JP2003191476A - インクジェットプリンタ、及びインクジェットヘッド - Google Patents

インクジェットプリンタ、及びインクジェットヘッド

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JP2003191476A
JP2003191476A JP2001393508A JP2001393508A JP2003191476A JP 2003191476 A JP2003191476 A JP 2003191476A JP 2001393508 A JP2001393508 A JP 2001393508A JP 2001393508 A JP2001393508 A JP 2001393508A JP 2003191476 A JP2003191476 A JP 2003191476A
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ink
nozzle
coating layer
flow path
molecular weight
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Application number
JP2001393508A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Sasaki
佐々木  洋
Yutaka Ito
伊藤  豊
Makoto Kurosawa
誠 黒沢
Yoshinari Suzuki
能成 鈴木
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Ricoh Printing Systems Ltd
Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
Hitachi Printing Solutions Inc
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】安定なインク充填が行えるインクジェットヘッ
ド、安定な画像形成が行えるインクジェットプリンタ、
および安定な吐出を行えるインクジェットプリンタ用イ
ンクを提供すること。 【解決手段】液体インクを吐出することで画像を形成す
るインクジェットプリンタ用のインクジェットヘッドに
おいて、該インクジェットヘッドのインク吐出ノズルの
内孔とヘッド内のインクの流路面に平均分子量2000
0以上のポリエチレングリコールからなる層を有するこ
とを特徴とするインクジェットプリンタ用のインクジェ
ットヘッド。該インクジェットヘッドを用いたインクジ
ェットプリンタ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェットプ
リンタ、及びインクジェットプリンタ用のインクジェッ
トヘッド、及びインクに関し、インクが流れるインク流
路の流路面が親インク性にされたインクジェットヘッド
とその製造方法、及び親インク性を発揮するためのイン
クに関する。
【0002】
【従来の技術】紙やOHPシート等の用紙にインクを噴
き付けて画像を形成するインクジェットプリンタは、電
子写真方式のプリンタに比べて装置が小型であるためオ
フィスばかりでなく家庭へもかなり普及している。
【0003】このプリンタの画像形成はインクジェット
ヘッドのノズルから用紙に向かってインクを吐出するこ
とで、用紙上にインクが付着することで達成される。そ
の際、ノズル近傍にインクが付着・乾燥すると、これに
新たに吐出されたインクが接触し、吐出方向が変化して
しまうことがある。このため、通常のインクジェットプ
リンタではインクジェットヘッドのノズル側の表面には
インクを弾く処理(撥インク処理)が施されている。ま
たノズル側の表面をワイプする機構も設けられている。
【0004】ところで、インクジェットヘッド内のイン
クが流れるインク流路は狭い(細い)ため、流路面に何
の処理も施されないとインクが充填し難い。即ちインク
流路内に気泡が生じ、インクの充填を阻害する。
【0005】なお、ここでいうインク流路は液体インク
が溜められているインクタンク等のインク室からヘッド
のノズルの出口近傍周りの撥インク被膜層が形成してい
ない部分(この部分の説明は後述する)までを意味して
いる。
【0006】そこで、インク流路には親インク性を持た
せるための処理を行うことが提案されている。例えばイ
ンク流路面を粗化する(特開平4−339663号公
報、特開平8−267753号公報)、エチレングリコ
ール・ポリプロピレングリコール等の親水(親インク)
性物質を塗布する・あるいは酸化等で親インク物質層を
形成する(特開平5−169667号公報)、オゾンや
酸素プラズマを照射する(特開平7−101068号公
報、特開平7−276629号公報)、あるいはこれら
の処理を組み合わせるといった方法(特開平8−108
