JP2003277345A - スルホン酸無水物の製造方法 - Google Patents

スルホン酸無水物の製造方法

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JP2003277345A
JP2003277345A JP2002083814A JP2002083814A JP2003277345A JP 2003277345 A JP2003277345 A JP 2003277345A JP 2002083814 A JP2002083814 A JP 2002083814A JP 2002083814 A JP2002083814 A JP 2002083814A JP 2003277345 A JP2003277345 A JP 2003277345A
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sulfonic acid
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anhydride
acid anhydride
sulfonic
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Kenichi Takizawa
健一 滝沢
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スルホン酸から容易かつ経済的にスルホン酸
無水物を製造する方法を提供する。 【解決手段】 スルホン酸とスルホン酸・カルボン酸混
合酸無水物とを反応させる反応工程A、反応生成混合液
を、生成スルホン酸無水物と反応母液とに分離する分離
工程A、反応母液から、スルホン酸・カルボン酸混合酸
無水物を分離する分離工程B、及び分離されたスルホン
酸・カルボン酸混合酸無水物を反応工程Aに再利用する
再利用工程A、を含み、系外から加えられるスルホン酸
量に対する再利用工程Aから反応工程Aへ加えられるス
ルホン酸・カルボン酸混合酸無水物量の比が0.5モル
/モル以上であるスルホン酸無水物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスルホン酸無水物の
製造方法に関する。詳しくは、本発明は高純度のスルホ
ン酸無水物を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に行われているスルホン酸無水物
の製造方法としては、対応するスルホン酸をジシクロヘ
キシルカルボジイミド(以下、DCCという)や塩化チ
オニル、五酸化二燐等で脱水する方法が良く知られてい
る。しかしながら、これらの公知の方法では、高価なD
CCや塩化チオニル、五酸化二燐等を、基質であるスル
ホン酸に対していずれも相当量使用する必要があり、さ
らに収率の問題や、反応時や脱水剤再生時の操作が難し
いなどの問題もあって、必ずしも経済的で容易な方法と
は言えず、これらに代わる効率的な合成手法が期待され
てきた。
【0003】スルホン酸無水物の効率的な合成法に関
し、上記の他にも様々な試薬を用いての検討が行なわれ
てきた。例えば、パラトルエンスルホン酸とジフェニル
水銀およびトリブチルホスフィンをベンゼン中で混合・
加熱し、水銀やトリブチルホスフィンオキサイドととも
にパラトルエンスルホン酸無水物を得る方法(T.Mu
kaiyama,I.Kuwajima,Z.Suzu
ki,J.Org.Chem.,28,2024(19
63))や、メトキシアセチレンとパラトルエンスルホ
ン酸とを塩化メチレン中において反応させ、酢酸メチル
とともにパラトルエンスルホン酸無水物を得る方法
(G.Eglinton,E.R.H.Jones,
B.L.Shaw,M.C.Whiting,J.Ch
em.Soc.,1860(1954))、またパラト
ルエンスルホン酸をコハク酸ジクロライドと反応させ、
パラトルエンスルホン酸無水物をコハク酸無水物、塩化
水素とともに得る方法(M.H.Karger,Y.M
azur,J.Org.Chem.,36, 528
(1971))等が提案されている。
【0004】しかしながら、これらのパラトルエンスル
ホン酸無水物の合成法も、いずれも試薬が高価なことや
収率の不十分さ等の理由から工業的な製造方法としては
必ずしも満足し得るものではない。またベンゼンスルホ
ン酸無水物については、ベンゼンスルホン酸銀をアセチ
ルクロライド中で加熱還流して濾過後、100℃、0.
1mmHgにて蒸留することにより合成する方法(W.
Flavell,N.C.Ross,J.Chem.
Soc.,5474(1964))が、さらにメタンス
ルホン酸無水物についてはメタンスルホン酸とアセチル
クロライドとを混合して加熱還流し、過剰のアセチルク
ロライドを蒸留により取り除くことでメタンスルホン酸
無水物を得る方法(M.H.Karger,Y.Maz
ur,J.Org.Chem.,36,528(197
1))等が提案されているが、これらもすべて経済的な
問題等を克服できてはいない。
【0005】また、パラトルエンスルホン酸と無水酢酸
とから合成可能である混合酸無水物のアセチルパラトル
エンスルホネートが、微量のジメチルエーテル存在下で
比較的容易に(30℃ 12hr)分解し、ほぼ完全に
パラトルエンスルホン酸無水物と無水酢酸とに不均化し
たという報告と、同様にメタンスルホン酸と無水酢酸と
からも合成可能であるアセチルメタンスルホネートをア
セチルクロライドとメタンスルホン酸とから合成する過
程において、還流時間を短縮して残存メタンスルホン酸
の含有量を5%とし、そのまま120℃、10-3mmH
gで減圧蒸留することによりメタンスルホン酸無水物を
収率50%強で得ることに成功したという報告(共に
M.H.Karger,Y.Mazur,J.Org.
