で組換えが生
じ、相同組換え用DNA中に挿入されていたマーカー遺伝
子がES細胞のゲノムのCBP遺伝子に挿入される。この結
果、ES細胞は、CBP遺伝子の機能を欠損し、同時にマー
カー遺伝子を含むことになる。このマーカー遺伝子の選
別機能に基づいて、CBP遺伝子の機能を欠損したES細胞
を選別することができる。
【0017】次に、このES細胞をマウスの胚盤胞等の宿
主胚に注入し、得られた胚を偽妊娠マウスの子宮角に移
植してキメラマウスを得る。このキメラマウスを適当な
系統のマウスと交配することによりF1ヘテロ型の産仔を
得る。キメラマウスの生殖細胞が相同組換え体、すなわ
ちCBP遺伝子が破壊されているES細胞に由来していれ
ば、CBP遺伝子の機能が欠損したマウスを得ることがで
きる。また、得られたヘテロ欠損動物同士を交配させ、
その産仔の中からホモ欠損動物を得ることができる。
【0018】CBP遺伝子の欠損や、該遺伝子がヘテロ又
はホモに欠損したものであるかは、離乳に至った後に尾
からDNAを注出後、サザンブロット又はPCRを行って、確
認することができる。
【0019】尚、本発明の動物の飼育方法は、特別な方
法を用いる必要はなく、正常な動物と同様な方法により
飼育することができる。
【0020】こうして作製されるCBP機能が欠損した動
物、特にCBPヘテロ欠損動物は次のような性質を有す
る。
【0021】(1)CBPヘテロ欠損動物では摂餌に関わ
る脳内ペプチドの発現量に有意な変化を認めず、実際体
重当りの摂餌量に著変を認めなかったが、エネルギー消
費が亢進しており、野生型マウスの2/3程度の体重を示
した。 (2)CBPヘテロ欠損動物の体重当りの組織重量は白色
脂肪組織においてのみ著減していた。 (3)胎児線維芽細胞を用いたin vitro脂肪細胞分化の
系では、CBPヘテロ欠損動物は脂肪細胞分化に関わる転
写因子の活性が約半分に低下し、脂肪細胞分化が遅れる
傾向が認められたが、in vivoにおいては脂肪細胞分化
の障害は認められず、白色脂肪組織量の著減は脂肪細胞
の数の減少ではなく、脂肪細胞のサイズが小さいこと、
すなわち脂肪蓄積が抑制されていることに起因している
ものと考えられた。 (4)CBPヘテロ欠損動物では普通食、高脂肪食下共
に、より良好な耐糖能、インスリン感受性、インスリン
分泌を示した。 (5)これらは、レプチン感受性が亢進し、インスリン
感受性ホルモンであるアディポネクチンの発現量、血中
濃度が増加していたこと、及びインスリン抵抗性を惹起
する遊離脂肪酸の血中濃度、TNFαの発現量が低下して
いたことによるものと考えられる。 (6)白色脂肪組織では脂肪酸流入に関わる分子の発現
低下、肝臓・骨格筋・脂肪組織では脂肪合成に関わる酵
素の発現低下及び脂肪酸β酸化酵素やUCP2の発現増加を
認め、これらが骨格筋、肝臓での中性脂肪含量の低下を
もたらし、良好な耐糖能、インスリン感受性に寄与して
いると考えられる。 (7)ob/obマウスは野生型マウスの1.5倍の体重であっ
たのに対し、CBPがヘテロ欠損したob/obマウスは、CBP
ヘテロ欠損マウスと同程度、すなわち野生型マウスの2/
3程度の体重を示した。このことよりCBPヘテロ欠損動物
の痩せの表現型はレプチンとは完全に独立した情報伝達
経路を介したものと考えられる。 (8)ob/obマウスにアディポネクチンを過剰発現させ
ると、糖尿病は軽減されたものの、体重に対する有意な
影響は認められなかったことより、レプチンとは完全に
独立したCBPヘテロ欠損動物の痩せの表現型は、アディ
ポネクチンの増加によるものではない可能性が高い。
【0022】PPARγヘテロ欠損マウスは、脂肪蓄積経路
の抑制と、レプチンとアディポネクチン情報伝達経路等
の活性化を介した脂肪酸の燃焼とエネルギー消費の亢進
により、抗肥満・抗糖尿病の表現型を呈する。CBPヘテ
ロ欠損動物の表現型はより顕著であったことより、PPAR
γ依存性・非依存性の両方の情報伝達経路を介して発揮
されていることが示唆され、PPARγ非依存性の抗肥満・
抗糖尿病の新規な情報伝達経路を探索するのに有利なモ
デルである。
【0023】またレプチン欠損マウスであるob/obマウ
スとCBPヘテロ欠損のかけ合わせ実験より、これまで脂
