JP2003241154A - ファラデー回転子の製造方法、ファラデー回転子、光デバイス - Google Patents

ファラデー回転子の製造方法、ファラデー回転子、光デバイス

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JP2003241154A
JP2003241154A JP2002038621A JP2002038621A JP2003241154A JP 2003241154 A JP2003241154 A JP 2003241154A JP 2002038621 A JP2002038621 A JP 2002038621A JP 2002038621 A JP2002038621 A JP 2002038621A JP 2003241154 A JP2003241154 A JP 2003241154A
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crystal film
faraday rotator
optical
optical element
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JP2002038621A
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Tamotsu Sugawara
保 菅原
Atsushi Oido
敦 大井戸
Kazuto Yamazawa
和人 山沢
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高性能なファラデー回転子等を安定して製造
する技術を提供する。 【解決手段】 ビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結
晶膜を育成し、この単結晶膜をワイヤーソーで切断する
ようにした。ワイヤーソーで切断することにより、単結
晶膜切断時のチッピングを抑制し、歩留まりおよび保磁
力を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信システムに
用いられるファラデー回転子の製造方法等に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】現在、伝送容量の小さい電気通信に対し
て、光通信の普及が加速している。その理由は、以下説
明するように、光通信は、高速大容量伝送が可能である
こと、中継器が少なくてすむために長距離伝送に有利で
あること、さらに電磁ノイズの影響を受けないことに集
約される。光は、TV・ラジオ放送あるいは無線通信で
使用されている電波と電磁波である点で一致する。しか
し、光通信で使用される電磁波の周波数は約200TH
zで、衛星放送(約10GHz)の約20000倍にあ
たる。周波数が高いということは、波長が短いことを意
味し、それだけ多くの信号を高速で伝送できることにな
る。ちなみに、光通信で使用される電磁波の波長(中心
波長)は、1.31μmおよび1.55μmである。光
通信に使用される光ファイバは、よく知られているよう
に、屈折率の異なるガラスの二重構造をなしている。中
心のコアを通る光はコア内部で反射を繰り返すので、た
とえ光ファイバが曲がっていたとしても正確に信号が伝
送される。しかも、光ファイバには透明度の高い高純度
石英ガラスが使用されているため、光通信は、1kmあ
たり0.2dB程度しか減衰しない。したがって、増幅
器を介することなく約100kmの伝送が可能であり、
電気通信に比べて中継器の数を低減することができる。
電気通信ではEMI(電磁障害)が問題になるが、光フ
ァイバを使った通信は、電磁誘導によるノイズの影響を
受けない。そのため、極めて高品質な情報伝送が可能で
ある。
【0003】現在の光通信システムは、電気信号を光送
信器のLD(レーザ・ダイオード)で光信号に変換し、
この光信号を光ファイバで伝送してから、光受信器のP
D(フォト・ダイオード)で電気信号に変換する。この
ように、光通信システムに不可欠な要素は、LD、P
D、光ファイバおよび光コネクタである。比較的低速か
つ近距離の通信システムはともかく、高速かつ長距離の
通信システムにおいては、以上の要素のほかに、光増幅
器、光分配器などの光伝送機器、これら機器に適用され
る光アイソレータ、光サーキュレータ、光カプラ、光分
波器、光スイッチ、光変調器、光減衰器などの光部品
(光デバイス)が必要となる。
【0004】高速・長距離伝送、あるいは多分岐の光通
信システムで、とりわけ重要となるのは光アイソレータ
である。現在の光通信システムにおいて、光アイソレー
タは、光送信器のLDモジュールおよび中継器の中で使
用されている。光アイソレータは、電磁波を一方向にだ
け伝え、途中で反射して戻ってくる電磁波を阻止する役
割を持った光部品である。光アイソレータは、磁気光学
効果の一種であるファラデー効果を応用したものであ
る。ファラデー効果は、ファラデー効果を示す材料、す
なわち希土類鉄ガーネット単結晶膜などのファラデー回
転子を透過した光の偏波面が回転する現象をいう。ファ
ラデー効果のように、光の偏波方向が回転する性質を旋
光性と呼ぶが、通常の旋光性と異なって、ファラデー効
果においては、光の進行方向を逆にしても元に戻らず
に、さらに偏波方向が回転する。ファラデー効果によっ
て光の偏波方向が回転する現象を利用した素子をファラ
デー回転子という。
【0005】LDモジュールを例にして光アイソレータ
の機能を説明する。LDは、光ファイバと一体化したL
Dモジュールとして光送信器に組み込まれる。光アイソ
レータは、LDと光ファイバの間に配置され、ファラデ
ー効果を応用してLDへの反射戻り光を防止する機能を
