JP2003277478A - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物

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JP2003277478A JP2003010207A JP2003010207A JP2003277478A JP 2003277478 A JP2003277478 A JP 2003277478A JP 2003010207 A JP2003010207 A JP 2003010207A JP 2003010207 A JP2003010207 A JP 2003010207A JP 2003277478 A JP2003277478 A JP 2003277478A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 撥水剤の成膜性や密着性を損なう成分を含む
溶液や物質との接触機会のある場所に適用する撥水剤又
は撥水性塗料として好適で、常に同じ表面状態を持続で
きる表面改質処理が可能なエポキシ樹脂組成物を提供す
ること。 【解決手段】 1分子中に少なくとも2個の環状脂肪族
エポキシ基と、少なくとも1つの炭素数6〜12のパー
フルオロアルキル基と、少なくとも1つのアルキルシロ
キサン基と、を有しているエポキシ樹脂と、カチオン重
合触媒と、を含有しているエポキシ樹脂組成物であっ
て、上記環状脂肪族エポキシ基及び上記パーフルオロア
ルキル基は、上記エポキシ樹脂の分岐鎖中に存在し、且
つ、上記アルキルシロキサン基は、上記エポキシ樹脂の
主鎖中に存在していることを特徴とするエポキシ樹脂組
成物。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、撥水性や撥インク
性の表面処理が可能な硬化性のエポキシ樹脂組成物、と
りわけ紫外線照射によってパターン状に塗膜(皮膜)を
形成することが可能なエポキシ樹脂組成物、それを用い
た表面処理方法、該エポキシ樹脂組成物を用いて撥イン
ク処理された液体噴射記録ヘッド及びそれを用いた液体
噴射記録装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、各種の分野において、耐水性や撥
インク性が要求される部材に、撥水性塗料を適用して耐
水性や撥インク性を付与する方法が一般的に知られてお
り、該方法に用いる樹脂素材や塗料が開発されている。
例えば、フルオロポリオレフィンやパーフルオロ基を有
するフッ素系塗料からなる皮膜は、熱的にも化学的にも
極めて安定であり、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐溶剤
性等に優れ、更に、離型性、耐摩擦性、撥水性にも優
れ、各種の用途に広く利用されている。 【0003】一方、インクのような液体を吐出口から小
滴として吐出して、紙等に付着させて記録や画像の形成
を行う液体噴射記録ヘッドでは、記録特性をより高度な
ものとするために、より小さな液滴、より高い駆動周波
数、より多くのノズル数へと性能アップが続けられてい
る。従ってノズル表面を常に同じ表面状態に維持するた
めの処理がますます重要になっている。しかし、既存の
材料を使用して、ノズル表面を、インクが付着しない様
に選択的に、或いはパターン状に精密に表面処理を行う
ことは困難であった。その理由は、先ず表面処理材料に
パターン状の処理に適したフォトレジストのような特性
を持たせるためには、感光性の官能基をもった物質を主
体とした材料を使用しなければならないが、そうした化
合物が、同時に撥水・撥インク特性をもつように分子設
計するには、大きな困難を伴うからである。 【0004】又、仮に既存のフッ素系の材料で表面処理
することができたとしても、更に、その表面の性質を長
く維持できるようにと膜構造を設計することが必要とな
る。そうした性能を有するパターン状の表面処理を可能
とする材料は、以下に説明するようにインクジェットプ
リントヘッドの表面処理に非常に価値がある。 【0005】即ち、インクを小液滴にして飛翔させ、記
録を行うインクジェット記録方式において、吐出口
(孔)は以下のような性能を有するように設計されてい
ることが好ましい。 (1)液滴化させるインク柱の残部のインクが、速やか
にノズル内に再収納されること。 (2)表面に付着したインク滴は、クリーニング操作で
容易に掃き出されること。 (3)クリーニング操作や用紙搬送における耐擦傷性に
優れること。 (4)繰り返される液滴形成とインクリフィルにおい
て、ノズル表面位置にメニスカス(図1の符号23参
照)が形成されること。 (5)メニスカスの法線方向が吐出方向になっているこ
と。 (6)低い表面張力のインクであっても、或いは低い負
圧の状態であってもメニスカスを形成しうるだけの十分
な界面張力、即ち接触角を持つこと。 【0006】吐出口に、これらの諸要求性能が求められ
る理由は、液体噴射記録ヘッドでは、吐出口の周辺に、
インク等の記録用の液体が付着していると、吐出口から
吐出される液滴の吐出(飛翔)方向にズレが生じ、高精
度での印字ができなくなるという印字性能に直接関係す
るからである。かかる吐出方向のズレの原因となる吐出
口付近への液体の付着を防止するために、吐出口が形成
されている面に撥水剤処理を行う方法が知られている。 【0007】これらに関係する先行技術としては、例え
ば、フルオロアセチル基とシラザン基を有するポリマー
で撥インク処理を行うことが知られている(例えば、特
許文献1参照)。一方、液体噴射記録方式を応用したプ
リンタによる画像記録への高度な要求に伴って、記録用
液体(インク)に対して要求される特性も高度なものと
なりつつある。このような記録用液体は、内容物の溶解
安定性や分散安定性のより一層の向上のためにpHを7
〜11の塩基性に調節されることが多く、そのためプリ
ンタ部材には、耐アルカリ性及び加水分解性に優れた構
造材を採用することも必須となってきている。 【0008】 【特許文献1】特開平2−39944号公報 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、極性有