肪合成抑制・エネルギー消費の最も強力なホルモンと考
えられてきたレプチンとは独立した新規で超強力な脂肪
蓄積・体重調節の情報伝達経路が存在することが明らか
となった。アディポネクチンを過剰発現させたob/obマ
ウスは糖尿病の程度は軽減されているものの、体重は発
現させなかったob/obマウスと同程度であったことを考
えあわせると、レプチン非依存性でCBP依存性の新規の
体重調節の情報伝達経路はアディポネクチンとも独立し
たものである可能性が高い。CBPヘテロ欠損動物はその
探索に有用なモデルである。
【0024】本発明のCBP機能欠損動物を用いて肥満及
び/又は糖尿病予防治療剤をスクリーニングするには、
CBP機能欠損動物に被験薬物を投与し、前記のCBP機能欠
損動物特有の性質を観察するか、CBP機能欠損動物特有
の遺伝子の発現量の変化を観察すればよい。ここで遺伝
子発現量の変化は、DNAチップ等を用いた解析によるの
が簡便である。当該被験薬物としては、CBP抑制物質が
好ましい。すなわち、CBP抑制物質は、肥満及び/又は
糖尿病予防治療剤として有用である。
【0025】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明
するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0026】A.材料及び方法 (1)材料;ロジグリタゾン(Rosi)は、Murakami, K.
et al., Diabetes 47, 1841-1847(1998)に従い合成し
た。25-ヒドロキシコレステロール、コレステロール、I
BMX、及びインスリンはSigma Chemical Coから入手し
た。デキサメサゾンは和光純薬(株)から購入した。CB
P(C-20)に対するポリクローナル抗体はSanta Cruz Biot
echnology, Incから購入した。その他の全ての材料は、
Hum. Mol. Genet. 8, 387-396(1999)、Mol. Cell 4, 59
7-609(1999)、Nat. Med. 7, 941-946(2001)及びDiabete
s, 47, 1841-1847(1998)に記載されたソースより入手し
た。
【0027】(2)動物、in vivoグルコース・ホメオ
スタシス、内因性血清レプチン濃度アッセイ、及びレプ
チン感受性;CBPヘテロ欠損マウスは、Hum. Mol. Gene
t. 8, 387-396(1989)に従って作製した。マウスには文
献に記載した方法に従って粉状の餌を給餌した(Mol. Ce
ll 4,597-609(1999))。グルコース負荷試験とインスリ
ン負荷試験は、Mol. Cell 4, 597-609(1999)方法にわず
かの修正を加えて実施した。血清FFAレベルは、NEFA C-
test(和光純薬(株))を用いて定量した。レプチン
は、ELISA-based Quantikine Mマウスレプチン免疫アッ
セイキット(R and D Systems)により、製造者の指示
に従ってアッセイを行った。レプチン感受性(Mol. Cell
4, 597-609(1999))を調べるために、マウスにレプチン
(Pepro Tech EC, Ltd.)10μg/g体重/日を1日1回、腹
腔内注入にて投与した。対照には等張塩化ナトリウム溶
液を投与した。レプチン投与の効果を評価するために、
摂食量と体重を測定した。
【0028】(3) 脂肪組織の組織学的解析、脂肪細
胞の大きさの測定及び組織トリグリセリド含量の定量;
各動物から脂肪組織を取り出し、10%ホルムアルデヒド
/PBS中で固定したのち使用まで4℃で保存した。固定標
本は脱水しパラフィン中に包埋した。WATは10μm刻みに
て切片とし、各切片をシラン処理したスライドに載せ
た。脂肪組織はヘマトキシリン・エオジン(HE)にて染色
した。全脂肪細胞面積は用手法にてトレースし、Win RO
OFソフトウエア(Mitani Co., Ltd., Tokyo, Japan)に
て解析した。白色脂肪細胞面積は、Mol. Cell 4, 597-6
09(1999)に記載した方法に従って、各群ともマウスあた