果たす。反射戻り光とは、LDから出射した光が光コネ
クタなどの部品でわずかに反射して戻ってくる光をい
う。反射戻り光はLDに対してノイズの原因となる。光
を一方向だけに通す光アイソレータは、このノイズを除
去して通信品質を維持する。
【0006】光送信器のLDの場合、LDから出射され
る光の振動方向(偏波方向)は1方向に決まっているの
で、構造の簡易な偏波依存型の光アイソレータが用いら
れる。従来の偏波依存型の光アイソレータ10の基本構
成を図5に示す。光アイソレータ10は、ガーネット単
結晶膜から構成されるファラデー回転子11と、ファラ
デー回転子11を取り囲みかつファラデー回転子11を
磁化するための円筒状の永久磁石12と、ファラデー回
転子11の表裏両面に配置される偏光子13,14とか
ら構成される。この偏光子13と14とは、45°の相
対角度をもって配置される。なお、光アイソレータ10
において、光が進む方向を順方向と、また反射して戻る
方向を逆方向と呼ぶことにする。
【0007】次に、図6(永久磁石の記載を省略してあ
る)に基づいて、光アイソレータ10が逆方向の光の通
過を阻止する仕組みについて説明する。なお、図6
(a)は順方向の光が光アイソレータ10を通過する様
子を示し、図6(b)は逆方向の光が光アイソレータ1
0の通過を阻止される様子を示す図である。図6(a)
に示すように、順方向においては、偏光子13を通過し
た直線偏光はファラデー回転子11により45°回転
し、45°の相対角度をもって配置される偏光子14を
通過する。一方、図6(b)に示すように、逆方向にお
いては、偏光子14を通過した直線偏光はファラデー回
転子11によりさらに45°回転するため、偏光子13
を通過することができなくなる。以上ではLDモジュー
ルに使用される偏波依存型の光アイソレータ10につい
て説明したが、光増幅器に用いられる光アイソレータの
ように、偏波無依存型のものもある。光増幅器の場合、
光アイソレータに光ファイバから直接光が入射されるの
で、偏波方向を特定できない。そのために、偏波無依存
型の光アイソレータが開発された。その基本構成はよく
知られているため、ここでの説明は省略する。また、本
願発明において、単に光アイソレータというときは、偏
波依存型および偏波無依存型の両者を包含する概念を有
している。
【0008】ファラデー回転子は光アイソレータの性能
を左右する。したがって、ファラデー回転子を構成する
材料の特性が、高性能な光アイソレータを得るために重
要となる。ファラデー回転子を構成する材料を選択する
上で重要な点は、使用波長(光ファイバの場合、1.3
1μm,1.55μm)におけるファラデー回転角が大
きいこと、および透明度が高いことである。このような
条件を具備する材料として、当初にはYIG(イットリ
ウム鉄ガーネット,Y3Fe512)が用いられていた
が、量産性、小型化の点で不十分であった。その後、ガ
ーネット型結晶の希土類サイトをビスマス(Bi)で置
換するとファラデー回転能が飛躍的に向上することが見
出され、以後はこのBi置換型希土類鉄ガーネット単結
晶がファラデー回転子に用いられるようになった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のビス
マス置換型希土類鉄ガーネット単結晶は、飽和磁場以上
の磁場中でファラデー回転角が一定の値を示すものであ
った。そして、飽和磁場未満の大きさの磁場中において
は、ファラデー回転角が磁場の大きさに比例し、外部磁
場を取り除くとファラデー効果が消失していた。そのた
めに、図5に示したように、従来の光アイソレータ10
においては、飽和磁場以上の磁場をファラデー回転子1
1に印加するための永久磁石12が配設されていた。光
アイソレータ10についても、他の機器、部品と同様に
小型化、低コスト化の要望がある。しかし、この永久磁
石12の存在が、光アイソレータ10の小型可、低コス
ト化を妨げていたといえる。
【0010】従来のビスマス置換型希土類鉄ガーネット
単結晶は、外部磁場を取り除くとファラデー効果が消失
してしまうことから、軟磁性材料ということができる。
そのために、永久磁石12の配設が不可欠であった。と
ころが、ビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶に対
して、硬磁性、つまり外部磁界を取り除いてもファラデ
ー回転角を維持できる性質(ラッチング)を付与するこ
とができれば、永久磁石12の配設を省略することがで
きる。永久磁石12の省略は、光アイソレータ10ある
いはファラデー効果を利用する種々の機器、部品の小型
化、低コスト化をもたらす。そのため、ビスマス置換型
希土類鉄ガーネット単結晶の開発が行われている。
【0011】例えば、特開平6−222311号公報に
は、LPE(Liquid Phase Epitaxial)法によって育
成されたビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶膜に
おいて、前記単結晶膜面と交差する方向に外部磁界を印
加し磁気飽和させたのち当該外部磁界を除去しても、磁
気飽和させた際のファラデー回転効果を保持するビスマ
ス置換型希土類鉄ガーネット単結晶膜が開示されてい
る。この単結晶膜は、飽和磁化以上の外部磁界を印加す
ると、外部磁界を取り除いても、ファラデー回転角が維
持されることが示されている。
【0012】以上のように、硬磁性を備えるビスマス置
換型希土類鉄ガーネット単結晶膜が提案されている。し
かしながら、上述した特開平6−222311号公報で
は、硬磁性を備えるビスマス置換型希土類鉄ガーネット
単結晶膜を得るための組成の検討に留まっており、組成
以外の観点からファラデー回転子として要求される性能
