JP2003239018A - プレス成形品の焼入れ方法及び焼入れ装置 - Google Patents

プレス成形品の焼入れ方法及び焼入れ装置

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JP2003239018A
JP2003239018A JP2002262487A JP2002262487A JP2003239018A JP 2003239018 A JP2003239018 A JP 2003239018A JP 2002262487 A JP2002262487 A JP 2002262487A JP 2002262487 A JP2002262487 A JP 2002262487A JP 2003239018 A JP2003239018 A JP 2003239018A
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quenching
press
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inductor
oxidizing gas
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JP2002262487A
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Yatsuhiro Shimizu
八尋 清水
Koji Haneya
宏治 羽矢
Shingo Shukuwa
新吾 宿輪
Shigeki Kishihara
重樹 岸原
Satoshi Shimizu
智 清水
So Suzuki
宗 鈴木
Takao Minagawa
孝雄 皆川
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Kikuchi Co Ltd
Dai Ichi High Frequency Co Ltd
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Kikuchi Co Ltd
Dai Ichi High Frequency Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレス成形品の凸条部に設定した焼入れ対象
部分を短時間に焼入れする方法及び装置を提供する。 【解決手段】 プレス成形品1の凸条部1Aの稜線部1
Cに設定した焼入れ対象部分をほぼ覆うように、該焼入
れ対象部分とほぼ等しい大きさで且つ焼入れ対象部分に
倣った形状の誘導作用面を備えた誘導子11を配置し、
その誘導子11に高周波通電して焼入れ対象部分全体を
同時に誘導加熱して焼入れを行う構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプレス成形品の焼入
れ方法及びそれに用いる焼入れ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、種々な形状のプレス成形品が
使用されており、その一つとして、細長い凸条部を備え
たものがある。この代表例としては、自動車のボディー
の、前席と後席との間に位置する支柱として機能するセ
ンターピラーを補強するために用いられるリーンフォー
スを挙げることができる。このような補強材として使用
するプレス成形品では、必要に応じ焼入れ等の強化処理
が施されている。
【0003】従来の凸条部を有するプレス成形品に対す
る焼入れ方法の一例が、特開平10−17933号公報
に記載されている。この公報に記載の方法は、プレス成
形品の長手方向の小区間を全幅に渡って誘導加熱可能な
誘導コイルを、プレス成形品に沿って移動させて焼入れ
に必要な温度に昇温させ、その後、冷却して焼入れを行
っており、その際の移動速度を調節することで、プレス
成形品の長手方向の硬さ分布を所望のように調整してい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に記載のように、誘導コイルをプレス成形品に沿って
移動させながら焼入れを行う方法では焼入れ処理に時間
がかかり、生産性が低いという問題があった。また、プ
レス成形品の全幅を加熱しているので、熱履歴を受ける
面積が大きく、しかも、前記熱履歴は、長手方向の局部
が急熱・急冷されるというアンバランスな熱的条件の下
で生じる局部的な熱歪等が長手方向に累積される類のも
のである。このため、上記焼入れ処理によって生じる歪
は、その大きさもさることながら、修正の容易でない複
雑な態様で生じることとなり、これの防止や修正に多大
な注力を要するという問題もあった。
【0005】凸条部を有するプレス成形品の強化のため
には、必ずしも全幅に焼入れを施す必要はなく、むしろ
凸条部の頂上の稜線部の所望幅部分のみに焼入れを施し
て強化することへの関心が高い。しかしながら、上記公
報に記載の方法では、このような局部的な焼入れを施す
ことはできない。また、加熱幅の狭い誘導コイルを用意
し、その誘導コイルを稜線部に沿って移動させること
で、稜線部の所望幅部分のみに焼入れを施すことが考え
られるが、実際に行ってみると、稜線部の加熱幅が変動
しやすい等の難点があり、好適でない。
【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、本発明の目的は、凸条部を有するプレス成
形品を、前記凸条部の長手方向に沿って設定した所望幅
の焼入れ対象部分のみに短時間で焼入れを施して強化す
ることの可能なプレス成形品の焼入れ方法、並びにその
方法の実施に用いる焼入れ装置を提供するところにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、凸条部を有す
るプレス成形品を強化するために、その凸条部に設定し
た焼入れ対象部分に焼入れを施すに当たって、その焼入
れのための加熱を、前記焼入れ対象部分全体を同時に加
熱できる誘導作用導体を備えた誘導子をその焼入れ対象
部分に近接させて配置し、この誘導子に高周波通電して
焼入れ対象部分全体を同時に誘導加熱する一発加熱方式
で行い、更に、この誘導子として、その誘導作用導体
を、前記凸条部を横切る方位に関して前記焼入れ対象部
分の面形状に倣った誘導作用面を有する形状に形成した
誘導子を用い、その誘導作用面と焼入れ対象部分の間隔
が、凸条部を横切る方位に関して均等となるように誘導
子を配置して誘導加熱を行う構成としたものである。こ
の構成により、凸条部に設定した焼入れ対象部分全体を
同時に且つきわめて短時間で所望温度に昇温させること
ができ、所望の焼入れ対象部分を従来の数分の一の短時
間で焼入れ処理できて、プレス成形品の強化を図ること
ができる。また、前記歪問題の改善が著しく、軽度の歪
が、概ね一次元的な態様で生じるに留まるので、焼入れ
処理工程内の対策あるいは焼入れ処理後の簡単な修正に
より、支障のないレベルに低歪化された製品が容易に得
られる。本発明により歪発生を抑制できるのは、(1)
本発明方法における加熱が小面積を対象としたものであ
って総入熱量が少なく、熱歪の要因そのものが僅少であ
ること、(2)長手方向の局部に集中した加熱,急冷で
はなく、また、短時間(例えば5秒)の加熱に引き続い
て急冷を行う関係から、急冷までの間の熱の拡散が少な
く、温度分布が未だ乱れるにいたっていない状況での急
冷となるため、歪を複雑化する要因になる熱的条件のア
ンバランスが僅少であること、に由来したものと考えら
れる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で焼入れの対象とするプレ
ス成形品は、細長く形成された凸条部を有し、その凸条
部の少なくとも一部領域に設定した焼入れ対象部分に焼
入れを施して強化を図る必要があるものであれば、その
構造、用途等は任意である。ここで、「凸条部」とは、
断面が凸形状で且つ細長い形状を呈する部分を総称して
おり、断面の凸形状は、円弧、楕円弧等の湾曲した曲線