機溶媒を含む記録用液体や、上記のような高いpHの記
録用液体を用いた場合には、上述したような目的で吐出
口面の表面処理に適用した撥水剤が記録用液体に用いた
溶媒成分、特に極性有機溶剤成分と接触することでその
撥水性皮膜の成膜性や適用部材との密着性が損なわれ、
該撥水性皮膜が剥離し、吐出口面の撥水性が失われる場
合があった。 【0010】従って本発明の目的は、極性溶媒のよう
に、撥水剤の成膜性や密着性を損なう成分を含む溶液や
物質との接触機会のある場所に適用する撥水剤又は撥水
性塗料として好適に用い得るエポキシ樹脂組成物を提供
することにある。又、本発明の目的は、常に同じ表面状
態を持続できる表面改質処理の可能なエポキシ樹脂組成
物を提供することにある。又、本発明の他の目的は、か
かるエポキシ樹脂組成物を用いて、物品の表面に位置選
択的に撥水性を付与する表面処理方法を提供することに
ある。又、本発明の更に他の目的は、かかるエポキシ樹
脂組成物で基材の表面処理を行うことで、ノズル表面を
常に同じ表面状態に維持でき、記録用媒体に長期に接触
してもプリントヘッド表面におけるインクの付着がな
く、結果としてドットの着弾精度がよく、印字品位を長
く維持できる液体噴射記録ヘッド、及び液体噴射記録装
置を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】上記目的は以下の本発明
によって達成される。即ち、本発明の一実施態様にかか
るエポキシ樹脂組成物は、[1]1分子中に少なくとも
2個の環状脂肪族エポキシ基と、少なくとも1つの炭素
数6〜12のパーフルオロアルキル基と、少なくとも1
つのアルキルシロキサン基と、を有しているエポキシ樹
脂と、カチオン重合触媒と、を含有しているエポキシ樹
脂組成物であって、上記環状脂肪族エポキシ基及び上記
パーフルオロアルキル基は、上記エポキシ樹脂の分岐鎖
中に存在し、且つ、上記アルキルシロキサン基は、上記
エポキシ樹脂の主鎖中に存在していることを特徴とする
ものである。 【0012】本発明の好ましい形態は、下記のものが挙
げられる。[2]前記エポキシ樹脂が、下記一般式
(1)で示されるものである上記[1]に記載のエポキ
シ樹脂組成物。 (上記式(1)中、a=1〜50の整数、b=1〜50
の整数、c=2〜100の整数、n1〜n3及びn5〜n7
は、各々独立に1〜5の整数、n4は2〜200の整
数、R1、R4〜R7及びR10は、各々独立に、水素原子
及び炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる何れかであ
り、R2、R3、R8及びR9は、互いに独立に、水素原
子、炭素数1〜3のアルキル基及びニトリル基から選ば
れる何れかであり、Rfは、炭素数6〜12のパーフル
オロアルキル基である。) 【0013】[3]下記一般式(2)で表わされるエポ
キシ樹脂である上記[1]又は[2]に記載のエポキシ
樹脂組成物。 (上記式(2)中、Rf、n4、a〜cは、前記一般式
(1)の定義に準じる。) 【0014】[4]前記カチオン重合触媒が、ルイス酸
のオニウム塩である上記[1]〜[3]の何れかに記載
のエポキシ樹脂組成物。 【0015】[5]前記エポキシ樹脂組成物が、更に下
記一般式(3)及び(4)で表わされる化合物の少なく
とも一方を含有している上記[1]〜[4]の何れかに
記載のエポキシ樹脂組成物。 【0016】本発明の別の形態は、下記のものが挙げら
れる。[6]物品表面を選択的に処理する方法であっ
て、 (i)上記[1]〜[5]の何れかに記載のエポキシ樹
脂組成物の皮膜を物品表面に形成する工程; (ii)該皮膜に活性エネルギー線を照射する工程; (iii)上記皮膜の非照射部分を溶解しうる液体にて上
記非照射部分を溶解し、除去する工程、を有することを
特徴とする表面処理方法。 【0017】[7]物品表面を選択的に処理する方法で
あって、 (i)上記[1]〜[5]の何れかに記載のエポキシ樹
脂組成物の皮膜を物品表面に形成する工程; (ii)該皮膜を重合し硬化させる工程;及び (iii)前記工程(ii)によって得られた硬化した皮膜
を位置選択的に除去する工程を有することを特徴とする
表面処理方法。 【0018】本発明の別の形態は、下記のものが挙げら
れる。[8]液体を吐出する吐出口を有する液体噴射記
録ヘッドにおいて、少なくとも該吐出口周辺が、上記
[1]〜[5]の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物の
硬化膜で被覆されていることを特徴とする液体噴射記録
ヘッド。 【0019】本発明の別の形態は、下記のものが挙げら
れる。[9]上記[8]に記載の液体噴射記録ヘッドを
有することを特徴とする液体噴射記録装置。 【0020】 【発明の実施の形態】次に好ましい実施の形態を挙げて
本発明を更に詳しく説明する。本発明にかかる樹脂組成
物は、エポキシ樹脂を含むので、該樹脂組成物からなる
皮膜は、各種部材への密着性に優れ、比較的低温でも硬
化可能であり、構造物としての物性にも優れた硬化物を
提供できる。更に、本発明にかかる樹脂組成物は、その
構造中に、アルキルシロキサン基及びパーフルオロアル
キル基を有するエポキシ化合物が含有されているので、
該樹脂組成物からなる皮膜は、水溶性有機溶剤、特に極
性有機溶剤に対する耐性が大幅に向上したものとなる。
又、顔料系インク中の顔料分散安定化剤等に対しても耐
性が向上している。そして、更に、相溶化剤を含む形態
の場合は、相溶化剤の作用によって樹脂組成物の成分間
に相溶性が与えられるため、本発明にかかる樹脂組成物
の材料構成の範囲を広くできる。 【0021】本発明にかかる樹脂組成物を塗布及び乾燥
して形成される皮膜は、活性エネルギー線によって賦活
化されるルイス酸のオニウム塩を触媒として含有するこ
とによって、パターン状に硬化させることが可能であ
り、未硬化部分の皮膜を除去することにより物品の表面
をパターン状に表面処理することが可能である。 【0022】パターン状に表面を処理する方法は、樹脂
組成物を基材に塗布及び乾燥して皮膜を形成し、該皮膜
に所望のパターンを有するマスクを介して活性エネルギ
ー線の照射を行い、次いで現像液を用いた現像処理を行
なって皮膜の未硬化部分を除去することによって行なう
