JP2003200665A - 光学的情報記録用媒体及びその記録消去方法並びに製造方法 - Google Patents

光学的情報記録用媒体及びその記録消去方法並びに製造方法

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JP2003200665A
JP2003200665A JP2002032826A JP2002032826A JP2003200665A JP 2003200665 A JP2003200665 A JP 2003200665A JP 2002032826 A JP2002032826 A JP 2002032826A JP 2002032826 A JP2002032826 A JP 2002032826A JP 2003200665 A JP2003200665 A JP 2003200665A
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JP2002032826A
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Michikazu Horie
通和 堀江
Takuya Uematsu
卓也 植松
Masae Kubo
正枝 久保
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高線速でのオーバーライトが可能で経時安定
性にも優れたな光学的情報記録用媒体を提供する。 【解決手段】 Sb70Te30共晶点近傍よりも過剰のS
bを含有し、光ビームの照射により、互いに光学的性質
の異なる結晶状態と非晶質状態との間で可逆的に相変化
する記録層を有してなる光学的情報記録用媒体におい
て、初期結晶化後の該結晶状態を特定の六方晶とするこ
とによりノイズが小さく、例えば10m/s以上の高線
速度を含む広い範囲の線速度に対してジッタ特性に優れ
た記録が行えるようになる。さらにオーバーライトを繰
り返し行った後もジッタ特性に優れた光学的情報記録用
媒体を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、書き換え可能な相
変化型記録層を有する光学的情報記録用媒体及びその記
録消去方法並びに製造方法に関し、特に、広い範囲の線
速度での使用が可能な光学的情報記録用媒体及びその記
録消去方法並びに製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】相変化型記録層を有する光学的情報記録
用媒体は、結晶状態の可逆的な変化に伴う反射率変化を
利用して記録再生消去が行われる。このような光学的情
報記録用媒体、中でも相変化光ディスクは、可搬性、耐
候性、耐衝撃性等に優れた安価な大容量記録媒体として
開発および実用化が進んでいる。例えば、CD−RWな
どの書き換え可能なCDが既に普及しており、DVD−
RW、DVD+RW、DVD−RAMなどの書き換え可
能なDVDが販売されつつある。
【0003】相変化型記録の方法としては、結晶相と非
晶質相との間での可逆的変化を利用し、結晶状態を未記
録・消去状態とし、記録時に非晶質(アモルファス)の
マークを形成する手法が現在実用化されている。通常、
記録層を融点より高い温度まで加熱し急冷して非晶質の
マークを形成し、一方、記録層を加熱し結晶化温度付近
に一定時間保つことで結晶状態とする。すなわち一般的
には、安定的な結晶相と非晶質相との間での可逆的変化
を利用する。
【0004】このような相変化型記録層の材料として
は、カルコゲン系合金薄膜が用いられることが多い。例
えば、GeSbTe系、InSbTe系、GeSnTe
系、AgInSbTe系合金が挙げられる。これらの化
合物はオーバーライト可能な材料として知られている。
オーバーライトとは、一旦記録済みの媒体に再度記録を
する際に、記録前に消去を行うことなくそのまま重ね書
きする手法、いわば消去しながら記録する手法である。
【0005】相変化型記録層の一つとして、SbTe共
晶点組成、即ちSb70Te30(ただし数字は原子%であ
る。以下同様である。)よりもSbを過剰にした組成の
ものが知られている。例えば、特開平1−303643
号公報には、My(Sb1-xTex1-y (MはAg、A
l、As、Au、Bi、Cu、Ga、Ge、In、P
b、Pd、Pt、Se、Si、SnおよびZnからなる
群から選ばれる少なくとも1種の元素)からなる合金を
記録層として使用することが記載されている。
【0006】以前には、共晶点近傍の合金は非晶質形成
能は高いものの結晶化の際に相分離を伴い、100ns
ec未満の短時間の加熱では結晶化できないため、オー
バーライト用媒体の記録層としては不適当であると考え
られてきた。しかし本発明者らはSbTeからなる2元
合金に注目し、その共晶組成近傍の結晶化/非晶質化特
性について、より高密度記録に適した光ディスク評価機
(例えば、波長が400〜780nm、対物レンズのN
Aが0.5以上)を用いて検討を行った。
【0007】その結果、Sb70Te30共晶組成近傍のS
bTe合金を主成分とする記録層は、初期結晶化には特
定の条件が必要であるものの、一旦初期結晶化してしま
えば以後の非晶質−結晶相変化による記録消去は極めて
高速に行なえることを見出した。共晶点近傍組成を用い
る他の利点は、非晶質マークの周辺部に、或いはマーク
を消去した際のマーク跡に、初期化状態と反射率の異な
る粗大グレインが生じにくいことである。
【0008】これは結晶成長が相分離によって律速され
ている共晶点近傍の合金に特有の現象である。更に上記
の組成は、マーク長変調記録を行った場合に、非晶質マ
ークの周辺部に粒界における歪みの大きな粗大グレイン
が生成しないため、従来のGe2Sb2Te5付近の組成
の記録層よりきれいな再生信号が得られる。従ってマー
ク長変調記録方式を用い、高密度記録を行うにも適して
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年の
情報量の増大に伴い、より高速で高密度の記録再生が可
能な記録媒体を得たいとの要請がある。本発明はこのよ
うな要請に応えるためになされたもので、その目的は、
高線速でのオーバーライトが可能で経時安定性にも優れ
た光学的情報記録用媒体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記要請
に鑑み鋭意検討した結果、Sb70Te30共晶点近傍より
もSb過剰な組成において、特定の単一相からなる結晶
状態を利用し、この結晶状態を光学的情報記録媒体にお
ける未記録・消去状態とすることにより、上記Sb−T
e合金の特性を生かして高線速でのオーバーライトが可
能で経時安定性にも優れた光学的情報記録用媒体が得ら
れることを見出し本発明に至った。
【0011】本発明の要旨は、Sb70Te30共晶点近傍
よりも過剰のSbを含有し、光ビームの照射により、互
いに光学的性質の異なる結晶状態と非晶質状態との間で
可逆的に相変化する記録層を有してなる光学的情報記録
用媒体であって、初期結晶化後の多結晶状態が、六方晶
の実質単一相を主体とし、該六方晶が優先配向してお
り、該多結晶状態が柱状組織から構成され、該柱状組織
の成長方向が揃っており、該光学的情報記録媒体の初期
結晶化後の未記録部の反射率をR1、集束光ビームによ
るオーバーライト10回後の消去部の反射率をR2とす
るとき、下記関係式(1)
【0012】
【数2】 ΔR(%) = 2|R1−R2|/(R1+R2)×100 ≦ 10…(1 ) が成り立つことを特徴とする光学的情報記録用媒体に存
する。
【0013】このような光学的情報記録用媒体は、特に
10m/s以上の高線速度を含む広い範囲の線速度に対
してジッタ特性に優れた記録が行える。またオーバーラ
イトを繰り返し行った後もジッタ特性に優れる。従っ
て、高線速でのオーバーライトが可能で経時安定性にも
優れた光学的情報記録用媒体を提供できる。例えば、C
D線速の12倍速(約14m/s)以上、DVD線速の
4倍速(約14m/s)以上の高線速での記録消去に使
用できる優れた光学的情報記録用媒体を提供できる。
【0014】本発明の別の要旨は、上記光学的情報記録
用媒体に記録及び/又は消去を行うにあたり、該記録層
の結晶状態を未記録状態及び消去状態とし、非晶質状態
を記録状態として記録及び/又は消去を行うことを特徴
とする記録消去方法に存する。本発明の別の要旨は、
(SbxTe1-x)(ただし、0.75≦x≦0.9)で
表される組成を主成分とする材料からなり、光ビームの
照射により、互いに光学的性質の異なる結晶状態と非晶
質状態との間で可逆的に相変化する記録層を有してなる
光学的情報記録用媒体の製造方法であって、基板上に少
なくとも該記録層を形成した後、該記録層に、短軸の長
さが0.5μm〜5μmである楕円状光ビームを短軸方
向に走査しながら照射して結晶化し初期化するにあた
り、該光ビームを、該記録層のオーバーライト可能な最
高線速度の20%以上、50%より小さい速度のいずれ
かの速度で走査することを特徴とする光学的情報記録用
媒体の製造方法に存する。本発明のさらに別の要旨は、
(SbxTe1-x)(ただし、0.75≦x≦0.9)で
表される組成を主成分とする材料からなり、光ビームの
照射により、互いに光学的性質の異なる結晶状態と非晶
質状態との間で可逆的に相変化する記録層を有してなる
光学的情報記録用媒体であって、該結晶状態が、空間群
R3mに属するSbの六方晶であってその一部がTe原
子に置換された六方晶のみで構成され、該六方晶が光ビ
ームの走査方向に優先配向した柱状組織からなることを
特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。なお、本発
明において、x、y、zなどの添字は原子数比を表す。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の光学的情報記録用媒体
は、Sb70Te30共晶点近傍よりも過剰のSbを含有
し、光ビームの照射により、互いに光学的性質の異なる
結晶状態と非晶質状態との間で可逆的に相変化する記録
層を有してなる光学的情報記録用媒体であって、初期結
晶化後の多結晶状態が、六方晶の実質単一相を主体と
し、該六方晶が優先配向しており、該多結晶状態が柱状
組織から構成され、該柱状組織の成長方向が揃ってお
り、該光学的情報記録媒体の初期結晶化後の未記録部の
反射率をR1、集束光ビームによるオーバーライト10
回後の消去部の反射率をR2とするとき、下記関係式
(1)
【0016】
【数3】 ΔR(%) = 2|R1−R2|/(R1+R2)×100 ≦ 10…(1 ) が成り立つことを特徴とする。
【0017】本発明者らの検討によれば、このようなS
70Te30共晶点近傍の組成に過剰のSbを含むSbT
e合金を記録層として用いる光学的情報記録用媒体につ
いては、記録層の組成を最適化するのみならず製造条件
を最適化することで、より優れた特性を有する光学的情
報記録用媒体が得られることが分かった。上記SbTe
合金は、組成(特にSb/Te比)や初期結晶化(初期
化)条件によっては、とりうる結晶構造が複数ある場合
がある。そして、初期状態・未記録部における結晶状態
と、一旦記録を行い消去した消去部の結晶状態とが異な
り、反射率の微妙に異なる結晶状態が混在してノイズが
高くなる場合があるのである。
【0018】この場合、集束光ビームで複数回オーバー
ライト記録を行ったりDC光(連続光)を照射したりし
て、改めて消去状態を記録領域全面にわたって作成しな
いと、ノイズの低い結晶相が形成されない場合もある。
これは、生産上手間がかかって非常に不利である。場合
によっては、最初の初期結晶化時から複数の結晶相が混
在し、未記録部分のノイズが高くなることもある。即
ち、形成した記録層を通常の手法で初期結晶化させて使
用したのでは十分な特性が得られにくい場合があったの
である。さらにバルク相状態の研究からも、上記SbT
e共晶組成は、完全な熱平衡状態では複数の結晶相に相
分離する可能性が高いことが指摘されている。
【0019】2元系のSb70Te30共晶点近傍の相図
(B.Legendre et.al., ThermochimicaActa,Vol.78(198
4),141等)によれば、Sb相、Sb7Te、Sb2Te3
等の複数の結晶相が存在すると指摘されている(ただし
不確定要素が多い)。そして、これ以外の準安定結晶相
も含んだ結晶構造の存在は明らかにされていなかった。
【0020】そこで本発明者らは、光学的情報記録用媒
体の記録層としての好ましい結晶構造に着目し、特定の
材料組成と特定の初期結晶化方法の組合せによって、記
録層を特定の結晶状態とすることができることを見出し
た。本発明の特徴の1つは、記録層がSb70Te30共晶
点近傍よりも過剰のSbを含有することである。好まし
くは、記録層に(SbxTe1-x)(ただし、0.75≦
x≦0.9)で表される組成を主成分とする材料を用い
ることである。この組成は、Sb−Teの2元合金相図
において、Sb70Te30共晶点組成よりSbを過剰に含
むSb−Te合金(以下で共晶系材料と呼ぶ)をベース
としている。そして、結晶状態を未記録・消去状態と
し、局所的に形成された非晶質状態を記録マークとして
記録を行う。
【0021】以下に、本発明に用いる好ましい記録層組
成である、(SbxTe1-x)(ただし、0.75≦x≦
0.9)についてより詳細に説明する。Sb量について
は、本発明結晶構造を実現することを容易にし、また、
非晶質状態の安定化のために、x≦0.9とする。ただ
し、後述するように、結晶状態に六方晶以外の面心立方
晶が混合するのを防ぐためには、Sb/Te比を3以上
とすることが好ましい。すなわち、x/(1−x)≧3
(これは0.75≦xに相当)とすることが好ましい。
より好ましくは、x/(1−x)≧3.5(これは0.
