JP2003274897A - 粉体食品の製造方法 - Google Patents

粉体食品の製造方法

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JP2003274897A JP2002088541A JP2002088541A JP2003274897A JP 2003274897 A JP2003274897 A JP 2003274897A JP 2002088541 A JP2002088541 A JP 2002088541A JP 2002088541 A JP2002088541 A JP 2002088541A JP 2003274897 A JP2003274897 A JP 2003274897A
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徹 林中
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡略な製造ラインで多品種少量生産に適合し
ているフレーバー付与が施される粉体食品の製造方法を
提供する。 【解決手段】 揮発性芳香物質4を粉体食品1に移行さ
せることによりフレーバー付与が施される粉体食品の製
造方法であって、予め揮発性芳香物質溶解性を有する油
脂2でコーティングしてある粉体食品1と、予め揮発性
芳香物質4を含浸させてあるフレーバー含浸基材3とを
収容容器5内に装入する収容工程Aと、収容工程Aにお
いて粉体食品1とフレーバー含浸基材3とが装入された
収容容器5を密封する密封工程Bと、密封工程Bにおい
て密封された収容容器5を加熱する加熱工程Cとを有す
るフレーバー付与が施される粉体食品の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、揮発性芳香物質を
粉体食品に移行させることによりフレーバー付与が施さ
れる粉体食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、レギュラーコーヒー(焙煎コー
ヒー豆)を粉砕したコーヒー材料や、茶葉(緑茶、焙じ
茶、紅茶、烏龍茶、ハーブティー等)等の粉体食品は、
これら粉体食品に熱湯や水などの抽出原液を加水して濾
布やメッシュ等の濾材により濾過抽出することによって
抽出液を得ていた。そして、この抽出液をそのまま、或
いは、例えばコーヒー材料から得られた抽出液であれ
ば、糖類、乳類及び水等と共に所望の濃度に調整されて
コーヒー飲料として飲用に供されていた。また、粉体状
のインスタントコーヒー粉体等の粉体食品においては、
前記抽出原液を加水してインスタントコーヒー粉体を溶
解させ、前記コーヒー材料から得られた抽出液の場合と
同様の方法でコーヒー飲料として飲用に供されていた。
【0003】インスタントコーヒー粉体は、フリーズド
ライ製法等により製造されたものであるが、レギュラー
コーヒーを粉砕したコーヒー材料と比べてコーヒーが本
来有している芳香(フレーバー)が不足していることが
知られていた。このフレーバーの不足は、インスタント
コーヒー粉体を収容している収容容器を開封した際等に
前記収容容器中から雰囲気中へと拡散したフレーバーを
喫飲者等の消費者が嗅いだ時等に感じられる。このよう
なインスタントコーヒー粉体のフレーバーが不足してい
ると感じられる理由としては、前記フリーズドライ製法
等の製造工程中において揮発性芳香物質が散逸すること
に起因していると考えられる。
【0004】従って、インスタントコーヒー粉体から得
られたコーヒー飲料においても、上述したフレーバーの
不足により、レギュラーコーヒーを粉砕したコーヒー材
料から得られたコーヒー飲料より風味等の点において物
足りなさを感じている喫飲者が存在している。
【0005】そのため、レギュラーコーヒーを粉砕した
コーヒー材料に匹敵するようなフレーバーを有するイン
スタントコーヒー粉体を供することが広く望まれてお
り、これを解決する技術として、インスタントコーヒー
粉体の製造後にコーヒー芳香等のフレーバーを付与する
技術が知られていた。
【0006】このような技術として、特表平10−50
8195号公報には、収容容器にインスタントコーヒー
粉体を充填する前または充填中に、収容容器の中に芳香
製剤を直接分配(噴霧)し、芳香製剤を収容容器の中に
噴霧した直後に収容容器を密封する技術について記載さ
れている。具体的には、芳香製剤を噴霧するための分配
ノズルにより、頂部開口型容器のの内壁側に液状芳香製
剤を飛沫の形で噴霧し、芳香製剤が噴霧された頂部開口
型容器に充填すべきインスタントコーヒー粉体を充填す
ることが記載されている。そして、容器内壁に噴霧され
た芳香製剤がインスタントコーヒー粉体に吸収される過
程として、芳香製剤の飛沫がこのインスタントコーヒー
粉体の塊に吸収され、この様にしてインスタントコーヒ
ー粉体にフレーバーが付与されるとされている。これに
より、芳香製剤の少ない浪費量でインスタントコーヒー
粉体にフレーバーを付与できる方法が商業用速度で実行
できるとされていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】コーヒー飲料は嗜好飲
料としてその需要もますます増大すると共にニーズの多
様化が進んでいる。そのため、コーヒー飲料として異な
るフレーバーを有する等、多様な品種を提供することが
望まれており、インスタントコーヒー粉体の製造ライン
においても、多種類の品種の製造に対応できるようにす
る必要がある。
【0008】上述した特表平10−508195号公報
に記載のインスタントコーヒー粉体の製造後にフレーバ
ーを付与する方法によると、製造ラインにおいて、芳香
製剤を噴霧するための分配ノズルやポンプ組立体、収容
容器の位置を検出するセンサ等の設備が必要とされてい
るために、インスタントコーヒー粉体にフレーバー付与
を施すには、複雑かつ大掛かりな製造ラインが必要とな
る。さらに、この製造ライン、或いはその周辺には、多
種類の異なるフレーバーを保存しておくためのスペース
や貯蔵容器等も必要となるため設備がより大掛かりなも
のとなっていた。従って、上述した構成を有する製造ラ