で形成されるもの、交差する直線で形成されるもの、直
線と円弧等の湾曲した曲線を組み合わせたもの等任意で
ある。また、この断面凸形状は、凸条部の長手方向に一
定形状でもよいし、長手方向に変化した形状でもよい。
更には、部品の大半領域を単一の凸条部が占める構成で
あってもよい。凸条部を有するプレス成形品の具体例と
しては、自動車のボディーのセンターピラーを補強する
リーンフォース、フロントバンパービーム、フロントサ
イドフレーム、フロントフロアの左右の端部に接合され
るサイドシル、リアサイドフレームやそのリーンフォー
ス、あるいはサイドドア用の補強ビーム等の各種車体用
部品を挙げることができる。また、プレス成形品の素材
は焼入れ可能なものであれば任意であり、一般的には鋼
板である。
【0009】本発明のプレス成形品の焼入れ方法は、前
記したように、焼入れのための加熱を、凸条部に設定し
た焼入れ対象部分全体を同時に加熱できる誘導作用導体
を備えた誘導子を焼入れ対象部分に近接させて配置し、
この誘導子に高周波通電して焼入れ対象部分全体を同時
に誘導加熱する一発加熱方式で行い、更にこの誘導子と
して、その誘導作用導体を、前記凸条部を横切る方位に
関して前記焼入れ対象部分の面形状に倣った誘導作用面
を有する形状に形成した誘導子を用い、その誘導作用面
と焼入れ対象部分の間隔が、凸条部を横切る方位に関し
て均等となるように誘導子を配置して誘導加熱を行う構
成としたことを基本構成とする。この構成により、凸条
部に設定した焼入れ対象部分全体を同時に且つきわめて
短時間で所望温度に昇温させることができ、所望の焼入
れ対象部分を従来の数分の一の短時間で焼入れ処理でき
る。
【0010】ここで、プレス成形品の凸条部に設定する
焼入れ対象部分が複数個ある場合、その複数の焼入れ対
象部分に対して逐次焼入れを行ってもよいが、複数の焼
入れ対象部分のそれぞれに誘導子を近接配置し、複数の
焼入れ対象部分を同時に一発式で誘導加熱して焼入れす
ることが好ましい。このように複数の焼入れ対象部分を
同時に加熱して焼入れを施すと、作業時間を短縮できる
のみならず、プレス成形品に対する熱影響を最小として
歪発生を抑制できる。特に、焼入れを施すべき焼入れ対
象部分が並列に且つほぼ対称に配置されている場合に
は、ほぼ対称な焼入れ対象部分を全域同時に加熱するた
め、急熱、急冷操作の熱的作用がほぼ対称に加わり、歪
を複雑化する要因になる熱的条件のアンバランスが僅少
となり、対策の容易でない歪の発生をきわめて小さくで
きる。
【0011】本発明に使用する誘導子の誘導作用面の幅
は、焼入れ対象部分の幅に応じて定めるものであり、焼
入れ対象部分の幅を凸条部に沿って一定としたい場合に
は、誘導子の誘導子作用面の幅も凸条部に沿って一定と
する。一方、焼入れ対象部分の幅を凸条部に沿って変化
させることが望ましい場合には、それに応じて、誘導子
の誘導作用面の幅も凸条部に沿って変化させておく。こ
の構成により、焼入れ幅を凸条部に沿って変化させるこ
とができる。すなわち、本発明は、凸条部に沿って幅を
変化させた焼入れ対象部分に対しても、容易に適応で
き、所望形状の焼入れ対象部分を一発式で焼入れするこ
とができる。
【0012】前記誘導加熱における加熱時間は10秒以
下、更には5秒以下とすることが好ましい。この加熱時
間は遅くしても、焼入れ対象部分を焼入れ温度に加熱す
ることは可能であるが、加熱に時間がかかると、発熱領
域からの熱が熱伝導によって周囲に伝わり、焼入れ対象
部分の外側の領域も焼入れされるような温度に昇温して
しまう。このため、前記した歪抑制につながる作用が減
殺されるばかりでなく、焼入れされる領域が、本来焼入
れすべき焼入れ対象部分の外側に拡がってしまい、しか
もその拡がりが不均一となるとか、製品間で不均一とな
ってしまう恐れがある。この問題を回避するには、極力
短時間で昇温させることが望ましく、本発明者らが確認
した結果、誘導加熱時間を10秒以下、望ましくは5秒
以下とすることで、良好な結果を得ることができた。焼
入れ温度は、プレス成形品の材質に応じて定めれば良
く、例えば、鋼板に対しては750〜950°C、好ま
しくは、800〜950°Cとする。また、亜鉛メッキ
鋼板に対しては、850°C以下にしてメッキの損傷を
避けることが好ましい。
【0013】誘導子を焼入れ対象部分に近接配置させる
際、誘導子と焼入れ対象部分との対向間隔が入熱量に影
響を与えるので、凸条部に設定した均一な幅の焼入れ対
象部分に均一に入熱するためには上記対向間隔を一定と
する。しかしながら、周囲への熱伝導や放熱などが均一
でないために、所望の均一な温度が確保できない場合が
あり、その場合には、対向間隔を凸条部に沿って変化さ
せることにより、凸条部に沿った方位に係る最高到達温
度分布が一定となるよう調整することができる。また、
焼入れ対象部分の焼入れ硬さを凸条部に沿って変化させ
たい場合や、焼入れ幅を凸条部に沿って変化させたい場
合にも凸条部に沿って入熱量を変化させる必要が出てく
る。この場合も、誘導子の焼入れ対象部分に対する対向
間隔を凸条部に沿って変化させることにより、前記焼入
れ対象部分の凸条部に沿った方位に係る最高到達温度分
布を調整する上記施策が有用となる。
【0014】前記したように焼入れ対象部分の焼入れ硬
さは、凸条部に沿った方位に関して一定とすることもあ
るが、適当な分布を持つようにすることが望ましい場合
もあり、その場合には、焼入れのための加熱の最高到達
温度と加熱後の冷却条件のうち少なくとも一方を前記凸
条部に沿って変化させればよい。たとえば、前記焼入れ
対象部分の凸条部に沿った方向の両端部の焼入れ硬さを
中央部分よりも低くして、焼入れ部分と非焼入れ部分と
の硬度差を小さくしたい場合には、両端部の最高到達温
度を低目に取り、あるいは、加熱後の冷却速度を緩やか
にし、あるいは、上記両施策を併用することで上記目的
が達成される。
【0015】上記した焼入れを行うに当たっては、この
焼入れによって生じる歪を相殺することのできる逆歪を
プレス成形品に加えた状態で焼入れ処理を行うことが好
ましい。この構成とすることで、焼入れに伴って生じる
歪が、焼入れ時に付与した逆歪と相殺し、歪のほとんど
ない製品を得ることができる。
【0016】焼入れには、誘導子で加熱した領域を急冷
することが必要であり、その冷却には、加熱領域に冷却
水等の冷却媒体を吹き付ける方法、プレス成形品全体を
冷却液中に浸漬する方法等を採り得る。中でも、冷却媒
体を吹き付ける方法が簡単な装置で実施できるので好ま
しく、特に、プレス成形品の表裏に関して、誘導子を配
置した側とは反対側から冷却媒体を吹き付けることが好
ましい。焼入れ対象部分に冷却媒体を誘導子とは反対側
から吹き付けて冷却する構成とすると、誘導子に干渉す
ることなく冷却媒体の吹き付けを行うことができる。ま
た、その際焼入れ対象部分全体に同時に冷却媒体を吹き
付ける構成とすると、焼入れ対象部分全体をきわめて短
時間で均等に冷却することができる。
【0017】凸条部に設定した焼入れ対象部分に対して
誘導子を対向配置する場合、その誘導子は凸条部の外
側、内側のいずれに配置してもよいが、通常は、外側に
配置する。この配置を採ることにより、誘導子をプレス
成形品に対して容易に近接配置することができる。ま
た、誘導子を凸条部の外側に配置し、その裏側(プレス
成形品の内側)から冷却媒体を吹き付ける構成とする
と、プレス成形品で蓋をされた領域内で冷却媒体が吹き
付けられることとなり、冷却媒体が周囲に飛び散ること
が少なく、始末が良いとか、濡れる部分が最小限で済
み、処理後の水切り及び乾燥が容易であるといった効果
も得られる。
【0018】本発明の焼入れ方法に使用する焼入れ装置
は、凸条部を有するプレス成形品の、前記凸条部に設定
した焼入れ対象部分に焼入れを施すためのものであっ
て、前記焼入れ対象部分の全長に亘る誘導作用導体を備
え、且つその誘導作用面の、凸条部を横切る方位の形状
を前記焼入れ対象部分の面形状に倣った形状とした誘導
子と、その誘導子に対して高周波通電する電源装置と、
