JP2003224448A - 弾性表面波素子 - Google Patents

弾性表面波素子

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JP2003224448A
JP2003224448A JP2002019175A JP2002019175A JP2003224448A JP 2003224448 A JP2003224448 A JP 2003224448A JP 2002019175 A JP2002019175 A JP 2002019175A JP 2002019175 A JP2002019175 A JP 2002019175A JP 2003224448 A JP2003224448 A JP 2003224448A
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acoustic wave
surface acoustic
thickness
piezoelectric thin
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JP2002019175A
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Makoto Furuhata
誠 古畑
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 誘電体薄膜と圧電体薄膜の膜厚を規定するこ
とにより、温度変化に起因する周波数変化を抑制し、安
定した周波数特性を有する弾性表面波素子を提供する。 【解決手段】 誘電体基板101上に形成されSiO
で構成される誘電体薄膜102と、この誘電体薄膜10
2上に形成されZnOで構成される圧電体薄膜103
と、この圧電体薄膜103上に形成された櫛形電極10
4とを有する弾性表面波素子100である。櫛形電極1
04の構造に対応する弾性表面波の波長をλ、誘電体薄
膜102の厚さをTs、圧電体薄膜103の厚さをTz
とし、khs=2πTs/λ、khz=2πTz/λと
したとき、khzが0.1以上1.0以下であり、kh
sが0.12以上0.45以下であるように構成するこ
とにより、周波数の1次温度係数(TCD)を小さく
し、安定した周波数特性を有する素子を構成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は弾性表面波素子に係
り、特に、電圧制御発振器(VCO)、位相ロックルー
プ(PLL)発振器、周波数フィルタ等として用いる場
合に好適な弾性表面波素子に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、弾性表面波(SAW)素子は、
ZnOやLiNbO等の圧電体の表面に櫛形電極(I
DT)を形成し、この櫛形電極によって圧電体の表面上
に弾性表面波を発生させ、この弾性表面波の伝播特性に
よって種々の電気的信号を生成するように構成されてい
る。
【0003】弾性表面波素子は、小型で軽量であるこ
と、寿命が長いこと、位相特性に優れていることなどの
点で有利であるため、周波数フィルタ、共振器、遅延デ
バイス等として広く用いることができる。一般に、弾性
表面波素子の性能を高めるために、弾性表面波の伝播速
度Vsや電気機械結合係数kの増大が図られている。
【0004】弾性表面波素子としては、例えば、特開平
6−104680号公報に記載されているように、シリ
コン基板上にSiOで構成される誘電体薄膜を形成
し、この誘電体薄膜の上にさらにZnOで構成される圧
電体薄膜を形成してなるものが知られている。このよう
なZnO/SiOの積層構造は、水晶振動子に較べて
音速が高いため、高周波デバイスを構成する場合に適し
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記弾性表
