JP2003261798A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 インクジェット記録用水性インク
【特許請求の範囲】
【請求項1】 末端に下記式(1)の構造を有する化合物、還元剤、色材及び水を含有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
【化1】
上記式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、カルボキシル基、又は、芳香環、複素環若しくは水酸基で一部置換されたアルキル基を表す。
【請求項2】 末端に式(1)の構造を有する化合物は、アミノ酸、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミン、ポリビニルアミンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項3】 還元剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項4】 末端に式(1)の構造を有する化合物の配合量が、インクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項5】 還元剤の配合量が、インクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のインクジェット記録用水性インク。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録画像に漂白剤や殺菌剤等が付着した際の記録画像の消色又は変退色を改善できるインクジェット記録用水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、例えば、静電吸引方法;圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方法;インクを加熱することにより気泡を発生させ、このときに発生する圧力を利用する方法等のインク吐出方法により、インク小滴を形成し、インク小滴の一部又は全部を紙等の記録媒体に付着させて記録を行うものである。
【0003】
インクジェット記録方法は、現像・定着等のプロセスがなく、カラー化が容易であることから、近年、飛躍的に普及している。また、インクジェット記録方法を利用したインクジェットプリンタでは、印刷の高精細化、高速化が急速に進んでおり、更には、普通紙に印字可能なカラーインクジェットプリンタが主流となってきている。
【0004】
このような状況下で、インクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録用インクには、高い性能が求められ、例えば、インクジェットプリンタのヘッド先端部やインク流路内で目詰まりを起こさずに安定した噴射が可能であること、鮮明な色調で充分に高い濃度の記録画像を与えること、画像形成後に退色や変色が発生しないこと等が要求される。
【0005】
一般にインクジェット記録用水性インクは、染料インクと顔料インクとに大別される。染料インクはインクジェット記録方法が考案された当初から使用されており、色数の豊富さ、色相の鮮明さに優れている反面、染料自体が水溶性であるため耐水性及び耐光性に劣るという欠点がある。一方、顔料インクは耐水性及び耐光性は良好であるものの、分散機器によって顔料粒子を水中に細かく分散する必要があるため工程が煩雑となる、水中に分散させた顔料が経時的に凝集・沈殿する、色相の鮮やかさに劣る等の欠点がある。これら染料インク及び顔料インクの欠点を改良すべく、耐水性を向上させた染料や色相の鮮やかな顔料について研究されている。
【0006】
しかしながら、従来、インクジェット記録用水性インクにおいて、次亜塩素酸ナトリウムに対する耐漂白性はこれまで全くといってよいほど検討されていなかった。次亜塩素酸ナトリウムは、カビキラー(ジョンソン社製)、キッチンハイター(花王社製)、コンタクトレンズ用洗浄液(メニコン社製等)等の家庭で使用されるような一般的な漂白剤や殺菌剤等に含有されていることから、従来のインクジェット記録用水性インクは、記録画像に一般的な漂白剤や殺菌剤等が付着すると染料や顔料が酸化されて消色又は変退色してしまうという問題があった。この消色又は変退色の度合いは、顔料より染料の方が顕著であったが、顔料であっても、特に有機顔料の耐漂白性は充分ではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、記録画像に漂白剤や殺菌剤等が付着した際の記録画像の消色又は変退色を改善できるインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、末端に下記式(1)の構造を有する化合物、還元剤、色材及び水を含有する。
【0009】
【化2】
【0010】
上記式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、カルボキシル基、又は、芳香環、複素環若しくは水酸基で一部置換されたアルキル基を表す。以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、末端に下記式(1)の構造を有する化合物を含有する。
【0012】
【化3】
【0013】
上記式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、カルボキシル基、又は、芳香環、複素環若しくは水酸基で一部置換されたアルキル基を表す。
【0014】
上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、アミノ酸、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミン、ポリビニルアミンから選択される少なくとも1種が好適に用いられる。上記アミノ酸としては特に限定されず、具体的には、例えば、グリシン、フェニルグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、グルタミン、グルタミン酸、グリシルグリシン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸、アスパラギン酸、チトルリン、アルギニン、セリン等を挙げることができる。
【0015】
上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、漂白剤等が付着した場合の消色や変色の防止効果が上記式(1)の構造を有する化合物を添加しない場合とほとんど変わらないことがある。10重量%を超えると、色材が析出又は凝集することがある。