前記誘導子によって加熱した焼入れ対象部分を急冷する
冷却装置を備えている。この焼入れ装置を用いること
で、焼入れ対象部分にきわめて短時間で焼入れを施すこ
とができる。
【0019】この焼入れ装置に用いる前記誘導子の誘導
作用導体や給電路は、中空筒状の導体で構成するのがよ
い。そうすれば、内部を冷却水路とする簡単な造作によ
って、誘導作用導体等の冷却を行うことができる。
【0020】前記誘導子の誘導作用面には絶縁被覆を施
しておくことが好ましい。絶縁被覆を施しておくと、誘
導子を凸条部の焼入れ対象部分に近接して対向配置した
際に、誤って焼入れ対象部分に接触していても短絡する
ことがなく、安全である。
【0021】また、前記誘導子の誘導作用面に、焼入れ
対象部分との間隔を規制するスペーサを配設しておくこ
とも推奨される。このようなスペーサを設けておくと、
誘導子を焼入れ対象部分に近接して対向配置する際に、
誘導子をスペーサを介して焼入れ対象部分に押し付ける
形態で配置するだけで誘導子の誘導作用面と焼入れ対象
部分との対向間隔を所望の値とすることができ、誘導子
の配置作業を容易とすることができる。また、スペーサ
を絶縁材製とすることで、誘導作用導体と焼入れ対象部
分との間の絶縁強化にも寄与する。
【0022】前記冷却装置を、前記プレス成形品の表裏
に関して誘導子とは反対側に配置され、前記焼入れ対象
部分全体に同時に冷却媒体を吹き付ける冷却管を備えた
構成とすることが好ましい。この構成とすると、誘導子
に干渉することなく冷却を行うことができ、しかも焼入
れ対象部分全体を短時間で且つ均等に冷却できる。
【0023】前記冷却媒体を冷却水等の液体とする場合
には、この冷却液は、焼入れ対象部分に吹き付けられた
後は前記プレス成形品の外部へ流出する。このため、プ
レス成形品を、焼入れ対象部分に吹き付けられてこのプ
レス成形品の外部へ流出した前記冷却液を受けるための
パンの内部に配置することが好ましい。これによると、
焼入れ対象部分を冷却した後の冷却液の処理が容易とな
る。
【0024】また、前記パンを、冷却液を循環させるた
めの循環経路の一部を形成するものとしてもよい。これ
によると、冷却液の再使用が可能となる。このように冷
却液を再使用する場合においては、高温となった焼入れ
対象部分への吹き付けに伴う蒸発等により、冷却液の一
部は消失する。このため、循環経路に冷却液補給管を設
けることによって消失した冷却液を補給できるようにし
てもよい。
【0025】さらに、循環経路には、この循環経路中を
循環する冷却液に溶け込んでいる溶存酸素を除去する溶
存酸素除去手段を設けることが好ましい。これによる
と、焼入れ対象部分に吹き付けられる冷却液からは溶存
酸素が除去されているため、この焼入れ対象部分におけ
る冷却液吹き付け面側の酸化を防止して焼入れすること
ができ、焼入れ後にプレス成形品に対して行う塗装等の
ための後作業を所定どおり行えるようになる。
【0026】前記溶存酸素除去手段の一例は、貯溜槽に
溜められた冷却液に窒素ガス等の非酸化性ガスを吹き込
むための吹き込み管を備えたものとし、この吹き込みに
より、冷却液に溶け込んでいる溶存酸素を脱気させるも
のとすることである。
【0027】なお、溶存酸素除去手段は、冷却液から溶
存酸素を完全に除去するものに限定されず、焼入れ後に
行われる前記後作業を支障なく実施できる程度に冷却液
から溶存酸素を除去できる程度のものでもよい。
【0028】焼入れ後に前述した塗装等のための後作業
が行われる場合には、焼入れ装置に、前記焼入れ対象部
分の焼入れを非酸化性ガス雰囲気中で行うための非酸化
性ガス供給手段を設けることが好ましい。これにより、
焼入れ対象部を、酸化を防止して焼入れすることがで
き、前記後作業を所定どおり行える。
【0029】プレス成形品の前記細長い凸状部の内側空
間を前記非酸化性ガス雰囲気とし、この内側空間におけ
る前記凸状部に沿った長手方向の両端部のうちの少なく
とも一方の端部が、開口した開口端となっている場合に
は、この開口端に非酸化性ガス噴出手段を設けることに
より、非酸化性ガスによるガスカーテンをこの開口端に
形成することが好ましい。
【0030】これによると、前記非酸化性ガス供給手段
から凸状部の内側空間に供給された非酸化性ガスが前記
開口端から流出するのをガスカーテンで阻止でき、この
内側空間の非酸化性ガス雰囲気を維持できる。また、こ
の内側空間内で前記冷却液の吹き付けを行う場合でも、
吹き付け後の冷却液を前記開口端から流出させることが
できる。
【0031】焼入れ装置に前記プレス成形品の外側を覆
うカバーが設けられ、このカバーとプレス成形品との間
の間隔空間を前記非酸化性ガス雰囲気とし、この間隔空
間における前記凸状部に沿った長手方向両側のうちの少
なくとも一方の端部が、開口した開口端となっている場
合には、この開口端に非酸化性ガス噴出手段を設けるこ
とにより、非酸化性ガスによるガスカーテンをこの開口
端に形成することが好ましい。
【0032】これによると、前記非酸化性ガス供給手段
から前記間隔空間に供給された非酸化性ガスが前記開口
端から流出するのをガスカーテンで阻止できることにな
り、この間隔空間の非酸化性ガス雰囲気を維持できる。
【0033】以上において、非酸化性ガスの「非酸化」
とは、焼入れ対象部分の酸化を完全に防止する意味に限
定されず、酸化を軽度に留めるという意味をも含むもの
で、前記後作業を所定どおり実施できる程度の酸化は許
容される。
【0034】以下、図1(A)、(B)に示すプレス成
形品1に対する焼入れを例にとって、図面を参照して本
発明の好適な実施形態を説明する。プレス成形品1は、
鋼板をプレス成形して作られたもので、全長に亘って延
びる凸条部1Aとその両側のフランジ部1Bを備えた形
状であり、長手方向に屈曲した形状をしている。そし
て、この凸条部1Aは頂上両側に二つの稜線部1Cを備
えており、その稜線部1Cに沿って設定した狭い幅の領
域(ハッチングで示す領域)が焼入れを施すべき焼入れ
対象部分2である。なお、図面では焼入れ対象部分2を
稜線部1Cに沿って一定幅としているが、必要に応じ、
稜線部1Cに沿って幅が変化する設定としてもよい。
【0035】このプレス成形品1に焼入れ処理を施すに
当たっては、まず、図2に示すように、プレス成形品1
のフランジ部1Bを支持台5の支持面5Aに乗せ、固定
部材6及びボルト或いはクランプ(図示せず)で固定す
る。ここで用いる支持台5の支持面5Aは、プレス成形
品1のフランジ部1Bの屈曲に合わせた屈曲を有するも
のであり、これにより、プレス成形品1を所定の形状の
ままで固定、保持することができる。なお、プレス成形
品1を焼入れした時にプレス成形品1に無視しえない歪
が生じる場合には、支持台5の支持面5Aの形状を、そ
の支持面5Aにプレス成形品1を固定した時、焼入れに
よって生じる歪を相殺することのできる逆歪をプレス成
形品に加えることができる形状としておくとか、あるい
はプレス成形品1を支持面5Aに取り付けるに当たって
両者の間にスペーサを適宜配置して、プレス成形品1に
逆歪を与えておくことが推奨される。このような逆歪を
与えておくことで、焼入れによって生じる歪と相殺させ
て、歪のほとんどない所望形状の焼入れプレス成形品を
得ることができる。
【0036】次に、図3、図4に示すように、プレス成
形品1の凸条部1Aの稜線部1Cに設定した焼入れ対象
部分2をほぼ覆うように、誘導子11を近接配置し、且
つプレス成形品1の内側には、誘導子11で加熱した領
域全体に同時に冷却水を吹き付けることの可能な冷却管
13を配置する。ここで用いる誘導子11は、銅パイプ
等の中空筒状の導体で形成された誘導作用導体12を備
えており、凸条部1Aの両側の稜線部1Cにそれぞれほ
ぼ一定間隔で沿わせることができる形状としている。誘
導作用導体12の断面形状については後述する。両側に
配置した誘導子11は一端を中空導体からなる連結部材
14で、通電及び通水可能な形態で連結しており、他端
に中空導体からなる接続管15を設けている。この接続
管15は、誘導子11に対して高周波通電する電源装置