Chem., 36,528(1971))はあるが、
いずれも非常に長時間の反応時間や高温・高真空での蒸
留過程を要している等の問題点を抱えている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上述
の問題点を克服し、スルホン酸無水物類を容易に経済的
に製造する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述の課題
を念頭にスルホン酸無水物の合成法について鋭意検討を
重ねた結果、高価な脱水剤や反応試剤を使用しなくて
も、スルホン酸と、スルホン酸とカルボン酸との混合酸
無水物とを特定条件で混合し反応させることによって、
従来よりも容易にかつ経済的にスルホン酸無水物が得ら
れることを見出して、本発明に到達した。
【0008】即ち、本発明の要旨は、(1)スルホン酸
と、スルホン酸とカルボン酸との混合酸無水物(以下、
スルホン酸・カルボン酸混合酸無水物という)とを反応
させてスルホン酸無水物を得る反応工程A、(2)反応
生成混合液を、生成したスルホン酸無水物と反応母液と
に分離する分離工程A、(3)スルホン酸無水物が分離
された反応母液から、スルホン酸・カルボン酸混合酸無
水物を分離する分離工程B、及び(4)分離工程Bにて
分離したスルホン酸・カルボン酸混合酸無水物を反応工
程Aに再利用する再利用工程A、を含むスルホン酸無水
物の製造方法において、系外から反応工程Aへ加えられ
るスルホン酸の量に対する再利用工程Aから反応工程A
へ加えられるスルホン酸・カルボン酸混合酸無水物の量
の比(モル/モル)が0.5以上であることを特徴とす
るスルホン酸無水物の製造方法、に存する。
【0009】また、本発明の他の要旨は、(1)パラト
ルエンスルホン酸と、アセチルパラトルエンスルホネー
トとを反応させてパラトルエンスルホン酸無水物を得る
反応工程A、(2A)反応生成混合液を、晶析分離によ
り、生成したパラトルエンスルホン酸無水物と晶析母液
とに分離する分離工程A、(2B)分離したパラトルエ
ンスルホン酸無水物を無水酢酸にて濯ぎ洗いする洗浄工
程、(2D)晶析母液と洗浄工程における洗浄後の無水
酢酸とを混合し、晶析母液中のパラトルエンスルホン酸
と無水酢酸とを反応させてアセチルパラトルエンスルホ
ネートを得る反応工程B、(3A)反応工程Bにて得ら
れた反応生成液を、酢酸及び無水酢酸を含む留分と、ア
セチルパラトルエンスルホネートを含む留分とに蒸留分
離する蒸留工程A、及び(4)蒸留工程Aにて分離され
たアセチルパラトルエンスルホネートを反応工程Aに再
利用する再利用工程A、を含むスルホン酸無水物の製造
方法において、系外から反応工程Aへ加えられるスルホ
ン酸の量に対する再利用工程Aから反応工程Aへ加えら
れるスルホン酸・カルボン酸混合酸無水物の量の比(モ
ル/モル)が0.5以上であることを特徴とするスルホ
ン酸無水物の製造方法、に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。 (スルホン酸)本発明の合成反応で使用される原料のス
ルホン酸は特に限定されず、公知の各種のスルホン酸が
適用される。
【0011】該スルホン酸として具体的には、ベンゼン
スルホン酸の外、パラトルエンスルホン酸、m−キシレ
ン−4−スルホン酸、パラオクチルベンゼンスルホン
酸、パラドデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチ
ルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスル
ホン酸、メシチレンスルホン酸等のアルキルベンゼンス
ルホン酸類、ビフェニルスルホン酸、1−ナフタレンス
ルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ジイソプロピル
ナフタレンスルホン酸、ジイソブチルナフタレンスルホ
ン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸類等のアレーン
スルホン酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、
プロパンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンス
ルホン酸等のアルカンスルホン酸類;さらにはメシチレ
ンジスルホン酸やベンゼン−m−ジスルホン酸等の多価
スルホン酸類等が挙げられる。またこれらのスルホン酸
類はその炭素原子上にCl、Br、Fなどのハロゲン原
子やアシル基、アルコキシ基等の置換基を有していても
よい。
【0012】なかでもメタンスルホン酸、トリフルオロ
メタンスルホン酸等の炭素数1〜20、好ましくは炭素
数1〜10のアルカンスルホン酸、或いはベンゼンスル
ホン酸、パラトルエンスルホン酸、メシチレンスルホン
酸等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のア
レーンスルホン酸が好ましく適用され、特にメタンスル
ホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスル
ホン酸、パラトルエンスルホン酸、及びヨードベンゼン
スルホン酸が好適である。
【0013】(スルホン酸・カルボン酸混合酸無水物)
本発明において「スルホン酸・カルボン酸混合酸無水
物」とは、スルホン酸とカルボン酸とが脱水縮合して得
られる化合物を意味する。具体的には、スルホン酸をR
1−SO3H、カルボン酸をR2−COOHで表した場
合、次式(I)で表される化合物である。
【0014】
【化1】
【0015】本発明におけるスルホン酸・カルボン酸混
合酸無水物(以下、単に混合酸無水物ということがあ
る)の使用量(再利用工程Aから反応工程Aへ加えられ
る混合酸無水物の量)は、スルホン酸の使用量(系外か
ら反応工程Aへ加えられるスルホン酸の量)に対して
0.5モル/モル以上でなければならない。好ましくは
1〜10モル/モル、更に好ましくは1.5〜4モル/
モルの範囲で用いられる。混合酸無水物の量が少な過ぎ
るとスルホン酸当たりのスルホン酸無水物収量が十分に
得られないうえ、再利用プロセス上、再利用するスルホ
ン酸骨格含有物質の量が増加していき、新たに投入する
スルホン酸および精製後系外に除去されるスルホン酸無
水物の量との間の物質量的調和が取れなくなる。他方、
過多にすぎると逆に混合酸無水物当たりのスルホン酸無
水物収量が十分に得られないほか、目的とするスルホン
酸無水物との分離が容易でなくなる場合が出てくる。ま
