JP2003219494A - スピーカの磁気回路 - Google Patents

スピーカの磁気回路

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気回路を構成する部材に対して煩雑な加工
を施さなくても軸線方向にずらした2か所に磁気ギャッ
プを設けることができ、薄型化も促進しやすいスピーカ
の磁気回路を提供すること。 【解決手段】 環状のマグネット4上に配設されるプレ
ートが、内周部31aを軸線方向下方へ偏肉させて内周
面を下部磁気ギャップG1に対向させる第1の環状プレ
ート31と、内周部32aを軸線方向上方へ偏肉させて
内周面を上部磁気ギャップG2に対向させる第2の環状
プレート32とからなり、これら第1および第2の環状
プレート31,32の内周部31a,32aよりも径方
向外側の平坦部31b,32bをマグネット4上に積層
した。これにより、両磁気ギャップG1,G2を所定位
置に設けることができると共に、マグネット4上におけ
る2枚の環状プレート31,32の積層体の厚みを薄く
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動電型のスピーカ
の磁気回路に係り、特に、軸線方向に沿う上下2か所に
設けた磁気ギャップ内にボイスコイルを配置させること
により、リニアな振幅領域の拡大を図った2ギャップ1
ボイスコイル構造のスピーカの磁気回路に関する。
【0002】
【従来の技術】磁路の途中に設けられた磁気ギャップ内
にボイスコイルを配置し、このボイスコイルに信号電流
(音声電流)を通電して振動させることにより振動板を
駆動するようにした動電型のスピーカでは、信号電流の
レベルに対してボイスコイルの振幅をリニアに変化させ
ないと音のひずみが発生してしまうので、振動中のボイ
スコイルに作用する磁気ギャップ内の磁束を一定に保っ
ておく必要がある。しかしながら、図3に示すように、
軸線方向に着磁されたマグネット4の磁路が形成される
ヨーク1のポールピース部2と上部プレート3とが磁気
ギャップGを介して対向し、かつ上部プレート3の内周
面の厚さ寸法よりも巻き幅の小さいボイスコイル5を磁
気ギャップG内に配置させているスピーカの場合、ボイ
スコイル5を磁気ギャップGの図示上方もしくは図示下
方まで変位させると、このボイスコイル5に作用する磁
束が急減してしまうので、音のひずみを防止するために
はボイスコイル5の振幅領域を小さく設定しておかねば
ならない。つまり、音量を大きくすると音のひずみが発
生してしまうという不具合があった。なお、ボイスコイ
ル5の巻き幅を上部プレート3の内周面の厚さ寸法より
も大きくすれば、リニアな振幅領域を拡大させることは
可能となるが、この場合、ボイスコイル5の重量が増加
して電気音響変換効率が悪くなってしまう。
【0003】そこで従来、図4に示すように、下部磁気
ギャップG1と上部磁気ギャップG2を軸線方向にずら
した2か所に設け、これら両磁気ギャップG1,G2内
にボイスコイル5を配置させたスピーカが提案されてい
る。同図に示す従来のスピーカの磁気回路は、マグネッ
ト4上に載置される上部プレート3の形状に特徴があ
る。すなわち、この上部プレート3にはポールピース部
2と対向する内周面に環状の凹溝3aが設けてあるの
で、上部プレート3とポールピース部2との間には、凹
溝3aの下方と上方にそれぞれ下部磁気ギャップG1と
上部磁気ギャップG2が形成されている。環状のマグネ
ット4は軸線方向に着磁されているので、このマグネッ
ト4から上部プレート3へ供給される磁束は、下部磁気
ギャップG1および上部磁気ギャップG2を通過してポ
ールピース部2へ向かい、ポールピース部2内を下降し
た磁束がヨーク1の底部プレート部6を経てマグネット
4へ戻る。円筒状のボビン7に巻装されたボイスコイル
5は、非通電時に、下部磁気ギャップG1の上部から上
部磁気ギャップG2の下部に至る高さ位置に配置されて
いる。ボビン7の図示上端部は、円錐状のコーン紙等か
らなる振動板8の内周部に接合されている。また、上部
プレート3上にはネジ9を用いてフレーム10が固定さ
れており、このフレーム10は変形接合部11を介して
振動板8の外周部を支持していると共に、ダンパー12
を介してボビン7を振動自在に支持している。
【0004】このように構成されたスピーカでは、通電
時にボイスコイル5が下部磁気ギャップG1の下方や上
部磁気ギャップG2の上方へ変位したとしても、ボイス
コイル5に作用する磁気回路の磁束をほぼ一定に保つこ
とができるので、ボイスコイル5の重量を不所望に増大
させなくても、リニアな振幅領域を拡大させることが可
能となり、スピーカの性能向上が図れる。なお、かかる
従来例に関連する技術は、例えば実開平1−65592
号公報等に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図4に示す如き磁気回
路を採用したスピーカは、図3に示す如き磁気回路を採
用したスピーカに比べて、効率よくリニアな振幅領域を