(図示せず)に連結されると共に冷却水の給排水管に接
続されている。かくして、誘導子11は、電源装置によ
って高周波通電されると共に中空内部に冷却水が通さ
れ、誘導子11自体を冷却する構成となっている。
【0037】次に誘導子11の断面形状(焼入れ対象部
分2に対向配置した状態で、凸条部1Aを横切る面にお
ける断面形状)を説明する。図5に示すように、誘導子
11の誘導作用導体12は、プレス成形品1に設定した
焼入れ対象部分2に対向した誘導作用面12Aを備えて
おり、その誘導作用面12Aの、凸条部1Aを横切る方
位における形状を、焼入れ対象部分2の面形状に倣った
形状としている。この構成により、誘導作用面12Aの
焼入れ対象部分2に対する対向間隔Dを、凸条部1Aを
横切る方位に関して均等とすることができる。このよう
に、対向間隔Dを均等とすることにより、誘導子11へ
の高周波通電により、プレス成形品1の、誘導作用面1
2Aに対向した領域の全幅にほぼ均等に入熱することが
できる。ここで、間隔Dとしては、入熱効率を高めるた
め、通常、1〜4mm程度に設定することが好ましい。
誘導子11の誘導作用面12Aの幅W1は、焼入れ対象
部分2の幅W2にほぼ等しく設定しておく。誘導作用導
体12の、少なくとも焼入れ対象部分に対向する誘導作
用面12Aには、アルミナ溶射被覆などの絶縁被覆17
を形成しておくことが好ましい。絶縁被覆17を形成し
ておくことで、誘導子11をプレス成形品1に近接配置
した時に、たとえ、その誘導子11がプレス成形品1に
接触しても短絡を回避できる。
【0038】誘導子11をプレス成形品1に対して近接
配置する際、誘導子11の誘導作用面12Aと稜線部1
Cの焼入れ対象部分2の間隔Dは、通常は、図5に示す
ように、誘導子11の幅方向(凸条部1Aを横切る方
向)に一定となるようにし、且つ図6に示すように長手
方向(凸条部1Aの長手方向)にも一定とするが、最高
到達温度調節等のために適宜変化した形態としてもよ
い。誘導子11を、その誘導作用面12Aが稜線部1C
の焼入れ対象部分2に対して所定間隔Dとなるように保
持する方法としては、誘導子11を適当な保持部材(図
示せず)に保持させ、その保持部材を支持台5に対して
所望位置に位置決めする方法を挙げることができる。ま
た、誘導子11と稜線部1Cの焼入れ対象部分2の間に
適当な絶縁性のスペーサを配置し、誘導子11をそのス
ペーサを介して焼入れ対象部分2に押し付ける方法を採
っても良い。スペーサを用いる場合、そのスペーサを誘
導子11の、焼入れ対象部分2に対向する面12Aに取
り付けておくことが、誘導子11の配置操作を容易とで
きるので好ましい。このスペーサは、逆歪を与えた状態
で取り付けられたプレス成形品1に対して誘導子11の
間隔規制を行う場合に特に有用である。
【0039】上記したように、誘導子11をプレス成形
品1に対して近接配置した後、その誘導子11に電源装
置(図示せず)から高周波通電し、プレス成形品1の2
個所の焼入れ対象部分2全体を同時に誘導加熱し、焼入
れ可能な温度に昇温させ、次いで、通電を止め、冷却管
13から冷却水を吹き付けて急冷する。これにより、2
個所の焼入れ対象部分2全体に同時に焼入れが施され
る。ここで、図5に示すように、誘導子11のプレス成
形品1の焼入れ対象部分2に対向する誘導作用面12A
を、凸条部を横切る方位に関して焼入れ対象部分2の面
形状に倣う形状とし、両者の間隔Dを均等としているの
で、誘導子11に高周波通電した時に、この誘導作用面
12Aに対向した焼入れ対象部分2全体をほぼ均等に発
熱させることができ、焼入れ対象部分2全体を短時間
で、ほぼ同一の最高到達温度に昇温させることができ
る。誘導子11による誘導加熱は極力短時間内に行い、
発熱部分の熱が隣接領域に熱伝導によって拡がるのを極
力少なくする。もし、誘導子11による焼入れ対象部分
2の昇温速度を遅くしてゆっくりと昇温させていると、
発熱領域からの熱が熱伝導によって周囲に伝わり、焼入
れ対象部分2の外側まで焼入れされるような温度に昇温
してしまう。この結果、焼入れされる領域が、本来焼入
れすべき焼入れ対象部分2の外側に拡がってしまい、し
かもその拡がりが不均一となるとか、製品間で不均一と
なってしまう恐れがある。そこで、昇温時間を短くする
ことで、周囲への熱伝導を極力抑制し、誘導子11の誘
導作用面12Aに対向した領域にほぼ一致した焼入れ対
象部分2のみに焼入れを施すことが可能となる。本発明
者らが確認した結果、誘導加熱時間を10秒以下、望ま
しくは5秒以下とすることで、良好な結果を得ることが
できた。
【0040】誘導子11への高周波通電の周波数は、通
常の誘導加熱に多用されている1〜50kHzの範囲内
とすればよいが、好ましくは、5〜25kHzの比較的
低周波数域を用いる。これらの低周波数域では、誘導子
11の誘導作用面12Aと焼入れ対象部分2との間隔D
の入熱量に対する影響が小さくなり、この間隔Dに多少
のばらつきがあっても、均一な加熱を行うことができ、
誘導子11の配置が容易となる利点が得られる。
【0041】上記した実施形態では、誘導子11の誘導
作用面12Aの焼入れ対象部分2に対する対向間隔D
を、誘導子11の幅方向及び長手方向の両方ともに一定
とし、焼入れ対象部分2をほぼ均一な温度に昇温させて
いる。ところで、焼入れ対象部分2を誘導加熱した際、
熱が隣接領域にも熱伝導によって広がるため、焼入れ対
象部分2の周縁領域では温度が低くなる傾向があり、特
に長手方向の両端領域で温度が低くなる傾向がある。こ
のため、焼入れ対象部分2に対する誘導作用面12Aの
間隔を一定とすると、温度の均一性を確保できない場合
がある。このような場合には、誘導作用面12Aの焼入
れ対象部分2に対する間隔を場所によって異ならせ、温
度の均一化を図ることが推奨される。例えば、焼入れ対
象部分2に対する誘導子11の間隔を凸条部1Aの長手
方向の両端部では、中央部に比べて小さくなるように設
定し、両端部での入熱量を多くして、温度の均一化を図
ることができる。
【0042】上記の実施形態では、焼入れ対象部分2を
均一な温度に昇温させて全体を均一に焼入れして均一な
焼入れ硬さを得ているが、焼入れ対象部分2の焼入れ硬
さを凸条部1Aに沿って変化させたい場合には、誘導子
の誘導作用面12Aと焼入れ対象部分2との間隔を凸条
部1Aに沿って変化させることで、最高到達温度を凸条
部1Aに沿って変化させ、あるいは、冷却条件(例えば
冷却水量)を凸条部1A沿いに変化させて、所望の硬さ
分布を得ることができる。
【0043】たとえば、図7(A)において、焼入れ対
象部分2の両端部2Aの焼入れ硬さを、中央部2Bより
も低くして、焼入れを施さない領域との硬度差を小さく
したい場合には、図7(B)に示すように、両端部2A
における誘導子11の誘導作用面12Aと焼入れ対象部
分2の間隔D′を、中央部2Bにおける間隔Dよりも広
く設定し、あるいは両端部2Aの冷却水量を中央部2B
よりも少なくするなどして、両端部2Aの焼入れ硬さを
中央部2Bよりも低くすればよい。
【0044】
【実施例】[実施例1]図1,図5に示す形状で、厚さ
1.4mmの鋼板製のプレス成形品1の稜線部に設定し
た焼入れ対象部分2に、図5に示す断面形状で且つ幅W
1=12mmの誘導子11を対向間隔D=3mmで配置
した。この誘導子11に周波数8kHzの高周波通電を
5秒間行って850〜950°Cに昇温させ、その直後
に冷却水を吹き付けて焼入れを行った。焼入れ終了後、
焼入れ対象部分2の幅方向の焼入れ硬さ分布を測定し
た。その一例を図8に示す。なお、図8は片方の稜線部
について、焼入れ対象部分の幅方向片半部のデータを示
したものであって、横軸は、焼入れ対象部分2の幅方向
の位置を、焼入れ対象部分の幅方向の中央を基準点(座
標0)として示し、縦軸は硬さを示している。 [実施例2]実施例1と同一のプレス成形品1の稜線部
に設定した焼入れ対象部分2に、同一の誘導子11を対
向間隔D=3mmで配置した。この誘導子11に周波数
8kHzの高周波通電を8秒間行って850〜950°
Cに昇温させ、その直後に冷却水を吹き付けて焼入れを
