JP2003234183A - 転写材料及び有機薄膜素子の製造方法 - Google Patents

転写材料及び有機薄膜素子の製造方法

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JP2003234183A
JP2003234183A JP2002029871A JP2002029871A JP2003234183A JP 2003234183 A JP2003234183 A JP 2003234183A JP 2002029871 A JP2002029871 A JP 2002029871A JP 2002029871 A JP2002029871 A JP 2002029871A JP 2003234183 A JP2003234183 A JP 2003234183A
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Tomoyoshi Tateishi
朋美 立石
Nobuhiro Nishida
伸洋 西田
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発光効率、発光量の均一性及び耐久性に優れ
た剥離転写法による有機EL素子の転写材料、及びそれを
用いた有機薄膜素子の製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の転写材料は、仮支持体上に少な
くとも1層の有機薄膜層を形成してなる転写材料であっ
て、有機薄膜層を構成する少なくとも1成分のガラス転
移温度Tgが40〜250℃であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有機薄膜素子の転写
材料、及びそれを用いた有機薄膜素子の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】有機EL
素子等の有機発光素子は容易に面状発光素子に適用し得
るため、新たな光デバイスとして注目されている。具体
的には、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子
や書き込み光源アレイとしての用途が有望視され、多く
の開発が行われている。一般に有機発光素子は、発光層
及び前記発光層を挟んだ一対の対向電極(背面電極及び
透明電極)から構成されている。前記有機発光素子にお
いて、一対の対向電極間に電界が印加されると、有機発
光素子内に背面電極から電子が注入されるとともに、透
明電極から正孔が注入される。電子と正孔とが前記発光
層中で再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯
に戻る際にエネルギーが光として放出され、発光する。
【0003】有機EL素子の有機薄膜形成の多くは蒸着法
により製造されている。特開平9-167684号及び特開2000
-195665号は、マイカ又はフイルムの仮基板上に予め有
機層を均一に蒸着法により形成し、次いで基板と有機層
を近接させ、加熱蒸着する方法を提案している。しかし
ながらこれらの方法には、蒸着法を用いるために製造効
率が悪いという問題がある。また有機薄膜用に低分子有
機化合物しか使用できないため、フレキシブルなディス
プレイ用途等に用いると耐屈曲性や膜強度等の耐久性が
不十分であるという問題があり、特に大面積化した場合
に問題になる。
【0004】また緑色の発光を示すポリパラフェニレン
ビニレン(「ネイチャー」、347巻、539頁、1990年)、
赤燈色の発光を示すポリ3-アルキルチオフェン(ジャパ
ニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、30
巻、L1938頁、1991年)、青色発光素子としてポリアル
キルフルオレン(ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプ
ライド・フィジクス、30巻、L1941頁、1991年)等の高分
子の発光薄膜や、低分子化合物をバインダー樹脂に分散
させた発光薄膜を用いた高分子型素子も知られている。
これらの高分子型素子は大面積化にも有利であり、フレ
キシブルなディスプレイ用途として期待されているが、
有機発光薄膜の形成に蒸着法を適応できない。そのた
め、通常湿式法により薄膜形成が基板上に直接行われて
いる。
【0005】しかし湿式法では、溶液の表面張力により
有機薄膜の膜厚均一性が不十分になることや、有機薄膜
層を積層する場合に各有機薄膜層が界面で溶解してしま
うという問題がある。このため、この方法により得られ
た有機薄膜素子には発光効率や素子耐久性に劣るという
問題があった。
【0006】WO 00/41893号は、有機薄膜と光熱変換層
を有するドナーシートを用いて、レーザにより熱転写す
る方法を提案している。ところがWO 00/41893号のよう
な熱転写の場合、有機薄膜層の接合界面に気体の巻き込
みの問題がある。有機薄膜層の界面の状態により、有機
EL素子の発光効率や耐久性、更に発光面状の均一性が異
なり、有機薄膜層の接合界面に気体の巻き込みがある
と、素子機能は悪化する。
【0007】またプリント技術分野で利用されている熱
ヘッドやレーザを用いたパターン状の熱書き込みの場
合、熱拡散性によりパターンの周辺に温度分布が生じ
て、有機薄膜パターンの輪郭がきれいにドナー側から切
断されない。このため発光量のばらつきが生じたり、ま
た電気的不良や薄膜破片による欠陥が起こり、更に耐久
性も悪くなるという問題がある。また基板と熱ヘッドや
レーザとの位置合わせの不良により、歩留まり低下の問
題もある。
【0008】従って本発明の目的は、有機薄膜層を簡便
な製造装置で安価に基板上に形成できるとともに、均一
性及び良好な接合界面を有する有機薄膜素子を製造する
方法を提供することであり、特に仮支持体上に均一な有
機薄膜層を形成することにより、発光効率、発光量の均
一性及び耐久性に優れた有機EL素子等の有機薄膜素子を
効率良く製造する方法、それに用いる転写材料を提供す
ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者は、有機薄膜素子を構成する少なくと
も1層の有機薄膜層を仮支持体上に設け、その有機薄膜
層を基板に転写することにより、発光効率、発光量の均
一性及び耐久性に優れた有機EL素子等の有機薄膜素子を
低コストで製造できることを発見し、本発明に想到し
た。
【0010】本発明は下記手段によって達成された。 (1) 仮支持体上に少なくとも1層の有機薄膜層を形成し