り400個以上の細胞について測定を行った。肝及び筋の
ホモジネートを作成し、Diabetes 47, 1841-1847(1998)
に述べた方法に若干の修正を加えて、組織内中性脂肪含
量を測定した。
【0029】(4)RNA調製、ノーザンブロット解析、R
Naseプロテクション・アッセイin situハイブリダイゼ
ーション及びイムノブロッティング;全RNAは、TRIzol
(GIBCO-BRL)を用い、製造者の指示に従って細胞又は組
織から調製した。各群5〜10匹のマウスから得た全RNAを
プールし、一部をAcox1(T. Hashimotoより)ないしSre
bf1、マウスLpl、Ehhadh、Fac16、Adrb3、Ucp2、Pparg/
a(K. Motojimaより)又はAcrp30 cDNAの各プローブに
よるノーザンブロット解析あるいはRNaseプロテクショ
ン・アッセイに使用し、標準的なプロトコール(Mol. Ce
ll 4, 597-609(1999)、Diabetes 47, 1841-1847(1998))
に従って、筋内Pparg/a及びtnfのmRNAの定量を実施し
た。各バンドの放射活性を定量し、28S rRNA量(ノーザ
ンブロット)あるいはArbp(酸性リボソーム・リンタン
パク質PO)(RNaseプロテクション・アッセイ)でロー
ド量の差を補正したのち、各mRNAの倍数変化を計算し
た。血清アディポネクチンレベルは、組換えアディポネ
クチンをスタンダードとして、GBP28に対するポリクロ
ーナル抗体(ヒトアディポネクチンのカルボキシル端の
20アミノ酸のアミノ端に余分のシステインを1個加えた
ペプチド、CYADNDNDSTFTGFLLYHDTNに対する抗体として
作成)(Nat. Med. 7, 941-946(2001))を使用するイムノ
ブロッティングで測定した。イムノブロッティングに使
用した手順はすでに報告されている方法に従った(Hum.
Mol. Genet. 8, 387-396(1999))。3回の独立した実験の
うち1回のデータを代表として示す。in situハイブリダ
イゼーションは文献記載に従って行った(Nature 409, 1
94-198(2001))。
【0030】(5)野生型及びCBP+/-マウス胎児線維芽
細胞の調製;交尾後日数(d.p.c.)14.5の胚を得るため
に、野生型メスマウスから採取した卵とCBP+/-オスマウ
スの精子のin vitro受精による受胎産物を、文献に述べ
たごとく、偽妊娠させた養母マウスに移植した。養母マ
ウスは14.5 d.p.c.に屠殺し、子宮から胎児を切除した
のち胎児の膜と内臓を除去した。胎児を小片に切り、文
献に記載のごとく胎児線維芽細胞を調製した(Mol. Cel
l. 4, 597-609(1999))。
【0031】(6)細胞培養、トランスフェクション、
転写促進アッセイ、及び脂肪細胞分化誘導、Oil-Red O
染色;本試験で使用した胎児線維芽細胞(EF)の継代回
数は2回以内とした。トランスフェクションと脂肪細胞
分化誘導は、文献に記載した方法(Mol. Cell 4, 597-60
9(1999)、Diabetes 47, 1841-1847(1998))に従って実施
した。野生型及びCBP+ /-マウス由来のEF細胞を、SREBP
1、C/EBPβ、又はRXRαとPPARγの各発現ベクターの存
在下(図1)もしくは非存在下(図3b-d)でトランス
フェクションした。文献に記載したごとく(Diabetes 4
7, 1841-1847(1998))、SREBP活性はSRE-tkLUCで評価し
(Mol. Cell. Biol. 15, 2582-2588(1995))、C/EBPβ活
性はE-box-tkLUC[15]でテストし、PPARγ/RXR活性はP
PRE-tk LUC(Proc. Natl. Acad. Sci.USA. 91,7355-7359
(1994))で評価した。Oil-Red O染色は文献に記載したご
とく実施した(Mol. Cell 4, 597-609(1999))。
【0032】B.結果 (1)CBP+/-マウスにおけるSREBP1、C/EBPβ、及びPPA
