JP4255762B2 - 亜鉛アルカリ電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は亜鉛アルカリ電池に係わり、特に亜鉛アルカリ電池に要求されている低温重負荷放電特性、高温中における過放電特性を改善した高性能な亜鉛アルカリ電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
亜鉛アルカリ電池は、正極活物質を中空円筒状の正極成形体に成形して正極を兼ねる容器に収容し、この正極成形体の中心部にセパレータを介してゲル状負極が収容されている。近年特にこのアルカリ電池において、容量を向上させることが要求されており、そのために各種の試みがなされている。例えば、正極合剤に含まれる潤滑剤を兼ねる導電材料である黒鉛の含有量を削減することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、昨今の携帯電話、デジタルスチルカメラ等のデジタルモバイル機器において、様々な機能が追加されて、重負荷での使用が多くなってきている。また最近では低温環境で機器を使用する場合が多くなってきている。しかしながら、低温環境での使用においては、電池内部抵抗が高くなり、重負荷特性が大幅に低下する傾向にある。このため、亜鉛アルカリ電池の特性も必然と低温重負荷放電特性の改善が要求されてきている。しかしながら、低温重負荷放電性能を改善するために、正負極利用率の改善、正負極活物質の充填量増加等の検討はされてきたものの、大幅な性能改善には至っていないのが現状である。
さらに、前記特許文献1に記載の方法によっても、このような特性改善の要求に対しては、十分満足する結果が得られていない。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−007292号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の上記問題点を解決すべくなされたもので、高温中における過放電特性を損なうことなく、低温重負荷放電特性を改善し、高容量を実現できる電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極端子と容器を兼ねる有底円筒状の正極缶と、前記正極缶内に配置された中空円筒状の、コバルト化合物でコーティングしたオキシ水酸化ニッケルを含有する正極合剤からなる正極と、有底円筒状のセパレータを介して、前記正極合剤の中空部に充填されたゲル状亜鉛負極を備える亜鉛アルカリ電池において、前記正負極における電解液量が平衡状態に達した時のゲル状亜鉛負極中の亜鉛粉量に対する水分率が、14〜18%であることを特徴とする亜鉛アルカリ電池である。
【0007】
前記本発明において、前記コバルト化合物が、オキシ水酸化コバルト、三酸化二コバルト、一酸化コバルト、水酸化コバルト、金属ニッケル、金属コバルトより選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、前述の通り、コバルト化合物などでコーティングしたオキシ水酸化ニッケル系化合物を含有する正極活物質を用いた正極と、ゲル状亜鉛負極からなるアルカリ電池であり、この正負極における電解液量が平衡状態に達した時のゲル状亜鉛負極中の亜鉛粉量に対する水分率が、14〜18%であることを特徴とするものである。
上記平衡状態は、電池の電圧が1.700〜1.740Vの範囲で安定している状態で判断することができる。
【0009】
この本発明において、前記水分率が、14%を下回った場合、低温重負荷放電特性が劣化する。一方、水分率が18%を上回った場合、過放電によるガス発生が著しく、実用的な電池とならない。
【0010】
前記本発明において、正負極における電解液量が平衡状態に達しているか否かの判定は、例えば、電池を50〜60℃で2日間エージングを行い、その後室温にて4日間エージングを行うなどの条件でエージングし、開路電圧の変化が見られなくなった時点をもって平衡状態と判断することができる。
【0011】
水分率の測定方法としては、種々の方法が知られているが、例えば次のような方法を採用することができる。