た、減圧反応とした場合に、目的とする主反応よりもむ
しろ、スルホン酸が触媒となって混合酸無水物をスルホ
ン酸無水物とカルボン酸無水物とに分解させる不均化反
応が圧倒的に優先されることとなる場合が出てくる。
【0016】(混合酸無水物におけるスルホン酸)本発
明において用いられる混合酸無水物を形成しているスル
ホン酸としては、上述の反応基質に用いられるスルホン
酸と同一であっても異なっていてもよく、上記したよう
なスルホン酸が好適に使用される。スルホン酸や混合酸
無水物の再利用を考慮すると、目的のスルホン酸無水物
が単一のスルホン酸骨格からなる対称性の酸無水物であ
る場合は、上述の反応基質に用いられるスルホン酸と同
一のものを用いるのが好ましい。
【0017】(混合酸無水物におけるカルボン酸)本発
明において用いられる混合酸無水物を形成しているカル
ボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、イ
ソ酪酸、シクロヘキシル酢酸等の脂肪族モノカルボン酸
のほか、マレイン酸、コハク酸、シクロヘキサンジカル
ボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、安息香酸等
の芳香族カルボン酸等が挙げられる。またこれらのカル
ボン酸類は、その分子内の炭素原子上の水素原子がハロ
ゲン原子やアシル基、アルコキシ基等によって置換され
ていてもよい。
【0018】これらのカルボン酸をスルホン酸との混合
酸無水物として本発明に適用する場合、目的のスルホン
酸無水物と同時に、混合酸無水物に由来するカルボン酸
が生成するため、反応系から目的のスルホン酸無水物を
最終的に分離することが出来るようスルホン酸との組み
合わせを考慮して適宜選択することが重要である。なか
でも沸点が300℃以下のカルボン酸が好ましく、特に
酢酸が好適である。
【0019】(反応溶媒または添加物)本発明のスルホ
ン酸無水物合成反応においては、基質の濃度を極力高く
し、反応速度を早くするためにも、また経済的観点から
も反応剤としての機能を持つ当該スルホン酸と混合酸無
水物以外には特に反応溶媒や添加物を使用することな
く、実質的に無溶媒で行うことが好ましい。実質的に無
溶媒とは、基質であるスルホン酸と混合酸無水物以外の
成分が反応混合物中に5重量%以下であることであり、
更には2重量%以下である。
【0020】また、スルホン酸無水物の合成反応に、溶
媒ないしは添加物を使用する場合、好適に用いられるも
のとしては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n
−オクタン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベン
ゼン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素、アセトニ
トリル、プロパンニトリル、カプロニトリル、アジポニ
トリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル化
合物、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、マロン酸
ジメチル、コハク酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸メチル
等のエステル化合物、ジメチルエーテル、ジエチルエー
テル、ジグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル化
合物、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等
のハロゲン化アルキル化合物、ジメチルホルムアミド、
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド化
合物等を挙げることが出来る。なかでも、テトラヒドロ
フラン等のエーテル化合物、アセトニトリル等のニトリ
ル化合物、ハロゲン化アルキル化合物等が反応上好まし
い。また、これらは単独でも混合しても使用することが
出来る。さらに、酢酸等のカルボン酸やカルボン酸無水
物等の少量添加も可能である。
【0021】(洗浄溶媒)本発明において用いられる洗
浄溶媒としてはカルボン酸無水物類、カーボネート類、
ニトリル類、エーテル類、カルボン酸エステル類、ニト
ロ化合物類、ハロゲン化炭化水素類等の非プロトン性で
かつ比較的低沸点の有機溶媒が好ましく適用される。ま
たハロゲン化炭化水素類を除くこれらの有機溶媒類は、
その分子内の炭素原子上の水素原子がハロゲン原子その
他の置換基によって置換されていてもよい。また、これ
らの溶媒を組み合わせた混合溶媒も好適に使用される。
【0022】これらの洗浄溶媒を本発明に適用する場
合、まず、精製操作温度において液体であることが必須
である。また、洗浄後に微量残留する洗浄溶媒を事後に
目的のスルホン酸無水物や場合によっては副生物のカル
ボン酸ないしはカルボン酸無水物からも容易に除くこと
が出来るように、各物質との組み合わせを考慮して適宜
選択することも必要である。
【0023】洗浄後に残留溶媒を蒸留によって除去する
場合には、通常、沸点が250℃以下の溶媒が好まし
い。より好ましくは沸点200℃以下の溶媒が、さらに
好ましくは沸点150℃以下の溶媒が選定される。例え
ば無水酢酸(沸点140℃)、プロピレンカーボネート
(沸点240℃)、アセトニトリル(沸点81〜82
℃)、ベンゾニトリル(沸点191℃)、テトラヒドロ
フラン(沸点65〜67℃)、ギ酸メチル(沸点34
℃)等が好適である。また、操作上の容易さの観点から
は沸点10℃以上の溶媒が好ましい。
【0024】本発明は、混合酸無水物を再利用する工程
を有しているが、反応工程Aで残留するスルホン酸を効
果的に混合酸無水物に変換することができる利点を考慮
すると、洗浄溶媒としてはカルボン酸無水物を用いるの
が好ましく、特に無水酢酸が好ましい。本発明における
洗浄溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、
一般には、粗スルホン酸無水物中におけるスルホン酸無
水物の量に対して約0.05〜100重量倍、好ましく
は0.2〜40重量倍、更に好ましくは0.3〜30重
量倍の範囲で用いられる。洗浄溶媒の使用量が少な過ぎ
ると十分な洗浄が出来ず、他方、過多にすぎると精製系
内のホールド量も多くなり、経済的効果が減少するとと
もに、多くの場合、生成物の一部が溶媒中へ溶解してし
まうためにスルホン酸無水物の収量が低下する。