78≦xに相当)とし、さらに好ましくはx/(1−
x)≧4.0(これは0.8≦xに相当)とする。かか
る共晶系記録層成膜直後の膜は通常非晶質(ここでの
「非晶質」には、記録層全てが完全に非晶質になってい
る場合のみならず、非晶質中にわずかに結晶化している
部分が存在するような場合も含む)であり、該記録層を
瞬時に加熱する初期結晶化と呼ばれる操作により結晶化
を行うことが必要である。そしてその後、該結晶化状態
に対して、直径約1μm以下の集束光ビームを照射し
て、局所的な溶融、急冷過程を経て非晶質(記録)マー
クを形成する。本発明では、特に、ディスク状、カード
状の基板上に記録層を成膜後、該ディスク状もしくはカ
ード状の記録領域において、記録再生に用いる上記集束
光ビームの照射面積よりも大きな面積を一括して、該記
録層を結晶化する操作を初期結晶化操作(本明細書にお
いては、「初期結晶化操作」を単に「初期結晶化」若し
くは「一括初期結晶化」又は「初期化」若しくは「一括
初期化」という場合がある。)という。このような初期
結晶化は、記録媒体製造のほぼ最終工程において行わ
れ、該記録媒体をユーザー側において、即時に非晶質マ
ークを記録可能な状態とするために必要である。より具
体的には、初期結晶化は、該ディスク状又はカード状に
設けた集束光案内用のトラック方向において、集束光ビ
ームの照射面積の概ね10倍以上の面積を一括して結晶化
することにより行われる。本発明者らは、前記記録層を
初期結晶化操作により結晶化させた場合に、初期化条件
によっては種々の結晶相及び配向状態が現れること、そ
の結晶相によって光学的情報記録用媒体としての特性が
大きく異なることを見出した。そして、本発明は、特
に、この一括して初期化された結晶化状態の好ましい状
態を規定するものである。そして、前記結晶化状態の好
ましい状態は、後述の特定の初期化方法、条件によって
実現される。通常は、記録再生用集束光ビームのように
直径1μm程度の微小領域を加熱・冷却して得られる結
晶状態、すなわち、非晶質マークを再結晶化して局所的
に得られる消去結晶状態と、それより少なくとも10倍程
度は広い領域を一括して加熱・冷却して得られる初期結
晶化後の結晶状態とは一致しない。なぜなら、加熱領域
の面積差から、結晶化時の加熱領域の温度分布、温度変
化の状態が異なってくるためである。さらに、後述のよ
うに、本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記録層
は、結晶核生成が少なく、溶融あるいは非晶質領域周辺
の結晶部から結晶成長してくる結晶成長主体の再結晶化
となる。従って再結晶化が進む領域の面積の違いが、結
晶成長、ひいては、得られる多結晶の配向性に影響を与
えることになるからである。このことは、前記の初期結
晶化した結晶状態と、記録再生収束光ビームを照射して
非晶質マークを消去して得られる結晶化状態と、を実質
的に同一の結晶状態にすることは容易なことではないこ
とを意味するに他ならない。これに対し、本発明では、
初期結晶化によって得られる結晶状態と、記録再生集束
光ビームを照射して非晶質マークを消去して得られる結
晶化状態とが、それぞれ実質的に同一の結晶相と優先配
向とを有するようにすることができるようになり、再生
信号中のノイズを低減できるのである。ここで、実質的
に同一な結晶相とは、記録再生光から見れば、光学的に
ほとんど区別がつかないような結晶相をいう。このよう
な実質的に同一な結晶相とすることにより、光学的情報
記録用媒体から反射または透過して得られる再生光の微
妙なゆらぎによるノイズが生じないこととなる。該消去
状態は、局所的溶融部が再凝固する際に直接再結晶化す
ることでも得られるし、いったん、非晶質固体状態とな
った後、固相のまま、結晶化温度以上に加熱して再結晶
化しても得られるが、いずれも、成膜後の非晶質状態
が、一度も溶融状態を経ずに、固相で結晶化された場合
には得られない。よって、後述のように本発明における
初期化結晶化操作では、記録層をいったん溶融して再結
晶化することが望ましい。以上から、本発明は、結晶成
長を主体とする記録層組成を用いた光学的情報記録用媒
体において、結晶状態を消去状態とし、非晶質状態を記
録状態とした場合における、初期結晶化後の結晶状態を
制御することにより、この記録媒体における良好なオー
バーライトを実現するものである。本発明者らは、良好
な光記録媒体としての特性を得るためには、初期結晶化
後の多結晶状態が、六方晶の実質単一相を主体とし、該
多結晶状態が優先配向していることが必要であることを
見出した。つまり、該初期結晶化状態を六方晶の実質単
一層を主体とし、該六方晶の結晶子(結晶粒)が適度に
微細で、優先配向した多結晶状態にあることが必要であ
ることを見出した。ここで、実質単一相とは、個々の結
晶子の基本結晶構造は同じ、すなわち、同一結晶群に属
し、同じ格子定数を有する多結晶状態であることを意味
する。また、優先配向とは、大部分の結晶格子におい
て、同一の特定面が記録層平面に平行に配向している状
態をいう。さらに、適度に微細であるとは、概ね、結晶
子の長さが非晶質マークの最長の長さより短いことをい
い、最大でも、柱状に成長している結晶子の長さが、最
短マーク長の10倍を超えないことが必要である。尚、
記録層平面とは、光学的情報記録用媒体の記録層の厚み
方向に対して垂直な面をいう。さらに、本発明では、上
記の初期結晶化状態と記録再生集束光ビームを照射して
非晶質マークを消去して得られる結晶化状態とが、実質
的に同一の結晶相と優先配向とを有することを担保する
ために、初期結晶化後の多結晶状態が柱状組織から構成
され、該柱状組織の成長方向が揃っており、該記録媒体
の初期結晶化後の未記録部の反射率をR1、10回オーバー
ライト後の消去部の反射率をR2とするとき、下記関係式
(1)
【0022】
【数4】 ΔR(%) = 2|R1−R2|/(R1+R2)×100 ≦ 10…(1 ) が成り立つことを必要とする。そして、本発明において
は、良好な光学的情報記録用媒体としての特性を得るた
めには、この初期化された未記録状態として、結晶状態
が空間群R3mに属するSbの六方晶であってその一部
がTe原子に置換された六方晶の実質単一相を主体と
し、該六方晶が優先配向している事が好ましい。本発明
おいてより好ましいのは、前記結晶状態が空間群R3m
に属するSbの六方晶であってその一部がTe原子に置
換された六方晶のみで構成されることである。
【0023】相分離が生じてSbの六方晶の他にSb7
Te、Sb2Te3で知られる、他の六方晶構造ではある
が格子定数が大きく異なる結晶相、高温状態のSb等の
立方晶、AgSbTe2等に対して知られる面心立方
晶、さらには、その他の空間群に属する他の結晶相が混
在する場合には、格子不整合の大きな結晶粒界が形成さ
れる結果、マークの周辺形状が乱れたり、光学的なノイ
ズが発生したりすると考えられるのに対し、上記の特定
の六方晶の実質単一相が好ましいのは、このような歪み
や異方性の大きな結晶粒界が生じないためと考えられ
る。さて、単一相の多結晶である場合に、さらに異方性
や結晶(子)粒界に起因するノイズを低減し、良好な非晶
質マークを形成するには、個々の結晶格子の特定面が記
録層平面と平行に配向している、つまり、優先配向状態
にあることが必要である。より好ましくは、個々の結晶
子(結晶粒)サイズが適度に抑制されていること、つま
り、結晶子サイズは、記録再生光で識別可能な異方性を
発現しない程度に微細であることが望ましい。六方晶自
体は、立方晶にくらべて異方性の大きい構造であるの
で、その記録層面内にある配向面(結晶面)が複数方向
を向いていたり、その結晶子サイズが記録再生光ビーム
の波長ないしはビーム径あるいは、記録されるマークサ
イズと比べて極端に大きくなったりすれば、結晶粒界に
よるノイズが大きくなるので好ましくない。さらに前記
異方性がさらなるノイズの低減の妨げとなるので好まし
くない。このことも、Sb70Te30共晶組成近傍の材料
を高密度記録用の光学的情報記録用媒体に適用すること
を困難としていたのである。
【0024】このような観点から、本発明においては、
単一相結晶相における結晶構造を、図1に示すような空
間群R3mに属するSbの六方晶の単位格子を基本と
し、その一部がTeによってランダムに置換されている
ような構造とすることが好ましい。本発明に用いる結晶
構造は、同じSb−Te合金で、六方晶を取りうる、S
7TeやSb2Te3等のように、特定の位置にTe原
子が規則正しく挿入された構造をとらず、むしろ、Te
置換位置については、ランダム性を残した方が異方性を
低減できて好ましい。
【0025】Teがランダムに置換されているというこ
とは、Teが主成分であるSb中に溶解し、固溶体を形
成していることを意味する。そして、TeがSbをラン
ダムに置換することにより、ネットワーク中に−Te−
結合が挿入されるが、−Te−結合は−Sb−Sb−同
士の結合に比べて2次元的で柔軟性があるために、原子
結合レベルで徐々に結合状態、すなわち、結合角や原子
間距離を適度に変化させることにより結晶構造を徐々
に、かつ微妙に変化させて(配向性及び結晶性の揺らぎ
を許容して)歪みを解放し、結晶子境界(結晶粒界)に
おいて不連続な配向変化を起こして歪みが蓄積され、異
方性が顕著に表れるのを防いでいる。このため、比較的
大きな結晶子サイズでも、異方性や結晶粒界の悪影響を
抑制できる。
【0026】もし、Sb六方晶の多結晶において、同一
結晶子内での結晶構造が完全で配向性及び結晶性(以
後、単に配向性の揺らぎと称する場合がある。)の揺ら
ぎがなければ、結晶子境界に歪みを集中させることによ
り、単一相の多結晶状態を安定化させようとする。さら
に個々の結晶子の配向がそろっていなければ、六方晶で
はかえって異方性が大きくてノイズを低減しにくい。ま
た、結晶粒界に歪みが多くなり、その境界で光が散乱さ
れてノイズになったりする。さらに、そのような微視的
空隙部に非晶質マークの境界が位置すれば、境界が不連
続なものとなり、ノイズ(ジッタ)をさらに低減するこ
とが困難になる。ただし、本発明における配向性の揺ら
ぎとは、あくまで同一の結晶構造及び結晶格子の配向性
を保持した上での、微妙な結晶格子軸の変化や微妙な結
晶面の方位の変化をいう。「配向性の揺らぎ」と見なせ
る範囲は、格子軸長の変化として±20%程度以内、面
方位の変化として±20%程度以内である。また、後述
のように、透過電子線回折やX線回折の基本パターン
は、上記「配向性の揺らぎ」の有無に関わらず同様とな
る。つまり、「配向性の揺らぎ」は、透過電子線回折や
X線回折のピーク位置ではその存在の有無を区別できな
いが、主として透過電子線像の濃淡として検出される。
【0027】そして、本発明における記録層は、後述の
初期結晶化操作によって得られる未記録の多結晶状態に
おいて、図2に示すようにその結晶子が柱状組織から構
成され、該柱状組織の成長方向が揃っている必要があ
る。成長方向は、概ね光ビームの走査方向に揃っている
ことが好ましい。ここで、「成長方向が揃っている」と
は、光学的情報記録用媒体全面において完全に揃ってい
る必要があるという意味ではなく、記録レーザビーム径
に対して十分広い範囲で成長方向が揃っていればよいと
いう意味である。十分広い範囲とは、例えば、記録レー
ザビーム径の10倍程度のスケールの範囲をいう。柱状
組織は、明瞭な結晶粒界を有さず、かつ柱状組織の成長
方向において連続的かつ微少な配向性の揺らぎを有する
ことが好ましい。本発明では、長軸と短軸の比が10倍
程度より大きい細長い前記柱状組織を特に針状結晶(本
明細書においては、針状結晶を針状構造ないしは針状結
晶子と呼ぶことがある。)と呼ぶ。本発明においては、
この針状結晶子サイズの幅が約0.5μm以下、長さが
約10μm以下であれば、異方性の悪影響が抑制され
る。これ以上に厳密に同一配向状態にある結晶子サイズ
が大きいと、結晶子の内部の個々の結晶格子の格子定数
や結合角の微小変化といった配向性の微少な揺らぎがほ
とんどない剛直な構造をとった場合に、結晶粒界におけ
る歪みの集中を十分軽減することができず、明瞭な粒界
が形成されてしまう傾向がある。針状結晶子の長さ方向
については、結晶子サイズが、最長の非晶質マーク長と
同程度かそれ以下であり、最長でも最短の非晶質マーク
の10倍程度以下であり、通常は10μm以下である。
結晶子の長軸の最小サイズは、約0.5μmより長いこ
とが望ましい。結晶子の極端な微細化による結晶粒界の
増大を抑制できるからである。
【0028】また、本発明の光学的情報記録用媒体にお
ける記録層の初期結晶化後の未記録部では、透過型電子
顕微鏡による透過電子像において像の濃淡によって示さ
れる配向性の揺らぎの周期が約0.5μm以下であるこ
とが好ましい。これを前記針状結晶子について説明すれ
ば、上記針状結晶子の幅方向においては、結晶粒界が不
明瞭な場合もあるが、概ね、透過型電子顕微鏡において
像の濃淡によって示される配向性の揺らぎの周期が、約
0.5μmより小さいことが望ましいのである。また、
針状結晶子の長さ方向においても、約0.5μm以下の
周期で原子レベルの微小な結晶構造の歪みにより、粒界
を形成することなく連続的に配向性の変化(揺らぎ)を
伴っていることが望ましいのである。これにより、実質
上、最大径で約0.5μmないしはそれ以下の微細結晶
粒を形成したのと同じ効果を有し、六方晶特有の光学異
方性が軽減される。好ましい態様は、上記柱状組織の成
長方向が概ね光ビームの走査方向に揃っていることであ
る。この柱状組織の成長方向、言い換えれば、針状結晶
子長軸をほぼ記録再生用集束光ビームの走査方向にそろ
えることで、初期結晶化後の結晶状態の組織と、オーバ
ーライト後における消去後の結晶状態の組織との差を小
さくすることができるので、消え残りが小さくなる。針
状結晶子は、特定の結晶面を優先的に成長させることで
形成される。これは結晶子内において、特定結晶面が記
録層平面と平行に揃っている、すなわち優先配向してい
ることも意味する。
【0029】オーバーライト後の消去状態の結晶構造組
織は、確かに、六方晶単一相多結晶で、そのサイズは、
非晶質マークの幅(マーク幅は例えば約0.5μm)そ
のものより十分小さく、概ね0.1μmを超えることは
ない。かつ、成長の方向は、完全ではないが、集束光ビ
ームの走査方向に向いている。少なくとも走査ビームの
中心線に関してほぼ対象に成長している。これは、集束
光ビームの中心を基準に走査方向の左右にほぼ対称な結
晶成長が起きるからである。そして、記録層平面に関し
て特定の結晶面が平行に配向しているが、これが初期結
晶化状態と同じ配向であることが好ましい。初期結晶化
後の結晶状態を、上記オーバーライト後における結晶状
態(消去状態)に近づけることは、高速記録における消
去性能を維持し、オーバーライト後のジッタを低減する
上で特に重要である。これは、高速記録においては、高
速で集束光ビームを走査しながらオーバーライトを行う
からである。
【0030】本発明においては、記録層の光学定数を微
調整したり、結晶核の生成を制御したりするなどの目的
で、Sb−Te固溶体にさらに後述の第3元素Mを添加
するのが好ましい。そしてSb−TeがMも含めて固溶
体を形成し、Sb六方晶をベースとして、M及びTeが
Sbを置換している固溶体を用いることが望ましい。そ
して、本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記録層
は、このような固溶体を主成分とする材料からなること
が好ましい。上記固溶体は、共晶組成においては、溶融
状態を経て非晶質化しない程度に高速に冷却して凝固さ
せた場合に得られる準安定状態である可能性が高いが、
本発明準安定状態は室温近傍での保存状態では極めて安
定であり、TeやMの再配置による偏析や異なる結晶相
への転換は実際上、ほとんど進まない。
【0031】第3元素Mとして好ましくは、Al,I
n,Ga,Ge,Si,Sn,Pb,Bi,Pd,P
t,Zn,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Co,
Mo,Mn,O,N,S,Seから選ばれる少なくとも
一の元素である。これら元素は、記録層の光学定数を微
調整したり、結晶核の生成を制御したりする効果があ
る。Mの添加量yは、好ましくは0.2以下である。好
ましい下限値は0.001である。また上限値に関して
はyは0.1以下がより好ましい。複数のM原子を含む
場合はその総量yを0.2以下とするのが好ましい。y
を0.2以下とすることで、M原子とSb又はTeの合
金相が析出しにくくなり、本発明の特徴の一つである単
一結晶相が得られやすくなるだけでなく、記録時のノイ
ズが低減され、また特に高密度でのマーク長記録を行う
場合のジッタを低減しやすくなる。更に、yを0.2以
下とすることにより、多数回での記録後に記録信号のノ
イズが低減する傾向にある。
【0032】本発明において、共有結合性の大きな元素
(Ge,Si,Sn,N,Pb)は、結晶構造内にラン
ダムに導入できれば、準安定結晶構造を安定化するのに
非常な効果がある。一方で、前記元素の導入量が多すぎ
ると、結晶構造が剛直になって、結晶子内の配向の揺ら
ぎを許容するような柔軟性が失われるため、導入量の選
定には注意が必要であるが、MのうちGeを用いること
は、ベースとなるSbTe共晶系の結晶成長速度をほと
んど低下させることなく、残存する結晶核をより効果的
に消滅できる効果が特異的に顕著であり、結晶成長主体
で結晶化が行われる本共晶系材料の利点をより明瞭にす
ることができるため好ましい。また、Geを用いること
により六方晶構造を優先的かつ安定的に生成せしめる効
果もある。
【0033】MとしてGeを用いる場合は、0.001
≦y≦0.08が望ましく、特に0.001≦y≦0.