535号公報)等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】親インク性に加工処理
した部品でインクジェットヘッドを製作する際、その部
品を接着すると、接着剤が流路にはみ出し、その部分の
接触角が高くなる。そこで、この場合はヘッドを組み立
てた後に親インク処理が必要になる。この処理に適する
のは親インク性物質を塗布する方法である。
【0008】しかし、エチレングリコール、ポリプロピ
レングリコール等バルクが常温で液体の材料は塗布後、
徐々に揮発するため、ある程度時間が経過すると親イン
ク性が失われるという問題がある。そこで、親インク性
の樹脂をインク流路に塗布する方法が考えられる。しか
し、ポリビニルアルコール、デキストリン等の親インク
性樹脂で作製される膜の水との接触角は50°前後、組
成によって異なるがインクジェットプリンタ用インクに
対しても20〜30°前後と高いため、インク流路の幅
が数十μmの場合は更なる親インク性が求められる。
【0009】この点で、ポリエチレングリコールは平均
分子量によっても異なるが、水との接触角が5〜15°
程度と低いためインク流路の幅が数十μmの場合でも十
分対応できる親インク性を有している。ただポリエチレ
ングリコールでも平均分子量が700前後までは液体な
ので揮発の問題がある。平均分子量が1000以上にな
るとグリース状となり、2000以上では常温で固体状
態になる。
【0010】この場合、何らかの溶媒に希釈してインク
流路に流し、溶媒が乾燥することで、ポリエチレングリ
コールの薄膜、即ち親インク膜を形成するという方法を
とることができる。インク流路の幅が数十μmと小さい
場合は親インク膜の薄膜化は重要である。
【0011】また厚さが0.1μm以下になると、ヘッ
ド設計時に親インク膜の厚さを考慮する必要がほとんど
無くなる。しかし、平均分子量が2000以上で200
00未満の場合、形成される膜が結晶性を有するため、
結晶化の際の凝集によって流路面に数μm〜数十μm前
後の凹凸を形成し、インクの流れを阻害するおそれがあ
る。
【0012】以上のようにヘッド組み立て後のインク流
路面の親インク処理においては水との接触角が10°以
下であり、且つ非結晶性の、しかも極めて薄い親インク
膜が求められてきた。
【0013】また仮にインクが乾燥してしまった場合で
も常にインク流路の親インク性が保持されることも望ま
れている。そのためインクにも何らかの親インク性材料
を添加しておくことでその要求を満たすことも求められ
てきた。
【0014】本発明は、種々の問題に対処し、インク流
路に安定したインクの充填が行えるインクジェットヘッ
ドおよびインクジェットプリンタを提供することを目的
とする。
【0015】また本発明は、インク粒子の安定した吐出
が行えるインクジェットヘッドおよびインクジェットプ
リンタを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
種々の方法を検討した結果、平均分子量20000以上
のポリエチレングリコールからなる層を流路面に形成す
ることでインク流路面の親インク性が向上し、しかもイ
ンクに含有させた場合、インクが乾燥してもインク流路
面にポリエチレングリコールの薄膜が形成されるので、
流路面の親インク性が維持できることを見出した。即ち
これによって上記課題を解決できることを見出し本発明
に至った。
【0017】なお手段の具体的な内容は以下に記述され
るものである。 (1).液体インクを吐出することで画像を形成するイ
ンクジェットプリンタ用のインクジェットヘッドにおい
て、該インクジェットヘッドのノズルに至るインク流路
の流路面に平均分子量20000以上のポリエチレング
リコールからなる被膜層を有することを特徴とするイン
クジェットプリンタ用のインクジェットヘッド。 (2).液体インクを吐出することで画像を形成するイ
ンクジェットプリンタ用のインクジェットヘッドにおい
て、該インクジェットヘッドのノズルに至るインク流路
の流路面に平均分子量60000以上のポリビニルアル
コールからなる被膜層が形成され、更に該被膜層の上に
平均分子量10000以上のポリエチレングリコールか
らなる被膜層を有することを特徴とするインクジェット
プリンタ用のインクジェットヘッド。 (3).インクジェットヘッドに供給する液体インクが
溜められているインクタンク等のインク室と、該インク
室からノズルに至るインク流路とを有するインクジェッ
トプリンタにおいて、インク流路の流路面に平均分子量
20000以上のポリエチレングリコールからなる被膜
層を設けたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【0018】(4).インクジェットヘッドに供給する
液体インクが溜められているインクタンク等のインク室
と、該インク室からノズルに至るインク流路とを有する
インクジェットプリンタにおいて、インク流路の流路面
