JP2003208892A - 亜鉛アルカリ電池 - Google Patents

亜鉛アルカリ電池

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JP2003208892A JP2002006570A JP2002006570A JP2003208892A JP 2003208892 A JP2003208892 A JP 2003208892A JP 2002006570 A JP2002006570 A JP 2002006570A JP 2002006570 A JP2002006570 A JP 2002006570A JP 2003208892 A JP2003208892 A JP 2003208892A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】成形合剤強度を向上させると共に電解液吸収量
を減少させるこなく、製品品質上において信頼性の高い
アルカリ電池を提供する。 【解決手段】アルカリ電池の正極合剤として、オキシ水
酸化ニッケルと、導電剤である黒鉛と、アルカリ電解液
にバインダーとしてメルトフローレートが25〜200
g/10minであるポリオレフイン系樹脂を添加した
ものを用いることにより、中負荷放電特性を損なわず、
正極成形合剤の強度を向上でき、電池内電解液吸液量を
減少させることなく、信頼性の高いアルカリ電池を提供
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は亜鉛アルカリ電池に
関し、特に重負荷放電特性を損なわず、正極合剤強度を
改善した亜鉛アルカリ電池に関する。
【0002】
【従来の技術】亜鉛アルカリ電池は、電解二酸化マンガ
ンなどを正極活物質とし、これに導電剤である炭素粒子
を混合し、所定の形状に成形した正極合剤と、亜鉛ペー
ストからなる負極材料と、これらを多孔質材料からなっ
ているセパレータを介して金属缶に収容配置し、電解液
を注液して構成されている。この正極合剤は、電池組み
立て時に加わる力によって破壊されないよう、一定の強
度を有することが求められている。
【0003】従来、成形合剤の強度を上げるために、正
極合剤は、正極活物質である電解二酸化マンガンの粒径
を微細化したり、また導電剤の炭素粒子である黒鉛とし
て、バインダーとしての効果もある膨脹化黒鉛を用いた
り、あるいは配合時の電解液である水酸化カリウム水溶
液量を多くすることにより、その解決が図られてきた。
しかしながら、電解二酸化マンガンを微細化すると成形
強度は向上するものの、成形密度が上がらなくなるため
活物質量を増やすことは難しい。また,膨脹化黒鉛は人
造黒鉛などに比ベコストが高く、その添加量を考える
と、コスト競争の激しいアルカリ電池においては最適な
選択とは言い難い。また、配合時の水酸化カリウム水溶
液量を多くすると成形合剤強度は向上するものの、合剤
成形時に成形ダイと顆粒合剤との摩擦係数が上がり、成
形機の摺動時に異音が発生し、成形ダイの摩耗が著しく
早くなるという問題がある。
【0004】以上のことから、正極合剤の強度を向上す
るために、バインダーとして高分子有機化合物が用いら
れるようになってきた。ところで、正極合剤に添加する
高分子有機化合物が、疎水性であると、電解液が充分正
極合剤に浸透せず、内部抵抗が上昇して重負荷放電特性
などの電池特性を悪化させる。そのために、バインダー
としては親水性のポリマーを添加することが行われてい
る。具体的には親水性バインダーとしてポリアクリル酸
の単独添加、および疎水性バインダーとしてポリオレフ
イン系のポリエチレン、ポリプロピレン等を親水性バイ
ンダーに部分添加したものが用いられてきた。しかしな
がら、親水性バインダーの単独添加においては、成形合
剤の強度は上がるものの、正極合剤成形機の成形ダイ内
側と下パンチ外側とのクリアランスに顆粒合剤が詰ま
り、成形機の摺動性が悪くなるという問題が生じた。ま
た、親水性バインダーに疎水性バインダーを適宜添加し
て成形した合剤は、成形合剤の強度はそれほど上がら
ず、作業工程が複雑化する欠点があった。
【0005】一方、従来のMnO正極合剤に代わっ
