JP2003276355A - 感熱孔版印刷用原紙 - Google Patents

感熱孔版印刷用原紙

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JP2003276355A JP2002078946A JP2002078946A JP2003276355A JP 2003276355 A JP2003276355 A JP 2003276355A JP 2002078946 A JP2002078946 A JP 2002078946A JP 2002078946 A JP2002078946 A JP 2002078946A JP 2003276355 A JP2003276355 A JP 2003276355A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 印刷機上での搬送時のしわが生じることがな
く、サーマルヘッドによる穿孔性に優れ、しかも印刷立
上り性にも優れた感熱孔版印刷用原紙を提供する。 【解決手段】 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方
の面上に多孔性樹脂膜を有し、更にその表面に少なくと
も1層以上の多孔性繊維膜を積層してなる感熱孔版印刷
用原紙において、前記原紙のヨコ方向の伸度2%におけ
る引張強度が100〜270N/mであり、前記熱可塑
性樹脂フィルムのヨコ方向の熱収縮率(100℃、3
分)が3〜15%であることを特徴とする感熱孔版印刷
用原紙。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は感熱孔版印刷用原紙
に関し、詳しくは熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂
膜を形成しその表面に多孔性繊維膜を設けた感熱孔版印
刷用原紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、熱可塑性フィルムにインキ通過性
の支持体として、天然繊維、合成繊維の単独又は混抄し
た多孔性薄葉紙を接着剤で貼り合わせた感熱孔版原紙が
用いられている。しかし、こうした繊維から成る多孔性
薄葉紙を支持体として用いた感熱孔版印刷用原紙は、次
のような問題点がある。 (1)接着剤を用い多孔性薄葉紙とフィルムを貼り合わ
せることにより、接着剤が多孔性薄葉紙の繊維間に鳥の
水掻きのように集積し、その部分がサーマルヘッドによ
る穿孔が行われにくくなり、インキの通過が妨げられ印
刷ムラが発生しやすくなる。 (2)多孔性薄葉紙の繊維自体がインキの通過を妨げ、
印刷ムラが発生しやすくなる。 (3)多孔性薄葉紙の繊維目によりフィルム面の平滑性
が低下し、サーマルヘッドとの密着が悪く未穿孔部が出
来るため印刷ムラが発生する。
【0003】こうした問題を改善するためにいくつかの
提案がなされているが、未だ満足するものは得られてい
ない。例えば、特開平3−193445号公報に、多孔
性支持体として、繊度1デニール以下の合成繊維から成
る薄葉紙を用いることが提案されているが前記の問題解
決には十分とはいえない。特開昭62−198459号
公報に、熱可塑性フィルムに実質的に閉じた形状の放射
線硬化型樹脂パターンをグラビア、オフセット、フレキ
ソ等の印刷により多孔性支持体を形成する方法が提案さ
れている。しかし、印刷法では樹脂パターンの線幅を5
0μm以下にすることは困難であり、印刷部が穿孔でき
ず、印刷ムラとなる。
【0004】また、特開平3−240596号公報に
は、水分散性ポリマーとコロイダルシリカから成る分散
液を熱可塑性フィルムの表面に塗布、乾燥し、多孔性支
持体を設け、粘度の低いインキジェット用インキで印刷
する方法が提案されている。しかし、この方法では多孔
層の開孔径が小さく、従来より用いられている孔版用印
刷インキではインキの通過が悪く、十分な印刷濃度が得
られない。一方、特開昭54−33117号公報には、
多孔性支持体を用いない実質的に熱可塑性フィルムのみ