てなる転写材料であって、前記有機薄膜層を構成する少
なくとも1成分のガラス転移温度Tgが40〜250℃である
ことを特徴とする転写材料。 (2) 上記(1)に記載の転写材料において、前記有機薄膜
層が少なくとも発光性化合物及び/又はキャリア輸送性
化合物を含有することを特徴とする転写材料。 (3) 上記(1)又は(2)に記載の転写材料において、前記有
機薄膜層の乾燥膜厚が6nm〜600nmであることを特徴と
する転写材料。 (4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の転写材料におい
て、連続ウエブ状であることを特徴とする転写材料。 (5) 仮支持体上に少なくとも1層の有機薄膜層を有する
転写材料を使用し、前記有機薄膜層側が基板の被成膜面
に対面するように前記転写材料を前記基板に重ねて加熱
及び/又は加圧し、前記仮支持体を引き剥がすことによ
り前記有機薄膜層を前記基板の被成膜面に転写する有機
薄膜素子の製造方法であって、前記有機薄膜層を構成す
る少なくとも1成分のガラス転移温度Tgが40〜250℃で
あることを特徴とする有機薄膜素子の製造方法。 (6) 上記(5)に記載の有機薄膜素子の製造方法におい
て、少なくとも発光性化合物及び/又はキャリア輸送性
化合物を含有する有機薄膜層を使用することを特徴とす
る有機薄膜素子の製造方法。 (7) 上記(5)又は(6)に記載の有機薄膜素子の製造方法に
おいて、前記転写材料及び/又は前記基板が連続ウエブ
状であることを特徴とする有機薄膜素子の製造方法。 (8) 上記(5)〜(7)のいずれかに記載の有機薄膜素子の製
造方法において、基板側から順にホール輸送性有機薄膜
層、発光性有機薄膜層及び電子輸送性有機薄膜層の少な
くとも1層を設けることを特徴とする有機薄膜素子の製
造方法。 (9) 上記(5)〜(8)のいずれかに記載の有機薄膜素子の製
造方法において、基板支持体とその上に形成された透明
導電膜からなる基板を使用することを特徴とする有機薄
膜素子の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】まず本発明の有機薄膜層転写材料
を説明し、次いで有機薄膜素子の製造方法を説明し、最
後に有機薄膜素子を説明する。
【0012】[1] 転写材料 (1) 構成 有機薄膜層は仮支持体上に湿式法で作製するのが好まし
い。有機薄膜層を設けた転写材料は、個々独立した転写
材料として作製してもよいし、図1に示すように1枚の
仮支持体に面順次に複数の有機薄膜層を設けてもよい。
すなわち、進行方向順に112a,112b,112cと複数の
有機薄膜層を1枚の仮支持体に設けてもよい。この場
合、転写材料の交換の必要なしに、複数の有機薄膜層を
連続的に形成することができる。
【0013】また仮支持体上に2層以上の有機薄膜層を
予め積層した転写材料を使用すれば、1回の転写工程で
基板の被成膜面に多層膜を積層することができる。仮支
持体上に予め積層する場合、積層される各有機薄膜層の
界面が均一でないと正孔や電子の移動にムラが生じてし
まうので、界面を均一にするために溶剤を慎重に選ぶ必
要があり、またその溶剤に可溶な有機薄膜層用の有機化
合物を選択する必要がある。
【0014】(2) 仮支持体 本発明に使用する仮支持体は、化学的及び熱的に安定で
あって、可撓性を有する材料により構成されるべきであ
り、具体的にはフッ素樹脂[例えば4フッ化エチレン樹
脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)]、
ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポ
リエチレンナフタレート(PEN))、ポリアリレート、
ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えばポリエチレ
ン、ポリプロピレン)、ポリエーテルスルホン(PES)
等の薄いシート、又はこれらの積層体が好ましい。仮支
持体の厚さは1μm〜300μmが適当であり、更に3μm〜
200μmが好ましく、特に5μm〜150μmであるのが好ま
しい。
【0015】また、仮支持体の構成は単層体及び複合体
のいずれでもよい。積層体の場合、基体の有機薄膜層を
設ける側に、少なくとも1層の平滑層を形成することに
より仮支持体を作製してもよい。平滑層を構成する素材
としては、特に限定はない。
【0016】(3) 仮支持体への有機薄膜層の形成 本発明の転写材料は、有機薄膜層を構成する少なくとも
1成分のガラス転移温度Tgが40〜250℃、好ましくは50
〜250℃、より好ましくは60〜220℃である。40℃以下で
は転写材料を重ねた時に反対面に転写してしまう等の不
良が発生するため好ましくなく、250℃以上では有機薄
膜層の転写を損ねたりするため好ましくない。また、ガ
ラス転移温度Tgが40〜250℃である成分の含有量は素材
によって異なるが、有機薄膜層全体を100としたとき、
重量比で0.1〜100が好ましく、1〜90がより好ましく、
3〜80が特に好ましい。ガラス転移温度Tgは、例えば示
差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することがで
きる。
【0017】有機薄膜層は構成成分として高分子化合物
等のバインダーを好ましく用いることができる。ポリマ
ーバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネ
ート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ
ブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、
ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹
脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチル
セルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メ
ラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポ
キシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ
ビニルアセタール等が使用可能である。
【0018】バインダーとして高分子化合物を含む有機
薄膜層は、湿式法により仮支持体に形成するのが好まし