【0025】(反応工程Aにおける反応条件)本発明
の、スルホン酸と、スルホン酸・カルボン酸混合酸無水
物とを反応させてスルホン酸無水物を得る反応工程Aに
おいて、スルホン酸無水物が生成する主な反応は次式
(II)の通りである。なお、この例では原料のスルホ
ン酸としてパラトルエンスルホン酸を、スルホン酸・カ
ルボン酸混合酸無水物としてアセチルパラトルエンスル
ホネートを用いており、目的のスルホン酸無水物はパラ
トルエンスルホン酸無水物である。
【0026】
【化2】
【0027】上式(II)において、アセチルパラトル
エンスルホネート(A)とパラトルエンスルホン酸
(B)とが反応して、パラトルエンスルホン酸無水物
(C)と酢酸(D)とを生成する。アセチルパラトルエ
ンスルホネート(A)とパラトルエンスルホン酸(B)
とが反応してパラトルエンスルホン酸無水物(C)と酢
酸(D)とが生成するこの反応は平衡反応と考えられ
る。通常、反応途上で系中から生成物種を取り除かなく
とも十分に反応は進行するが、平衡反応であるので、生
成するスルホン酸無水物又はカルボン酸のいずれか一
方、あるいは両方を反応系中から取り除くことによって
正反応をより進行させることが出来る。従って、反応工
程Aにおいては、生成物であるスルホン酸無水物及び/
又はカルボン酸を反応系中から除きながら反応を行うの
が好ましい。
【0028】操作を行う温度、減圧度或いは原料比によ
っては、アセチルパラトルエンスルホネート(A)の不
均化反応が優先することもあり、その場合はパラトルエ
ンスルホン酸無水物(C)とともに、副生物として酢酸
(D)よりもむしろ無水酢酸が生成する。本発明の反応
工程Aにおいて、生成物であるスルホン酸無水物及び/
又はカルボン酸を反応系中から除く方法は特に限定され
ないが、具体的には、(1)減圧下に留去する方法、
(2)当該反応に対して不活性なガスを流通させ、同伴
留去する方法、(3)晶析する方法等が挙げられる。
【0029】これらの除去方法は単独で用いても組み合
わせて用いてもよい。生成するスルホン酸無水物及び/
又はカルボン酸を減圧下に留去する場合の圧力として
は、大気圧より低ければよいが、目的のスルホン酸無水
物の沸点と反応物であるスルホン酸や混合酸無水物の沸
点、また副生物であるカルボン酸の沸点を勘案して減圧
度と減圧時間を選定する。
【0030】反応系中に存在するスルホン酸、混合酸無
水物、スルホン酸無水物、カルボン酸の内、カルボン酸
の沸点が最も低い場合が多いので、好ましい実施態様
は、カルボン酸のみを反応系中から減圧留去するもので
ある。この場合、カルボン酸の大気圧での沸点が300
℃以下であるのが好ましく、200℃以下がより好まし
く、150℃以下が特に好ましい。また、減圧条件での
カルボン酸の沸点は、他の成分よりも30℃以上低いこ
とが好ましく、50℃以上低いことが更に好ましい。
【0031】当該反応に対して不活性なガスを流通させ
て生成物であるスルホン酸無水物及び/又はカルボン酸
を同伴留去する場合に用いられる不活性なガスとして
は、例えばアルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、メタ
ン、エタン、プロパン、あるいはこれらの混合ガスを挙
げることができる。ガスに同伴させて留去する場合、目
的のスルホン酸無水物の揮発性と反応物であるスルホン
酸や混合酸無水物の揮発性、また副生成物であるカルボ
ン酸の揮発性を勘案してガス流量と流通時間を選定す
る。
【0032】上述の減圧留去する場合と同様、反応基質
と生成物の中ではカルボン酸の揮発性が最も高い場合が
多いので、好ましい実施態様は、カルボン酸のみを反応
系中からガスに同伴させて留去するものである。生成物
であるスルホン酸無水物及び/又はカルボン酸を晶析す
る場合には、反応の中途で晶析のために温度を下げた
り、貧溶媒を加える等の方法がある。低温晶析により系
外に除く場合、目的のスルホン酸無水物ないしは副生成
物であるカルボン酸の融点よりも液体として残るべき反
応物種と生成物種の混合物の融点が低い必要があるの
で、これらすべての融点を勘案して反応温度と組成比を
決定する必要がある。また、基質の混合酸無水物に使用
するカルボン酸の選定に際しても予め融点を勘案する必
要がある。
【0033】貧溶媒を用いる場合には、用いる貧溶媒に
対するスルホン酸無水物やスルホン酸、混合酸無水物、
またカルボン酸の溶解度を勘案してカルボン酸の種類、
貧溶媒種、さらには原料の混合比、貧溶媒量等を決定す
る必要がる。反応系中に存在するスルホン酸、混合酸無
水物、スルホン酸無水物、カルボン酸の内、スルホン酸
無水物の融点が最も高く、結晶性も高い場合が多いの
で、好ましい実施態様は、スルホン酸無水物のみを反応
系中から晶析により除去するものである。また、スルホ
ン酸無水物の洗浄溶媒による濯ぎ洗いの効率を考慮する
と、スルホン酸無水物の融点は80℃以上であるのが好
ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上が
特に好ましい。また、スルホン酸無水物の沸点は、他の
成分よりも30℃以上高いことが好ましく、50℃以上
高いことが更に好ましい。
【0034】なお、「生成するスルホン酸無水物及び/
又はカルボン酸を反応系中から除きながら反応を行う」
とは、反応途中のいずれかの時点でスルホン酸無水物又
はカルボン酸のいずれか一方または両方を除く操作を加
えることを意味しており、反応中連続的に除く操作を加
えることのみならず、断続的に除く操作を行ってもよ
い。さらに、両方とも除く場合、双方を同時に除くよう
な操作をしてもよいし、どちらか一方を先に除くような
操作を行ってもよい。
【0035】本発明の製造方法の別の好ましい一実施態
様は、実質的に無溶媒で反応を行うものである。実質的
に無溶媒とは、反応系中に、反応に何ら悪影響を及ぼさ
ず、かつ基質の濃度を実質的に下げない範囲で、不活性
なガスや固体を存在させることを妨げるものではなく、
具体的には反応混合物中の基質と反応生成物以外の溶媒
物質が5重量%以下、好ましくは2重量%以下であるこ
とを意味する。
【0036】溶媒を用いないことにより基質濃度を高く
することができ、反応速度が速くなる他、反応後の処理
が簡便となる。また、本反応の場合、溶媒を用いなくと
も高い選択性が達成可能である。基質であるスルホン酸
及びスルホン酸・カルボン酸混合酸無水物のいずれか一
方又は両方が固体であっても、反応温度において、これ
ら反応原料混合物が融解していれば実質的に無溶媒で反
応を行うことができる。従って、スルホン酸と、スルホ