行った。焼入れ終了後、幅方向の焼入れ硬さ分布を測定
し、図8に示す結果を得た。
【0045】図8に示すグラフから明らかなように、実
施例1,2共に、稜線部1Cの誘導子11に対向する領
域をほぼ一定の硬さに焼入れすることができた。ただ
し、実施例2では、一定硬さの領域の外側に、かなり硬
さの高い領域が生じているが、実施例1では、急激に硬
度が低下しており、加熱時間を短くすることで誘導子1
1に対向する領域のみに焼入れを行うことができること
を確認できた。
【0046】上記実施例1,2の焼入れ処理を、25k
Hzの高周波通電によって行うことも試みたが、上記実
施例と大差のない結果が得られている。
【0047】図9〜図11は、一層具体的な実施形態に
係る焼入れ装置を示し、この焼入れ装置は、プレス成形
品1の焼入れ対象部分2についての焼入れを非酸化性ガ
ス雰囲気中で実施できるようにした装置である。図9
は、冷却水の循環経路と非酸化性ガスの供給経路を含め
て示した焼入れ装置の側断面図で、図10は図9の要部
拡大図、図11は図10のS11−S11線断面図であ
る。以下の説明では、既に述べた部材、装置と同じ機能
又は作用となっているものには同一符号を用いる。
【0048】図9において、基台20上にはパン21が
設置されているとともに、パン21の内部に支持台5が
配置され、支持台5の上面である支持面5Aにプレス成
形品1がセットされている。プレス成形品1は、固定部
材6に作用する図示しないトグル機構等による倍力機構
式のクランプ装置のクランプ力で支持面5Aに固定さ
れ、自動装置又は手作業装置となっているこのクランプ
装置によるクランプを解除することにより、プレス成形
品1は支持面5Aから取り外し可能となる。
【0049】プレス成形品1の上方には、図10と図1
1でも示されているカバー22が設けられ、プレス成形
品1の外側を覆うカバー22は、ステー23とブラケッ
ト24を介して高周波電源装置25に取り付けられてい
る。高周波電源装置25は、図9で示すように、前記基
台20から立設されている支柱26のアーム27にガイ
ドレール28を介して吊り下げられ、ハンドル29を操
作することにより、ガイドレール28に案内されて高周
波電源装置25やカバー22は図11の左右方向に移動
し、その位置が調整される。また、図9のアーム27
は、支柱26のガイド部26Aにシリンダ30の伸縮に
よって上下スライド自在に配置されている。
【0050】プレス成形品1の上側を覆っているカバー
22は、図10に示されているとおり、プレス成形品1
の細長の凸状部1Aの長手方向に延びており、図11に
示すように、カバー22の下面におけるプレス成形品1
の2つの焼入れ対象部分2と対応する箇所には、高周波
電源装置25から高周波電流が通電される誘導子11が
配置され、これらの誘導子11は図3で説明した連結部
材14で連結され、それぞれの誘導子11の誘導作用導
体12は、焼入れ対象部分2と上下に対向している。銅
等の低電気抵抗材料からなる誘導子11は、ベークライ
ト等の非導電材料からなる押えバー31と、耐火性且つ
非導電性のケイ酸カルシウム繊維等からなるカバー22
とを貫通するスタッドボルト32によってカバー22に
取り付けられている。また、ステンレス等の金属材料か
らなるステー23とスタッドボルト32との間には、絶
縁部材が介入されている。
【0051】図9で示したハンドル29の操作によって
カバー22を図11の左右方向へ位置調整することによ
り、それぞれの誘導子11の位置は焼入れ対象部分2と
正確に対向する位置に調整され、この位置調整した状態
において、図9で示したシリンダ30を縮み作動させて
カバー22を下降させると、誘導作用導体12の図11
で示した誘導作用面12Aと焼入れ対象部分2との間が
前述した所定の大きさの間隔となる。また、シリンダ3
0を伸び作動させてカバー22を上昇させると、前記ク
ランプ装置のクランプの解除により、支持台5の支持面
5Aにロボット等によるローディング装置で次のプレス
成形品を交換してセットすることができる。
【0052】なお、図11で示した誘導作用導体12に
は図5で示した絶縁被膜17が設けられていないが、も
ちろん、図11の誘導作用導体12にも絶縁皮膜を設け
てもよい。また、シリンダ30の縮み作動でカバー22
を下降させたときに誘導作用導体12の誘導作用面12
Aと焼入れ対象部分2との間を確実に所定の大きさの間
隔とするためのスペーサを、誘導作用面12Aに取り付
けてもよい。
【0053】図11で示されているとおり、カバー22
におけるプレス成形品1の凸状部1Aを横切る方位の断
面形状は、2個の誘導子11の間の中央部がプレス成形
品1から大きく上方へ離れた山形となっている。カバー
22の下面におけるこの中央部には、第1非酸化性ガス
供給手段である第1非酸化性ガス供給管40がカバー2
2の長手方向に沿って配管されている。非酸化性ガス供
給管40はホールド部材41で保持され、ホールド部材
41は、図11の左右に設けられている前記ステー23
間に架設されたブラケット42にスタッドボルト43で
取り付けられている。
【0054】第1非酸化性ガス供給管40とホールド部
材41は、合成樹脂等の非導電性材料で形成されてお
り、これにより、誘導子11と平行する方向へ非酸化性
ガス供給管40とホールド部材41が延びていても、こ
れらに誘導電流が生ずることがないようになっている。
また、上述したように非酸化性ガス供給管40とホール
ド部材41は、2個の誘導子11から大きく離れたカバ
ー22の中央部に配置されているため、誘導子11の誘
導作用導体12に高周波電流が通電され、この通電でプ
レス成形品1の焼入れ対象部分2に生ずる誘導電流によ
って焼入れ対象部分2が加熱されても、誘導作用導体1
2と焼入れ対象部分2からの輻射熱で非酸化性ガス供給
管40とホールド部材41が一定温度以上に過熱される
ことがないようになっている。
【0055】図11で示すように、プレス成形品1とカ
バー22との間は間隔空間S1となっている。この間隔
空間S1に第1非酸化性ガス供給管40から噴出する窒
素ガス等の非酸化性ガスが供給されて、間隔空間S1が
非酸化性ガス雰囲気の空間となった後に、誘導子11の
誘導作用導体12への高周波電流の通電によって焼入れ
対象部分2に焼入れが行われる。また、図10から分か
るように、間隔空間S1におけるプレス成形品1の凸状
部1Aに沿った長手方向両側の端部は開口した開口端4
4となっており、これらの開口端44に近いカバー22
の長手方向の両端部には、第1非酸化性ガス噴出手段で
ある第1非酸化性ガス噴出管45がカバー22に沿って
配管されている。図11で示されているように、これら
の非酸化性ガス噴出管45から噴出する非酸化性ガスに
よって開口端44にガスカーテンが形成されることによ
り、間隔空間S1に供給された非酸化性ガスの開口端4
4からの流出が防止される。
【0056】図11で示すように、プレス成形品1は凸
状部1Aを上向きにして支持台5にセットされているた
め、凸状部1Aの内側は内側空間S2となっている。こ
の内側空間S2に、焼入れ対象部分2へ冷却水を噴出す
る冷却管13が配管されている。また、内側空間S2に
は、この空間S2に非酸化性ガスを供給するための第2
非酸化性ガス供給手段である第2非酸化性ガス供給管5
0も配管され、この非酸化性ガス供給管50から非酸化
性ガスが噴出して内側空間S2が非酸化性ガス雰囲気と
なった後に、焼入れ対象部分2の焼入れが行われる。
【0057】図10から分かるように、内側空間S2に
おけるプレス成形品1の凸状部1Aに沿った長手方向両
側の端部は開口した開口端51となっている。これらの
開口端51に近い支持台5の箇所には、第2非酸化性ガ
ス噴出手段である第2非酸化性ガス噴出管52が、プレ
ス成形品1の凸状部1Aを横切る方位に貫通配管されて
おり、図11に示すとおり、これらの非酸化性ガス噴出
管52には、支持台5の支持面5Aに挿入された複数の
ノズル52Aが設けられている。ノズル52Aから非酸
化性ガスが噴出することにより、それぞれの開口端51