インにおいて、多種類の品種の製造に対応できるように
するために異なるフレーバーを付与する場合には、前記
分配ノズル等に付着した芳香製剤を洗い落とした後に異
なるフレーバーをセットすることになる。そのため、洗
浄の手間が発生すると共にこの洗浄の間は製造ラインが
停止してしまい、異なるフレーバーを付与する際には迅
速な対応ができない。
【0009】このため、上述した特表平10−5081
95号公報に記載のインスタントコーヒー粉体の製造後
にフレーバーを付与する方法は大量生産には適合した方
法であるが、大掛かりな製造ラインを必要とする上に、
多種類の品種の製造を行う際には迅速な対応を行い難
い、つまり、多品種少量生産にはあまり適さない方法で
あるという問題点を有していた。
【0010】従って、本発明の目的は、簡略な製造ライ
ンで多品種少量生産に適合しているフレーバー付与が施
される粉体食品の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】〔構成1〕この目的を達
成するための本発明の特徴構成は、揮発性芳香物質を粉
体食品に移行させることによりフレーバー付与が施され
る粉体食品の製造方法であって、予め揮発性芳香物質溶
解性を有する油脂でコーティングしてある粉体食品と、
予め揮発性芳香物質を含浸させてあるフレーバー含浸基
材とを収容容器内に装入する収容工程と、前記収容工程
において前記粉体食品と前記フレーバー含浸基材とが装
入された収容容器を密封する密封工程と、前記密封工程
において密封された収容容器を加熱する加熱工程とを有
する点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0012】〔作用効果1〕つまり、予め揮発性芳香物
質溶解性を有する油脂でコーティングしてある粉体食品
と、予め揮発性芳香物質を含浸させてあるフレーバー含
浸基材とを収容容器内に装入する収容工程を行うことに
より、前記粉体食品とフレーバー含浸基材とが同じ容器
内に収容されることになる。従って、前記フレーバー含
浸基材に含浸している揮発性芳香物質が揮発して前記粉
体食品に揮発性芳香物質が移行し易くなり、前記粉体食
品にフレーバー付与を施すことができる。前記粉体食品
は、予め揮発性芳香物質溶解性を有する油脂でコーティ
ングしてあるため、前記収容容器内で揮発した揮発性芳
香物質を前記油脂が吸収し易くなる。これにより、油脂
含有量が極めて少ない前記粉体食品においても有効にフ
レーバー付与が施されることになる。これは、後述の実
施例における(f)の実験により確認できる。
【0013】つまり、(f)の実験では、粉体食品であ
るインスタントコーヒー粉体に油脂コーティング処理を
施した評価試料X5と、油脂コーティング処理を施さな
い評価試料X6とを同じ揮発性芳香物質を含浸させてあ
るフレーバー含浸基材でフレーバー付与処理(賦香)
し、それぞれの試料から得られたフレーバー成分を測定
してフレーバー付与効果を比較したところ、評価試料X
5では約80%のフレーバー成分の増加が確認されたの
に対して、評価試料X6では約6%のフレーバー成分の
増加に留まるという結果が得られている。そのため、前
記粉体食品に油脂コーティング処理を施すことにより、
顕著なフレーバー付与効果があることが確認されてい
る。
【0014】そして、前記収容工程において前記粉体食
品と前記フレーバー含浸基材とが装入された収容容器を
密封する密封工程を行うことにより、確実に前記粉体食
品にフレーバーを付与することができる。
【0015】さらに、前記密封工程において密封された
収容容器を加熱する加熱工程を行うことにより、前記収
容容器内に装入されている前記フレーバー含浸基材を昇
温することができる。そのため、前記フレーバー含浸基
材に含浸されている揮発性芳香物質の揮発を促進するこ
とができるため、前記粉体食品へのフレーバー付与効果
が増大する。これは、後述の実施例における(g)〜
(h)の実験結果により確認できる。
【0016】つまり、(g)〜(h)の実験では、イン
スタントコーヒー粉体を揮発性芳香物質を含浸したフレ
ーバー含浸基材と共に密封した収容容器を種々の温度条
件で加熱した際のフレーバー付与効果を調べている。こ
れによると、密封した収容容器を20℃で加熱した場合
のフレーバー成分を100とした時、30〜55℃で加
熱した場合のフレーバー成分の相対値は114〜145
となる結果が得られている。そのため、密封した収容容
器を20℃以上で加熱することにより、明らかにフレー
バー付与効果が増大することが確認されている。
【0017】このように、上述した収容工程、密封工
程、及び加熱工程を行うことにより、前記粉体食品に有
効にフレーバー付与を施すことができ、従来のように、
粉体食品の製造後にフレーバーを付与するための製造ラ
インにおいて前記分配ノズル等の複雑かつ大掛かりな設
備を必要としない。そのため、本発明のフレーバー付与
が施される粉体食品の製造方法によると、製造ラインを
簡略化できることが期待される。つまり、異なるフレー
バーを噴霧する必要がないために前記分配ノズルを設置
する必要が無く、フレーバーを保存しておくためのスペ
ース等については、揮発性芳香物質を含浸させてあるフ
レーバー含浸基材を収容する場所を確保するだけでよ
く、液状の芳香製剤等と比べて小型化できることにより
省スペース化を実現できるため、大掛かりな設備を要し
ない。さらに、前記分配ノズル等の洗浄が不要となって
洗浄コストの発生や製造ラインの停止といった不都合が
生じる虞は殆ど無い。そして、本発明の方法で前記粉体
食品に異なるフレーバーを付与する場合には、単に、前
記収容工程において、予め揮発性芳香物質を含浸させて
あるフレーバー含浸基材を変更するだけで容易に異なる
フレーバー付与を施すことができる。この時、前記密封
工程及び加熱工程の処理においては、何ら製造ラインを
変更する必要はない。
【0018】従って、本発明のフレーバー付与が施され
る粉体食品の製造方法は、多種類の品種を少量生産する
製造ラインに最適な方法であると考えられ、前記粉体食
品に異なるフレーバーを付与する必要が生じた場合には
迅速な対応が可能となって、連続的にフレーバー付与処