ン酸・カルボン酸混合酸無水物との反応原料混合物の融
解点が250℃以下であることが好ましく、200℃以
下であることが更に好ましく、130℃以下であること
が特に好ましい。
【0037】本発明の反応工程Aを実施する条件は、特
に限定されないが、反応温度は通常、250℃以下、好
ましくは−10℃から200℃、より好ましくは0℃か
ら130℃の範囲で実施される。反応圧力も特に制限さ
れるものでなく、減圧から加圧までの各種条件下で実施
される。また、不活性ガス等を流通しながら反応を行う
ことも可能である。さらに、本発明方法によれば、混合
酸無水物がスルホン酸無水物とカルボン酸無水物とに分
解する不均化反応が進行する温度よりも低温で反応を行
うことが出来るので、生成する粗スルホン酸無水物の色
も薄く、不純物も少ない。
【0038】本発明ではスルホン酸と混合酸無水物との
いずれを先に反応器に投入しても反応は進行する。ま
た、いずれかを先に所定の温度に加熱し、次いで他方を
添加するという順序であっても反応は進行する。さら
に、加熱・圧操作・ガス流通の組み合わせてについて
も、反応基質に応じて適宜組み合わせ方を選択すること
ができる。
【0039】(分離工程A)本発明において、上述の反
応により得られたスルホン酸無水物は、分離工程Aによ
り、反応母液から分離される。分離工程Aについては、
スルホン酸無水物と反応母液とが分離可能である限り分
離の方法は特に限定されないが、目的とするスルホン酸
無水物から不純物及び原料残存物を効率的に除去するた
めには、まず反応直後の反応生成液の温度を調節してス
ラリー状とし、晶析してきたスルホン酸無水物を濾過分
離するという形態が好ましい。ただし、分離・洗浄に先
だって不純物を含む粗スルホン酸無水物が細かい粒子状
に粉砕されていることが好ましいので、必要に応じて反
応直後に粒子状でない場合は予め粉砕しておく。粉砕方
法は、特に限定されず、公知の種々の粒状化手法が適用
可能である。好適な手法の一つとしては、洗浄に使用す
る洗浄溶媒を予め少量添加し、ついで物理的に混合粉砕
することが挙げられる。この場合、洗浄溶媒と粗スルホ
ン酸無水物とのどちらが先に投入してあってもよい。
【0040】必要に応じて粉砕した後、濾過によって分
離する。予め粉砕するにしろ、しないにしろ、このとき
濾過残査として回収されるのがスルホン酸無水物のみで
あることが好ましく、濾液側の反応混合物(反応母液)
は溶液状になっている必要があるので、操作温度および
使用する洗浄溶媒種ならびにその量を適宜選定して濾過
を行う。
【0041】(洗浄工程)本発明においては分離工程A
に引き続いて、濾過残査として回収されたスルホン酸無
水物を洗浄溶媒により洗浄することが好ましい。洗浄溶
媒による洗浄の方法は、特に限定されず、スルホン酸無
水物と洗浄溶媒とを一旦接触させ、次に洗浄溶媒をスル
ホン酸無水物から取り除く方法がとられる。簡便には例
えばスルホン酸無水物に直接洗浄溶媒をふりかけること
により、洗浄を行うことができる。
【0042】また、大規模に実施する場合にも洗浄方法
については特に限定されないが、例えば粗スルホン酸無
水物を固定床的に擁した容器に洗浄溶媒を下部から入れ
て続いて単に濾過によって抜き出すという方法や、上か
らシャワー状に振りかけて濾過する方法、溶媒と粗スル
ホン酸無水物とを同一の容器内に仕込んで撹拌翼により
スラリー撹拌洗浄してから濾過する方法等が採用され得
る。
【0043】本発明の分離工程A及び洗浄工程により、
スルホン酸無水物種および採択される手法にも多少依存
はするものの、粗スルホン酸無水物中における該スルホ
ン酸無水物の純度が10重量%や20重量%といった極
めて低い値であっても高純度のスルホン酸無水物へと精
製することが可能である。洗浄条件によっては洗浄直後
のスルホン酸無水物に使用した洗浄溶媒が少量付着ない
しは混在していることがあるが、この残留溶媒の除去が
必要な場合には、常温・常圧下で乾燥させることにより
取り除いてもよいし、使用薬品に対して不活性な乾燥ガ
スの流通下に置くことや、加温または減圧により強制的
に蒸発・留去させてもよい。
【0044】本発明における洗浄工程を実施する条件
は、特に規定されないが、温度は通常250℃以下、好
ましくは−100℃から100℃、更に好ましくは0℃
から50℃の範囲で実施される。トリフルオロメタンス
ルホン酸無水物のように融点の低いものを扱う場合に
は、固体となるように精製時の温度を十分低く設定する
のが好ましい。また、この際、用いる洗浄溶媒が精製温
度で液体であるものを適宜選択する。
【0045】洗浄工程における圧力も特に制限されるも
のでなく、スルホン酸無水物や使用する洗浄溶媒の種
類、また採用される手法に応じて、減圧から加圧までの
各種条件下で実施される。この洗浄工程により、最終的
に得られた精製スルホン酸無水物中の洗浄溶媒以外の不
純物は、好ましくは合計0.001〜5重量%含有さ
れ、従って洗浄溶媒を除いた重量当たりのスルホン酸無
水物の純度を95〜99.999%とすることができ
る。
【0046】(反応工程B)本発明の好ましい一実施態
様は、分離工程Aで得られた反応母液中に含まれるスル
ホン酸を、カルボン酸無水物と反応させて混合酸無水物
に変換する工程を有するものである。これにより、反応
工程Aで残存するスルホン酸を効率よく再利用すること
が可能となる。
【0047】(混合工程)本発明の好ましい一実施態様
は、上述の反応母液と洗浄工程後の洗液とを混合するも
のである。混合方法については特に制限はなく、種々の
混合方法を採用しうる。また、洗浄工程における洗浄溶
媒として、原料である混合酸無水物におけるカルボン酸
の酸無水物を使用すると、反応母液と洗液とを混合した
際に、反応母液中に残留していたスルホン酸と洗液中の
カルボン酸とが反応して、混合後速やかに対応する混合
酸無水物となるが、この場合は、混合工程と上記反応工
程Bとは実質的に同じ操作となる。
【0048】(分離工程B)分離工程Aでスルホン酸無
水物が分離された反応母液から、残存している混合酸無
水物が分離され、反応工程Aに再利用される。反応母液
から混合酸無水物を分離するに際しては、通常、反応母
液中に残存するスルホン酸を対応するカルボン酸無水物
と反応させることにより混合酸無水物に変換する。こう
することにより、混合酸無水物をより多く取得して再利
用に回すことができる。
【0049】また、洗浄工程において、洗浄溶媒として
対応するカルボン酸無水物を用いた場合には、反応母液
と洗液とを混合することによって混合酸無水物が得られ
るので、このまま分離工程Bに付すことができる。反応
母液には、通常、カルボン酸、カルボン酸無水物、及び