に平均分子量60000以上のポリビニルアルコールか
らなる被膜層が形成され、更に該被膜層の上に平均分子
量10000以上のポリエチレングリコールからなる被
膜層を有することを特徴とするインクジェットプリン
タ。 (5).上記(1)または(2)のノズルの出口近傍周
り、およびその周りを取り巻くインクジェットヘッドの
外表面に液体インクを弾く撥インクの被膜層を設けたこ
とを特徴とするインクジェットプリンタのインクジェッ
トヘッド。 (6).上記(3)または(4)のノズルの出口近傍周
り、およびその周りを取り巻くインクジェットヘッドの
外表面に液体インクを弾く撥インクの被膜層を設けたこ
とを特徴とするインクジェットプリンタ。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態について
説明する。 1.親インク材料・処理方法等 1.1.親インク材料及び溶媒 本発明では親インク材料として平均分子量20000以
上のポリエチレングリコールを用いる。これを溶媒に溶
解し塗料(親インク塗料)とした後、インク流路に塗布
し、ポリエチレングリコールの被膜層を形成する。この
被膜層が親インク層となりインクの充填を円滑にする効
果がある。
【0020】ポリエチレングリコールは化学構造がH−
(OCH2CH2n−OHであり、nの数が多いほど高
分子である。高分子量のものを用いた方が種々の溶媒に
対する接触角の低い、即ち親インク性の高い塗膜が得ら
れる傾向がある。平均分子量700程度までは常温で液
体である。また平均分子量1000前後ではグリース
状、2000前後では固体となる。
【0021】また前述したように平均分子量が小さい場
合、形成される膜が結晶性を有すると、平坦な親インク
表面が得られない場合があるので、用いるポリエチレン
グリコールの平均分子量は20000以上は必要であ
る。
【0022】なお、ポリエチレングリコール層を形成す
る前に、予め平均分子量60000以上のポリビニルア
ルコール層を形成し、その上にポリエチレングリコール
層を形成する場合は、ポリエチレングリコールの平均分
子量が10000以上あれば平坦な親インク表面が得ら
れる。これはポリビニルアルコールがポリエチレングリ
コールと親和性が高いため、界面上でお互いがある程度
混合し合い、結果としてポリエチレングリコールの結晶
性が低下するものと推定する。
【0023】なお、ポリエチレングリコールはいずれの
分子量でも水には可溶である。ただ水の含有量が多いと
ヘッドの構成部材である金属や樹脂表面、或いは接着剤
表面に対する親和性が低下し、塗布した塗料が弾かれて
しまうことがある。そのため溶媒として水は使わない
か、或いは使うにしても含有量は極力少なくすることが
望ましい。
【0024】有機溶媒に対する溶解性は低分子量のもの
ほど高い。有機溶媒のうちハイドロカーボン系のヘキサ
ンやオクタン等にはほとんど溶解しないが、アルコール
系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロ
パノール等)、ケトン系(アセトン、エチルメチルケト
ン、イソホロン等)、エステル系(酢酸エチル、酢酸ブ
チル等)の溶媒には溶解しやすい。特にアルコール系の
ものに対する溶解性が高い。また環状エーテル系のテト
ラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等にも溶解しや
すい。
【0025】なお、平均分子量が50000程度になる
と比較的溶解性の良好なTHFを用いても常温では濃度
が1重量%程度のものまでしか調製できない。平均分子
量が500000程度になると常温では濃度が0.3重
量%程度のものまでしか調製できない。そこでTHFに
水を含有させた溶媒を用いると平均分子量が50000
0を超えるものでも0.3重量%以上の溶液が調製可能
となる。
【0026】形成される膜の厚さはインク流路への塗布
方法、平均分子量、溶媒によっても異なるが、後述の実
施例にも示しているように、平均分子量50000のポ
リエチレングリコールを使用した場合、濃度0.3重量
%では15〜30nm、1.0重量%では35〜70n
m程度の膜厚のものが形成できる。
【0027】本発明の親インク塗料が塗布されるヘッド
部材として考えられる主なものの水との接触角は以下の
通りである。
【0028】アルミニウム(85〜95°)、SUS
(70〜80°)、シリコン(50〜60°)、ガラス
(40〜50°)。この中では接触角の一番大きなアル
ミニウムが一番濡れにくい。
【0029】そこで、アルミニウムに対して塗料として
塗布可能な溶媒を調べたところメタノール(24.0
mN/m)、エタノール(24.1 mN/m)、1−
プロパノール(25.3 mN/m)、2−プロパノー
ル(22.9 mN/m)、1−ブタノール(27.2
mN/m)、t−ブタノール(22.2 mN/
m)、1−ペンタノール(27.5 mN/m)、2−
ペンタノール(26.0mN/m)、アセトン(26.
