JP2003266228A - 切削加工法 - Google Patents

切削加工法

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JP2003266228A
JP2003266228A JP2002065916A JP2002065916A JP2003266228A JP 2003266228 A JP2003266228 A JP 2003266228A JP 2002065916 A JP2002065916 A JP 2002065916A JP 2002065916 A JP2002065916 A JP 2002065916A JP 2003266228 A JP2003266228 A JP 2003266228A
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cut
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JP2002065916A
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English (en)
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Hiroyuki Sasahara
弘之 笹原
Toshiaki Segawa
俊明 瀬川
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Japan Aircraft Manufacturing Co Ltd
Original Assignee
Japan Aircraft Manufacturing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】切削効率が低下させずに被加工表面層に圧縮残
留応力を生成させる切削加工法を提供する。 【解決手段】被加工表面層12に直交する直線を基準線
30とし、この基準線30に対してボールエンドミル2
0の中心軸22が傾斜している傾斜角度θを変更して被
加工表面層12を切削加工した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼やアルミニウム
などを切削加工する切削加工法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば航空機などの主要構造に使用され
る部品には、通常、高い疲労強度と耐応力腐食割れ性が
要求されている。このような要求を満たすためには、一
般に、切削加工で部品を作製し、その後、この部品にシ
ョットピーニングを施す。このショットピーニングによ
って部品の表面層に圧縮残留応力が生成されるので、部
品は高い疲労強度と耐応力腐食割れ性を有することとな
る。
【0003】しかし、ショットピーニングは切削加工と
は別の作業工程になる。また、ショットピーニングは、
部品の表面に鋼球等を衝突させる加工法であるので、部
品の精度に悪影響を与えるおそれがある。
【0004】そこで、工具の切削速度を限定すると共
に、工具軸方向と工具径方向の切り込み量を限定して、
切削加工の際に表面層に圧縮残留応力を生成される技術
が提案されている(特開2000−61735号公報参
照)。しかし、この技術では、工具の切削速度等を限定
しているので、切削効率が低下するおそれがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑み、切削効率を低下させずに被加工表面層に圧縮残留
応力を生成させる切削加工法を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の切削加工法は、(1)先端部に切刃が形成さ
れた工具の該先端部で所定の被加工表面層を切削加工す
る際に、前記被加工表面層を塑性流動させながら切削す
ることにより該被加工表面層に圧縮残留応力を生成する
ことを特徴とするものである。
【0007】ここで、(2)前記工具は、円柱状のもの
であって、該円柱の横断面の中央を通る中心軸を回転中
心にして回転しながら前記被加工表面層を切削するもの
であってもよい。
【0008】また、(3)前記被加工表面層に直交する
基準線に対して前記中心軸が傾斜している傾斜角度、前
記工具の回転数、所定の送り方向に直交するピックフィ
ード方向に前記工具を移動させる間隔、前記切刃の一枚
が一回で前記被加工表面層を切削する長さ、及び前記工
具が前記被加工表面層を切削する切削深さのうちの少な
くとも一つが所定範囲内の数値になるように設定して前
記被加工表面層を切削することにより該被加工表面層に
圧縮残留応力を生成させてもよい。
【0009】さらに、(4)前記傾斜角度を0°以上3
0°以下の範囲内の角度にして前記被加工表面層を切削
してもよい。
【0010】さらにまた、(5)前記工具の回転数を毎
分1000回以上20000回以下の範囲内の回転数に
して前記被加工表面層を切削してもよい。
【0011】さらにまた、(6)前記工具を所定の送り
方向に所定距離だけ移動させながら前記被加工表面層を
切削し、その後、前記所定の送り方向に直交するピック
フィード方向に前記工具を所定間隔だけ移動させ、その
後、前記工具を前記所定の送り方向とは反対方向に移動
させながら前記被加工表面層を切削してもよい。
【0012】さらにまた、(7)前記工具を前記ピック
フィード方向に移動させる間隔は、0.1mm以上0.