すなわち、(1)まず石英ガラス製のような、蓋付きの秤量瓶を用意し、これを107℃±2℃に保った恒温槽内で、この秤量瓶の蓋をずらせた状態で2時間乾燥させる。(2)次いで、この秤量瓶の蓋をして、デシケータ内に載置して、室温まで放冷し、この秤量瓶の質量を、精秤する。この質量をAとする。(3)この秤量瓶に水分率を測定する試料約5gを入れ、これを精秤する。この質量をBとする。(4)次いで、107℃±2℃に保った恒温槽内に、試料の入った秤量瓶の蓋をずらせた状態で、2時間乾燥させる。(5)次いで、蓋をしてデシケータ内に載置して、室温まで放冷し、この秤量瓶の質量を測定する。この質量をCとする。(6)上記工程によってえられた、質量の値から、次式によって水分率を算出する。
水分率(%) = (B−C)/(B−A)×100
【0012】
[電池材料]
以下、本発明の正極材料、負極材料、及び電解液について詳細に説明する。
【0013】
(正極材料)
本発明で用いる正極活物質は、オキシ水酸化ニッケル粒子を主体とし、その表面にコバルト化合物を被覆したものである。
【0014】
前記表面に被着するコバルト化合物としては、例えば、水酸化コバルト(Co(OH)2)、一酸化コバルト(CoO)、三酸化二コバルト(Co2O3)、などをあげることができ、さらにこれら酸化処理して得られるオキシ水酸化コバルト(CoOOH)、四酸化三コバルト(Co3O4)などの高導電性高次コバルト酸化物などを用いることもできる。また、金属コバルトおよび金属ニッケルを用いることもできる。
このように、水酸化ニッケル表面に、さらにコバルト化合物等を被着させることによってオキシ水酸化ニッケル粒子同士の電子導電性を確保することができる。
【0015】
上記本実施の形態の正極活物質は、例えば次の方法によって製造することができる。
すなわち、亜鉛及びコバルトをドープした水酸化ニッケル粒子に、水酸化コバルトを添加し、大気雰囲気中で攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を噴霧する。引き続きマイクロウェーブ加熱を施すことにより水酸化ニッケル表面にコバルト高次酸化物の層が形成された複合水酸化ニッケル粒子が生成する。さらに、この反応系に次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を添加して酸化を進め、コバルト高次酸化物が被着した複合オキシ水酸化ニッケルを製造することができる。これによって導電性が極めて優れた正極活物質を得ることができる。
【0016】
かかる際に用いるコバルト粒子あるいはコバルト化合物粒子は、比表面積が2.5〜30m2/gである水酸化コバルトを用いることが好ましい。コバルト粒子あるいはコバルト化合物粒子としてこの範囲のものを採用することによって水酸化ニッケルと水酸化コバルトとの接触面積が確保され、正極の利用率の向上につながる。このような正極合剤の製造については、特開平10−233229号公報、特開平10−275620号公報、特開平10−188969号公報などに説明されており、本発明においてもこれらの正極合剤の製造方法を採用することができる。
【0017】
前記正極活物質であるオキシ水酸化ニッケル化合物は、亜鉛もしくはコバルト単独あるいはその両方を共晶しているオキシ水酸化ニッケルであることが、低電解液比率でもその構造変化を少なくできるので好ましい。オキシ水酸化ニッケルに共晶させる亜鉛もしくはコバルトの量としては、1〜7質量%の範囲が好ましい。亜鉛の量がこの範囲を下回ると、正極が膨潤しやすくなるため放電容量が低下する。また、条件によっては、正極の膨潤の度合いが大きくなることもあり、電池の形状が変化する。一方、この範囲を上回ると、相対的にニッケル純度が低下し高容量化に適さなくなる。
【0018】
また、上記オキシ水酸化ニッケル化合物からなる正極活物質に、Y、Er、Yb、Caの化合物を添加することにより、貯蔵時の容量維持率を改善することができる。本実施の形態において用いられる上記化合物としては、例えばY2O3、Er2O3、Yb2O3、などの金属酸化物、およびCaF2などの金属フッ化物があげられる。これらの金属酸化物および金属フッ化物は、正極活物質であるニッケル水酸化物に対して、0.1〜2質量%の範囲で用いることができる。金属酸化物もしくは金属フッ化物の配合量が上記範囲を下回った場合、貯蔵特性の改善効果が得られず、一方配合量が上記範囲を上回った場合、相対的に正極活物質の量が減るので高容量化に適さなくなるため好ましくない。
【0019】