を高めるという検討はなされていない。そこで、本発明
は、高性能なファラデー回転子を安定して製造する技術
を提供することを課題とする。また、本発明は、高性能
なファラデー回転子を備えた光デバイスの提供を課題と
する。
【0013】
【課題を解決するための手段】ファラデー回転子は、L
PE法等によって形成されたBi置換型希土類鉄ガーネ
ット単結晶膜(以下、適宜、「ガーネット単結晶膜」ま
たは単に「単結晶膜」という。)を所定の厚さまで研磨
加工した後、切断することによって作製される。本発明
者は、高性能なファラデー回転子を得るために様々な検
討を行ったところ、ガーネット単結晶膜の切断面の性状
がファラデー回転子の性能に影響を及ぼすことを知見し
た。ここで、ガーネット単結晶膜の切断面の性状として
はチッピングの有無等があり、チッピングとは、ガーネ
ット単結晶膜を切断する際にガーネット単結晶膜の切断
面のエッジが欠ける現象をいう。よって、高性能なファ
ラデー回転子を得るためには、ファラデー回転子を構成
する材料の特性が重要であることはもちろん、ガーネッ
ト単結晶膜を切断する際にいかにチッピングをなくす
か、ということが重要な鍵となる。
【0014】特に、硬磁性ガーネット単結晶膜では、こ
のチッピングは重要な問題となる。なぜなら、硬磁性ガ
ーネット単結晶膜を切断する際に生じたチッピングは、
一種の結晶欠陥となり、保磁力が著しく低下してしまう
からである。ここで、硬磁性ガーネット単結晶膜におい
て、保磁力は重要な要素である。なぜなら、外部磁界を
取り除いてもファラデー回転角が維持されることを特徴
としている硬磁性ガーネット単結晶膜において、保磁力
が高ければ高いほど高特性のファラデー回転子となりう
るからである。
【0015】前述のように、ファラデー回転子の実用化
にとって、保磁力は重要な特性である。また、保磁力
と、ガーネット単結晶膜切断時のチッピングとは密接な
関係を有しており、ガーネット単結晶膜切断時のチッピ
ングを抑制することは、保磁力を向上させる上で極めて
重要である。本発明者は、ガーネット単結晶膜切断時の
チッピングを抑制するために様々な切断方法を試みたと
ころ、ワイヤーソーによる切断が非常に有効であること
を知見した。すなわち、本発明は、ビスマス置換型希土
類鉄ガーネット単結晶膜を用い、入射された光の偏波面
を回転させるファラデー回転子の製造方法であって、単
結晶膜を育成する単結晶膜育成工程と、この単結晶膜育
成工程で得られた単結晶膜をワイヤーソーで切断する切
断工程とを備えたことを特徴とするファラデー回転子の
製造方法を提供する。本発明に係るファラデー回転子の
製造方法は、上述した硬磁性材料に対して有効であるこ
とはもちろん、従来の軟磁性材料に対しても有効であ
る。特に、ファラデー回転子と他の光学素子を樹脂等で
接着したものをワイヤーソーで切断する場合には、チッ
ピングや切断時の光学素子の脱離を効果的に抑制するこ
とができる。
【0016】また本発明は、所定の間隔を持って対向す
る表裏面と、この表裏面の周囲に形成される側面とを有
し、側面に微細な凹凸が均一に形成されていることを特
徴とするビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶膜を
用いたファラデー回転子を提供する。ビスマス置換型希
土類鉄ガーネット単結晶膜の側面に微細な凹凸を均一に
形成するには、例えばワイヤーソーを用いることができ
る。本発明に係るファラデー回転子において、単結晶膜
を、実質的に角型の磁気ヒステリシスを示すものとする
ことが有効である。
【0017】さらに本発明は、ファラデー回転子を用い
た以下の光デバイスも提供する。本発明の光デバイス
は、順方向の光が入射される第1の光学素子と、前記第
1の光学素子と所定間隔を隔てて対向配置され順方向の
光が出射される第2の光学素子と、前記第1の光学素子
と前記第2の光学素子との間に配置され、前記第1の光
学素子を透過した光の偏波面を回転させて前記第2の光
学素子に向けて出射するとともに、前記第2の光学素子
を透過した逆方向の光の透過を阻止するファラデー回転
子とを基本的な構成要素としている。ここで、光デバイ
スとしては、光アイソレータ、光サーキュレータ、光ア
ッテネータ、光磁界センサ、光スイッチ、光減衰器等を
広く包含する。また、第1の光学素子および第2の光学
素子としては、偏光子、ルチル等の偏光分離素子等を用
いることができる。本発明に係る光デバイスにおいて、
前記単結晶膜の表裏面は、上述した第1の光学素子また
は第2の光学素子と樹脂等の接着剤により接着されてい
るものとすることができる。また、本発明に係る光デバ
イスにおけるファラデー回転子は、角型の磁気ヒステリ
シスを示し、かつ室温において350Oe以上の保磁力
を有するため、本発明に係る光デバイスは高性能であ
る。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明を
より詳細かつ具体的に説明する。まず、図1を用いて、
本発明が適用される光アイソレータ(光デバイス)1に
ついて説明する。図1に示すように、光アイソレータ1
は、LD3から出力される光(信号)が透過する2枚の
レンズ2との間に配置され、レンズ2を透過した光(信
号)の偏波面を回転する。図1において、光アイソレー
タ1と、レンズ2と、LD3とでLDモジュールを構成
しており、LDモジュールは、受けた電気信号を光信号
に変換した後に、光伝送ライン4に伝送する。なお、L
D3は、ケース内に配置される。
【0019】図2は、光アイソレータ1の構成を示す図
である。図2に示すように、光アイソレータ1は、2つ
の偏光子(第1の光学素子、第2の光学素子)1a,1
cの間にファラデー回転子1bが配置された構成を有す
る。2つの偏光子1a,1cは、所定の間隔を隔てて対
