JP2003268437A - ばね用鋼材の製鋼精錬方法とその製鋼精錬方法を用いて得られるばね用鋼線 - Google Patents
ばね用鋼材の製鋼精錬方法とその製鋼精錬方法を用いて得られるばね用鋼線Info
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Abstract
段階で発生する非金属介在物の量および個々の大きさを
削減できる溶鋼の精錬方法を提供する。 【解決手段】 C:0.50〜0.90質量%、Si:1.80〜3.00
質量%、Mn:0.5〜1.0質量%、Cr:0.10〜0.90質量%、
V:0.05〜0.15質量%、Ni:0.30質量%以下を含有する
溶鋼とスラグとを反応させて溶鋼中の非金属介在物量を
制御する溶鋼の精錬方法である。このスラグは合計含有
量が50〜90質量%以下のCaOおよびSiO2を含み、CaOおよ
びSiO2の含有量の比率である塩基度(CaO/SiO2)が0.8
以上1.60以下である。
Description
大きさを制御できるばね用鋼材の製鋼精錬方法と、この
精錬方法を含むばね用鋼線の製造方法と、それにより得
られるばね用鋼線に関するものである。特に、ばね用鋼
線の製造に好適なばね用鋼材の製鋼精錬方法に関するも
のである。
高疲労強度を要求される部材の鋼線としてはJIS G3561
で規定されるSWOSC-V相当成分(以下SiCr鋼と言う)の
ものが使用されている。一般的に鋼線の疲労強度は引張
り強度と比例して向上すると言われている。このためよ
り高い疲労強度を要求されるばねなどの構造用部材に
は、より高い引張り強度が狙える成分の鋼線が開発され
ている。その具体例を以下に示す。
許第3233188号)で代表される高Si-SiCr鋼は、従来のSi
Cr鋼よりさらに高い引張り強度が得られ、より高い疲労
強度(例えば107回線返し疲労で800MPa)を達成ができ
るとされている。
は、鋼中成分、含有する介在物の成分および大きさを特
定することで、高い引張り強度が得られ、疲労強度を向
上できる鋼材が開示されている。
び第126・127回西山記念館講座『高清浄鋼:高清浄線材
製造技術の最近の進歩』では、鋼中Si成分が0.5〜1.5質
量%の範囲のSiCr鋼で製鋼精錬の条件を開示している。
さらに、SiCr鋼の疲労性能に影響を及ぼす介在物の組成
制御および削減の効果を示している。
術では、必ずしも十分な疲労性能の改善が実現されてお
らず、より一層の疲労特性改善が求められていた。
らに高い引張り強度が得られ、より高い疲労強度が得ら
れるとされている。しかし、疲労強度は引張り強度と比
例する反面、より微細な欠陥に対しての切り欠き感受性
が増すことによって期待される所定の疲労強度が得られ
ないことも実証されている。つまり、ある程度の強度以
上になると疲労強度のばらつきが大きくなる。その原因
の主なものとしては鋼線内部に、その材料を製造する製
鋼段階で発生する非金属介在物の存在が挙げられる。
分および大きさを鋼中成分のコントロールにより実現し
ようとするものであり、成分コントロールだけでは十分
な疲労強度の改善が得られているわけではない。
1.5質量%の範囲の一般的なSiCr鋼などでは十分な疲労
強度が得られる。しかし、より高強度を狙った高Si-SiC
r鋼などでは介在物の量およびその個々の大きさから、
介在物が起因となる折損により所定の高い疲労強度が得
られない。