洗浄溶媒を用いた場合には洗浄溶媒が含まれているの
で、分離工程Bはこれらの化合物と混合酸無水物とを分
離するものであり、典型的にはカルボン酸、カルボン酸
無水物、及び洗浄溶媒を含む留分から、混合酸無水物を
含む留分を分離するものである。この分離方法について
も特に制限はないが、好ましくは蒸留分離が採用され
る。
【0050】蒸留分離を採用した場合、混合酸無水物を
含む留分には、スルホン酸及び/又はスルホン酸無水物
も含有されることがある(以下、スルホン酸、スルホン
酸無水物及び混合酸無水物をあわせて「スルホン酸骨格
含有物質」ということがある)。この際、通常最も沸点
の高いスルホン酸骨格含有物質が分解する温度よりも低
い塔底温度での操作が求められるため、蒸留温度、減圧
度、段数、接触時間、洗浄溶媒種及びカルボン酸種の各
々を適宜選定する必要がある。
【0051】例えば、パラトルエンスルホン酸とアセチ
ルパラトルエンスルホネートとからパラトルエンスルホ
ン酸無水物を合成し、無水酢酸で洗浄精製した場合に
は、蒸留温度を70℃以下程度とし、酢酸と無水酢酸と
を留出させて、塔底からはアセチルパラトルエンスルホ
ネートを主成分とするパラトルエンスルホン酸骨格含有
物質を抜き出す。この場合、アセチルパラトルエンスル
ホネートを主成分とするパラトルエンスルホン酸骨格含
有物質は再利用可能であるし、酢酸と無水酢酸とについ
ても再度蒸留分離等をすることによって無水酢酸を洗浄
溶媒として再利用することが出来る。
【0052】(再利用工程A)分離工程Bにて分離した
スルホン酸・カルボン酸混合酸無水物を応工程Aに循環
させて再利用することができる。さらに、必要に応じて
特に高沸点の微量不純物の溜まり込みを回避するための
不純物除去の工程を採用することも好ましい。その方法
としては、たとえば、再利用工程Aにおける回収液の少
なくとも一部を充填カラムや膜を通して、不純物のみを
選択的に吸着除去したり、沸点差や融点差を利用して蒸
留ないしは晶析分離したりする方法が挙げられる。さら
には、回収液の一部をそのままスルホン酸骨格含有物質
とともに捨て去る方法も好ましい。回収液の一部を捨て
去る場合の廃棄量としては、回収液の10%以下とする
のが好ましく、5%以下がより好ましく、さらに好まし
くは2%以下とする。さらに、必要に応じて特に高沸点
の微量不純物の溜まり込みを回避するための不純物除去
の工程を採用することも好ましい。
【0053】一方、カルボン酸、カルボン酸無水物、洗
浄溶媒を含む留分は、それぞれを再利用するために、さ
らに精留し分離することが好ましい。カルボン酸無水物
は、反応工程Bに再利用することが出来る。また、カル
ボン酸無水物に由来するカルボン酸と、混合酸無水物に
由来するカルボン酸とは通常同一であることが多いの
で、ここで分離されたカルボン酸無水物は、スルホン酸
無水物の洗浄溶媒としても用いることが出来る。ここで
分離された洗浄溶媒は、洗浄工程に再利用することが出
来る。
【0054】本発明の製造方法の別の好ましい一実施態
様としては、上述の一連の工程中、減圧操作を行う工程
を除く全工程について、各工程に悪影響を及ぼすことの
ない乾燥した不活性ガス存在下で実施することである。
ただし、使用する原料と生成物の組み合わせ上、酸素、
水分等の影響を気にしなくともよい場合には、開放系で
の操作も可能である。
【0055】また、全工程を通して不活性な固体を系中
に共存させることも可能である。本発明の製造方法を実
施する形式は特に限定されるものではなく、回分形式、
連続流通形式のいずれでも実施することができる。反応
器等の形式についても特に制約はなく、1槽あるいは2
槽以上の連続した攪拌槽からなる反応器や、チューブラ
ー型反応器等、一般的な反応器を使用することができ
る。本発明方法では酸を用いるため、反応器材質は耐腐
食性材質のものを用いるのが好ましく、例えばステンレ
ス鋼、ハステロイ、モネル、インコネル、チタン、チタ
ン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニッケル、
ニッケル合金、タンタル、又はフッ素樹脂、各種ガラス
を内側にコーテイングした材料などが例示できる。
【0056】反応で使用されるスルホン酸、混合酸無水
物、反応溶媒、流通ガス等は予め充分な水分除去を施し
た後に反応に供するのが好ましい。次に、本発明方法に
かかる製造プロセスの好ましい一実施態様につき図1を
参照しながら説明する。本例では、スルホン酸としてパ
ラトルエンスルホン酸(PTSと記載する)を、混合酸
無水物としてアセチルパラトルエンスルホネート(PT
SAcと記載する)を、洗浄溶媒として無水酢酸(Ac
2Oと記載する)を使用している。目的生成物はパラト
ルエンスルホン酸無水物(PTSAと記載する)であ
る。
【0057】ちなみに、本例においては濾過に先立って
の粉砕工程は省略してある。また、晶析母液と洗液との
混合によって反応直後に残留しているパラトルエンスル
ホン酸が過剰の無水酢酸と接触することとなり、25℃
という低温であってもそのうちの大部分が速やかにアセ
チルパラトルエンスルホネートへと変換される。図1の
各工程につき説明すると次の通りである。
【0058】
【表1】(1):反応工程A;PTSとPTSAcとを
混合し、PTSAを合成する工程 (2A):分離工程A;生成したPTSAを晶析分離す
る工程 (2B):洗浄工程;分離したPTSAをAc2Oにて
濯ぎ洗いする工程(この(2B)の洗浄工程と(2A)
の分離工程Aとは同一の装置であってもよい。) (2D):混合工程(前記の反応工程Bを兼ねる);晶
析母液と洗浄後の洗液とを混合し、残留PTSの全て又
は一部をPTSAcに変換する工程 (3):分離工程B;(2D)混合工程の混合液からA
cOH、Ac2O、PTSAc等それぞれを蒸留分離す
る工程(分離工程Bについては、単一の蒸留塔を用いて
精留により分離してもよいし、複数の蒸留塔を用いて段
階的に分離してもよい。) (図1に示した例では2つの蒸留塔を用いて、次のよう
に構成している。
【0059】(3A)蒸留工程A;反応工程Bにて得ら
れた反応液から、酢酸及び無水酢酸を含む留分と、アセ
チルパラトルエンスルホネートを含む留分とに蒸留分離
する工程 (3B)蒸留工程B;蒸留工程Aにて得られた酢酸及び
無水酢酸を含む留分から、酢酸と無水酢酸とを蒸留分離
する工程) (4):再利用工程A;(3A)蒸留工程Aにて蒸留分
離したPTSAc等のパラトルエンスルホン酸骨格含有
物質を回収し反応工程Aにて再利用する工程(この再利
用工程Aでは、次の除去工程を組み込んでいる。
