JP2003260124A - 複合生体材料の生分解性制御 - Google Patents
複合生体材料の生分解性制御Info
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Abstract
ト)とコラーゲンからなる複合生体材料において、その
機械的強度を維持しつつ、人工骨材に適した生体内吸収
性を実現する。 【解決手段】 カルシウム塩(特に、ハイドロキシアパ
タイト)とコラーゲンを含む複合生体材料において、コ
ラーゲンに架橋を導入することにより、該複合生体材料
の生体内分解速度を制御する。
Description
に、ハイドロキシアパタイト)とコラーゲンを含む複合
生体材料の生体内分解性を制御する方法および該方法に
よって提供される改良された複合生体材料に関する。
の修復には、自己組織の再移植を行うことが多い。しか
し、自己組織の使用は患者の負担が大きく、その採取量
にも限界があるため、人工インプラントによる補填が不
可欠となる。こうした人工骨には生体骨類似の機械的特
性に加えて、生体適合性や骨伝導性−すなわち、生体適
用後徐々に吸収され、骨再生サイクルに取り込まれて自
身の骨に置換していく性質−が求められる。
アパタイト(HAp)と有機物のコラーゲンからなる複合
体である。これらは、生体骨中でHApがそのc軸方向にコ
ラーゲン繊維に沿って配向した特有のナノコンポジット
構造を形成(自己組織化)し、この構造が骨に特有の機
械的性質を与えている。すなわち、単にHApとコラーゲ
ンを組み合わせただけでは、生体骨同様の構造や特性を
得ることはできない。
生体骨に近い複合生体材料を開発するための様々な検討
がなされてきた。例えば、Mehlischらは、HAp粒子とコ
ラーゲンの混合物を合成し(Mehlisch, A.S et al, Ora
l Surg Oral Med Oral Pathol, 70(6) (1990), 685-69
2)、Miyamotoらは、HApセメントで補強したコラーゲン
を作製して、その生体適合性を評価した(K.S. TenHuis
en, et al, J. BiomedMater Res, 29(7) (1995), 803-
810)。また、TenHuisenらは、リン酸水素カルシウムを
HApのプリカーサーとして、コラーゲン(Col)繊維上に
HAp結晶を成長させ、HAp/Colナノコンポジットを製造し
た(Y. Miyamoto et al., Biomaterials, 19 (1998), 7
07-715)。しかしながら、そのいずれも、生体骨類似の
ナノ構造を再現することはできなかった。
化を利用して、バイオミメティックな条件下(骨新生が
生じる生体内環境に似た条件)で、生体骨類似のナノコ
ンポジット構造を有するHAp/Col複合体を合成すること
に成功した(特開平7-101708号公報、特開平11-199209
号公報、特開平2000-5298号公報等)。この複合体は、
優れた生体適合性を有し、破骨細胞に吸収され、骨新生
を促すことが確認された。しかしながら、該複合体は移
植後すみやかに吸収・分解されてしまうため、人工骨材
等としての実用性に欠けるという問題点があった。
の構造をもったカルシウム塩(特に、ハイドロキシアパ
タイト)とコラーゲンを含む複合体において、その機械
的強度を維持しつつ、生体内分解速度を制御し、実用に
適した複合生体材料を提供することを目的とする。
めに本発明者らは鋭意検討した結果、複合体を構成する
コラーゲン繊維に架橋を導入すれば、その機械的強度と
生体内分解速度が制御できることを見出し、本発明を完
成させた。
を提供するものである。 (1) カルシウム塩とコラーゲンを含む複合生体材料
において、コラーゲンに架橋を導入することにより、該
複合生体材料の生体内分解速度を制御する方法。 (2) 前記カルシウム塩がハイドロキシアパタイトで
ある、上記(1)記載の方法。 (3) 前記複合生体材料がハイドロキシアパタイトの
c軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した微小多孔質