面波素子の特性としては、弾性表面波の周波数の安定化
或いは高精度化が重要であり、特に、共振器や周波数フ
ィルタとして用いる場合には、温度変化に対する周波数
の安定化がきわめて重要である。しかしながら、従来の
ZnO/SiO構造を有する弾性表面波素子において
は、積層構造によって周波数の温度依存性が大きく変化
し、素子として必要な周波数の安定性が得られないとい
う問題点があった。
【0006】また、上記従来のZnO/SiO構造を
有する弾性表面波素子では、ZnOで構成される圧電体
薄膜が5μm程度と厚いため、高品位の膜を短時間に形
成することが困難であり、これを克服するには特開平9
−256139号等に記載された高度な技術を必要とす
る2段階成膜法や高価な装置を必要とするレーザアブレ
ーション法等を用いる必要があるため、製造コストが増
大するという問題点もあった。
【0007】そこで本発明は上記問題点を解決するもの
であり、その課題は、誘電体薄膜と圧電体薄膜の膜厚を
規定することにより、温度変化に起因する周波数変化を
抑制し、安定した周波数特性を有する弾性表面波素子を
提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の弾性表面波素子は、誘電体基板上に形成され
SiOで構成される誘電体薄膜と、該誘電体薄膜上に
形成されZnOで構成される圧電体薄膜と、該圧電体薄
膜上に形成された櫛形電極とを有する弾性表面波素子で
あって、前記櫛形電極の構造に対応する弾性表面波の波
長をλ、前記誘電体薄膜の厚さをTs、前記圧電体薄膜
の厚さをTzとし、khs=2πTs/λ、khz=2
πTz/λとしたとき、khzが0.1以上1.0以下
であり、khsが0.12以上0.45以下であること
を特徴とする。
【0009】この発明によれば、周波数の1次温度係数
(TCD)がプラスマイナス10[ppm/℃]以下と
なり、安定した周波数特性を得ることができる。特に、
上記のkhsとkhzの範囲内では、khs及びkhz
の変化に対する1次温度係数の変動が比較的小さいの
で、誘電体薄膜や圧電体薄膜の膜厚の精度(再現性)を
それほど高めなくても、温度特性に関してばらつきが少
なく均質な素子を容易に製造することができる。また、
誘電体薄膜の厚さTsと圧電体薄膜の厚さTzの許容範
囲が広いので、成膜精度の比較的劣る安価な或いは簡易
な装置にて製造することが可能になり、製造コストの上
昇を抑制することができる。さらに、圧電体薄膜の厚さ
Tzが従来のZnO/SiO構造よりも薄いことか
ら、圧電体薄膜を簡易な方法で短時間に形成することが
可能になるため、製造コストを低減することができる。
また、上記範囲内では弾性表面波の速度がほぼ4000
[m/s]を越えるため、素子の高周波化が容易にな
る。
【0010】本発明において、さらに、khsが0.2
以上0.35以下であることが好ましい。
【0011】この発明によれば、周波数の1次温度係数
をプラスマイナス5[ppm/℃]以下に抑制すること
が可能になる。
【0012】本発明において、khzが0.2以上1.
0以下であることが好ましい。
【0013】この発明によれば、圧電体薄膜の厚さTz
の変化に対する1次温度係数の変化が小さいので、圧電
体薄膜の厚さTzの精度が素子の温度特性に影響しにく
くなるため、温度特性についてばらつきの少ない素子を
再現性よく製造することが可能になる。
【0014】この場合に、特に、khsが0.265以
上0.3以下であることが望ましい。
【0015】この発明によれば、周波数の1次温度係数
をプラスマイナス2[ppm/℃]以下に抑制すること
が可能になる。
【0016】本発明において、さらに、khzが0.1
6以上0.48以下であることが好ましい。
【0017】この発明によれば、圧電体薄膜の膜厚Tz
がさらに薄くなることにより、圧電体薄膜をさらに製造
し易くなり、短時間に圧電体薄膜を成膜できるととも
に、例えば2段階成膜などの複雑な成膜法を用いること