拡大させることができるが、上部プレート3の内周部に
環状の凹溝3aを形成するための切削加工がアンダーカ
ット加工となるため、極めて煩雑な加工を伴って加工コ
ストが増大してしまい、加工精度も出しにくいという問
題があった。また、小型のスピーカであっても、軸線方
向に沿う各磁気ギャップG1,G2の長さ(厚み)や両
磁気ギャップG1,G2の間隔としてそれぞれ最低4m
m程度は必要なので、上部プレート3の板厚は最低でも
12mm以上必要であり、このことがスピーカ全体の薄
型化を阻害する要因となっていた。その結果、スピーカ
の磁気回路の高さ寸法に制約がある場合には、厚みを抑
えたマグネット4の使用を余儀なくされ、磁束量の不足
から所望の性能が得にくくなるという問題も起こる。さ
らに、板厚が12mm以上の上部プレート3にフレーム
10を確実に固定するためには複数本のネジ9が必要と
なるので、組立工程で複数回のネジ止め作業を行わねば
ならず、組立作業性が悪いという問題があった。
【0006】本発明は、このような従来技術の実情に鑑
みてなされたもので、その目的は、磁気回路を構成する
部材に対して煩雑な加工を施さなくても軸線方向にずら
した2か所に磁気ギャップを設けることができ、薄型化
も促進しやすいスピーカの磁気回路を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、環状のマグネ
ット上に配設されるプレートとして、内周部をプレス加
工等により軸線方向へ偏肉させてなる2枚の環状プレー
トを積層配置し、一方の環状プレートの内周部で下部磁
気ギャップを包囲し、かつ他方の環状プレートの内周部
で上部磁気ギャップを包囲することとした。これによ
り、マグネット上のプレートに煩雑な加工を施さなくて
も、下部磁気ギャップおよび上部磁気ギャップを所定位
置に設けることができる。また、各環状プレートの偏肉
させた内周部どうしの間に所定の間隔が確保されるの
で、該内周部の径方向外側でマグネット上に積層される
部分については、2枚の環状プレートの積層体の厚みが
薄くなり、磁気回路の薄型化が図れる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明によるスピーカの磁気回路
では、軸線方向に着磁された環状のマグネットと、この
マグネット上に配設されるプレートと、このプレートに
対して筒状の空間を介して対向するヨークとを備え、前
記空間内の軸線方向にずらした上下2か所に上部磁気ギ
ャップと下部磁気ギャップを設けたスピーカの磁気回路
において、前記プレートが、内周部を軸線方向下方へ偏
肉させて内周面を前記下部磁気ギャップに対向させる第
1の環状プレートと、内周部を軸線方向上方へ偏肉させ
て内周面を前記上部磁気ギャップに対向させる第2の環
状プレートとからなり、これら第1および第2の環状プ
レートの偏肉させた内周部よりも径方向外側の部分を前
記マグネット上に積層させる構成とした。
【0009】このように構成されたスピーカの磁気回路
では、マグネット上に第1の環状プレートと第2の環状
プレートを積層状態で配設することによって下部磁気ギ
ャップおよび上部磁気ギャップを設けることができ、各
環状プレートには煩雑な加工を施す必要がないので、リ
ニアな振幅領域の拡大が安価に実現できる。なお、第1
および第2の環状プレートの各内周部を所定方向へ所定
量だけ偏肉させる手法としては、プレス加工が好適であ
る。また、この磁気回路では、各環状プレートの互いに
逆向きに偏肉させた内周部がそれぞれ下部磁気ギャップ
と上部磁気ギャップを包囲し、これら内周部どうしの間
には所定の間隔が確保されるので、これら内周部の径方
向外側でマグネット上に積層される部分については、2
枚の環状プレートの積層体の厚みが薄くなる。それゆ
え、磁気回路全体の薄型化が促進でき、マグネットを厚
くして性能向上を図ることもできる。
【0010】また、このような構成にしてあると、第1
の環状プレートと第2の環状プレートの共通化が図れ、
一方の天地を逆にして組み込めば他方となすことができ
るので、部品の種類を増やす必要がなくなって部品管理
が容易となり、部品コストも低減できる。
【0011】
【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、
図1は本発明の第1実施例に係るスピーカの断面図であ
り、図4と対応する部分には同一符号が付してある。
【0012】図1に示すスピーカの磁気回路では、マグ
ネット4上に配設される部材が、内周部を偏肉させた第
1の環状プレート31および第2の環状プレート32か
らなり、これら第1および第2の環状プレート31,3
2の内周面がそれぞれ下部磁気ギャップG1と上部磁気
ギャップG2に対向させてある。
【0013】第1の環状プレート31の内周部31aは
軸線方向下方へ偏肉させてあり、この内周部31aが下
部磁気ギャップG1を包囲していると共に、第1の環状
プレート31のうち内周部31aよりも径方向外側の平
