JP2003267766A - セメント硬化体の製法及びそのセメント硬化体 - Google Patents

セメント硬化体の製法及びそのセメント硬化体

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 蒸気養生により強度が増進する、セメント硬
化体の製法及びそのセメント硬化体を提供すること。 【解決手段】 高炉徐冷スラグ粉末を含有してなるセメ
ントコンクリート組成物と水とを混練してセメントコン
クリートを調製し、成形し、蒸気養生することを特徴と
するセメント硬化体の製法であり、高炉徐冷スラグ粉末
がメリライトを主成分とし、二酸化炭素吸収量が2%以
上である、また、高炉徐冷スラグ粉末がメリライトを主
成分とし、その強熱減量が5%以下である、さらには、
高炉徐冷スラグ粉末のガラス化率が30%以下である該セ
メント硬化体の製法であり、該製法で製造したセメント
硬化体を構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セメント硬化体の
製法及びそのセメント硬化体、特に、蒸気養生により製
造されたセメント硬化体の製法及びそのセメント硬化体
に関する。なお、本発明のセメントコンクリートとは、
セメントペースト、モルタル、及びコンクリートを総称
するものである。また、本発明における部や%は、特に
規定しない限り質量基準である。
【0002】
【従来の技術とその課題】普通ポルトランドセメントに
シリカフュームなど、平均粒径1μm以下の超微粉を混
和したセメント組成物は、低水セメント比で混練し、オ
ートクレーブ養生すると高い強度が得られることが良く
知られている(「シリカ質混合セメントのオートクレー
ブ養生強さにおよぼす混合セメントの種類と前養生方法
および養生圧力の影響」、高橋等、セメント技術年報、
1960、昭和35年、第299〜309頁参照)。しかしながら、
このセメント組成物に含まれる超微粉は密度が小さいた
め、かさ高く、作業性に優れた流動性を付与しにくいと
いう課題があった。
【0003】そこで、高減水率を有する減水剤などを利
用し、流動性を保持する技術が開発されている(特公昭6
1−025670号公報参照)。しかしながら、これら減水剤は
高価で、経済的でないという課題があった。
【0004】また、これら超微粉は凝集しやすい性質が
あるため、セメントコンクリート中での分散がうまくい
かない場合、充分な強度が得られず、品質が安定しない
という課題があった。
【0005】本発明者は、これらの状況に鑑み、種々検
討した結果、高炉徐冷スラグ粉末を含有したセメントコ
ンクリートは流動性の保持性に優れ、かつ、蒸気養生し
た場合、高炉徐冷スラグ粉末無混和のものに比べ強度が
増進することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、高炉徐
冷スラグ粉末を含有してなるセメントコンクリート組成
物と水とを混練してセメントコンクリートを調製し、成
形し、蒸気養生することを特徴とするセメント硬化体の
製法であり、高炉徐冷スラグ粉末がメリライトを主成分
とし、二酸化炭素吸収量が2%以上である、また、高炉
徐冷スラグ粉末がメリライトを主成分とし、その強熱減
量が5%以下である、さらには、高炉徐冷スラグ粉末の
ガラス化率が30%以下である該セメント硬化体の製法で
あり、該製法で製造したセメント硬化体である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳細に説明す
る。
【0008】本発明で使用する高炉徐冷スラグ粉末(以
下、徐冷スラグ粉という)は、高炉徐冷スラグの微粉末
であって、徐冷されて結晶化した密度3.00g/cm3の高炉
スラグ粉末である。高炉徐冷スラグの成分は高炉水砕ス
ラグと同様の組成を有しており、具体的には、SiO2、Ca
O、Al2O3、及びMgOなどを主要な化学成分とし、その他
の成分として、TiO2、MnO、Na2O、S、P2O5、及びFe2O3
などが挙げられる。また、徐冷スラグ粉は、ゲーレナイ
ト2CaO・Al2O3・SiO2とアケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2
混晶である、いわゆる、メリライトを主成分とするもの
で、その他、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2、ラ
ンキナイト3CaO・2SiO2、及びワラストナイトCaO・SiO2
どのカルシウムシリケート、メルビナイト3CaO・MgO・2Si
O2やモンチセライトCaO・MgO・SiO2などのカルシウムマグ
ネシウムシリケート、アノーサイトCaO・Al2O3・2SiO2
リューサイト(K2O、Na2O)・Al2O3・SiO2、スピネルMgO・Al
2O3、マグネタイトFe3O4、並びに、硫化カルシウムCaS
や硫化鉄FeSなどの硫化物等を含む場合がある。