は必ずしも必要ない。
【0018】また、本発明の別の弾性表面波素子は、誘
電体基板上に形成されSiOで構成される誘電体薄膜
と、該誘電体薄膜上に形成されZnOで構成される圧電
体薄膜と、該圧電体薄膜上に形成された櫛形電極とを有
する弾性表面波素子であって、前記櫛形電極の構造に対
応する弾性表面波の波長をλ、前記誘電体薄膜の厚さを
Ts、前記圧電体薄膜の厚さをTzとし、khs=2π
Ts/λ、khz=2πTz/λとしたとき、khsが
約0.3であり、khzが約0.2、約0.45、又
は、約1.1であることを特徴とする。
【0019】この発明によれば、上記条件の近傍では、
弾性表面波の周波数の1次温度係数を示す特性曲線が1
次温度係数0のラインに交差するため、周波数の温度依
存性を低減し、安定した周波数特性を得ることができ
る。
【0020】本発明において、前記弾性表面波の波長λ
が1〜15μmであることが好ましい。
【0021】この発明によれば、弾性表面波の波長λが
1〜15μmの範囲内では櫛形電極を容易に形成するこ
とが可能であるとともに、誘電体薄膜の厚さを高々1μ
m程度、圧電体薄膜の厚さを高々2μm程度とすること
ができるので、短時間に高品位の誘電体薄膜、圧電体薄
膜を形成することが可能になり、製造コストを低減する
ことができる。特に、圧電体薄膜の厚さを薄くすること
ができるので、圧電体薄膜の結晶性を向上させることが
可能になり、弾性表面波素子の性能を向上させることが
可能になる。
【0022】なお、上記各発明において、特に、khz
を0.1〜0.5の範囲内とすることにより、圧電体薄
膜を通常の薄膜形成技術で高い結晶性を有する高品位の
膜とすることができるという利点がある。
【0023】本発明においては、弾性表面波の波長λ
は、必ずしも1〜15μmの範囲に限定されるものでは
ない。波長λが1μm未満(例えば波長λ=0.1〜
1.0μmの場合)であると、櫛形電極の形成はやや困
難になるが、誘電体薄膜、圧電体薄膜の厚さをさらに低
減できるので、結晶性の向上に起因する薄膜の膜質の向
上を図ることができるとともに、製造コストを低減で
き、その上、素子をさらに高周波化することができる。
また、波長λが15μmを越える場合(例えば波長λ=
15〜500μmの場合)には、誘電体薄膜や圧電体薄
膜の厚膜化が必要になり、素子の低周波数化が生ずるも
のの、櫛形電極の幅やピッチを大きくすることができる
ため、電極形成が容易になり、安価なプロセスを用いる
ことができるというメリットがある。
【0024】本発明において、前記誘電体基板がシリコ
ン基板であることが好ましい。
【0025】この発明によれば、シリコン基板を用いる
ことにより、誘電体薄膜及び圧電体薄膜を容易に成膜す
ることが可能になるとともに、シリコン基板に回路を形
成することにより、弾性表面波素子とこれに関連する回
路部分とを一体に構成することが可能になる。
【0026】本発明において、共振器若しくは周波数フ
ィルタとして機能することが好ましい。
【0027】この発明によれば、共振器若しくは周波数
フィルタとして機能することにより、上記構成に起因し
て得られる、温度変化に関して安定した周波数特性を有
効に利用できる。
【0028】
【発明の実施の形態】次に、添付図面を参照して本発明
に係る弾性表面波素子の実施形態について詳細に説明す
る。図1は、本実施形態の弾性表面波素子100の概略
構造を模式的に示す概略断面図である。この弾性表面波
素子100においては、シリコン基板等で構成される誘
電体基板101上にSiOで構成される誘電体薄膜1
02が形成され、この誘電体薄膜102上にZnOで構
成される圧電体薄膜103が形成されている。圧電体薄
膜103上にはアルミニウム等の導電体で構成された櫛
形電極(IDT)104が形成されている。
【0029】図2は、本実施形態の弾性表面波素子10
0の構成例を示すものである。弾性表面波素子100と