構造を有するものである、上記(2)記載の方法。 (4) 前記架橋がコラーゲン中の反応可能な官能基の
少なくとも1%以上に導入されることを特徴とする、上
記(1)〜(3)のいずれか1に記載の方法。 (5) 前記架橋がグルタールアルデヒドを用いた架橋
反応によって導入されることを特徴とする、上記(1)
〜(4)のいずれか1に記載の方法。
生体材料中のコラーゲン1gに対して10μmol〜10mmol用
いられることを特徴とする、上記(5)記載の方法。 (7) ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複
合生体材料において、該複合生体材料中のコラーゲン1g
に対して10μmol〜10mmolのグルタールアルデヒドを用
いて架橋を導入したことを特徴とする、複合生体材料。 (8) 前記架橋がコラーゲン中の反応可能なε−アミ
ノ基の少なくとも5%以上に導入されていることを特徴
とする、上記(7)記載の複合生体材料。 (9) 前記複合生体材料がハイドロキシアパタイトの
c軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した微小多孔質
構造を有するものである、上記(7)または(8)記載
の複合生体材料。
する。 1.本発明の複合生体材料 本発明の複合生体材料は、カルシウム塩(特に、ハイド
ロキシアパタイト)とコラーゲンを含む複合体におい
て、コラーゲンに架橋を導入することにより、生体材料
に適した機械的強度と生体内分解速度を実現したことを
特徴とする。
ウム塩としては、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウ
ムが好ましく、特にハイドロキシアパタイトが最も好ま
しい。このコラーゲンとハイドロキシアパタイトを含む
複合生体材料において、ハイドロキシアパタイトとコラ
ーゲンは自己組織化的に配向し、生体骨類似の複合体を
形成することが好ましい。なお、「自己組織化」とは、
一般的には「同種あるいは異種の原子、分子、微粒子な
どが、非共有結合的相互作用によって集合し、特異的な
組織を形成すること(東京化学同人「生化学辞典」よ
り)」を意味するが、特に本発明中においては、コラー
ゲン繊維に沿って、アパタイト構造を有するリン酸カル
シウム(ハイドロキシアパタイト:HAp)が生体骨特有
の配向、すなわちHApのc軸がコラーゲン繊維に沿うよう
に配向した微小多孔質構造を形成することを意味するも
のとする。
5(PO4)3OH、とする化合物であり、その反応の非化学量
論性によって、CaHPO4 、Ca3(PO4)2、Ca4O(PO4)2、Ca10
(PO4)6(OH)2、CaP4O11、Ca(PO3)2、Ca2P2O7、Ca(H2PO4)
2・H2Oなどリン酸カルシウムと称される1群の化合物を
含む。また、ハイドロキシアパタイトは、Ca5(PO4)3O
H、またはCa10(PO4)6(OH)2の組成式で示される化合物を
基本成分とするもので、Ca成分の一部分は、Sr、Ba、M
G、Fe、Al、Y、La、Na、K、Hなどから選ばれる1種以上
で置換されてもよい。また、(PO4)成分の一部分が、V
O4、BO3、SO4、CO3、SiO4等から選ばれる1種以上で置
換されてもよい。更に、(OH)成分の一部分が、F、Cl、
O、CO3等から選ばれる1種以上で置換されてもよい。ま
た、これらの各成分の一部が欠陥となっていてもよい。
生体骨中のアパタイトのPO4およびOH成分の一部は通常C
O3に置換されているため、本複合生体材料の製造中、大
気中からのCO3の混入と各成分への一部置換(0〜10質量
%程度)があってもよい。
微結晶・非晶質並びに結晶体の他に、同型固溶体、置換
型固溶体、侵入型固溶体であってもよく、非量子論的欠
陥を含むものであってもよい。また、この「ハイドロキ
シアパタイト」中、カルシウム及びリンの原子比(Ca/
P)は1.3〜1.8の範囲内にあることが好ましく、特に1.5
〜1.7がより好ましい。原子比が1.3〜1.8の範囲内にあ
ると、生成物中のアパタイト(リン酸カルシウム化合
物)の組成と結晶構造が、脊椎動物の骨の中に存在する
アパタイトと類似の組成と構造をとりうるため、生体親