ことができる。このパターン処理は、基本的な工程はフ
ォトリソグラフィー法と同じであるが、現像液として
は、樹脂組成物からなる皮膜に適した溶剤或いは溶剤組
成物を選択する。現像液としては、芳香族炭化水素類、
ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類等及びそ
れらの混合物を使用する。 【0023】本発明の樹脂組成物を用いてパターン状に
表面を処理する方法をとる場合には、樹脂組成物からな
る皮膜の硬化の完結を期すために、現像後に皮膜を加
熱、或いは活性エネルギー線の照射を更に行う、所謂ポ
ストキュアを施すことが望ましい。 【0024】このようにして本発明のエポキシ樹脂組成
物は、極性有機溶剤のように撥水剤の密着性を損なう成
分を含む溶液や物質との接触機会のある場所に適用する
撥水剤又は撥水性塗料として、更には、液体噴射記録ヘ
ッドの吐出口面の撥水・撥インク処理を行なう材料とし
て好適に用いることができる。 【0025】即ち、インクジェット記録装置に対する本
発明のエポキシ樹脂組成物の適用の効果は、光重合性を
利用した選択的な表面改質、処理の精度、硬化膜として
の固体強度、摩擦強度によるデバイスとしての耐久性、
撥水・撥インク性の高さは、水系インクのメニスカス保
持力、クリーニング性、液滴吐出方向の正確さ、連続吐
出における持続性、休止後の印字開始の適性等の諸特性
の向上に繋がるのである。ここでメニスカス保持力と
は、インクがノズル先端でそのインク表面を表面張力で
維持し、且つ繰り返される液滴吐出に際して、メニスカ
スを所定の位置に回復し保持する性質を指している。こ
の保持力が低いと、インクがノズル先端から滲み出す、
或いはメニスカスが後退して吐出するインクの液滴の体
積が減少する、或いは極端な場合には、インクの吐出欠
損が起こる等の不具合に繋がるのである。 【0026】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、1
分子中に少なくとも2個の環状脂肪族エポキシ基と、少
なくとも1つの炭素数6〜12のパーフルオロアルキル
基と、少なくとも1つのアルキルシロキサン基と、を有
しているエポキシ樹脂と、カチオン重合触媒と、を含有
しているエポキシ樹脂組成物であって、該環状脂肪族エ
ポキシ基及び該パーフルオロアルキル基は、該エポキシ
樹脂の分岐鎖中に存在し、又、該アルキルシロキサン基
は該エポキシ樹脂の主鎖中に存在していることを特徴と
している。 【0027】上記エポキシ樹脂組成物中、エポキシ樹脂
としては、上記の条件を満たす樹脂であれば特に限定さ
れないが、例えば、下記一般式(1)で表わされるエポ
キシ樹脂を挙げることができる。 【0028】上記式(1)において、aは1〜50の整
数、bは1〜50の整数、cは2〜100の整数であ
る。又、n1〜n3及びn5〜n7は、各々独立に1〜5の
整数であり、又、n4は2〜200の整数である。又、
1、R4〜R7及びR10は、各々独立に、水素原子、炭
素数1〜3のアルキル基であり、R2、R3、R8及びR9
は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基
及びニトリル基から選ばれる何れかである。又、Rf
は、炭素数6〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフ
ルオロアルキル基、特には、炭素数8〜10のパーフル
オロアルキル基である化合物が好ましい。 【0029】前記の如き一般式(1)で表わされるエポ
キシ樹脂は、メタクリル酸パーフルオロアルキルエステ
ル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシルメチル
エステル及びアゾ基含有ポリシロキサンアミドを常法に
従って適当なモノマー比で共重合させることによって得
られるとともに、市場から入手して使用することもでき
る。 【0030】より詳細に述べれば、かかるエポキシ樹脂
は、例えば、下記構造式(1)−iで示される化合物
を、下記構造式(1)−ii及び(1)−iiiで示される
ビニル系モノマーの共存下で、加熱、光照射、或いは加
熱及び光照射してラジカル種を生じさせることによっ
て、合成することができる。 【0031】(上記式(1)−i中、R11〜R14は、前記R2、R3
8及びR9と同義であり、各々独立に、水素原子、炭素
数1〜3のアルキル基及びニトリル基から選ばれる何れ
かである。又、n8及びn9は、0又は1〜6の整数を示
し、n2、n3、n 5及びn6は、各々独立に1〜5の整数
を表わし、n4は2〜200の整数を表わす。Xはハロ
ゲン原子を表す。又、R4〜R7は、各々独立に、水素原
子及び炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる何れかで
ある。) 【0032】 (上記(1)−ii及び(1)−iiiにおいて、Rf、
1、R10、n1、及びn7は、全て前記一般式(1)と
同義である。) 【0033】上記式(1)−iで示される化合物は、例
えば、特公平2−33053号公報に記載の方法にて合
成することができる。即ち、下記式(1)−ivに示すジ
アミンと、下記式(1)−v及び(1)−viで示される
ジハライドとを反応させることで得ることができる。 【0034】 上記式(1)−iv、(1)−v及び(1)−vi中の各置
換基は、上記式(1)−iで説明した通りである。 【0035】本発明にかかる、上記式(1)で示される
エポキシ樹脂の数平均分子量としては、8,000〜2
2,000、特には、8,500〜20,000の範囲
が、撥水膜の耐久性の点で好ましい。 【0036】上記式(1)で示されるエポキシ樹脂の具
体例としては、例えば下記式(2)で示されるエポキシ
樹脂が挙げられる。尚、下記式(2)中、Rf、n4
a〜cは、前記式(1)と同義である。 【0037】更に好ましい樹脂は、上記一般式(2)に
おいて、aが20〜50、bが5〜40、cが20〜7
0、nが20〜150、及び数平均分子量が8,000
〜22,000である樹脂であり、特に好ましい樹脂の
具体例としては、例えば、下記式で表わされる樹脂(A
−1)が挙げられる。 【0038】 【0039】尚、上記式(1)及び(2)で示した構造