しては、圧電体薄膜103の電気機械結合を用いた、弾
性表面波を介在させて動作する素子であれば如何なるも
のであっても構わないが、例えば、図2にはSAWフィ
ルタを構成した場合について示してある。この場合、圧
電体薄膜103の表面103a上に櫛形電極104A及
び104Bが間隔を有して配置されている。ここで、一
方の櫛形電極104Aに対して入力端子IPから電気信
号を入力し、他方の櫛形電極104Bに接続された出力
端子OPから電気信号を出力するように構成されてい
る。入力端子IPに電気信号を入力すると、櫛形電極1
04Aでは、図1に点線で示すような弾性表面波が形成
される。この弾性表面波の波長λは、同電位が供給され
る隣接した電極部間の距離と等しい。ここで、各電極部
の幅と間隔とが等しく形成されている場合には、上記波
長λは電極部の幅の4倍になる。
【0030】図3乃至図8は、上記弾性表面波素子10
0を製造する各工程を示す工程断面図である。以下、上
記図面を参照して弾性表面波素子100を製造する方法
の一例について説明する。
【0031】まず、図3に示すように、誘電体基板10
1上に、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブレーシ
ョン法などを用いてSiOを堆積させ、誘電体薄膜1
02を成膜する。ここで、誘電体基板101としてシリ
コン基板を用いる場合には、熱酸化法にて誘電体薄膜1
02を形成してもよい。
【0032】次に、図4に示すように、誘電体薄膜10
2上に、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブレーシ
ョン法などを用いてZnOを堆積させ、圧電体薄膜10
3を成膜する。ここで、圧電体薄膜103のZnOのC
軸を基板に対して垂直に配向させることにより、単結晶
ZnOに近い圧電特性を薄膜でも示すことが知られてい
る。したがって、圧電体薄膜の膜質を向上させるには、
ZnOのC軸を基板に対して垂直な方向に揃える必要が
ある。このC軸配向性の向上を図るには、成膜温度を高
めるなどの成膜条件の最適化が望まれる。例えば、スパ
ッタリング法で成膜する場合には、成膜温度を150〜
350℃程度にすると膜質(C軸配向性)が向上する。
【0033】その後、図5に示すように、この圧電体薄
膜103上に、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブ
レーション法などを用いてアルミニウム等の導電体を堆
積させ、導体層104Xを形成する。
【0034】次に、図6に示すように、上記導体層10
4X上に感光性レジストを塗布し、レジスト層105X
を形成する。そして、通常のフォトリソグラフィプロセ
スにより上記レジスト層105Xを所定パターンで露光
し、さらに現像を行って、図7に示すように、レジスト
マスク105を形成する。この状態で、レジストマスク
105上から上記導体層104Xをエッチングし、図8
に示すように櫛形電極104を形成する。最後に、レジ
ストマスク105を除去することによって、図1に示す
弾性表面波素子100が形成される。
【0035】本願発明者は、図1に示す弾性表面波素子
100において、誘電体薄膜102の厚さTsと圧電体
薄膜103の厚さTzに注目し、これらの厚さを変えて
設計した場合について種々検討を行い、図9に示すよう
に、1次温度係数(TCD)のkhsとkhzに対する
依存性を示す結果を得た。
【0036】ここで、khsは、誘電体薄膜102の厚
さTsを櫛形電極104の構造に対応する弾性表面波の
波長λで正規化した膜厚(波数)であり、khs=2π
Ts/λである。また、khzは、圧電体薄膜103の
厚さTzを櫛形電極104の構造に対応する弾性表面波
の波長λで正規化した膜厚(波数)であり、khz=2
πTz/λである。
【0037】一方、弾性表面波の周波数fの温度tに対
する特性(依存性)をf(t)で表すと、基準温度t