向配置される。いま、偏光子1aに順方向の光が入射さ
れるものとすると、順方向の光は偏光子1cから光伝送
ライン4に向けて出射される。偏光子1a、1cは公知
の材料を用いることができる。例えば、コーニング社製
のポーラ・コア(商品名)が望ましいが、これに限定さ
れるものではない。
【0020】ファラデー回転子1bは、偏光子1aを透
過した光の偏波面を回転させて偏光子1cに向けて出射
する。また、ファラデー回転子1bは、偏光子1cから
の逆方向の光の透過を阻止する。この逆方向の光の透過
を阻止できる理由は先に説明した通りであるので、ここ
での説明は省略する。
【0021】本発明において、このファラデー回転子1
bをビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶膜(以
下、適宜「単結晶膜」という。)で構成する。そして、
本発明は、単結晶膜を育成する単結晶膜育成工程と、こ
の単結晶膜育成工程で得られた単結晶膜をワイヤーソー
で切断する切断工程と、を含む。また、単結晶膜が硬磁
性材料の場合には、単結晶膜に対し外部磁場をかける着
磁工程をいずれかの段階で行うことができる。例えば、
切断工程に先立って単結晶膜を着磁すれば、まとめて着
磁を行うことができる。以下、単結晶膜の望ましい組成
について言及した上で、単結晶膜育成工程、切断工程お
よび着磁工程について説明する。
【0022】<単結晶膜の組成>本発明は、後述する切
断工程に主たる特徴を有するものであり、単結晶膜が軟
磁性材料、硬磁性材料のいずれについても本発明を適用
することが可能である。但し、上述の通り、単結晶膜を
硬磁性材料とすることにより、永久磁石が不要となり、
光アイソレータ等の光デバイスあるいはファラデー効果
を利用する種々の機器、部品の小型化、低コスト化を図
ることができる。よって、以下、ファラデー回転子1b
を角型の磁気ヒステリシスを示すビスマス置換型希土類
鉄ガーネット単結晶膜、すなわち硬磁性材料とする場合
について説明する。
【0023】ビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶
膜の組成は、(Bi3-x−Rx)−Fe(5-w)−Mw−O12
の化学組成(ただし、R=Yを含む希土類元素の1種ま
たは2種以上、M=Ga、Al、Ge、Sc、Inおよ
びTiの一種または二種以上)とすることが望ましい。
ここで、Rは、Yを含む希土類元素(La,Ce,P
r,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,E
r,YbおよびLu)の1種または2種以上である。以
下、Yを含む希土類元素を「希土類元素R」と称する。
また、本発明の硬磁性ガーネット材料において、0.5
≦x≦2.5であり、かつ0.2≦w≦2.5とするこ
と、さらには1.0≦x≦2.3であり、かつ0.4≦
w≦1.5とすることが望ましい。
【0024】希土類元素RとしてはGd、Tb、Ybが
特に好ましい。Gdは磁気モーメントが希土類元素の中
で最も大きいため、飽和磁化(4πMs)の低減に有効
である。また、GdBi系のガーネットは、磁化反転温
度が−10℃程度と、TbBi系のガーネットの−50
℃に比べて室温に近いため、硬磁性にとって有利であ
る。さらに、Gdは1.2μm以上の波長の光の吸収が
ないため、挿入損失にとって有利である。Tbは、温度
特性、波長特性を確保するために有効な元素である。G
dは磁気異方性が大きく高保磁力化に有効な元素である
が、保磁力への寄与はTbのほうが大きい。
【0025】以上の理由から、本発明のビスマス置換型
希土類鉄ガーネット単結晶膜において、その組成を(B
3-a-b-cGdaTbbYbc)Fe(5-w)w12の化学組
成(ただし、M=Ga、Al、Ge、Sc、Inおよび
Tiの一種または二種以上、0.5≦a+b+c≦2.
5,0.2≦w≦2.5)とすることが特に望ましい。
【0026】本発明のビスマス置換型希土類鉄ガーネッ
ト単結晶膜は、LPE法により形成されることを前提と
するが、Ybは、当該単結晶膜の格子定数を基板の格子
定数と整合させるために含有される。ファラデー回転能
を大きくするためには、Biを多く含む結晶とすること
が望まれる。ここで、ファラデー回転角は、ファラデー
回転子1bを構成する材料の厚さに比例し、単位厚さあ
たりの回転角をファラデー回転能と呼ぶ。また、光アイ
ソレータ1に用いられるファラデー回転子1bの回転角
は45°であるから、ファラデー回転能が大きいほどフ
ァラデー回転子1bの厚さを薄くでき、小型化にとって
有利となる。また、LPE法に用いられる基板(以下、
LPE基板)は、所定の格子定数を有している。Biは
イオン半径が大きいために、単にBiの量を多くしたの
では、得たい結晶膜の格子定数と基板の格子定数の整合
が取れなくなる。そこで、Biの量を多くしつつ、イオ
ン半径の小さいYbを含有せしめることにより、得たい
結晶膜の格子定数と基板の格子定数の整合をとるのであ
る。そして、Ybは光通信に使用される光の波長域で光
吸収がないので、挿入損失を劣化させることもない。
【0027】本発明のビスマス置換型希土類鉄ガーネッ
ト材料において、MはFeの一部を置換する元素であ
り、Ga、Al、Ge、Sc、InおよびTiの一種ま
たは二種以上から選択される。この中では単結晶育成の
観点からGaが最も望ましい元素である。
【0028】本発明のビスマス置換型希土類鉄ガーネッ
ト材料において、MのFeに対する置換量であるwは
0.2≦w≦2.5とする。wが0.2未満では、得ら
れた単結晶膜が角型の磁気ヒステリシスを保てなくな
る。一方、wが2.5を超えると、単結晶の育成中に溶
融部分に不必要な結晶核が生成して単結晶の健全な育成
が困難となる。望ましいwの範囲は0.3≦w≦2.