本実施の形態においては、上記ニッケル高次酸化物からなる正極活物質に二酸化マンガンが添加されていても差し支えない。これによって、過放電時の水素ガスの発生を抑止できる。本実施の形態において、オキシ水酸化ニッケル化合物に添加する二酸化マンガンとしては、一般のアルカリ電池において用いられている電解二酸化マンガンなどを使用することができる。この二酸化マンガンの添加量は、ニッケル高次酸化物に対して3〜7質量%の範囲が好ましい。この添加量が前記範囲を下回った場合には、電池の過放電時の水素ガス発生を抑止するのに十分ではなく、一方、添加量が上記範囲を上回った場合、ハイ・レート特性、特に低温環境におけるハイ・レート特性が悪化し好ましくない。
【0020】
本実施の形態においては、正極の導電性や成形性を改善するために、正極材料に炭素粒子を含有させることが望ましい。
かかる炭素粒子としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、人工黒鉛、天然黒鉛等を用いることができる。配合量は、正極活物質:炭素粒子=100:3〜10(質量比)の範囲が適切である。炭素粒子の配合比がこれより高いと活物質量が相対的に減少するため高容量化に適さなくなり、一方、炭素粒子の配合比がこれより低いと電子電導性や成形性が低下するので高出力特性に適さなくなる。
【0021】
また、本実施の形態の正極合剤には、正極合剤を成形する際に保形性を高め、成形作業中および電池内で保形性を維持するために、バインダーを添加することが好ましい。かかるバインダーとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、PVdFの水素もしくはフッ素のうち、少なくとも1つを他の置換基で置換した変性PVdF、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレンの共重合体、ポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−6フッ化プロピレンの3元共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。このバインダーの添加量は、正極合剤に対して、0.05〜0.5質量%の範囲が好ましい。この添加量が、この範囲を下回った場合、バインダー添加効果が発揮されず、電池製造の歩留まりが低下する。一方、バインダー配合量がこの範囲を上回った場合、電池の容量が損なわれるため、好ましくない。
【0022】
さらに、正極材料の成型時に、成形を容易にするために、正極合剤に潤滑剤を添加することもできる。かかる潤滑剤としては、黒鉛、ステアリン酸などが挙げられる。添加量は、正極合剤に対して、0.05〜1.0質量%の範囲が適切である。
【0023】
(負極材料)
本発明で用いられる負極材料は、負極活物質である亜鉛合金を主成分とする負極材料であり、公知の二酸化マンガン−亜鉛一次電池で使用されている亜鉛ゲルを用いることができる。負極材料をゲル状とするためには、電解液及び増粘剤から電解液ゲルを調整し、これに負極活物質を分散させることにより容易に得ることができる。
【0024】
本発明において用いる亜鉛合金は、無汞化亜鉛合金として知られている水銀及び鉛を含まない亜鉛合金を用いることができる。具体的には、インジウム0.06質量%、ビスマス0.014質量%、アルミニウム0.0035質量%を含む亜鉛合金が、水素ガス発生の抑制効果があり望ましい。特にインジウム、ビスマスは放電性能を向上させるため望ましい。
負極作用物質として純亜鉛ではなく亜鉛合金を用いる理由は、アルカリ性電解液中での自己溶解速度を遅くし、密閉系の電池製品とした場合の電池内部での水素ガス発生を抑制して、漏液による事故を防止するためである。
【0025】
また、亜鉛合金の形状は、表面積を大きくして大電流放電に対応できるように粉末状とすることが望ましい。本発明において好ましい亜鉛合金の平均粒径は、100〜350μmの範囲が好ましい。亜鉛合金の平均粒径が上記範囲を上回った場合、表面積が比較的小さくなり大電流放電に対応することは困難になる。また、平均粒径が上記範囲を下回った場合、電池組み立て時の取り扱いが難しく、電解液及びゲル化剤と均一に混合することが困難になるばかりでなく、表面が活性であることから酸化されやすく不安定である。
【0026】
また、本発明において用いられる増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、CMC、アルギン酸などを用いることができる。特に、ポリアクリル酸ナトリウムが、強アルカリに対する安定性が良いため好ましい。
【0027】
(電解液)
本発明で用いられる電解液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ塩を溶質として用いた水溶液が好ましく、特に、水酸化カリウムを用いることが、好ましい。