い。湿式法を用いることにより、ポリマーバインダーを
含有する発光性有機薄膜層は容易に大面積に塗布形成す
ることができる。湿式法は、有機薄膜層用材料を有機溶
剤に所望の濃度に溶解し、得られた溶液を仮支持体に塗
布する。塗布法としては、有機薄膜層の乾燥膜厚が200
nm以下で均一な膜厚分布が得られれば特に制限はなく、
スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート
法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バー
コート法、エクストルージェンコート法、インクジェッ
ト塗布法等が挙げられる。中でも、ロールツーロールに
よる生産性の高いエクストルージェンコート法が好まし
い。
【0019】(4) 有機薄膜層 有機薄膜層は有機薄膜素子を構成する層であり、発光性
有機薄膜層、電子輸送性有機薄膜層、ホール輸送性有機
薄膜層、電子注入層、ホール注入層等が挙げられる。本
発明の転写材料はこれらの層のいずれか1層又は複数の
層を含むことができる。また発色性を向上するための種
々の層を挙げることができる。各層に用いる化合物の具
体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10
月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ
社)等に記載されている。
【0020】有機薄膜層の乾燥膜厚は6〜600 nmが好ま
しく、6〜450 nmがより好ましく、6〜300 nmがさらに
好ましい。
【0021】(a) 発光性有機薄膜層 発光性有機薄膜層は少なくとも一種の発光性化合物を含
有する。発光性化合物は特に限定的ではなく、蛍光発光
性化合物であっても燐光発光性化合物であってもよい。
また蛍光発光性化合物及び燐光発光性化合物を同時に用
いてもよい。本発明においては、発光輝度及び発光効率
の点から燐光発光性化合物を用いるのが好ましい。
【0022】蛍光発光性化合物としては、ベンゾオキサ
ゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチア
ゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル
誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニル
ブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘
導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾ
ール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シ
クロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘
導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チ
アジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳
香族ジメチリデン化合物、金属錯体(8-キノリノール誘
導体の金属錯体、希土類錯体等)、高分子発光性化合物
(ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリ
フェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等)
等が使用できる。これらは単独で用いても2種以上を混
合して用いてもよい。
【0023】燐光発光性化合物は、好ましくは三重項励
起子から発光することができる化合物であり、オルトメ
タル化錯体及びポルフィリン錯体が好ましい。ポルフィ
リン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐
光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用して
もよい。
【0024】本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山
本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232
頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistr
y and Photophysics of Coordination Compounds」,71
〜77頁及び135〜146頁,Springer-Verlag社(1987年)
等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタ
ル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2-フ
ェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-
(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン
誘導体又は2-フェニルキノリン誘導体であるのが好まし
い。これら誘導体は置換基を有してもよい。またこれら
のオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配
位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成す
る中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可
能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウ
ム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることが
できる。このようなオルトメタル化錯体を含む有機化合
物層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメ
タル化錯体については、特願2000-254171号に具体例が
記載されている。
【0025】本発明で用いるオルトメタル化錯体は、In
org. Chem., 30, 1685, 1991、Inorg. Chem., 27, 346
4, 1988、Inorg. Chem., 33, 545, 1994、Inorg. Chim.