て、近年オキシ水酸化ニッケルを正極活物質とする亜鉛
アルカリ電池が検討されている。この正極活物質は、高
容量で、貯蔵時の容量維持率に優れており、高率放電特
性に優れ、かつ単位重量当たりのエネルギー密度が高い
という特徴を有している。ところで、MnO粒子の平
均粒径は40μm程度であるのに対して、このオキシ水
酸化ニッケル粒子は、その平均粒径がおよそ10μm
と、極めて微細で、導電剤などの他の正極材料との混合
において、従来の正極活物質のMnOよりさらに均一
な分散混合が困難となっており、成形した正極合剤の強
度においてもさらに改善が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来、アルカリ電池の
正極合剤工程において、成形合剤の合剤崩れによる工程
不良の増加および、その後の工程の正極缶への合剤圧
入、合剤充填工程において合剤が崩れることにより、正
極容量の減少および、セパレータ挿入時のセパレータの
浮きが発生し、製造工程上および製品品質上信頼性を欠
くという問題が生じている。特に、大きな合剤の割れ、
欠けが生じて正極缶底部に溜まると、電池生産後に内部
シヨート発生率が高くなることからも、成形合剤強度の
向上は急務となってきている。
【0007】本発明は上記状況に対処してなされたもの
で、その課題は、電解液吸収量を減少させることなく成
形合剤強度を向上させることによって、信頼性の高いア
ルカリ電池を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記オキ
シ水酸化ニッケルを正極活物質として用いたアルカリ電
池において、バインダーとして、流動性のよいポリマー
を選択することによって、正極合剤成形体の保形性が改
善され、上記課題を解決することができることに着目し
て本発明を完成したものである。
【0009】第1の本発明は、オキシ水酸化ニッケルか
らなる正極活物質、導電剤、及びアルカリ電解液に、メ
ルトフローレートが25〜200g/10minである
ポリオレフィン系樹脂をバインダーとして添加すること
を特徴とする正極合剤である。
【0010】また、第2の本発明は、オキシ水酸化ニッ
ケルからなる正極活物質、導電剤、及びアルカリ電解液
に、メルトフローレートが25〜100g/10min
であるポリオレフィン系樹脂をバインダーとして添加し
たことを特徴とする正極合剤である。
【0011】上記本発明において、ポリオレフィン系樹
脂としては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンであ
ることが好ましい。また、これらのポリオレフィン系樹
脂は、水酸基などの親水性基を導入するなどにより変性
されたものであってもよい。
【0012】上記本発明において、ポリオレフィン系樹
脂が、平均粒径5〜50μmの粒子であることが好まし
く、このポリオレフィン系樹脂は、オキシ水酸化ニッケ
ルからなる正極活物質に対して、500〜5000pp
m添加されていることが好ましい。
【0013】上基本発明において、正極活物質であるオ
キシ水酸化ニッケルとしては、その粒子表面にコバルト
化合物、金属コバルト、もしくは金属ニッケルによって
被覆されているものであることが、内部電気抵抗を上昇
させないために望ましい。このコバルト化合物として
は、オキシ水酸化コバルト、三酸化二コバルト、一酸化
コバルト、水酸化コバルト、金属ニッケル、金属コバル
トより選ばれた少なくとも一つの物質であることが好ま
しい。
【0014】本発明において正極合剤のバインダーとし
て用いることのできるポリマーの物性の指標であるメル
トフローレートとは、溶液状態にあるポリマーの流動性
を表す最も普及している尺度の一つで、溶液指数ともい
われており、JIS K6760により規格化されてい
る測定方法である。これは、押し出し式プラストメータ
ーで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノ
ズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10
minの単位で表した指数であり、一般にメルトフロー