和性・生体吸収性が高くなるからである。
子種の異なるものが、哺乳動物に限らず、魚類を含む広
範な動物の生体組織中に存在することが知られており、
「コラーゲン類」と総称される。本発明で用いられるコ
ラーゲンは、その出発原料とする動物の種、組織部位、
年齢等は特に限定されず、任意のものを用いることがで
きる。一般的には、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ウ
マ、ウサギ、ネズミ等)や鳥類(例えば、ニワトリ等)
の皮膚、骨、軟骨、腱、臓器などから得られるコラーゲ
ンが用いられる。また、魚類(例えば、タラ、ヒラメ、
カレイ、サケ、マス、マグロ、サバ、タイ、イワシ、サ
メ等)の皮、骨、軟骨、ひれ、うろこ、臓器などから得
られるコラーゲン様蛋白を出発原料として用いてもよ
い。あるいは、動物組織からの抽出ではなく、遺伝子組
み替え技術によって得られたコラーゲンを用いてもよ
い。
量が多く、よく研究されているのはI型コラーゲンで、
通常、単にコラーゲンという場合はI型コラーゲンを指
すことも多い。本発明で用いられるコラーゲンの分子種
は特に限定されないが、I型コラーゲンを主成分とする
ことが好ましい。さらに、コラーゲンは、コラーゲンタ
ンパク質のアミノ酸残基を、アセチル化、コハク化、マ
レイル化、フタル化、ベンゾイル化、エステル化、アミ
ド化、グアニジノ化など、適当に化学修飾して用いても
よい。
前記の出発原料(遺伝子組み替え技術は除く)から中性
緩衝液や塩酸、酢酸、クエン酸などの希酸で抽出する方
法が挙げられる。前者は中性塩可溶性コラーゲン、後者
は酸可溶性コラーゲンと呼ばれる。しかし、いずれも抽
出されるコラーゲンの量は少なく、大部分は不溶性コラ
ーゲンとして残留する。この不溶性コラーゲンを可溶化
させる方法としては、酵素可溶化法とアルカリ可溶化法
が知られている。前者は酵素可溶化コラーゲン、後者は
アルカリ可溶化コラーゲンと呼ばれるが、ともにほぼ10
0%の収率で分子状のコラーゲンとして可溶化できる。
(抽出型)は、特に限定されないが、コラーゲンが可溶
化しているときの分子量が大きいと、立体障害のために
複合体の強度が不十分となるため、モノメリック(単分
子)なコラーゲンを用いることが好ましい。特に、酵素
可溶化コラーゲンとアルカリ可溶化コラーゲンは、モノ
メリック分が多量であることに加えて、調製段階でコラ
ーゲンの抗原性の大部分を有する非螺旋部(テロペプチ
ド)が、選択的に分解・除去されるため、本発明の有機
無機複合生体材料に好適である。なお、この非螺旋部が
分解、除去されたコラーゲンはアテロコラーゲンと呼ば
れる。
可溶化コラーゲンでは、等イオン点に違いがみられる。
等イオン点とは、タンパク質分子に固有の解離基に由来
する正、負の両荷電がちょうど相殺するpHのことで、
コラーゲンの場合は等イオン点のpH領域に近づくと、
可溶化していたものが線維化することが知られている。
一般的に、酵素可溶化コラーゲンの等イオン点はpH8
〜9で、アルカリ可溶化コラーゲンの等イオン点はpH4
〜5である。本発明では、pHが7〜11に保たれた反応容
器中でコラーゲンの線維化が進み、自己組織化しやすい
酵素可溶化コラーゲンを用いることがより好ましい。ま
た、可溶化するための酵素としては、例えば、ペプシ
ン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、プロナー
ゼなどが例示されるが、酵素反応後の処理の容易性から
ペプシン、プロナーゼが好適に用いられる。
を含む複合体の製造方法 本発明の複合生体材料の母体となる、カルシウム塩とコ
ラーゲンを含む複合体の好適な例として、ハイドロキシ
アパタイトとコラーゲンを含む複合体の製造方法につい
て説明する。
む複合体は、例えば、Kikuchiらの方法(Kikuchi, S. e
t al, J.,Biomater., 22(13) (2001), 1705-1711, S. I
tohet al, J. Biomed Mater Res, (2001), 445-453)
にしたがって製造することができる。該複合体は、少な
くとも、コラーゲン、リン酸塩、カルシウム塩の3種の