理を施すことができる。
【0019】また、従来のように芳香物質を前記粉体食
品に直接噴霧する構成とは異なるため、芳香物質を直接
噴霧すると溶解する等の不具合が発生する粉体食品に対
しても有効な為、本発明の方法は、幅広い粉体食品に適
用することができる。
【0020】〔構成2〕この目的を達成するための本発
明の特徴構成は、上記構成1において、前記加熱工程の
後に、前記収容容器を所定温度まで冷却する冷却工程を
有する点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0021】〔作用効果2〕つまり、前記加熱工程の後
に、前記収容容器を所定温度まで冷却する冷却工程を行
うと、前記加熱工程における加熱により昇温している収
容容器を、素早く所定温度まで冷却することができる。
そのため、この冷却工程を経た収容容器は迅速に流通ル
ートに移行させることができる。
【0022】〔構成3〕この目的を達成するための本発
明の特徴構成は、上記構成1又は2の何れかにおいて、
前記加熱工程は、常温〜95℃の温度範囲における任意
温度で5〜20分加熱する点にあり、その作用効果は以
下の通りである。
【0023】〔作用効果3〕この構成において、前記加
熱工程を、常温〜95℃の温度範囲における任意温度で
5〜20分加熱するようにしたことの根拠は、後述の実
施例(i)〜(k)に示した官能試験の評価に基づくも
のである。これら官能試験では、異なる2種類の揮発性
芳香物質を用いて賦香したインスタントコーヒー粉体
を、20〜95℃の各温度条件において、種々の時間条
件で加熱した場合に得られたフレーバー付与効果やイン
スタントコーヒー粉体の状態を任意のパネラー10人に
総合的に評価させることにより行っている。
【0024】この結果、20℃(常温)〜95℃の温度
範囲においては、5〜20分加熱した場合は劣化臭やイ
ンスタントコーヒー粉体の変色、固化が認められず、容
器加熱後のフレーバー付与効果とインスタントコーヒー
粉体の状態も良好な評価が得られたことから、構成3の
温度条件及び時間条件により前記加熱工程を行うこと
で、総合的に良好な官能評価が得られることが確認され
ている。
【0025】これより、前記加熱工程は、常温〜95℃
の温度範囲における任意温度で5〜20分加熱すること
により、優れたフレーバー付与効果が施された前記粉体
食品を優れた品質で提供することができると共に、加熱
処理の時間が5〜20分であるという条件は、粉体食品
の製造ラインにおいては極めて合理的な時間条件である
と考えられるため、前記粉体食品を効率よく製造するこ
とができる。
【0026】〔構成4〕この目的を達成するための本発
明の特徴構成は、上記構成3において、前記温度範囲
は、65〜95℃における任意温度である点にあり、そ
の作用効果は以下の通りである。
【0027】〔作用効果4〕この構成において、前記加
熱工程における温度範囲を65〜95℃における任意温
度としたことの根拠は、後述の実施例(i)〜(k)に
示した官能試験の評価に基づくものである。これら官能
試験の方法は、前述の構成3の作用効果の欄に記載した
通りであるが、この時得られた評価結果の内、前記加熱
工程における温度範囲が65〜95℃であれば、劣化臭
やインスタントコーヒー粉体の変色、固化が認められ
ず、容器加熱後のフレーバー付与効果とインスタントコ
ーヒー粉体の状態が最も良好な評価が得られていること
から、構成4の条件で前記加熱工程を行うことで、総合
的に最も良好な官能評価が得られることが確認されてい
る。
【0028】これより、前記加熱工程における温度範囲
が65〜95℃であれば、前記粉体食品にさらに優れた
フレーバー付与効果を施すことができる。
【0029】〔構成5〕この目的を達成するための本発
明の特徴構成は、上記構成1又は2の何れかにおいて、
前記加熱工程は、20〜45℃の温度範囲における任意
温度で20時間、又は、20〜65℃の温度範囲におけ
る任意温度で5時間、又は、27.5〜85℃の温度範
囲における任意温度で1時間、又は、45〜85℃の温
度範囲における任意温度で40分間、又は、65〜95
℃の温度範囲における任意温度で20分間、又は、85
〜95℃の温度範囲における任意温度で5分間の何れか
の条件で加熱する点にあり、その作用効果は以下の通り
である。
【0030】〔作用効果5〕この構成において、前記加
熱工程における加熱温度及び加熱時間条件を、20〜4
5℃の温度範囲における任意温度で20時間、又は、2
0〜65℃の温度範囲における任意温度で5時間、又
は、27.5〜85℃の温度範囲における任意温度で1
時間、又は、45〜85℃の温度範囲における任意温度
で40分間、又は、65〜95℃の温度範囲における任
意温度で20分間、又は、85〜95℃の温度範囲にお
ける任意温度で5分間の何れかの条件としたことの根拠
は、後述の実施例(k)に示した官能試験の評価に基づ
くものである。この官能試験の方法は、前述の構成3の
作用効果の欄に記載した通りであるが、この時得られた
評価結果の内、前記加熱工程における加熱温度及び加熱
時間条件が、20〜45℃の温度範囲における任意温度
で20時間、又は、20〜65℃の温度範囲における任
意温度で5時間、又は、27.5〜85℃の温度範囲に
おける任意温度で1時間、又は、45〜85℃の温度範
囲における任意温度で40分間、又は、65〜95℃の
温度範囲における任意温度で20分間、又は、85〜9
5℃の温度範囲における任意温度で5分間の何れかの条
件であれば、劣化臭やインスタントコーヒー粉体の変
色、固化が認められず、容器加熱後のフレーバー付与効
果とインスタントコーヒー粉体の状態が最も良好な結果
が得られたことから、上記条件であれば総合的に最も良
好な官能評価が得られることが確認されている。
【0031】これより、前記加熱工程における加熱温度
及び加熱時間条件を構成5に記載されている条件で行う
ことにより、幅広い温度範囲の条件で前記粉体食品に優
れたフレーバー付与効果を施すことができる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0033】図1に本発明のフレーバー付与が施される