3 mN/m)、エチルメチルケトン(26.8mN/
m)、酢酸エチル(26.3 mN/m)、酢酸プロピ
ル(26.6mN/m)、酢酸ブチル(27.6 mN
/m)、酢酸t−ブチル(24.7mN/m)、プロピ
オン酸エチル(26.7 mN/m)、プロピオン酸ブ
チル(27.4 mN/m)、ヘキサン酸メチル(2
8.5 mN/m)、ヘキサン酸エチル(27.7 m
N/m)等(()内は表面張力)があった。これらはア
ルミ板との接触角が10°以下であった。しかしアセト
ニトリル(31.8 mN/m)、1,4−ジオキサン
(36.2 mN/m)、2−エトキシエタノール(3
0.6 mN/m)、シクロヘキサノン(37.7 m
N/m)、シクロペンタノン(35.6 mN/m)、
エチレングリコール(50.2 mN/m)、ジエチレ
ングリコール(47.0 mN/m)、トリエチレング
リコール(47.3 mN/m)等(()内は表面張
力)の溶媒はアルミ板との接触角が10°以上である。
【0030】これらの結果より、表面張力でみるとおお
むね30mN/m以下のものがアルミ板に薄く塗布でき
る溶媒と考えられる。また水との接触角がアルミ板より
低いSUSやガラスの場合はもう少し表面張力が大きい
場合でも塗布可能である。以上より用いる溶媒は部材に
よって選択する必要がある。 1.2.塗布方法 親インク塗料のインク流路への塗布方法は、次の通りで
ある。
【0031】ヘッド作製後、インクタンク等のインク室
に親インク塗料を充填する。インク吐出の動作を行わせ
ることにより、インク流路のインク流路面全体に、親イ
ンク塗料を接触させる。その後、余分の親インク塗料を
ノズルより吸引する。またインク室へインクを投入する
口より吸引し、余分の親インク塗料をインク流路よりで
きるだけ吸引除く。その後、ヘッドを乾燥し、親インク
塗料中の溶媒を揮発させ、インク流路への親インク塗料
の塗布が完了する。 1.3.用いるインク 使用するインクは、着色剤とそれを分散或いは溶解する
溶媒が主成分である。着色剤は染料の場合、溶媒中にほ
ぼ溶解した形で存在する。黒の場合はニグロシン系の化
合物が主に使われる。他の色はアゾ系、ローダミン系、
キサンテン系、ナフトール系等が使われる。
【0032】これに対して顔料の場合は溶媒中に分散す
る形で存在する。黒の場合はカーボンブラックが主に使
われる。このインクで、形成された画像は耐光性が高く
長期保存に向いている。しかし、溶媒への分散を良好に
保つため、種々の分散剤が必要である。またカーボンブ
ラック等の顔料は硬度が高いため固体表面の研磨剤とし
て働いてしまうことがある。表面のインクを除去するた
めノズルプレートをシリコーンゴム板に擦らせる際、イ
ンク中の顔料が表面を研磨し、撥インク層を削り取って
しまうことがある。そのため、顔料の研磨に耐えられる
撥インク層が必要となる。なお、他の色はピグメントイ
エロー1、2、3、5、12、13、14、15、8
3、ピグメントオレンジ1、5、13、16、17、2
4、ピグメントレッド1、2、3、4、5、7、9、1
2、22、23、37、38、48、49、50、5
1、53、57、58、60、63、81、83、8
8、112、ピグメントバイオレット1、3、23、
2、ピグメントブルー1、2、15、16、17、ピグ
メントグリーン2、7、8、10等が挙げられる。
【0033】溶媒は、その表面張力と粘度によって画像
形成する際の紙・OHPシートへの浸透性・拡散性を制
御することができる。表面張力が小さいと浸透性・拡散
性が高まる傾向がある。また粘度が低いと浸透性・拡散
性が高まる傾向がある。更に粘度が低いとインクジェッ
トヘッドからの吐出量が多くなる傾向がある。通常イン
クジェットプリンタで用いられるインクは水性のため溶
媒としては水、その他エチレングリコール、エチレング
リコール誘導体、ジエチレングリコール、ジエチレング
リコール誘導体、グリセリン等が主な溶媒となってい
る。
【0034】また用いるインクに親インク材料を添加す
ることで、インク流路乾燥後の流路の親インク性を高め
ることができる。この親インク材料としては平均分子量
20000以上のポリエチレングリコールが特に好適で
ある。ポリエチレングリコールは上記溶媒に対して溶解
性が高い。また添加量がインクに対して1重量%以下で
はインクの中に入っている染料、顔料等の分散性、溶解
性、及びインクの吐出性能にも影響を与える粘度・表面
張力にもほとんど影響を与えない。また前述したが、平
均分子量が20000以上になると溶媒乾燥後の膜の平