レートの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良
好であるが、引張強さ、耐ストレスクラッキング性が低
下するとされている。通常、プラスチック等の射出成形
品においては、メルトフローレートが20g/10mi
n以下のものが用いられており、メルトフローレートは
低いもの程、重合度が高く、伸び易い特徴がある。
【0015】このメルトフローレートの値が、25〜2
00g/10minの範囲のものを用いることによって
正極合剤の保形性が改善され信頼性の高い亜鉛アルカリ
電池が実現できる。メルトフローレートが、25g/1
0minを下回ると、疎水性ポリマーの重合度が上昇
し、伸びが増加するとともに、強度も上昇する。そし
て、このようなポリマーをバインダーとして用いた場
合、流動性が低下して、正極合剤に添加しても、オキシ
水酸化ニッケル粒子間にポリオレフィン粒子が浸透しに
くくなり、結着力が低下して、正極合剤成形中の歩留ま
りが低下する。一方、メルトフローレートを200g/
10minを上回った場合、重合度低下をきたし、伸び
が減少するとともにポリマーの強度が低下する。そし
て、このようなポリマーをバインダーとして用いた場
合、オキシ水酸化ニッケル粒子間にポリオレフィン粒子
が浸透しやすくなるものの、ポリオレフィン粒子自体の
強度が低下し、また結着性が低下するため、合剤攪拌
時、及びコンパクターによる正極合剤粒子造粒時に、正
極合剤粒子の破壊が生じて歩留まりを低下させる。従っ
て、本発明においては、ポリマーとして、メルトフロー
レートが25〜200g/10minの範囲、より好ま
しくは、50〜200g/10minの範囲、さらに好
ましくは、70〜200g/10minの範囲のものを
使用する。
【0016】また、ポリオレフイン系樹脂の平均粒径と
しては、5〜20μmが望ましい。その理由は、平均粒
径が20μmより大きくなると、正極活物質のオキシ水
酸化ニッケルの平均粒径より大きくなり、一次擬集粒子
同士の導電性が低下し、内部抵抗が増大して放電性能の
低下を招くことになる。また、5μmより小さい場合に
は、一次擬集粒子の時点でオキシ水酸化ニッケル同士の
十分な結着カが得られないため、十分な強度が得られな
い。また、添加量としては、オキシ水酸化ニッケルに対
して500〜5000ppmの範囲が適切である。その
理由は、これ以上の添加でも成形合剤の圧漬強度はそれ
程上からず、また電解液吸液量が大きく減少することか
ら、電池特性を低下させるためである。一方、添加量が
上記範囲を下回った場合、十分な結着力が得られず、成
形した正極合剤の強度が得られないからである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下に示
す。
【0018】[電池構造]本発明を適用することのでき
る亜鉛アルカリ電池の1例について、図1を用いて説明
する。図1において、1は正極端子を兼ねる有底円筒型
の正極缶であり、この正極缶1内には中空円筒状に加圧
成形した正極合剤2が充填されている。また、正極合剤
2の中空部にはビニロン及びポリビニルアルコール繊維
等の不織布からなる有底円筒状のセパレータ3を介して
負極ゲル亜鉛4が充填されている。負極ゲル亜鉛4内に
は黄銅製の集電棒5を配置し、その上端部を負極ゲル亜
鉛4に突出するように装着されている。集電棒5の突出
部外周面および正極缶1の上部内周面には二重環状のポ
リアミド樹脂からなるパッキング6が配設されている。
また,パッキング6の二重環状部の間にはリング状の金
属板7が配設され、かつ金属板7には負極端子を兼ねる
帽子形のメタルボトム8が集電棒5の頭部に当接するよ
うに配設されている。そして、正極缶1の開口縁を内方
に屈曲させることによりパッキング6およびメタルボト
ム8で正極缶1内を密封口している。
【0019】[正極]本発明の正極は、発電要素である
正極活物質と、正極活物質の電気伝導性を向上させるた
めの炭素粒子などの導電材、及びこれらの成分を成形し
た成形体の保形性を改善するためのバインダー及び電解
液からなっており、これらが混合され所定形状に成形さ
れて正極として構成される。本発明で用いる正極活物質