Rγ/RXRの転写促進解析結果を図1に示す。すなわち、
野生型(WT)(左)及びCBP+/-マウス(+/-)(右)由
来の胎児線維芽細胞(EF)に、SREBP1(図1a)、C/EBP
β(図1b)、又はRXRαとPPARγ(図1c)の各発現ベ
クターをトランスフェクションした。SREBP活性はSRE-t
k LUCで評価し、C/EBPβ活性はE-box-tk LUCでテスト
し、PPARγ/RXR活性はPPRE-tk LUCで評価した。EF細胞
は、1μg/ml 25-ヒドロキシコレステロール及び10μg/m
lコレステロール(sterol)、又は100 nM ロジグリタゾ
ン(Rosi)で処理した。各バーは平均±s.e.(n=5〜10)
を示す。(*、P<0.05;**、P<0.01)。その結果、ヘテ
ロ接合のCBP欠損は、EF細胞におけるSREBP、C/EBP及びP
PARの転写活性を有意に低下させることが判明した。
【0033】(2)高炭水化物食を与えた野生型(WT)
(図2左)及びCBP+/-マウス(+/-)(図2右)の生後8
ヶ月における組織重量(g)(図2上)と組織重量/体
重(g/g体重)(図2下)を図2に示す。各バーは平均
±s.e.(n=5〜10)を示す。(*、P<0.05;**、P<0.01;
n.s.、有意差なし;野生型マウスと比較)。図2から、
驚くべきことに、屠殺したマウスの肉眼的所見による
と、CBP+/-マウスでは、高炭水化物(HC)食を与えた野
生型マウスに比べて、体脂肪量が著しく減少していた。
興味深い事に野生型マウスに比べてCBP+/-マウスで著明
に減少していたのは、体重あたりのWAT重量のみであ
り、褐色脂肪組織(BAT)など、それ以外の組織とはき
わめて対照的だった。
【0034】(3)脂肪細胞分化アッセイの結果を図3
aに示す。誘導後0、4及び12日における細胞内への脂肪
蓄積を示すOil-Red O染色である。野生型(WT)(左)
及びCBP +/-マウス(+/-)(右)由来の胎児線維芽細胞
(EF)をコンフルーエントとなるまで増殖させたのち、
ホルモン刺激により分化を誘導した。また、ステロール
調節エレメント(SRE)(図3b)、E-box(図3c)、及
びペルオキシソーム増殖因子応答性エレメント(PPAE)
(図3d)を介する転写促進を、SRE-tk LUC、E-box-tk
LUC、及びPPRE-tk LUCで各々、評価した結果を図3b〜
図3dに示す。EF細胞は型どおりのホルモン刺激処理(3
-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキサメサ
ゾン(DEX)、及びインスリン(INS))を行った。図3
e〜図3hに、生後3日の野生型(上)及びCBP+/-マウス
(下)についての肩甲骨(e,f)及び頸部(g,h)におけ
る横断切片を示す。図3i〜図3lに生後8ヶ月の野生型
(WT)(上)及びCBP+/-マウス(+/-)(下)の精巣上
体WATの組織学的解析(i,j)と細胞の大きさの分布(k,
l)を示す。各バーは平均±s.e.(n=5〜10)を示す。
(*、P<0.05;**、P<0.01;野生型マウスと比較)。
【0035】WAT量減少のメカニズムを明らかにするた
めに、CBP+/-由来のEF細胞の脂肪細胞への分化能につい
て検討した結果、それらが、野生型由来のEF細胞の分化
能と比べて有意に低いことを見出した(図3a)。CBP
+/-由来EF細胞の脂肪細胞への分化中に、型どおりのホ
ルモン刺激(3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBM
X)、デキサメサゾン(DEX)及びインスリン(INS)の
組み合わせ)で誘導されるC/EBPδ及びC/EBPδの発現レ
ベルは、野生型の場合と同等だった。更に、CBP+/-マウ
スのSREBP1、PPARγ、及びC/EBPαの発現時期は、野生
型に比べて遅かったが、これらの転写因子の発現は、結
局、野生型のレベルまでかなり追いついた。これに対し
て、SRE(図3b)、E-box(図3c)、ペルオキシソーム
増殖因子応答性エレメント(PPAE)(図3d)など同種
のエレメントを介するIBMX/DEX/インスリン刺激による