から成る感熱孔版印刷用原紙が提案されている。この原
紙は熱収縮率が高く、フィルム厚み3μm以下のフィル
ムではサーマルヘッドによる穿孔性も良好で印刷品質は
優れているが、腰が弱く印刷機での搬送が出来ないとい
う問題を有する。また搬送性をよくするため厚いフィル
ムを使用するとサーマルヘッドによる穿孔性が低下し、
印刷ムラが発生する。
【0005】本発明者等は先に熱可塑性フィルムの片面
に多孔性樹脂膜を設けた感熱孔版マスターを提案した
(特開平8−332785号公報、特願平11−235
885号公報)。しかしながら、樹脂膜のみでコシ(S
tiffness)を強くする事は困難であり、印刷機
上で搬送時にしわが入る等の問題を有する。
【0006】この問題を解決すべく、本発明者等はその
後に特開平10−147075号公報にて、熱可塑性樹
脂フィルムの一方の面上に樹脂からなる多孔性樹脂膜を
有し、更にその表面に繊維状物質からなる多孔性繊維膜
を積層してなる感熱孔版印刷用原紙を提案した。しかし
ながらこの原紙は、該多孔性樹脂膜は泡沫を利用して形
成されたものであり、感熱フィルムに直接多孔性薄葉紙
を接着にて接着した原紙と比べ、その間に強度の弱い多
孔性樹脂膜を介しているために、製版時、特にベタの多
い画像がある場合にはサーマルヘッドによる熱印加時の
フィルムの収縮力に打勝つ事が出来ず、原紙がしわにな
ってしまう問題がある。
【0007】更に、副走査方向(原紙の進行方向:タテ
方向)のしわに関しては製版時に原紙に一定の張力を加
える事によって防止する事は可能であるが(特開平6−
198833号公報:フィルムのみからなる原紙のしわ
防止参照)、主走査方向(原紙の幅方向:ヨコ方向)に
張力を加えながら製版する事は困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、印刷機上で
の搬送時のしわが生じることがなく、サーマルヘッドに
よる穿孔性に優れ、しかも印刷立上り性にも優れた感熱
孔版印刷用原紙を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような
従来技術の実状に鑑みてなされたものである。即ち本発
明によれば、第一に、熱可塑性樹脂フィルムの少なくと
も一方の面上に多孔性樹脂膜を有し、更にその表面に少
なくとも1層以上の多孔性繊維膜を積層してなる感熱孔
版印刷用原紙において、前記原紙のヨコ方向の伸度2%
における引張強度が100〜270N/mであり、前記
熱可塑性樹脂フィルムのヨコ方向の熱収縮率(100
℃、3分)が3〜15%であることを特徴とする感熱孔
版印刷用原紙が提供される。また本発明によれば、第二
に、前記原紙の熱可塑性樹脂フィルム面の平滑度(王研
式平滑度測定による)が10000以上であることを特
徴とする上記第一の感熱孔版印刷用原紙が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳細に説明す
る。本発明において、感熱孔版印刷用原紙のヨコ方向の
伸度2%における引張強度が100〜270N/mであ
ることが必要である。該原紙のヨコ方向の伸度2%にお
ける引張強度が100N/mに満たない場合は、フィル
ムの収縮力によって原紙も共に変形し、しわが発生す
る。一方該引張強度が270N/mより大きくなると、
印刷立上りが悪化したり、排版時にマスタと共に破棄さ
れるインク量(排版インク量)が増加する為に好ましく
ない。
【0011】本発明において、感熱孔版印刷用原紙のヨ
コ方向の伸度2%における引張強度を100〜270N
/mとするには、例えば、素材によっても異なるが4〜
8g/m2程度の比較的低坪量からなる多孔性繊維膜を
用いることや、また多孔性繊維膜製造時の条件として繊
維配向性のコントロールを行うこと等で所望の強度を得
ることが可能である。
【0012】なお、原紙の前記引張強度を前記範囲にす
る手段としては、フィルムの強度、多孔膜の強度、多孔
性繊維膜の強度を向上、或いは調整することが選択肢と
して挙げられるが、フィルムの強度を上げる方向性(厚