また、本発明においては、上記水酸化カリウムなどのアルカリ塩を水に溶解して電解液とするが、さらに電解液中に亜鉛化合物を添加することが望ましい。かかる亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛などの化合物が挙げられるが、特に酸化亜鉛が好ましい。
【0028】
電解液として少なくとも亜鉛化合物を含有するアルカリ性水溶液を用いるのは、アルカリ性水溶液中での亜鉛合金の自己溶解が酸性系の電解液と比較して格段に少なく、更には亜鉛合金のアルカリ性電解液中での自己溶解を亜鉛化合物、例えば酸化亜鉛を溶解して亜鉛イオンを予め存在させておくことにより更に抑制するためである。
【0029】
そして本発明においては、上述したようにニッケル亜鉛一次電池において、正負極における電解液量が平衡状態に達した時のゲル状亜鉛負極中の亜鉛粉量に対する水分率を14〜18%とすることにより、過放電特性を損なうことなく、低温重負荷放電特性を改善し、高容量を実現することができるものである。
【0030】
[電池の構造]
以下、本発明の電池の詳細な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明をいわゆるインサイドアウト構造(電池缶体が正極側、電池蓋側が負極側となっている構造)と呼ばれているJIS規格のLR6形(単3形)の電池に応用した例である。
【0031】
図において1は、正極端子を兼ねる有底円筒形の金属缶であり、この金属缶1の内部に中空円筒状の正極活物質を含有する正極合剤2が収容されている。この正極合剤2の中空内部には不織布などからなる有底円筒状のセパレータ3を介して、ゲル状亜鉛負極材料4が充填されている。そして、この負極材料4には金属棒からなる負極集電棒5が挿着され、この負極集電棒5の一端は負極材料4の表面から突出してリング状金属板7及び陰極端子を兼ねる金属封口板8に電気的に接続されている。そして、正極となる金属缶1内面と、負極集電棒5の突出部外周面には、二重環状のプラスチック樹脂からなる絶縁ガスケット6が配設され、これらは絶縁されている。リング状金属板7及び金属封口板8には、安全弁作動時にガス流出口となる孔10,11が形成されており、絶縁ガスケット6には、電池内圧が所定圧力以上に上昇した場合、その一部を開裂させてガスを流出させ内圧を低下させるための安全弁膜9が具備されている。また、金属缶1の開口部はかしめられて液密に封止されている。
【0032】
[製造方法]
以下に、このような電池の製造方法について過程を追って詳細に説明する。
【0033】
(1)正極合剤の作製
所用の原料を用いて表面にコバルト化合物を配したオキシ水酸化ニッケル粒子を作製する。該オキシ水酸化ニッケル粒子表面のコバルト化合物を更に酸化して、コバルト化合物をコバルト高次酸化物に添加することによって導電性を向上させることもできる。
【0034】
正極成形体は、上記正極活物質、二酸化マンガン、炭素質導電材、バインダー、電解液、及び所望により潤滑材などから構成される。これらの材料を、混合攪拌、圧縮、破砕、篩い分け、成形などの工程によって正極合剤として成形する。
【0035】
ドライ攪拌:正極活物質であるオキシ水酸化ニッケル粉末に、二酸化マンガン粉末、及び黒鉛粉末を所要の量で加え万能攪拌ミキサーにてドライ攪拌する。攪拌時間は、約5分間程度である。
【0036】
ウェット攪拌:上記ドライ攪拌によって得られた混合粉末100質量部に対し、電解液を添加して万能攪拌ミキサーにてウェット攪拌する。この工程により、上記ドライ攪拌で混合した正極合剤成分粉末が、相互に凝着し成形可能となる。この工程において用いる電解液の量は、正極合剤成分100質量部に対して、2〜7質量部程度であり、また、攪拌時間は、約5分間程度で十分である。
【0037】
圧縮:次に、得られた混合物を双ロール・プレス機にて板状に圧縮する。このとき、この板状の被圧縮物の厚さが、1mm程度になるように、ロール状プレスの圧力等を調整する。
【0038】
破砕:続いてこの板状の被圧縮物を破砕機にて破砕する。
【0039】
篩い分け:次に、22〜100メッシュの自動篩分機にて分級して、粒径150〜710μm程度の顆粒状正極合剤を得る。
【0040】
混合攪拌:上記工程によって得られた顆粒状合剤に、潤滑剤であるステアリン酸化合物粉末を所定量添加して混合撹拌する。攪拌時間は、およそ5分程度で十分である。これによって顆粒状正極合剤を作製することができる。
【0041】