05以下が好ましい。yが0.08以下とすれば、ジッ
タが低くなる傾向がある。また、yを0.001以上と
すれば、Ge添加による結晶核生成抑制効果が顕著とな
る。MとしてGeを用いる場合は、更に、Gaもしくは
Inの少なくとも一種をGeと併せて用いることが好ま
しい。即ち、記録層をAzGey(SbxTe1-x1- y-z
(ただし、AはIn又はGaから選ばれる少なくとも1
の元素を表し、0.75≦x≦0.9、0.001≦y
≦0.08、0.03≦y+z≦0.1)で表される組
成を主成分とする材料とすることが好ましい。
【0034】元素AとGeの合計の原子比は、0.03
以上0.1以下であるのが好ましい。元素Aの添加は、
非晶質マークを安定化させるとともに、結晶子のサイズ
を抑制する効果もある。元素Aの量がGe量より多いこ
とが好ましい。一方、Ge,In,Ga量が多すぎると
GeTe合金系の別の相が現れ、単一結晶相が得られに
くくなる傾向があることは、他の元素を過剰に添加した
場合の弊害と同様である。Ge、In,Ga以外にさら
に他の元素を添加する場合、その添加量は、高々5原子
%以下であるが、六方晶単一相を生成する上では、3原
子%以下とすることが好ましい。イオン結合性の強い元
素は、結晶構造の柔軟性を失わせるので好ましくない。
酸素を用いる場合、その添加量は極微量、高々2原子%
とするのが好ましい。前記他の元素の微少添加は、光学
特性の微調整及び結晶サイズの微調整、経時的に安定化
させるといった付加的な効果に限られる。
【0035】本発明のMy(SbxTe1-x1-y、0.7
5≦x,x≦0.9,なる合金を主成分とする共晶系材
料の特徴は、この材料を用いた記録層における非晶質マ
ークの消去は、実質的に、非晶質マーク周辺の結晶領域
との境界からの結晶成長のみで支配されており、非晶質
マーク内の結晶核生成と、該結晶核からの結晶成長過程
は、殆ど再結晶化過程に寄与しないことである。より高
線速度でのオーバーライトを実現するためには、短時間
での消去を確実にするために、過剰のSb量を多くして
いく(M.Horie et.al, Proceedings ofSPIE, vol.4090
(2000),135)が、その場合には、主として、結晶成長速
度が増強されると考えられる。すなわち、Sb添加量を
ふやす事は、非晶質マークの周辺結晶部からの再結晶化
を促進するとともに、溶融再凝固時の結晶成長速度をも
増加させる。一般的には、かかる、高速消去、すなわち
高速結晶化は同時に非晶質マークの経時安定性を損なう
可能性がある。しかし、本発明に用いる記録層材料は、
結晶核形成よりも結晶成長が支配的であるため、集束光
で昇温されたような高温での結晶成長による消去は短時
間で進むが、記録媒体の保存環境のような比較的低温下
では、再結晶化は極めて遅いという特徴を有する。なぜ
なら、結晶化過程において、結晶核生成は、通常、結晶
成長に比べて融点よりかなり低い温度で最大となるた
め、比較的低温でも徐々に進行し、小さな結晶粒を形成
してしまう。一方で、結晶成長は融点直下の高温領域で
しか進まないため、結晶核生成さえ抑制すれば、低温下
での再結晶化は進まないからである。ここで、経時安定
性とは、例えば記録媒体の室温での保存環境においての
非晶質のマークの経時安定性、即ち消去されにくさを意
味し、結晶化が進むとマークが小さくなり経時安定性が
悪いといえる。
【0036】本発明において、Sb/Te比によって結
晶化速度、特に、結晶成長速度を選択的に制御すること
ができ、非晶質マークの昇温による再結晶化(消去)
と、室温近傍における非晶質マークの再結晶化の抑制と
いう相反する要求を両立しうる。従って、本発明の光学
的情報記録用媒体に用いる共晶系記録層は、特に10m
/s以上の高線速で記録用集束光ビームを走査してオー
バーライトを行う場合に適しており、具体的にはCD線
速の12倍速(約14m/s)以上、DVD線速の4倍
速(約14m/s)以上の高線速でのオーバーライトが
可能で経時安定性にも優れた光学的情報記録用媒体を提
供できる。
【0037】本発明では、このように適度に微細で優先
配向した針状結晶子を有し、結晶子内部で徐々に配向性
の揺らぎを許容して、結晶粒界での歪みの小さな結晶子
を形成してなる六方晶単一相からなる結晶状態を、未記
録・消去状態とし、非晶質状態を記録マークとする記録
を行う。非晶質マークを記録マークとする記録では、マ
ーク位置記録であっても、マーク長記録であっても良い
が、高密度化のためにはマーク長記録が望ましい。本発
明記録媒体は、最短マーク長が約0.4μm未以下であ
るような、高密度記録に特に適している。
【0038】本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記
録層の結晶構造を未記録・消去状態として、非晶質マー
クを形成した場合、その輪郭が結晶粒界によって途切れ
たりすることなく、滑らかなものとなり、マーク端での
ゆらぎ(ジッタ)が抑制される。さらにまた、本発明の
光学的情報記録用媒体に用いる記録層は、非晶質マーク
の形状が、溶融領域の再凝固時に起こる非晶質化と周辺
の結晶領域からの再結晶化の競合によって決定されると
いう特徴を有するが、再結晶化の程度を制御して非晶質
マークのサイズを制御し、マークのサイズに応じて変わ
る反射率の多段階変化を検出する多値記録方式にも適し
ている。
【0039】もともと、本発明の光学的情報記録用媒体
に用いる記録層組成は、非晶質化と再結晶化の競合は顕
著であるものの、再結晶化の際の周辺部からの結晶粒の
成長が、結晶粒界で不連続になったりすると、再結晶化
を制御するのが難しく所望のマークサイズを実現しにく
い。ところが、本発明の光学的情報記録用媒体に用いる
結晶構造では、非晶質マークの境界が結晶粒界に影響さ
れることがなく、常に滑らかで連続的に変化しうるの
で、所望のマークサイズが得やすい。
【0040】本発明における、Sb―Te合金薄膜の結
晶状態は、電子線回折(Transmission Electron Diffra
ction、TED)及びX線回折(X-ray diffraction、X
RD)の手法を用いて以下のように識別できる。TED
及びX線回折に共される試料は当然のことながら、でき
る限り実際の光学的情報記録用媒体の層構成と製造プロ
セスをもって形成された、記録層を採取して行われねば
ならず、ガラス基板上に成膜し、オーブンにて熱アニー
ルして初期結晶化したような試料は不適当である。本発
明の光学的情報記録用媒体に用いる記録層は通常、基板
上にその少なくとも一方を誘電体保護層で保護されたよ
うな層構成を有してなるのが通常である。光学的情報記
録用媒体にスクラッチを入れ、テープ剥離を行うと、通
常、記録層と誘電体保護層との少なくとも一方の界面で
剥離が生じる。その後、他方の界面側の基板及び/又は
保護層を、研磨/溶解して電子線が透過できる厚みにま
で除去する。
【0041】X線回折はこの状態でも可能であるし、片
方の面だけ剥離して記録層が露出していれば、基板から
剥離する必要はない。本発明では、通常、このような状
況で薄膜X線回折法と呼ばれるXRDパターンの測定を
行っている。これは、後述の実施例の図3にあるよう
に、X線ビームを試料表面に概ね1度以下の浅い角度α
で入射させることにより、X線の進入深さを浅くして、
基板からの回折あるいは散乱波を抑制し、試料最表面の
薄膜のみの結晶状態を観察する方法である。なお、本発
明者らは、本発明の光学的情報記録用媒体の記録層を種
々の方法で初期結晶化することによって、ほぼ多結晶化
し、非晶質状態に比べて反射率が顕著に増加した結晶状
態について鋭意検討した。その結果、このような結晶状
態としては、主に、図23(a)〜(c)に示す3種類
のX線回折像に示される状態があることを見出した。こ
こで、図23(a)〜(c)のいずれも、初期化後、一
度も記録再生用集束光ビームを照射していない状態を示
している。この初期化条件に依存してX線回折パターン
が変化する現象は、記録層がSb70Te30共晶点近傍よ
りも過剰のSbを含有する組成を有する場合に共通して
発現する現象である。換言すれば、上記現象は、記録層
にSb70Te30共晶点近傍よりも過剰のSbを含有する
組成を用いる限り発現し、前記組成に添加するその他の
微量の元素やその添加量にはほとんど依存しない。図2
3(a)から(c)のX線回折パターンは、個々の回折
ピークの他にバックグランドとして基板や保護層の回折
も含んだ回折パターンである。図23(a)、(b)、
(c)の各図において、横軸の下段(PDF35−07
2と記載)にはデータベースに記載のSbの六方晶の回
折ピークの位置を示し、横軸の上段には、同一結晶構造
において、格子定数を微調整して、実験的に得られた回
折ピーク位置ともっとも一致するようにした場合の、回
折ピークの位置を示した。いずれの回折像でも、回折角
2θが28度付近にある回折ピークが最も強い。このう
ち、図23(c)は、各回折ピークの幅が広がっている
ことから、最も結晶性が低い、すなわち、一部に非晶質
が残存している可能性がある。図23(b)は、結晶性
は高く、ほぼ完全な多結晶であるが、2θ=40度付近
のピークが2本に分離して検出され、ランダムな六方晶
の粉末回折パターンに最も近いと考えられる。図23
(a)は、やはり完全な多結晶で結晶性は高いが、特定
の配向が強いため、一部のピークが消滅している。本発
明で最も好ましいのは、図23(a)に示される、初期
結晶化状態における記録層のX線回折パターンにおい
て、回折角2θの40゜付近に、分離が認められない明
瞭なピークが存在するようなX線回折パターンである。
ついで好ましいのは、図23(b)に示されるX線回折
パターンである。一方、図23(c)に示されるX線回
折パターンような場合には、結晶化が不十分で、反射率
が相対的に低く、本発明の要件である前記式(1)の反
射率の変化ΔRの条件を満たさない。以下、図23
(a)の最も好ましい結晶状態について詳細に述べる。
【0042】図4は、本発明で最も好ましい結晶状態
の、X線回折(X−ray diffraction、
XRD)パターンの一例である。剥離は、基板とは反対
側の保護層界面と記録層との間でおき、ポリカーボネー
ト樹脂基板上に、ZnS:SiO2保護層(非晶質)と
厚さ約200Åの記録層が残っており、記録層表面が露
出した状態である。X線源としてはCuKα線を用いて
いる。
【0043】図4下段の枠内の棒グラフは粉末試料のX
RDパターンの標準的データベース(Power Diffractio
n File、PDF)におけるPDF:35−0732(P
DFのデータベースの番号)において示されるSbのR
3m六方晶(図1、a軸長=b軸長=4.307Å、c
軸長=11.273Å)の回折パターンであり、下段の
PDFデータベースの生データに比べると出現するピー
クの数や2θ角度はほぼ一致するものの、正確には各ピ
ークの強度比や、2θ角度で、Sb薄膜そのものに比べ
て微妙なずれがみられる。
【0044】これは、結晶構造は同一であるが、格子定
数にずれがあることを反映している。そこで、PDF:
35−0732のデータを元に本回折パターンとよりよ
く一致するように、格子定数のフィッティングを行った
ところ、該六方晶の格子定数は、a軸=4.31Å、c
軸=11.11Åであることがわかった。図4上段の枠
内の下辺の棒グラフは同データベースの示唆する図1の
結晶構造を元に、このフィッティングで得られたa軸
(=b軸)及びc軸の格子定数を用いて計算した理論上
の各面のピーク位置(調整されたピーク位置)を示す。
【0045】ピーク強度は考慮されていないので、必ず
しも理論上の全ピークが観測されるわけではない。図4
から、主要ピーク位置が、この調整(フィッティング)
されたピーク位置のいずれかとよく一致していることが
わかる。また、2θ=28゜付近、より詳細には2θ=
28.8゜付近の(012)(本明細書においては、
(0,1,2)と記載することもある)面が主ピークと
なっていることから、(012)面が特に記録層平面に
ほぼ平行に優先配向していることがわかる。一方、同一
の薄膜X線回折装置で測定した純粋なSb薄膜(厚さ約
200Åでスパッタ膜、層構成は図4のXRD測定で用
いた媒体と同じ)の回折パターンを図5に示す。成膜直
後から初期化操作無しで結晶性の膜であった。PDF:
35−0732のデータの各ピークの位置及び両者は極
めてよく一致している。また、フィッティングによって
得られた格子定数はa軸長=4.295Å、c軸長=1
1.254Åで、極めてデータベース値(a軸長=b軸
長=4.307Å、c軸長=11.273Å)に近い値
を示している。配向性を見ると、2θ=24.2度付近
の(003)面が主ピークで、本発明記録層で主ピーク
となる2θ=28.8度付近の(012)面のピークは
ほぼ完全に消失していることから、c軸がより膜面に直
立して配向している、いわゆるc軸配向であることがわ
かる。c軸配向は六方晶構造を有する金属や合金の結晶
性薄膜において、むしろ自然な配向である。逆に、この
ことは、本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記録層
の結晶構造はSbを主成分とし、Sbの六方晶を基本と
するとはいえ、Sbが主成分であれば常に自然に得られ
るものではなく、後述のような特別な初期結晶化操作を
施して初めて得られるものであることを示している。
【0046】図6は、図1のR3m結晶構造を元に、最
もフィットする格子定数と、配向(ピーク強度比)を考
慮してシミュレーションによって得られた理論的なX線
回折パターンと図4の回折パターンとの比較である。高
角度のピークまでその位置が正確に対応しており、図1
のSbの空間群R3mに属する結晶構造で格子定数が若
干変化したものであると結論できる。なお、図6におい
て実測回折パターンと、理論パターンを比較したとき
に、2θ=40度付近のピークの分岐、特に高角度側が
不鮮明であるが、これは高角度側の(110)面に対応
するピークが非常に弱いことを意味し、それはまた、本
測定方法では、(012)面が膜面にほぼ平行であるこ
とと矛盾しない。他に(300)面等のピークも不明確
であり、これらの面が図1のc軸に平行面であることか
ら、c軸が膜面に対して立っていることを示している。
ただし、もともとも強度の弱いピークであるため、それ
が消失したからといって、薄膜X線回折法の精度では必
ずしも直立していることを意味せず、膜面からある程度
(約20度)の傾きをもって立っているため測定にかか
らない、と解するべきであり、これも(012)面が膜
面に平行であるということと矛盾しない。
【0047】同じく六方晶であるSb7Te相のよう
に、特定位置にSb以外の少数元素が配置されていれ
ば、長周期の構造が新たに加わる(たとえばSb7Te
相ではc軸長が約34Åにもなる)ので、TEMやXR
Dの回折パターンで長周期構造に由来するピークがある
かどうかで、ランダムに置換されているかどうかは判定
できるが、Sb7Te相の回折パターン(PDF:46
−1068)と比較して、多少の歪みを考慮しても高角
度でのピークのがほとんど一致しない。また、同じ六方