【0016】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、還元剤を含有する。上記還元剤としては特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムから選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0017】
上記還元剤の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、漂白剤等が付着した場合の消色や変色の防止効果が還元剤を添加しない場合とほとんど変わらないことがある。10重量%を超えると、色材が析出又は凝集することがある。
【0018】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、色材を含有する。上記色材としては特に限定されず、インクジェット記録用水性インクに一般に使用されている有機顔料及び染料を用いることができる。
【0019】
上記有機顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イミダゾロン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等を挙げることができる。これらの有機顔料が用いられる際には、一般に分散剤等が添加されるが、水への分散安定性を向上させるために親水性基により表面処理がされた自己分散型の有機顔料を用いる際には、特に上記分散剤が添加されなくてもよい。
【0020】
上記分散剤としては特に限定されず、例えば、高分子系分散剤、界面活性剤等を挙げることができる。上記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0021】
上記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を挙げることができる。
【0022】
上記陰イオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0023】
上記両性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等を挙げることができる。
【0024】
上記非イオン活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等を挙げることができる。
【0025】
上記染料としては特に限定されず、例えば、一般に用いられる塩基性染料、酸性染料、直接染料、反応性染料等のカチオン性やアニオン性の水溶性染料のほか、インク中に安定して分散が可能であれば水溶性でない分散染料や油溶性染料であっても使用することができる。
【0026】
上記水溶性染料としては特に限定されず、市販されているものでは、例えば、カラーインデックスナンバーベーシックレッド1、1:1、2、12、13、14、18、22、27、28、29、34、38、39、46、46:1、67、69、70;カラーインデックスナンバーベーシックバイオレット1、2、3、4、5、7、8、10、11、11:1、20、33;カラーインデックスナンバーベーシックブルー3、6、7、9、11、12、16、17、24、26、41、47、66;カラーインデックスナンバーベーシックグリーン1、4、5;カラーインデックスナンバーベーシックイエロー1、11、19、21、24、25、28、29、36、45、51、67、73;カラーインデックスナンバーベーシックオレンジ14、21、22、32;カラーインデックスナンバーベーシックブラウン1、4;カラーインデックスナンバーダイレクトブラック17、19、32、51、71、108、146、154、168;カラーインデックスナンバーダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106、199;カラーインデックスナンバーダイレクトレッド1、4、17、28、83、227;カラーインデックスナンバーダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142;カラーインデックスナンバーダイレクトオレンジ34、39、44、46、60;カラーインデックスナンバーダイレクトバイオレット47、48、107;カラーインデックスナンバーダイレクトブラウン109;カラーインデックスナンバーダイレクトグリーン59;カラーインデックスナンバーアシッドブラック2、7、24、26、31、52、63、112、118;カラーインデックスナンバーアシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、113、117、120、167、229、234;カラーインデックスナンバーアシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、181、256、289、315、317;カラーインデックスナンバーアシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61、71;カラーインデックスナンバーアシッドオレンジ7、19;カラーインデックスナンバーアシッドバイオレット49;カラーインデックスナンバーフードブラック1、2;カラーインデックスナンバーリアクティブレッド180等を挙げることができる。これらの水溶性染料は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用した場合には、単独の水溶性染料では得られない色を得ることが可能となる。
【0027】
上記色材の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、所望される色や色の濃度により決定されるが、本発明のインクジェット記録用水性インクの全量に対して0.01〜7重量%が好ましく、0.1〜5.5重量%がより好ましい。
【0028】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水を含有する。上記水としては、一般にインクジェット用水性インクに用いられるカチオン性イオンやアニオン性イオンの含有量が少ない純水や蒸留水等を用いることが好ましい。
【0029】
上記水の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、インクジェット記録用水性インクの全量に対して50〜75重量%であることが好ましい。50重量%未満であると、必然的に湿潤剤又は浸透剤等の割合を増加させる必要があるために紙に印字したときにインクがにじんだり、粘度が高くなるためにノズルにインクを導入しにくくなったりすることがある。75重量%を超えると、揮発成分が蒸発した後のインク粘度が高くなりすぎてノズル回復性が失われることがある。