Acta, 181, 245, 1991、J. Organomet. Chem., 335, 2
93, 1987、J. Am. Chem. Soc., 107, 1431, 1985等に記
載の公知の方法により合成することができる。
【0026】発光性有機薄膜層中の発光性化合物の含有
量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%である
のが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか又は70
質量%を超えると、その効果が十分に発揮されないこと
がある。
【0027】発光性有機薄膜層は必要に応じてホスト化
合物、ホール輸送材料、電子輸送材料、電気的に不活性
なポリマーバインダー等を含有してもよい。なおこれら
の材料の機能は1つの化合物により同時に達成できるこ
とがある。例えば、カルバゾール誘導体はホスト化合物
として機能するのみならず、ホール輸送材料としても機
能する。
【0028】ホスト化合物とは、その励起状態から発光
性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果その発光
性化合物を発光させる化合物である。その具体例として
は、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサ
ゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール
誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導
体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ア
リールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチ
リルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラ
ゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香
族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族
ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキ
ノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノ
ン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミ
ド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリル
ピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラ
カルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノ
ール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾ
オキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属
錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)
誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポ
リチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導
体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘
導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化
合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよ
い。
【0029】ホール輸送材料は、陽極からホールを注入
する機能、ホールを輸送する機能、及び陰極から注入さ
れた電子を障壁する機能のいずれかを有しているもので
あれば特に限定されず、低分子材料であっても高分子材
料であってもよい。その具体例としては、カルバゾール
誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オ
キサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリ
ールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘
導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導
体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン
誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチ
ルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化
合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合
物、ポルフィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N-
ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオ
フェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、
ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフ
ェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙
げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合し
て使用してもよい。
【0030】電子輸送材料は、陰極から電子を注入する
機能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入されたホ
ールを障壁する機能のいずれかを有しているものであれ
ば特に限定されない。その具体例としては、例えばトリ
アゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾー
ル誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン
誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、
チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、
フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘
導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸
無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体
等の金属錯体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾ
ールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ア
ニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェ
ン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェ
ニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフ
ルオレン誘導体等が挙げられる。
【0031】発光性有機薄膜層の乾燥膜厚は2〜200 nm
とするのが好ましく、10〜200 nmとするのがより好まし