(例えば室温25℃などの使用環境における平均的な温
度)に対する周波数の変化率は、 {f(t)−f(t)}/f(t) =α(t−t)+β(t−t+γ(t−t+・・・ (1) と表すことができる。ここで、上記式(1)中のαが上
記1次温度係数(TCD)である。
【0038】図9に示す1次温度係数TCD[ppm/
℃]は、誘電体基板101として厚さ135μmのシリ
コン基板を用い、t=25℃とした場合のレーリー波
(0次波)に基づく常温領域の値を示すものである。
【0039】図9に一点鎖線で示す領域Aは、圧電体薄
膜103の膜厚khzが0.1以上1.0以下であり、
誘電体薄膜102の膜厚khsが0.12以上0.45
以下である範囲を示す。この領域Aに該当する弾性表面
波素子においては、弾性表面波の周波数の1次温度係数
TCDがプラスマイナス10[ppm/℃]以内(すな
わち、1次温度係数の絶対値が10以下、以下同様)と
なり、低い温度依存性を示す。また、弾性表面波の波長
λが1〜15μmの範囲内であれば誘電体薄膜の厚さT
sは0.019〜1.07μmとなり、弾性表面波の実
用的な波長範囲において、従来よりも厚さTsを薄くす
ることができるので、きわめて短時間に成膜することが
可能で、熱酸化法等によって容易に形成することができ
るようになる。この場合、例えば中央値khs=0.2
85を目標値とすれば、誘電体薄膜102を成膜する際
の成膜装置の厚さ精度はプラスマイナス57%程度で足
りるため、高価な成膜装置を用いる必要がなく、成膜速
度も高めることが可能になる。同様の理由により、弾性
表面波の波長λが1〜15μmの範囲内であれば圧電体
薄膜の厚さTzは0.015〜2.39μmとなり、こ
れもまた実用的な厚さであって、容易かつ短時間に成膜
できる。さらに、製造時の成膜面内の各薄膜の厚さのば
らつきも上記領域の範囲内であれば許容できる。特に、
圧電体薄膜の厚さTzを薄くすることができるので、圧
電体薄膜の結晶性を向上させることが可能になり、弾性
表面波素子の性能を向上させることが可能になる。
【0040】また、図9に二点鎖線で示す領域Bは、k
hzが0.1以上1.0以下であり、khsが0.2以
上0.35以下である範囲を示す。この領域Bに該当す
る弾性表面波素子においては、弾性表面波の周波数の1
次温度係数TCDがプラスマイナス5[ppm/℃]以
内であり、さらに低い温度依存性を示す。ここで、弾性
表面波の波長が1〜15μmであれば誘電体薄膜102
の厚さTsは0.038〜0.84μmとなる。また、
中央値khs=0.275を目標値とすれば、厚さの精
度はプラスマイナス27%程度で足りることとなる。さ
らに、製造時の面内の各薄膜の厚さのばらつきも上記領
域の範囲内であれば許容できる。
【0041】さらに、図9に三点鎖線で示す領域Cは、
khzが0.2以上1.0以下であり、khsが0.2
65以上0.3以下である範囲を示す。khzが0.2
以上1.0以下の範囲では、比較的小さい1次温度係数
TCDを示すラインがkhzに対してほとんど平坦にな
っているため、誘電体薄膜102の厚さTsで温度特性
がほぼ定まり、圧電体薄膜103の厚さTzにはそれ程
依存しなくなる。したがって、誘電体薄膜102の厚さ
Tsを高精度に形成すれば、圧電体薄膜103の厚さT
zについてはほとんど配慮しなくても温度特性が均一で
安定した周波数特性を有する弾性表面波素子を製造でき
る。さらに、製造時の成膜面内の各薄膜の厚さのばらつ
きも上記領域の範囲内であれば許容できる。特に、圧電
体薄膜の厚さを薄くすることが可能になるので、圧電体
薄膜の結晶性を向上させることが可能になり、弾性表面
波素子の性能を向上させることが可能になる。
【0042】この領域Cでは、khsを上記のように
0.265以上0.3以下とすることにより、周波数の
1次温度係数TCDをプラスマイナス2[ppm/℃]
以内にすることができる。また、弾性表面波の波長が1
〜15μmであれば誘電体薄膜102の厚さTsは0.