0、さらに望ましいwの範囲は0.4≦w≦1.5であ
る。
【0029】但し、上述の通り、本発明は、ビスマス置
換型希土類鉄ガーネット単結晶膜をワイヤーソーで切断
することを特徴とするものであり、この単結晶膜の組成
は上記に示したものに特に限定されるものではない。
【0030】本発明によるファラデー回転子1bは、以
上説明したビスマス置換型希土類鉄ガーネット材料を例
えばLPE法により育成した単結晶膜から構成すること
ができる。この単結晶膜は、実質的に角型の磁気ヒステ
リシスを示す。
【0031】<単結晶膜育成工程>次に、単結晶膜育成
工程について説明する。本発明による単結晶膜は、LP
E法により育成することができる。図3はLPE法によ
り単結晶膜を育成している様子を示している。図3に示
すように、例えば白金製の坩堝40に得たい単結晶膜の
原料とフラックスとを投入する。坩堝40に投入された
原料とフラックスとは、加熱コイル41へ通電すること
により加熱、溶融してメルト42を形成する。メルト4
2の温度を下げて過冷却状態にして、LPE基板43を
回転させながらメルト42に接触させると、LPE基板
43上に、単結晶膜44がエピタキシャル成長する。な
お、育成された単結晶膜44には、フラックスおよび坩
堝40から不純物が不可避的に混入するが、本発明がこ
のような不可避的不純物の混入を許容することは言うま
でもない。もちろん、本発明の効果を実行あらしめるた
めに、これら不純物の混入を低減することが望ましい。
【0032】LPE法により得る単結晶膜44は、最終
的に得たいファラデー回転子1bの厚さよりも若干厚く
育成される。研磨加工に供した後にファラデー回転子1
bとして用いるためである。なお、ファラデー回転子1
bには、使用される光の波長に対して回転角が45°に
なるような単結晶膜44が用いられる。換言すれば、L
PE法により得られた単結晶膜44は、ファラデー回転
角が45°になるまで研磨加工される。ファラデー回転
子1bは、概ね500μm程度の厚さを有している。
【0033】研磨加工された後に、挿入損失低減のため
に、ファラデー回転子1bの表面には、無反射コーティ
ングを施すことが望ましい。ここで、挿入損失とは、入
射光に対す出射光の減衰分をいう。ファラデー回転子1
bにおける挿入損失は、ファラデー回転子1bを構成す
る材料の光吸収損失と、当該材料と空気との屈折率の違
いによる界面の反射損失からなる。高品質な情報伝送を
確保するために、ファラデー回転子1bにおいては、挿
入損失を低減することが要求されているが、ファラデー
回転子1b表面に無反射コーティングを施すことによ
り、反射損失は無視できる程度まで低減できる。
【0034】<切断工程>この切断工程では、単結晶膜
44をワイヤーソーで切断する。ワイヤーソーとして
は、例えばダイヤモンドワイヤーソーを用いることがで
きる。ダイヤモンドワイヤーソーは、ワイヤーソーイン
グ工法に使用されるダイヤモンド工具で、ダイヤモンド
砥粒が混合されたメタルボンドのビーズを専用のワイヤ
ーに配列・接合したものである。このダイヤモンドワイ
ヤーソーに限らず、ワイヤーとしてのピアノ線とアルミ
ナ等の砥粒を用いて切断するものについても、本実施の
形態ではワイヤーソーと称する。以下、ワイヤーソーに
よる切断が有効である理由について説明した後、ワイヤ
ーソーによる切断条件について述べる。
【0035】(硬磁性材料の場合において、ワイヤーソ
ーによる切断が有効である理由)硬磁性材料において、
チッピングが生じると、磁気特性が著しく低下してしま
うことについては上述の通りである。このように、チッ
ピングによって磁気特性が低下する理由は、以下に説明
するように、硬磁性材料の保磁力発生機構に基づく。硬
磁性を示すビスマス置換型希土類鉄ガーネット材料の保
磁力発生機構は、いわゆるnucleation(ニュークリエイ
ション)タイプであり、このタイプの材料は、磁化され
やすく、一度磁化されると逆磁区が発生しにくいという
特徴がある。この特徴によって、単結晶膜44からなる
ファラデー回転子1bは、角型の磁気ヒステリシスを示
すのである。
【0036】ところが、現実問題として、単結晶膜44
を育成するにあたり、欠陥が全くない完全結晶の育成は
極めて困難である。よって、通常、単結晶膜44には結
晶欠陥が存在することとなるが、この結晶欠陥は逆磁区
発生の核となる。ここで、単結晶膜44の切断時にチッ
ピングが生じた場合には、チッピング箇所が結晶欠陥と
なり、逆磁区発生の核となってしまう。よって、上述し
た単結晶膜育成工程で、できるだけ完全結晶に近い結晶
を育成できたとしても、切断時にチッピングが生じた場
合には、硬磁性材料の磁気特性が著しく低下してしまう
のである。したがって、高い磁気特性を有する単結晶膜
44、さらには高特性のファラデー回転子1bを得るた
めには、単結晶膜44の切断時にいかにチッピングを抑
えるか、ということが極めて重要である。
【0037】ワイヤーソーによって単結晶膜44を切断
する場合には、単結晶膜44とワイヤーとの接触が、面
接触ではなく線接触となる。よって、例えばダイシング
マシンのように面接触による切断の場合と比較すると、
切断対象である単結晶膜44への負荷を非常に小さくす
ることができ、切断時のチッピングを最小限に抑えるこ
とができる。このようにチッピングを抑えることで、単
結晶膜育成工程で育成した完全結晶に近い状態を維持し
つつ、磁気特性の良好な単結晶膜44を得ることが可能
となる。
【0038】(軟磁性材料の場合において、ワイヤーソ
ーによる切断が有効である理由)軟磁性材料は、上述し
た硬磁性材料と保磁力発生機構が異なるため、単結晶膜
44の切断時にチッピングが生じたとしても、それが許
容範囲内のチッピング(現状では100μm以下)であ
れば、磁気特性が著しく低下するという問題は生じな
い。しかしながら、例えばダイシングマシンのように面
接触による切断の場合には、単結晶膜44の切断時に生
じるチッピング量が多くなると、歩留まりが低下してし
まう。これに対し、ワイヤーソーによって単結晶膜44
を切断する場合には、上述の通り、単結晶膜44とワイ