粉体食品の製造方法の概略を示す。本発明の製造工程
は、収容工程A、密封工程B、加熱工程Cを有し、好ま
しくは前記加熱工程Cの後に冷却工程Dを行うことが可
能である。以下に、各工程について詳述する。
【0034】前記収容工程Aは、予め揮発性芳香物質溶
解性を有する油脂2でコーティングしてある粉体食品1
と、予め揮発性芳香物質4を含浸させてあるフレーバー
含浸基材3とを収容容器5内に充填或いは装入する工程
である。
【0035】前記粉体食品1は、本実施例においてはイ
ンスタントコーヒー粉体を例示するが、これに限るもの
ではなく、緑茶、紅茶等の茶葉等、粉体状(顆粒状)の
食品であれば適用可能である。
【0036】前記油脂2は、フレーバー及び味が中性
で、前記粉体食品1の溶解性に影響を与えず、粉体食品
1がインスタントコーヒー粉体ある場合にはインスタン
トコーヒー粉体と同等の貯蔵寿命を有すると共に、揮発
性芳香物質溶解性を有するものであれば使用できる。例
えば、粉体食品1がインスタントコーヒー粉体である場
合には、コーン油、ココナッツ油、大豆油、ヒマワリ油
等の食用油や、コーヒーに天然に存在するコーヒーオイ
ル等が好ましく、中鎖脂肪酸トリグリセライド等の油脂
であってもよい。そしてこのような油脂を前記粉体食品
1に薄く覆うように添加することにより、予め揮発性芳
香物質溶解性を有する油脂2でコーティングしてある粉
体食品1を準備することができる。
【0037】前記フレーバー含浸基材3は、後述の揮発
性芳香物質4を含浸可能な状態のものであれば使用で
き、紙材のような繊維質のシート材により構成されるも
のが好ましく、多孔質の材料により構成されるもの等も
適用可能であるが、これらに限られるものではない。
【0038】前記揮発性芳香物質4は、天然或いは人工
の香料が適宜使用される。粉体食品1がインスタントコ
ーヒー粉体である場合には、コーヒーフレーバー、アー
モンドフレーバー、へーゼルナッツフレーバー等が好ま
しい。つまり、前記粉体食品1に相応しいと考えられ、
かつ揮発性を有する香料であれば、様々な香料が使用で
きる。そして、このような揮発性芳香物質4を前記フレ
ーバー含浸基材3に含浸させ、乾燥した後、適当な大き
さにカットされることにより整形される。このようにし
て予め揮発性芳香物質4を含浸させてあるフレーバー含
浸基材3を準備することができる。尚、本実施例では、
フレーバー含浸基材3として紙材を用いているため、予
め揮発性芳香物質4を含浸させてあるフレーバー含浸基
材3は着香紙6と記載してある。
【0039】前記収容容器5は、鉄缶類等の金属製やプ
ラスティック等の樹脂製、耐熱ガラス製、紙製等の容
器、或いは、ビニールパック等の樹脂製の袋状の容器等
が適用可能であり、密封可能なものであれば使用でき
る。
【0040】このように、予め揮発性芳香物質溶解性を
有する油脂2でコーティングしてある粉体食品1と、予
め揮発性芳香物質4を含浸させてあるフレーバー含浸基
材3(着香紙6)とを前記収容容器5内に充填或いは装
入する。この時、当該粉体食品1と当該着香紙6とを前
記収容容器5内に装入する順番については何れが先であ
ってもよい。図1には、前記着香紙6を前記収容容器5
内に装入固定した後、当該粉体食品1を充填する場合を
例示している。前記着香紙6は、前記収容容器5の底
面、あるいは側面に嵌合等により固定することにより装
入することが可能である。この時、嵌合による固定であ
れば、接着剤や熱圧着により固定する場合と異なり、フ
レーバー成分の変質劣化、散逸が発生し難いため、好ま
しい。
【0041】前記密封工程Bは、前記収容工程Aにおい
て前記粉体食品1と前記フレーバー含浸基材3とが装入
された収容容器5を密封する工程である。つまり、揮発
性芳香物質溶解性を有する油脂2でコーティングしてあ
る粉体食品1と、揮発性芳香物質4を含浸させてあるフ
レーバー含浸基材3(着香紙6)とが装入してある収容
容器5を密封するのであるが、この密封方法は、例えば
鉄缶類の容器であれば収容容器本体と蓋材等とを嵌合さ
せて雰囲気の流入が生じないように密閉することによ
り、また、樹脂製の袋状の容器であれば熱シール等の既
知の方法を適用することにより行われる。
【0042】前記加熱工程Cは、前記密封工程Bにおい
て密封された収容容器5を加熱する工程である。このよ
うに、密封された収容容器5を加熱することにより、前
記収容容器5内に装入されている前記着香紙6を昇温す
ることができるため、前記着香紙6に含浸されている揮
発性芳香物質4の揮発が促進され、前記粉体食品1への
フレーバー付与効果が増大する。この時、加熱温度や加
熱時間等の条件は、以下の実施例において詳述する。
【0043】前記冷却工程Dは、前記加熱工程Cの後
に、前記収容容器5を所定温度まで冷却する工程であ
る。前記所定温度は、適宜設定することが可能である
が、通常、4〜20℃程度が好ましい温度範囲である。
【0044】
【実施例】(a)容器開封時におけるフレーバーの揮散
の様子及びフレーバーの持続性 本発明の製造方法によりフレーバー付与が施された粉体
食品1(インスタントコーヒー粉体)において、収容容
器5開封時のフレーバーの揮散の様子及びフレーバーの
持続性について調べた。
【0045】図2に、着香紙6から収容容器内にフレー
バーが移行する様子の模式図を示した。密封された収容
容器5内では、前記着香紙6から揮発するフレーバーが
インスタントコーヒー粉体(I/C)に移行し、前記収
容容器5のヘッドスペース51には、フレーバー成分が
拡散し充満する。(図2(a))
【0046】インナーシール52、上蓋53を外して収
容容器5を開封した時、前記ヘッドスペース51に充満
していたフレーバーが雰囲気中に揮散する。(図2
(b))
【0047】前記上蓋53を閉じて密封することによ
り、前記着香紙6から揮発するフレーバーがインスタン
トコーヒー粉体に移行し、前記収容容器5のヘッドスペ
ース51には、フレーバーが拡散し充満する。(図2
(c))
【0048】このように、開封時にフレーバーが雰囲気
中に揮散したとしても、再度の密封後には、前記着香紙
6から揮発するフレーバーがインスタントコーヒー粉体
に移行すると共に、ヘッドスペース51にはフレーバー