であるオキシ水酸化ニッケルは、NiOOHで表される
化合物であり、その平均粒径としては10μm程度のも
のが最も優れた電池特性を有するため好ましい。このオ
キシ水酸化ニッケルは、次式に示す放電反応によって発
電が行われる。 NiOOH + HO + e → Ni(OH)
+ OH
【0020】本発明のオキシ水酸化ニッケル化合物は、
上記純オキシ水酸化ニッケルでもよいし、また、亜鉛お
よびコバルト単独もしくはこれらを共晶させて用いるこ
ともできる。この共晶オキシ水酸化ニッケルは、その結
晶構造変化を少なくできるので好ましい。特に、亜鉛を
共晶することによって、オキシ水酸化ニッケルの結晶性
を改善することができるため、酸化還元時の結晶膨潤す
なわち体積変化を抑制することができ、低電解液量の電
池設計に大きく貢献する。さらに、オキシ水酸化ニッケ
ル極に亜鉛極を組み合わせて成るニッケル亜鉛電池の場
合、電解液に酸化亜鉛を飽和溶解させて亜鉛極の自己放
電を抑制する手段がとられるが、無共晶のオキシ水酸化
ニッケルは、貯蔵中に電解液中の亜鉛イオンを吸収して
しまうため、その効果が低減してしまう。この場合、最
初から亜鉛をドープしたオキシ水酸化ニッケルを用いる
ことによってこの影響を取り除くことができる。また、
コバルトを共晶することによって、オキシ水酸化ニッケ
ルの放電利用率を改善することができる。また、亜鉛、
コバルトを併せて共晶することによって酸素過電圧を大
きくすることができるので正極における自己放電特性を
改善することができる。
【0021】また、オキシ水酸化ニッケルに共晶させる
亜鉛もしくはコバルトの量としては、1〜10%の範囲
が好ましく、3〜5%の範囲が特に好ましい。亜鉛また
はコバルトの量がこの範囲を下回ると、条件によっては
正極が膨潤したり、放電利用率が低下したり、正・負極
の自己放電が大きくなるため、放電容量が低減する。ま
た、この範囲を上回ると、相対的にニッケル純度が低下
し高容量化に適さなくなる。
【0022】また、水酸化ニッケル表面に、コバルト化
合物、より好ましくは高導電性の高次コバルト化合物を
被着させた複合オキシ水酸化物とすることが、オキシ水
酸化ニッケル粒子同士の電子導電性を確保する理由で好
ましい。前記表面に被着するコバルト化合物としては、
出発原料として例えば、水酸化コバルト(Co(OH)
)、一酸化コバルト(CoO)、三酸化二コバルト
(Co)、などをあげることができ、これを酸化
処理してオキシ水酸化コバルト(CoOOH)、四酸化
三コバルト(Co)などの高導電性高次コバルト
酸化物に転化させる。また、コバルト化合物に代えて、
金属コバルト粒子、あるいは金属ニッケル粒子を用いて
も差し支えない。
【0023】(正極の成形)本発明のオキシ水酸化ニッ
ケル粒子は、以下の工程によって正極に成形される。 1)正極合剤成分の混合 正極合剤は、所定の平均粒径を有する正極活物質に、正
極合剤添加物である導電材、ポリオレフィン系樹脂であ
るバインダー、潤滑剤および電解液などを混合して得ら
れる。この正極合剤の成分である導電材は、正極合剤中
の内部電気抵抗を低減するために用いるものであり、一
般にグラファイトが用いられる。また、バインダーは、
前述のように正極合剤を成形する際に保形性を高め、成
形作業中および電池内で保形性を維持するために用いら
れる。また、潤滑剤は、正極合剤を成形するにあたっ
て、金型を用いて成形を行うが、正極合剤成形体と金型
との滑りを向上させ、製造歩留まりを改善するために用
いられる。この潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ス
テアリン酸カルシウム、エチレンビスステアラマイドな
どが用いられる。また、電解液は、正極合剤中のイオン
導電性を高めるためと、成形性を高めるために用いられ
る。この電解液は、電池の正極と負極の間のイオン導電
を維持するために用いられる電解液と同じものを用いる
ことが好ましい。好ましい電解液は40%KOH水溶液
である。これらの正極合剤成分の配合比率は、質量比で
正極活物質:導電剤:バインダ:潤滑剤:電解液とし
て、90〜92:4〜6:0.05〜0.5:0.05
〜0.30:4〜6の配合比が好ましい。これらの成分