晶に属するSb2Te3相(PDF:15−0874に対
応)や、Sb2Te相(PDF:80−1722に対
応)のような他の結晶構造にかかわる明確なピークは観
察されないことも確認できた。
【0048】さらに、面心立方晶(fcc)は、図7の
下辺の棒グラフのピーク位置に示すように、a軸だけパ
ラメータとして最適化を行っても、2θで40程度より
下の主ピークだけ見れば、一見して本発明の光学的情報
記録用媒体に用いる記録層と類似のXRD回折ピークを
有するが、2θが概ね40度以上の高角度の回折ピーク
まで含めて詳細に観察すれば、違いが大きく一致しない
ことは明白である。
【0049】図8及び図9は、後述する実施例において
製造された相変化型光学的情報記録用媒体と同様の製造
方法によって得られた媒体から、記録層(厚さ約20n
m)を剥離して得られたIn3Ge5Sb71Te21薄膜の
透過型電子顕微鏡(Transmission Ele
ctron Microscopy、TEM)による電
子線回折像である。電子線は膜面に垂直に入射した。こ
こで、図8及び図9の電子線回折像は、初期結晶化した
光学的情報記録用媒体に一度も記録再生用集束光ビーム
を照射していない状態において、上記電子線回折を測定
した結果である。それぞれの図において(a)はポジ
像、(b)はネガ像である。図中、A,B,C,D、E
の各点は、それぞれミラー指数(2,−1、0)、(0
12)、(202)、(1、−1、2)、(104)に
帰属できる。
【0050】なお、原点Oは,各指数の対称な点を結ん
だ線の交点として求まる原点である。例えば図8ではB
とB’(0、−1、−2)点及びAとA’(−2,1,
0)点を結ぶ線の交点である。これらの回折点は一見し
て、長方形を形成しており、立方晶に対応しているよう
にも見えるが、例えば、図8のAOBのなす角度∠AO
Bは90度(直角)からずれているし、図9のDOBの
なす∠DOBも90度から微妙にずれている。この回折
像で現れるA,B,C,D、E等の各点に対するミラー
指数を矛盾なく説明しうるものは、六方晶構造でありR
3m空間群に属する結晶構造である。このうち、図8は
(104)面がほぼ正確に記録層平面に平行となってい
る場合、図9は(012)面が記録層平面にほぼ平行と
なっている場合に、電子線を記録層に垂直に入射して得
られる回折パターンである。(104)面と(012)
面は、約20度の角をなしており、XRDパターンから
はともに図4のパターンが得られ、(012)面の回折
ピークが主となる。本発明では、両者が混合していても
良いが、特に、図9のパターンが主であることが好まし
い。その方がより、オーバーライト後の消去結晶状態の
配向性に近いからである。以上から、本発明の初期化結
晶状態は、このようにXRD、TEM像及び電子線回折
パターンを総合して判断できるものである。
【0051】また、図8及び図9はほぼ単一結晶子サイ
ズ(約0.4μm)まで電子線ビームを絞り込んで得ら
れた、異なる視野の観察から得られたものであり、面方
位の回転はあるものの実質的にR3m構造に由来するの
パターンしか得られておらず、やはり単一の結晶相から
形成されていることが確認できる。図10は、本発明に
用いる光学的情報記録用媒体の記録層のTEM像であ
る。ここで、図10のTEM像は、初期結晶化した光学
的情報記録用媒体に一度も記録再生用集束光ビームを照
射していない状態におけるTEM観察の結果である。連
続的な濃淡のパターンは、異なる結晶構造の結晶子を示
すものではなく、すべて同じ六方晶で、図9と同じく
(012)面を記録層平面に平行にして同一方向に配向
していながら、結合角や格子間距離が徐々に変化して結
晶構造がひずみ、面方位及び面間隔(配向性)が揺らい
でいるために生じている。一方、図10中に点線で示し
た例のように、不連続かつ急峻なパターンの変化は結晶
粒界に対応すると考えられ、幅約0.1〜0.2μm、
長さ数μm以上の細長い針状結晶子が多数認められる。
【0052】また、その結晶子は一定方向に成長してい
る。すなわち、針状結晶子が一定方向に成長しその内部
において、面方位、すなわち、配向がX線回折では区別
できない程微小に揺らいでいるような構造となってい
る。より具体的には、記録層平面にほぼ平行な優先配向
面は、記録層平面に対して±20%程度以内の傾きを有
してもよい。また、各結晶子間の結晶粒界、特に、長軸
の成長方向にそった粒界は不明瞭で、そこの歪みが蓄積
されにくい組織となっている。図11(b)は、図11
(a)のなかで点線で示された直径約1.2μmのビー
ム径電子線による、比較的視野の大きな電子線回折パタ
ーンである。
【0053】ランダムな多結晶の場合に見られるリング
状の回折パターンではなく、特定方向に強い回折強度を
有する回折パターンが現れ、針状結晶を数十含む大きな
視野内で、若干の揺らぎを別として大局的には配向がほ
ぼ一定していることがわかる。また、柱状組織の成長方
向は図11(a)中の矢印の方向であると考えられる。
なお、矢印の前後いずれに向かって成長しているかはわ
からないが、その方位がそろっていることが重要であ
る。このような柱状組織は、結晶子内に歪みを導入し配
向性の揺らぎを許容することで、結晶粒径が多少大きく
ても結晶粒界で急激に配向が変化して歪みが蓄積される
のを防ぐのに有効であると考えられる。また、複数の結
晶子を含む数μm径の中距離構造においても、特定方向
に強い回折点が見られることから、ランダムに配向した
多結晶ではなく、特定方向に優先的に配向しており、針
状結晶子が配向を概ね保ちながら長軸方向に成長してい
るものと考えられる。図24は、図10と同様の結晶状
態のTEM観察像及びTEMによる電子線回折像であ
る。つまり、同図(a)は本発明実施例における記録層
の初期結晶化直後の状態、換言すれば、初期結晶化後一
度も記録再生用集束光ビームを照射していない状態であ
る。この状態は、図11の状態とも同等である。同図
(b)は、記録再生用集束光ビームの案内用に設けた溝
と溝間の双方に複数回、オーバーライトを行った後の状
態であり、結晶状態は、全面的に記録された後再度消去
された状態(消去結晶状態)となっている。同図(b)
におけるTEM観察像からわかるように、柱状構造の成
長方向は、必ずしも一定ではない。しかし、図24に示
す、図11と同様の複数の結晶子を含む大きな視野での
電子線回折像は、図24(a)及び(b)どちらの状態
においても同じパターンを示すことがわかる。ここで、
図24(b)においては、消去結晶状態から結晶回折パ
ターンが得られていると考えてよい。これは、非晶質マ
ークや記録層に付着した非晶質保護層の影響で、ハロー
パターン(リング状でぼやけた白い帯状パターン)があ
るものの、強い白点として現れた回折パターンは図24
(a)と同じだからである。そして、この回折パターン
は、図9および図10と同様(012)面が、記録層平
面にほぼ平行に配向していることを表している。また、
図25は、これら試料のXRDパターンであり、初期結
晶化後の結晶状態と収束光ビームで記録消去した後の結
晶状態とを比較すると、いずれの結晶状態もほとんど同
一で図4と同等の回折パターンとなっていること、及び
いずれの結晶状態も(012)面の回折ピークを主ピー
クとしていることがわかる。ここで、重要なことは、初
期結晶化後未記録の結晶状態と、オーバーライト後の消
去部の結晶状態との優先配向の方向がそれぞれ揃ってい
るということである。つまり、初期結晶化後の結晶状態
の優先配向方向と、光学的情報記録用媒体を集束光ビー
ムによりオーバーライトした後に消去して得られる結晶
状態における優先配向方向とが同じであることが重要な
のである。
【0054】本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記
録層における特に初期結晶化後の未記録状態の結晶構造
の特徴と、その優位性について述べたが、通常は、X線
回折及びTEM回折及びTEM像を解析することによっ
て総合的に定義づけられる。しかしながら、特に、以下
で述べるパラメータに注目することで、定量的に好まし
い構造を定義できる。
【0055】まず、本発明では2=28゜付近、より詳
細には2θ=28.8゜付近に現れる主ピークである
(012)面の回折ピークに注目する。一般に、回折ピ
ークを粉末試料の結晶パターンと比較して、そのピーク
の現れる位置が高角度側にシフトするというのは、原子
レベルで結合に歪みが生じて、(012)面の平均的な
面間隔(約3Å)が伸びていることを示唆している。こ
の結果は六方晶の基本構造を維持しながら結晶子が針状
に、かつ、(012)面を記録層平面とほぼ平行に保ち
ながらほぼ一定方向に成長しているが、配向性の微妙な
変化により、少なくとも(012)面間ではひずみが生
じているというモデルとも一致している。
【0056】すなわち、本発明においては、Sbの結晶
構造にTeをランダムに取り込むことによって、原子レ
ベルで歪みを分散させ、結晶子内部で連続的にかつ徐々
に配向変化を起こすことにより、結晶粒界に歪みが集中
することを防いでいる。本発明においては、上記結晶子
内部の結晶性の不完全性に関して(012)面の面間隔
に注目しているが、上記Sbの結晶構造にTeがランダ
ムに取り込まれていることから考えて、上記注目は決し
て恣意的ではないといえる。従って、本発明において
は、この原子レベルでの歪みの分散の効果を2θ=2
8.8度付近の(012)面のピーク位置のずれから定
量的に規定し、記録層として好ましい結晶状態を定量的
に判定する。
【0057】本発明では、Teのランダムな置換により
CuKα線をX線源とするX線回折パターンにおいて、
2θ=28.70〜28.85度の範囲にあることが望
ましい。2θが28.85度以下とすることで、結晶子
内部の歪みを解放でき、明確な結晶粒界を有さないよう
にすることができるようになる。一方、2θを28.7
0度以上とすることで、結晶子が安定構造となり、2θ
が大きい方向に移動し、かえって純粋なSb構造に変化
してしまうという現象を防ぐことができる。さらに、高
速オーバーライト記録に適するのは、2θ=28.75
〜28.85の範囲の構造である。これは、面間隔にし
ておよそ3.090〜3.105程度の極めて狭い範囲
にある。本発明では、他の原子結合レベルでの歪みの指
標として、六方晶単位格子のc軸あるいはa軸長に注目
してもよい。X線回折パターンあるいは、TEM回折パ
ターンの実測値にあうように、図1の結晶構造の格子定
数を当てはめることにより、正確な格子定数を求めるこ
とができる。本発明に用いる記録層組成では、Te置換
の影響により格子定数が変化し、Sbそのものの六方晶
単位格子(PDF:35−0732、a軸長=4.30
7Å、c軸長=11.273Å)に比較して、特に、c
軸が短くなっていることが好ましく、a軸=4.30〜
4.33Å、c軸=10.9〜11.25Åの範囲にあ
ることがより好ましい。中でも高速オーバーライト記録
に適する特に好ましい範囲は、a軸=4.31〜4.3
3Å、c軸=11.0〜11.2Åの範囲にある構造で
ある。特に、(012)面の面間隔の変化の大部分はc
軸長の変化に負っていると考えられる。また、本発明に
おいては、CuKα線をX線源とする薄膜X線回折法に
よるX線回折パターンにおいて、主ピークが該六方晶の
(012)面のピークであり、かつ、そのピークにおけ
るCuKα1のみによる半価幅(強度がピーク値の半分
となる高さでのプロファイルの幅)が0.6゜〜0.8
゜の範囲にあることが好ましい。特に好ましいのは、前
記半価幅を0.64゜〜0.76゜の範囲とすることで
ある。CuKα1のみによる半価幅は、結晶サイズ及び
結晶性に依存するが、上記範囲として、六方晶の結晶性
を制御することにより、本発明の効果が顕著に発揮され
るようになる。
【0058】さて、本発明の光学的情報記録用媒体に用
いる記録層組成は、前述のように、初期結晶化過程にお
いても、結晶核生成が極めて少なく、結晶成長速度が速
いという特性を有する。この特性は、GeTe−Sb2
Te3擬似2元合金系記録層と比較した場合に顕著であ
る。すなわち、一般的に初期化時の結晶成長は、結晶核
の生成と該結晶核を中心とした結晶成長の2段階からな
る。結晶化は結晶化温度以上融点以下で進むが、結晶核
生成は結晶化温度近傍の比較的低温域、結晶成長は融点
近傍の比較的高温域で主として進行する。
【0059】したがって、初期化操作において記録層が
溶融せず、固相のみで結晶化が進行するような熱平衡に
近い条件では、まず、昇温過程において図12(a)に
示すように結晶核が生成し、さらに昇温すると結晶核生
成はほとんど停止し、図12(b)に示すようにすでに
生成した結晶核を中心に結晶成長がおきて結晶粒(結晶
子)が成長して、図12(c)のように記録層全面を覆
い尽くすことで、結晶化が完了する。
【0060】本発明共晶系記録層は、このような結晶化
過程を経過した場合、結晶核生成が極めて少ない一方、
結晶成長速度が大きいので、図12(d)に示すよう
に、個々の結晶粒径が大きくなり、数十μm以上となる
こともある。あるいは、結晶核を中心とした樹状成長を
して島状構造を形成し、島と島の間に非晶質状態が残っ
たりすることもある。
【0061】さらには、共晶系特有の相分離が生じるこ
ともある。そこで、本発明では、前述のように六方晶の
実質単一相でありながら、結晶子内部に原子レベルでひ
ずみを分散させた配向性の高い結晶構造を実現するため
の、特に初期化方法への配慮が求められるのである。即
ち、本発明において好ましい上記結晶相を形成させるた
めには、記録層の初期結晶化方法を下記のように工夫す
るのが好ましい。
【0062】ここで、本発明のもうひとつの重要な要素
である記録層の初期化方法につき詳述する。記録層は通
常スパッタ法等の真空中の物理蒸着法で成膜されるが、
成膜直後の状態(as−deposited状態)で
は、通常非晶質であるため、通常はこれを結晶化させて
未記録消去状態とする。この操作を初期化と称する。初
期結晶化操作としては、例えば、結晶化温度(通常15
0〜300℃)以上融点以下での固相でのオーブンアニ
ールや、レーザー光やフラッシュランプ光などの光エネ
ルギー照射でのアニール、溶融初期化などの方法が挙げ
られるが、上記好ましい結晶状態の記録層を得るために
は、溶融初期化が好ましい。
【0063】図2で示されるような柱状成長は、いわゆ
るデンドライト成長で、溶融金属が再凝固する際の結晶
成長においてみられる種々の組織の一例であるからであ
る。固相でのアニールの場合は、熱平衡を達成するため
の時間的余裕があるために、他の結晶相が形成されやす
いし、部分的に非晶質状態も残りやすい。溶融初期化に
おいては、再結晶化の速度が遅すぎると熱平衡を達成す
るための時間的余裕があるために他の結晶相が形成され
ることがあるので、ある程度冷却速度を速めるのが好ま
しい。また、溶融状態で長時間保持されると、記録層が
流動したり、保護層等の薄膜が応力で剥離したり、樹脂
基板等が変形するなどして、媒体の破壊につながるので
好ましくない。
【0064】例えば、融点以上に保持する時間は、通常
10μs以下、好ましくは1μs以下とすることが好ま