が拡散し充満するために、開封時のフレーバー付与効果
だけでなく、使い切るまでフレーバーを持続性すること
も期待できる。
【0049】(b)官能試験による評価 着香紙6によるフレーバー付与効果については、以下の
官能試験を行うことにより評価を行った。粉体食品1と
してフリーズドライ製法により製造されたインスタント
コーヒー粉体を使用し、着香紙6は、直径65mmの円
形に整形した紙材に揮発性芳香物質4としてコーヒーフ
レーバー0.15gを均一にスプレーすることにより準
備し、収容容器5は、円筒状の紙容器(アルミ、樹脂含
有 内径65.4mm、内高141.5mm)を使用し
た。この着香紙6を紙容器の底部に装入し、次いで前記
インスタントコーヒー粉体100gを紙容器に充填した
ものを評価試料X1とした。また、紙容器に前記インス
タントコーヒー粉体100gのみを充填したもの標準試
料S1とした。
【0050】評価方法は、任意に抽出した10人のパネ
ラーに標準試料S1を与えて香りを記憶させ、次に、標
準試料S1と評価試料X1とをブラインドで与えて標準
試料S1を指摘させる方法により行った。結果を以下に
示した。
【0051】
【表1】
【0052】以上の結果より、標準試料Sと評価試料X
とは明確に区別されることが判明した。これは、パネラ
ーの判断理由より、着香紙6より揮発したコーヒーフレ
ーバーの香りが雰囲気中に揮散した際の香りにより、評
価試料Xを明確に特定することができたためであると考
えられる。
【0053】(c)ヘッドスペース中のフレーバー成分 上述した官能試験による評価と同様の標準試料S1と評
価試料X1とを用いて前記ヘッドスペース51中に含ま
れるフレーバー成分を測定した。この時、前記ヘッドス
ペース51の高さは30mmであり、標準試料S1と評
価試料X1共に密封後3時間経過した時のヘッドスペー
ス51に含まれるフレーバー成分をサンプルとした。測
定はガスクロマトグラフィー分析により行った。測定結
果を図3((a)評価試料X1、(b)標準試料S1)
に示した。測定条件は以下の通りである。
【0054】
【表2】
【0055】この結果より、評価試料X1のフレーバー
成分量の検出強度(840758mV)は標準試料S1
のフレーバー成分量の検出強度(114614mV)と
比較して約7.3倍であるため、評価試料X1にはこの
増大分に相当するフレーバー成分量の増大が認められる
ことが判明した。これにより、着香紙6の装入によって
評価試料X1のフレーバー成分量が増加することが確認
された。
【0056】(d)開封後に再度密封した時のヘッドス
ペース中のフレーバー成分 上述した評価試料X1を用いて開封後に再度密封し、前
記ヘッドスペース51中に含まれるフレーバー成分を測
定した。サンプルは、密封後3時間経過した時のヘッド
スペース51に含まれるフレーバー成分を評価試料X1
のサンプルとし、開封後15時間開放放置後に再密封
し、再密封後3時間経過した時のヘッドスペース51に
含まれるフレーバー成分を評価試料X2のサンプルとし
た。測定は、上記ガスクロマトグラフィー分析と同様の
方法により行った。測定結果を図4((a)評価試料X
1、(b)評価試料X2)に示した。
【0057】この結果より、評価試料X2のフレーバー
成分量の検出強度(685846mV)は、評価試料X
1のフレーバー成分量の検出強度(840758mV)
より約12%減少したものの、前記標準試料S1のフレ
ーバー成分量の検出強度(114614mV)と比べる
と明らかに有意なフレーバー成分量の増大(約6倍)が
認められることが判明した。
【0058】(e)粉体食品の違いによるフレーバー付
与効果の違い 粉体食品1の違いによるフレーバー付与効果の違いを調
べた。粉体食品1として、レギュラーコーヒーを粉砕し
たコーヒー材料(R/C)を評価試料X3とし、インス
タントコーヒー粉体(I/C)を評価試料X4とした。
【0059】着香紙6は、直径65mmの円形に整形し
た紙材に揮発性芳香物質4としてアーモンドフレーバー
0.4gを均一にスプレーすることにより準備した。収
容容器5は、上述した(b)で使用した形態と同様のも
のを使用した。評価試料X3(R/C)は、ヘッドスペ
ース51が40mmになるように125gの試料を充填
し、密封後9日目にヘッドスペース51に含まれるフレ
ーバー成分量を測定した。図5(a)の上段に測定結果
を示した。評価試料X4(I/C)は、ヘッドスペース
51が30mmになるように100gの試料を充填し、
密封後30日目にヘッドスペース51に含まれるフレー
バー成分を測定した。図5(b)の上段に、測定結果を
示した。尚、図5(a)(b)の下段の測定結果は、そ
れぞれの粉体食品1において、上記着香紙6(アーモン
ドフレーバー賦香)によるフレーバー付与を施さない
(つまり着香紙6を収容容器5内に装入しない)コント
ロールの試料のヘッドスペース51に含まれるフレーバ
ー成分を測定したものである。測定は、ヘッドスペース
−ガスクロマトグラフィー分析(HS−GC)により行
った。測定条件は以下の表3に示した。
【0060】
【表3】
【0061】この結果より、フレーバー成分量の増大と
フレーバー由来と考えられるピーク(図5中、矢印)が
検出されたことより、着香紙6によるフレーバー付与効
果が確認された。また、フレーバー成分の増加量は、評
価試料X3(R/C)の検出強度(7012575m
V)においては、アーモンドフレーバー賦香していない
コントロール(図5(a)下段)の検出強度(2161
935mV)の約3.2倍であったため、この増大分に
相当するフレーバー成分量の増大が認められることが判
明した。さらに、評価試料X4(I/C)の検出強度
(1737946mV)においては、アーモンドフレー
バー賦香していないコントロール(図5(b)下段)の
検出強度(1356021mV)の約1.3倍であった
ため、この増大分に相当するフレーバー成分量の増大が
認められることが判明した。
【0062】つまり、粉体食品1として、レギュラーコ
ーヒーを粉砕したコーヒー材料を使用した場合と共に、
インスタントコーヒー粉体を使用した場合であっても、
フレーバー付与効果は認められたものの、インスタント