転写因子活性は、野生型に比べてCBP+/-マウスでは有意
に低下していた。以上のデータより、ヘテロ接合のCBP
欠損で低下しているのは転写因子の発現よりもむしろ転
写活性であり、これによりin vitroの脂肪細胞分化が低
下することが判明した。
【0036】生後3日におけるCBP+/-マウスのBAT(図3
f)とWAT(図3h)の量は、対照(図3e,g)とほとんど
同じで、in vivoのCBP+/-マウスの脂肪細胞分化はほと
んど障害されていない。興味深いことに、生後8ヶ月に
おける精巣上体脂肪組織の組織学的解析(図3i,j)と
脂肪細胞の大きさの測定(図3k,l)では、CBP+/-マウ
スの脂肪細胞の大きさ(図3j,l)はHC食を与えた野生
型マウスの脂肪細胞(図3i,k)よりも明らかに小さい
ことが分かった。これらのデータは、CBP+/-マウスに見
られた著明なWAT量の減少は、脂肪細胞数の減少による
のではなく、WAT内のTG蓄積の阻害によるものだった。
【0037】(4)図4に、高脂肪(HF)食又は高炭水
化物(HC)食(図4a,b)を4週間与えた野生型(WT)及
びCBP+/-マウス(+/-)の、体重(図4a)、グルコース
負荷試験時の血漿グルコースレベル(図4b)、インス
リン負荷試験時の血漿グルコースレベル(図4c)及び
グルコース負荷試験時の血漿インスリンレベル(図4
d)を示す。各バーは平均±s.e.(n=5〜10)を示す。
(*、P<0.05;**、P<0.01;n.s.、有意差なし;野生型
マウスと比較)。
【0038】図4より、HF食を与えられた野生型マウス
では、HC食マウスよりも有意に大きい体重増加が認めら
れた(図4a)。これに対して、ヘテロ接合のCBP欠損
は、HF食による時間依存性の体重増加を完全に阻止した
(図4a)。更に、CBP+/-マウスでは、HC及びHF食のい
ずれの野生型マウスよりも耐糖能が上昇していた(図4
b)。インスリンによるグルコース低下作用は、野生型
マウスよりもCBP+/-マウスで顕著だった(図4c)。そ
れにもかかわらず、グルコース負荷試験時の血漿インス
リンレベルは、CBP+/-マウスの方が野生型マウスより
も、有意ではないにしても、高値で(図4d)、CBP+/-
マウスではインスリン分泌が増加している可能性が考え
られた。以上のデータは、CBP+/-マウスでは脂肪組織萎
縮にもかかわらずインスリン感受性が上昇していること
を示した。
【0039】(5)図5a〜cに、血清レプチンレベル/
白色脂肪組織(WAT)量(図5a)、高脂肪(HF)食(図
5b、c)を与えられた野生型(WT)又はCBP+/-マウス
(+/-)への腹腔内レプチン投与の効果を示す。各群の
野生型又はCBP+/-マウスはレプチン(10μg/g/日)
(+)又は等張塩化ナトリウム溶液(-)のいずれかの腹
腔内投与を受けた。12時間あたりの摂食量(図5b)と1
2時間あたりの体重変化(図5c)を測定した。図5d〜f
にHF食を4週間与えた野生型(WT)及びCBP+/-マウス(+
/-)の、血清アディポネクチンレベル(図5d)、Acrp3
0(脂肪細胞補体関連30kDタンパク質)mRNAレベル(図
5e)、及びWAT中のTnf(腫瘍壊死因子α)とArbp(酸
性リボソーム・リンタンパク質PO)のmRNAレベル(図5
f)を示す。血清アディポネクチンレベルは、組換えア
ディポネクチンをスタンダードとして、抗アディポネク
チン抗体によるイムノブロッティングで測定した(図5
d)。結果は、野生型マウスの値に対する割合で示した
(図5a)。各バーは平均±s.e.(n=5〜10)を示す。
(*、P<0.05;**、P<0.01;n.s.、有意差なし;野生型
マウスと比較、もしくは無投与とレプチン投与で比
較)。
【0040】図5より、HC食又はHF食(図5c、レーン
1,3)いずれのCBP+/-マウスにおいても、摂食量は有意
には低下していなかった。実際、Npy(ニューロペプチ
ドY)やHcrt(ヒポクレチン)のような、摂食調節に関
連する脳のmRNA量は、野生型に比べてCBP+/-マウスで有
意に変化しているとは言えなかった。これに対して、安
静時酸素消費量はCBP+/-マウスで有意に増加していた