しい。また、溶融初期化には、レーザ光を用いるのが好
ましく、特に、走査方向にほぼ平行に短軸を有する楕円
型のレーザ光を用いて初期結晶化を行う(以下この初期
化方法を「バルクイレーズ」又は「バルク初期化」と称
することがある)のが好ましい。この場合、長軸の長さ
は、通常10〜1000μmであり、短軸の長さは、通
常0.1〜5μmである。
【0065】なお、ここでいうビームの長軸及び短軸の
長さは、ビーム内の光エネルギー強度分布を測定した場
合の半値幅から定義される。このビーム形状も短軸方向
における局所加熱、急速冷却を実現しやすくするため、
短軸長を5μm以下、さらには2μm以下とすることが
より好ましい。レーザ光源としては、半導体レーザ、ガ
スレーザ等各種のものが使用できる。レーザ光のパワー
は通常100mWから10W程度である。記録層に照射
される正味の初期化パワー密度(レーザ光のパワーにパ
ワー効率を乗じて、これをレーザの照射面積で割った
値)は、通常、4mW/μm2以上の値をする。ここ
で、好ましくは、初期化パワー密度を4.4mW/μm
2以上とすることであり、より好ましくは、初期化パワ
ー密度を4.5mW/μm2以上とすることである。初
期化パワー密度を上記範囲にすることで、初期結晶化後
の記録層の結晶状態を好ましい特定の六方晶とすること
が容易になる。なお、上記で好ましいとするパワー密度
及びビーム形状と同等のものが得られるならば、他の光
源を使用してもかまわない。具体的にはXeランプ光等
があげられる。
【0066】バルクイレーズによる初期化の際、例えば
円盤状の記録媒体を使用した際、楕円ビームの短軸方向
をほぼ円周方向と一致させ、円盤を回転させて短軸方向
に走査するとともに、1周(1回転)ごとに長軸(半
径)方向に移動させて、全面の初期化を行うことができ
る。こうすることで、周方向のトラックにそって走査さ
れる記録再生用集束光ビームに対して、特定方向に配向
した多結晶構造を実現できる。
【0067】1回転あたりの半径方向の移動距離は、ビ
ーム長軸より短くしてオーバーラップさせ、同一半径が
複数回レーザー光ビームで照射されるようにするのが好
ましい。その結果、確実な初期化が可能となると共に、
ビーム半径方向のエネルギー分布(通常10〜20%)
に由来する初期化状態の不均一を回避することができ
る。一方、移動量が小さすぎると、かえって前記他の好
ましくない結晶相が形成されやすいので、通常半径方向
の移動量は、通常ビーム長軸の1/2以上とする。
【0068】少なくとも、溶融再結晶化によって本発明
の光学的情報記録用媒体を得ることができたかどうか
は、TEM観察で結晶子が図10のような柱状構造を有
することを確認するとともに、初期化後の未記録状態の
反射率R1と、実際の直径1μm程度の記録用集束光ビ
ームで非晶質マークのオーバーライトを行った後の再結
晶化による消去状態の反射率R2とが実質的に等しいか
どうかで判断できる。ここでR2は、10回オーバーラ
イト後の消去部の反射率である。
【0069】従って、本発明の光学的情報記録用媒体
は、初期結晶化後の未記録部の反射率R1、10回オー
バーライト後の消去部の反射率をR2とするとき、下記
関係式(1)を満たす必要がある。
【0070】
【数5】 ΔR = 2|R1−R2|/(R1+R2)×100(%) ≦ 10 …( 1) ここで、10回オーバーライト後の消去部の反射率R2
を判断指標とする理由は、10回のオーバーライトを行
えば、1回の記録だけでは未記録状態のまま残りうる結
晶状態反射率の影響を除去し、光学的情報記録用媒体全
面を少なくとも1回は記録・消去による再結晶化した状
態とすることができるからである。一方、オーバーライ
トの回数が10回を大きく超えると逆に、繰り返しオー
バーライトによる微視的変形や、保護層からの異元素の
拡散等、結晶構造の変化以外の要因が反射率変化を引き
起こすため、本発明の光学的情報記録用媒体が得られた
か否かの判断が困難となるからである。上記関係式
(1)においては、ΔRが10%以下なるようにする
が、5%以下とすることが好ましい。5%以下とすれ
ば、より信号ノイズの低い光学的情報記録用媒体を得る
ことができる。
【0071】例えば、R1が17%程度の相変化媒体で
は、概ねR2が16〜18%の範囲にあればよい。初期
化エネルギービームの走査速度は、通常3〜20m/s
程度の範囲である。尚、上記消去状態は、必ずしも記録
用集束レーザー光を実際の記録パルス発生方法に従って
変調しなくても、記録パワーを直流的に照射して記録層
を溶融せしめ、消去パワーにより再結晶化させることに
よっても得られる。
【0072】本発明共晶系材料に対して、所望の結晶状
態を得るには、この初期化エネルギービームの記録層平
面に対する走査速度の設定が特に重要である。基本的に
は、オーバーライト後の消去部分の結晶状態と類似の結
晶状態を得ることが重要であるから、集束光ビームを使
って実際にオーバーライトする場合の集束光ビームの記
録層面に対する相対的な走査線速度に近いことが望まし
いのであるが、具体的には、本発明の光学的情報記録用
媒体に用いる記録層を用いたオーバーライト記録を行う
ことが可能な最高線速度の20〜80%程度の線速度で
初期化エネルギービームを走査する。
【0073】なお、オーバーライト可能な最高線速度と
は、例えば、ここではその線速度で消去パワーPeを直
流的に照射したときに、消去比が20dB以上となることを
いう。消去比は、単一周波数で記録された非晶質マーク
の信号のキャリアレベルとPeの直流照射による消去後
のキャリアレベルとの差として概ね定義される。消去比
の測定は例えば以下のように行う。まず、十分な信号特
性、(すなわち反射率や信号振幅またjitterなどが規定
値を満たす特性)が得られる記録条件において、記録す
るマーク長変調信号のなかで周波数の高い条件(最短マ
ークとスペース繰り返し)を選び単一周波数として10
回オーバーライトして非晶質マークをつくり、キャリア
レベル(記録時C.L.)を測定する。その後、非晶質マー
クに対して直流照射を1回、消去パワーPeを変えなが
ら行い、このときのキャリアレベル(消去後C.L.)を測
定し、記録時C.L.と消去後C.L.の差、すなわち消去比を
算出する。直流照射のパワーPeを再生光パワー程度か
ら増加させていくと、消去比は一般に一度大きくなり、
下がり、また大きくなる傾向があるが、ここではパワー
Peを大きくし始めたときにみられる消去比のはじめの
ピーク値をそのサンプルの消去比とする。初期化エネル
ギービームの走査速度は、上記のように規定された最高
線速度の概ね20%より低い速度で初期化エネルギービ
ームを走査すると相分離が生じて単一相が得られにくか
ったり、単一相であっても、結晶子が特に初期化ビーム
走査方向に伸びて巨大化したり、好ましくない方向に配
向したりする。好ましくは、オーバーライト可能な最高
線速度の30%以上の速度で初期化エネルギービームを
走査すればよい。一方、オーバーライト可能な最高使用
線速度とほぼ同等、すなわち概ねその80%より高い速
度で初期化エネルギービームを走査した場合、初期化走
査で一旦溶融した領域が再度非晶質化してしまうので好
ましくない。走査線速度を早くすると溶融した部分の冷
却速度は速くなり、十分再結晶化するには、再固化まで
の時間が短くなるからである。記録用の直径1ミクロン
程度の集束光ビームでは溶融領域周辺の結晶領域からの
結晶成長による再結晶化はそのような短時間でも完了で
きるが、初期化楕円光ビームで走査した場合は、長軸方
向の溶融領域面積が広くなるため、実際のオーバーライ
ト時よりは、走査線速度を低くして、再凝固中の再結晶
化を溶融領域全域に行き渡らせる必要がある。このよう
な観点から、初期化エネルギービームの走査線速度は、
オーバーライトの最高線速度の70%以下とすることが
好ましく、60%以下とすることがより好ましく、50
%より低くすることが最も好ましい。
【0074】初期化時の走査線速度及び照射パワーは、
具体的には、下記のように初期化された結晶レベルの反
射率を再生光ビームで再生して判断するのが望ましい。
図13は、初期結晶化後の媒体の反射率R1に相当す
る、再生光出力であるIgと、初期化ビームの単位面積
あたりのパワー密度を初期化ビームの走査線速で規格化
したパワーとの関係を示す概念図である。Igは、具体
的には、再生用集束光ビームをフォースサーボ及びトラ
ッキングサーボをかけて走査した場合の、再生光強度に
比例する光検出器出力として得られることが多く、ディ
スク状媒体では、通常は、記録トラックに沿ったある半
径1周分のIgの平均値を用いる。初期化には短軸が約
1μmで波長が800nm程度の楕円状のレーザー光ビ
ームを用いた場合であるが、同様の形状のエネルギービ
ームであれば、ほぼ同様の結果が得られると考えられ
る。比較的低線速、すなわち、使用に供されるオーバー
ライトの最高線速の概ね20%以下の低線速で初期化ビ
ームを走査した場合、図13中の曲線αで示すように、
低パワー密度領域で、一旦Igが増加したのち飽和して
平坦となる領域Aがある。図14にマーク長変調記録し
た場合に、オーバーライト回数によるマーク長乃至マー
ク間のジッタ、あるいは、データ・ツー・クロック(da
ta to clock)ジッタの変化を示す。
【0075】オーバーライト回数0とは、初期化後の未
初期化状態に初めて記録した場合であり、オーバーライ
ト1回とは、その上に初めてオーバーライトした状態で
あり、以後、さらにオーバーライト回数を重ねて10回
程度でほぼジッタは一旦落ち着く。領域Aでは図14の
折線4(●)で示すように、1〜5回程度のオーバーラ
イトまでジッタが非常に高くて好ましくない。さらに、
この場合には、オーバーライトにより消去された結晶状
態の反射率が徐々に増加し、数式(1)のΔRが10%
を超える。結晶構造は六方晶であっても、おそらく、記
録層温度が融点に達することなく固相で結晶化したた
め、図15のTEM像に示すように、針状結晶が十分成
長せず、非晶質領域が残存し、反射率を低下させている
ものと考えられる。このパワー密度を上げていくと、I
gが図13の遷移領域δRにおいて不連続的に増加し、
次なる平坦領域Bが現れる。遷移領域においてIgは、
ディスク1周にわたって非常に凹凸があり、部分的に反
射率がばらついている。なお、特このように不均一性が
大きい場合の図13中のIgは、複数周にわたる平均値
を採用している。遷移領域δRにおいては、図14中の
折線3(×)で示すように、初回からジッタが非常に高
く、複数回オーバーライトを繰り返してもなかなか低下
しない。ディスク1周中のむらが大きいためである。領
域Bでは、正確には初期化パワーの増加とともに、反射
率が緩やかに増加する。領域Bにおける結晶構造も六方
晶であるが、図16のTEM像で示すように、初期化ビ
ーム走査方向に数十μm以上にわたって、結晶子が伸び
ており、本発明において望ましい柱状組織が形成されて
いないことがわかる。また、その内部での配向性変化に
よる濃淡の変化もほとんどない。この領域BではXRD
パターンから求められる(012)面に対応する2θも
概ね28.85度以上となる。つまり、結晶子内よりは
結晶粒界に配向変化による歪みが蓄積しているものと考
えられる。
【0076】これは、高パワー化によって記録層が溶融
している上に低線速で再結晶化が顕著であるために、溶
融領域が移動していくにつれ、再凝固時に再結晶化して
生成される結晶粒径が途切れることなく、つながってし
まうものと考えられる。また、各点における冷却速度も
比較的小さいので、結晶の歪みが少ない構造を達成しう
るものと考えられる。このような結晶構造の記録層にマ
ーク長記録を行うと、比較的低線速でのオーバーライト
では図14に折線7(▲)で示すようにジッタの変化は
少ないが、概ね初期化ビーム走査速度の2倍以上の高線
速でのオーバーライトを行った場合に、特異な増加を示
す。具体的には図14に折線5(△)で示すように、初
期化直後の未記録状態に初回記録した場合のジッタは良
好であるが、オーバーライトを1回だけ行った場合(D
OW1回)に、一旦ジッタが増加し、その後、5〜10
回目のオーバーライトにかけてジッタが低下する。この
1回目のオーバーライトにおけるジッタ増加減少を、ジ
ッタバンプと称する。
【0077】すなわち、初期化線速度が遅い場合のB領
域の結晶状態は高線速でオーバーライトしたときにジッ
タバンプが顕著で好ましくない。さらに高パワー密度に
すると、膜破壊や基板の変形が生じる領域Cとなるの
で、好ましくない。一方、使用に供されるオーバーライ
トの最高線速の20〜80%、好ましくは20〜70
%、より好ましくは20〜60%の速度で初期化を行っ
た場合には、曲線βで示すように、低パワーではやは
り、直線dd’とaa’の間に反射率が低い結晶状態の
領域Aが現れ、高パワー化するにつれ、直線aa’とb
b’の間で反射率が不均一に上レベルに増加する遷移領
域δRが現れ、その後の直線bb’とcc’の間に高反
射率の結晶状態である領域Bが現れ、cc’を超えると
破壊領域Cとなる。この変化そのものは同様であるが、
高線速化するにつれ遷移領域δRにおける反射率の不連
続な変化が小さく不明瞭となり、領域Bの反射率は、低
線速の場合に比べ低くなる。また、領域Bの方が領域A
に比べ図9のパターンが主となる回折像が得られる。こ
れは、領域Bの方が、より(012)面が記録層平面に
平行に配向した結晶状態となっていることを意味する。
【0078】その結晶構造及び配向性は本発明で好まし
い範囲となり、配向性のそろった針状結晶子からなる六
方晶の実質単一相の多結晶構造をとる。B領域の反射率
は、線速が速いほど低くなる。この領域では、数式
(1)のΔRを10%以下とできる。一般に、結晶子の
サイズが小さいほど反射率が低くなることと対応し、実
際にTEM観察で見られる結晶子サイズも特に長軸方向
が小さくなる。
【0079】また、このような初期化状態を未記録状態
としてオーバーライトを行うと、低線速からオーバーラ
イト可能な上限の線速まで、図14に折線6(□)で示
すように、ジッタバンプ現象が抑制されて好ましい。以
上まとめると、図13の初期化ビームの走査速度とパワ
ーで規定される初期化状態において、線速度がオーバー
ライト可能な最高線速度の20〜80%、好ましくは2
0〜70%、より好ましくは20〜60%にある領域B
が本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記録層状態を
実現でき、さらに、高線速側で初期化することで、高線
速でオーバーライトした場合の消去状態と、同様の結晶
構造を実現でき、オーバーライト回数の初期のジッタバ
ンプをより低く押さえることができる。かかる関係は、
本発明の光学的情報記録用媒体の共晶系記録層を有し、
その少なくとも一方が耐熱性保護層で覆われた構成を有
する記録媒体を初期化したときに、ほぼ共通して現れ
る。さて、このような初期化条件をもってしても、Sb
/Te<3、特にx/(1−x)=70/30=2.3
3以下では、AgSbTe2と類似の面心立方晶(a軸
=約6Å)となりやすい。
【0080】面心立方晶の混合を防ぐためには、Sbx
Te1-xにおけるx/(1−x)は3以上(これは0.