は、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサーなどの攪
拌装置で混合される。
【0024】2)ローラコンパクション処理 上記工程において配合された正極合剤は、次いで、ロー
ラコンパクタによって圧縮加圧され、造粒のために充填
密度を高められる。このローラコンパクタは、双ロール
間に正極合剤を供給し、加圧して充填密度を高めるもの
であり、圧縮応力は、印加力をローラ幅で割った0.5
×10〜5×10N/cmの範囲のものが好まし
く、1.5×10〜3.5×10N/cmの範囲が
より好ましい。このローラコンパクタは、半径の2乗お
よびロール幅に比例して処理量を向上させることができ
る。
【0025】3)グラニュレーション処理 ローラコンパクション処理された正極合剤は、圧縮塊状
となっている。これを用いて成形体を作製するためには
一旦粒状に造粒する必要がある。そのためにロール表面
に互いに嵌合する突起を有する双ロールを用いたグラニ
ュレータによるグラニュレーション処理を行う。圧縮塊
状に成形された正極合剤はこのグラニュレータに通すこ
とによって、粒状に破砕される。得られる粒子の径は、
10数μm〜1mm程度のものである。
【0026】4)分級処理 上記工程で得られる正極合剤粒子はそのサイズによって
分級される。本発明においては、200〜800μmの
範囲の粒子とすることによって、充填密度の高い正極合
剤成形体とすることができる。200μm未満の造粒粉
は、金型成形する際、造粒粉の計量に時間が掛かり不適
である。また、800μmを越える造粒粉は、金型成形
する際、成形体の重量がばらつくため不適である。この
分級処理によって篩分された径が大きな粒子は再度グラ
ニュレータ処理に供給して再利用され、また、形の小さ
な粒子は、ローラコンパクタ処理工程に供給され再利用
されるといった造粒システムが、量産設備の中で構築可
能である。
【0027】5)成形 上記工程で造粒された正極合剤粒子は、次いで、金型を
用いて正極成形体に成形される。インサイドアウト型の
正極合剤は、中空円筒状をしており、中央のマンドレル
を有し、所要の体積を有する円筒形状の金型中に上記正
極合剤粒子を充填して、雄型を圧入することにより成形
が行われる。このときの成形圧力は、0.5×10
9.8×10Paの圧力が好ましい。成形圧力が上記
範囲を下回った場合、必要な正極合剤の充填密度が得ら
れず、また、粒子同士の接触も確保しにくくなるので、
電池とした場合、所定の放電容量が得られない。一方、
成形圧力が上記範囲を上回った場合、正極合剤中に電解
液が浸透しにくくなり、その利用率を下げてしまう。
【0028】[負極]本発明で用いられる負極材料は、
負極活物質である亜鉛合金を主成分とする負極材料であ
り、公知の二酸化マンガン−亜鉛一次電池で使用されて
いる亜鉛ゲルを用いることができる。この負極材料は、
ゲル状であることが取り扱いの点で望ましい。負極をゲ
ル状とするためには、電解液と増粘剤から作製されるゲ
ル状電解液に負極活物質の亜鉛合金を分散させることに
より容易にゲル状物にすることができる。
【0029】本発明において用いる亜鉛合金は、無汞化
亜鉛合金として知られている水銀及び鉛を含まない亜鉛
合金を用いることができる。具体的には、インジウム
0.06質量%、ビスマス0.014質量%、アルミニ
ウム0.0035質量%を含む亜鉛合金が、水素ガス発
生の抑制効果があり望ましい。特にインジウム、ビスマ
スは放電性能を向上させるため望ましい。負極作用物質
として純亜鉛ではなく亜鉛合金を用いる理由は、アルカ
リ性電解液中での自己溶解速度を遅くし、密閉系の電池
製品とした場合の電池内部での水素ガス発生を抑制し
て、漏液などによる事故を防止するためである。
【0030】また、亜鉛合金の形状は、表面積を大きく
して大電流放電に対応できるように粉末状とすることが
望ましい。本発明において好ましい亜鉛合金の平均粒径
は、100〜350μmの範囲が好ましい。亜鉛合金の
平均粒径が上記範囲を上回った場合、表面積が比較的小
さくなり大電流放電に対応することは困難になる。ま
た、平均粒径が上記範囲を下回った場合、電池組み立て