(野生型:3.18±0.20(n=5);CBP+/-:4.21±0.48×1
0-2 ml O2/分/g体重(n=5);P<0.01)。次に、CBP+/-
マウスの体重増加阻止にレプチンが関与している可能性
について検討した。ヘテロ接合のCBP欠損では、WAT量が
著明に減少している割りには血清レプチンレベルは上昇
していたが(表1と図5a)、これは、ヘテロ接合のCBP
欠損のために、PPARγ/RXRによるレプチン遺伝子の転写
抑制が解除されたためと考えられる。また、外因性レプ
チン投与に反応した摂食量(図5b)と体重(図5c)の
低下から評価されるレプチン感受性は、CBP+/-マウスで
は有意に上昇していた。
【0041】
【表1】
【0042】更に、CBP+/-マウスでは、WAT量の著明な
減少にもかかわらず、インスリン感受性増強ホルモンで
あるアディポネクチン(Acrp30、脂肪細胞補体関連30 k
Dタンパク質)の血清レベル(図5d)とWAT中mRNAレベ
ル(図5e)が、野生型マウスに比べて有意に高値だっ
たが、これは少なくとも一部は脂肪細胞が小さいことに
よると考えられる。これに対して、増加がインスリン抵
抗性に関連するとの報告のある、血清遊離脂肪酸(FF
A)レベル(表1)及びWAT中Tnf(腫瘍壊死因子α)mRN
Aレベル(図5f)は、野生型マウスよりもCBP+/-マウス
の方が低かった。これらのデータは、ヘテロ接合のCBP
欠損が、脂肪細胞の肥大を抑制することを介して、FFA
やTNFαなどのインスリン抵抗性を引き起こす分子の減
少、ならびにアディポネクチンやレプチンといったWAT
から分泌されるインスリン感受性ホルモンの作用を増強
し、最終的にインスリン抵抗性の軽減をもたらすことを
意味する。
【0043】(6)図6に、HF食を4週間与えた野生型
(WT)及びCBP+/-マウス(+/-)のWAT(図6a)、筋
(図6b)、肝(図6c)及びBAT(図6d)内の、CBP(c
AMP反応性エレメント結合タンパク質(CREB)結合タン
パク質)の発現(図6a-d)とPparg、Ppara、Lpl(リポ
タンパク質リパーゼ)、Srebf1(ステロール調節エレメ
ント結合因子1)、Acoxl(アシル・コエンザイムAオキ
シダーゼ1)、Ehhadh(エノイルCoAヒドラターゼ/3-ヒ
ドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ)、Facl6(脂肪酸
CoAリガーゼ、長鎖6)、Ucp2(脱共役タンパク質2)、
及びAdrb3(アドレナリン作動性リセプター、ベータ3)
の各mRNA量を示す。CBPの発現は細胞溶解液を抗体でイ
ムノブロットし、検討した。
【0044】図6は、CBPならびに、WAT、骨格筋、肝、
BATにおける脂肪酸代謝関連分子の発現レベルについて
検討した結果である。CBP+/-マウスのこれらの組織の全
てで、完全長型のCBPは予測通り50%に減少しており、
機能のない不完全なCBPがほぼ等モル認められた(図6a
-d)。WAT、骨格筋、肝、及びBATでは、ヘテロ接合のCB
P欠損はPpargの発現にほとんど影響を及ぼしていなかっ
た(図6a-d)。興味深いことに、CBP+/-マウスは骨格
筋におけるPparaの発現増加を示した(図6b)。ヘテロ
接合のCBP欠損は、おそらくPPARγ活性低下を介して、W
ATにおけるLpl(リポタンパク質リパーゼ)の発現を低
下させるが(図6a)、これによりWATへのFFA流入が低
下すると考えられる。これらのマウスでは、上記の全て
の組織において、Acoxl(アシルCoAオキシダーゼ)(図
6a-c)、Ehhadh(エノイルCoAヒドラターゼ/3-ヒドロ
キシアシルCoAデヒドロゲナーゼ)(図6c)及びFacl6
(脂肪酸CoAリガーゼ、長鎖6)(図6d)などの脂肪酸
燃焼関連分子、ならびにUcp2(図6a-c)やAdrb3(アド
レナリン作動性リセプター、ベータ3)(図6d)などの
エネルギー消費関連分子の発現増加が認められたことは
重要である。また、CBP+/-マウスでは、Srebf1(ステロ
ール調節エレメント結合因子1)(図6c)などの脂質産
生酵素の肝における発現が低下していた。遺伝子発現に