75≦xに相当する)とすることが好ましく、3.5以
上(これは0.78≦xに相当する)とすることがより
好ましく、4.0以上(これは0.8≦xに相当する)
とすることが特に好ましい。特に、0.8≦xの場合に
は、(012)面を主ピークとするXRDパターンが得
られやすくなる。特開平1−303643号公報では類
似の共晶組成を有するGeSbTeなる記録層が開示さ
れているが、該公報の明細書の第1図に開示されている
Sb80Te20のXRDパターンにある2θ=50度以下
の低角度の3本のピークだけでは、六方晶か立方晶の区
別すら困難であり、本来単相であることも結論づけられ
ない。
【0081】たとえ六方晶単一相であると仮定しても、
c軸長や(012)面の面間隔を本発明で好ましいとす
る範囲あることは読みとれない。かつ、それらを意図的
に制御すること、たとえば初期化条件の詳細が不明で、
たとえ六方晶単一相であったとしても本発明で好まし
い、優先配向性や柱状組織、微細な結晶子サイズとその
内部に歪みを有する極めて有用な多結晶構造を示唆する
とは考えられない。さらに、実施例における記録方式も
マーク位置記録であり、オーバーライト1回目のジッタ
バンプの有無及びその改善方法も示唆されていない。
【0082】欧州特許EP957、476号(特開20
00−43415号公報)によれば、類似の共晶組成を
有するAg−Sb−Te合金で、面心立方晶が得られて
いるが、これは主としてx/(1−x)が3近傍より低
い組成を主たる対象とし、またAgが添加されているた
めであろう。本発明者らもSb−Teの2元系でもSb
/Te比が3以下特に2.33(Sb/Te=70/3
0)以下では、立方晶が生じ得ることを確認している。
【0083】また、Sb/Te比が3を越えて大きくな
るにつれ、Sb相やSb2Te3の相分離が見られるとの
記載があるが、本発明で留意したような特に、高線速で
エネルギービームを照射する溶融初期化方法によれば、
そのような相分離は見られず、六方晶単一相が得られ
る。そもそも、この文献においては、実際上、意図的に
AgないしはAgSbTe2を添加することで立方晶を
安定化させていると考えられる。本発明では、Ag及び
Auは立方晶との混相を生じうる、好ましくない添加元
素と見なされる。
【0084】他方、GeTe−Sb2Te3の疑似2元系
記録層、特にGe2Sb2Te5においては、初期化後や
消去後に面心立方晶の単一相準安定相を形成することが
知られているが、本発明者らが作成したGe2Sb2Te
5においては、図17の透過顕微鏡像に示すようにそも
そも結晶粒界が明確な粗大結晶粒の存在が問題となって
いる。また、図18はその薄膜X線回折法によるX線回
折パターンであり、格子定数約6Åの面心立方晶のパタ
ーンに一致している。
【0085】実用上は、他元素の添加等により結晶粒の
微細化が図られ、結晶子サイズそのものは、さらに小さ
く0.1μm以下になっているが、それは一方で結晶粒
界そのものを増やしている。また、結晶子内部での結晶
構造が剛直で、粒界における歪みが大きい。つまり、た
とえ結晶子サイズを小さくしても、特に非晶質マーク長
方向に、マーク周辺における結晶成長を連続的に制御で
きず、あくまで結晶子単位でしか制御できないことを意
味する。
【0086】このことは、結晶子サイズがマークサイズ
の1/10程度に近づくと、もはやマーク長の制御が離
散的にしか行えす、それがマーク端でのジッタの増加に
つながるため、ある程度以上ジッタを下げるのが困難に
なっていることを意味しており、高密度記録を行う際に
は致命的な問題となる。本発明のごとく、ある程度結晶
子サイズを維持して結晶粒界そのものを低減し、かつ、
柔軟な結晶構造により粒界の歪みを小さくし、マーク長
方向と結晶子成長方向をそろえて、連続的なマーク長制
御をするほうが、より有効にジッタを低減できるのであ
る。一般的に、原子の最稠密充填構造として面心立方晶
と六方晶がありうるが、六方晶では、層状構造をとって
おり、層の重なり方には比較的自由度を有する。したが
って、六方晶をまず選択することは、結晶構造に柔軟性
をもたらし、特定方向に温度変化のみにしたがって結晶
子の成長を自由自在に制御するのに都合がよいと考えら
れる。Ge2Sb2Te5近傍組成の記録層は、結晶成長
が比較的遅くても、非晶質領域全面を結晶粒で埋め尽く
すことにより再結晶化を達成している。すなわちGeT
e−Sb2Te3擬似2元合金系記録層では、結晶核生成
を促進することで、高線速での消去時に高速結晶化を達
成している。しかし、結晶核生成は、通常、結晶成長に
比べて融点よりかなり低い温度で最大となるため、室温
近傍でも徐々に再結晶化が進んでしまうので好ましくな
いという問題点も露呈している。また、国際公開WO
00/72316号公報には、本発明の光学的情報記録
用媒体に用いる記録層の結晶状態と類似する、結晶状態
が記載されている。しかし、上記公報に記載された発明
は、初期結晶化操作を特に工夫するものでないため、光
学的情報記録用媒体の初期結晶化後の結晶状態が本発明
のような特定の多結晶状態にはなっていない。本発明
は、初期結晶化操作を制御して、初期結晶化後の記録層
の結晶状態と、集束光ビームによる記録消去後の結晶状
態とを同一の結晶相とすることにより、信号ノイズが飛
躍的に低減され、ジッタ特性に優れる光学的情報記録用
媒体を得るという従来にない効果を有する。
【0087】以下において、本発明の光学的情報記録用
媒体に用いる記録層を用いた光学的情報記録用媒体を実
用化するための他の留意事項について簡単に述べてお
く。記録媒体としては通常、図19(a)や、図19
(b)に示すような多層構成がとられる。すなわち、基
板上に、本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記録層
とその両面に耐熱性の誘電体保護層を積層するのが好ま
しい。そして、記録再生光ビーム入射とは反対側に反射
層を設けることが多いが、必ずしも必須ではない。ま
た、入射面側に、半透明な吸収性膜を光吸収の制御用に
設けることも適宜行われるし、保護層において、特性の
異なる材料を多層化することも行われる。
【0088】記録層の厚さは、通常1nm以上である
が、好ましくは5nm以上であり、特に好ましくは10
nm以上であり、また通常30nm以下、好ましくは2
5nm以下、特に好ましくは20nm以下である。あま
りに薄いと、結晶と非晶質状態の反射率の間に十分なコ
ントラストが得られ難く、また結晶化速度が遅くなる傾
向があり、短時間での記録消去が困難となりやすい。ま
た、反射率が低くなりすぎる傾向にもある。
【0089】一方、あまりに厚いと、やはり光学的なコ
ントラストが得にくくなり、また、クラックが生じやす
くなる。また、熱容量が大きくなり記録感度が悪くなり
やすい傾向にもある。さらにまた、相変化に伴う体積変
化が著しくなるため、オーバーライトを繰り返した際
に、記録層自身やその上下に設けることができる保護層
に微視的かつ不可逆な変形が蓄積されノイズとなりやす
い。その結果、繰り返しオーバーライト耐久性が低下す
る傾向にもある。書き換え型DVDのような高密度媒体
ではノイズに対する要求はいっそう厳しいために、より
好ましい記録層の厚さは20nm以下である。
【0090】上記記録層は所定の合金ターゲットを不活
性ガス、特にArガス中でDCまたはRFスパッタリン
グにより得ることができる。また、記録層の密度はバル
ク密度の通常80%以上、好ましくは90%以上であ
る。ここでいうバルク密度ρとは、通常下記(2)式に
よる近似値を用いるが、合金塊を作成して実測すること
もできる。
【0091】 ρ=Σmi ρi (2) (ここで、mi は各元素iのモル濃度であり、ρi は元
素iの原子量である。)スパッタ成膜法においては、成
膜時のスパッタガス(通常Ar等の希ガス:以下Arの
場合を例に説明する)の圧力を低くしたり、ターゲット
正面に近接して基板を配置するなどして、記録層に照射
される高エネルギーAr量を多くすることによって、記
録層の密度を上げることができる。高エネルギーAr
は、通常スパッタのためにターゲットに照射されるAr
イオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プ
ラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速さ
れて基板に達するものかのいずれかである。
【0092】このような高エネルギーの希ガスの照射効
果をatomic peening効果というが、一般
的に使用されるArガスでのスパッタではAtomic
peening効果により、Arがスパッタ膜に混入
される。膜中のAr量により、Atomic peen
ing効果を見積もることができる。すなわち、Ar量
が少なければ、高エネルギーAr照射効果が少ないこと
を意味し、密度の疎な膜が形成されやすい。
【0093】一方、Ar量が多ければ、高エネルギーA
rの照射が激しく密度は高くなるものの、膜中に取り込
まれたArが繰り返しオーバーライト時にvoidとな
って析出し、繰り返しの耐久性を劣化させやすい。従っ
て、記録層中の適当なAr量は、0.1原子%以上、
1.5原子%未満である。さらに、直流スパッタリング
よりも高周波スパッタリングを用いた方が、膜中Ar量
が少なくして、高密度膜が得られるので好ましい。
【0094】本発明の光学的情報記録用媒体の構造の他
の構成要素について説明する。本発明で使用する基板と
しては、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン
などの透明樹脂、あるいはガラス、アルミニウム等の金
属を用いることができる。通常基板には深さ10〜80
nm程度の案内溝が設けられているので、案内溝を成形
によって形成できる樹脂製の基板が好ましい。
【0095】記録層の相変化に伴う蒸発・変形を防止
し、その際の熱拡散を制御するため、通常記録層の上下
一方又は両方、好ましくは両方に保護層が形成される。
保護層の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定
性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般
的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化
物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフ
ッ化物等の誘電体を用いることができる。
【0096】この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化
物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる
必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御した
り、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特
性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。より具体的
には、ZnSや希土類硫化物等のカルコゲン化合物と酸
化物、窒化物、炭化物、弗化物等の耐熱化合物の混合物
が挙げられる。例えば、ZnSを主成分とする耐熱化合
物の混合物や、希土類の硫酸化物、特にY22Sを主成
分とする耐熱化合物の混合物は好ましい保護層組成の一
例である。
【0097】繰り返し記録特性を考慮すると、保護層の
膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強
度の面から望ましい。誘電体の混合物を用いる場合に
は、バルク密度として上述の式(2)の理論密度を用い
る。ただし、式(2)において、ρiとしては個々の誘
電体の密度を、miとしては個々の誘電体のモル分率を
用いる。保護層の厚さは、一般的に通常1nmから50
0nmである。あまりに薄いと、基板や記録層の変形防
止効果が不十分であり、保護層としての役目をなさない
可能性がある。また、あまりに厚いと、保護層自体の内
部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラ
ックが発生しやすくなる。
【0098】特に、記録再生光入射側の基体と記録層の
間に保護層(下部保護層と称することがある)を設ける
場合、下部保護層は、熱による基体変形を抑制する必要
があるため、その厚さは通常1nm以上、好ましくは5
nm以上、特に好ましくは10nm以上である。薄すぎ
ると、繰り返しオーバーライト中に微視的な基板変形が
蓄積され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなる
傾向にある。一方、下部保護層の厚みは、成膜に要する
時間の関係から通常200nm以下、好ましくは150
nm以下、より好ましくは100nm以である。
【0099】厚すぎると記録層平面で見た基板の溝形状
が変わってしまうことがある。すなわち、溝の深さや幅
が基板表面で意図した形状より小さくなったりする現象
が起こりやすくなる。一方、記録層の記録再生光入射側
とは反対側に保護層(上部保護層と称することがある)
を設ける場合、上部保護層は、記録層の変形抑制のため
に、通常その厚さは1nm以上、好ましくは5nm以
上、特に好ましくは10nm以上である。また、厚すぎ
ると、繰り返しオーバーライトに伴って上部保護層の内
部に微視的な塑性変形が蓄積され、再生光を散乱されて
ノイズ上昇が著しくなる傾向にあるため、通常は200
nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは
100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
【0100】なお、記録層および保護層の厚みは、機械
的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う
干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記
録信号の振幅すなわち記録状態と未記録状態のコントラ
ストが大きくなるように選ばれる。本発明の相変化型情
報記録用媒体は、さらに反射層を設けることができる。
反射層の設けられる位置は、通常再生光の入射方向に依
存し、入射側に対して記録層の反対側に設けられる。即
ち、基板側から再生光を入射する場合は、基板に対して
記録層の反対側に反射層を設けるのが通常であり、記録
層側から再生光を入射する場合は記録層と基板との間に
反射層を設けるのが通常である(図19(a)、(b)
参照)。
【0101】反射層に使用する材料は、反射率の大きい
物質が好ましく、特に放熱効果が期待できるAu、Ag
又はAl等の金属が好ましい。その放熱性は膜厚と熱伝
導率で決まるが、熱伝導率は、これら金属ではほぼ体積
抵抗率に比例するため、放熱性能を面積抵抗率でき、
0.2〜0.6Ω/□とすることが望ましい。特に好ま
しいのは、0.2〜0.5Ω/□である。
【0102】これは、特に放熱性が高いことを保証する
ものであり、本発明の光学的情報記録用媒体に用いる記
録層のように、非晶質マーク形成において、非晶質化と
再結晶化の競合が顕著である場合に、再結晶化をある程
度抑制するために必要なことである。反射層自体の熱伝
導度制御や、耐腐蝕性の改善のため上記の金属にTa、
Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr,Si等を少
量加えてもよい。添加量は通常0.01〜20原子%程
度である。Ta及び/又はTiを15原子%以下含有す
るアルミニウム合金、特に、Alx Ta1-x(0<x<
0.15)なる合金は、耐腐蝕性に優れており本光学的
情報記録用媒体の信頼性を向上させる上で特に好ましい
反射層材料である。
【0103】あるいは、AgにMg,Ti,Au,C
u,Pd,Pt,Zn,Cr,Si,Ge、希土類元素
のいずれか一種を0.01〜10原子%以下含むAg合
金も反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ま
しい。反射層の膜厚としては、透過光がなく完全に入射
光を反射させるために10nm以上が望ましい。また、
あまりに厚すぎても、放熱効果に変化はなくいたずらに
生産性を悪くし、また、クラックが発生しやすくなるの
で、通常は500nm以下である。上部保護層の膜厚を
40nm以上50nm以下とする場合には特に、反射層
を高熱伝導率にするため、不可避的に含まれる酸素など
の不純物量を2原子%未満とするのが好ましい。
【0104】本発明の情報記録用媒体の好ましい層構成
は、再生光の入射方向に沿って順に、第1保護層、記録
層、第2保護層、反射層が設けされている構成である。
即ち、基板側から再生光を入射する場合は、順に基板、
下部保護層、記録層、上部保護層、反射層の層構成とさ
れ、記録層側から再生光を入射する場合は、順に基板、
反射層、下部保護層、記録層、上部保護層の層構成とさ
れるのが好ましい。
【0105】無論、これらの各層はそれぞれ2層以上で
形成されていても良く、また、それらの間に中間層が設
けられていても良い。例えば、基板側入射の場合の基板
/保護層間や、基板とは反対側からの入射の場合の保護
層上に、半透明の極めて薄い金属、半導体、吸収を有す
る誘電体層等を設けて、記録層に入射する光エネルギー
量を制御することも可能である。
【0106】記録層、保護層、反射層は通常スパッタリ
ング法などによって形成される。記録層用ターゲット、
保護層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ター
ゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装
置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で
望ましい。また、生産性の面からも優れている。本発明
の記録用媒体の最表面側には、空気との直接接触を防い
だり、異物との接触による傷を防ぐため、紫外線硬化樹
脂や熱硬化型樹脂からなる保護コートを設けるのが好ま
しい。保護コートは通常1μmから数百μmの厚さであ
る。また、あるいは、硬度の高い誘電体保護層さらにを
設けたり、その上にさらに樹脂層を設けることもでき
る。本発明の光学的情報記録媒体を製造する場合、特に
好ましい製造方法は、膜厚10nm〜100nmの第1
保護層、(SbxTe1-x)(ただし、0.75≦x≦
0.9)で表される組成を主成分とする材料からなり、
光ビームの照射により、互いに光学的性質の異なる結晶
状態と非晶質状態との間で可逆的に相変化する膜厚1n
m〜20nmの該記録層、及び膜厚1nm〜50nmの
第2保護層、面積抵抗率が0.2〜0.6Ω/□である
反射層、をこの順に積層してなり、第1保護層側から記
録層に再生光を入射した時の反射率が15〜25%であ
り、かつ、オーバーライト可能な最高線速度が15m/
s以上の光学的情報記録用媒体の製造方法であって、基
板上に少なくとも該記録層を形成した後、該記録層に、
波長750nm〜850nm、短軸の長さが1μm〜2
μmである楕円状光ビームを、線速度5m/s〜15m
/sでオーバーライト可能な最高線速度の20〜60%
の範囲にあるいずれかの線速度で短軸方向に走査しなが
ら照射して結晶化し初期化するにあたり、該光ビームの
パワー密度を該線速度で除した値が、0.85〜1.2
mW・s/(μm2・m)の範囲とする製造方法であ
る。
【0107】本発明の記録用媒体に使用できる記録再生
光は、通常半導体レーザーやガスレーザーなどのレーザ
ー光であって、通常その波長は300〜800nm、好
ましくは350〜800nm程度である。特に1Gbi
t/inch2 以上の高面記録密度を達成するために
は、集束光ビーム径を小さくする必要があり、波長35
0から680nmの青色から赤色のレーザー光と開口数
NAが0.5以上の対物レンズを用いて集束光ビームを
得ることが望ましい。
【0108】本発明では、前記のように非晶質状態を記
録マークとするのが通常である。また、本発明では、マ
ーク長変調方式によって情報を記録するのが有効であ
る。これは、特に最短マーク長が1μm以下、特に0.