【0030】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、更に、記録紙への浸透性や乾燥性を向上させるために、一般のインクジェット記録用水性インクと同様に、湿潤剤又は浸透剤と呼ばれる水溶性有機溶媒を含有していることが好ましい。上記水溶性有機溶媒としては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールエーテル類;グリセリン;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類を挙げることができる。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記水溶性有機溶剤の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インクの全量に対して10〜45重量%であることが好ましい。10重量%未満であると、湿潤作用が不充分となり析出、乾固等の問題を生じることがある。45重量%を超えると、インクが必要以上に増粘したり、噴射不能となったり、記録紙上での乾燥が極端に遅くなったりする。好ましくは15〜40重量%である。
【0032】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ材料との適合性、保存安定性、画像保存性、その他の性能向上の目的に応じて、更に、pH調節剤、金属封鎖剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防錆剤、防腐剤等を含有していてもよい。
【0033】
本発明のインクジェット記録用水性インクを熱エネルギーの作用によってインクを噴射させるインクジェット方式に適用する場合には、比熱、熱膨張係数、熱電導率等の熱的な物性値が調整されてもよい。
【0034】
本発明のインクジェット記録用水性インクにおいて、次亜塩素酸ナトリウムに対する耐性は、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物と上記還元剤のどちらか一方のみでは不充分であり、両者をそれぞれ1種以上含有することにより相乗効果が発揮されている。これは、次亜塩素酸ナトリウムから発生する強力な漂白性(酸化作用)を持つ塩素ガスと次亜塩素酸に対して、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物が塩素ガスを、上記還元剤が次亜塩素酸をそれぞれ不活性化するものと考えられ、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物又は上記還元剤により塩素ガスと次亜塩素酸のどちらか一方を不活性化しても、不活性化されていない他方により上記色材が分解されるため、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物と上記還元剤の両者を含有する必要があると考えられる。したがって、本発明のインクジェット記録用水性インクは、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物と上記還元剤とを含有していることにより、耐漂白性が改善され、記録画像に漂白剤や殺菌剤が付着した場合の記録画像の消色又は変退色を充分に改善することができる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1〜4)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物としてポリエチレンイミン(日本触媒社製、商品名:エポミンPS−012)を含有し、上記還元剤としてアスコルビン酸ナトリウムを含有する表1に示した組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、実施例1、2、3及び4のインクを調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例5〜8)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物としてグリシン、ポリアクリルアミン又はポリビニルアミンを含有し、上記還元剤としてアスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム又はイソアスコルビン酸ナトリウムを含有する表2に示した組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、実施例5、6、7及び8のインクを調製した。
【0039】
【表2】
【0040】
(比較例1〜4)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物、及び、上記還元剤を含有していない表3に示した組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、比較例1、2、3及び4のインクを調製した。
【0041】
【表3】
【0042】
(比較例5〜8)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物、又は、上記還元剤のどちらか一方を含有していない表4の組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、比較例5、6、7又は8のインクを調製した。
【0043】
【表4】
【0044】
(評価)実施例1、2、3、4、5、6、7、8及び比較例1、2、3、4、5、6、7、8で作製されたインクについて、ピエゾ素子振動による圧力を与えることにより液滴を発生させて記録を行うインクジェットプリンタ(ブラザー工業社製、MFC7400J)にてそれぞれ記録を行い、得られた記録画像の光学濃度を測定した。この記録画像を0.5M次亜塩素酸ナトリウムにより湿らせた綿棒で擦った後、記録画像の光学濃度を測定した。0.5M次亜塩素酸ナトリウムにより湿らせた綿棒で擦った前後での光学濃度の差を計算し、下記基準にて耐漂白性を評価した。結果を表5に示した。
◎:濃度差が0.2以下
○:濃度差が0.2〜0.4
△:濃度差が0.4〜0.6
×:濃度差が0.6以上
【0045】
【表5】
【0046】
表5から明らかなように、実施例で作製されたインクは、比較例で作製されたインクよりも耐漂白性に優れており、0.5M次亜塩素酸ナトリウムにより湿らせた綿棒で擦った後の光学濃度が約2倍であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、記録画像に漂白剤や殺菌剤が付着した際の記録画像の消色又は変退色を改善できるインクジェット記録用水性インクを提供することができる。