5mm以下の範囲内であってもよい。
【0013】さらにまた、(8)前記工具を前記送り方
向若しくは前記反対方向に移動させながら回転させて前
記被加工表面層を切削する際に、前記切刃の一枚が一回
で前記被加工表面層を切削する長さを0.05mm以上
0.2mm以下の範囲内にしてもよい。
【0014】さらにまた、(9)前記工具で前記被加工
表面層を切削する際の切削深さは、0.1mm以上0.
75mm以下の範囲内であってもよい。
【0015】さらにまた、(10)前記工具の切刃は、
その表面にDLC膜がコーティングされたものであって
もよい。
【0016】さらにまた、(11)前記被加工表面層に
切削油を供給しながら切削してもよい。
【0017】さらにまた、(12)前記被加工表面層
は、鋼、アルミニウム、及びアルミニウム合金のうちの
いずれかであってもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施形態
を説明する。
【0019】図1と図2を参照して、被切削材と切削加
工方向について説明する。
【0020】図1は被切削材を示す、(a)は平面図で
あり、(b)は側面図である。図2(a)は、切削加工
方向を示す平面図であり、(b)は(a)のD―D断面
図である。
【0021】被切削材10は、直方体のアルミニウム合
金(AL7075−T651)である。また、被切削材
10の長さLは約150mmであり、幅Wは約90mm
であり、厚さtは約6mmである。
【0022】被切削材10を切削加工する工具は、周知
のボールエンドミル20である。このボールエンドミル
20の先端部には、被切削材10を切削する切刃(図示
せず)が形成されている。切刃を被切削材10の被加工
表面層12に押し当てて被加工表面層12を切削する。
【0023】被加工表面層12を切削する際には、ボー
ルエンドミル20を矢印A方向(本発明にいう送り方向
の一例である)に所定距離(ここでは、被切削材10の
長さL)だけ移動させながら被加工表面層12を切削す
る。その後、矢印A方向に直交するピックフィード方向
(矢印C方向)にボールエンドミル20を所定間隔(後
述するピックフィード量)だけ移動させる。次に、ボー
ルエンドミル20を矢印B方向(本発明にいう所定の送
り方向とは反対方向)に移動させながら被加工表面層1
2を切削する。矢印B方向に移動させながらの切削が終
了した後は、矢印C方向にボールエンドミル20を所定
間隔だけ移動させ、再び、ボールエンドミル20を矢印
A方向に移動させながら被加工表面層12を切削する。
上記のような切削を繰り返して幅W1に相当する領域を
切削加工した。
【0024】ボールエンドミル20は円柱状のものであ
って、円柱の横断面の中央を通る中心軸22を回転中心
にして回転しながら被加工表面層12を切削する。な
お、切削には、ボールエンドミル20の送り方向によっ
て、アップカット(上向削り)とダウンカット(下向き
削り)がある、ことは周知である。
【0025】本発明では、被加工表面層12に対してボ
ールエンドミル20を傾斜させる点に特徴の一つがあ
る。また、上記したピックフィード量を限定する点にも
特徴がある。これらについて図3を参照して説明する。
【0026】図3(a)は、ボールエンドミルの傾斜角
度を示す模式図であり、(b)は、ピックフィード量を
示す模式図である。
【0027】(a)に示すように、被加工表面層12に
直交する直線を基準線30とする。この基準線30に対
してボールエンドミル20の中心軸22が傾斜している
傾斜角度θを変更して被加工表面層12を切削加工し
た。
【0028】また、(b)に示すように、ピックフィー
ド方向(矢印C方向)にボールエンドミル20を移動さ
せる間隔(ピックフィード量)Pを変更して被加工表面
層12を切削加工した。さらに、ボールエンドミル20
で被加工表面層12を切削する際の中心軸方向の切削深