4μm以下となるマーク長記録の際に特に顕著である。
マーク長が長すぎる場合や、マーク位置記録の場合に
は、そもそもある程度十分な特性を得ることが可能であ
るので、本発明による効果が顕在化しにくい。
【0109】記録マークを形成する際、従来の2値の記
録パワーレベル間での変調方式による記録を行うことも
できるが、本発明においては下記のような記録マークを
形成する際にオフパルス期間を設ける3値以上の記録パ
ワーレベル間での変調方式による記録方法を採用するの
が特に好ましい。図20は、本発明の記録方法における
記録光のパワーパターンを示す模式図である。長さnT
(Tは基準クロック周期、nはマーク長変調記録におい
て取りうるマーク長であり、整数値である)にマーク長
変調された非晶質マークを形成する際、(n−j)T
(ただしjは0−2の実数)を、m=n−k(ただしk
は0≦k≦2なる整数)個の記録パルスに分割し、個々
の記録パルス幅をαi T(1≦i≦m)とし、個々の記
録パルスにαi T(1≦i≦m)なる時間のオフパルス
区間を付随させる。ここでαi ≦βi 、あるいはαi
βi-1(2≦i≦mないしはm−1)とするのが好まし
い。なおΣαi +Σβiは通常nであるが、正確なnT
マークを得るためΣαi +Σβi=n−j(jは、−2
≦j≦2なる定数)とすることもできる。
【0110】記録の際、マーク間においては、非晶質を
結晶化しうる消去パワーPeの記録光を照射する。ま
た、αi T(i=1〜m)においては、記録層を溶融さ
せるのに十分な記録パワーPwの記録光を照射し、αi
T(1≦i≦m−1)なる時間においては、Pb<P
e、好ましくはPb≦(1/2)Peとなるバイアスパ
ワーPbの記録光を照射する。
【0111】なお、期間βm Tなる時間において照射す
る記録光のパワーPbは、βi T(1≦i≦m−1)の
期間と同様、通常Pb<Pe、好ましくはPb≦1/2
Peとするが、Pb≦Peとなっていてもよい。上記の
記録方法を採用することによって、パワーマージンや記
録時線速マージンを広げることができる。この効果は、
特にPb≦1/2PeなるようにバイアスパワーPbを
十分低くとる際に顕著である。本記録方式では、本発明
共晶系記録層を用いた相変化媒体で顕著である。その理
由は下記のとおりである。この記録層における非晶質マ
ークの消去は、実質的に、非晶質マーク周辺の結晶領域
との境界からの結晶成長のみで支配されており、非晶質
マーク内の結晶核生成と、該結晶核からの結晶成長過程
は、殆ど再結晶化過程に寄与していない。短時間での消
去を確実にするために、過剰のSb量を多くしていく
と、非晶質マーク記録のために必要な臨界冷却速度が極
めて高くなり、逆に良好な非晶質マークの形成が困難に
なってしまう。
【0112】Sb添加量をふやす事は、非晶質マークの
周辺結晶部からの再結晶化を促進するとともに、溶融再
凝固時の結晶成長速度をも増加させるからである。つま
り、非晶質マーク周辺からの再結晶化速度をある程度以
上増加させると、非晶質マーク記録のために形成した溶
融領域の再凝固時に、溶融領域周辺部からの再結晶化が
進行し、冷却速度が極めて早くなければ、非晶質化する
ことなく再結晶化してしまう傾向が強くなるのである。
【0113】そのうえ、クロック周期が短縮されてオフ
パルス区間が短くなって冷却効果が損なわれるので、n
Tマーク記録の際に記録パルスを分割し、オフパルスに
よる冷却区間を実時間にして1nsec以上、より好ま
しくは、3nsec以上設定することが有効である。
【0114】
【実施例】以下に本発明を実施例を用いて説明するが、
その要旨の範囲を越えない限り本発明は実施例に限定さ
れるものではない。本検討では以下の方法により実験を
行った。光学的情報記録用媒体は、特に断りのない限
り、ポリカーボネート基板上にAr雰囲気下でZnS:
SiO2=80:20(mol%)第一保護層60〜1
00nm、記録層11〜15nm、ZnS:SiO2
80:20(mol%)第二保護層20〜40nm、A
l合金反射層100〜200nm(面積抵抗率約0.4
5Ω/□)をスパッタリング法によって順次成膜し、そ
の上に紫外線硬化型樹脂からなる保護層(オーバーコー
ト層と称する)約5μmをスピンコート法及びUV硬化
により形成した。
【0115】なお、記録層組成は、蛍光X線法で得られ
た各元素のX線強度と化学分析(原子吸光法)で求めた
絶対組成によって校正しておき、通常は蛍光X線法で求
めた。また、初期結晶化は、特に断りのない限り、波長
約810nm、長軸約130μm、短軸約1μmの楕円
状集束光ビームの短軸をディスクの半径方向にそろえ、
ディスクを所定の線速度で回転させながら送りピッチ6
0μm/回転の条件で行った。初期化装置においては、
光学系によるレーザ光のパワー損失を考慮して、光学的
情報記録用媒体に照射される実際のレーザ光のパワー
(実効パワー)を再計算する必要がある。前記実際に照
射されるレーザ光のパワーのパワー密度は、1から前記
パワー損失の値を引いた値であるパワー効率を用いて以
下のように計算される。すなわち、レーザ光のパワーに
パワー効率を乗じ、これをビーム径の面積(簡単には、
長軸と短軸とを乗じることによって算出される面積)で
割ることによって計算される。パワー効率という換算値
は、初期結晶化装置の光学系によって異なり、実施例1
〜4、及び比較例1〜4においては、パワー効率は、”
0.65”であり、比較例6,7においては、パワー効
率は、”1”であった。以後は、初期化ビームのパワー
としては、実効パワーのみを参照する。
【0116】ディスク特性の測定及び反射率Igの測定
には、パルステック社DDU1000を使用し、再生パ
ワーを1mW未満として溝内にフォーカスサーボ及びト
ラッキングサーボをかけて行った。X線回折パターンの
測定は次のように行った。本ディスクのオーバーコート
層側をテープ剥離し、記録層と上部保護層界面を露出さ
せた。X線回折装置(Rigaku社製 RINR15
00)を用いて、図3に示すような構成のソーラースリ
ットを用いた薄膜専用光学系で入射角α=0.5度とす
る薄膜X線回折法によるX線回折パターンの測定を行っ
た。尚、このX線回折装置は、185mmのゴニオメー
ターの半径を有する。図2において、X線の試料表面へ
の入射角は、0.5度と非常に浅く、ポリカーボネート
基板からの回折/散乱の影響を極力押さえる構成とし
た。X線源としてCuKα(銅のKα線)、管電圧50
KV、管電流200mAとし、入射スリット0.4m
m、縦発散制限ソーラースリット:横発散ソーラースリ
ット各8mm、受光スリット0.8m、グラファイトモ
ノクロメーター使用、サンプリング幅0.05度、走査
速度3度/分、測定モードはcontinuous s
canの条件で測定した。なお、120rpmで上記記
録層表面を露出した試料をディスク面内回転させた。さ
らに2θ=26〜31度の範囲において、入射スリット
0.2mm、サンプリング幅0.010度、計数時間3
secにて測定モードをStep Scanにして精密
測定を行った。この結果からCuKα1のみによる半価
幅を計算するにあたっては、以下によるプロファイルフ
ィッティング方法を用いた。即ち、測定プロファイルに
対してpsuedo−Voigt関数を用い、バックグ
ラウンドはリニア関数としてフィッティングを行い、C
uKα1のみによる半価幅を見積もったのである。
【0117】TEM観察および測定は次のように行っ
た。本ディスクのオーバーコート側をテープ剥離し、記
録層表面を露出させた後、表面にZnS:SiO2=8
0:20を1nmスパッタした。基板を機械研磨および
溶剤にて溶解除去し、Cuメッシュで挟んだ。本サンプ
ルを、透過型電子顕微鏡装置(日立製作所社製 H−9
000NA)を用いて、加速電圧300kV、で撮影し
た。回折像を得る場合には撮影時カメラ長1mとし、試
料表面の電子線ビーム径は制限視野絞りにより約0.4
μmまで絞り、ほぼ単一の結晶子の回折パターンが得ら
れるように留意した。
【0118】(実施例1〜3及び比較例1〜4)直径1
20mm、1.2mm厚のポリカーボネート樹脂基板上
に記録層組成In3Ge5Sb71Te21(原子%)として
上記層構成のディスクを作成した。基板上にはトラック
ピッチ1.6μm、溝深さ約35nm、溝幅0.55μ
mのトラッキング用の溝が射出成形により形成されてお
り、消去部の反射率が18%程度の書き換え型コンパク
トディスクとして、オーバーライト可能な最高線速度が
約15m/sであるディスクを作成した。3Tマークと
スペースの繰り返しパターン(Tは約19nsec)の
キャリアレベルの消去比は、15m/sにおいて20d
B以上であった。
【0119】図21に、初期化状態の反射率Igと初期
化ビームの実効パワー密度(初期化パワー密度)と初期
化ビーム走査速度(初期化線速)依存性を2〜8m/s
の走査速度に対して示した。9m/s以上では、非晶質
化のため結晶化が不完全であった。10回オーバーライ
ト後の反射率R2に相当する再生光出力は0.72V
(反射率約18%)で、図において点線αα’及びβ
β’の範囲内で、式(1)の条件が満足された。
【0120】図21において、各点のIgから図13で
説明したような領域わけが可能であった。本発明で好ま
しい結晶構造は、概ね4m/s〜8.5m/s(オーバ
ーライト可能な最大線速15m/sの27%〜57%)
で得られた。より具体的には実施例1〜4、比較例1〜
3の条件で初期化を行った場合についての詳細なデータ
を以下に示す。これらの結晶構造はいずれも、六方晶単
一相であった。X線回折の結果から、いずれも(01
2)面が主ピークであることが確認できた。それぞれの
初期化条件における結晶構造、(012)面のピーク位
置、a軸、c軸の長さ、CuKα1線のみによる半価幅
を表−1にまとめた。ここで、結晶子構造の規定に関し
ては図10、図15、図16のいずれかに類似している
かで記載した。図10とした場合、いずれも結晶子の幅
は約0.2μm以下であった。
【0121】
【表1】
【0122】概ね3m/s以下の低線速領域では(01
2)面のピーク位置が28.85度以上となっている。
また、低初期化パワーで低反射率の領域Aでは、成長方
向のそろった針状結晶の成長が見られない。これらのデ
ィスクに対して、波長約780nm、NA=0.5のD
DU1000テスターを用い、クロック周期Tに対して
EFM変調方式を用いて記録を行った。即ち、3Tから
11Tまでの9種のマーク長とマーク間長を含むコンパ
クトディスク(CD)と互換性のあるマーク長変調記録
である。クロック周期TはCDの標準線速1.2m/s
において、231nsecとし、再生時の線速を1.2
m/sとする。記録時の線速度はその10倍速の12m
/sとし、クロック周期は1/10の23.1nsec
とする。
【0123】記録パワーPwを約20mW,消化パワー
Peを約9mW、バイアスパワーPb=0.8mWとし
て、オレンジブック・パート3(書き換え型コンパクト
ディスク規格)に準拠して、nTマークをn−1個の記
録パルス(Pw照射)とオフパルス(Pb照射)の組に
分割して記録する方法でオーバーライトを行った。ジッ
タとして3Tマーク長ジッタを測定した。その許容値は
コンパクトディスク規格によれば35nsecである。
表−1にオーバーライト特性を示した。
【0124】実施例の場合において、式(1)のΔRは
10%以下となり、12m/sというオーバーライトの
上限線速(オーバーライト可能な最高線速)に近い線速
においても、初回記録のジッタ、オーバーライト1回目
のジッタともに良好な記録が可能であった。 (実施例4)Ge5Sb79Te16を記録層とし、他は基
板、層構成も実施例1と同様にしたディスクを作成し
た。オーバーライト可能な最高線速は、概ねCD線速の
20倍速に相当する24m/sであった。初期化ビーム
の走査速度を8〜10m/sとし、初期化パワー密度を
8.67mW/μm2(初期化パワー密度を初期化ビー
ムの走査速度で除した値が、0.87〜1.1mW・s
/(μm2・m))として、初期化を行ったところ、六
方晶単一相で、薄膜X線回折において(012)面が主
ピークとなる初期化状態が得られた。また、透過型電子
顕微鏡像で、針状結晶子がほぼ初期化ビーム走査方向に
そろって成長していることがわかった。
【0125】記録速度19.2m/sでnTマークをn
/2個(小数点以下切り捨て)の記録パワーPw=約2
0WとオフパワーPb=0.8mWの組に分割して記録
する方式によりオーバーライトを行ったところ、初回記
録、オーバーライト1回〜10回のすべてにおいて、3
Tマーク長ジッタは35nsec以下となり、良好なオ
ーバーライトが可能であった。また、式(1)のΔRも
10%以下であった。
【0126】(比較例5)記録層を実施例1と同じIn
3Ge5Sb71Te21とし、基板、層構成も実施例1と同
様にしたディスクを作成し、Xeフラッシュランプによ
り、ディスク全面に一括して10msec未満のパルス
照射を行って全面を結晶化させた。ディスクそのものは
静止したままとした。初期化後の未記録状態では反射率
が低くなり、(1)式のΔRは20%であった。尚、初
期化後の未記録状態において反射率を高くするために、
記録層が溶融すると思われる照射パワーまで増加させる
と、照射面積が広いため膜破壊が顕著となる。このた
め、初期化は、低パワーでの固相での結晶化とならざる
を得ないものと考えられる。そのTEM観察像を図22
に示すが、特定方向へ優先的に成長した針状結晶子の成
長は見られなかった。また、電子線回折パターンにはハ
ローが混在し、非晶質が残存していることを示唆してい
る。また、実施例1と同様に12m/sでオーバーライ
トしたところ、オーバーライト1回目のジッタが40n
sec以上となった。 (比較例6)1.2mm厚でトラッキング用の溝(トラ
ックピッチ1.6μm、溝幅約0.53μm、溝深さ約
37nm)を形成したポリカーボネイト基板上に、(Z
nS)80(SiO220保護層を97nm、Ge6 Sb
77Te17記録層を20nm、(ZnS)85(SiO2
15保護層を40nm、Al99.5Ta0.5合金を250n
m、それぞれ真空チャンバー内でスパッタにより成膜し
た。その上に紫外線硬化型保護コートを4μm塗布し硬
化して、相変化型の書き換え型光学的情報記録用媒体を
作製した。オーバーライト可能な最高線速度は24m/
sであった。このディスクを、レーザー波長810n
m、ビームの走査速度を4m/s、ビーム径約108μ
m×1.5μmの楕円状のレーザ光で420mWのパワ
ー(初期化パワー密度:2.6mW/μm2、初期化パ
ワー密度を初期化ビームの走査速度で除した値:0.6
5mW・s/(μm2・m))で初期結晶化を行った。
このようにして初期化した光学的情報記録用媒体の式
(1)のΔRを測定したところ、14%となった。これ
は、上記初期結晶化条件では、記録層の結晶状態が本発
明のような特定の六方晶となっていないことを示すもの
である。つまり、上記結晶化条件では、ノイズの高い光
学的情報記録用媒体しか得られず、このような光学的情
報記録用媒体は実使用には向かない。
【0127】(比較例7)1.2mm厚でトラッキング
用の溝(トラックピッチ1.6μm、溝幅約0.53μ
m、溝深さ約37nm)を形成したポリカーボネイト基
板上に、(ZnS)80(SiO220保護層を70n
m、Ge7 Sb78Te15記録層を17nm、(ZnS)
80(SiO220保護層を45nm、Al99.5Ta0.5
合金を220nm(体積抵抗率約100nΩ・m、面積
抵抗率0.45Ω/□)、それぞれ真空チャンバー内で
スパッタにより成膜した。その上に紫外線硬化型保護コ
ートを4μm塗布し硬化して、相変化型の書き換え型光
学的情報記録用媒体を作製した。該トラッキング用の案
内溝には周波数22.05kHzの搬送波に対して±1
kHzで周波数(FM)変調された、振幅(peak−to−
peak)30nmの溝蛇行が付与されており、いわゆるA
TIPにより、螺旋状の溝にそってアドレス情報が付与