く、20〜80 nmとするのがさらに好ましい。厚さが200 n
mを超えると駆動電圧が上昇することがある。一方2 nm
未満であると有機薄膜素子が短絡することがある。
【0032】(b) ホール輸送性有機薄膜層 有機薄膜素子は、必要に応じて上記ホール輸送材料から
なるホール輸送性有機薄膜層を有してよい。ホール輸送
性有機薄膜層は上記ポリマーバインダーを含有してもよ
い。ホール輸送性有機薄膜層の乾燥膜厚は2〜200 nmと
するのが好ましく、10〜200 nmとするのがより好まし
く、20〜80 nmとするのがさらに好ましい。厚さが200 n
mを超えると駆動電圧が上昇することがあり、2 nm未満
であると有機薄膜素子が短絡することがある。
【0033】(c) 電子輸送性有機薄膜層 有機薄膜素子は、必要に応じて上記電子輸送材料からな
る電子輸送性有機薄膜層を有してもよい。電子輸送性有
機薄膜層は上記ポリマーバインダーを含有してもよい。
電子輸送性有機薄膜層の乾燥膜厚は2〜200 nmとするの
が好ましく、10〜200 nmとするのがより好ましく、20〜
80 nmとするのがさらに好ましい。厚さが200 nmを超え
ると駆動電圧が上昇することがあり、2 nm未満である
と有機薄膜素子が短絡することがある。
【0034】[2] 有機薄膜素子の製造方法 本発明の方法は、仮支持体上に少なくとも1層の有機薄
膜層を形成した転写材料を用いて、剥離転写法により基
板上に有機薄膜層を転写する方法であって、有機薄膜層
を構成する少なくとも1成分のガラス転移温度Tgが40〜
250℃であることを特徴とする。剥離転写法は、転写材
料を加熱及び/又は加圧することにより有機薄膜層を軟
化させて、基板の被成膜面に接着させた後、仮支持体を
剥離することにより、有機薄膜層だけを被成膜面に残留
させる方法(転写方法)である。加熱手段としては、一
般に公知の方法を用いることができ、例えばラミネー
タ、赤外線ヒータ、レーザ、熱ヘッド等を用いることが
できる。熱ヘッドとしては、例えばファーストラミネー
タVA-400III(大成ラミネータ(株)製)や、熱転写プ
リント用の熱ヘッド等を用いることができる。転写用の
温度は特に限定的でなく、有機薄膜層の材質や加熱部材
によって変更することができるが、一般に40〜250℃が
好ましく、更に50〜200℃が好ましく、特に60〜180℃が
好ましい。ただし転写用の温度の好ましい範囲は、加熱
部材、転写材料及び基板の耐熱性に関係しており、耐熱
性が向上すればそれにともなって変化する。
【0035】図2を用いて、本発明の有機薄膜素子の製
造方法を実施するための装置の例を示すが、本発明はこ
れらに限定されることはない。図2において、仮支持体
111に有機薄膜層112が設けられた転写材料110は、転写
材料巻回用ロール113から供給する。転写装置は加熱
(加圧)ロール121及び加圧(加熱)ロール122からな
る。加熱(加圧)ロール121と加圧(加熱)ロール122と
の間に、基板支持体101と透明導電層(陰極又は陽極)1
02とからなる基板100を配置し、加熱(加圧)ロール121
と基板100の透明導電層102との間に、基板100の透明導
電層102が転写材料110の有機薄膜層112と接するよう
に、転写材料110を送給する。加熱(加圧)ロール121で
加熱又は加圧するか、加熱(加圧)ロール121及び加圧
(加熱)ロール122で加圧しながら加熱することによ
り、有機薄膜層112を基板100の透明導電層102上に転写
する。残りの仮支持体111は仮支持体巻回用ロール114で
巻き取る。
【0036】本発明は、図2に示す転写・剥離工程を繰
返し行い、複数の有機薄膜層を基板上に積層してもよ
い。複数の有機薄膜層は同一の組成であっても異なって
いてもよい。同一組成の場合、転写不良や剥離不良によ
る層の抜けを防止することができるという利点がある。
また異なる層を設ける場合、機能を分離して発光効率を
向上する設計とすることができ、例えば、本発明の転写
法により被成膜面に、透明導電層/発光性有機薄膜層/
電子輸送性有機薄膜層/電子注入層/背面電極、透明導
電層/ホール注入層/ホール輸送性有機薄膜層/発光性
有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層/電子注入層/背面
電極を積層することができる。
【0037】基板に転写した有機薄膜層に対して、ある
いは先に転写した有機薄膜層に転写した新たな有機薄膜
層に対して、必要に応じて再加熱するのが好ましい。ま
た、先の転写層が次の転写層に逆転写されないように、
先の転写工程と次の転写工程の間で、被成膜面に密着力
を向上するような表面処理を施してもよい。このような
表面処理としては、例えばコロナ放電処理、火炎処理、
グロー放電処理、プラズマ処理等の活性化処理が挙げら
れる。
【0038】[3] 有機薄膜素子 (1) 構成 有機薄膜素子の全体構成は、基板支持体上に透明導電層
/発光層/背面電極、透明導電層/発光層/電子輸送層
/背面電極、透明導電層/ホール輸送層/発光層/電子
輸送層/背面電極、透明導電層/ホール輸送層/発光層
/背面電極、透明導電層/発光層/電子輸送層/電子注
入層/背面電極、透明導電層/ホール注入層/ホール輸
送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極等を
この順に積層した構成、これらを逆に積層した構成等で
あってよい。発光層は蛍光発光性化合物及び/又は燐光
発光性化合物を含有し、通常透明導電層から発光が取り
出される。各層に用いる化合物の具体例については、例
えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機EL
ディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されてい
る。
【0039】(2) 基板 (a) 基板支持体 基板支持体は、ジルコニア安定化イットリウム(YS
Z)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタ
レート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカーボネ
ート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリル
ジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオ
レフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロ
エチレン、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロ
エチレン−ポリエチレン共重合体等の高分子材料等から
なるものであってよい。基板支持体は単一材料で形成し
ても、2種以上の材料で形成してもよい。中でも、フレ
キシブルな有機薄膜素子を形成するためには高分子材料
が好ましく、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁
性及び加工性に優れ、且つ低通気性及び低吸湿性である
ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホ
ンや、ポリクロロトリフルオロエチレン、テフロン、ポ
リテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の
フッ素原子を含む高分子材料がより好ましい。
【0040】基板支持体の形状、構造、大きさ等は有機
薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜選択することがで
きる。形状は板状とするのが一般的である。構造は単層
構造であっても積層構造であってもよい。基板支持体は
単一の部材で形成しても、2以上の部材で形成してもよ
い。また基板支持体は無色透明であっても有色透明であ
ってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰
させることがない点で無色透明であるのが好ましい。