時の取り扱いが難しく、電解液及びゲル化剤と均一に混
合することが困難になるばかりでなく、表面が活性であ
ることから酸化されやすく不安定である。
【0031】また、本発明において用いられる増粘剤と
しては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、C
MC、アルギン酸などを用いることができる。特に、ポ
リアクリル酸ナトリウムが、強アルカリ水溶液に対する
吸水倍率に優れているため好ましい。
【0032】[電解液]本発明で用いられるアルカリ電
解液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リ
チウムなどのアルカリ塩を溶質として用いた水溶液が好
ましく、特に、水酸化カリウムを用いることが、好まし
い。また、本発明においては、上記水酸化カリウムなど
のアルカリ塩を水に溶解して電解液とするが、さらに電
解液中に亜鉛化合物を添加することが望ましい。かかる
亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛などの化合
物が挙げられるが、特に酸化亜鉛が好ましい。
【0033】電解液として少なくとも亜鉛化合物を含有
するアルカリ性水溶液を用いるのは、アルカリ性水溶液
中での亜鉛合金の自己溶解が酸性系の電解液と比較して
格段に少なく、更には亜鉛合金のアルカリ性電解液中で
の自己溶解を亜鉛化合物、例えば酸化亜鉛を溶解して亜
鉛イオンを予め存在させておくことにより更に抑制する
ためである。
【0034】
【実施例】以下本発明を実施例により詳細に説明する。 (実施例1)2Mの硫酸ニッケル水溶液、0.158M
の硫酸亜鉛水溶液、0.035Mの硫酸コバルト水溶液
に対して、25%アンモニア水溶液を8体積%一定の割
合で供給しつつ、pHを11.5〜11.9程度に制御
しながら、6.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を連続供
給し、1日間静置した後、スラリーをオーバーフロー採
取した。この時の温度は37℃に維持した。得られたス
ラリーを脱水・水洗を繰り返して洗浄水のpHが7〜8
になった時点で脱水・乾燥して終了とした。次いで、得
られた5%Zn、1%Coを共晶した水酸化ニッケル粒
子100質量部に、大気雰囲気で7質量部のCo(O
H)を加え攪拌しながら、10NNaOHを15質量
部噴霧し、マイクロウェーブによる加熱によって表面に
コバルト高次酸化物を配した複合水酸化ニッケル粒子を
作製し、更にこの系に次亜塩素酸ナトリウムを加えて酸
化を進め、最後に水洗・乾燥して、表面にコバルト高次
酸化物層を形成したオキシ水酸化ニッケルを作製した。
こうして得られた平均粒径10μmのオキシ水酸化ニッ
ケル120質量部に、導電剤の黒鉛7.7質量部を加
え、続いてJIS K6760測定法によるメルトフロ
ーレートが25g/10minであり、かつ平均粒径が
5μmのポリエチレンをオキシ水酸化ニッケルに対して
500ppm加えてから、乾式攪拌を10分間、回転数
300rpmで行った後、練液である40質量%の水酸
化カリウム水溶液6.2質量部を加え、湿式攪拌を回転
数600rpmで10分間行って攪拌合剤とした。続い
てこの攪拌合剤を圧縮強度200kg/mmで圧粉を
行い、薄片状態のものを作製した。さらに、分級機を用
いて薄片状態のものを破砕することにより顆粒合剤を製
作した。
【0035】その後、一定重量、一定寸法の正極合剤を
成形し、正極缶内部に挿入する。続いて、正極合剤と正
極缶との密着を図るために再加圧される。このようにし
て図1に示すJIS規格LR6形(単3形)のアルカリ
電池を組立てた。
【0036】(実施例2〜26)使用するポリエチレン
のメルトフローレート、平均粒径、及び添加量をそれぞ
れ表1に示すものとしたこと以外は実施例1と同様にし
てJIS規格LR6形(単3形)のアルカリ電池を組立
てた。
【0037】(比較例1)正極合剤中にポリエチレンを
添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にJIS規
格LR6形(単3形)のアルカリ電池を組立てた.