さ(軸方向切り込み量)dも変更して被加工表面層12
を切削加工した。
【0029】図4を参照して、残留応力を測定する方法
を説明する。
【0030】図4は、X線残留応力測定方法を示す模式
図である。
【0031】残留応力の測定ではX線を利用して、矢印
A方向(送り方向)及び矢印C方向(ピックフィード方
向)の2方向における残留応力を測定した。残留応力を
測定した領域Xは、切削した領域のほぼ中央部である。
表1に示すような切削条件を変えて被加工表面層12を
切削加工した。
【表1】
【0032】変更した切削条件には、表1に示すよう
に、下記1.〜8.のものがある。
【0033】1.傾斜角度θ(図3参照) 本実施形態では、θを0°と30°にして切削した。
【0034】2.中心軸22(図3参照)を中心に回転
する回転数(ボールエンドミル20の回転数) 本実施形態では、回転数を1000rpm,5000r
pm,10000rpm,及び20000rpm,に変
更して切削した。
【0035】3.ボールエンドミル20が中心軸22を
中心に回転しながら矢印A方向(又は矢印B方向)に移
動する際に一枚の切刃が一回で被加工表面層12を切削
する長さ(一刃あたりの送り量) 本発明の実施の形態では、0.05mm,0.1mm,
及び0.2mm,に変更して切削した。
【0036】4.ボールエンドミル20で被加工表面層
12を切削する際の中心軸方向の切削深さ(軸方向切り
込み量)d 本実施形態では、dを0.1mm,0.3mm,0.5
mm,及び0.75mmに変更して切削した。
【0037】5.矢印C方向にボールエンドミル20を
移動させる距離(ピックフィード量) 本実施形態では、ピックフィード量を、0.1mm,
0.3mm,及び0.5mmに変更して切削した。
【0038】6.切削方向 本実施形態では、アップカット及びダウンカットで切削
した。
【0039】7.切削油 本実施形態では、切削の際に切削油を使用しないドライ
の場合と、水溶性切削油を使用した場合とに変更して比
較した。
【0040】8.刃先のコーティング 本実施形態では、DLCコーティングした刃先を使用し
た場合と、コーティングを全く施していない刃先を使用
した場合とに変更して比較した。なお、DLCとは、ダ
イヤモンドライクカーボンの略であり、イオンを利用し
た気相合成法によって合成されるカーボン薄膜の総称を
いい、このカーボン薄膜は、ダイヤモンドに類似した高
硬度、電気絶縁性、赤外線透過性などを有する。
【0041】上記した1.から8.までの切削条件を変
えて被加工表面層12をボールエンドミル20で切削加
工した。切削加工後の被加工表面層12における残留応
力と切削条件との関係を表2から表7までに示す。
【0042】各表に示す残留応力の(−)は圧縮残留応
力を表し、(+)は引張り残留応力を表す。また、ID
は、変更した切削条件を表す番号である。
【表2】
【0043】表2は、傾斜角度θを0°とし、切削油を
使用して(ウェット)、被加工表面層12(図2参照)
を切削した場合を示す。ID1は、中心軸回転数100
0rpm、一刃当りの送り量0.1mm、ピックフィー
ド量0.3mm、軸方向切り込み量0.3mmとした。
この切削条件では、送り方向に155.99Mpaの圧
縮残留応力が生成すると共にピックフィード方向に10
4.31Mpaの圧縮残留応力が生成した。ID2から
ID11までは表2に示す切削条件で、ID1と同様
に、送り方向及びピックフィード方向ともに圧縮残留応
力が生成した。このように、送り方向及びピックフィー
ド方向ともに圧縮残留応力が生成した理由は、被加工表
面層12を塑性流動させながら切削加工したからであ
る。
【表3】
【0044】表3は、傾斜角度θを30°とし、切削油
を使用し(ウェット)、ダウンカットで被加工表面層1
2(図2参照)を切削した場合を示す。ID1は、中心
軸回転数1000rpm、一刃当りの送り量0.1m