さやフィルム物性)は製版感度を落とす方向であり現実
的ではない。また、多孔膜はその構造上強度が弱いため
に多孔膜自身の強度の大きな向上は望めない。さらに、
多孔性繊維膜の強度を上げる手段としては多孔性繊維膜
の材料自体の強度を上げる(例えば金属製)ことが考え
られるが、孔版印刷用原紙は主としてロール状で供給さ
れ一版毎にカッター等の切断手段にて所定の長さに切断
して使用されるために、材料自体の強度を上げてしまう
と切断手段の耐久性が低下する。そこで、通常使用され
ている多孔性支持体(多孔性繊維膜)は坪量の範囲が主
として8〜15g/m2であり引張強度が強いことか
ら、坪量にて強度を調整する方法等が好ましい。
【0013】また本発明において、感熱孔版印刷用原紙
の熱可塑性のヨコ方向の熱収縮率(100℃、3分)が
3〜15%以下であることが必要である。該フィルムの
ヨコ方向の該収縮率を15%以下にすることによって、
少ない引張強度でも原紙しわを防止することができ、印
刷立上りや排版インク量が良好な原紙を得ることができ
る。一方該収縮率が3%に満たない場合は、穿孔性が悪
くなり良好な画像が得られない。
【0014】本発明において、感熱孔版印刷用原紙の熱
可塑性フィルムのヨコ方向の熱収縮率(100℃、3
分)を3〜15%とするには、例えば、特開昭63−3
1292号公報にも記載されているように、延伸時の延
伸倍率の調整、二軸延伸後の熱処理条件を調整すること
で行うことができる。熱処理条件を緩くすることで収縮
率を大きくすることができ、例えば熱処理温度を低くす
ることで収縮率を大きくすることができる。
【0015】また本発明において、感熱孔版印刷用原紙
の多孔性樹脂膜側と反対側の熱可塑性フィルム面の平滑
度(王研式平滑度測定による)が10000秒以上であ
ることが好ましい。
【0016】該平滑度が10000秒未満であると、マ
スタ表面の凹凸がフィルムの熱収縮による原紙のしわを
助長し、平滑度が10000以上のものと比べてしわが
出易くなってしまう。
【0017】該フィルム面の平滑度を10000秒以上
とするには、例えば、多孔性樹脂膜をフィルムに塗布後
乾燥する過程において乾燥炉内までの搬送方法として、
ロール上にベルトを取り付け搬送すること等によって達
成される。これによれば、上方から熱風により乾燥され
形成した多孔性樹脂膜は熱可塑性樹脂フィルム全面がベ
ルトにより支持されているために上方から熱風を吹きつ
けてもばたつきが少ないため、多孔性樹脂膜のシワが少
なく、熱可塑性フィルムの自由表面側の面の平滑度を高
くすることが可能である。また、多孔性繊維膜とのラミ
ネートにおいて、ラミネート圧を最小限にすることによ
っても平滑性を高く保つことができる。
【0018】次に、本発明の感熱孔版印刷用原紙の各構
成材料等を説明する。 <熱可塑性フィルム>本発明における熱可塑性樹脂フィ
ルムは、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリプロピ
レン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリ
デンまたはそれらの共重合体など従来公知のものが用い
られるが、穿孔感度の点からポリエステルフィルムが特
に好ましく用いられる。ポリエステルフィルムに用いら
れるポリエステルとして好ましくは、ポリエチレンテレ
フタレート、エチレンテレフタレートとエチレンイソフ
タレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレート
とシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合
体等を挙げる事ができる。穿孔感度を向上する為に特に
好ましくは、エチレンテレフタレートとエチレンイソフ
タレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレート
とシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合