坦部31bがマグネット4上に載置固定されている。な
お、組立時におけるマグネット4と第1の環状プレート
31の相互の位置合わせは、内周部31aの外縁を基準
にして簡単かつ正確に行うことができる。
【0014】第2の環状プレート32の内周部32aは
軸線方向上方へ偏肉させてあり、この内周部32aが上
部磁気ギャップG2を包囲していると共に、第2の環状
プレート32のうち内周部32aよりも径方向外側の平
坦部32bが、第1の環状プレート31の平坦部31b
上に載置固定されている。ただし、これら第1および第
2の環状プレート31,32は、同一部材の天地を逆に
して組み込んだものであり、鉄等の磁性材からなる円環
状プレートの内周部分をプレス加工により軸線方向へ所
定量偏肉させることによって、平坦部31b,32bに
対して段差を有する内周部31a,32aを比較的簡単
に形成することができる。そして、第1および第2の環
状プレート31,32を図1に示すように積層すると、
内周部31aと内周部32aとの間には所定の間隔が確
保されることとなる。
【0015】上述した磁気回路において、環状のマグネ
ット4は軸線方向に着磁されているので、このマグネッ
ト4から第1および第2の環状プレート31,32へ供
給される磁束のうち、内周部31aへ進んだ磁束は下部
磁気ギャップG1を通過してポールピース部2へと向か
い、内周部32aへ進んだ磁束は上部磁気ギャップG2
を通過してポールピース部2へと向かう。そして、ポー
ルピース部2内を下降した磁束がヨーク1の底部プレー
ト部6を経てマグネット4へ戻るので、閉磁路が形成さ
れることとなる。すなわち、ポールピース部2および底
部プレート部6を有するヨーク1と、第1および第2の
環状プレート31,32と、マグネット4とによって磁
気回路が構成されている。
【0016】図1に示すスピーカのその他の構成につい
て説明すると、円筒状のボビン7に巻装されたボイスコ
イル5は、非通電時に、下部磁気ギャップG1の上部か
ら上部磁気ギャップG2の下部側約半分の高さに至る高
さ位置に配置されている。ボビン7の図示上端部は、円
錐状のコーン紙等からなる振動板8の内周部に接合され
ている。フレーム10は、変形接合部11を介して振動
板8の外周部を支持していると共に、ダンパー12を介
してボビン7を振動自在に支持している。このフレーム
10は第2の環状プレート32の平坦部32b上に固定
されているが、従来品のようにネジ止めされているわけ
ではなく、内周部32aの外縁を基準にしてフレーム1
0を平坦部32b上に位置決めしたうえで、該外縁をか
しめてフレーム10の内縁部を固定するという取付構造
を採用している。したがって、フレーム10をヨーク1
上に固定する際に煩雑なネジ止め作業は不要である。
【0017】このように本実施例に係るスピーカの磁気
回路は、マグネット4上に第1の環状プレート31と第
2の環状プレート32を積層状態で配設することによっ
て、ボイスコイル5が配置される下部磁気ギャップG1
および上部磁気ギャップG2を所定位置に設けるという
ものであるが、各環状プレート31,32に対して煩雑
な加工を施す必要がないので、図4に示す従来例に比べ
て加工コストを大幅に低減できる。また、各環状プレー
ト31,32は同一部材の天地を逆にして組み込んだも
のなので、部品管理が容易となり部品コストも低減でき
る。しかも、フレーム10を第2の環状プレート32上
にかしめ固定できてネジ止めする必要がないため、スピ
ーカの組立コストも低減できる。したがって、本実施例
では、リニアな振幅領域を拡大するために2ギャップ1
ボイスコイル構造を採用しているにも拘らず、安価に製
造できるという優れた利点がある。
【0018】また、本実施例に係るスピーカの磁気回路
は、第1および第2の環状プレート31,32の積層体
の厚さが、内周部31a,32a側ではボイスコイル5
のリニアな振幅領域を制約しない所定の寸法に設定され
ているが、マグネット4上に積層される平坦部31b,
32b側では、内周部31aと内周部32aとの間に形
成されるような間隔を設ける必要がない分だけ薄くなっ
ているので、磁気回路全体の薄型化を容易に促進でき、
例えば、マグネット4を厚くして性能向上を図ることも
できる。また、第1の環状プレート31の内周部31a
の下面がマグネット4の上面よりも下方に位置している
ので、この点でも磁気回路全体の薄型化が図られるもの
となっている。
【0019】図2は本発明の第2実施例に係るスピーカ
の断面図であり、図1と対応する部分には同一符号が付
してある。
【0020】図2に示す第2実施例のように、各環状プ
レート31,32を、その内周部31a,32aと平坦
部31b,32bとの間に傾斜部31c,32cを設け
た形状に設定しておけば、内周部31a,32aを形成
するためのプレス加工が極めて容易になる。この場合、
前述した第1実施例のように、フレーム10を内周部3
2aの外縁でかしめ固定することはできないが、予め、
平坦部31b,32bの片面の外周部に例えば深さ0.