坦性が高いので更に好適である。 2.インクジェットヘッド・プリンタ等装置系の構成 2.1.ノズルプレート 図1は、インクジェットヘッドのノズルプレートの断面
を示す模式図である。
【0035】図1に示すように、インクジェットヘッド
に備わるノズルプレート1はインクを吐出するノズル2
を有する。ノズルプレートのインクを吐出する表面に撥
インク層3(被膜層)が設けられている。またノズル2
の内側の一部にも撥インク層が設けられている。すなわ
ち、ノズル2の出口近傍周り、およびその周りを取り巻
くインクジェットヘッドの外表面に液体インクを弾く撥
インクの被膜層3が設けられているのである。
【0036】種々の大きさのノズルから深さが異なる撥
インク層を形成し、種々のインクを用いてインク吐出実
験をした結果、ノズル直径の1/4の深さまでは所望の
インク量が吐出した。しかし、1/4を超えると吐出量
が著しく減少した。これは、ノズル直径の1/4より深
い領域の撥インク層の撥インク作用がインク吐出を妨げ
ているものと考える。
【0037】親インク層4(被膜層)、すなわち、親イ
ンク材料による被膜層をノズル2に設ける。この被膜層
4は、ノズルプレートの撥インク層が設けられていない
部分からインク室までのインク流路の流路面に設けられ
る。 2.1.1.撥インク材料 撥インク処理をするための材料の例としては、分子内に
パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシシラン残基を
有するものが好適である。一般式としては以下のような
ものが示される。
【0038】
【化1】 ノズルプレートの表面に施された撥インクの結合状態を
示す図2に沿って説明する。
【0039】図示のとおり、これら化合物の構造のう
ち、繰り返し単位がCF(CF3)CF2O、或いはCF
2CF2CF2Oのパーフルオロポリエーテル鎖5が撥イ
ンク性を発揮している部位である。この鎖の撥インク性
は水性インクにも、油性インクにも発揮される。表面が
固体で擦られた場合の撥インク性の低下もパーフルオロ
アルキル鎖を有する化合物に比べて小さい。また末端の
Si(OR)3のアルコキシシラン残基6はノズルプレ
ート1表面の水酸基7と反応し、O−Si−Oの結合が
生成し、結果としてノズルプレート表面に撥インク層が
形成される。
【0040】末端がSi(OR)2Rのアルコキシシラ
ン残基も−ORの部分はSi(OR)3のものと同様の
反応をするがRの部分は反応しない。このような反応の
ためノズルプレート表面に単位面積当たりの水酸基が多
いほど撥インク処理剤が密に結合し、より撥インク性の
高い撥インク層が形成される。
【0041】上記一般式の範疇に入る撥インク処理剤
(以下の化合物(1)〜(4))の合成方法を記述す
る。
【0042】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】 (化合物(1)の合成)デュポン社製クライトックス1
57FS−L(平均分子量2500)(25重量部)を
3M社製PF−5080(100重量部)に溶解し、こ
れに塩化チオニル(20重量部)を加え、撹拌しながら
48時間還流する。塩化チオニルとPF−5080をエ
バポレーターで揮発させクライトックス157FS−L
の酸クロライド(25重量部)を得る。これにPF−5
080(100重量部)、チッソ(株)製サイラエース
S330(3重量部)、トリエチルアミン(3重量部)
を加え、室温で20時間撹拌する。反応液を昭和化学工
業製ラジオライト ファインフローAで濾過し、ろ液中
のPF−5080をエバポレーターで揮発させ、化合物
1(20重量部)を得た。 (化合物(2)の合成)チッソ(株)製サイラエースS
330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエ
ースS360(3重量部)を用いる以外は化合物1の合
成と同様にして化合物2(20重量部)を得た。 (化合物(3)の合成)デュポン社製クライトックス1
57FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の
代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3
500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成
と同様にして化合物3(30重量部)を得た。 (化合物(4)の合成)チッソ(株)製サイラエースS