成分を出発物質として製造される。なお、厳密には
「塩」に該当するものでないが、本発明において上記リ
ン酸塩にはリン酸も、カルシウム塩には水酸化カルシウ
ムをも含むものとする。
ては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウ
ム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムおよ
びリン酸等が挙げられる。該リン酸塩水溶液は上述のコ
ラーゲンを溶解して反応に供される。
ルシウム源としては、例えば炭酸カルシウム、酢酸カル
シウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。該カルシウ
ム塩水溶液は均一な状態であれば、懸濁液であってもよ
く、例えば、炭酸カルシウムを焼成後乳鉢等で粉砕して
水酸化カルシウムとし、これに水を加えて得た水酸化カ
ルシウムの懸濁液を好適に用いることができる。
シウム塩水溶液とコラーゲンを含有するリン酸塩水溶液
は、反応容器に同時滴下される。ここで「同時」とは厳
密に同時に滴下する形態のみをさすものではなく、少量
(0.01〜5ml程度)づつ交互に滴下する形態をも含む。
なお両溶液は、同時である限り連続的に滴下してもよい
し、間欠的に滴下してもよい。前記反応容器内にはあら
かじめ、適当量の純水を入れておく。該純水の量は特に
限定されないが、用いるカルシウム塩水溶液の量とほぼ
同程度であることが好ましい。
るカルシウムイオン濃度は3.75mM以下、リン酸イオン濃
度は2.25mM以下に維持されることが重要である。カルシ
ウムイオンやリン酸イオンの濃度が上記範囲内を超える
と、複合体の好適な自己組織化が妨げられるからであ
る。これは、反応容器内に対流する上記イオンの濃度
が、体液中におけるそれらの濃度を超えると自発的な核
形成を起こすためと考えられる。なお、カルシウムイオ
ン濃度が2.5mM、リン酸イオン濃度が1.5mM以下に維持さ
れれば、平均繊維長さ1mm以上の複合体を得ることがで
き、より好適である。
するハイドロキシアパタイトとコラーゲンは、重量比で
3:2〜9:1、好ましくは70:30〜85:15となるように存
在することが好ましい。これは理想的な反応が起こった
ときのハイドロキシアパタイトとコラーゲンの重量比
が、生体骨の組成(75:25)により近いことが自己組織
化に重要だからである。
ム塩水溶液との比率は、3:1〜1:3の範囲とすることが
好ましい。コラーゲンを含有するリン酸水溶液の使用量
が少ない場合には、カルシウム過剰組成になり強度が低
下し、カルシウム塩を含有する水溶液の使用量が少ない
場合には、カルシウム欠損が発生して、ヤング率が低下
し、強度の低下をまねくこともあるからである(特開平
11-199209号公報参照)。
囲で、かつ変化の幅を1以内となるように滴下すること
が望ましい。より好ましくはpH7〜9の範囲で、かつ変化
の幅を0.5以内とすることがよい。これは、ネイティブ
なコラーゲンはpH7〜11の範囲で等電点による沈澱を起
こして線維が再生するものであり、またリン酸カルシウ
ムもこのpH範囲において沈澱を起こしやすいため、この
pH範囲であればリン酸カルシウムとコラーゲンの自己組
織化が促進されるからである。なおpHが11を超えると、
コラーゲン分子周辺に水分子が水和して後の加圧成形工
程で水分子が離れにくくなるため、複合体の含水率が高
くなり、自己組織化が妨げられ、強度も低下するおそれ
がある。一方、pHが7未満だと、リン酸カルシウム、コ
ラーゲンともに沈澱しにくくなる。また、変化の幅が1
を越えると、コラーゲン上でのリン酸カルシウムの核形
成に乱れが生じ、自己組織化が悪くなる(Kikuchi et.a
l., Biomaterials 22, (2000) p1705-1711))。
うには、pHコントローラーを用いることが簡便である。
pHコントローラーは、反応液のpHを測定する手段と、滴
下する両溶液の滴下量を調節する手段とを備えたもので
あり、所期値として設定されたpH(例えば10)に対して
一定範囲(例えば±0.3)を保つように、両溶液のpH値