正極合剤の成型:前記顆粒状正極合剤をJIS規格LR6形電池用に相当する正極合剤成形金型を使用して、中空円筒形の正極合剤を加圧成形する。
【0042】
(2)負極合剤の作製
無汞化亜鉛合金粉末と、酸化亜鉛添加水酸化カリウム水溶液(電解液)と、ゲル化剤とを、減圧下で撹拌・混合することにより、ゲル状亜鉛負極を調製する。
【0043】
(3)セパレータの作製
ビニロン樹脂などの繊維からなる不織布を捲装し、その一部を加熱接着して円筒体を作製する。さらに、例えばポリエチレン樹脂シートから円板を打ち抜き、この円板を前記円筒体の一端に加熱接着して有底円筒状のセパレータを作製する。
【0044】
(4)アルカリ電池の組立
金属製の正極容器中に、前記工程で作製した中空円筒状をしている正極合剤を収容し、次いで、この正極合剤の中空部にセパレータを配置する。そして、電解液を注入した後セパレータ内部にゲル状負極を注入する。そして、ゲル状負極内部に、絶縁ガスケットなど所要の電池構成部材を嵌装し、一端部に陰極端子を兼ねる封口板を設けた負極集電棒の他端を挿入し、電池容器の開口部をかしめて、電池を組み立てる。
【0045】
組み立てられた電池は、50〜60℃で2日間エージングを行い、次いで室温で4日間エージングを行うなどの条件でエージングを施すことによって、電圧変動のない、平衡状態とすることができる。本発明は、この状態におけるゲル状亜鉛負極中の亜鉛粉量に対する水分率を制御するものである。平衡状態におけるゲル状亜鉛負極中の亜鉛粉量に対する水分率を所定の範囲に制御するには、上記電池製造過程において、用いられるすべての材料に含まれる水分の量を制御することによって行うことができる。特に、原料作製工程で、正極合剤の原料となる正極活物質を顆粒状にした後、20〜25℃において60%RH以下で保存し、顆粒状原料に含まれる水分量を減少させることにより、所定の水分量に制御することが容易になる。具体的には、電池の設計段階で、各種水分量を変動させた電池を試作し、最適な水分率を備えた電池の製造条件に従って電池を製造することによって、必要な水分率の電池を製造することができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について詳細に説明する。
(実施例1)
まず、オキシ水酸化コバルトでコーティングしたオキシ水酸化ニッケル粉末120質量部に、導電剤としてレーザー回折法による平均粒径が30μmの人造黒鉛7質量部を加え、続いてポリエチレン0.12質量部を加えてから乾式撹拌を10分間、回転数300rpmで行なった後、練液である40質量%苛性カリ水溶液6.2質量部を加え、湿式撹拌を10分間、回転数300rpmで行ない、さらに、均一に混合するため、湿式撹拌回転数600rpmで10分間行なって撹拌合剤とした。続いて、撹拌合剤を圧縮強度200kg/mm2で圧紛を行ない、薄片状態のものを作製した。さらに、分級機を用い薄片状態のものを破砕することにより顆粒合剤を作製した。尚、顆粒合剤は一定の相対湿度雰囲気中に一定期間保管しており、107℃2h乾燥後の水分率を3%とした。
【0047】
その後、一定重量・一定寸法の正極合剤を成形し、正極缶内部に挿入される。その後に正極合剤と正極缶との密着を図るために再加圧される。さらに、セパレータが正極合剤中空部に挿入される。このとき顆粒合剤の貯蔵条件により、正極合剤とセパレータが吸収する40質量%苛性カリ水溶液量を1.30gとした。その後40質量%苛性カリ水溶液がセパレータ内に所定量注液され、続いて所定配合のゲル亜鉛が所定量充填される。電池封口後、所定条件のエージングにより電圧変動のない平衡状態にした。このとき、負極ゲル亜鉛に残存する水分率を亜鉛量に対して18%とした。
このようにして図1に示すJIS規格LR6形(単3形)亜鈍アルカリ電池を組立てた。
【0048】
この図において、1は正極端子を兼ねる有底円筒型の正極缶であり、この正極缶1内には前記方法で作製した中空円筒状に加圧成形した正極合剤2が充填されている。また、正極合剤2の中空部にはアセタール化ポリピニルアルコール繊維の不織布からなる有底円筒状のセパレータ3を介して、負極ゲル亜鉛4が充填されている。負極ゲル亜鉛4内にはスズメッキを施した黄銅製の集電棒5が、その上端部を負極ゲル亜鉛4に突出するように装着されている。集電棒5の突出部外周面および正極缶1の上部内周面には二重環状のポリアミド樹脂からなるパッキング6が配設されている。また、パッキング6の二重環状部の間にはリング状の金属板7が配設され、かつ金属板7には負極端子を兼ねる帽子形のメタルボトム8が集電棒5の頭部に当接するように配設されている。そして、正極缶1の開口縁を内方に屈曲させることによりパッキング6およびメタルボトム8で正極缶1内を密封口している。