330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエ
ースS360(3重量部)を用い、デュポン社製クライ
トックス157FS−L(平均分子量2500)(25
重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平
均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合
物1の合成と同様にして化合物4(30重量部)を得
た。
【0043】また分子内に複数のパーフルオロポリエー
テル鎖を有することで耐擦性が更に向上することも見出
した。以下にその一般式を示す。
【0044】
【化6】 上記一般式の範疇に入る撥インク処理剤(以下の化合物
(5)〜(8))の合成方法を記述する。
【0045】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】 (化合物(5)の合成)デュポン社製クライトックス1
57FS−L(平均分子量2500)(25重量部)を
3M社製PF−5080(100重量部)に溶解し、こ
れに塩化チオニル(20重量部)を加え、撹拌しながら
48時間還流する。塩化チオニルとPF−5080をエ
バポレーターで揮発させクライトックス157FS−L
の酸クロライド(25重量部)を得る。これにPF−5
080(100重量部)、チッソ(株)製サイラエース
S310(2重量部)、トリエチルアミン(3重量部)
を加え、室温で20時間撹拌する。反応液を昭和化学工
業製ラジオライト ファインフローAで濾過し、濾液中
のPF−5080をエバポレーターで揮発させ、化合物
5(20重量部)を得た。 (化合物(6)の合成)チッソ(株)製サイラエースS
310(2重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエ
ースS320(2重量部)を用いる以外は化合物5の合
成と同様にして化合物6(20重量部)を得た。 (化合物(7)の合成)デュポン社製クライトックス1
57FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の
代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3
500)(35重量部)を用いる以外は化合物5の合成
と同様にして化合物7(30重量部)を得た。 (化合物(8)の合成)チッソ(株)製サイラエースS
310(2重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエ
ースS320(2重量部)を用い、デュポン社製クライ
トックス157FS−L(平均分子量2500)(25
重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平
均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合
物5の合成と同様にして化合物8(30重量部)を得
た。
【0046】撥インク処理剤の平均分子量はパーフルオ
ロポリエーテル鎖の大きさ、分子内のパーフルオロポリ
エーテル鎖の本数によって異なるが、概ね1000前後
から12000前後である。形成される撥インク層は分
子レベルオーダーの層であり、数nmである。膜厚は非
接触式の膜厚測定装置(溝尻光学株式会社製エリプソメ
ーター)かIRスペクトルの反射モードで1200カイ
ザー付近のCF伸縮振動を調べることで求められる。な
お我々の実験の結果、これら撥インク処理剤で処理され
た表面は水に易溶の水性インクだけでなく、水に不溶、
或いは難溶の油性インクも弾くことがわかった。
【0047】そのほか、耐擦性は低いもののパーフルオ
ロポリエーテル鎖の代わりにパーフルオロアルキル鎖を
有する化合物(以下の化合物(9)〜(10))等も撥
インク層を形成する材料として挙げられる。
【0048】
【化11】
【化12】 撥インク処理剤による撥インク層の形成方法は、撥イン
ク処理剤を溶媒に希釈した溶液を調製する。この溶液を
刷毛塗り、スプレーコート、スピンコート、ディップコ
ート等の方法でノズルプレートに塗布する。次に加熱す
ることで、撥インク処理剤のアルコキシシラン残基とノ
ズルプレート表面の水酸基が反応し、撥インク処理剤が
化学的にノズルプレート表面に結合する。こうして撥イ
ンク層が形成できる。本発明で用いる撥インク処理剤は