【0060】(5):除去工程;高沸点の微量不純物を
除去する工程(この場合は、回収液の一部をそのままP
TSAc等とともに捨て去る方法を採用している。))
【0061】
【実施例】次ぎに実施例により本発明の具体的態様をさ
らに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限
り、以下の実施例によって限定されるものではない。 実施例1 窒素ガスにて置換した反応器にパラトルエンスルホン酸
(1.01mmol)とアセチルパラトルエンスルホネ
ート(4.00mmol)とを仕込む。60℃、常圧に
て30分攪拌することにより得られる生成物は、パラト
ルエンスルホン酸無水物が0.60mmol、パラトル
エンスルホン酸が0.41mmol、アセチルパラトル
エンスルホネートが3.4mmol、酢酸が0.60m
molの混合物である。60℃のまま濾過した後、合計
16.01mmolの無水酢酸で洗浄することによって
0.5mmolの純粋なパラトルエンスルホン酸無水物
の結晶を得る。濾過の母液と無水酢酸による洗浄の洗液
とを混合させると、残留していたパラトルエンスルホン
酸は速やかにアセチルパラトルエンスルホネートへと変
換され、内容物は、パラトルエンスルホン酸無水物が
0.10mmol、アセチルパラトルエンスルホネート
が3.81mmol、酢酸が1.01mmol、無水酢
酸が15.60mmolの混合物となる。また、パラト
ルエンスルホン酸無水物も過剰の無水酢酸と接触させて
加熱することにより、アセチルパラトルエンスルホネー
トへと変換可能であることが判っているので、得られた
混合物を60℃にて4時間保持する。これにより、内容
物は、アセチルパラトルエンスルホネートが4.01m
mol、酢酸が1.01mmol、無水酢酸が15.5
0mmolの混合物となる。60℃のまま100Pa程
度まで減圧することにより、酢酸と無水酢酸とを蒸留分
離し、さらに留去物を分離して無水酢酸15.50mm
olは新たに得られるパラトルエンスルホン酸無水物の
洗浄用に供される。
【0062】また、塔底から抜き出される4.01mm
olのアセチルパラトルエンスルホネートは極微量の不
純物を含有しているため、再利用に際しては0.01m
mol分を系外に捨て去る。残り4.00mmol分の
アセチルパラトルエンスルホネートは反応に再利用す
る。
【0063】この反応系によれば、常に4.00mmo
lのアセチルパラトルエンスルホネートと、15.50
mmolの無水酢酸が再利用されることとなるので、2
サイクル目からは、都度1.01mmolのパラトルエ
ンスルホン酸と0.51mmolの無水酢酸をそれぞれ
新たに系内に添加し、0.50mmolのパラトルエン
スルホン酸無水物と、微量不純物を含む0.01mmo
lのアセチルパラトルエンスルホネート、ならびに1.
01mmolの酢酸を系外に抜き出す操作を各々連続的
ないしは断続的に行えばよい。
【0064】参考例1 乾燥機で乾燥した20mlのシュレンク管を乾燥窒素ガ
スで置換した後、パラトルエンスルホン酸0.3g
(1.8mmol)とアセチルパラトルエンスルホネー
ト0.8g(3.6mmol)とを仕込んで窒素ガス雰
囲気下、オイルバスにて60℃まで加温し、30分攪拌
した。
【0065】この温度、この組成での反応では生成した
パラトルエンスルホン酸無水物のうちの一部が反応液中
で結晶化した。その後、25℃に冷却して得られた反応
生成物を窒素ガス下にてCDCl3に溶解させ、1H−N
MRで分析した。その結果、得られた粗パラトルエンス
ルホン酸無水物の収率は仕込んだアセチルパラトルエン
スルホネートに対して22%であった。
【0066】また、このときの組成比は、PTSA:P
TSAc:PTS:Ac2O:AcOH=1.5:4.
8:2.2:0.2:1.4であった。次に、該粗パラ
トルエンスルホン酸無水物に乾燥窒素ガス雰囲気下にて
無水酢酸を0.4g(3.6mmol)加えて、25℃
にて10分間攪拌してスラリー状にし、その後、乾燥空
気雰囲気下、25℃にて減圧濾過を行って濾過残査に上
から1.6g(16.0mmol)の無水酢酸を振りか
けてリンス洗浄を行った。得られたケーキは25℃、約
100Paにて2.5時間減圧乾燥した。
【0067】最終的に得られた精製パラトルエンスルホ
ン酸無水物(白色)を窒素ガス下にてCDCl3に溶解
させ25℃にて1H−NMRで分析した。その結果、パ
ラトルエンスルホン酸無水物の収率は当初に仕込んだア
セチルパラトルエンスルホネートから換算して13%で
あり、パラトルエンスルホン酸無水物の重量百分率(純
度)は99.6%であった。また、このとき不純物とし
ては、アセチルパラトルエンスルホネートが0.3%、
酢酸が0.1%含有されていた。
【0068】さらに、25℃における洗液中の組成比
は、PTSA:PTSAc:PTS:Ac2O:AcO
H=0.8:8.2:0.3:32.9:10.3であ
り、微量不純物によって洗液は濃い緑褐色を呈してい
た。
【0069】
【発明の効果】本発明方法によれば、スルホン酸から容
易にかつ経済的にスルホン酸無水物を製造することが出
来るので、工業的に有利な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法にかかる製造プロセスの一例を示す
プロセス図である。
【符号の説明】
1 反応工程A 2A 分離工程A 2B 洗浄工程 2D 混合工程 3A 蒸留工程A 3B 蒸留工程B 4 再利用工程A 5 除去工程

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)スルホン酸と、スルホン酸とカル
    ボン酸との混合酸無水物(以下、スルホン酸・カルボン
    酸混合酸無水物という)とを反応させてスルホン酸無水
    物を得る反応工程A、(2)反応生成混合液を、生成し
    たスルホン酸無水物と反応母液とに分離する分離工程
    A、(3)スルホン酸無水物が分離された反応母液か
    ら、スルホン酸・カルボン酸混合酸無水物を分離する分
    離工程B、及び(4)分離工程Bにて分離したスルホン
    酸・カルボン酸混合酸無水物を反応工程Aに再利用する
    再利用工程A、を含むスルホン酸無水物の製造方法にお
    いて、系外から反応工程Aへ加えられるスルホン酸の量
    に対する再利用工程Aから反応工程Aへ加えられるスル
    ホン酸・カルボン酸混合酸無水物の量の比(モル/モ
    ル)が0.5以上であることを特徴とするスルホン酸無
    水物の製造方法。
  2. 【請求項2】 反応工程Aにおける反応温度が、250