ヤーとの接触が線接触となる。これにより、切断対象で
ある単結晶膜44への負荷を非常に小さくすることがで
き、切断時のチッピングを最小限に抑えることができ
る。
【0039】また、単結晶膜44の表裏面に、偏光子1
a、1c等の光学素子を樹脂等により接着し、この状態
でダイシングマシンによる切断を行うと、著しいチッピ
ングが生じたり、単結晶膜44に一旦接着された光学素
子が樹脂等の接着層から剥がれてしまう。また、ダイシ
ングシートから光学素子がはずれてしまうという不具合
が生じる。これは、樹脂等で接着されることにより一体
となった単結晶膜44および光学素子、つまり切断対象
の切断面積に較べて切断厚さが厚くなりすぎ、ダイシン
グマシンのように面接触による切断では切断対象に対す
る負荷が大きくなってしまうためであると考えられる。
一方、ワイヤーソーのように線接触による切断では、切
断対象の厚さが厚い場合であっても、切断対象への負荷
を最小限のものとすることができ、結果的に切断時のチ
ッピングを効果的に抑えることが可能となる。
【0040】以上説明の通り、ワイヤーソーによる切断
は、単結晶膜44が硬磁性材料である場合、軟磁性材料
である場合のいずれにおいても有効であるといえる。ま
た、単結晶膜44から構成されるファラデー回転子1b
と他の光学素子を樹脂等で接着したものをワイヤーソー
で切断する場合には、チッピングを効果的に抑制するこ
とができる。
【0041】以下、ワイヤーソーによる望ましい切断条
件について述べる。ワイヤーソーに用いられるワイヤー
は、極細のものが好ましい。これは、単結晶膜44への
負荷をより一層小さくするためである。その一方で、単
結晶膜44を切断する際には、所定の強度を備えたワイ
ヤーである必要がある。よって、望ましいワイヤーの線
径は、0.08〜0.3mm、好ましくは0.15〜
0.2mmとする。
【0042】後述する実施例で示すように、単結晶膜4
4をワイヤーソーで切断すると、切断面には微細な凹凸
が均一に形成される。ここで、ワイヤーソーに用いられ
る平均砥粒径が小さいほど、単結晶膜44の切断面に形
成される微細な凹凸がより微細なものとなる。よって、
ワイヤーソーに用いられる平均砥粒径は、1〜30μm
程度とする。より好ましい平均砥粒径は、5〜15μm
である。
【0043】ワイヤーソーの走行方向は往復走行とし、
走行速度は、100〜700m/min程度とする。よ
り好ましい走行速度は、300〜500m/minであ
る。なお、切断効率を上げるためには、いわゆるマルチ
ワイヤーソーを用いることが有効である。
【0044】<着磁工程>上述の通り、この着磁工程
は、硬磁性材料に対して行われる工程である。単結晶膜
育成工程において育成された単結晶膜44が硬磁性材料
である場合には、望ましくは、切断工程に先だって着磁
工程に進む。着磁工程では、単結晶膜44からなるファ
ラデー回転子1bに対し、外部磁場を施す。外部磁場の
強度は、飽和磁場以上、具体的には300Oe以上とす
る。外部磁場の強度が高ければ高いほどファラデー回転
子1bの高保磁力化が期待できる。但し、装置の高コス
ト化を防ぐため、現状では外部磁場の強度の上限を20
kOe程度とする。より望ましい外部磁場の強度は50
0Oe以上、さらに望ましい外部磁場の強度は1kOe
以上である。飽和磁場以上の磁場をファラデー回転子1
bに印加するためには、例えば電磁石を用いることがで
きる。磁場の印加方向は、最終的にファラデー回転子1
bが着磁されるべき方向とし、具体的にはファラデー回
転子1bの厚さ方向に磁場を印加する。ここで、図2
(a)を用いてファラデー回転子1bに対する磁場の印
加方向を示す。図2(a)に示したように、ファラデー
回転子1bは偏光子1a,1cの間に配置されるが、光
が進む方向、つまり順方向の光と略平行になるようにフ
ァラデー回転子1bの厚さ方向に磁場を印加するのであ
る。
【0045】外部磁場を施す時間は、1分から1時間程
度とすればよい。但し、この時間は外部磁場の強度によ
って左右されるものであり、外部磁場の強度が高い場
合、具体的には外部磁場の強度が500Oe以上の場合
には、外部磁場を施す時間が数秒であっても上記した高
保磁力化という効果を得ることができる。
【0046】以上の組成および製造方法による本発明の
ファラデー回転子1bは、良好な磁気特性を有する。つ
まり、本発明によれば、単結晶膜44を切断する際のチ
ッピングを効果的に防止し、保磁力に優れた単結晶膜4
4およびファラデー回転子1bを得ることができる。
【0047】以下本発明の具体的な実施例について説明
する。 (実施例1)軟磁性単結晶膜をワイヤーソーで切断した
場合の歩留まりを確認するために行った実験を実施例1
として説明する。酸化ビスマス(Bi23,4N)、酸
化第2鉄(Fe23,4N)、酸化ホルミニウム(Ho
23,3N)、酸化テルビウム(Tb47,3N)、酸
化アルミニウム(Al23,3N)を原料として、図3
に示す装置を用いて、エピタキシャル成長により、軟磁
性のビスマス置換型希土類鉄磁性ガーネット単結晶膜を
育成した。用いたLPE基板は、(111)ガーネット
単結晶((GdCa)3(GaMgZr)512)であ
る。この基板の格子定数は、1.2497±0.000
2nmである。なお、前記原料のほかに、酸化鉛(Pb
O,4N)および酸化ほう素(B23,5N)をフラッ
クスとして白金製の坩堝40に投入した。
【0048】ビスマス置換型希土類鉄磁性ガーネット単
結晶膜を育成した後、膜厚500μmまで研磨し、LP
E基板を除去した。得られた単結晶膜の組成分析を行っ
た結果、Bi1.3Tb1.3Ho0.4Fe4.9Al0.112.0
であった。また、ワイヤーソーおよびダイシングマシン
を用い、各々1枚のウエハから50個のサンプルを切り
出した。切り出した各サンプルのサイズは、1.0×
1.0mm、厚さ500μmである。また、ワイヤーソ
ーによる切断条件は以下の通りである。
【0049】(ワイヤーソーによる切断条件) ワイヤー線径:0.14mm 平均砥粒径:13μm ワイヤーソーの走行方向:往復走行 走行速度:400m/min