おけるこれらの変化は、協調してCBP+/-マウスの筋と肝
における組織TG含量を低下させると思われるが(表
1)、これはCBP+/-マウスのインスリン感受性上昇の原
因となるとともに(図4c)、ヘテロ接合のCBP欠損で、
エネルギー消費の増大と、HF食が引き起こすWAT内TG蓄
積と体重増加の阻止(図4a)が生じると考えられる。
【0045】
【発明の効果】本発明のモデル動物を用いれば肥満及び
/又は糖尿病の発生メカニズムが解明できるだけでな
く、新たな肥満及び/又は糖尿病の予防治療剤の開発が
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SREBP1(a)、C/EBPβ(b)及びPPARγ/RXR(c)の転
写促進解析結果を示す図である。
【図2】高炭水化物食を与えた野生型(WT)(左)及び
CBP+/-マウス(+/-)(右)の生後8ヶ月における組織重
量(g)(上)と組織重量/体重(g/g体重)(下)を示
す図である。
【図3】脂肪細胞分化アッセイ(a);ステロール調節エ
レメント(SRE)(b)、E-box(c)、及びペルオキシソ
ーム増殖因子応答性エレメント(PPAE)(d)を介する
転写促進を、SRE-tk LUC、E-box-tk LUC、及びPPRE-tk
LUCで各々、評価した結果;肩甲骨(e,f)及び頸部(g,h)
における横断切片を;及び生後8ヶ月の野生型(WT)
(上)及びCBP+/-マウス(+/-)(下)の精巣上体WATの
組織学的解析(i,j)と細胞の大きさの分布(k,l)を示
す。
【図4】高脂肪(HF)食又は高炭水化物(HC)食(a,
b)を4週間与えた野生型(WT)及びCBP+/-マウス(+/
-)の、体重(a)、グルコース負荷試験時の血漿グルコ
ースレベル(b)、インスリン負荷試験時の血漿グルコ
ースレベル(c)及びグルコース負荷試験時の血漿イン
スリンレベル(d)を示す図である。
【図5】血清レプチンレベル/白色脂肪組織(WAT)量
(a)、高脂肪(HF)食(b,c)を与えられた野生型(WT)又
はCBP+/-マウス(+/-)への腹腔内レプチン投与の効
果;及びHF食を4週間与えた野生型(WT)及びCBP+/-
ウス(+/-)の、血清アディポネクチンレベル(d)、Ac
rp30(脂肪細胞補充関連30 kDタンパク質)mRNAレベル
(e)、及びWAT中のTnf(腫瘍壊死因子α)とArbp(酸
性リボソーム・リンタンパク質PO)のmRNAレベル(f)
を示す図である。
【図6】HF食を4週間与えた野生型(WT)及びCBP+/-
ウス(+/-)のWAT(a)、筋(b)、肝(c)及びBAT
(d)内の、CBP(cAMP反応性エレメント結合タンパク質
(CREB)結合タンパク質)の発現とPparg、Ppara、Lpl
(リポタンパク質リパーゼ)、Srebf1(ステロール調節
エレメント結合因子1)、Acoxl(アシル・コエンザイム
Aオキシダーゼ1)、Ehhadh(エノイルCoAヒドラターゼ
/3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ)、Facl6
(脂肪酸CoAリガーゼ、長鎖6)、Ucp2(脱共役タンパク
質2)、及びAdrb3(アドレナリン作動性リセプター、ベ
ータ3)の各mRNA量を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/50 G01N 33/50 Z (72)発明者 加門 淳司 東京都文京区本郷7−3−1 東京大学大 学院医学系研究科糖尿病・代謝内科内 (72)発明者 脇 裕典 東京都文京区本郷7−3−1 東京大学大 学院医学系研究科糖尿病・代謝内科内 (72)発明者 永井 良三 東京都文京区本郷7−3−1 東京大学大 学院医学系研究科循環器内科内 (72)発明者 木村 哲 東京都文京区本郷7−3−1 東京大学大 学院医学系研究科循環器内科内 (72)発明者 山村 研一 熊本県熊本市九品寺2−2−1 熊本大学 医学部発生医学研究センター内 Fターム(参考) 2G045 AA29 BB24 CB17 FB03 GC22 4C084 AA17 NA20 ZA702 ZC352 ZC782