に基づいて両溶液の滴下量を調節するものである。pHコ
ントローラーとしては、例えばNISSIN社製のものが挙げ
られる。なお、反応液のpHが偏ることのないように、両
溶液および反応液をたえず攪拌しながら反応を行うこと
が好ましい。
℃〜40℃に維持されることが好ましい。この範囲の温度
であれば、生体内と同様の条件で複合体形成が行われる
ことが期待されるからである。反応液から生じた沈澱物
を濾過、乾燥後、加圧成形すれば、ハイドロキシアパタ
イトとコラーゲンが自己組織化的に配向結合した複合体
が得られる。
ロキシアパタイト)とコラーゲンを含む複合体におい
て、該複合体を構成するコラーゲン繊維に架橋を導入す
る。架橋は反応液から複合体を単離せずに、直接行うこ
とが好ましい。また、架橋点を増やすために少量(複合
体のコラーゲン量に対して、1〜100mol%)のコラーゲ
ンまたは多糖類を添加してもよい。
橋、γ線、紫外線、熱脱水、電子線等を用いた物理的架
橋など、いずれの方法で行ってもよい。架橋剤として
は、例えば、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド
等のアルデヒド系架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネ
ート等のイソシアネート系架橋剤;1−エチル−3−
(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
等のカルボジド系架橋剤;エチレングリコールジエチル
エーテル等のポリエポキシ系架橋剤;トランスグルタミ
ナーゼ等が挙げられる。これらの架橋剤の使用量は、複
合体中のコラーゲン1gに対して10μmolから10mmol程度
とすることが好ましい。
架橋するものであってもよいが、特にカルボキシル基と
水酸基、カルボキシル基とε-アミノ基、ε-アミノ基同
士を架橋することが好ましい。また、反応可能な官能基
のうち、その少なくとも1%以上に架橋が導入されること
が好ましく、5%以上に導入されることがより好まし
い。架橋が不十分だと生体内での分解が早く、骨欠損部
の十分な補填効果が期待できないからである。ただし、
過剰な架橋剤の使用は、複合体を形成する各繊維間に架
橋を導入する結果、複合体の水分含量を高め、粒子間の
結合を阻害して複合体の強度を低下させるので注意が必
要である。
ド等の架橋剤を用いた化学的架橋は、架橋度のコントロ
ールしやすさや、得られる複合体の生体適合性という面
から、特に好ましい。以下、本発明の好適な態様とし
て、グルタールアルデヒドを用いた架橋方法について説
明する。
とコラーゲンを含む複合体の反応液は、複合体合成後直
ちに、あるいは3時間までのエージング後、激しく撹拌
しながらグルタールアルデヒドを加えて10分間反応さ
せる。架橋反応後、速やかに複合体をろ過し、純水で3
回洗浄して過剰なグルタールアルデヒドを除去する。こ
こで、グルタールアルデヒドは、複合生体材料中のコラ
ーゲン1gに対して10μmol〜10mmol、特に10μmol〜1mmo
l添加されることが好ましい。また、反応液の温度は0℃
〜40℃に維持されることが好ましい。
分解速度)の向上 得られた架橋複合生体材料は、未架橋の複合生体材料に
比べて、高い機械的強度を有し、生体内分解速度も遅い
ため、人工骨材等に必要な生体内滞留性を有する。すな
わち、本発明は、ハイドロキシアパタイトとコラーゲン
間に架橋を導入することにより、機械的強度を保ちつ
つ、複合生体材料の生体内分解速度を制御する方法を提
供する。
ラット、ウサギ等の骨内に該複合生体材料を移植して、
その生体内滞留性をみることによって評価することがで
きる。また、前記機械的強度は、例えば、三点曲げ強度
やその値から求められるヤング率によって評価できる。
mol〜10mmolのグルタールアルデヒドを添加して架橋を
導入した有機無機複合生体材料は、その機械的強度が7M
Pa(未架橋)から15MPa以上(架橋後)に向上した。そ
して、未架橋試料が生体骨内において4週間でほぼ(90
%以上)吸収されるのに対し、架橋複合生体材料は4週
間経っても生体骨内に約50%以上が残存していた。