【0038】(比較例2〜7)使用するポリエチレンの
メルトフローレート、平均粒径、及び添加量をそれぞれ
表1に示すものとしたこと以外は実施例1と同様にして
JIS規格LR6形(単3形)のアルカリ電池を組立て
た。
【0039】以上のようにして組立てたLR6形アルカ
リ電池について、正極成形合剤の圧潰強度、電池内電解
液吸液量を測定した。また、放電性能として10Ω定抵
抗連続放電持続時間(0.9Vまで、n=50個の平均
値)を調べた。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】表1に示すように、メルトフローレート値
が25〜200g/10minと高い方が、正極合剤強
度が向上する。
【0042】なお、ポリオレフイン系樹脂の平均粒径と
しては、5〜20μmが望ましい。その理由は、平均粒
径が20μmより大きくなると、一般的にアルカリ電池
に用いられているオキシ水酸化ニッケルの平均粒径より
大きくなり、一次凝集粒子同士の導電性が低下し、内部
抵抗が増大して10Ω連続放電性能の低下を招く。さら
に、本比較例には示していないが、高温貯蔵後に内部抵
抗が大きく増大することが確認されている。逆に、5μ
mより小さい場合には、一次凝集粒子の時点でオキシ水
酸化ニッケル同士の十分な結着カが得られないため、十
分な強度が得られない。また、添加量としては、オキシ
水酸化ニッケルに対して500〜5000ppmが適切
である。その理由は、これ以上の添加でも成形合剤の圧
潰強度はそれ程上がらず、また電解液吸液量が大きく滅
少することから、添加量とコストの関係から上記添加量
の範囲で適切であると判断した。
【0043】以上のことから、メルトフローレート値が
25〜200g/10minの範囲にあり、かつ平均粒
径が5〜20μmを満たすポリエチレンを用い、添加量
をオキシ水酸化ニッケルに対して500〜5000pp
mとした場合に効果がでることが確認できた。
【0044】上記本実施例では、ポリオレフイン系熱可
塑性樹脂としてポリエチレンを用いたが、メルトフロー
レートおよび平均粒径が上記特許請求の範囲にあるポリ
プロピレンなどのポリオレフイン系熱可塑性樹脂を用い
ても同様の結果が確認できた。
【0045】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
中負荷放電特性を損なわず、正極成形合剤の強度を向上
でき、電池内電解液吸液量を減少させることなく、製品
品質上、信頼性の高いアルカリ電池を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるアルカリ電池の断面
図。
【符号の説明】
1…正極缶 2…正極合剤 3…セパレータ 4…負極ゲル亜鉛 5…集電棒 6…パツキング 7…金属板 8…メタルボトム

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オキシ水酸化ニッケルからなる正極活物
    質、導電剤、及びアルカリ電解液に、メルトフローレー
    トが25〜200g/10minであるポリオレフィン
    系樹脂をバインダーとして添加した正極合剤を用いたこ
    とを特徴とする亜鉛アルカリ電池。
  2. 【請求項2】前記バインダーとして、メルトフローレー
    トが50〜200g/10minのポリオレフィン系樹
    脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛アル
    カリ電池。
  3. 【請求項3】前記バインダーとして、メルトフローレー
    トが70〜200g/10minのポリオレフィン系樹
    脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛アル
    カリ電池。
  4. 【請求項4】上記ポリオレフィン系樹脂が、平均粒径5
    〜20μmの粒子であることを特徴とする請求項1に記
    載の亜鉛アルカリ電池。
  5. 【請求項5】上記ポリオレフィン系樹脂が、正極活物質
    に対して、500〜5000ppmの割合で添加されて
    いることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれ
    かに記載の亜鉛アルカリ電池。
  6. 【請求項6】オキシ水酸化ニッケルからなる正極活物
    質、導電剤、及びアルカリ電解液に、メルトフローレー
    トが25〜200g/10minであるポリオレフィン
    系樹脂をバインダーとして添加したことを特徴とする正
    極合剤。
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