において、環状脂肪族エポキシ基として3,4−エポキ
シシクロヘキシル基を記載したが、環状脂肪族は、何ら
これに限定されるものでなく、シクロプロピル基やシク
ロヘキシル基などであってもよい。 【0040】上記エポキシ樹脂は単独で使用してもよ
い。又、該樹脂は高分子量であるので、上記樹脂よりも
低分子量のオリゴマー及び溶剤を配合して、樹脂組成物
の被処理物品に対する塗布適性を高め、溶剤蒸発後の皮
膜の乾燥性を高めて処理の作業性を向上させることは、
好ましい態様の一つである。即ち、前記一般式(1)で
表わされる樹脂又は他の高分子量の樹脂を、皮膜形成時
のバインダーとして機能させることが好ましい。このよ
うなバインダー性の一般式(1)の樹脂又は他の高分子
量の樹脂を併用することが、樹脂皮膜にパターン状の露
光作業を施す上で好ましい。尚、前記「オリゴマー」と
は、前記一般式(1)の樹脂よりも低分子量の樹脂が好
ましいが、その他の低分子量のオリゴマーであってもよ
い。 【0041】本発明の樹脂組成物は、前記した一般式
(1)で表わされるエポキシ樹脂と、カチオン重合触媒
とを主体とするが、必要に応じて更に相溶化剤を含むこ
とが好ましい。このような相溶化剤としては、下記一般
式(3)及び/又は下記一般式(4)で表わされる化合
物が好適である。 上記一般式(3)に該当する化合物の好ましい具体例と
しては、p=0である化合物、即ち、2,2−ビス(4
−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
を挙げることができる。 【0042】 上記一般式(4)に該当する化合物の好ましい具体例と
してはq=0である化合物、即ち、m−ビス−[1−
(2,3−エポキシプロポキシ)−2,2,2−トリフ
ルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]ベンゼン
が挙げられる。 【0043】上記一般式(3)及び(4)で表わされる
化合物は、フッ化アルキル基を有するものの、その鎖長
が短いために形成される皮膜の表面エネルギー低下作用
は小さく、撥水及び撥インク性は大きくない。上記一般
式(3)及び(4)で表わされる化合物は、何れも一般
式(3)及び(4)で表わされる化合物の両端のエポキ
シ基を含む基を除いた化合物に該当する2価アルコール
と、エピクロルヒドリンとの反応によって常法によって
合成される。 【0044】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物には、
それを硬化させるための触媒としてカチオン重合開始剤
を含有している。本発明では、特に低温硬化が可能とな
るところの活性エネルギー線によって賦活化されるルイ
ス酸のオニウム塩に対して反応性が高くなるように樹脂
組成物が設計されている。これによって、該樹脂組成物
を用いてフォトリソグラフィー法によって基材の表面を
位置選択的に処理することができ、又、高温に保持する
ことが困難な基材に対しても表面改質を良好に行うこと
ができる。本発明で好適に利用できる触媒としては、例
えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニ
ウム塩、商品名「オプトマーSP−150」、「オプト
マーSP−170」(何れも旭電化工業製)等が挙げら
れる。 【0045】上記オプトマーSP−150の化学構造は
下記式で表わされる。 【0046】又、上記オプトマーSP−170の化学構
造は下記式で表わされる。 【0047】更に、下記構造式で示される商品名「イル
ガキュア261」(チバスペシャルティー社製)等を重
合開始剤として使用することができる。 【0048】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、先
述した一般式(1)で表わされる樹脂以外に、バインダ
ーポリマーとして機能する、側鎖にエポキシ基を持った
アクリルモノマーを共重合したアクリル樹脂、側鎖に環
状脂肪族エポキシ基を有するビニルモノマーを重合した
ビニルポリマー、側鎖に環状脂肪族エポキシ基を有する
ポリエーテルポリマー(例えば、EHPE3150;ダ
イセル化学工業の製品)等、それ自体も架橋反応に関与
しうるエポキシポリマーを併用してもよく、特に上記し
たような架橋反応に関与しうるものが最適である。もし
もそうしたエポキシ基を持たないポリマーを使用する場
合には、それが適用される用途に応じた物性調整を意図
して選択することを要する。そうした物質としては、例
えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂の重合体である、
商品名「PKHC」、「PKHJ」(ユニオンカーバイ
ド社の製品)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、フェノ
ール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、
ポリアミド樹脂、可溶性ポリイミド樹脂等の汎用の塗料
用高分子化合物が使用可能である。 【0049】以上のように本発明にかかるエポキシ樹脂
組成物は、基本的には A:エポキシ樹脂 B:カチオン重合触媒、及び必要に応じて C:相溶化剤 を非極性の溶剤中に含有する。これらA、B及びCの各
成分の樹脂組成物中における好ましい配合割合は以下の
通りである。 【0050】前記成分Aをオリゴマーをともに用いる場
合には、それぞれの軟化点、ガラス転移温度に依存する
ので一般的な範囲はない。しかし、概ねオリゴマー:成
分A=10:90乃至90:10(質量比率)である。
触媒Bは、エポキシ樹脂成分の合計量100質量部に対
して0.5乃至7質量部の範囲であることが好ましい。
これらのオリゴマーとポリマーとは互いに相溶性が低い
場合があり、相溶化剤Cを使用することが有利な場合が
多い。 【0051】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、加
熱或いは活性エネルギー線の照射によって基材の表面処
理を行う際に好適に用いることができる。具体的には、