m、ピックフィード量0.3mm、軸方向切り込み量
0.3mmとした。この切削条件では、送り方向に6
6.15Mpaの圧縮残留応力が生成すると共にピック
フィード方向に27.16Mpaの圧縮残留応力が生成
した。ID2からID11までは表3に示す切削条件
で、一部の切削条件を除いて、送り方向及びピックフィ
ード方向ともに圧縮残留応力が生成した。このように、
送り方向及びピックフィード方向ともに圧縮残留応力が
生成した理由は、被加工表面層12を塑性流動させなが
ら切削加工したからである。
【表4】
【0045】表4は、傾斜角度θを0°とし、切削油を
使用せずに(ドライ)、被加工表面層12(図2参照)
を切削した場合を示す。ID1は、中心軸回転数100
0rpm、一刃当りの送り量0.1mm、ピックフィー
ド量0.3mm、軸方向切り込み量0.3mmとした。
この切削条件では、送り方向に103.02Mpaの圧
縮残留応力が生成すると共にピックフィード方向に12
6.09Mpaの圧縮残留応力が生成した。ID2から
ID11までは表4に示す切削条件で、ID1と同様
に、送り方向及びピックフィード方向ともに圧縮残留応
力が生成した。このように、送り方向及びピックフィー
ド方向ともに圧縮残留応力が生成した理由は、被加工表
面層12を塑性流動させながら切削加工したからであ
る。
【表5】
【0046】表5は、傾斜角度θを30°とし、切削油
を使用せず(ドライ)、ダウンカットで被加工表面層1
2(図2参照)を切削した場合を示す。ID1は、中心
軸回転数1000rpm、一刃当りの送り量0.1m
m、ピックフィード量0.3mm、軸方向切り込み量
0.3mmとした。この切削条件では、送り方向に4
8.26Mpaの圧縮残留応力が生成すると共にピック
フィード方向に59.781Mpaの圧縮残留応力が生
成した。ID2からID11までは表5に示す切削条件
で、一部の切削条件を除いて、送り方向及びピックフィ
ード方向ともに圧縮残留応力が生成した。このように、
送り方向及びピックフィード方向ともに圧縮残留応力が
生成した理由は、被加工表面層12を塑性流動させなが
ら切削加工したからである。
【表6】
【0047】表6は、傾斜角度θを30°とし、切削油
を使用せず(ドライ)、アップカットで被加工表面層1
2(図2参照)を切削した場合を示す。ID1は、中心
軸回転数1000rpm、一刃当りの送り量0.1m
m、ピックフィード量0.3mm、軸方向切り込み量
0.3mmとした。この切削条件では、送り方向に17
Mpaの圧縮残留応力が生成した。ID2からID11
までは表6に示す切削条件で、送り方向に圧縮残留応力
が生成した。このように、送り方向に圧縮残留応力が生
成した理由は、被加工表面層12を塑性流動させながら
切削加工したからである。
【表7】
【0048】表7は、傾斜角度θを30°とし、切削油
を使用し(ウェット)、アップカットで被加工表面層1
2(図2参照)を切削した場合を示す。ID1は、中心
軸回転数1000rpm、一刃当りの送り量0.1m
m、ピックフィード量0.3mm、軸方向切り込み量
0.3mmとした。この切削条件では、送り方向に28
Mpaの圧縮残留応力が生成した。ID2からID11
までは表7に示す切削条件で一部を除いて、送り方向に
圧縮残留応力が生成した。このように、送り方向に圧縮
残留応力が生成した理由は、被加工表面層12を塑性流
動させながら切削加工したからである。
【0049】図5と図6を参照して、一刃当りの送り量
を変えた場合における一刃当りの送り量と残留応力との
関係を示す。
【0050】図5は、切削条件として、θを0°、中心
軸回転数を10,000rpm、軸方向切り込み量を
0.3mm、ピックフィード量を0.3mm、ウェット
とし、一刃当りの送り量を0.05mm,0.1mm,
0.2mmに変えたときの残留応力を示すグラフであ
る。一刃当りの送り量が0.05mm,0.1mm,