【0009】本発明では、高炉徐冷スラグを微粉末にし
たもののうち、メリライトを主成分とし、二酸化炭素吸
収量(以下、CO2吸収量という)が2%以上である徐冷ス
ラグ粉を用いる。CO2吸収量は、炭酸ガス濃度5%、温
度30℃、及び相対湿度60%の条件で7日間炭酸化させた
際の二酸化炭素吸収量を意味するものである。この際、
炭酸化処理を行う前の試料が二酸化炭素を含んでいる場
合があるので、(二酸化炭素吸収量)=(炭酸化処理後の
試料の二酸化炭素量)−(炭酸化処理前の試料の二酸化炭
素量)の式で表すことが可能である。CO2吸収量は全炭素
分析によって炭素量を定量し、CO2量に換算することに
よって求められる。また、TG-DTAやDSCなどの熱分析等
によっても求めることが可能である。本発明の徐冷スラ
グ粉のCO2吸収量は2%以上であり、3%以上が好まし
く、4%以上がより好ましい。CO2吸収量が2%未満で
は中性化の抑制効果が充分でなく、本発明の効果が充分
に得られない場合がある。
【0010】また、本発明では、メリライトを主成分と
し、強熱減量(以下、結合水量という)が5%以下である
徐冷スラグ粉を用いることが好ましく、4%以下のもの
がより好ましく、3%以下のものが最も好ましい。結合
水量が5%を超える徐冷スラグ粉を用いると、過剰強度
や、それに伴う水和発熱や自己収縮が大きくなり本発明
の効果が充分に得られない場合がある。強熱減量とは、
一般的に、1,000℃で30分間強熱した際の重量減少を意
味し、水和させた試料の結合水量として取り扱われる。
試料の前処理は多量のアセトンやアルコールなどによっ
て、水和した試料から余剰水を取り除いた後、乾燥す
る。乾燥条件は、水和物の結合水の一部が逸脱しないよ
うな乾燥条件で行う。例えば、アスピレータなどにより
減圧乾燥して恒量となるまで行う。本発明では、CO2
収量が前記の条件を満たす徐冷スラグ粉、あるいは、結
合水量が前記の条件を満たす徐冷スラグ粉のいずれかを
使用可能であるが、本発明の効果を多面的に取り入れる
観点から、CO2吸収量と結合水量の双方について前記の
条件を満たす徐冷スラグ粉を使用することが好ましい。
【0011】徐冷スラグ粉のガラス化率は30%以下が好
ましく、10%以下がより好ましい。ガラス化率が30%を
超えると水和熱が大きくなる場合がある。ここででいう
ガラス化率(X)とは、X(%)=(1−S/S0)×100とし
て求められる。ここで、Sは粉末X線回折法により求め
られる徐冷スラグ粉中の主要な結晶性化合物であるメリ
ライトのメインピークの面積であり、S0は徐冷スラグ
粉を1,000℃で3時間加熱し、その後、5℃/分の冷却
速度で冷却したもののメリライトのメインピークの面積
を表す。
【0012】徐冷スラグ粉のブレーン比表面積値(以
下、ブレーン値という)は特に限定されるものではない
が、2,000cm2/g以上が好ましく、4,000cm2/g以上がより
好ましく、、6,000cm2/g以上が最も好ましい。ブレーン
値が2,000cm2/g未満では、強度増進効果が得られない場
合がある。また、本発明では、徐冷スラグ粉のメリライ
トの格子定数aが7.73〜7.82の範囲にあるものが特に中
性化の抑制効果が顕著であることから好ましい。
【0013】本発明において、徐冷スラグ粉の配合方法
は特に限定されるものではないが、セメントコンクリー
トに使用する場合、そのまま、セメントコンクリートの
混和材として使用することも可能であるが、通常、骨材
と置換して配合することが好ましく、特に細骨材と置換
して配合することがより好ましい。
【0014】徐冷スラグ粉の使用量は、セメントコンク
リートの配合により変化するため特に限定されるもので
はないが、通常、セメント100部に対して、1〜20部が
好ましく、5〜15部がより好ましい。1部未満では蒸気
養生後の強度増進効果が小さい場合があり、20部を超え
ると流動性が低下し、作業性が悪くなる場合がある。
【0015】本発明で使用するセメントとしては、普
通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトラ
ンドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉水
砕スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種
混合セメント、また、これらポルトランドセメントに石
灰石微紛末を混合した石灰石フィラーセメントなどが挙
げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能で
ある。
【0016】本発明の蒸気養生用セメント組成物の粒度
は、使用する目的・用途により異なるため特に限定され
るものではないが、通常、ブレーン値2,000〜8,000cm2/
gが好ましく、3,000〜6,000cm2/gがより好ましい。2,00