先ず、本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を、芳香族
系、脂肪族炭化水素系、エステル系、エーテル系、フッ
素系溶剤等に溶解し、かかる塗布液を、ロールコータ
ー、スピンコーター、スプレイコーター、スクリーン印
刷、グラビア印刷等の各種塗布/印刷法を用いて基材表
面に塗布し、次に、上記のようにして基材表面に形成さ
れた皮膜に、加熱或いは活性エネルギー線の照射を行う
ことによって、皮膜を硬化させることによって、基材の
表面処理を行なうことができる。硬化に使用する活性エ
ネルギー線源としては、波長200乃至480nmの範
囲の輝線スペクトルを多量に含む水銀灯、レーザー光、
電子線等が適している。 【0052】より好ましくは、本発明にかかるエポキシ
樹脂組成物を、前記のようなバインダー成分を含有させ
る構成にして、基材の表面に乾燥した固体状の皮膜を与
えるように調製することで、フォトレジストを用いた場
合と同様なパターニング処理を行うことができ、これに
よって、基材の表面処理を位置選択的に行うことが容易
にできる。この場合には、先ず、本発明にかかるエポキ
シ樹脂組成物を含む塗布液を基材に塗布し、溶剤を除去
して乾燥皮膜とした後、適当なパターンを有するマスク
を重ねて活性エネルギー線を照射するか、或いは上記皮
膜にパターン状に活性エネルギー線を照射し、しかる
後、未硬化の皮膜を溶解しうる溶剤系で現像処理を行
う。パターン状のエネルギー線の照射が硬化に十分でな
い場合には、現像処理後にポストキュアのための硬化処
理を行うことが望ましい。そのためのエネルギー源とし
ては、熱、マイクロ波等の加熱処理、電子線、紫外線等
の活性エネルギー照射を用いることができる。 【0053】以上の如き本発明にかかるエポキシ樹脂組
成物を用いる表面改質方法によれば、皮膜の基材への密
着性、基材表面に、位置選択的に硬度に優れた撥水撥油
処理が行えるので、耐久性において優れた基材の改質が
可能であるという大きな効果が得られる。 【0054】液体噴射記録ヘッド、例えばインクジェッ
ト記録ヘッドに対する本発明にかかるエポキシ樹脂組成
物の応用例としては、例えば、当該液体噴射記録ヘッド
のノズル表面を本発明にかかる樹脂組成物を用いて、上
記したようにして処理することによって、ノズル表面に
対してインクの強固な付着が起きず、且つ、ノズル表面
に付着したインクをクリーニング処理によって容易に拭
き取れる、離型性のよい表面を形成する等が挙げられ
る。 【0055】液体噴射記録装置、例えばインクジェット
記録装置に搭載されているクリーニング機構、或いはク
リーニング方法としては、例えばインクジェット記録ヘ
ッドのオリフィス面に付着したインクをゴムのブレード
で拭き取る、ノズル内のインクをポンプで吸引する、記
録紙外の位置でインクの空吐出を行う等がある。しか
し、これらの何れの方法であっても、吐出圧によって引
き出されたインク柱が液滴化する時に、すべてのインク
が液滴にはならないので、余分のインクの微少液滴がノ
ズルの周辺に付着することを皆無にすることはできな
い。従って、これらが自発的に落下、或いはノズル内部
に再吸引される、或いは容易に排除されるならば、イン
ク吐出への影響はなくなるのである。 【0056】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を用い
れば、比較的低温でも硬化して、撥水・撥油性、基材に
対する密着性、耐薬品性、耐摩擦性に優れた硬化皮膜を
提供することができる。 【0057】図1及び2に、本発明のエポキシ樹脂組成
物を適用し得る液体噴射記録ヘッドの構成の一例の主要
部を示す。図1は、インクの流路に沿った断面図であ
り、図2は、図1の液体噴射記録ヘッドの斜視図であ
る。 【0058】この記録ヘッド13は、吐出エネルギー発
生装置等が配置された基板15上に、熱硬化性樹脂組成
物及び/又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化
物等を所定のパターンに成形して、少なくとも流路を形
成するようにした部材を積層接合した構成を有する。 【0059】基板15は、アルミナ等の放熱性のよい材
料からなる基体20の表面に、蓄熱層19、金属で形成
される発熱抵抗体層18、アルミニウム等からなる電極
17−1、17−2及び保護層16をこの順に積層した
構成を有し、この電極17−1、17−2に通電するこ
とによって、発熱抵抗体層18の電極が積層されていな
い部分(nで示す領域内にある部分)に形成された吐出
エネルギー発生素子が発熱し、その上方に位置するイン
クに熱エネルギーが作用するようになっている。 【0060】記録に際して、インク21は、溝14の端
部微細開口である吐出口(オリフィス)22まで充填さ
れ、その状態で、記録信号に対応して電極17−1、1
7−2に通電されると、nで示される領域が急激に発熱
し、ここに接しているインク21に膜沸騰による気泡が
発生し、その圧力でインク21が吐出口22より小液滴
24となって吐出され、記録媒体25に向かって飛翔す
る。 【0061】本発明にかかる液体噴射記録ヘッドでは、
吐出面29(図2)の少なくとも吐出口開口部22周辺
に、本発明にかかる樹脂組成物からなる硬化皮膜30
が、撥水・撥インク剤として適用され、この面に液滴が
付着して液滴の吐出方向にずれが生じるのが防止され
る。しかも、本発明にかかるエポキシ樹脂組成物からな
る硬化皮膜は、吐出面29に対する密着性に優れるだけ
でなく、インクに有機溶剤、特に極性有機溶剤が含有さ
れていたとしても、それによって撥水性や密着性が損な
われることがない。 【0062】図3は、図2に示したようなマルチヘッド
を組み込んだ液体噴射記録装置の一例を示す図である。
図3において、61はワイピング部材としてのブレード
であり、その一端はブレード保持部材によって保持され
て固定端となり、カンチレバーの形態をなす。ブレード
61は、記録ヘッドより記録領域に隣接した位置に配設
され、又、本例の場合、記録ヘッドの移動経路中に突出
した形態で保持される。62はキャップであり、ブレー
ド61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘ
ッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口と当接
し、キャッピングを行う構成を備える。 【0063】更に、63はブレード61に隣接して設け
られたインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録
ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。上記
ブレード61、キャップ62、インク吸収体63によっ
て吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク
吸収体63によってインク吐出口面からの水分、塵埃等
の除去が行われる。 【0064】65は液体噴射方式により記録を行う記録
ヘッドで、例えば、図1及び図2で示したような熱エネ
ルギーによってインク等の液体を吐出する構成を有す
る。66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の
移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66は
ガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一
部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続
(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイ
ド軸67に沿った移動、即ち、記録ヘッド65による記
録領域及びその隣接した領域へ移動が可能となる。 【0065】51は、記録媒体を挿入するための給紙
部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りロ
ーラーである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出
口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行
するにつれて排紙ローラー53を介して排紙される。 【0066】上記構成において、記録ヘッド65が記録
終了時でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64
のキャップ65は記録ヘッドの移動経路から退避してい
るが、ブレード61は移動経路中に突出している。この
結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。
又、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接し
てキャッピングを行う際には、キャップ62は記録ヘッ
ドの移動経路中に突出するように移動する。 【0067】記録ヘッド65がホームポジションから記
録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード
61は、上述したワイピング時の位置と同一の位置にあ
る。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐
出面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポ
ジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりで
なく、記録ヘッドが記録のための記録領域を移動する間
に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ
移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。 【0068】インクジェット記録装置では、カラー記録
の場合は、1ヘッド中に、シアン用、マゼンタ用、イエ
ロー用及びブラック用の吐出口を並列した記録ヘッドを
用いて行うことができる。又、各色の記録ヘッドを独立
して並列して配設して用いてもよい。これらの場合、各
色の吐出は、1つの吐出口から行ってもよいし、各色に
ついて同時に複数の吐出口から吐出を行って、2以上の
同一色の液滴が記録媒体に同時に付着するようにしても
よい。 【0069】本発明にかかる液体噴射記録ヘッドは、こ
れまで説明した本発明にかかるエポキシ樹脂組成物から
なる撥インク処理材料によって表面処理され、後述の実
施例に示すような化学的な性質を有するので、インクの
付着が少ない、或いは付着したインクが極めて容易にク
リーニング用ワイパーブレードにて除去される。よって
印字の実質の持続性が飛躍的に高くなる。 【0070】本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を用い
る際の具体的な方法に関して、その方法を以下に例示す
る。本発明の樹脂組成物からなる皮膜を活性エネルギー
線で硬化を行う場合には、前記したように触媒として光
によって放出する光カチオン触媒を添加して用いる。 【0071】<皮膜形成方法>この方法で用いる本発明
にかかるエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤中に溶解した
状態の塗布液として用いられる。皮膜の膜厚が数μmと
薄い場合には、ロールコーター、スピンコーター、スプ
レイコーター等の通常の精密塗布装置を用いて塗布液を
塗布することができる。又、一度、上記塗布液を離型紙
上に塗布及び成膜してドライフィルム化し、該ドライフ
ィルムをラミネーター等で基材表面に貼り合わせて、基
材表面に皮膜を形成することも可能である。 【0072】パターン状に基板表面を処理する第1の方
法は、前記のようにして形成した皮膜上に所望のパター
ンを有するマスクを用いて活性エネルギー線の選択的な
照射を行い、次いで現像液を用いた現像処理を行なっ
て、未硬化の皮膜を除去することによって達成される。
これらの基本的な工程はフォトリソグラフィー法と同じ
であるが、現像液としては、本発明にかかる樹脂組成物
からなる皮膜に適した溶剤或いは溶剤組成物を選択する
ことが必要である。現像液としては、芳香族炭化水素