コーヒー粉体を使用した場合においては、密封してから
測定するまでの期間(評価試料X3:30日目)がレギ
ュラーコーヒーを使用した場合(評価試料X4:9日
目)よりも長いことにもかかわらず、フレーバー付与効
果は弱いことが判明した。
【0063】(f)油脂コーティングによるフレーバー
付与効果の改善 油脂で粉体食品1にコーティングを施すことによるフレ
ーバー付与効果がどのように改善されるかを調べた。
【0064】粉体食品1は、フリーズドライ製法により
製造されたインスタントコーヒー粉体40gを使用し
た。収容容器5は内径65.4mm、内高91.5mmの
円筒状紙容器を使用した。着香紙6は、ヘーゼルナッツ
フレーバー3gを均一にスプレーしたものを使用し、乾
燥後、縦55.0mm、横204.0mmの長方形に整形
することにより準備した。コーティング処理に使用した
油脂は、中鎖脂肪酸トリグリセライドを5重量%になる
ように前記インスタントコーヒー粉体にコーティングし
た。そして、上述の着香紙6を、前記収容容器5の容器
内側面に装入することにより設置し、油脂コーティング
処理を施したインスタントコーヒー粉体を前記収容容器
5内に充填した。この時、ヘッドスペース51は、内高
が46.5mmであった。充填後、前記収容容器5を密
封し(評価試料X5)、密封後30日目にヘッドスペー
ス51に拡散しているフレーバー成分量を測定した。測
定は、HS−GCにより行い、測定条件は、以下の表4
に示した。
【0065】
【表4】
【0066】図6(a)に、油脂コーティング処理を施
したインスタントコーヒー粉体を充填した試料(評価試
料X5)のヘッドスペース51のフレーバー成分量を測
定した結果を示した。この時の検出強度は、10691
200mVであった。図6(b)に、上記の油脂コーテ
ィング処理を施さず、前記着香紙6(ヘーゼルナッツフ
レーバー賦香)でフレーバー付与を施したインスタント
コーヒー粉体を充填した試料(評価試料X6)のヘッド
スペース51のフレーバー成分量を測定した結果を示し
た。この時の検出強度は、6245813mVであっ
た。図6(c)に、油脂コーティング処理及びフレーバ
ー付与を施さないコントロールの試料(標準試料S2)
のヘッドスペース51中に含まれるフレーバー成分量を
測定した結果を示した。この時の検出強度は、5878
855mVであった。尚、図6(a)(b)において
は、フレーバー成分量の増大とフレーバー由来と考えら
れるピーク(図6中、矢印)が検出された。
【0067】この結果より、油脂コーティング処理を施
したインスタントコーヒー粉体を充填した試料(評価試
料X5)のヘッドスペース51のフレーバー成分が最も
増大した結果となり、油脂コーティング処理を施すこと
によるインスタントコーヒーへのフレーバー付与効果が
確認された。コントロールの試料(標準試料S2)に対
するフレーバー成分の増加量は、評価試料X5が約80
%(10691200/5878855)、評価試料X
6が約6%(6245813/5878855)であ
り、油脂コーティング処理を施すことにより、顕著なフ
レーバー付与効果があることが確認された。
【0068】(g)密封した収容容器を加熱することに
よるフレーバー付与効果の改善 粉体食品1及び着香紙6を収容容器5に充填して密封
後、この密封した容器を加熱工程において加熱すること
によるフレーバー付与効果の変動について調べた。粉体
食品1(中鎖脂肪酸トリグリセライドによる油脂コーテ
ィング処理を施したインスタントコーヒー粉体)、収容
容器5、着香紙6(ヘーゼルナッツフレーバー賦香)
は、上述の(f)と同様の構成とした。前記インスタン
トコーヒー粉体、前記着香紙6を収容容器5に充填及び
装入して密封後、この密封した容器を以下に示す各温度
で15時間加熱し(加熱工程)、その後、20℃(常
温)で30分間冷却する処理(冷却工程)を行った。そ
して、密封してから16時間後にヘッドスペース51に
拡散しているフレーバー成分量を測定した。測定はHS
−GCにより行い、測定条件は、以下の表5に示した。
【0069】
【表5】
【0070】図7(a)に、55℃で加熱した場合(評
価試料X7)の結果を示した。尚、図7(b)は、上記
着香紙6(ヘーゼルナッツフレーバー賦香)によるフレ
ーバー付与を施さず、収容容器5、粉体食品1等の構成
は評価試料X7と同様であるコントロールの試料(標準
試料S3)のヘッドスペース51中に含まれるフレーバ
ー成分量を測定したものである。測定は、密封後20℃
に放置し、その16時間後に表5に記載の条件と同様の
条件で行った。
【0071】評価試料X7と標準試料S3との検出結果
を比較すると、標準試料S3には無いフレーバー成分量
の増大とフレーバー由来と考えられるピーク(図7中、
矢印)が評価試料X7には検出されたことより、フレー
バー付与効果が確認された。
【0072】また、5、20、35、40℃の各温度
(図示せず)においても、同様のピークが検出されたた
め、これらピーク面積を比較することによりフレーバー
成分の増加量を相対的に算出した。この結果、20℃加
熱した時のフレーバー成分量を100とした時の各温度
におけるフレーバー成分量の相対値は、以下のようにな
った。
【0073】
【表6】
【0074】これより、密封した収容容器を20℃(常
温)以上で加熱することにより、フレーバー付与効果が
良好に改善されることが判明した。
【0075】(h)密封した収容容器の加熱条件の変動
におけるフレーバー付与効果 上述した実験により、密封した収容容器を20℃(常
温)以上に加熱することによりフレーバー付与効果が良
好に改善されることが判明したため、20℃以上の種々
の温度条件で加熱し、さらに加熱時間を種々変更した場
合のフレーバー付与効果を調べた。
【0076】粉体食品1は、フリーズドライ製法により
製造されたインスタントコーヒー粉体50gを使用し
た。収容容器5は内径65.4mm、内高91.5mmの
円筒状紙容器を使用した。着香紙6は、ヘーゼルナッツ
フレーバー3gを均一にスプレーしたものを使用し、乾
燥後、縦70.0mm、横204.0mmの長方形に整形
した。コーティング処理に使用した油脂は、中鎖脂肪酸