【発明の名称】 インクジェット記録用水性インク
【特許請求の範囲】
【請求項1】 末端に下記式(1)の構造を有する化合物、還元剤、色材及び水を含有することを特徴とするインクジェット記録用水性インク。
【化1】
上記式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、カルボキシル基、又は、芳香環、複素環若しくは水酸基で一部置換されたアルキル基を表す。
【請求項2】 末端に式(1)の構造を有する化合物は、アミノ酸、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミン、ポリビニルアミンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項3】 還元剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項4】 末端に式(1)の構造を有する化合物の配合量が、インクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項5】 還元剤の配合量が、インクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のインクジェット記録用水性インク。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録画像に漂白剤や殺菌剤等が付着した際の記録画像の消色又は変退色を改善できるインクジェット記録用水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、例えば、静電吸引方法;圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方法;インクを加熱することにより気泡を発生させ、このときに発生する圧力を利用する方法等のインク吐出方法により、インク小滴を形成し、インク小滴の一部又は全部を紙等の記録媒体に付着させて記録を行うものである。
【0003】
インクジェット記録方法は、現像・定着等のプロセスがなく、カラー化が容易であることから、近年、飛躍的に普及している。また、インクジェット記録方法を利用したインクジェットプリンタでは、印刷の高精細化、高速化が急速に進んでおり、更には、普通紙に印字可能なカラーインクジェットプリンタが主流となってきている。
【0004】
このような状況下で、インクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録用インクには、高い性能が求められ、例えば、インクジェットプリンタのヘッド先端部やインク流路内で目詰まりを起こさずに安定した噴射が可能であること、鮮明な色調で充分に高い濃度の記録画像を与えること、画像形成後に退色や変色が発生しないこと等が要求される。
【0005】
一般にインクジェット記録用水性インクは、染料インクと顔料インクとに大別される。染料インクはインクジェット記録方法が考案された当初から使用されており、色数の豊富さ、色相の鮮明さに優れている反面、染料自体が水溶性であるため耐水性及び耐光性に劣るという欠点がある。一方、顔料インクは耐水性及び耐光性は良好であるものの、分散機器によって顔料粒子を水中に細かく分散する必要があるため工程が煩雑となる、水中に分散させた顔料が経時的に凝集・沈殿する、色相の鮮やかさに劣る等の欠点がある。これら染料インク及び顔料インクの欠点を改良すべく、耐水性を向上させた染料や色相の鮮やかな顔料について研究されている。
【0006】
しかしながら、従来、インクジェット記録用水性インクにおいて、次亜塩素酸ナトリウムに対する耐漂白性はこれまで全くといってよいほど検討されていなかった。次亜塩素酸ナトリウムは、カビキラー(ジョンソン社製)、キッチンハイター(花王社製)、コンタクトレンズ用洗浄液(メニコン社製等)等の家庭で使用されるような一般的な漂白剤や殺菌剤等に含有されていることから、従来のインクジェット記録用水性インクは、記録画像に一般的な漂白剤や殺菌剤等が付着すると染料や顔料が酸化されて消色又は変退色してしまうという問題があった。この消色又は変退色の度合いは、顔料より染料の方が顕著であったが、顔料であっても、特に有機顔料の耐漂白性は充分ではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、記録画像に漂白剤や殺菌剤等が付着した際の記録画像の消色又は変退色を改善できるインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、末端に下記式(1)の構造を有する化合物、還元剤、色材及び水を含有する。
【0009】
【化2】
【0010】
上記式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、カルボキシル基、又は、芳香環、複素環若しくは水酸基で一部置換されたアルキル基を表す。以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、末端に下記式(1)の構造を有する化合物を含有する。
【0012】
【化3】
【0013】
上記式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、カルボキシル基、又は、芳香環、複素環若しくは水酸基で一部置換されたアルキル基を表す。
【0014】
上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、アミノ酸、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミン、ポリビニルアミンから選択される少なくとも1種が好適に用いられる。上記アミノ酸としては特に限定されず、具体的には、例えば、グリシン、フェニルグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、グルタミン、グルタミン酸、グリシルグリシン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸、アスパラギン酸、チトルリン、アルギニン、セリン等を挙げることができる。
【0015】
上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、漂白剤等が付着した場合の消色や変色の防止効果が上記式(1)の構造を有する化合物を添加しない場合とほとんど変わらないことがある。10重量%を超えると、色材が析出又は凝集することがある。