では、鋼中Si成分が1.0〜1.5質量%の範囲でのSiCr鋼で
は、その疲労性能に影響を及ぼす非金属介在物について
制御および低減が可能であった。ところが、より疲労強
度が高い鋼中のSi成分が1.8%以上であるSiCr鋼では、S
iが高い分だけ酸化による珪素酸化物(SiO2)の介在物
が増加し、これが疲労性能に悪影響を及ぼし、所定の疲
労性能が得られないという問題があった。
度の高い高Si-SiCr鋼での製鋼段階で発生する非金属介
在物の量および個々の大きさを削減できるばね用鋼材の
製鋼精錬方法を提供することにある。
の量および個々の大きさを削減して高い疲労強度が得ら
れるばね用鋼線とその製造方法を提供することにある。
溶解精錬する工程において、添加するスラグの化学組成
を特定することで上記の目的を達成する。
法は、C:0.50〜0.90質量%、Si:1.80〜3.00質量%、M
n:0.5〜1.0質量%、Cr:0.10〜0.90質量%、V:0.05〜
0.15質量%、Ni:0.30質量%以下を含有する溶鋼とスラ
グとを反応させて溶鋼中の非金属介在物量を制御する溶
鋼の精錬方法である。前記スラグは合計含有量が50〜90
質量%以下のCaOおよびSiO2を含み、CaOおよびSiO2の含
有量の比率である塩基度(CaO/SiO2)が0.8以上1.60以
下であることを特徴とする。
のように限定することで、溶鋼中のSiO2がスラグ中のSi
O2と平衡状態になり、SiO2非金属介在物の発生を抑制す
る。さらに、わずかに発生したSiO2非金属介在物は当該
スラグと反応することによって、後工程である圧延など
の熱間加工によって鋼材とともに変形・破砕され小径化
する。その結果、非金属介在物の組成を、CaO:10〜60
質量%、SiO2:30〜70質量%、Al2O3:40質量%以下、M
nO:20質量%以下、MgO:20質量%以下とした鋼材を得
ることができる。
表的な介在物組成範囲をCaO-SiO2-A1203の三元系状態図
上に斜線部で示す。この斜線部では介在物の融点が1200
〜1500℃と低く、圧延などの熱間加工によって鋼材とと
もに介在物が変形・破砕され小径化することによって疲
労性能に影響を及ぼさなくなるのである。
%含有されていることも好ましい。A1203を前記規定量
含有することで、より低融点の介在物に制御でき、後工
程の熱間圧延で変形されやすい介在物とできる。それに
より、介在物の疲労性能への影響を最小限にし、高い疲
労性能を得ることができる。その他、上記スラグに含ま
れる成分としては、CaF2、MgO、MnO、FeO、Cr2O3、V2O5
などが挙げられる。
たのは、スラグ中のCaO成分の増加により、SiO2より酸
化物として安定なCaOまたはA1203が増加し過ぎること
で、介在物の組成が図2の斜線部から外れることを制御
するためである。
拌することにより、スラグと溶鋼との反応をさらに促進
させることができる。不活性ガスの具体例としてはアル
ゴンガスや窒素ガスが挙げられる。
で、高い疲労性能を有するばね用鋼線を得ることができ
る。すなわち、本発明ばね用鋼線の製造方法は、精錬工
程、鋳造工程、圧延工程、伸線工程および熱処理工程を
具えるばね用鋼線の製造方法である。この精錬工程は、
溶鋼とスラグとを反応させて溶鋼中の非金属介在物量を
制御する。ここで、溶鋼はC:0.50〜0.90質量%、Si:
1.80〜3.00質量%、Mn:0.5〜1.0質量%、Cr:0.10〜0.