にガスカーテンが形成され、内側空間S2に供給された
非酸化性ガスが開口端51から流出することが防止され
る。
【0058】図9で示されているように、第1非酸化性
ガス供給管40と第1非酸化性ガス噴出管45と第2非
酸化性ガス供給管50と第2非酸化性ガス噴出管52
は、非酸化性ガスボンベ53から延びる非酸化性ガス供
給経路54と接続され、それぞれにボンベ53から非酸
化性ガスが供給される。
【0059】また、前記冷却管13は、冷却水を溜めた
貯溜槽60に往経路61で接続され、この往経路61に
よって貯溜槽9内の冷却水が冷却管13に供給される。
冷却管13から焼入れ対象部分2へ吹き付けられた冷却
水は、内側空間S2の開口端51からプレス成形品1が
配置されている前記パン21の内部に流出するが、パン
21の底部には水抜き孔21Aが形成され、水抜き孔2
1Aは復経路62によって貯溜槽60に接続されてい
る。
【0060】このため、冷却水を貯溜槽60とパン21
との間で循環させるための循環経路63が形成されてお
り、パン21はこの循環経路63の一部を形成する部材
となっていて、プレス成形品1の焼入れ対象部分2に供
給される冷却水は、循環使用によって再利用されるよう
になっている。
【0061】循環経路63の適所には、具体的には貯溜
槽60には、冷却水の補給管64が接続され、この補給
管64から、焼入れ対象部分2への吹き付けで蒸発して
消失する冷却水が貯溜槽60へ補給される。
【0062】また、貯溜槽60には、貯溜槽60に溜め
られた冷却水に非酸化性ガスを吹き込むための吹き込み
管65が挿入されている。この吹き込み管65から貯溜
槽60内の冷却水に非酸化性ガスが吹き込まれることに
より、冷却水に溶け込んでいる溶存酸素が除去される。
このため、吹き込み管65は、循環経路63中を循環す
る冷却水から溶存酸素を除去するための溶存酸素除去手
段66を形成しており、冷却管13から焼入れ対象部分
2に吹き付けられる冷却水は溶存酸素が除去されている
ため、焼入れ対象部分2が、前記間隔空間S1と内側空
間S2に非酸化性ガスが供給された非酸化性ガス雰囲気
中で焼入れされることと併せ、焼入れ対象部分2の酸化
を防止しながらプレス成形品1の焼入れを行えるように
なっている。
【0063】パン21から貯溜槽60に戻る冷却水は焼
入れ対象部分2への吹き付けによって昇温しているた
め、この冷却水から除熱を行うための除熱手段70が貯
溜槽60に設けられている。この除熱手段70は、クー
リングタワー71との間で循環する水が溜められた水槽
72と、水槽72と貯溜槽60との間に架設された熱交
換器73とを有する。クーリングタワー71で冷却され
た水により、熱交換器73を介して貯溜槽60内の冷却
水からの除熱が行われる。
【0064】なお、冷却水の循環経路63中にクーリン
グタワーを設けることにより、この冷却水から直接除熱
してもよい。
【0065】図10で示されているように、第2非酸化
性ガス供給管50と第2非酸化性ガス噴出管52は、ジ
ョイント部材80を介して前記非酸化性ガス供給経路5
4に連なる管81に接続されており、冷却管13も、ジ
ョイント部材82を介して冷却水用の前記循環経路63
の往経路61に連なる管83に接続されている。
【0066】このため、ジョイント部材80,82の取
り外しにより、形状、長さ等が異なる各種のプレス成形
品ごとに用意されている支持台5を、形状、長さ等が異
なるプレス成形品の焼入れを行うために交換しても、非
酸化性ガス供給経路54の管81と循環経路63の管8
3とを共通使用できるようになっている。
【0067】以上の構成となっている焼入れ装置による
プレス成形品1の焼入れ作業は、次のように行われる。
【0068】先ず、ロボット等によるローディング装置
でプレス成形品1が支持台5の支持面5Aにセットさ
れ、プレス成形品1が固定部材6に作用するクランプ装
置で支持面5Aにクランプされる。次いで、内側空間S
2に第2非酸化性ガス供給管50から非酸化性ガスが供
給されるとともに、内側空間S2の開口端51に第2非
酸化性ガス噴出管52からの非酸化性ガスによるガスカ
ーテンが形成される。これにより、内側空間S2は非酸
化性ガス雰囲気となる。なお、第2非酸化性ガス供給管
50からの内側空間S2への非酸化性ガスの供給量を、
最初は多量とし、この後は徐々に一定量まで減少させる
ことにより、短時間で内側空間S2内の空気を追い出す
ことができるため、作業効率を向上させることができ、
そして、開口端51にガスカーテンを形成することで、
内側空間S2からの非酸化性ガスの流出を防止してこの
空間S2の非酸化性ガス雰囲気を維持できる。
【0069】この後、図9で示したシリンダ30によっ
てカバー22が下降し、カバー22がプレス成形品1に
対して図11で示した状態になる。次いで、間隔空間S
1に第1非酸化性ガス供給管40から非酸化性ガスが供
給されるとともに、第1非酸化性ガス噴出管45からの
非酸化性ガスによって間隔空間S1の開口端44にガス
カーテンが形成される。これにより間隔空間S1は非酸
化性ガス雰囲気となる。なお、この場合にも、第1非酸
化性ガス供給管40からの間隔空間S1への非酸化性ガ
スの供給量を、最初は多量とし、この後は徐々に一定量
まで減少させることにより、短時間で間隔空間S1内の
空気を追い出すことができ、これによって作業効率を向
上させることができ、そして、開口端44にガスカーテ
ンを形成することにより、間隔空間S1からの非酸化性
ガスの流出を防止してこの空間S1の非酸化性ガス雰囲
気を維持できる。
【0070】以上のようにしてプレス成形品1の焼入れ
対象部分2が臨んでいる内側空間S2と間隔空間S1が
非酸化性ガス雰囲気となった後、高周波電源装置25か
ら誘導子11の誘導作用導体12に高周波電流が通電さ
れ、この通電によって焼入れ対象部分2に誘導電流が生
じることで焼入れ対象部分2が加熱され、焼入れ対象部
分2が所定温度まで昇温した後、誘導作用導体12への
通電は停止される。そして、冷却管13から焼入れ対象
部分2への冷却水の吹き付けがなされ、焼入れ対象部分
2は急冷されて焼入れされる。
【0071】この後、第1非酸化性ガス供給管40と第
1非酸化性ガス噴出管45と第2非酸化性ガス供給管5
0と第2非酸化性ガス噴出管52からの非酸化性ガスの
噴出が停止するとともに、冷却管13からの冷却水の噴
出も停止する。
【0072】そして、固定部材6を介した前記クランプ
装置によるプレス成形品1のクランプが解除されるとと
もに、前記ローディング装置によってプレス成形品1は
支持台5から取り出される。
【0073】この支持台5にはローディング装置で次の
プレス成形品1がセットされ、このプレス成形品1につ
いてに焼入れが以上説明した作業と同じ作業によって行
われ、それぞれのプレス成形品1が順次焼入れされる。
【0074】ローディング装置で支持台5から取り出さ
れたプレス成形品1は、ホットエア等による乾燥工程へ
送られ、付着している冷却水が除去される。この後、プ
レス成形品1は、焼入れ作業後の後作業となっている塗
装のための工程に送られる。
【0075】この作業工程が、プレス成形品1を塗装す
る前に、プレス成形品1を所定の薬液で処理等するなど
の工程となっていても、焼入れ対象部分2は、前述した
ように非酸化性ガス雰囲気中で焼入れされており、ま
た、焼入れ対象部分2に吹き付けられた冷却水からは溶
存酸素が除去されており、したがって、焼入れ対象部分
2は酸化が防止されて焼入れされているため、上記作業
工程を所定どおり行える。
【0076】なお、以上説明した実施形態では、誘導子
11の誘導作用導体12への通電及びその停止によって
焼入れ対象部分2を加熱した後に、冷却管13からの焼
入れ対象部分2への冷却水の吹き付け及びその停止を行
ったが、冷却管13からの焼入れ対象部分2への冷却水
の吹き付け開始後に、誘導作用導体12への通電及びそ
の停止を行い、次いで冷却水の吹き付けを停止してもよ
い。
【0077】また、前記パン21を、溶存酸素が除去さ