0.2mmのいずれの場合でも、ピックフィード方向に
圧縮残留応力が生成した。この圧縮残留応力は、一刃当
りの送り量が増えるほど大きくなった。
【0051】図6は、切削条件として、θを0°、中心
軸回転数を10,000rpm、軸方向切り込み量を
0.3mm、ピックフィード量を0.3mm、ドライと
し、一刃当りの送り量を0.05mm,0.1mm,
0.2mmに変えたときの残留応力を示すグラフであ
る。一刃当りの送り量が0.05mm,0.1mm,
0.2mmのいずれの場合でも、ピックフィード方向に
圧縮残留応力が生成した。この圧縮残留応力は、一刃当
りの送り量が増えるほど大きくなった。
【0052】図7と図8を参照して、ピックフィード量
を変えた場合におけるピックフィード量と残留応力との
関係を示す。
【0053】図7は、切削条件として、θを0°、中心
軸回転数を10,000rpm、軸方向切り込み量を
0.3mm、一刃当りの送り量を0.1mm、ウェット
とし、ピックフィード量を0.1mm,0.3mm,
0.5mmに変えたときの残留応力を示すグラフであ
る。ピックフィード量が0.1mm,0.3mm,0.
5mmのいずれの場合でも、ピックフィード方向に圧縮
残留応力が生成した。この圧縮残留応力は、ピックフィ
ード量が少ないほど大きくなった。
【0054】図8は、切削条件として、θを0°、中心
軸回転数を10,000rpm、軸方向切り込み量を
0.3mm、一刃当りの送り量を0.1mm、ドライと
し、ピックフィード量を0.1mm,0.3mm,0.
5mmに変えたときの残留応力を示すグラフである。ピ
ックフィード量が0.1mm,0.3mm,0.5mm
のいずれの場合でも、ピックフィード方向に圧縮残留応
力が生成した。この圧縮残留応力は、ピックフィード量
が0.3のときに最大になった。
【0055】図9と図10を参照して、刃先のコーティ
ングの有無及び切削油の有無(ドライかウェットか)
と、残留応力との関係を示す。
【0056】図9は、切削条件として、θを0°、中心
軸回転数を10,000rpm、軸方向切り込み量を
0.3mm、一刃当りの送り量を0.1mmとし、刃先
のコーティングの有無及び切削油の有無を変えたときの
残留応力を示すグラフである。刃先のコーティングの有
無及び切削油の有無に拘わらず、圧縮残留応力が生成し
た。この圧縮残留応力は、DLCコーティングした刃先
を使用してウェットのときが最大であった。
【0057】図10は、切削条件として、θを0°、中
心軸回転数を10,000rpm、軸方向切り込み量を
0.3mm、一刃当りの送り量を0.1mmとし、刃先
のコーティングの有無及び切削油の有無を変えたときの
残留応力を示すグラフである。刃先のコーティングの有
無及び切削油の有無に拘わらず、圧縮残留応力が生成し
た。この圧縮残留応力は、DLCコーティングした刃先
を使用してウェットのときが最大であった。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように本発明の切削加工法
によれば、被加工表面層を切削加工する際にこの被加工
表面層に圧縮残留応力が生成する。このため、被加工表
面層の疲労強度が向上すると共に耐応力腐食割れ性も向
上する。また、切削速度等を低い値に限定しないので、
切削効率は低下しない。
【0059】ここで、前記工具は、 円柱状のものであ
って、該円柱の横断面の中央を通る中心軸を回転中心に
して回転しながら前記被加工表面層を切削するものであ
る場合は、被加工表面層を容易に切削加工できる。
【0060】また、前記被加工表面層に直交する基準線
に対して前記中心軸が傾斜している傾斜角度、前記工具
の回転数、所定の送り方向に直交するピックフィード方
向に前記工具を移動させる間隔、前記切刃の一枚が一回
で前記被加工表面層を切削する長さ、及び前記工具が前
記被加工表面層を切削する切削深さのうちの少なくとも
一つが所定範囲内の数値になるように設定して前記被加