【0041】基板支持体の電極側の面、電極と反対側の
面又はその両方に透湿防止層(ガスバリア層)を設けて
もよい。透湿防止層を構成する材料としては窒化ケイ
素、酸化ケイ素等の無機物を用いるのが好ましい。透湿
防止層は高周波スパッタリング法等により成膜できる。
また基板支持体には必要に応じてハードコート層やアン
ダーコート層を設けてもよい。
【0042】(3) 電極(陰極又は陽極) 透明導電層も背面電極もどちらでも陰極又は陽極として
用いることができ、いずれかは有機薄膜素子を構成する
組成によって決まる。
【0043】(a) 透明導電層(透明電極) 透明導電層は有機化合物層にホール(正孔)を供給する
陽極としての機能を有するが、陰極として機能させるこ
ともできる。以下、透明導電層を陽極とする場合につい
て説明する。
【0044】透明導電層の形状、構造、大きさ等は特に
制限されず、有機薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜
選択することができる。透明導電層を形成する材料とし
ては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、こ
れらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関
数が4eV以上の材料を用いる。具体例としては、アンチ
モンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープし
た酸化スズ(FTO)、半導性金属酸化物(酸化スズ、酸
化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(IT
O)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等)、金属(金、銀、
クロム、ニッケル等)、これら金属と導電性金属酸化物
との混合物又は積層物、無機導電性物質(ヨウ化銅、硫
化銅等)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフ
ェン、ポリピロール等)及びこれとITOとの積層物等が
挙げられる。
【0045】透明導電層は印刷法、コーティング法等の
湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ
ーティング法等の物理的方法、CVD法、プラズマCVD法等
の化学的方法等によって基板支持体上に形成することが
できる。形成方法は透明導電層材料との適性を考慮して
適宜選択すればよい。例えば、透明導電層の材料として
ITOを用いる場合には、直流又は高周波スパッタ法、真
空蒸着法、イオンプレーティング法等を用いればよい。
また透明導電層の材料として有機導電性材料を用いる場
合には、湿式製膜法を用いてよい。
【0046】透明導電層のパターニングはフォトリソグ
ラフィー等による化学的エッチング、レーザ等を用いた
物理的エッチング等により行うことができる。またマス
クを用いた真空蒸着法やスパッタリング法、リフトオフ
法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0047】透明導電層の形成位置は有機薄膜素子の用
途及び目的に応じて適宜選択してよいが、基板支持体上
に形成するのが好ましい。このとき透明導電層は基板支
持体の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよ
い。
【0048】透明導電層の厚さはその材料に応じて適宜
選択すればよいが、通常10 nm〜50μmであり、好ましく
は50 nm〜20μmである。透明導電層の抵抗値は103Ω/
□以下とするのが好ましく、102Ω/□以下とするのが
より好ましい。透明導電層は無色透明であっても有色透
明であってもよい。透明導電層側から発光を取り出すた
めには、その透過率は60%以上とするのが好ましく、70
%以上とするのがより好ましい。透過率は分光光度計を
用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0049】また「透明導電膜の新展開」(沢田豊監
修、シーエムシー刊、1999年)等に詳細に記載されてい
る電極も本発明に適用できる。特に耐熱性の低いプラス
チック基板支持体を用いる場合は、透明導電層材料とし
てITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するの
が好ましい。
【0050】(b) 背面電極 背面電極は有機化合物層に電子を注入する陰極としての
機能を有するが、陽極として機能させることもできる。
以下、背面電極を陰極とする場合について説明する。
【0051】背面電極の形状、構造、大きさ等は特に制
限されず、有機薄膜素子の用途及び目的に応じて適宜選
択することができる。背面電極を形成する材料として
は、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これ
らの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数
が4.5 eV以下の材料を用いる。具体例としては、アルカ
リ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、C
a等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリ
ウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム
−銀合金、インジウム、希土類金属(イッテルビウム
等)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよい
が、安定性と電子注入性とを両立させるためには2種以
上を併用するのが好ましい。これら材料の中で、電子注
入性の観点からはアルカリ金属及びアルカリ土類金属が
好ましく、保存安定性の観点からはアルミニウムを主体
とする材料が好ましい。ここでアルミニウムを主体とす
る材料とは、アルミニウム単独のみならず、アルミニウ
ムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金
属との合金又は混合物(リチウム−アルミニウム合金、
マグネシウム−アルミニウム合金等)を指す。背面電極
の材料としては、特開平2-15595号、特開平5-121172号
等に詳述されているものも使用できる。
【0052】背面電極は印刷法、コーティング法等の湿
式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレー
ティング法等の物理的方法、CVD法、プラズマCVD法等の
化学的方法等によって形成することができる。形成方法
は背面電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよ
い。例えば背面電極の材料として2種以上の金属等を用
いる場合、その材料を同時又は順次にスパッタして形成
できる。また背面電極のパターニングは透明導電層と同
様に行なうことができる。
【0053】背面電極の形成位置は有機薄膜素子の用途
及び目的に応じて適宜選択してよいが、有機化合物層上
に形成するのが好ましい。このとき背面電極は有機化合
物層の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよ
い。また背面電極と有機化合物層との間にアルカリ金属
又はアルカリ土類金属のフッ化物等からなる誘電体層を
0.1〜5 nmの厚さで設置してもよい。誘電体層は真空蒸
着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等に
より形成することができる。
【0054】背面電極の厚さはその材料に応じて適宜選
択すればよいが、通常10 nm〜5μmであり、好ましくは
50 nm〜1μmである。背面電極は透明であっても不透明
であってもよい。透明背面電極は、上記材料の層を1〜
10 nmの厚さに薄く製膜し、更にITOやIZO等の透明導電
性材料を積層して形成してもよい。