【0049】
(実施例2)
顆粒合剤の水分率を2.5%とし、所定条件のエージング後に負極ゲル亜鉛粉に残存する水分率を亜鉛量に対して14%とした以外は、実施例1と同様にJIS規格LR6形(単3形)亜鉛アルカリ電池を組立てた。
【0050】
(比較例1)
顆粒合剤の水分率を3.5%とし、所定条件のエージング後に負極ゲル亜鉛に残存する水分率を亜鉛量に対して20%とした以外は、実施例1と同様にJIS規格LR6形(単3形)亜鉛アルカリ電池を組立てた。
【0051】
(比較例2)
顆粒合剤の水分率を4.0%とし、所定条件のエージング後に負極ゲル亜鉛に残存する水分率を亜鉛量に対して23%とした以外は、実施例1と同様にJIS規格LR6形(単3形)亜鉛アルカリ電池を組立てた。
【0052】
(比較例3)
顆粒合剤の水分率を2.0%とし、所定条件のエージング後に負極ゲル亜鉛に残存する水分率を亜鉛量に対して11%とした以外は、実施例1と同様にJIS規格LR6形(単3形)亜鉛アルカリ電池を組立てた。
【0053】
(比較例4)
顆粒合剤の水分率を1.5%とし、所定条件のエージング後に負極ゲル亜鉛に残存する水分率を亜鉛量に対して8%とした以外は、実施例1と同様にJIS規格LR6形(単3形)亜鉛アルカリ電池を組立てた。
【0054】
以上のようにして組立てたLR6形亜鉛アルカリ電池について、放電性能として初度0℃における1200mA(3sec.ON−7sec.OFF)パルス放電持続時間(0.9Vまで、n=12個の平均値)、40℃雰囲気中における10Ω68h後のガス発生量(n=12個の平均値)を調べた。
それらの結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1、2のように、顆粒合剤作製後に一定の相対湿度に保管することにより、顆粒合剤水分率を2.5〜3.0%にした。この顆粒合剤を用いた場合、正極合剤とセパレータが吸収する40質量%苛性カリ水溶液量は1.30〜1.40gと一定となり、注液、ゲル充填後の正負極に分布する電解液量が一定となる。この場合、負極ゲル亜鉛に残存する水分率は亜鉛量に対して14〜18%となった。この結果から、低温重負荷特性の向上には、正負極電解液量の分布が重要であることが判明した。しかし、正極側に電解液量が多く偏ると、低温使用での重負荷放電特性が劣化し、逆に負極側に電解液量が多く偏ると、特に高温での過放電時に多量のガスが発生することも判明した。
【0057】
なお、本実施例ではオキシ水酸化ニッケルにコーティングするコバルト化合物として、オキシ水酸化コバルトを用いたが、金属コバルト、金属ニッケル、水酸化コバルト、一酸化コバルト、三酸化二コバルトを用いても同様の結果が確認できた。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、高温中における過放電特性を損なうことなく、低温重負荷放電特性を改善し、高容量を実現できる電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る亜鉛アルカリ電池の要部構成を示す断面図。
【符号の説明】
1……金属缶(外装缶)
2……正極(正極合剤)
3……セパレータ
4……ゲル状負極
5……負極集電体
6……絶縁性ガスケット
7……リング状金属板
8……金属封口板
Claims (2)
- 正極端子と容器を兼ねる有底円筒状の正極缶と、前記正極缶内に配置された中空円筒状の、コバルト化合物または金属ニッケルでコーティングしたオキシ水酸化ニッケルを含有する正極合剤からなる正極と、有底円筒状のセパレータを介して、前記正極合剤の中空部に充填されたゲル状亜鉛負極を備える亜鉛アルカリ電池において、
前記正負極における電解液量が平衡状態に達した時のゲル状亜鉛負極中の亜鉛粉量に対する水分率が、14〜18%であることを特徴とする亜鉛アルカリ電池。 - 前記コバルト化合物が、オキシ水酸化コバルト、三酸化二コバルト、一酸化コバルト、水酸化コバルト、金属コバルトより選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の亜鉛アルカリ電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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