042〜0.72μmとなる。また、中央値khs=
0.2725を目標値とすれば、厚さの精度はプラスマ
イナス6.1%程度で足りることとなる。さらに、製造
時の成膜面内の各薄膜の厚さのばらつきも上記領域の範
囲内であれば許容できる。
【0043】上記の各領域においては、特に、上記kh
zを0.1〜0.5の範囲内とすることにより、圧電体
薄膜を通常の薄膜形成技術で高い結晶性を有する高品位
の膜とすることができるという利点がある。圧電体薄膜
ZnOの結晶性は、弾性表面波素子の性能を決定する最
も大きな要因となるので、高品位の膜質を得ることは重
要である。圧電体薄膜の厚さTzを薄くすることによっ
て、安価な装置でも高品位の膜質を得ることが可能にな
るため、弾性表面波素子の性能を高めることが容易にな
る。
【0044】図9に2点鎖線で示す領域Dは、khzが
0.16以上0.48以下であり、khsが0.295
以上0.31以下である範囲を示す。この領域Dにおい
ては、周波数の1次温度係数TCDをプラスマイナス1
[ppm/℃]以内にすることができ、きわめて安定な
温度特性を有する弾性表面波素子となる。ここで、弾性
表面波の波長が1〜15μmであれば誘電体薄膜102
の厚さTsは0.047〜0.74μmとなる。また、
中央値khs=0.3025を目標値とすれば、厚さの
精度はプラスマイナス2.4%程度で足りることとな
る。さらに、製造時の成膜面内の各薄膜の厚さのばらつ
きも上記領域の範囲内であれば許容できる。
【0045】次に、図10には、図9よりもより広いk
hzの範囲に亘って弾性表面波素子の周波数の1次温度
係数TCDの値を調べた結果を示す。ここで、khs=
0.3で固定してある。このグラフから分かるように、
誘電体薄膜の膜厚khsが0.3である場合、1次温度
係数TCDのグラフは、TCD=0のラインに対してk
hzが約0.2、約0.45、約1.1であるときにそ
れぞれ交差する。そして、それ以上のkhz値において
は徐々に1次温度係数が増大する傾向を有している。し
たがって、khsが約0.3であるときには、khzを
約0.2、約0.45、約1.1のいずれかに設定する
ことによって、1次温度係数の小さい弾性表面波素子を
製造することができる。特に、khzが0.2又は0.
45である場合には、圧電体素子の厚さTzを薄く形成
できるので、圧電体の結晶性を向上させ、弾性表面波素
子の性能を高めることができる。
【0046】例えば、khsが約0.3(例えば、0.
27〜0.33、特に0.285〜0.315)であ
り、khzが約0.2(例えば、0.18〜0.22、
特に0.19〜0.21)である場合には、図11及び
図12に示すように、弾性表面波の速度Vs(Vs=f
λ)が4500[m/s]程度であって、水晶よりも高
速である。したがって、水晶よりも高周波数で用いるこ
とができる。また、結合係数kは0.1%程度で水晶
とほぼ同等である。
【0047】この場合、弾性表面波の波長λが4μm
(このとき、櫛形電極104の線幅やピッチは1μm程
度となる。)であれば、圧電体薄膜の厚さTzは約0.
13μm、誘電体薄膜の厚さTsは約0.19μmとな
るので、誘電体薄膜や圧電体薄膜をCVD装置、スパッ
タリング装置等で容易かつ短時間に成膜することができ
る。一方、弾性表面波の波長λが12μm(このとき、
櫛形電極104の線幅やピッチは3μm程度となる。)
であれば、誘電体薄膜の厚さTsは約0.39μm、圧
電体薄膜の厚さTzは約0.57μmとなる。このとき
にも、誘電体薄膜や圧電体薄膜をCVD装置、スパッタ
リング装置等で容易かつ短時間に成膜することができ
る。
【0048】また、khsが約0.3(例えば、0.2
7〜0.33、特に0.285〜0.315)であり、
khzが約0.45(例えば、0.41〜0.49、特
に0.43〜0.47)である場合には、図11及び図
12に示すように、弾性表面波の速度Vsが約4200
[m/s]程度であって、やはり水晶よりも高速であ
る。したがって、水晶よりも高周波数で用いることがで
きる。また、結合係数k は0.3%程度で水晶を上回
る。したがって、反射器を形成する場合には反射器の電
極本数を削減できるため小型化を図ることができ、広帯
域フィルタを構成することも可能になる。
【0049】この場合、弾性表面波の波長λが4μm
(このとき、櫛形電極104の線幅やピッチは1μm程
度となる。)であれば、圧電体薄膜の厚さTzは約0.