されている。この光学的情報記録用媒体を、レーザー波
長約810nm、ビームの長軸約108μm×短軸約
1.5μmの楕円状のレーザ光を長軸が半径方向に揃う
ように配置して、線速3〜6m/sで走査し、400〜
600mWのパワー(初期化パワー密度を初期化ビーム
の走査速度で除した値が0.85mW・s/(μm2
m)より小)を照射して初期化を行った。このようにし
て初期化した光学的情報記録用媒体の式(1)のΔRを
測定すれば12〜20%となると推測される。これは、
上記初期結晶化条件では、記録層の結晶状態が本発明の
ような特定の六方晶となっていないことを示すものであ
る。つまり、上記結晶化条件では、ノイズの高い光学的
情報記録用媒体しか得られず、このような光学的情報記
録用媒体は実使用には向かない。
【0128】
【発明の効果】本発明に係る光学的情報記録用媒体は、
例えば10m/s以上の高線速度を含む広い範囲の線速
度に対してジッタ特性に優れた記録が行える。またオー
バーライトを繰り返し行った後もジッタ特性に優れる。
従って本発明によれば、高線速でのオーバーライトが可
能で経時安定性にも優れたな光学的情報記録用媒体を提
供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 空間群R3mに属するSbの六方晶の結晶構
造を示す模式図である。
【図2】 結晶子がほぼ一定方向に配向した柱状組織を
説明するための模式図である。
【図3】 薄膜用のX線回折パターン測定装置の説明の
ための模式図である。
【図4】 本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の一
例のX線回折パターンにおける、回折角とX線強度の関
係を示す図である。
【図5】 純粋なSb薄膜のX線回折パターンにおけ
る、回折角とX線強度の関係を示す図である。
【図6】 シミュレーションにより得られた理論的なX
線回折パターン及び本発明の光学的情報記録用媒体の記
録層の一例のX線回折パターン(図4と同じ)におけ
る、回折角とX線強度の関係を示す図である。
【図7】 面心立方晶のX線回折パターンと、本発明六
方晶の回折パターンとの比較を示す論理的な図の一例で
ある。
【図8】 In3Ge5Sb71Te21薄膜の透過型電子顕
微鏡(TEM)による電子線回折パターンの一例であ
る。(a)はポジ像、(b)はネガ像である。
【図9】 In3Ge5Sb71Te21薄膜の異なる視野で
の透過型電子顕微鏡(TEM)による電子線回折パター
ンの一例である。(a)はポジ像、(b)はネガ像であ
る。
【図10】 本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の
一例の透過型電子顕微鏡(TEM)による透過電子像で
ある。
【図11】 本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の
一例の透過型電子顕微鏡(TEM)による(a)透過電
子像、(b)電子線回折パターンである。
【図12】 光学的情報記録用媒体の記録層の結晶化過
程を説明するための模式図である。
【図13】 初期化用光ビームのパワー密度と初期化後
の光学的情報記録用媒体の反射率との関係を示す図であ
る。
【図14】 マーク長変調記録した場合の、オーバーラ
イト回数によるジッタ(マーク部ジッタ、マーク間部ジ
ッタ、又はデータ・ツー・クロックジッタ)の変化を説
明するための図である。
【図15】 光学的情報記録用媒体の記録層の一例の透
過型電子顕微鏡(TEM)による透過電子像である。
【図16】 光学的情報記録用媒体の記録層の他の一例
の透過型電子顕微鏡(TEM)による透過電子像であ
る。
【図17】 光学的情報記録用媒体の記録層の他の一例
の透過型電子顕微鏡(TEM)による透過電子像であ
る。
【図18】 光学的情報記録用媒体の記録層の他の一例
のX線回折パターンである。
【図19】 光学的情報記録用媒体の層構成を説明する
ための模式図である。
【図20】 光学的情報記録用媒体の記録に用いるレー
ザー波形(パルス分割方法)の一例を示す図である。
【図21】 初期化用光ビームのパワー密度と初期化後
の光学的情報記録用媒体の反射率との関係を示す図であ
る。
【図22】 比較例5の光学的情報記録用媒体の記録層
の透過型電子顕微鏡(TEM)による透過電子像であ
る。
【図23】 光学的情報記録用媒体に係る記録層の他の
一例のX線回折パターンである。
【図24】 本発明の実施例における光学的情報記録用
媒体の記録層の初期結晶化後及び記録消去後の透過型電
子顕微鏡(TEM)による、透過電子像及び電子線回折
パターンである。
【図25】 本発明の実施例における光学的情報記録用
媒体の記録層の初期結晶化後のX線回折パターン、及び
オーバーライト後の消去状態を含むX線回折パターンで
ある。
【符号の説明】
1 本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の一例の
X線回折パターン 2 シミュレーションにより得られた理論的なX線回
折パターン 3 図13の遷移領域δRの記録層のオーバーライト
回数とジッタの関係 4 図13の領域Aの記録層のオーバーライト回数と
ジッタの関係 5 図13の領域Bの記録層の比較的高線速でのオー
バーライト回数とジッタの関係 6 図13の比較的高線速で初期化した場合の、領域
Bの記録層のオーバーライト回数とジッタの関係 7 図13の領域Bの記録層の比較的低線速でのオー
バーライト回数とジッタの関係
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 7/24 522 G11B 7/24 535G 5D789 535 538C 538 7/26 7/26 B41M 5/26 X (72)発明者 久保 正枝 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内 Fターム(参考) 2H111 EA04 EA23 EA36 FA01 FA12 FA14 FB05 FB09 FB12 FB21 FB30 5D029 JA01 JB18 JB35 JC02 JC09 LB07 MA17 5D090 AA01 AA03 BB05 CC02 CC11 CC14 CC16 DD01 EE01 EE05 FF21 KK01 KK03 KK04 KK20 LL01 LL07 5D119 AA23 AA24 AA26 AA27 BA01 BA02 BB04 DA08 EB04 HA47 HA52 5D121 AA01 GG26 5D789 AA23 AA24 AA26 AA27 BA01 BA02 BB04 DA08 EB04 HA47 HA52

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Sb70Te30共晶点近傍よりも過剰のS
    bを含有し、光ビームの照射により、互いに光学的性質
    の異なる結晶状態と非晶質状態との間で可逆的に相変化
    する記録層を有してなる光学的情報記録用媒体であっ
    て、 初期結晶化後の多結晶状態が、六方晶の実質単一相を主
    体とし、該六方晶が優先配向しており、 該多結晶状態が柱状組織から構成され、該柱状組織の成
    長方向が揃っており、該光学的情報記録媒体の初期結晶
    化後の未記録部の反射率をR1、集束光ビームによるオ
    ーバーライト10回後の消去部の反射率をR2とすると
    き、下記関係式(1) 【数1】 ΔR(%) = 2|R1−R2|/(R1+R2)×100 ≦ 10…(1 ) が成り立つことを特徴とする光学的情報記録用媒体。
  2. 【請求項2】 上記優先配向方向と、前記光学的情報記
    録用媒体を集束光ビームによりオーバーライトした後に
    消去して得られる結晶状態における優先配向方向と、が
    同じである請求項1に記載の光学的情報記録用媒体。
  3. 【請求項3】 初期結晶化後の該結晶状態が空間群R3
    mに属するSbの六方晶であってその一部がTe原子に
    置換された六方晶の実質単一相を主体とし、該六方晶が
    優先配向している請求項1に記載の光学的情報記録用媒
    体。
  4. 【請求項4】 初期結晶化後の該結晶状態が、空間群R
    3mに属するSbの六方晶であってその一部がTe原子
    に置換された六方晶のみで構成される請求項1に記載の
    光学的情報記録用媒体。
  5. 【請求項5】 該柱状組織の成長方向が概ね光ビームの
    走査方向に揃っている請求項1に記載の光学的情報記録
    用媒体。
  6. 【請求項6】 該柱状組織は、明瞭な結晶粒界を有さ
    ず、かつ該柱状組織の成長方向において連続的かつ微小
    な結晶構造の揺らぎを有する、請求項1に記載の光学的
    情報記録用媒体。
  7. 【請求項7】 該記録層の初期結晶化後の未記録部で
    は、透過型電子顕微鏡による透過電子像において像の濃
    淡によって示される配向性の揺らぎの周期が0.5μm
    以下である請求項6に記載の光学的情報記録用媒体。
  8. 【請求項8】 初期結晶化後の該結晶状態が、CuKα
    線をX線源とする薄膜X線回折法によるX線回折パター
    ンにおいて、主ピークが、回折角2θの28゜付近にあ
    る六方晶の(012)面のピークとなる請求項1に記載
    の光学的情報記録用媒体。
  9. 【請求項9】 該X線回折パターンにおいて、回折角2
    θの40゜付近に、分離が認められない明瞭なピークが
    存在する請求項8に記載の光学的情報記録用媒体。
  10. 【請求項10】 初期結晶化後の該結晶状態における六
    方晶単位格子のc軸の長さが、純粋なSb六方晶のc軸
    の長さより短い、請求項1に記載の光学的情報記録用媒
    体。
  11. 【請求項11】 初期結晶化後の該結晶状態における六
    方晶単位格子のa軸の長さが4.30Å〜4.33Åの
    範囲にあり、c軸の長さが10.9Å〜11.25Åの
    範囲にある請求項10に記載の光学的情報記録用媒体。
  12. 【請求項12】 初期結晶化後の該結晶状態が、CuK
    α線をX線源とする薄膜X線回折法によるX線回折パタ
    ーンにおいて、回折角2θで表される主ピークの位置が
    28.70゜〜28.85゜の範囲にある、請求項1に
    記載の光学的情報記録用媒体。
  13. 【請求項13】 初期結晶化後の該結晶状態が、CuK
    α線をX線源とする薄膜X線回折法によるX線回折パタ
    ーンにおいて、主ピークにおけるCuKα1のみによる
    半価幅が0.6゜〜0.8゜の範囲にある、請求項12
    に記載の光学的情報記録用媒体。
  14. 【請求項14】 該記録層が(SbxTe1-x)(ただ
    し、0.75≦x≦0.9)で表される組成を主成分と
    する材料からなる請求項1に記載の光学的情報記録用媒
    体。
  15. 【請求項15】 該記録層が、My(SbxTe1-x1-y
    (ただし、MはAl,In,Ga,Ge,Si,Sn,
    Pb,Pd,Pt,Zn,Zr,Hf,V,Nb,T
    a,Cr,Co,Mo,Mn,Bi,O,N,S,Se
    から選ばれる少なくとも1の元素を表し、0.75≦x
    ≦0.9、0≦y≦0.2)で表される組成を主成分と
    する材料からなる請求項14に記載の光学的情報記録用
    媒体。
  16. 【請求項16】 MがGeであり、0.001≦y≦
    0.08である請求項15に記載の光学的情報記録用媒
    体。
  17. 【請求項17】 該記録層が、AzGey(Sbx
    1-x1-y-z(ただし、AはIn又はGaから選ばれる
    少なくとも1の元素を表し、0.75≦x≦0.9、
    0.001≦y≦0.08、0.03≦y+z≦0.
    1)で表される組成を主成分とする材料からなる請求項
    15に記載の光学的情報記録用媒体。
  18. 【請求項18】 請求項1に記載の光学的情報記録用媒
    体に記録及び/又は消去を行うにあたり、該記録層の結
    晶状態を未記録状態及び消去状態とし、非晶質状態を記
    録状態として記録及び/又は消去を行うことを特徴とす
    る記録消去方法。
  19. 【請求項19】 請求項1に記載の光学的情報記録用媒
    体の製造方法であって、基板上に少なくとも該記録層を
    形成した後、該記録層に、短軸の長さが0.5μm〜5
    μmである楕円状光ビームを短軸方向に走査しながら照
    射して結晶化し初期化するにあたり、 該光ビームを、該記録層のオーバーライト可能な最高線
    速度の20%以上、60%以下の速度で走査することを
    特徴とする光学的情報記録用媒体の製造方法。
  20. 【請求項20】 該光ビームを、該記録層のオーバーラ
    イト可能な最高線速度の20%以上、50%より小さい
    速度で走査する請求項19に記載の光学的情報記録用媒
    体の製造方法。
  21. 【請求項21】 (SbxTe1-x)(ただし、0.75
    ≦x≦0.9)で表される組成を主成分とする材料から
    なり、光ビームの照射により、互いに光学的性質の異な
    る結晶状態と非晶質状態との間で可逆的に相変化する記
    録層を有してなる光学的情報記録用媒体の製造方法であ
    って、 基板上に少なくとも該記録層を形成した後、該記録層
    に、短軸の長さが0.5μm〜5μmである楕円状光ビ
    ームを短軸方向に走査しながら照射して結晶化し初期化
    するにあたり、 該光ビームを、該記録層のオーバーライト可能な最高線
    速度の20%以上、50%より小さい速度のいずれかの
    速度で走査することを特徴とする光学的情報記録用媒体
    の製造方法。
  22. 【請求項22】 少なくとも、膜厚10nm〜100n
    mの第1保護層、(SbxTe1-x)(ただし、0.75
    ≦x≦0.9)で表される組成を主成分とする材料から
    なり、光ビームの照射により、互いに光学的性質の異な
    る結晶状態と非晶質状態との間で可逆的に相変化する膜
    厚1nm〜20nmの記録層、 膜厚1nm〜50nmの第2保護層、面積抵抗率が0.
    2〜0.6Ω/□である反射層、をこの順に積層してな
    り、 第1保護層側から記録層に再生光を入射した時の反射率
    が15〜25%であり、かつ、オーバーライト可能な最
    高線速度が15m/s以上の光学的情報記録用媒体の製
    造方法であって、 基板上に少なくとも該記録層を形成した後、該記録層
    に、波長750nm〜850nm、短軸の長さが1μm
    〜2μmである楕円状光ビームを、線速度5m/s〜1
    5m/sのいずれかの線速度で短軸方向に走査しながら
    照射して結晶化し初期化するにあたり、 該光ビームのパワー密度を該光ビーム走査の線速度で除
    した値が、0.85〜1.2mW・s/(μm2・m)
    の範囲にある請求項19に記載の光学的情報記録用媒体
    の製造方法。
  23. 【請求項23】 (SbxTe1-x)(ただし、0.75
    ≦x≦0.9)で表される組成を主成分とする材料から
    なり、光ビームの照射により、互いに光学的性質の異な
    る結晶状態と非晶質状態との間で可逆的に相変化する記
    録層を有してなる光学的情報記録用媒体であって、 該結晶状態が、空間群R3mに属するSbの六方晶であ
    ってその一部がTe原子に置換された六方晶のみで構成
    され、該六方晶が光ビームの走査方向に優先配向した柱
    状組織からなることを特徴とする光学的情報記録用媒
    体。
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