トリグリセライドを1.5重量%になるように前記イン
スタントコーヒー粉体にコーティングした。そして、上
述の着香紙6を、前記収容容器5の容器内側面に装入す
ることにより設置し、油脂コーティング処理を施したイ
ンスタントコーヒー粉体を前記収容容器5内に充填し
た。この時、ヘッドスペース51は、内高が21.5m
mであった。充填後、前記収容容器5を密封し、この密
封した容器を以下に示す各温度条件、及び各時間条件で
加熱し、その後、4℃で30分間冷却する処理を行っ
た。そして、冷却後にヘッドスペース51に拡散してい
るフレーバー成分量を測定した。測定はHS−GCによ
り行い、測定条件は、上記の表5に記載されている条件
と同様の条件にて行った。
【0077】測定結果を表7に示した。結果は、上述の
(g)と同様に、標準試料S3には無いフレーバー成分
量の増大とフレーバー由来と考えられるピークのピーク
面積を算出し、20℃、5分加熱時のフレーバー成分量
を100とした時の相対値で示した。表中の「ND」表
示は、インスタントコーヒー粉体が固化したため、測定
できなかったことを示すものである。
【0078】尚、表7中に記載の加熱温度は、例えば、
20℃の表記は、20〜27.5℃の温度範囲で得られ
る結果は同様の傾向を示すため、その温度範囲の任意温
度の一例として20℃と表記したものである。以下同様
に、35℃の表記は、27.5〜45℃の温度範囲の任
意温度の一例、55℃の表記は、45〜65℃の温度範
囲の任意温度の一例、75℃の表記は、65〜85℃の
温度範囲の任意温度の一例、95℃の表記は、85〜9
5℃の温度範囲の任意温度の一例として、それぞれ表記
したものである。さらに、参考資料として表8に前記収
容容器5加熱中における容器内温度(上段:容器内中心
温度、下段:容器内壁温度)を示し、図12に各加熱温
度における容器内温度の推移を示した。尚、図11に
は、この時測定した収容容器5内の温度測定部位を示し
た。
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】表7の結果より、20〜95℃の各温度条
件において、種々の時間条件で加熱した場合であって
も、相対値は何れも100以上であるためフレーバー付
与効果が明らかに増大していることが判明した。特に、
表7中で95℃と表記される温度範囲のフレーバー付与
効果が各加熱時間条件内で最大となり、20℃と表記さ
れる温度範囲の結果と比較すると、約7〜10倍となっ
ていた。
【0082】(i)密封した収容容器の加熱条件の変動
におけるフレーバーの官能評価1 上述した20〜95℃の各温度条件において、種々の時
間条件で加熱した場合に得られたフレーバーの評価を、
官能試験を行うことにより行った。評価方法は、インス
タントコーヒー粉体2gに抽出原液として熱水140m
Lを加水して溶解させた溶解液に基づき、容器加熱後の
フレーバー付与効果とインスタントコーヒー粉体の状態
との両方を総合的に評価することにより行った。結果
は、任意に抽出した10人のパネラーによる4段階評価
(◎:最も好ましい、○:好ましい、△:やや好まし
い、×:好ましくない)で表示した。図8に結果を示し
た。
【0083】この結果より、75℃で20時間加熱した
場合、及び、95℃で40分以上加熱した場合には、劣
化臭やインスタントコーヒー粉体の変色、固化が認めら
れた。また、55℃で20時間加熱した場合、及び、7
5℃で5時間加熱した場合には、僅かに劣化臭が認めら
れた。しかし、これ以外の条件では、良好な官能評価が
得られた。
【0084】(j)密封した収容容器の加熱条件の変動
におけるフレーバーの官能評価2 上記官能評価は、着香紙6をヘーゼルナッツフレーバー
で賦香した時の評価であるが、着香紙6をコーヒーフレ
ーバーで賦香した時の評価を行った。実験手順は、着香
紙6をコーヒーフレーバーとすること以外は、上記
(h)〜(i)に記載されている諸条件に従って行っ
た。図9に結果を示した。
【0085】この結果より、75℃で5時間以上加熱し
た場合、及び、95℃で40分以上加熱した場合には、
劣化臭やインスタントコーヒー粉体の変色、固化が認め
られた。また、55℃で5時間以上加熱した場合、及
び、75℃で1時間加熱した場合には、僅かに劣化臭が
認められた。しかし、これ以外の条件では、良好な官能
評価が得られた。
【0086】(k)総合評価 上述した(i)〜(j)の官能評価を総合的に評価し
た。
【0087】上述した(i)のヘーゼルナッツフレーバ
ーで賦香した場合と、(j)のコーヒーフレーバーで賦
香した場合とでは、55℃で5時間加熱した時、及び、
75℃で1及び5時間加熱した時の評価が異なるのみ
で、その他の条件では、同一の評価が得られている。上
記(i)〜(j)は4段階評価であったが、この総合評
価は3段階で行い、結果を図10に示した。
【0088】この総合評価によると、20〜95℃の温
度範囲における任意温度であれば、5〜20分加熱する
ことにより、劣化臭やインスタントコーヒー粉体の変
色、固化が認められず、フレーバー付与効果が好まし
い、又は、最も好ましい結果が得られることが判明し
た。この時、加熱処理の時間が5〜20分であるという
条件は、インスタントコーヒー粉体の製造ラインにおい
ては極めて合理的な時間条件であると考えられる。
【0089】そして、この条件のうち、前記温度範囲が
65〜95℃における任意温度であれば、容器加熱後の
フレーバー付与効果が最も良好な結果が得られているこ
とから、総合的に最も良好な官能評価が得られることが
判明した。
【0090】さらに、前記加熱工程における加熱温度及
び加熱時間条件が、20〜45℃(図10の表記は20
〜35℃)の温度範囲における任意温度で20時間、又
は、20〜65℃(図10の表記は20〜55℃)の温
度範囲における任意温度で5時間、又は、27.5〜8
5℃(図10の表記は35〜75℃)の温度範囲におけ
る任意温度で1時間、又は、45〜85℃(図10の表
記は55〜75℃)の温度範囲における任意温度で40
分間、又は、65〜95℃(図10の表記は75〜95
℃)の温度範囲における任意温度で20分間、又は、8
5〜95℃(図10の表記は95℃)の温度範囲におけ