【0016】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、還元剤を含有する。上記還元剤としては特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムから選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0017】
上記還元剤の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、漂白剤等が付着した場合の消色や変色の防止効果が還元剤を添加しない場合とほとんど変わらないことがある。10重量%を超えると、色材が析出又は凝集することがある。
【0018】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、色材を含有する。上記色材としては特に限定されず、インクジェット記録用水性インクに一般に使用されている有機顔料及び染料を用いることができる。
【0019】
上記有機顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イミダゾロン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等を挙げることができる。これらの有機顔料が用いられる際には、一般に分散剤等が添加されるが、水への分散安定性を向上させるために親水性基により表面処理がされた自己分散型の有機顔料を用いる際には、特に上記分散剤が添加されなくてもよい。
【0020】
上記分散剤としては特に限定されず、例えば、高分子系分散剤、界面活性剤等を挙げることができる。上記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0021】
上記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を挙げることができる。
【0022】
上記陰イオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0023】
上記両性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等を挙げることができる。
【0024】
上記非イオン活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等を挙げることができる。
【0025】
上記染料としては特に限定されず、例えば、一般に用いられる塩基性染料、酸性染料、直接染料、反応性染料等のカチオン性やアニオン性の水溶性染料のほか、インク中に安定して分散が可能であれば水溶性でない分散染料や油溶性染料であっても使用することができる。
【0026】
上記水溶性染料としては特に限定されず、市販されているものでは、例えば、カラーインデックスナンバーベーシックレッド1、1:1、2、12、13、14、18、22、27、28、29、34、38、39、46、46:1、67、69、70;カラーインデックスナンバーベーシックバイオレット1、2、3、4、5、7、8、10、11、11:1、20、33;カラーインデックスナンバーベーシックブルー3、6、7、9、11、12、16、17、24、26、41、47、66;カラーインデックスナンバーベーシックグリーン1、4、5;カラーインデックスナンバーベーシックイエロー1、11、19、21、24、25、28、29、36、45、51、67、73;カラーインデックスナンバーベーシックオレンジ14、21、22、32;カラーインデックスナンバーベーシックブラウン1、4;カラーインデックスナンバーダイレクトブラック17、19、32、51、71、108、146、154、168;カラーインデックスナンバーダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106、199;カラーインデックスナンバーダイレクトレッド1、4、17、28、83、227;カラーインデックスナンバーダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142;カラーインデックスナンバーダイレクトオレンジ34、39、44、46、60;カラーインデックスナンバーダイレクトバイオレット47、48、107;カラーインデックスナンバーダイレクトブラウン109;カラーインデックスナンバーダイレクトグリーン59;カラーインデックスナンバーアシッドブラック2、7、24、26、31、52、63、112、118;カラーインデックスナンバーアシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、113、117、120、167、229、234;カラーインデックスナンバーアシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、181、256、289、315、317;カラーインデックスナンバーアシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61、71;カラーインデックスナンバーアシッドオレンジ7、19;カラーインデックスナンバーアシッドバイオレット49;カラーインデックスナンバーフードブラック1、2;カラーインデックスナンバーリアクティブレッド180等を挙げることができる。これらの水溶性染料は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用した場合には、単独の水溶性染料では得られない色を得ることが可能となる。
【0027】
上記色材の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、所望される色や色の濃度により決定されるが、本発明のインクジェット記録用水性インクの全量に対して0.01〜7重量%が好ましく、0.1〜5.5重量%がより好ましい。
【0028】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水を含有する。上記水としては、一般にインクジェット用水性インクに用いられるカチオン性イオンやアニオン性イオンの含有量が少ない純水や蒸留水等を用いることが好ましい。
【0029】
上記水の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、インクジェット記録用水性インクの全量に対して50〜75重量%であることが好ましい。50重量%未満であると、必然的に湿潤剤又は浸透剤等の割合を増加させる必要があるために紙に印字したときにインクがにじんだり、粘度が高くなるためにノズルにインクを導入しにくくなったりすることがある。75重量%を超えると、揮発成分が蒸発した後のインク粘度が高くなりすぎてノズル回復性が失われることがある。