して人工骨材等のインプラントとして利用することがで
きる。加圧成形は、0℃以上110℃以下の温度範囲で、か
つ10Mpa〜5Gpaの圧力範囲で行うことが好ましい。この
温度範囲で加圧成形を行うと、沈澱物に含まれる水のほ
とんどが急激に放出されるからである。温度は、水の放
出量の多い25℃以上60℃以下の範囲とすることが好まし
く、35℃以上45℃以下の範囲とすることが特に好まし
い。また、超音波を印加しながら行うと、自己組織化を
さらに促進することができるので好ましい。本発明で加
圧成形に用いることのできる圧力処理装置としては、例
えば神戸製鋼社製のCIP等を挙げることができる。
限定されず、ブロック状、ペースト状、膜状、粒状、ス
ポンジ状など、その用途にあわせて任意の形態・形状に
成形することができる。本発明の複合生体材料は、水を
吸うとスポンジのような弾性を有し、優れた生体親和
性、骨誘導能ないしは骨伝導能を有する。したがって、
該複合生体材料をインプラントとして使用する場合、生
理食塩水など適当な液体に一旦浸漬してから、使用して
もよい。こうして埋入された複合生体材料は、速やかに
骨組織と結合し、ドナー側の硬組織と一体化しうる。
あるカルシウム塩、リン酸塩、コラーゲンに加えて、本
発明の目的・効果を損なわない範囲で、さらに他の成分
を含有させることもできる。かかる成分としては、例え
ばSt、MgおよびCO3等の無機塩、クエン酸およびリン脂
質等の有機物、骨形成タンパク質、抗ガン剤等の薬剤が
挙げられる。
度と組成をもち、構成成分であるコラーゲンおよびリン
酸カルシウムがともに生体溶解性であるため薬剤徐放効
果、あるいは骨誘導能ないしは骨伝導能を有する。しか
も、架橋によって優れた機械的強度と生体内滞留性(適
度な生体内分解速度)を有する。
高いサイトカインを含有させ、これを基板として力学・
電気などを加えた生体類似環境下あるいは生体内で組織
培養を行うことにより、骨髄、肝臓などの組織再建の効
果も期待される。たとえば、骨肉腫などの切除骨の再建
に、本発明により得られる複合材料に抗癌剤を含浸させ
たものを用いることで、癌再発の防止とともに生体硬組
織の誘導を行うことができる。
生体材料の用途としては、骨誘導および骨伝導能を有す
る生体骨置換型骨再建材としての利用法、アミノ酸、糖
質、サイトカインを含有する組織工学に用いられる生体
活性基材、および抗癌剤等の生体融和型薬剤徐放性基材
としての利用法を挙げることができ、具体的には、人工
骨、人工関節、腱と骨との接合材、歯科用インプラント
材、カテーテル用経皮端子、薬剤徐放性基材、骨髄誘導
チャンバー、組織再建用チャンバー・基材等を挙げるこ
とができる。
細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。実施例1:架橋HAp/Col複合体の作製 (1) HAp/Col複合体の調整 Kikuchiらの方法(M. Kikuchi, et al.,Biomater., 22
(13) (2001), 1705-1711)に従い、Hap/Col複合体を調
整した。まず、出発物質として炭酸カルシウム(アルカ
リ分析用、和光純薬)、リン酸(特級、和光純薬)およ
びブタ皮膚由来のアテロコラーゲン(新田ゼラチン)を
用意した。炭酸カルシウムは1050℃で焼成後、加水消化
して水酸化カルシウム単相にした。40mMの水酸化カルシ
ウム懸濁液2dm3とコラーゲン2gを含んだ24mMのリン酸水
溶液2dm3を、チューブポンプを介して反応容器に導入し
た。反応容器内のpHはコントローラによってpH9に制御
し、温度は湯浴によって40℃に制御した。
ら架橋剤:グルタールアルデヒドを加えて10分間反応さ
せた。架橋反応後、速やかに複合体をろ過し、純水で3
回洗浄した。比較として、水溶性カルボジイミド、トラ
ンスグルタミナーゼ(いずれも縮合剤)を用いて同様に
架橋反応を行った。
して、それぞれグルタールアルデヒド:0.0191-13.5 mm
ol/g、水溶性カルボジイミド:0.0191-8.8 mmol/g 、ト
ランスグルタミナーゼ: 19.1-1910 mg/g の範囲で変化
させて行った。なお、グルタールアルデヒドの場合、0.