体等を挙げる事ができる。
【0019】本発明における熱可塑性樹脂フィルムには
必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線
吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワ
ックス等の有機滑剤あるいはポリシロキサン等の消泡剤
等を配合する事ができる。さらには必要に応じて易滑性
を付与する事もできる。易滑性付与方法としては特に制
限はないが、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭
酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式あるいは乾式シ
リカなどの無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成
成分とする有機樹脂粒子等を配合する方法、内部粒子に
よる方法、界面活性剤を塗布する方法等がある。
【0020】本発明における熱可塑性樹脂フィルムの厚
さは、通常好ましくは0.5〜5.0μmであり、更に
好ましくは0.5〜3.0μmである。厚さが5.0μ
mを超えると穿孔性を低下する場合があり、0.5μm
より薄いと、多孔性樹脂膜塗布時の搬送性が困難となり
好ましくない。
【0021】本発明に用いる感熱孔版印刷用原紙におい
ては、熱可塑性樹脂フィルムの表面にサーマルヘッドと
のスティック防止のためのスティック防止層を設けるこ
とができる。この場合、使用されるスティック防止層を
構成するスティック防止剤としては、従来の感熱孔版印
刷用原紙で一般的に使用されているものが使用できる。
例えばシリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、リン酸エ
ステル系界面活性剤等が使用できる。
【0022】<多孔性樹脂膜>本発明における多孔性樹
脂膜は、膜の内部及び表面に多数の空隙を持っ構造を有
するものであれば良く、該空隙がインキの通過性の点か
ら多孔性膜内において厚さ方向に連続構造であるものが
望ましい。本発明において、多孔性樹脂膜の平均孔径は
一般に2〜50μm、望ましくは5〜30μmである。
平均孔径が2μmに満たない場合には、インキ通過性が
悪い。そのため、十分なインキ通過量を得るために低粘
度インキを用いれば、画像にじみや印刷中に印刷ドラム
の側部や巻装されているマスターの後端から印刷インキ
がしみ出す現象が発生する。また、多孔質樹脂膜内の空
膜率が低くなることが多く、サーマルヘッドによる穿孔
を阻害しやすくなる。一方、平均孔径が50μmを越え
る場合には、多孔性樹脂膜によるインキの抑制効果が低
くなり、印刷時に印刷ドラムとフィルムの間のインキが
過剰に押し出され、裏汚れやにじみ等の不具合が発生す
る。即ち、平均孔径は小さすぎても大きすぎても良好な
印刷品質が得られない。特に、多孔性樹脂膜内の空隙の
平均孔径が20μm以下である場合、多孔性樹脂膜層が
厚い程印刷インキが通りにくくなるので、この層の厚み
によってインキの印刷用紙への転写量を制御することが
できる。そして、層の厚さが不均一であると印刷むらを
生じることがあるので、厚みは均一であることが望まし
い。
【0023】本発明の多孔性樹脂膜の厚みは、通常2〜
100μm、望ましくは5〜50μm以下である。5μ
mに満たない場合は、サーマルヘッドによる穿孔後に穿
孔部の背後に多孔性樹脂膜が残りにくく、インキ転写量
が制御されずに印刷物の裏汚れが発生しやすい。また、
多孔性樹脂膜のインキ転写量抑制効果は膜が厚いほど大
きく、印刷時の紙へのインキ転写量は多孔性樹脂膜の厚
みによって調節できる。
【0024】多孔性樹脂膜の密度は、通常0.01〜1
g/cm3で、望ましくは0.1〜0.7/cm3であ
る。密度が0.01g/cm3未満であると膜の強度が
不足し、また膜自体も壊れやすい。多孔性樹脂膜の付着
量は、通常0.1〜25g/m2で、望ましくは0.5