【0030】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、更に、記録紙への浸透性や乾燥性を向上させるために、一般のインクジェット記録用水性インクと同様に、湿潤剤又は浸透剤と呼ばれる水溶性有機溶媒を含有していることが好ましい。上記水溶性有機溶媒としては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールエーテル類;グリセリン;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類を挙げることができる。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記水溶性有機溶剤の本発明のインクジェット記録用水性インクにおける配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インクの全量に対して10〜45重量%であることが好ましい。10重量%未満であると、湿潤作用が不充分となり析出、乾固等の問題を生じることがある。45重量%を超えると、インクが必要以上に増粘したり、噴射不能となったり、記録紙上での乾燥が極端に遅くなったりする。好ましくは15〜40重量%である。
【0032】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ材料との適合性、保存安定性、画像保存性、その他の性能向上の目的に応じて、更に、pH調節剤、金属封鎖剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防錆剤、防腐剤等を含有していてもよい。
【0033】
本発明のインクジェット記録用水性インクを熱エネルギーの作用によってインクを噴射させるインクジェット方式に適用する場合には、比熱、熱膨張係数、熱電導率等の熱的な物性値が調整されてもよい。
【0034】
本発明のインクジェット記録用水性インクにおいて、次亜塩素酸ナトリウムに対する耐性は、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物と上記還元剤のどちらか一方のみでは不充分であり、両者をそれぞれ1種以上含有することにより相乗効果が発揮されている。これは、次亜塩素酸ナトリウムから発生する強力な漂白性(酸化作用)を持つ塩素ガスと次亜塩素酸に対して、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物が塩素ガスを、上記還元剤が次亜塩素酸をそれぞれ不活性化するものと考えられ、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物又は上記還元剤により塩素ガスと次亜塩素酸のどちらか一方を不活性化しても、不活性化されていない他方により上記色材が分解されるため、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物と上記還元剤の両者を含有する必要があると考えられる。したがって、本発明のインクジェット記録用水性インクは、上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物と上記還元剤とを含有していることにより、耐漂白性が改善され、記録画像に漂白剤や殺菌剤が付着した場合の記録画像の消色又は変退色を充分に改善することができる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1〜4)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物としてポリエチレンイミン(日本触媒社製、商品名:エポミンPS−012)を含有し、上記還元剤としてアスコルビン酸ナトリウムを含有する表1に示した組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、実施例1、2、3及び4のインクを調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例5〜8)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物としてグリシン、ポリアクリルアミン又はポリビニルアミンを含有し、上記還元剤としてアスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム又はイソアスコルビン酸ナトリウムを含有する表2に示した組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、実施例5、6、7及び8のインクを調製した。
【0039】
【表2】
【0040】
(比較例1〜4)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物、及び、上記還元剤を含有していない表3に示した組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、比較例1、2、3及び4のインクを調製した。
【0041】
【表3】
【0042】
(比較例5〜8)上記末端に上記式(1)の構造を有する化合物、又は、上記還元剤のどちらか一方を含有していない表4の組成物を混合攪拌した後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過を行い、比較例5、6、7又は8のインクを調製した。
【0043】
【表4】
【0044】
(評価)実施例1、2、3、4、5、6、7、8及び比較例1、2、3、4、5、6、7、8で作製されたインクについて、ピエゾ素子振動による圧力を与えることにより液滴を発生させて記録を行うインクジェットプリンタ(ブラザー工業社製、MFC7400J)にてそれぞれ記録を行い、得られた記録画像の光学濃度を測定した。この記録画像を0.5M次亜塩素酸ナトリウムにより湿らせた綿棒で擦った後、記録画像の光学濃度を測定した。0.5M次亜塩素酸ナトリウムにより湿らせた綿棒で擦った前後での光学濃度の差を計算し、下記基準にて耐漂白性を評価した。結果を表5に示した。
◎:濃度差が0.2以下
○:濃度差が0.2〜0.4
△:濃度差が0.4〜0.6
×:濃度差が0.6以上
【0045】
【表5】
【0046】
表5から明らかなように、実施例で作製されたインクは、比較例で作製されたインクよりも耐漂白性に優れており、0.5M次亜塩素酸ナトリウムにより湿らせた綿棒で擦った後の光学濃度が約2倍であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、記録画像に漂白剤や殺菌剤が付着した際の記録画像の消色又は変退色を改善できるインクジェット記録用水性インクを提供することができる。
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