90質量%、V:0.05〜0.15質量%、Ni:0.30質量%以下
を含有する。そして、スラグはCaOおよびSiO2を主成分
とし、このスラグ中に占めるCaOおよびSiO2の合計含有
量が50〜90質量%以下であり、CaOおよびSiO2の含有量
の比率である塩基度(CaO/SiO2)が0.8以上1.60以下で
あることを特徴とする。
精錬工程により鋼材中の不純物を除去した溶鋼を得る。
次に、連続鋳造などの鋳造工程により、溶鋼からビレッ
トなどの鋳片を得る。この鋳片を圧延により加工して圧
延材を得る。さらに穴ダイスなどで伸線して細径化す
る。伸線材には、パテンティングなどの熱処理を施して
微細なパーライト組織の鋼線とする。
ね用鋼線は、C:0.50〜0.90質量%、Si:1.80〜3.00質
量%、Mn:0.5〜1.0質量%、Cr:0.10〜0.90質量%、
V:0.05〜0.15質量%、Ni:0.30質量%以下と非金属介
在物と不可避的不純物とからなるばね用鋼線である。そ
して、非金属介在物は、CaO:30〜60質量%、SiO2:20
〜60質量%、A1203:30質量%以下、MnO:20質量%以
下、MgO:20質量%以下を含有することを特徴とする。
度が期待できる。特に、鋼中のSi成分が1.80〜3.00質量
%と高い場合に疲労性能の改善が図れることが特徴であ
る。
を以下に説明する。 (C:0.50〜0.90質量%)Cは一般に鋼材の強度を得るた
めに添加する。0.50質量%未満ではばね用として十分な
強度が得られない。逆に、0.90質量%を超えると、パテ
ンチング処理などの熱処理によって旧オーステナイト粒
界に網目状のセメンタイトが発生し、その後の加工に悪
影響を及ぼす。
を固溶強化するために有効であり、特に熱処理後の強度
低下を抑制する。また、Siの存在により一定の強度を維
持しつつ靭性も確保することができる。1.80質量%未満
では一定の強度は確保できるものの、熱処理による強度
低下が大きい。逆に3.0質量%を超えると、特に製鋼工
程での鋳片表面割れが増加し、疲労性能に悪影響を及ぼ
す。
を上げる元素であり、0.5質量%未満では十分な強度が
得られない。また、1.0質量%を超えると、偏析しやす
い元素であるので偏析部でマルテンサイトが発生し、線
加工時に悪影響を及ぼす。
の焼入れ性を向上させると共に、焼入れ後の焼き戻し軟
化抵抗性を高め、高強度化に寄与する元素である。0.1
質量%未満では、この効果が十分得られない。また、0.
9質量%を超えると焼入れ性の過度の増大となって靭性
の低下をもたらす。
炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる元素である。0.
05質量%未満では、その効果が少ない。一方、0.15質量
%を超えると焼入れ時に炭化物を多く形成して靭性の低
下を招く。
ェライト中に固溶し、材料の破壊靭性を向上させる元素
である。望ましくは0.10質量%以上でより効果が出せ
る。一方、0.30質量%を超えるとパテンチング時あるい
は加工中にマルテンサイトが発生し、加工性に悪影響を
及ぼす。
する。 (試験例)ここで試作に用いた鋼種およびスラグの化学
成分を表1に示す。この鋼種を大きく分けると下記A、
B、Cの3種類に分類される。本発明実施例はC-4、C-6、C
-7である。
当成分のもの(表1のサンプルA-1〜A-5)。 (B)Cを0.64〜0.65質量%、Vを約0.11〜0.12質量%を
添加したもの(表1のサンプルB-1〜B-5)。 (C)Cを0.62〜0.64質量%、Vを約0.11〜0.13質量%、
Siを1.97〜2.08質量%としたもの(表1のサンプルC-1
〜C-6)、さらにNiを約0.1質量%添加したもの(表1の
サンプルC-7)。
の含有量を表1のように調整して塩基度(CaO/SiO2)
を0.34から1.80まで変化させた。また、一部のスラグに
はA1203を12.0質量%加えたスラグも用いた。
まで加熱した溶鋼を炉外精錬用の容器(レードルまたは
取鍋)に移す。その際、スラグを形成する造滓剤は、電
気炉あるいはレードルに投入する。そして、真空精錬装
置による0.1〜100torr(133hPa)の減圧下で底部ポーラス
レンガまたは上部上吹きランスによりアルゴンガスなど
の不活性ガスを吹き込み、溶鋼とスラグを撹拌反応させ
て精錬する。その後、精錬した溶鋼を鋳造して鋳片を製
造した。
鋳片から熱間圧延により圧延線材としたものを公知の条
件で伸線−熱処理−表面処理して3.3mmφの線とした。
その後、得られた線材に中村式回転曲げ試験を実施し、