〜11g/m2が望ましい。付着量の増大はインキの通
過を妨げて画質を悪くし、0.1g/m2未満ではイン
キ転写量の制御が困難となり、逆に25g/m2を超え
るとインキの通過を妨げて画像を悪くする。
【0025】多孔性樹脂膜を構成する樹脂材料として
は、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン
共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ス
チレン−アクリロニトリル共重合体等のようなビニル系
樹脂、ポリブチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリフ
ェニレンオキサイド、ポリ(メタ)アクリル酸エステ
ル、ポリカーボネート、ポリウレタン、アセチルセルロ
ース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピルセ
ルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。これら
の樹脂は2種以上を混合して用いても良い。
【0026】なお、多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の
大きさ等を調節するために、多孔性樹脂膜中に必要に応
じてフィラーなどの添加剤を添加することが望ましい。
ここにおいてフィラーとは顔料、粉体や繊維状物質も含
まれる概念である。その中で特に針状のフィラーが好ま
しい。その具体例としては、ケイ酸マグネシウム、セピ
オライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノ
トライト、石膏繊維等の鉱物系針状フィラー、非酸化物
系針状ウイスカ、酸化物系ウイスカ、複酸化物系ウイス
カ等の人工鉱物系針状フィラー、マイカ、ガラスフレー
ク、タルク等の板状フィラーが挙られる。顔料は無機の
みならず有機の顔料、あるいはポリ酢酸ビニル、ポリ塩
化ビニル、ポリアクリル酸メチル等の有機ポリマー粒
子、そして酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、
シリカ等である。具体的には松本油脂製薬株式会社のマ
イクロカプセル、マツモトマイクロスフィアーも有効に
利用できる。
【0027】これら添加剤の添加量としては好ましくは
樹脂に対して5〜200重量%である。5重量%未満で
は添加剤を加えることによる曲げ剛度が高くならない。
逆に200重量%を超えるとフィルムとの接着性が悪く
なる。
【0028】本発明の多孔性樹脂膜には、本発明の効果
を阻害しない範曲内で帯電防止剤、スティック防止剤、
界面活性剤、防腐剤、消泡剤などを併用することができ
る。
【0029】<多孔性樹脂膜形成方法>次に、本発明の
感熱孔版印刷用原紙の多孔性樹脂膜形成方法について説
明する。第1の多孔性樹脂膜の形成方法は、樹脂を良溶
媒と貧溶媒との混合溶媒中に溶解及び/又は分散して得
た塗工液を塗布し乾燥過程で多孔質膜を形成するもので
ある。この時、良溶媒は相対的に貧溶媒より低温で蒸発
しやすい組み合わせが必要である。良溶媒と貧溶媒をそ
れぞれ一種ずつ用いる場合には、良溶媒の沸点は相対的
に貧溶媒の沸点より低くなければならない。良溶媒と貧
溶媒の選定は任意であるが、一般には沸点差が15〜4
0℃である場合に所望の特性を持つ多孔性樹脂膜が形成
されやすい。沸点差が10℃未満の場合には、両溶媒の
蒸発時間差が小さく、形成される膜が多孔性構造になリ
にくい。貧溶媒の沸点が高すぎる場合には、乾燥に時間
がかかり生産性に劣るため、貧溶媒の沸点は150℃以
下であることが望ましい。
【0030】塗布液中の樹脂濃度は使用する材料によっ
て異なるが5〜30重量%が好ましい。5重量%未満で
は開口径が大きくなりすぎたり、多孔性樹脂膜の厚みの
むらが生じやすい。逆に、30重量%を超えると多孔性
樹脂膜が形成されにくく、あるいは形成されても孔径が
小さくなり所望の特性は得られにくい。