【0050】その結果、ワイヤーソーにより切断した場
合には、歩留まりは96%であった。一方、ダイシング
マシンにより切断した場合には、歩留まりは80%であ
った。なお、歩留まりは、チッピングのサイズおよび量
に基づいている。以上の結果から、ワイヤーソーにより
単結晶膜を切断した場合には、ダイシングマシンによる
切断と比較して、大幅に歩留まりが改善されることがわ
かった。
【0051】(実施例2)軟磁性単結晶膜をガラス偏光
子と接着した後に切断した場合の歩留まりを確認するた
めに行った実験を実施例2として説明する。実施例1で
得られた単結晶膜(ファラデー回転子1b)を図2
(b)に示した要領で偏光子1a、1cと樹脂で接着し
た。次いで、偏光子1a、1cが接着された単結晶膜を
実施例1と同様の条件でワイヤーソーにより1.0×
1.0mm、厚さ500μm、50個に切断した。その
結果、歩留まりは100%であった。一方、偏光子1
a、1cが接着された単結晶膜をダイシングマシンによ
り1.0×1.0mm、厚さ500μm、50個に切断
した結果、歩留まりは90%であった。以上の結果か
ら、軟磁性単結晶膜をガラス偏光子と接着した後にワイ
ヤーソーにより切断した場合には、理想的な歩留まりを
示すことがわかった。
【0052】(実施例3)硬磁性単結晶膜をワイヤーソ
ーで切断した場合の歩留まりを確認するために行った実
験を実施例3として説明する。酸化ビスマス(Bi
23,4N)、酸化第2鉄(Fe23,4N)、酸化ガ
ドリニウム(Gd23,5N)、酸化テルビウム(Tb
47,3N) 、酸化イッテルビウム(Yb23,4
N)、酸化ガリウム(Ga23,4N)を原料として、
図3に示す装置を用いて、エピタキシャル成長により、
1種類のビスマス置換型希土類鉄磁性ガーネット単結晶
膜を育成した。用いたLPE基板は、(111)ガーネ
ット単結晶((GdCa)3(GaMgZr)512)で
ある。この基板の格子定数は、1.2497±0.00
02nmである。なお、前記原料のほかに、酸化鉛(P
bO,4N)および酸化ほう素(B23,5N)をフラ
ックスとして白金製の坩堝40に投入した。
【0053】ビスマス置換型希土類鉄磁性ガーネット単
結晶膜を育成した後、膜厚500μmまで研磨し、LP
E基板を除去した。次いで、得られた単結晶膜の組成分
析を行った結果、Bi1.0Gd0.6Tb1.0Yb0.4Fe
4.0Ga1.012.0であった。こうして得られた単結晶膜
を外部磁場10kOe中で着磁した後、VSM(振動試
料型磁力計)を用いて磁気特性を測定した。その結果、
4πMsが80G、保磁力が300Oeであった。ま
た、磁性種別は、硬磁性であり、角型ヒステリシスを示
した。なお、本実施例において、保磁力は室温における
値を示しており、以下の実施例においても同様である。
【0054】次に、ワイヤーソーおよびダイシングマシ
ンを用い、各々1枚のウエハから50個のサンプルを切
り出した。切り出した各サンプルのサイズは、1.0×
1.0mm、厚さ500μmである。また、ワイヤーソ
ーによる切断条件は実施例1と同様である。その結果、
ダイシングマシンで切断した場合には、歩留まりは80
%であった。切断後、VSMを用いて保磁力を測定した
ところ、300±25%Oeの保磁力を示した。つま
り、サンプル間の保磁力のばらつきが25%程度と大き
く、保磁力が低いものについては225Oe程度の低い
値を示した。
【0055】一方、ワイヤーソーで切断した場合には、
歩留まりは96%であった。切断後、VSMを用いて保
磁力を測定したところ、400±5%Oeの保磁力を示
した。このように、切断後に切断前よりも保磁力が増加
したのは、反磁界の影響が小さくなったことにより、見
かけ上の保磁力が増加したためであると考えられる。ま
た、いずれのサンプルについても350Oe以上という
良好な保磁力を示しており、サンプル間の保磁力のばら
つきも5%程度と少ないことが確認された。
【0056】続いて、ワイヤーソーで切断したサンプル
およびダイシングマシンで切断したサンプルについて、
切断面を顕微鏡で観察した。ワイヤーソーで切断したサ
ンプルの切断面を図4(a)に、ダイシングマシンで切
断したサンプルの切断面を図4(b)にそれぞれ示す。
図4(a)を見ると、ワイヤーソーにより硬磁性単結晶
膜を切断した場合には、切断面に微細な凹凸が均一に形
成されていることがわかる。また、この切断面を見ただ
けでは、切断方向が判別できず、その意味で、切断面が
等方的であるといえる。また、図4(a)に示すよう
に、エッジにおいてもチッピングがほとんど観察されな
かった。
【0057】一方、図4(b)を見ると、ダイシングマ
シンにより硬磁性単結晶膜を切断した場合には、方向性
のある縞状の模様が切断面に形成されていることがわか
る。この縞状の模様は、単結晶膜の厚さ方向中央に多く
観察された。また、図4(b)に示すように、エッジに
は、複数のチッピングが生じていることが確認された。
【0058】以上の結果から、硬磁性単結晶膜をワイヤ
ーソーによって切断することにより、保磁力が向上する
こと、およびサンプル間のばらつきが低減できることが
確認された。また、ワイヤーソーによって硬磁性単結晶
膜を切断した場合には、チッピングが低減し、歩留まり
が改善されることがわかった。
【0059】(実施例4)硬磁性単結晶膜をガラス偏光
子と接着した後に切断した場合の歩留まりを確認するた
めに行った実験を実施例4として説明する。実施例3で
得られた単結晶膜(ファラデー回転子1b)を図2
(b)に示した要領で偏光子1a、1cと樹脂で接着し
た。次に、ワイヤーソーおよびダイシングマシンを用
い、偏光子1a、1cが接着された単結晶膜から各々5
0個のサンプルを切り出した。切り出した各サンプルの
サイズは、1.0×1.0mm、厚さ500μmであ
る。また、ワイヤーソーによる切断条件は実施例1と同
様である。ワイヤーソーによる切断後、VSMを用いて
保磁力を測定したところ、保磁力は430±2.5%O
eであった。一方、ダイシングマシンによる切断後、V