類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類等及
びそれらの混合物を使用することができる。上記皮膜の
反応の完結を期すために、現像後に加熱、或いは活性エ
ネルギー線の照射を更に行うことが望ましい。 【0073】パターン状に基板の表面を処理する第2の
方法は、前記塗布液を基材に塗布及び乾燥して皮膜を形
成する第1の工程(i)、重合を促す活性エネルギー線
による全面照射により皮膜の硬化を行う第2の工程(i
i)、硬化皮膜の所望の部位を位置選択的に除去するよ
うに、崩壊性の活性エネルギー線を照射する第3の工程
(iii)を、この順序で施すことによって行う。重合を
促す活性エネルギー線としては、波長が250〜480
nmの光を豊富に含む紫外線が用いられる。崩壊性の活
性エネルギー線としては、波長が210nm以下の光、
エキシマーレーザー等を用いる。上記第2の方法におい
ても皮膜の硬化を完結させるためには、何れかの段階
で、皮膜の熱処理や重合性の活性エネルギー線の照射を
行うことが望ましい。 【0074】このようにして本発明にかかるエポキシ樹
脂組成物は、極性有機溶剤のように撥水剤の密着性を損
なう成分を含む液体や物質との接触機会のある場所に適
用する撥水剤又は撥水性塗料として、更には、液体噴射
記録ヘッドの吐出口面の撥水・撥インク処理に好適に用
いることができる。 【0075】 【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更
に詳しく説明する。尚、文中「%」とあるのは特に断り
のない限り質量基準である。本発明の組成物の構成例を
以下に例示する。以下の比率は固形分の質量比率を示
す。尚、下記において樹脂(A−1)は前記において例
示した樹脂である。 【0076】(組成物例1) 樹脂(A−1):オプトマーSP−170=96:4
(実施例1で使用) (組成物例2) 樹脂(A−1):オプトマーSP−170=94:6
(実施例2で使用) (組成物例3) 樹脂(A−1):オプトマーSP−170:1,4−ビ
ス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベン
ゼン=95:5:25(実施例3で使用) (組成物例4) 樹脂(A−1):オプトマーSP−170:1,4−ビ
ス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベン
ゼン:2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)
ヘキサフルオロプロパン=80:5:25:25(実施
例4で使用) 【0077】実施例1〜4 上記エポキシ樹脂組成物例1〜4のそれぞれを、溶剤で
あるジエチレングリコールジメチルエーテル中へ加えて
溶解し、濃度30乃至40%の溶液を作成した。これら
の溶液をそれぞれ5μmの厚さの熱酸化膜を有するシリ
コーンウエハー上に、ウエットで1乃至3μmの厚さに
スピンナーを用いて塗布した。次いでこの基材を110
℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去し
た。この4枚の基板に高圧水銀灯を用いた紫外線照射装
置にて2J/cm2の積算量の紫外線を照射した。次
に、150℃の炉で15分間加熱して硬化反応を完結さ
せて4枚の基板を得た。 【0078】(評価)上記のようにして作成した4枚の
基板を用いて以下の測定を実施し、それぞれを評価し
た。測定結果を表2に示した。 <T1:接触角の測定>純水、及びオレイン酸の10%
水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶
液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HL
B=10)の各液体を用いて、上記各基板の硬化皮膜の
静的接触角の測定を、接触角計(商品名:CAX−15
0;協和界面科学(株)製)を用いて常温にて行った。
そして、得られた結果を表2に示した。 【0079】<T2:顔料水分散液への浸漬後の接触角
(前進接触角、後退接触角)の測定>カーボンブラック
を5%、スチレン−アクリル酸共重合体を1%含む水溶
液(pH=10.3)に、上記硬化皮膜を有する各基板
を60℃で7日間浸漬した。その後に各基板を純水にて
洗浄及び乾燥し、得られた各基板について、上記にて調
製した顔料分散液に対する前進接触角、及び後退接触角
を、上記の接触角計を用いて測定した。又、これらの接
触角の測定は、拡張収縮法を用いた。そして、得られた
結果を表2に示した。 【0080】<T3:長期印字耐久性>図4a、bに示
すように、予め吐出エネルギー発生素子402等が設け
られた被処理基板401上に、図4cに示すようにポジ
型フォトレジスト(商品名ODUR−1010、東京応
化工業製)を膜厚13μmになるようにスピンコート
し、レジスト層403を形成した。次に、レジストパタ
ーン上に、図5に示すように、流路形成用材料501と
して、下記表1の組成のエポキシ樹脂組成物を25μm
の層厚で積層した。 【0081】 【0082】流路形成用材料層501を積層後、ホット
プレート上で80℃、3分間乾燥を行った。次に、こう
して得られた積層体上に、先に調製した組成物例1〜4
を個々にスピンコートにて塗布して皮膜502を形成し
た。このようにして形成した第1(501)及び第2
(502)感光性樹脂層に対して吐出口部のパターンが
形成されたマスク(不図示)を介して、キヤノン製マス
クアライナーMPA600を用いて1.0J/cm2
紫外線露光、及び90℃4分間の加熱処理した後に、M
IBK/キシレン=2/3の現像液に浸漬して現像を行
なって吐出口部503を形成した。次いで、図6に示す
ように、Si製の基板401は裏面より異方性エッチン
グによりインク供給口601を形成し、最後に型レジス
ト層403を除去し、更に、第1(502)及び第2
(501)感光性樹脂層を完全に硬化する目的で200
℃/1時間加熱処理を行ってノズルが完成する。 【0083】更に、こうして得られたノズルを組み込ん
だ液体噴射記録ヘッドに所定の電気配線を行って、プリ
ンタに組み込み、純水/グリセリン/フードブラック2