191 mmol/gで理論上コラーゲン分子中の全てのε-amino
基が架橋可能となる。
た。 複合体構造(粒子サイズ):架橋複合体を純水に分散
させ、透過型電子顕微鏡Rapid-VueR (Beckman-Colter
製) を用いて観察した。 三点曲げ強度:架橋複合体を20MPaで24時間1
軸加圧して脱水成形し、universal testing machine (A
utograph AGS-1kN, Shimadzu製) により三点曲げ強度を
測定した。測定は、5×3×20mmの架橋複合体片を用い
て、クロスヘッドスピード500μm、スパン15mmで行っ
た。
橋複合体のHAp/Col/H2O 比をcarbon determinator (LEC
O製, RC-412)を用いて測定した。 膨潤度:上記の加圧成形した複合体をリン緩衝液 (pH
=7.4, 37°C)中に4週間浸漬し、重量測定を行い膨潤度
(下式)を求めた。
複合体を用いて、sulfo-SDTB 法によりε-amino 基量を
測定し、架橋量を求めた。
ド架橋複合体の繊維長は平均44.8μmであった。また、
架橋されたハイドロキシアパタイトとコラーゲンにはマ
クロな配向性はみられず、架橋はランダムに生じること
がわかった。なお、生体骨類似のナノスコピックな構造
(コラーゲン単繊維状のHApの配向)は実質的に維持さ
れていた。グルタールアルデヒド濃度の増加につれて、
複合体の色は暗い黄色から茶色に変化した。これは過剰
なグルタールアルデヒドが自己組織化繊維間を架橋して
複合体繊維長を増大させるためと思われた。
合、三点曲げ強度はグルタールアルデヒド含量にしたが
って増加し、1.35mmol/g collagenで最高値に達した
(図1)。この結果は、過剰なグルタールアルデヒド架
橋剤(1.35mmol/g以上)は、複合体を形成する各繊維間
に架橋を導入し、複合体の水分含量が高める結果、粒子
間の結合を阻害して複合体強度を低下させることを示唆
していた。水溶性カルボジイミドやトランスグルタミナ
ーゼによる架橋物では、必ずしも濃度的な変化はみられ
なかった。
p/Col比はほぼ一定だったが、水の含有量はグルタール
アルデヒドの量にしたがって増加した。これは、自己組
織化繊維内に生じる架橋は複合体の保水性に影響を与え
ないが、自己組織化繊維間に生じる架橋が複合体の保水
性を増加させるためである。水溶性カルボジイミドやト
ランスグルタミナーゼでも、グルタールアルデヒド同
様、反応剤の濃度にしたがってコラーゲンおよび水含量
は増加した。
する。それゆえ膨潤度は、架橋量を反映するようにコラ
ーゲン量で正規化した(図2)。その結果、膨潤度はグ
ルタールアルデヒド濃度にしたがって減少し、架橋によ
り生体組織中における複合体の生分解性を制御しうるこ
とが示唆された。一方、水溶性カルボジイミドやトラン
スグルタミナーゼでは膨潤度の増加ははっきりと観察で
きなかった。これは、水溶性カルボジイミドやトランス
グルタミナーゼは縮合剤であるため、架橋は複合体を密
にして、膨潤を妨げるためと思われた。 sulfo-SDTB 測定の結果、グルタールアルデヒド1.3
5mmol/g濃度では、遊離のε-amino基は検出されなかっ
た。この濃度は、コラーゲン中の架橋可能な官能基を架
橋するために必要なグルタールアルデヒド量の約70倍に
あたる。
ヒドが1.35mmol/g・col濃度を超えると、架橋物の機械的
強度は減少し、人工骨材として適当な機械的強度を維持
するためには10mmol/g・col以下の濃度で架橋することが
好ましいと思われた。一方、生体内での分解が膨潤度に
比例するとすれば、架橋量が多いほど分解は抑えられる
ことが予測された。また、架橋によっても、生体骨類似
のナノスコピックな構造(コラーゲン単繊維状のHApの
配向)は実質的に維持されていた。
橋物の生分解性試験 (1) 試験方法 HAp/Col複合体架橋物の生体内分解性を、実施例1で得
られた各種グルタールアルデヒド濃度による架橋物(2
×2×2mm)をウサギ脛骨内に埋入して調べた。評価は、
1,2,4週後に肉眼所見(図3)と組織学的検査(ヘマト
キシリンーエオジン染色)を行うことにより評価した。