    ℃以下である、請求項1に記載のスルホン酸無水物の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 反応工程Aにおいて、生成するカルボン
    酸を減圧下に留去しながら反応を行う、請求項1又は2
    に記載のスルホン酸無水物の製造方法。
  4. 【請求項4】 反応工程Aにおいて、反応系に当該反応
    に対して不活性なガスを流通させることにより、生成す
    るカルボン酸を同伴留去しながら反応を行う、請求項1
    〜3のいずれかに記載のスルホン酸無水物の製造方法。
  5. 【請求項5】 反応工程Aにおいて、基質であるスルホ
    ン酸と、スルホン酸・カルボン酸混合酸無水物とを無溶
    媒で反応させる、請求項1〜4のいずれかに記載のスル
    ホン酸無水物の製造方法。
  6. 【請求項6】 反応工程Aにおいて、生成するスルホン
    酸無水物を晶析させる、請求項1〜5のいずれかに記載
    のスルホン酸無水物の製造方法。
  7. 【請求項7】 スルホン酸と、スルホン酸・カルボン酸
    混合酸無水物との反応原料混合物の融解点が250℃以
    下である、請求項1〜6のいずれかに記載のスルホン酸
    無水物の製造方法。
  8. 【請求項8】 分離工程Aにて分離したスルホン酸無水
    物を洗浄溶媒にて洗浄する洗浄工程を含む、請求項1〜
    7のいずれかに記載のスルホン酸無水物の製造方法。
  9. 【請求項9】 分離工程Aにて得られた反応母液にカル
    ボン酸無水物を混合し、反応母液中のスルホン酸との反
    応によりスルホン酸・カルボン酸混合酸無水物を得る反
    応工程Bを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のスル
    ホン酸無水物の製造方法。
  10. 【請求項10】 洗浄工程にて得られたスルホン酸無水
    物を洗浄した後の洗液と、分離工程Aにて得られた反応
    母液とを混合する混合工程を含む、請求項1〜9のいず
    れかに記載のスルホン酸無水物の製造方法。
  11. 【請求項11】 分離工程Aの後に、反応母液からカル
    ボン酸及び/又はカルボン酸無水物を蒸留分離すること
    によってスルホン酸・カルボン酸混合酸無水物を分離す
    る分離工程Bを含む、請求項1〜10のいずれかに記載
    のスルホン酸無水物の製造方法。
  12. 【請求項12】 分離工程Bにて蒸留分離したカルボン
    酸無水物を反応工程Bに再利用する、請求項11に記載
    のスルホン酸無水物の製造方法。
  13. 【請求項13】 分離工程Bにて蒸留分離した洗浄溶媒
    を洗浄工程に再利用する、請求項11に記載のスルホン
    酸無水物の製造方法。
  14. 【請求項14】 カルボン酸が酢酸である、請求項3又
    は4に記載のスルホン酸無水物の製造方法。
  15. 【請求項15】 洗浄溶媒が無水酢酸である、請求項8
    に記載のスルホン酸無水物の製造方法。
  16. 【請求項16】 スルホン酸が、炭素数1〜10のアル
    カンスルホン酸又は炭素数6〜10のアレーンスルホン
    酸である、請求項1〜15のいずれかに記載のスルホン
    酸無水物の製造方法。
  17. 【請求項17】 請求項1〜16のいずれかに記載のス
    ルホン酸無水物の製造方法により製造され、精製された
    スルホン酸無水物であって、残留する洗浄溶媒を除いた
    重量当たりのスルホン酸無水物純度が95〜99.99
    9%であるスルホン酸無水物。
  18. 【請求項18】 (1)パラトルエンスルホン酸と、ア
    セチルパラトルエンスルホネートとを反応させてパラト
    ルエンスルホン酸無水物を得る反応工程A、(2A)反
    応生成混合液を、晶析分離により、生成したパラトルエ
    ンスルホン酸無水物と晶析母液とに分離する分離工程
    A、(2B)分離したパラトルエンスルホン酸無水物を
    無水酢酸にて濯ぎ洗いする洗浄工程、(2D)晶析母液
    と洗浄工程における洗浄後の無水酢酸とを混合し、晶析
    母液中のパラトルエンスルホン酸と無水酢酸とを反応さ
    せてアセチルパラトルエンスルホネートを得る反応工程
    B、(3A)反応工程Bにて得られた反応生成液を、酢
    酸及び無水酢酸を含む留分と、アセチルパラトルエンス
    ルホネートを含む留分とに蒸留分離する蒸留工程A、及
    び(4)蒸留工程Aにて分離されたアセチルパラトルエ
    ンスルホネートを反応工程Aに再利用する再利用工程
    A、を含むスルホン酸無水物の製造方法において、系外
    から反応工程Aへ加えられるスルホン酸の量に対する再
    利用工程Aから反応工程Aへ加えられるスルホン酸・カ
    ルボン酸混合酸無水物の量の比(モル/モル)が0.5
    以上であることを特徴とするスルホン酸無水物の製造方
    法。
  19. 【請求項19】 蒸留工程Aにて得られた酢酸及び無水
    酢酸を含む留分から、酢酸と無水酢酸とを蒸留分離する
    蒸留工程Bを含む、請求項18に記載のスルホン酸無水
    物の製造方法。
  20. 【請求項20】 蒸留工程Bにて蒸留分離したカルボン
    酸無水物を洗浄工程に再利用する再利用工程Bを含む、
    請求項19に記載のスルホン酸無水物の製造方法。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7329779B2 (en) * 2005-04-06 2008-02-12 Lanxess Deutschland Gmbh Process for preparing optionally substituted arylsulphonic anhydrides
JP2009544670A (ja) * 2006-07-27 2009-12-17 ロデイア・オペラシヨン スルホン酸無水物の調製方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7329779B2 (en) * 2005-04-06 2008-02-12 Lanxess Deutschland Gmbh Process for preparing optionally substituted arylsulphonic anhydrides
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