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 cAMP反応性エレメント結合タンパク質結
    合タンパク質の機能が欠損した非ヒト動物からなる肥満
    及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物。
  2. 【請求項2】 非ヒト動物が、マウスである請求項1記
    載の肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動
    物。
  3. 【請求項3】 cAMP反応性エレメント結合タンパク質結
    合タンパク質の機能が欠損した非ヒト動物に被験薬物を
    投与することを特徴とする肥満及び/又は糖尿病の予防
    及び/又は治療剤のスクリーニング方法。
  4. 【請求項4】 被験薬物が、cAMP反応性エレメント結合
    タンパク質結合タンパク質を抑制する物質である請求項
    3記載のスクリーニング方法。
JP2002091410A 2002-03-28 2002-03-28 肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物 Pending JP2003284454A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002091410A JP2003284454A (ja) 2002-03-28 2002-03-28 肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002091410A JP2003284454A (ja) 2002-03-28 2002-03-28 肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003284454A true JP2003284454A (ja) 2003-10-07

Family

ID=29236496

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002091410A Pending JP2003284454A (ja) 2002-03-28 2002-03-28 肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003284454A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007320900A (ja) * 2006-05-31 2007-12-13 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 内臓脂肪蓄積抑制剤及び、血中アディポネクチン濃度増加促進及び/又は減少抑制剤

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007320900A (ja) * 2006-05-31 2007-12-13 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 内臓脂肪蓄積抑制剤及び、血中アディポネクチン濃度増加促進及び/又は減少抑制剤

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gibbs et al. Glycemic improvement in diabetic db/db mice by overexpression of the human insulin-regulatable glucose transporter (GLUT4).
Cohen et al. Selective deletion of leptin receptor in neurons leads to obesity
Liu et al. Insulin-like growth factor-I affects perinatal lethality and postnatal development in a gene dosage-dependent manner: manipulation using the Cre/loxP system in transgenic mice
Cernkovich et al. Adipose-specific disruption of signal transducer and activator of transcription 3 increases body weight and adiposity
Hammer et al. Use of gene transfer to increase animal growth
Mesli et al. Distribution of the lipolysis stimulated receptor in adult and embryonic murine tissues and lethality of LSR–/–embryos at 12.5 to 14.5 days of gestation
US5824838A (en) Transgenic mouse model for pituitary disorders associated with LIF overexpression and/or GH underexpression, and its use for testing therapeutic drugs for the conditions
WO2008001778A1 (fr) Animal génétiquement modifié et son utilisation
McHenry et al. Overexpression of fra-2 in transgenic mice perturbs normal eye development
Li et al. Transgenic Wuzhishan minipigs designed to express a dominant-negative porcine growth hormone receptor display small stature and a perturbed insulin/IGF-1 pathway
JP2003513645A (ja) メラノコルチン−3レセプター欠失細胞、非ヒトトランスジェニック動物及び体重を調節する化合物の選択方法
US20110265194A1 (en) Them5-modified models of non-alcoholic fatty liver disease
JP2006506968A (ja) アグーチ関連蛋白質欠損細胞、非ヒトトランスジェニック動物及びエネルギー代謝を調節する化合物の選択方法
DE60113380T2 (de) Methoden zur identifizierung von zusammensetzungen, die für die behandlung von fettleibigkeit nützlich sind, unter verwendung von foxc2
US20030028910A1 (en) Non-human transgenic animal whose germ cells and somatic cells contain a knockout mutation in DNA encoding orphan nuclear receptor ERRalpha
JP2003284454A (ja) 肥満及び/又は糖尿病に対する抵抗性のモデル動物
JP2003512852A (ja) インスリン非依存性糖尿病のコンジェニック動物モデル
EP1508273A1 (en) Adiponectin-knoucout nonhuman animal
CN112841128B (zh) 基因敲除小鼠在制备限制型心肌病动物模型中的应用
US20030041341A1 (en) Non-human transgenic animal whose germ cells and somatic cells contain a knockout mutation in DNA encoding 4E-BP1
JP2000510001A (ja) 分断されたnpy y1受容体遺伝子を有するトランスジェニック動物
US6255556B1 (en) Lean transgenic animals
US20200288683A1 (en) Loss of function rodent model of solute carrier 39 member 5
Morin et al. Transgenic and knockout rodents: novel insights into mechanisms of body weight regulation
CN118140873A (zh) 糖尿病动物模型及其构建方法和应用

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Effective date: 20040210

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

A621 Written request for application examination

Effective date: 20050317

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071127

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080128

A521 Written amendment

Effective date: 20080129

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

A02 Decision of refusal

Effective date: 20090217

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02