ド架橋物による毒性反応は全く見られなかった。また、
全ての架橋体において、架橋体周囲に、未架橋の複合体
と同程度の骨形成および骨伝導能が認められた。。
は、グルタールアルデヒド濃度にしたがって遅くなり、
高密度の架橋(191μmol以上)では、4週間たっても70-
80%が骨内に残存していた。コラーゲン1gあたり19.1μm
olのグルタールアルデヒドで架橋したものは約50%が、6
75μmolで架橋したものは約85%以上が残存していた。さ
らに、コラーゲン1gあたり1.35mmolのグルタールアルデ
ヒドで架橋したもでは表面のみが吸収され、95%以上が
残存していた。なお、それぞれの架橋試料におけるε-
アミノ基の残存量は、80-95%、0-10%、0%であった。特
に1.35mmolのグルタールアルデヒドによる架橋では過剰
なグルタールアルデヒド同士が複合体内で架橋のネット
ワークを形成し、複合体の吸収性をさらに下げていると
考えられた。
9.1μmol〜1.35mmolの濃度で架橋した複合体は、人工骨
材に必要とされる機械的強度と、生体内分解速度を有す
ることが確認された。上記結果と実施例1の結果から、
ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体にお
いて、コラーゲンの反応可能なε-アミノ基の少なくと
も1%以上(好ましくは5%以上)に架橋を導入すれば、
機械的強度を維持しつつ、人工骨材に必要な生体内分解
速度の達成が可能と考えられた。そしてそのような架橋
の導入には、少なくともコラーゲン1gあたりグルタール
アルデヒド10μmol〜10mmol程度を用いればよいと考え
られた。
ったカルシウム塩(特に、ハイドロキシアパタイト)と
コラーゲンを含む複合体において、その機械的強度を維
持しつつ、生体内分解速度を制御することができる。
度の関係を示す。
ラーゲン量で正規化したもの)を示す。
ールアルデヒド架橋複合体の写真である。
Claims (9)
- 【請求項1】 カルシウム塩とコラーゲンを含む複合生
体材料において、コラーゲンに架橋を導入することによ
り、該複合生体材料の生体内分解速度を制御する方法。 - 【請求項2】 前記カルシウム塩がハイドロキシアパタ
イトである、請求項1記載の方法。 - 【請求項3】 前記複合生体材料がハイドロキシアパタ
イトのc軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した微小
多孔質構造を有するものである、請求項2記載の方法。 - 【請求項4】 前記架橋がコラーゲン中の反応可能な官
能基の少なくとも1%以上に導入されることを特徴とす
る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 - 【請求項5】 前記架橋がグルタールアルデヒドを用い
た架橋反応によって導入されることを特徴とする、請求
項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 - 【請求項6】 前記グルタールアルデヒドが複合生体材
料中のコラーゲン1gに対して10μmol〜10mmol用いられ
ることを特徴とする、請求項5記載の方法。 - 【請求項7】 ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを
含む複合生体材料において、該複合生体材料中のコラー
ゲン1gに対して10μmol〜10mmolのグルタールアルデヒ
ドを用いて架橋を導入したことを特徴とする、複合生体
材料。 - 【請求項8】 前記架橋がコラーゲン中の反応可能なε
−アミノ基の少なくとも1%以上に導入されていること
を特徴とする、請求項7記載の複合生体材料。 - 【請求項9】 前記複合生体材料がハイドロキシアパタ
イトのc軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した微小
多孔質構造を有するものである、請求項7または8記載
の複合生体材料。
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