34μm、誘電体薄膜の厚さTsは約0.19μmとな
るので、誘電体薄膜や圧電体薄膜をCVD装置、スパッ
タリング装置等で容易かつ短時間に成膜することができ
る。一方、弾性表面波の波長λが12μm(このとき、
櫛形電極104の線幅やピッチは3μm程度となる。)
であれば、圧電体薄膜の厚さTzは約1.02μm、誘
電体薄膜の厚さTsは約0.57μmとなる。このとき
にも、誘電体薄膜や圧電体薄膜をCVD装置等で比較的
容易に成膜することができる。
【0050】さらに、khsが約0.3(例えば、0.
27〜0.33、特に0.285〜0.315)であ
り、khzが約1.1(例えば、1.0〜1.2、特に
1.05〜1.15)である場合には、図11及び図1
2に示すように、弾性表面波の速度Vsが約3500
[m/s]程度であって、水晶よりもやや高速である。
したがって、水晶よりも高周波数で用いることができ
る。また、結合係数kは0.4%程度で水晶を大きく
上回る。したがって、反射器を形成する場合には反射器
の電極本数を削減できるため小型化を図ることができ、
広帯域フィルタを構成することも可能になる。
【0051】この場合、弾性表面波の波長λが4μm
(このとき、櫛形電極104の線幅やピッチは1μm程
度となる。)であれば、圧電体薄膜の厚さTzは約0.
7μm、誘電体薄膜の厚さTsは約0.19μmとなる
ので、誘電体薄膜や圧電体薄膜をCVD装置等で比較的
容易に成膜することができる。一方、弾性表面波の波長
λが12μm(このとき、櫛形電極104の線幅やピッ
チは3μm程度となる。)であれば、圧電体薄膜の厚さ
Tzは約2.1μm、誘電体薄膜の厚さTsは約0.5
7μmとなる。このときにも、誘電体薄膜や圧電体薄膜
をCVD装置等で比較的容易に成膜することができる。
【0052】上記の圧電体薄膜103の成膜に際して
は、膜質を向上させるために蒸着法やスパッタリング法
等によって成膜温度を高めるなどの方法でC軸配向の度
合を高めた薄膜であることが好ましい。また、2段階成
膜法(第1段階では成膜条件を最適化して結晶性の良い
極薄膜を形成し、第2段階では上記極薄膜上に高速で成
膜を行う方法)を用いて圧電体薄膜を形成したり、圧電
体薄膜をレーザアブレーション法等によって形成したエ
ピタキシャル膜で構成したりすればさらに膜質が向上す
る。このような高品位の圧電体薄膜を形成することによ
って、結晶性、配向性、均一性等が向上するので、Q値
が増大し、低損失で高性能な弾性表面波素子とすること
が可能になる。
【0053】尚、本発明の弾性表面波素子は、上述の図
示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸
脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論
である。
【0054】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、
弾性表面波の周波数の温度依存性を低減し、安定した弾
性表面波素子を得ることができる。また、圧電体薄膜が
従来よりも薄いため、容易且つ短時間に製造することが
可能になり、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る弾性表面波素子の実施形態の構
造を模式的に示す概略断面図である。
【図2】 本実施形態の弾性表面波素子の構成例を示す
概略斜視図である。
【図3】 本実施形態の弾性表面波素子の製造工程を示
す工程断面図である。
【図4】 本実施形態の弾性表面波素子の製造工程を示
す工程断面図である。
【図5】 本実施形態の弾性表面波素子の製造工程を示
す工程断面図である。
【図6】 本実施形態の弾性表面波素子の製造工程を示
す工程断面図である。
【図7】 本実施形態の弾性表面波素子の製造工程を示
す工程断面図である。
【図8】 本実施形態の弾性表面波素子の製造工程を示
す工程断面図である。
【図9】 本実施形態の弾性表面波素子の周波数の温度
特性(1次温度係数)における、誘電体薄膜の正規化さ
れた膜厚と圧電体薄膜の正規化された膜厚とに対する依
存性を示すグラフである。
【図10】 本実施形態の弾性表面波素子の周波数の温
度特性(1次温度係数)における、圧電体薄膜の正規化
された膜厚に対する依存性を示すグラフである。