0cm2/g未満では強度発現性が充分に得られない場合があ
り、8,000cm2/gを超えると作業性が悪くなる場合があ
る。
【0017】水の使用量は、セメント100部に対して、4
0〜60部が好ましく、45〜55部がより好ましい。40部未
満では本発明の効果が得にくく、60部を超えると高温高
圧下においても、強度の増進につながらない場合があ
る。
【0018】本発明では、セメント、徐冷スラグ粉、及
び必要に応じ骨材を含有するセメントコンクリート組成
物と水を混練し、セメントコンクリートを調製し、それ
を成形して蒸気養生する。ここで、混練条件や成形条件
は、使用する用途によって異なり特に限定されるもので
はない。
【0019】本発明の蒸気養生時、セメント組成物を混
練後、蒸気養生する際の温度条件は40〜80℃が好まし
く、45〜65℃がより好ましい。40℃未満では、所定の強
度を満足するまでの養生期間が長くなる場合があり、80
℃を超えるとセメントコンクリートの表面にクラックが
発生しやすくなる場合がある。また、養生期間は温度に
より異なるが、通常、24時間以内が好ましく、18時間以
内がより好ましい。
【0020】本発明では、セメント、徐冷スラグ粉、砂
や砂利等の骨材の他に、従来、セメントコンクリートに
用いられるような石灰石微粉末等の混和材料、減水剤、
AE減水剤、高性能減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、
防凍剤、高分子エマルジョン、収縮低減剤、凝結調整
剤、粘土化合物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交
換体、膨張材、及び急硬材等のうちの一種又は二種以上
を、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することが可
能である。
【0021】また、本発明のセメントコンクリート組成
物は各材料を施工時に配合しても良いし、あらかじめ一
部を、また、全部を混合しておいても差し支えない。
【0022】
【実施例】以下の実験例により本発明をさらに詳細に説
明する。
【0023】実験例1 セメント/細骨材比が1/2、水セメント比が50%のモ
ルタルを基本配合とし、セメント100部に対して、10部
の徐冷スラグ粉を骨材と置換してモルタルを調製した。
調製したモルタルを型枠に詰め、20℃で前養生を4時間
行った後、60℃まで2時間で昇温し、60℃で4時間保持
した後冷却し、その後、型枠を脱型し、モルタルの圧縮
強度を測定した。結果を表1に併記する。
【0024】<使用材料> セメント :電気化学工業社製、普通ポルトランドセメ
ント、密度3.15g/cm3、ブレーン値3,200cm2/g 細骨材 :ISO標準砂 徐冷スラグ粉A:密度3.00g/cm3、ブレーン値2,000cm2/
g、 徐冷スラグ粉B:密度3.00g/cm3、ブレーン値4,000cm2/
g、 徐冷スラグ粉C:密度3.00g/cm3、ブレーン値6,000cm2/
g、 水 :水道水
【0025】<測定方法> 圧縮強度:4×4×16cm供試体を作製。JIS R
5201に準拠し、蒸気養生終了後に測定
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】上記結果より、高炉徐冷スラグを砂と置
換したモルタルは、蒸気養生により強度が増進する。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高炉徐冷スラグ粉末を含有してなるセメ
    ントコンクリート組成物と水とを混練してセメントコン
    クリートを調製し、成形し、蒸気養生することを特徴と
    するセメント硬化体の製法。
  2. 【請求項2】 高炉徐冷スラグ粉末が、メリライトを主
    成分とし、二酸化炭素吸収量が2%以上であることを特
    徴とする請求項1に記載のセメント硬化体の製法。
  3. 【請求項3】 高炉徐冷スラグ粉末が、メリライトを主
    成分とし、その強熱減量が5%以下であることを特徴と
    する請求項1又は2に記載のセメント硬化体の製法。
  4. 【請求項4】 高炉徐冷スラグ粉末のガラス化率が30%
    以下であることを特徴とする請求項1〜3のうちの一項
    に記載のセメント硬化体の製法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のうちの一項に記載のセメ
    ント硬化体の製法で製造されたセメント硬化体。
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WO2024128216A1 (ja) * 2022-12-13 2024-06-20 太平洋セメント株式会社 セメント組成物及び水硬性組成物

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