れた冷却水を充分に貯溜した水槽とし、この水槽にプレ
ス成形品1を水没状態で入れ、この状態において、誘導
作用導体12へ通電で焼入れ対象部分2を焼入れするよ
うにしてもよい。このようにした場合には、前記第1非
酸化性ガス供給管40等の非酸化性ガス雰囲気を形成す
るための手段は不要になる。
【0078】さらに、焼入れ装置は、非酸化性ガスが充
填されたチャンバを備え、このチャンバの内部でプレス
成形品の焼入れを行うようになっている装置でもよく、
そして、チャンバに連なる待機用チャンバが設けられ、
この待機用チャンバに次に焼入れされるプレス成形品が
待機し、複数のプレス成形品を連続して焼入れできるよ
うになっている装置としてもよい。
【0079】以上に、図1に示す形状のプレス成形品1
に対する焼入れを行う場合の実施形態を説明したが、焼
入れの対象とするプレス成形品はこれに限らず、種々変
更可能である。以下、焼入れの対象とするプレス成形品
の例をいくつか簡単に説明する。図12は車両に用いる
フロントパンパービーム120とフロントサイドフレー
ム130を分解した状態で示す概略斜視図である。フロ
ントパンパービーム120は、長手方向の中央部が前方
へ張り出した弓型形状となっており、図12のS13−
S13線断面図である図13に示すように、前面部12
1,上面部122,下面部123,後面部124を有す
る筒状に成形されたプレス成形品である。このフロント
パンパービーム120において、四角に位置する稜線部
125A,125B,125C,125Dの各々を含む
領域が凸条部を形成している。この凸条部のハッチング
で示す領域2を焼入れ対象部分と設定し、本発明を適用
することで短時間で焼入れを行うことができる。なお、
フロントパンパービーム120に対して焼入れ対象部分
2を設定するに当たっては、焼入れ対象部分2の幅(フ
ロントパンパービーム120を横切る方向の幅)を、フ
ロントパンパービーム120の長手方向の中央部では小
さくし、両端部に向かって大きくなる形状とすることが
好ましい。この形状を採用して焼入れを行っておくと、
フロントパンパービーム120の長手方向の中央部で
は、非焼入れ領域が大きいため靱性が大きく、一方、両
端部では焼入れ領域が大きくなるため強度が大きくなっ
ており、フロントパンパービーム120の長手方向の中
央部に軽微な衝突荷重が作用した場合には、靱性の大き
い中央部において、その軽微な衝突荷重を有効に受ける
ことができ、また、フロントパンパービーム120に大
きな衝突荷重が作用した時には、強度が大きく且つフロ
ントサイドフレーム130が結合されている両端部で大
きな衝突荷重を有効に受けることができる。
【0080】図12において、フロントサイドフレーム
130は、フロントパンパービーム120の両端を支持
するものであり、図12のS14−S14線断面図であ
る図14に示すように、ウェブ部131とその上下のフ
ランジ部132,133を有する略コ字状に成形された
プレス成形品である。このフロントサイドフレーム13
0において、ウェブ部131の上下に位置する稜線部1
34A,134Bの各々を含む領域が凸条部を形成して
いる。この凸条部のハッチングで示す領域2を焼入れ対
象部分と設定し、本発明を適用することで短時間で焼入
れを行うことができる。なお、フロントサイドフレーム
130に対して焼入れ対象部分2を設定するに当たって
は、焼入れ対象部分2の幅(フロントサイドフレーム1
30を横切る方向の幅)を、フロントパンパービーム1
20に結合される先端部と、この先端部から間隔を開け
て車両後方へ後退した個所の後退部とで大きくし、これ
らの間の中間部で小さくしておくことが好ましい。この
形状を採用して焼入れを行っておくと、フロントパンパ
ービーム120からの大きな衝撃荷重がフロントサイド
フレーム130に作用したとき、先端部と後退部との間
の強度が小さい中間部を座屈が生ずる座屈ポイントとす
ることができ、この座屈ポイントによって大きな衝突エ
ネルギーをフロントサイドフレーム130で有効に吸収
できる。
【0081】図15は車両に用いるサイドドア用の補強
ビーム140を示す概略斜視図である。この補強ビーム
140は、下側の平坦部141,142,143と、4
個の垂直壁部144と、上側の湾曲部145,146を
有する形状に成形されたプレス成形品である。この補強
ビーム140において、稜線部147A,147B,1
47C,147Dの各々を含む領域及び湾曲部145,
146を含む領域が凸条部を形成している。この凸条部
のハッチングで示す領域2を焼入れ対象部分と設定し、
本発明を適用することで短時間で焼入れを行うことがで
きる。
【0082】
【発明の効果】以上のように、本発明は、プレス成形品
の凸条部に設定した焼入れ対象部分全体に誘導子を近接
配置し、その誘導子に高周波通電して焼入れ対象部分全
体を同時に誘導加熱して焼入れ可能な温度に昇温させる
構成とし、しかも、その誘導子を、凸条部を横切る方位
に関して前記焼入れ対象部分の面形状に倣った形状の誘
導作用面を有する構成としたことにより、その誘導子に
対向した焼入れ対象部分全体をきわめて短時間で昇温さ
せて焼入れ処理でき、焼入れに伴うプレス成形品の歪発
生を小さく抑制しながら焼入れを施して、生産性よくプ
レス成形品の強化を図ることができるという効果を有し
ている。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)プレス成形品の1例の概略斜視図であ
る。 (B)そのプレス成形品の概略断面図である。
【図2】プレス成形品を支持台に取り付けた状態を示す
概略斜視図である。
【図3】プレス成形品を支持台に取り付け、誘導子を近
接配置した状態を示す概略斜視図である。
【図4】プレス成形品に設定した焼入れ対象部分に誘導
子を近接配置し、内側に冷却管を配置した状態を示す概
略断面図である。
【図5】プレス成形品の稜線部及びそれに近接配置した
誘導子の概略断面図である。
【図6】プレス成形品と誘導子を、稜線部に沿って切断
して示す概略断面図である。
【図7】(A)プレス成形品の概略平面図である。 (B)プレス成形品と誘導子を、稜線部に沿って切断し
て示す概略断面図である。
【図8】実施例1,2で焼入れを行った焼入れ対象部分
の硬度分布を示すグラフである。
【図9】焼入れ装置の一層具体的な実施形態を示す側断
面図で、冷却水循環経路と非酸化性ガスの供給経路を含
めて示した図である。
【図10】図9の要部各拡大図である。
【図11】図10のS11−S11線断面図である。
【図12】プレス成形品の他の例を示す概略斜視図であ
る。
【図13】図12のS13−S13線断面図である。
【図14】図12のS14−S14線断面図である。
【図15】プレス成形品の更に他の例を示す概略斜視図
【符号の説明】
1 プレス成形品 1A 凸条部 1B フランジ部 1C 稜線部 2 焼入れ対象部分 5 支持台 6 固定部材 11 誘導子 12 誘導作用導体 12A 誘導作用面 13 冷却管 14 連結部材 15 接続管 21 パン 22 カバー 40 第1非酸化性ガス供給手段である第1非酸化性ガ
ス供給管 44 間隔空間の開口端 45 第1非酸化性ガス噴出手段である第1非酸化性ガ
ス噴出管 50 第2非酸化性ガス供給手段である第2非酸化性ガ
ス供給管 51 内側空間の開口端 52 第2非酸化性ガス噴出手段である第2非酸化性ガ
ス噴出管 63 冷却水循環経路 65 非酸化性ガス吹き込み管 66 溶存酸素除去手段 70 冷却水の除熱手段 120 フロントパンパービーム(プレス成形品) 130 フロントサイドフレーム(プレス成形品) 140 サイドドア用の補強ビーム(プレス成形品) S1 間隔空間 S2 内側空間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B62D 25/04 B62D 25/04 Z (72)発明者 羽矢 宏治 神奈川県川崎市川崎区殿町2丁目17番8号 第一高周波工業株式会社内 (72)発明者 宿輪 新吾 神奈川県川崎市川崎区殿町2丁目17番8号 第一高周波工業株式会社内 (72)発明者 岸原 重樹 神奈川県川崎市川崎区殿町2丁目17番8号 第一高周波工業株式会社内 (72)発明者 清水 智 東京都昭島市松原町2丁目14番8号 菊池 プレス工業株式会社内 (72)発明者 鈴木 宗 東京都昭島市松原町2丁目14番8号 菊池 プレス工業株式会社内 (72)発明者 皆川 孝雄 東京都昭島市松原町2丁目14番8号 菊池 プレス工業株式会社内 Fターム(参考) 3D003 AA01 AA10 BB02 CA34 4K042 AA25 BA01 BA10 BA13 DA01 DB01 DC03 DD04 EA01