SMを用いて保磁力を測定したところ、保磁力は330
±15%Oeであった。以上の結果から、硬磁性単結晶
膜をガラス偏光子と接着した後にワイヤーソーにより切
断した場合には、ダイシングマシンにより切断した場合
よりも約100Oe高い保磁力を得ることができるこ
と、しかも、サンプル間の保磁力のばらつきが非常に少
ないことが確認された。
【0060】以上の実施例1〜実施例4により、ビスマ
ス置換型希土類鉄ガーネット単結晶膜をワイヤーソーに
よって切断することにより、チッピング防止、歩留まり
改善、保磁力向上という効果を奏することが明らかとな
った。また、軟磁性材料、硬磁性材料いずれの場合であ
っても、ワイヤーソーによる切断が有効であることがわ
かった。さらに、ビスマス置換型希土類鉄ガーネット単
結晶膜を単独で切断する場合のみならず、ビスマス置換
型希土類鉄ガーネット単結晶膜をガラス偏光子と接着し
た後に切断した場合においても、ワイヤーソーによる切
断が有効であることが確認された。したがって、ビスマ
ス置換型希土類鉄ガーネット単結晶膜、またはガラス偏
光子と接着したビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結
晶膜をワイヤーソーによる切断は、チッピング防止、歩
留まり改善、保磁力向上に有効に寄与するといえる。な
お、上記の実施例2および実施例4では、ビスマス置換
型希土類鉄ガーネット単結晶膜をガラス偏光子と接着し
た後に切断する場合について説明したが、ガラス偏光子
に限らず、ガラス、複屈折板ガラス、ガラスに金属を蒸
着してなる金属薄膜ミラー等の光学素子と接着後に切断
する場合にも、同様の効果が期待できる。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
保磁力に優れたビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結
晶膜が提供される。したがって、本発明のビスマス置換
型希土類鉄ガーネット単結晶膜を用いたファラデー回転
子は、高品質なものとなり、例えば光アイソレータ等の
光デバイスに用いられた場合には光デバイスの特性向上
に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態によるLDモジュールの構成を
示す斜視図である。
【図2】 本実施の形態による光アイソレータの構成を
示す図である。
【図3】 LPE法を説明するための図である。
【図4】 (a)はワイヤーソーによる切断面を示す
図、(b)はダイシングマシンによる切断面を示す図で
ある。
【図5】 従来の光アイソレータの構成を示す図であ
る。
【図6】 光アイソレータの原理を説明するための図で
ある。
【符号の説明】
1…光アイソレータ(光デバイス)、1a,1c…偏光
子(第1の光学素子、第2の光学素子)、1b…ファラ
デー回転子、2…レンズ、3…LD、4…光伝送ライ
ン、40…坩堝、41…加熱コイル、42…メルト、4
3…LPE基板、44…単結晶膜
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H04B 10/28 (72)発明者 山沢 和人 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 2H079 AA03 BA02 CA06 DA13 EA11 JA05 KA05 2H099 AA01 BA02 CA00 4G077 AA03 BC25 BC27 BC28 CG01 FG13 HA01 5K002 BA02 BA07 CA12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結
    晶膜を用い、入射された光の偏波面を回転させるファラ
    デー回転子の製造方法であって、 前記単結晶膜を育成する単結晶膜育成工程と、 前記単結晶膜育成工程で得られた前記単結晶膜をワイヤ
    ーソーで切断する切断工程と、を備えたことを特徴とす
    るファラデー回転子の製造方法。
  2. 【請求項2】 所定の間隔を持って対向する表裏面と、
    前記表裏面の周囲に形成される側面とを有し、 前記側面に微細な凹凸が均一に形成されていることを特
    徴とするビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶膜を
    用いたファラデー回転子。
  3. 【請求項3】 前記単結晶膜は、実質的に角型の磁気ヒ
    ステリシスを示すことを特徴とする請求項2に記載のフ
    ァラデー回転子。
  4. 【請求項4】 順方向の光が入射される第1の光学素子
    と、 前記第1の光学素子と所定間隔を隔てて対向配置され前
    記順方向の光が出射される第2の光学素子と、 前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間に配置
    され、前記第1の光学素子を透過した光の偏波面を回転
    させて前記第2の光学素子に向けて出射するとともに、
    前記第2の光学素子を透過した逆方向の光の透過を阻止
    するファラデー回転子とを備え、 前記ファラデー回転子は、ビスマス置換型希土類鉄ガー
    ネット単結晶膜から構成され、かつ前記単結晶膜は、 所定の間隔を持って対向する表裏面と、前記表裏面の周
    囲に形成される側面とを有し、前記側面は等方的な切断
    面であることを特徴とする光デバイス。
  5. 【請求項5】 前記単結晶膜の前記表裏面は、前記第1
    の光学素子または前記第2の光学素子と接着剤により接
    着されていることを特徴とする請求項4に記載の光デバ
    イス。
  6. 【請求項6】 前記単結晶膜は、角型の磁気ヒステリシ
    スを示し、かつ室温において350Oe以上の保磁力を
    有することを特徴とする請求項4または5に記載の光デ
    バイス。
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