【0031】多孔性樹脂膜の平均孔径の大きさは雰囲気
中の貧溶媒の影響を受け、一般にその良溶媒に対する割
合が高いほど凝結量が多くなり、平均孔径は大きくな
る。貧溶媒の添加比率は樹脂、溶媒により異なるので試
験により適宜決定する必要がある。一般的に、貧溶媒の
添加量が多くなるに従い多孔質樹脂膜の孔径が大きくな
る。貧溶媒の添加量が多すぎると樹脂が析出し塗布液が
不安定になる。
【0032】第2の多孔性樹脂膜の形成方法としては、
特開平11−235885号公報に開示されている、W
/O型エマルションを主体とする流動体を薄層上に塗
布、乾燥して形成させるものであり、主として水の部分
が乾燥後インクが通過する孔となり、溶剤中の樹脂(フ
ィラー、乳化剤等の添加物が含まれていてもよい)が構
造体となる方法である。この方法においても多孔性樹脂
膜の形成、強度、孔径の大きさ、コシ等を調節するため
に、多孔性樹脂膜中に必要に応じて前記フィラーなどの
添加剤を添加することができる。その中で特に針状、板
状、もしくは繊維状のフィラーが好ましい。
【0033】W/O型エマルションの形成には比較的親
油性の強い、HLB(Hydrophiric−Lyo
phiricBaance)が4〜6の界面活性剤が有
効であるが、水層にもHLBが8〜20の界面活性剤を
使用するとより安定で均一なW/Oエマルションが得ら
れる。高分子界面活性剤の使用も、より安定で均一なエ
マルションを得る方法の一つである。また水系にはポリ
ビニルアルコール、ポリアクリル酸等の増粘剤の添加が
エマルションの安定化に有効である。尚、本発明の多孔
性樹脂膜の形成方法は上記に例示した方法に限定される
ものではない。
【0034】本発明の多孔性樹脂膜形成用塗布液の熱可
塑性樹脂フィルムヘの塗布方式としてはブレード、トラ
ンスフアーロール、ワイヤーバー、リバースロール、グ
ラビア、ダイ等の従来一般的に用いられている塗布方式
が使用でき、特に限定されるものではない。
【0035】<多孔性繊維膜及び接着方法>本発明に使
用される多孔性繊維膜(補強材)としては、多孔性薄葉
紙(典具帖)、多孔質の合成繊維抄造紙、各種織布、不
織布などを挙げることができる。多孔性薄葉紙として
は、こうぞ、みつまた、マニラ麻、亜麻などの天然繊
維、レーヨン、ビニロン、ポリエステルなどの化学繊維
の単独あるいは適当な割合で混合したものが用いられ
る。特に坪量3〜14g/m2、密度0.1〜0.8g
/ml、透気度0.5〜12秒/96枚(測定はいずれ
もJIS法による)の特性をもつ多孔性薄葉紙が好まし
い。
【0036】本発明において、多孔性繊維膜(補強材)
と、熱可塑性樹脂フィルム及びその上に多孔性樹脂膜を
設けた感熱孔版印刷用原紙との接着方法は、接着剤をマ
ルチロールコーティング、リバースロールコーティン
グ、グラビアコーティング、オフセットグラビアコーテ
ィング、キスコーティング、ロータリースクリーンコー
ティング等の手段にて多孔性支持体(多孔性樹脂膜)の
表面に適量の接着剤を塗布し、その後多孔性繊維膜と圧
着し、接着剤を乾燥あるいは硬化させる。多孔性繊維膜
は2層以上積層してもよい。
【0037】接着剤としては、例えば、ウレタン系樹
脂、ジイソシアネートとポリエーテルジオールとの反応
性プレポリマー、活性水素含有樹脂とポリイソシアネー
トとの混合接着剤、紫外線、電子線硬化型接着剤などを
用いることができる。
【0038】多孔性支持体への塗布時の接着剤の粘度と
しては、200〜3000cpsが好ましく、さらに好
ましくは300〜1500cpsである。200cps
よりも低い粘度であると充分な接着性が得られにくく、
部分的なラミネート不良が発生し画像再現性が悪化した
り、あるいは多孔性支持体に浸透し過ぎてラミネーター
のロールを汚す場合がある。逆に、3000cpsより
も粘度が高いと多孔性支持体の開孔部を接着剤が塞ぎ印
刷物に白抜けが発生したり、多孔性支持体でも表面強度
が不足するようになり、例えば、薄葉紙からの繊維の脱
離による不都合が発生する。接着剤の塗布量としては通
常0.03〜5.0/m2、好ましくは0.05〜1.