工表面層を切削することにより該被加工表面層に圧縮残
留応力を生成させる場合は、傾斜角度等の切削条件を所
定範囲内の数値に設定して残留応力を生成させるので、
切削加工後にショットピーニング等を施さなくても被加
工表面層に残留応力を生成できる。
【0061】さらに、前記傾斜角度を0°以上30°以
下の範囲内の角度にして前記被加工表面層を切削する場
合は、被加工表面層にいっそう確実に圧縮残留応力を発
生させ易い。
【0062】さらにまた、前記工具の回転数を毎分10
00回以上20000回以下の範囲内の回転数にして前
記被加工表面層を切削する場合は、被加工表面層にいっ
そう確実に圧縮残留応力を発生させ易い。
【0063】さらにまた、前記工具を所定の送り方向に
所定距離だけ移動させながら前記被加工表面層を切削
し、その後、前記所定の送り方向に直交するピックフィ
ード方向に前記工具を所定間隔だけ移動させ、その後、
前記工具を前記所定の送り方向とは反対方向に移動させ
ながら前記被加工表面層を切削する場合は、被加工表面
層を効率良く切削加工できる。
【0064】さらにまた、前記工具を前記ピックフィー
ド方向に移動させる間隔は、0.1mm以上0.5mm
以下の範囲内である場合は、被加工表面層にいっそう確
実に圧縮残留応力を発生させ易い。
【0065】さらにまた、前記工具を前記送り方向若し
くは前記反対方向に移動させながら回転させて前記被加
工表面層を切削する際に、前記切刃の一枚が一回で前記
被加工表面層を切削する長さを0.05mm以上0.2
mm以下の範囲内にする場合は、被加工表面層にいっそ
う確実に圧縮残留応力を発生させ易い。
【0066】さらにまた、前記工具で前記被加工表面層
を切削する際の切削深さは、0.1mm以上0.75m
m以下の範囲内である場合は、被加工表面層にいっそう
確実に圧縮残留応力を発生させ易い。
【0067】さらにまた、前記工具の切刃は、その表面
にDLC膜がコーティングされたものである場合は、切
刃の潤滑性が向上し、被加工表面層に圧縮残留応力がい
っそう確実に生成する。
【0068】さらにまた、前記被加工表面層に切削油を
供給しながら切削する場合は、潤滑性が向上するので、
被加工表面層に圧縮残留応力がいっそう確実に生成す
る。
【0069】さらにまた、前記被加工表面層は、鋼、ア
ルミニウム、及びアルミニウム合金のうちのいずれかで
ある場合は、被加工表面層に圧縮残留応力を発生させ易
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】被切削材を示す、(a)は平面図であり、
(b)は側面図である。
【図2】(a)は、切削加工方向を示す平面図であり、
(b)は(a)のD―D断面図である。
【図3】(a)は、ボールエンドミルの傾斜角度を示す
模式図であり、(b)は、ピックフィード量を示す模式
図である。
【図4】X線残留応力測定方法を示す模式図である。
【図5】一刃当りの送り量と残留応力との関係の一例を
示すグラフである。
【図6】一刃当りの送り量と残留応力との関係の他の例
を示すグラフである。
【図7】ピックフィード量と残留応力との関係の一例を
示すグラフである。
【図8】ピックフィード量と残留応力との関係の他の例
を示すグラフである。
【図9】刃先のコーティングの有無及び切削油の有無と
残留応力との関係の一例を示すグラフである。
【図10】刃先のコーティングの有無及び切削油の有無
と残留応力との関係の他の例を示すグラフである。
【符号の説明】
10 被切削材 12 被加工表面層 20 ボールエンドミル 22 中心軸 30 基準線 θ 傾斜角度 d 中心軸方向の切削深さ(軸方向切り込み量)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 瀬川 俊明 神奈川県横浜市金沢区昭和町3175番地 日 本飛行機株式会社内 Fターム(参考) 3C022 AA01 AA08 AA10 KK02