【図11】 本実施形態の弾性表面波素子の弾性表面波
の音速Vsにおける誘電体薄膜の正規化された膜厚と圧
電体薄膜の正規化された膜厚とに対する依存性を示すグ
ラフである。
【図12】 本実施形態の弾性表面波素子の弾性表面波
の音速Vs及び結合係数kにおける、圧電体薄膜の正
規化された膜厚に対する依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
100・・・弾性表面波素子、101・・・誘電体基
板、102・・・誘電体薄膜、103・・・圧電体薄
膜、104・・・櫛形電極

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘電体基板上に形成されSiOで構成
    される誘電体薄膜と、該誘電体薄膜上に形成されZnO
    で構成される圧電体薄膜と、該圧電体薄膜上に形成され
    た櫛形電極とを有する弾性表面波素子であって、 前記櫛形電極の構造に対応する弾性表面波の波長をλ、
    前記誘電体薄膜の厚さをTs、前記圧電体薄膜の厚さを
    Tzとし、khs=2πTs/λ、khz=2πTz/
    λとしたとき、khzが0.1以上1.0以下であり、
    khsが0.12以上0.45以下であることを特徴と
    する弾性表面波素子。
  2. 【請求項2】 さらに、khsが0.2以上0.35以
    下であることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波
    素子。
  3. 【請求項3】 さらに、khzが0.2以上1.0以下
    であることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素
    子。
  4. 【請求項4】 さらに、khsが0.265以上0.3
    以下であることを特徴とする請求項3に記載の弾性表面
    波素子。
  5. 【請求項5】 さらに、khzが0.16以上0.48
    以下であり、khsが0.295以上0.31以下であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
  6. 【請求項6】 誘電体基板上に形成されSiOで構成
    される誘電体薄膜と、該誘電体薄膜上に形成されZnO
    で構成される圧電体薄膜と、該圧電体薄膜上に形成され
    た櫛形電極とを有する弾性表面波素子であって、 前記櫛形電極の構造に対応する弾性表面波の波長をλ、
    前記誘電体薄膜の厚さをTs、前記圧電体薄膜の厚さを
    Tzとし、khs=2πTs/λ、khz=2πTz/
    λとしたとき、khsが約0.3であり、khzが約
    0.2、約0.45、又は、約1.1であることを特徴
    とする弾性表面波素子。
  7. 【請求項7】 前記弾性表面波の波長λが1〜15μm
    であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれ
    か1項に記載の弾性表面波素子。
  8. 【請求項8】 前記誘電体基板がシリコン基板であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に
    記載の弾性表面波素子。
  9. 【請求項9】 共振器若しくは周波数フィルタとして機
    能することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれ
    か1項に記載の弾性表面波素子。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2005050836A1 (ja) * 2003-11-19 2007-06-14 株式会社村田製作所 端面反射型弾性表面波装置及びその製造方法
JP2013009173A (ja) * 2011-06-24 2013-01-10 Denso Corp 弾性表面波デバイス
CN104078725A (zh) * 2014-07-09 2014-10-01 武汉理工大学 一种介电-压电复合薄膜移相器

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