折損した線破面から検出できる非金属介在物の量を出現
率で定量指標化する。非金属介在物はSEMで観察し、そ
のとき観察される最大介在物の長さを介在物最大径とし
た。出現率と介在物最大径を表1に、最大径の介在物の
組成を表2に示す。また、スラグ塩基度と出現率との関
係を図1のグラフに示す。
(鋼種A、B)ではスラグ塩基度が0.5から1.0ぐらいまで
の範囲で介在物指標(出現率)が低い良好な値となって
いるが、その範囲から外れた場合では50以上と介在物指
標が悪い値となっている。
より、後加工である熱間加工により介在物は線方向に引
き延ばされ、線断面では小径化する。そのため、線断面
では最大径介在物の大きさが30μm以下となり、疲労破
壊の起点となり難くなる。
基度が0.9から1.6ぐらいまでの範囲で介在物指標が低い
良好な値となっている。
加したサンプル鋼種C-6については出現率は約12%と良
好な結果となっている。
おいて溶鋼とともに添加するスラグにCaO、SiO2を含有
し、その合計含有量を50〜90質量%以下とし、かつ塩基
度(CaO/SiO2)を0.8以上1.60以下とすれば、疲労試験
における介在物の出現率が20%前後と低くなり、疲労性
能を向上させることができる。特に、A1203を5質量%以
上20質量%以下含有していれば一層好ましい結果が得ら
れる。
であるサンプルC-2の疲労特性を図2および図3のS-N線
図に示す。
が少ないC-4では疲労限が1000万回以上の繰返しで1100N
/mm2と高い値を示す。これに対してC-2では、介在物に
よる折損が多く、このために疲労限は1000万回以上の繰
返しで1060N/mm2程度と低い。このことから、本発明方
法およびその方法により作製した線材は介在物が少な
く、疲労性能の大幅な向上が見込まれる。
法では、溶鋼中に添加されるスラグの組成を限定するこ
とで、精錬工程で鋼中の介在物を低減し、さらには介在
物の組成をコントロールすることができ、得られるばね
用鋼線の疲労強度を向上させることができる。従って、
本発明方法により得られたばね用鋼線を、自動車エンジ
ン用弁ばね又はクラッチ用ばねなど疲労強度が要求され
る部品の素材などとして利用すれば最適である。
示すグラフである。
ある。
Claims (5)
- 【請求項1】 C:0.50〜0.90質量%、Si:1.80〜3.00
質量%、Mn:0.5〜1.0質量%、Cr:0.10〜0.90質量%、
V:0.05〜0.15質量%、Ni:0.30質量%以下を含有する
溶鋼とスラグとを反応させて溶鋼中の非金属介在物量を
制御するばね用鋼材の製鋼精錬方法であって、 前記スラグは合計含有量が50〜90質量%のCaOおよびSiO
2を含み、 CaOおよびSiO2の各含有量の比率である塩基度(CaO/SiO
2)が0.8以上1.60以下であることを特徴とするばね用鋼
材の製鋼精錬方法。 - 【請求項2】 さらに前記スラグ中にA1203が5.0〜20質
量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の
ばね用鋼材の製鋼精錬方法。 - 【請求項3】 溶鋼中に不活性ガスを吹き込んで攪拌す
ることを特徴とする請求項1に記載のばね用鋼材の製鋼
精錬方法。 - 【請求項4】 請求項1に記載のばね用鋼材の製鋼精錬
方法を用いて得られるばね用鋼線であって、 C:0.50〜0.90質量%、Si:1.80〜3.00質量%、Mn:0.5
〜1.0質量%、Cr:0.10〜0.90質量%、V:0.05〜0.15質
量%、Ni:0.30質量%以下と非金属介在物とを含み、 前記非金属介在物は、CaO:30〜60質量%、SiO2:20〜6
0質量%、A1203:30質量%以下、MnO:20質量%以下、M
gO:20質量%以下を含有することを特徴とするばね用鋼
線。 - 【請求項5】 精錬工程、鋳造工程、圧延工程、伸線工
程および熱処理工程を具えるばね用鋼線の製造方法であ
って、 前記精錬工程は、溶鋼とスラグとを反応させて溶鋼中の
非金属介在物量を制御し、 前記溶鋼はC:0.50〜0.90質量%、Si:1.80〜3.00質量
%、Mn:0.5〜1.0質量%、Cr:0.10〜0.90質量%、V:
0.05〜0.15質量%、Ni:0.30質量%以下を含有し、 前記スラグは合計含有量が50〜90質量%以下のCaOおよ
びSiO2を含み、CaOおよびSiO2の各含有量の比率である
塩基度(CaO/SiO2)が0.8以上1.60以下であることを特
徴とするばね用鋼線の製造方法。
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