5mm程度の凹段部を設けておけば、両平坦部31b,
32bを積層させた状態で、これら凹段部が対向して開
口幅1mm程度のスリットSが形成されることになるの
で、このスリットS内にフレーム10の下端部を挿入し
て接着固定することができる。したがって、フレーム1
0をネジ止め固定する場合に比べて、組立作業性は良好
となる。
【0021】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0022】環状のマグネット上に配設されるプレート
として、内周部をプレス加工等により軸線方向へ偏肉さ
せてなる2枚の環状プレートを積層配置し、一方の環状
プレートの内周部で下部磁気ギャップを包囲し、かつ他
方の環状プレートの内周部で上部磁気ギャップを包囲す
るようにしたので、マグネット上のプレートに煩雑な加
工を施さなくても、下部磁気ギャップおよび上部磁気ギ
ャップを所定位置に設けることができ、リニアな振幅領
域の拡大が安価に実現できる。その際、第1の環状プレ
ートと第2の環状プレートを共通化しておけば、部品管
理が容易となり部品コストも低減できる。また、各環状
プレートの偏肉させた内周部どうしの間に所定の間隔が
確保されるので、該内周部の径方向外側でマグネット上
に積層される部分については、2枚の環状プレートの積
層体の厚みが薄くなり、磁気回路全体の薄型化を促進で
き、マグネットを厚くして性能向上を図ることもでき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るスピーカの断面図で
ある。
【図2】本発明の第2実施例に係るスピーカの断面図で
ある。
【図3】スピーカの磁気回路の一例を示す要部説明図で
ある。
【図4】従来例に係るスピーカの断面図である。
【符号の説明】
1 ヨーク 2 ポールピース部 5 ボイスコイル 7 ボビン 8 振動板 10 フレーム 31 第1の環状プレート 31a,32a 内周部 31b,32b 平坦部 31c,32c 傾斜部 32 第2の環状プレート G1 下部磁気ギャップ G2 上部磁気ギャップ S スリット

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸線方向に着磁された環状のマグネット
    と、このマグネット上に配設されるプレートと、このプ
    レートに対して筒状の空間を介して対向するヨークとを
    備え、前記空間内の軸線方向にずらした上下2か所に上
    部磁気ギャップと下部磁気ギャップを設けたスピーカの
    磁気回路において、 前記プレートが、内周部を軸線方向下方へ偏肉させて内
    周面を前記下部磁気ギャップに対向させる第1の環状プ
    レートと、内周部を軸線方向上方へ偏肉させて内周面を
    前記上部磁気ギャップに対向させる第2の環状プレート
    とからなり、これら第1および第2の環状プレートの偏
    肉させた内周部よりも径方向外側の部分を前記マグネッ
    ト上に積層させたことを特徴とするスピーカの磁気回
    路。
  2. 【請求項2】 請求項1の記載において、前記第1の環
    状プレートと前記第2の環状プレートとが同一部材の天
    地を逆にして組み込んだものであることを特徴とするス
    ピーカの磁気回路。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の記載において、前記
    第1および第2の環状プレートの各内周部がプレス加工
    により偏肉されたものであることを特徴とするスピーカ
    の磁気回路。
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