(水溶性黒色染料)/N−メチルピロリドン=70/1
5/3/12(質量部)からなるインクジェット用イン
クを用いて長期印字耐久試験を行った。 【0084】印字耐久試験は、文書とインクの着弾精度
を評価するパターンを100枚印字して、最終の印字サ
ンプルからドットの乱れを下記の基準で評価した。この
結果をT3−1とし、得られた結果を表2に示した。 【0085】 評価A:ドット位置の乱れがなく、文字は鮮明である。 評価B:ドット位置の乱れが少々あるが、文字の品位へ
の影響は軽微である。 評価C:ドット位置の乱れがかなりあり、文字も鮮明さ
が低下している。 評価D:ドットの欠け、文字品位の大幅な低下が発生し
ている。 【0086】又、使用したプリントヘッドの表面を観察
し、インクの付着量を評価した。この結果をT3−2と
し、得られた結果を表2に示した。 評価A:ノズル表面にインク滴が殆どない。 評価B:ノズル表面に小さいインク滴が見られる。 評価C:ノズルの吐出口近傍に大きなインク滴がある。 【0087】比較例1 実施例1のエポキシ樹脂に代えて含フッ素エポキシ樹脂
であるビスフェノールAF(下記構造)を用いた以外
は、実施例と同様にT1〜T3の各評価を行った。そし
て、得られた結果を表2に示した。 【0088】比較例2 本発明で使用したエポキシ樹脂組成物に代えて、フロラ
ード(FluoradTM)FC−722(フルオロコ
ーテイング剤;住友スリーエム社製)をポリエーテルサ
ルフォンの成形板にスピンナーにて、溶剤蒸発後の膜厚
で約2μmに塗布した。更に100℃30分間の乾燥を
行って表面処理を行った。次いでこの基板にビーム径5
μmに収斂した波長195nmのエキシマーレーザー光
を皮膜の上方から照射して、ノズル穴開け加工を行っ
た。穴開けは良好に行えず、エッジ部には分解残渣が多
量に発生して、表面状態も不均一であった。この条件に
て実施例1と同様に基板を作成し、実施例と同様に、T
1〜T3の評価を前記と同様に実施した。そして、得ら
れた結果を表2に示した。 【0089】 【0090】表2に示したように、本発明にかかるエポ
キシ樹脂組成物からなる皮膜は接触角が高く、且つその
持続性において良好であった。又、顔料インクに長期に
接触してもプリントヘッド表面におけるインクの付着が
なく、結果としてドットの着弾精度がよく、印字品位を
長く維持できるようになることがわかった。 【0091】実施例5 実施例1及び3で用いたエポキシ樹脂組成物例1及び3
を、ポリエーテルサルフォンの成形板にスピンナーに
て、溶剤蒸発後の膜厚で約2μmになるようにそれぞれ
塗布及び乾燥した。これらの基板に高圧水銀灯から合計
10J/cm2の光を照射し、皮膜の重合硬化を行っ
た。次いでこの基板に、ビーム径5μmに収斂した波長
195nmのエキシマーレーザー光を皮膜の上方から照
射して、ノズル穴開け加工を行った。穴開けは良好に行
われ、エッジ部にも分解残渣はなく、良好な加工状態で
あった。この結果、本発明の組成物は、紫外線レーザー
による加工にも特に優れた適性を有することがわかっ
た。 【0092】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
撥水剤の成膜性や密着性を損なう成分を含む溶液や物質
との接触機会のある場所に適用する撥水剤又は撥水性塗
料として好適なエポキシ樹脂組成物が提供される。又、
本発明によれば、常に同じ表面状態を持続できる表面改
質処理が可能なエポキシ樹脂組成物が提供される。 【0093】更に、本発明によれば、かかるエポキシ樹
脂組成物で基材の表面処理を行うことで、ノズル表面を
常に同じ表面状態に維持でき、インクに長期に接触して
も、プリントヘッド表面におけるインクの付着がなく、
結果としてドットの着弾精度がよく、印字品位を長く維
持できるインクジェット記録ヘッド、及び液体噴射記録
装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】液体噴射記録ヘッドの構成の一例の主要部を示
す図である。 【図2】図1の斜視図である。 【図3】マルチヘッドを組み込んだ液体噴射記録装置の
一例を示す図である。 【図4】本発明の方法を説明する図である。 【図5】本発明の方法を説明する図である。 【図6】本発明の方法を説明する図である。 【符号の説明】 13:記録ヘッド 14:インク溝 15、28:基板 16:保護層 17−1、17−2:電極 18:発熱抵抗体層 19:蓄熱層 20:基体 21:インク 22:吐出口(オリフィス) 23:メニスカス 24:小液滴 25:記録媒体 27:ガラス板 29:吐出面 30:硬化被膜 51:給紙部 52:紙送りローラー 53:排紙ローラー 61:ワイピング部材 62:キャップ 63:インク吸収体 64:吐出回復部 65:記録ヘッド 66:キャリッジ 67:ガイド軸 68:モーター 69:ベルト 401:被処理基板 402:吐出エネルギー発生素子 403:レジスト層 501:流路形成用材料 502:皮膜 503:吐出口部 601:インク供給口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野口 弘道 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 4J036 AD08 AJ08 AJ21 AK14 GA01 GA03 GA19 GA22 HA01 JA01

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 1分子中に少なくとも2個の環状脂肪族
    エポキシ基と、少なくとも1つの炭素数6〜12のパー
    フルオロアルキル基と、少なくとも1つのアルキルシロ
    キサン基と、を有しているエポキシ樹脂と、カチオン重
    合触媒と、を含有しているエポキシ樹脂組成物であっ
    て、上記環状脂肪族エポキシ基及び上記パーフルオロア
    ルキル基は、上記エポキシ樹脂の分岐鎖中に存在し、且
    つ、上記アルキルシロキサン基は、上記エポキシ樹脂の
    主鎖中に存在していることを特徴とするエポキシ樹脂組
    成物。
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