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細長く形成された凸条部を有するプレス
    成形品を強化するために、前記凸条部に設定した焼入れ
    対象部分に焼入れを施す方法であって、前記焼入れ対象
    部分を加熱し、次いで急冷する焼入れ処理のための加熱
    を、前記焼入れ対象部分全体を同時に加熱できる誘導作
    用導体を備えた誘導子を前記焼入れ対象部分に近接させ
    て配置し、この誘導子に高周波通電して前記焼入れ対象
    部分全体を同時に誘導加熱する一発加熱方式で行い、こ
    の誘導子として、その誘導作用導体を、前記凸条部を横
    切る方位に関して前記焼入れ対象部分の面形状に倣った
    誘導作用面を有する形状に形成した誘導子を用い、その
    誘導作用面と焼入れ対象部分の間隔が、前記凸条部を横
    切る方位に関して均等となるように誘導子を配置して誘
    導加熱を行うことを特徴とするプレス成形品の焼入れ方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のプレス成形品の焼入れ
    方法において、前記誘導子の誘導作用面の幅を前記凸条
    部に沿って変化させることにより、焼入れ幅を凸条部に
    沿って変化させることを特徴とするプレス成形品の焼入
    れ方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載のプレス成形品の
    焼入れ方法において、前記誘導子による加熱時間を10
    秒以下とすることを特徴とするプレス成形品の焼入れ方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のプレス
    成形品の焼入れ方法において、前記焼入れ対象部分に対
    する前記誘導子の対向間隔を前記凸条部に沿って変化さ
    せることにより、凸条部に沿った方位に係る最高到達温
    度分布を調整することを特徴とするプレス成形品の焼入
    れ方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のプレス
    成形品の焼入れ方法において、前記焼入れを、この焼入
    れによって生じる歪を相殺することのできる逆歪をプレ
    ス成形品に加えた状態で行うことを特徴とするプレス成
    形品の焼入れ方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のプレス
    成形品の焼入れ方法において、前記誘導子で加熱した焼
    入れ対象部分に対する冷却を、前記プレス成形品の表裏
    に関して誘導子を配置した側とは反対側から冷却媒体を
    吹き付けて行うことを特徴とするプレス成形品の焼入れ
    方法。
  7. 【請求項7】 細長い凸条部を有するプレス成形品の、
    前記凸条部に設定した焼入れ対象部分に焼入れを施すた
    めの焼入れ装置であって、前記焼入れ対象部分の全長に
    亘る誘導作用導体を備え、且つその誘導作用面の、前記
    凸条部を横切る方位の形状を前記焼入れ対象部分の面形
    状に倣った形状とした誘導子と、その誘導子に対して高
    周波通電する電源装置と、前記誘導子によって加熱した
    焼入れ対象部分を急冷する冷却装置を備えたことを特徴
    とするプレス成形品の焼入れ装置。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載のプレス成形品の焼入れ
    装置において、前記誘導子の誘導作用導体が、中空筒状
    の導体で構成されており、その内部が冷却水路となって
    いることを特徴とするプレス成形品の焼入れ装置。
  9. 【請求項9】 請求項7又は8に記載のプレス成形品の
    焼入れ装置において、前記誘導子の誘導作用面に絶縁被
    覆を施したことを特徴とするプレス成形品の焼入れ装
    置。
  10. 【請求項10】 請求項7〜9のいずれかに記載のプレ
    ス成形品の焼入れ装置において、前記誘導子の誘導作用
    面に、前記焼入れ対象部分との間隔を規制するスペーサ
    を配設したことを特徴とするプレス成形品の焼入れ装
    置。
  11. 【請求項11】 請求項7〜10のいずれかに記載のプ
    レス成形品の焼入れ装置において、前記冷却装置が、前
    記プレス成形品の表裏に関して前記誘導子とは反対側に
    配置され、前記焼入れ対象部分全体に同時に冷却媒体を
    吹き付ける冷却管を備えていることを特徴するプレス成
    形品の焼入れ装置。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載のプレス成形品の焼
    入れ装置において、前記冷却媒体は液体であり、前記プ
    レス成形品は、前記焼入れ対象部分に吹き付けられてこ
    のプレス成形品の外部へ流出した前記冷却液を受けるた
    めのパンの内部に配置されていることを特徴とするプレ
    ス成形品の焼入れ装置。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載のプレス成形品の焼
    入れ装置において、前記パンは、前記冷却液を循環させ
    るための循環経路の一部を形成していることを特徴とす
    るプレス成形品の焼入れ装置。
  14. 【請求項14】 請求項13に記載のプレス成形品の焼
    入れ装置において、前記循環経路には、この循環経路中
    を循環する前記冷却液に溶け込んでいる溶存酸素を除去
    する溶存酸素除去手段が設けられていることを特徴とす
    るプレス成形品の焼入れ装置。
  15. 【請求項15】 請求項7〜14のいずれかに記載のプ
    レス成形品の焼入れ装置において、前記焼入れ対象部分
    の焼入れを非酸化性ガス雰囲気中で行うための非酸化性
    ガス供給手段を備えていることを特徴とするプレス成形
    品の焼入れ装置。
  16. 【請求項16】 請求項15に記載のプレス成形品の焼
    入れ装置において、前記プレス成形品の前記細長い凸状
    部の内側空間が前記非酸化性ガス雰囲気となっており、
    この内側空間における前記凸状部に沿った長手方向の両
    端部のうちの少なくとも一方の端部は、開口した開口端
    となっており、この開口端に非酸化性ガスによるガスカ
    ーテンを形成するための非酸化性ガス噴出手段を備えて
    いることを特徴とするプレス成形品の焼入れ装置。
  17. 【請求項17】 請求項15又は16に記載のプレス成
    形品の焼入れ装置において、前記プレス成形品の外側を
    覆うカバーが設けられ、このカバーと前記プレス成形品
    との間の間隔空間が前記非酸化性ガス雰囲気となってお
    り、この間隔空間における前記凸状部に沿った長手方向
    両側のうちの少なくとも一方の端部は、開口した開口端
    となっており、この開口端に非酸化性ガスによるガスカ
    ーテンを形成するための非酸化性ガス噴出手段を備えて
    いることを特徴とするプレス成形品の焼入れ装置。
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