る任意温度で5分間の何れかの条件であれば、劣化臭や
インスタントコーヒー粉体の変色、固化が認められず、
容器加熱後のフレーバー付与効果とインスタントコーヒ
ー粉体の状態が最も良好な結果が得られていることか
ら、上記条件であれば総合的に最も良好な官能評価が幅
広い温度範囲の条件で得られることが判明した。
【0091】以上に記載したように、本発明のフレーバ
ー付与が施される粉体食品の製造方法は、加熱工程の加
熱温度及び加熱時間条件を適切に設定することにより、
収容容器開封時のフレーバー特性を強化することができ
る。また、容器開封後に順次消費していく粉体食品であ
ってもそのフレーバー付与効果が持続する方法であり、
インスタントコーヒー粉体のような油脂含有量の極めて
少ない粉体食品であっても、収容容器から取出した際、
及び、抽出原液を加水して粉体を溶解させてコーヒー飲
料として飲用する際にも、顕著なフレーバー効果を喫飲
者に与えることができる。
【0092】尚、本発明は上記実施形態に限定されるも
のではなく、同様の作用効果を奏するものであれば、各
部構成を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフレーバー付与が施される粉体食品の
製造方法の概略を示した図
【図2】収容容器内にフレーバーが移行する様子を示し
た図
【図3】評価試料X1及び標準試料S1のヘッドスペー
ス中に含まれるフレーバー成分の測定結果を示した図
【図4】評価試料X1及び評価試料X2のヘッドスペー
ス中に含まれるフレーバー成分の測定結果を示した図
【図5】評価試料X3及び評価試料X4のヘッドスペー
ス中に含まれるフレーバー成分の測定結果を示した図
【図6】評価試料X5及び評価試料X6及び標準試料S
2のヘッドスペース中に含まれるフレーバー成分の測定
結果を示した図
【図7】評価試料X7及び標準試料S3のヘッドスペー
ス中に含まれるフレーバー成分の測定結果を示した図
【図8】ヘーゼルナッツフレーバー賦香処理した収容容
器の加熱条件の変動におけるフレーバーの官能評価を示
した図
【図9】コーヒーフレーバー賦香処理した収容容器の加
熱条件の変動におけるフレーバーの官能評価を示した図
【図10】ヘーゼルナッツフレーバー及びコーヒーフレ
ーバー賦香処理した収容容器の加熱条件の変動における
フレーバーの官能評価を総合的に評価した図
【図11】収容容器内の温度測定部位を示した図
【図12】各加熱温度における収容容器内温度の推移を
示した図
【符号の説明】
1 粉体食品 2 油脂 3 フレーバー含浸基材 4 揮発性芳香物質 5 収容容器 6 着香紙 A 収容工程 B 密封工程 C 加熱工程 D 冷却工程
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神田 昌志 大阪府高槻市辻子3丁目1番4号 ユーシ ーシー上島珈琲株式会社R&Dセンター内 Fターム(参考) 4B027 FB22 FC01 FE02 FK10 FQ20 FR05 FR06 4B047 LB10 LE02 LE06 LF08 LG10 LP05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 揮発性芳香物質を粉体食品に移行させる
    ことによりフレーバー付与が施される粉体食品の製造方
    法であって、 予め揮発性芳香物質溶解性を有する油脂でコーティング
    してある粉体食品と、予め揮発性芳香物質を含浸させて
    あるフレーバー含浸基材とを収容容器内に装入する収容
    工程と、 前記収容工程において前記粉体食品と前記フレーバー含
    浸基材とが装入された収容容器を密封する密封工程と、 前記密封工程において密封された収容容器を加熱する加
    熱工程とを有するフレーバー付与が施される粉体食品の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 前記加熱工程の後に、前記収容容器を所
    定温度まで冷却する冷却工程を有する請求項1に記載の
    フレーバー付与が施される粉体食品の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記加熱工程は、常温〜95℃の温度範
    囲における任意温度で5〜20分加熱する請求項1又は
    2の何れかに記載のフレーバー付与が施される粉体食品
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記温度範囲は、65〜95℃における
    任意温度である請求項3に記載のフレーバー付与が施さ
    れる粉体食品の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記加熱工程は、 20〜45℃の温度範囲における任意温度で20時間、
    又は、 20〜65℃の温度範囲における任意温度で5時間、又
    は、 27.5〜85℃の温度範囲における任意温度で1時
    間、又は、 45〜85℃の温度範囲における任意温度で40分間、
    又は、 65〜95℃の温度範囲における任意温度で20分間、
    又は、 85〜95℃の温度範囲における任意温度で5分間の何
    れかの条件で加熱する請求項1又は2の何れかに記載の
    フレーバー付与を施す粉体食品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7051174B1 (ja) * 2020-08-10 2022-04-11 MD-Farm株式会社 イチゴの香り付け方法

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JP2017500053A (ja) * 2013-12-23 2017-01-05 コーニンクラケ ダウ エグバート ビー.ブイ. 芳香を保持した可溶性コーヒー
JP7051174B1 (ja) * 2020-08-10 2022-04-11 MD-Farm株式会社 イチゴの香り付け方法

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