【0055】(4) パターニング 微細パターン状有機薄膜層の形成には、微細パターン状
の開口部を有するマスク(微細マスク)を使用する。マ
スクの材質は限定的でないが、金属、ガラス、セラミッ
ク、耐熱性樹脂等の耐久性があって安価なものが好まし
い。またこれらの材料を組み合わせて使用することもで
きる。また機械的強度及び有機薄膜層の転写精度の観点
から、マスクの厚さは2〜100μmであるのが好ましく、
5〜60μmがより好ましい。
【0056】転写材料の有機薄膜層が正確にマスクの開
口部の形状通りに下地の透明導電層又は他の有機薄膜層
に接着するように、マスク開口部は基板側より転写材料
側の方が大きくなるようにテーパしているのが好まし
い。
【0057】(5) その他の層 有機薄膜素子を構成する層として、発光性能の劣化を防
止するために保護層や封止層を設けるのが好ましい。さ
らに転写材料においては発光性能に影響しなければ、転
写性を向上するために仮支持体と有機薄膜層の間に剥離
層を設けたり、有機薄膜層と被成膜面の間に接着層を設
けてもよい。
【0058】(a) 保護層 有機薄膜素子は、特開平7-85974号、同7-192866号、同8
-22891号、同10-275682号、同10-106746号等に記載の保
護層を有していてもよい。保護層は有機薄膜素子の最上
面に形成する。ここで最上面とは、例えば基板支持体、
透明導電層、有機化合物層及び背面電極をこの順に積層
する場合には背面電極の外側表面を指し、また例えば基
板支持体、背面電極、有機化合物層及び透明導電層をこ
の順に積層する場合には透明導電層の外側表面を指す。
保護層の形状、大きさ、厚さ等は特に限定的でない。保
護層をなす材料は、水分や酸素等の有機薄膜素子を劣化
させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する
機能を有しているものであれば特に限定されず、例えば
一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、一酸化ゲルマニウム、二
酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0059】保護層の形成方法は特に限定はなく、例え
ば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリン
グ法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム
法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズ
マCVD法、レーザCVD法、熱CVD法、コーティング法等が
適用できる。
【0060】(b) 封止層 有機薄膜素子には水分や酸素の侵入を防止するための封
止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料とし
ては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモ
ノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含
フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
メチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリ
テトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチ
レン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフ
ルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他の
コモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物
質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、P
b、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等)、金属酸化物(MgO、Si
O、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、T
iO2等)、金属フッ化物(MgF2、LiF、AlF3、CaF2等)、
液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオ
ロアミン、パーフルオロエーテル等)、液状フッ素化炭
素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能
である。
【0061】外部からの水分や酸素を遮断する目的で、
有機化合物層を封止板、封止容器等の封止部材により封
止するのが好ましい。封止部材を背面電極側のみに設置
しても、発光積層体全体を封止部材で覆ってもよい。有
機化合物層を封止でき外部の空気を遮断することができ
れば、封止部材の形状、大きさ、厚さ等は特に限定され
ない。封止部材に用いる材料としては、ガラス、ステン
レススチール、金属(アルミニウム等)、プラスチック
(ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル、ポ
リカーボネート等)、セラミック等が使用できる。
【0062】封止部材を発光積層体に設置する際には、
適宜封止剤(接着剤)を用いてもよい。発光積層体全体
を封止部材で覆う場合は、封止剤を用いずに封止部材同
士を熱融着してもよい。封止剤としては紫外線硬化樹
脂、熱硬化樹脂、二液型硬化樹脂等が使用可能である。
【0063】さらに封止容器と有機薄膜素子の間の空間
に水分吸収剤又は不活性液体を挿入してもよい。水分吸
収剤は特に限定されず、具体例としては酸化バリウム、
酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸
ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸
化リン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、
フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化
バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マ
グネシウム等が挙げられる。不活性液体としてはパラフ
ィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤(パーフルオ
ロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテ
ル等)、塩素系溶剤、シリコーンオイル類等が使用可能
である。
【0064】
【実施例】本発明を以下の実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】実施例1〜8、比較例1〜2 (A) 転写材料Aの作製 ポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、厚
み188μm)の仮支持体の片面上に、下記組成: PTPDES(粘度が1×105Pa・sになる温度186℃、Mw=2200
0、下記構造(化1)): 40質量部 ジクロロエタン: 3500質量部
【0066】
【化1】
【0066】を有する有機薄膜層用塗布液をエクストル
ージョン型塗布機を用いて塗布し、室温で乾燥させるこ
とにより、厚さ30 nmのホール輸送性有機薄膜層を仮支
持体上に形成した転写材料Aを作製した。
【0067】 (B) 転写材料B-1〜B-10の作製 転写材料Aと同様の仮支持体の片面上に、下記組成: ポリビニルカルバゾール(Mw=63000、アルドリッチ社製): 40質量部 添加成分(下記表1記載) : 15質量部 トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体): 1質量部 ジクロロエタン: 3500質量部 を有する発光性有機薄膜層用塗布液をバーコータを用い