5g/m2、さらに好ましくは0.1〜1.0/m2であ
る。
【0039】次に本発明を図1〜図5に基づいて具体的
に説明する。本発明における多孔性樹脂膜とは、溶剤に
溶かした樹脂を析出させる等により形成する多孔性の膜
で、フィルム上にフィルムを床に例えると図1の多数の
天井のあるセルの集合体、図2のハニカム状のセルの集
合体、図3の連泡状セルの集合体からなる泡状皮膜、図
4の粒形状の樹脂がくっつきあってできている集合体状
皮膜などによって形成される膜を意味している。上記し
た多孔性樹脂膜の空隙部分2の開孔径のバラツキは従来
の繊維よりなる多孔性支持体の開孔径に比べ均一であ
り、インキ分散性が優れ高画質、特にベタ埋りの優れた
印刷物を得る事ができる。
【0040】また多孔性繊維膜とは、図5に示すような
繊維状物質が多数重なり合うことで形成される多孔性の
膜を意味している。この多孔性繊維膜は従来の孔版印刷
用原紙の多孔性支持体と同じ構造であり、多孔性樹脂膜
に比べ開孔径の均一性は劣るものの機械的な強度が得ら
れやすいという特徴がある。
【0041】次に、本発明における各物性の測定方法を
説明する。 <測定方法> (1)熱収縮率測定方法 10mm×100mmに切り出したフィルムを100℃
に保ったオーブンにて3分間熱処理した後の長さを測定
し、元寸法に対する収縮量を百分率で表す。 (2)原紙ヨコ方向の伸度2%における引張強度(N/
m) 23℃、相対湿度50%の環境下にて原紙をヨコ方向に
片刃かみそりでカットして、幅15mm、長さ200m
mのサンプルを10枚採取する。該サンプルをShim
adzu AUTOGRAPH AGS−50Aに試験
長5cmで把持し、試験速度3mm/minで破断まで
引張り、荷重一伸び線図を記録計に記録する。荷重一伸
び線図の伸度2%(伸び量で0.5mm)における引張
荷重をN/mに換算し、サンプル数10枚の平均強度を
求めた。なお、伸度は原紙の伸びを試験長で除した値で
ある。 (3)平滑度 本発明における王研式表面平滑度計による表面平滑性の
測定方法は、JapanTappiNo.5に定められ
ている方法に基づくものであり、本来は紙等の表面の平
滑性を簡便に測定するものである。この測定方法につい
て簡単に述べると、表面平滑度が極めて高い底面を有す
るリングを被測定物上に一定荷重で置き、リングの内側
(内と外は遮断されている)から一定圧下で一定量の空
気が外に通過する時間(秒)で表面性を表わすものであ
る。
【0042】
【実施例】以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具
体的に説明する。尚、部、%は重量基準である。
【0043】 実施例 [多孔性樹脂膜形成用塗布液1] ポリビニルブチラール樹脂(軟化点87℃) 4部 (電気化学工業社製PVB3000−2) エチルアルコール 35.5部 水 11.5部 針状珪酸マグネシウム 0.8部 (水沢化学社製品工一ドプラスSP) ポリビニルブチラール樹脂をエチルアルコール及び水の
混合液中に溶解後、針状珪酸マグネシウムを添加し、ボ
ールミルで十分分散混合して上記処方多孔性樹脂膜形成
用塗布液1を得た。この塗布液1を用いて、厚さ2.0
μm、ヨコ方向の熱収縮率15%の2軸延伸ポリエステ
ルフィルム上に塗工し、50℃にて乾燥して固形分付着
量が3.0g/m2の多孔性樹脂膜を得た。
【0044】以下各実施例及び比較例のそれぞれのフィ
ルムに対し上記と同様にして多孔性樹脂膜を得、接着剤
を用いて湿式抄紙法により得られた表1に示す多孔性繊
維膜と接着した。また、フィルム面には熱融着防止剤と
して東レダウコーニング製のシリコンオイルSF−84
22を0.01g/m2、帯電防止剤として日本油脂杜
製エレガン264A(第4級アンモニウム塩系の帯電防