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先端部に切刃が形成された工具の該先端
    部で所定の被加工表面層を切削加工する際に、 前記被加工表面層を塑性流動させながら切削することに
    より該被加工表面層に圧縮残留応力を生成することを特
    徴とする切削加工法。
  2. 【請求項2】 前記工具は、 円柱状のものであって、該円柱の横断面の中央を通る中
    心軸を回転中心にして回転しながら前記被加工表面層を
    切削するものであることを特徴とする請求項1に記載の
    切削加工法。
  3. 【請求項3】 前記被加工表面層に直交する基準線に対
    して前記中心軸が傾斜している傾斜角度、前記工具の回
    転数、所定の送り方向に直交するピックフィード方向に
    前記工具を移動させる間隔、前記切刃の一枚が一回で前
    記被加工表面層を切削する長さ、及び前記工具が前記被
    加工表面層を切削する切削深さのうちの少なくとも一つ
    が所定範囲内の数値になるように設定して前記被加工表
    面層を切削することにより該被加工表面層に圧縮残留応
    力を生成させることを特徴とする請求項1又は2に記載
    の切削加工法。
  4. 【請求項4】 前記傾斜角度を0°以上30°以下の範
    囲内の角度にして前記被加工表面層を切削することを特
    徴とする請求項2又は3に記載の切削加工法。
  5. 【請求項5】 前記工具の回転数を毎分1000回以上
    20000回以下の範囲内の回転数にして前記被加工表
    面層を切削することを特徴とする請求項2,3,又は4
    に記載の切削加工法。
  6. 【請求項6】 前記工具を所定の送り方向に所定距離だ
    け移動させながら前記被加工表面層を切削し、その後、
    前記所定の送り方向に直交するピックフィード方向に前
    記工具を所定間隔だけ移動させ、その後、前記工具を前
    記所定の送り方向とは反対方向に移動させながら前記被
    加工表面層を切削することを特徴とする請求項1から5
    までのうちのいずれか一項に記載の切削加工法。
  7. 【請求項7】 前記工具を前記ピックフィード方向に移
    動させる間隔は、0.1mm以上0.5mm以下の範囲
    内であることを特徴とする請求項6に記載の切削加工
    法。
  8. 【請求項8】 前記工具を前記送り方向若しくは前記反
    対方向に移動させながら回転させて前記被加工表面層を
    切削する際に、 前記切刃の一枚が一回で前記被加工表面層を切削する長
    さを0.05mm以上0.2mm以下の範囲内にするこ
    とを特徴とする請求項5,6,又は7に記載の切削加工
    法。
  9. 【請求項9】 前記工具で前記被加工表面層を切削する
    際の切削深さは、0.1mm以上0.75mm以下の範
    囲内であることを特徴とする請求項1から8までのうち
    のいずれか一項に記載の切削加工法。
  10. 【請求項10】 前記工具の切刃は、 その表面にDLC膜がコーティングされたものであるこ
    とを特徴とする請求項1から9までのうちのいずれか一
    項に記載の切削加工法。
  11. 【請求項11】 前記被加工表面層に切削油を供給しな
    がら切削することを特徴とする請求項1から10までの
    うちのいずれか一項に記載の切削加工法。
  12. 【請求項12】 前記被加工表面層は、鋼、アルミニウ
    ム、及びアルミニウム合金のうちのいずれかであること
    を特徴とする請求項1から11までのうちのいずれか一
    項に記載の切削加工法。
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