て塗布し、室温で乾燥させることにより、厚さ40 nmの
発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した転写材料B-1
〜B-10を作製した。
【0068】作製した転写材料B-1〜B-10を5cm角に裁
断し、塗布面と反対面を重ね合わせ、20gの荷重を載
せ、Ar雰囲気中で30℃3日間放置した後、転写材料B-1〜
B-6の面質を観察した。面質の評価基準は、塗布面に不
良が発生した場合を×、何も起きていない場合を○とし
た。添加成分、ガラス転移温度Tg及び面質を表1に示
す。
【0069】
【表1】
【0070】(C) 転写材料Cの作製 転写材料Aと同様の仮支持体の片面上に、下記組成: ポリビニルブチラール(商品名:2000L、Mw=2000、電
気化学工業(株)製、Tg:63℃): 10質量部 下記構造(化2)を有する電子輸送性化合物: 20質量
部 1-ブタノール: 3500質量部
【0071】
【化2】
【0072】を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液を
エクストルージョン型塗布機を用いて塗布し、80℃で2
時間真空乾燥させることにより、厚さ60nmの電子輸送性
有機薄膜層を仮支持体上に形成した転写材料Cを作製し
た。
【0073】(D) 有機EL素子の作製 (1) 被成膜面の作製 基板支持体として0.5 mm×2.5 cm×2.5 cmのガラス板を
用い、この基板支持体を真空チャンバー内に導入し、Sn
O2含有率が10質量%のITOターゲット(インジウム:錫
=95:5(モル比))を用いて、DCマグネトロンスパッ
タリング(条件:基板支持体の温度250℃、酸素圧1×1
0-3Pa)により、厚さ0.2μmのITO薄膜からなる透明電極
を形成した。ITO薄膜の表面抵抗は10Ω/□であった。
【0074】透明電極を形成したガラス板を洗浄容器に
入れ、イソプロピルアルコール(IPA)により洗浄した
後、酸素プラズマ処理を行った。
【0075】(2) 有機薄膜層を被成膜面に形成 酸素プラズマ処理した透明電極の表面に、ポリエチレン
ジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分
散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をス
ピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚さ100
nmのホール輸送性有機薄膜層Dを形成した。
【0076】また、同様に酸素プラズマ処理した透明電
極の表面に、転写材料Aのホール輸送性有機薄膜層側を
重ね、転写材料Aの仮支持体側から、0.3MPaの圧力で加
圧した160℃の加熱ローラの間を0.05m/分の速度にて加
熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、処理し
た透明電極の表面にホール輸送性有機薄膜層Aを形成し
た。
【0077】得られた2種類のホール輸送性有機薄膜層
を有する基板の表面に転写材料B-1〜B-10の発光性有機
薄膜層側を重ね合わせ、転写材料B-1〜B-10の仮支持体
側から、0.3MPaの圧力で加圧した160℃の加熱ローラの
間を0.05m/分の速度にて加熱・加圧し、転写材料B-1〜B
-10の仮支持体側から仮支持体を引き剥がすことによ
り、ホール輸送性有機薄膜層の上面に発光性有機薄膜層
B-1〜B-10を形成した(実施例1〜8、比較例1,2)。
【0078】同様に、発光性有機薄膜層B-1〜B-10を有
する基板の表面に転写材料Cの電子輸送性有機薄膜層側
を重ね、転写材料Cの仮支持体側から、0.3MPaの圧力で
加圧した160℃の加熱ローラの間を0.05m/分の速度にて
加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、発光
性有機薄膜層の上面に電子輸送性有機薄膜層Cを形成し
た(実施例3,4,7,8、比較例2)。
【0079】(3) 背面電極の作製 それぞれ発光性有機薄膜層(実施例1,2,5,6、比
較例1)、電子輸送性有機薄膜層(実施例3,4,7,
8、比較例2)の上にパターニングした蒸着用のマスク
(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、蒸着
装置内でマグネシウム:銀=10:1(モル比)を0.25μ
mの厚さに蒸着し、銀を0.3μmの厚さに蒸着して、背面
電極を形成した。透明電極(陽極として機能する)及び
背面電極よりそれぞれアルミニウムのリード線を結線
し、積層構造体を形成した。
【0080】(4) 封止 得られた積層構造体を、窒素ガスで置換したグローブボ
ックス内に入れ、ガラス製の封止容器で紫外線硬化型接
着剤(長瀬チバ(株)製、XNR5493)を用いて封止し、
有機EL素子を作製した。
【0081】(E) 評価 得られた有機EL素子を以下の方法により評価した。まず
ソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)
製)を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し、発光さ
せた。200 cd/m2で発光させた発光素子について、50倍
の顕微鏡で発光ムラを観察した。発光ムラの評価基準は
下記の通りである。結果を表2に示す。 9割以上が均一に発光した場合:◎ 発光に濃淡があるが、7割以上が均一に発光した場合:
○ 発光に濃淡があり、7割未満しか均一に発光しなかった
場合:×
【0082】
【表2】 注:* すぐにショートした。
【0083】また基板支持体を角ガラス板から厚さ75μ
mのポリエチレンテレフタレートの連続ウエブに代えた
以外、実施例と同じ方法により有機薄膜層の転写を行な
ったところ、生産性良く同様な結果が得られた。
【0084】
【発明の効果】本発明により、有機薄膜層を構成する少
なくとも1成分のガラス転移温度Tgが40〜250℃である
転写材料を使用して剥離転写法を行なうことで、均一性
及び良好な接合界面を有する有機薄膜素子を製造するこ
とができる。また、積層の過程が蒸着法と比較して簡便
かつ安価となり、発光面・発光量の均一性に優れた有機
EL素子等の有機薄膜素子を低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による複数の有機薄膜層を
面順次に有する転写材料を示す。
【図2】 本発明の別の実施例による有機薄膜素子の製
造方法を実施するための装置を示す。
【符号の説明】
100・・・基板 101・・・基板支持体 102・・・陰極又は陽極 110・・・転写材料 111・・・仮支持体 112・・・有機薄膜層 113・・・転写材料巻回用ロール 114・・・仮支持体巻回用ロール 121・・・加熱(加圧)部材(ロール) 122・・・加圧(加熱)部材(ロール)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 仮支持体上に少なくとも1層の有機薄膜
    層を形成してなる転写材料であって、前記有機薄膜層を
    構成する少なくとも1成分のガラス転移温度Tgが40〜25
    0℃であることを特徴とする転写材料。
  2. 【請求項2】 仮支持体上に少なくとも1層の有機薄膜
    層を有する転写材料を使用し、前記有機薄膜層側が基板
    の被成膜面に対面するように前記転写材料を前記基板に
    重ねて加熱及び/又は加圧し、前記仮支持体を引き剥が
    すことにより前記有機薄膜層を前記基板の被成膜面に転
    写する有機薄膜素子の製造方法であって、前記有機薄膜
    層を構成する少なくとも1成分のガラス転移温度Tgが40
    〜250℃であることを特徴とする有機薄膜素子の製造方
    法。
JP2002029871A 2002-02-06 2002-02-06 転写材料及び有機薄膜素子の製造方法 Pending JP2003234183A (ja)

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