止剤)を0.01g/m2塗布し、それぞれの感熱孔版
印刷用原紙を作成した。
【0045】
【表1】
【0046】<評価方法及び評価基準> (1)原紙しわ 機械は(株)リコー社製JP5000を用い、250m
mx250mmのベタ製版、印刷を行い画像にしわが発
生するか否かの観察を行った。更にドラム上での目視に
よるしわの有無の確認も行った。 原紙しわ ○:しわ無し、△:印刷ドラム上には若干あ
るが画像に影響なし、×:しわ有り。 (2)印刷立上り 印刷立上りは、ドラムに原紙を巻きつけ後、目視にて画
像が立ち上がった枚数により評価した。 (3)穿孔性 別途製版した版のみを取り出し、顕微鏡観察にてフィル
ムの穿孔の様子も観察した。 穿孔性 ○:良好(99%以上)、×:不穿孔部分多い
【0047】各実施例及び比較例の感熱孔版印刷用原紙
について、フィルムのヨコ方向の熱収縮率、原紙のヨコ
方向伸度2%における引張強度、原紙フィルム面の平滑
度、及び上記評価結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少な
くとも一方の面に多孔性樹脂膜を有し、更にその表面に
少なくとも1層以上の多孔性繊維膜を積層してなる感熱
孔版印刷用原紙において、該原紙のヨコ方向の伸度2%
における引張強度を100〜270N/mとし、かつ該
熱可塑性樹脂フィルムのヨコ方向の熱収縮率(100
℃、3分)を3〜15%としたことにより、印刷機上で
の搬送時のしわの発生がなく、サーマルヘッドによる穿
孔性に優れ、しかも印刷立上り性にも優れるという作用
効果を有する。また、上記原紙においてフィルム面の平
滑度(王研式平滑度測定による)を10000秒以上と
することにより、しわの発生の抑制効果がさらに向上す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感熱孔版印刷用原紙の多孔性樹脂膜の
構造を示す図である。
【図2】本発明の感熱孔版印刷用原紙の多孔性樹脂膜の
他の構造を示す図である。
【図3】本発明の感熱孔版印刷用原紙の多孔性樹脂膜の
別の構造を示す図である。
【図4】本発明の感熱孔版印刷用原紙の多孔性樹脂膜の
さらに別の構造を示す図である。
【図5】本発明の感熱孔版印刷用原紙の多孔性樹脂膜の
構造を示す図である。
【符号の説明】
1:熱可塑性樹脂フィルム 2:多孔性樹脂膜を構成する皮膜部分 3:多孔性樹脂膜を構成する空隙部分 4:多孔性繊維膜を構成する繊維状物質 5:多孔性繊維膜を構成する空隙部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 秀幸 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 Fターム(参考) 2H114 AB23 AB25 BA06 EA02 FA02 FA06

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方
    の面上に多孔性樹脂膜を有し、更にその表面に少なくと
    も1層以上の多孔性繊維膜を積層してなる感熱孔版印刷
    用原紙において、前記原紙のヨコ方向の伸度2%におけ
    る引張強度が100〜270N/mであり、前記熱可塑
    性樹脂フィルムのヨコ方向の熱収縮率(100℃、3
    分)が3〜15%であることを特徴とする感熱孔版印刷
    用原紙。
  2. 【請求項2】 前記原紙の熱可塑性樹脂フィルム面の平
    滑度(王研式平滑度測定による)が10000秒以上で
    あることを特徴とする請求項1記載の感熱孔版印刷用原
    紙。
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