水分と接触すると加水分解する。また直径10〜50μ
mのノズル内に入っていく必要もある。そのため塗布溶
液調製で用いる溶媒は含水率が低く、且つ表面張力の小
さなフッ素系の溶媒が望ましい。具体的には3M社製の
FC−72、FC−77、PF−5060、PF−50
80、HFE−7100、HFE−7200、デュポン
社製バートレルXF等が挙げられる。
【0049】X、或いはYはパーフルオロポリエーテル
鎖とアルコキシシラン残基との結合部位を表している。
ここの部分に特に限定は無いが、液性が若干塩基性に片
寄っているインクを用いた場合でも加水分解を受けない
ような構造のものが好ましい。具体的にはアミド結合、
エーテル結合等のある構造が望ましい。またエステル結
合や、イオン結合の無い構造が望ましい。
【0050】また撥インク処理剤によって形成される撥
インク層の作製は実施例で示されるテープと水溶性樹脂
による方法が挙げられる。その他ノズルプレート全面に
撥インク層を形成した後、不要の部分をプラズマアッシ
ャー、或いはサンドブラスト等で物理的に除くことも可
能である。
【0051】撥インク層はノズル内面へは表面から深さ
がノズル直径の1/4未満までにする。1/4以上にす
るとインクの吐出が抑制される傾向がある。 2.1.2.ノズルプレート材料 次にノズルプレートの材料を記述する。ノズルプレート
は撥インク処理剤と反応するための水酸基を多く有して
いることが望ましい。そのため金属材料が好ましい。特
に鉄、クロム等の含有量が多いものが好ましい。ただイ
ンクが水性の場合、油性インクに比べて空気中の水分が
溶解しやすく、これがノズルを腐食する原因になる可能
性がある。そのためノズルプレートの材料は防錆性を考
えるとステンレス製が望ましい。具体的にはオーステナ
イト系のSUS201、SUS202、SUS301、
SUS302、SUS303、SUS303Se、SU
S304、SUS304L、SUS304N1、SUS
304N2、SUS304LN、SUS305、SUS
309S、SUS310S、SUS316、SUS31
6L、SUS316N、SUS316LN、SUS31
6J1、SUS316J1L、SUS317、SUS3
17L、SUS317J1、SUS321、SUS34
7、SUSXM7、SUSXM15J1、SUS329
J1、フェライト系のSUS405、SUS410L、
SUS430、SUS430F、SUS434、SUS
447J1、SUSXM27、マルテンサイト系のSU
S403、SUS410、SUS410J1、SUS4
16、SUS420J1、SUS420F、SUS43
1、SUS440A、SUS440B、SUS440
C、SUS440F、析出硬化系のSUS630、SU
S631等が挙げられる。またインクに防錆剤が添加さ
れている場合は腐食しやすい鉄−ニッケル合金等でも用
いることができる。インクジェットヘッドのハウジング
の母材がシリコンウエハで、熱硬化型接着剤でハウジン
グとノズルプレートを接着する際は、シリコンウエハと
線膨張率の近い鉄:ニッケル=50〜65:50〜35
の比率の合金が好ましい。
【0052】金属以外の材料でも酸素プラズマ等で水酸
基を導入することが可能である。この材料としてはシリ
コンウエハ、酸化ジルコニウム等の無機材料やポリイミ
ド、ポリプロピレン等の樹脂が挙げられる。いずれも用
いるインクに接触することで溶解・膨潤等の変化を起こ
さない材料が適応する。 2.2.インクジェットヘッド 図3に本発明のインクジェットヘッドの一実施例に係る
もので、断面を示した模式図である。
【0053】インクはインクジェットヘッドに備えたイ
ンクタンク等のインク室8に充填される。インク室より
インクはインクフィルター9により濾過され、ノズルの
近傍まで満たされる。インク流路は、インク室からノズ
ルの出口側に至る範囲に及ぶ。
【0054】インクを吐出する際は以下のような過程を
経る。まずパソコン等の機器(図3では図示していな
い)より発信された電気信号が電極10から圧電素子1
1に伝わる。これにより圧電素子が収縮・伸長し、この
運動が圧電素子とダイアフラム12の接合部分を介して
ダイアフラムを動かす。するとインク流路のうちインク
室とノズル間のインクが加圧されてノズル2より押し出
される。即ちインクの吐出が行われる。
【0055】インクジェットヘッド13はガイドレール
14上を動きながらインクを吐出する。またインクジェ
ットヘッドはベルト15により動かされる。 2.3.インクジェットプリンタ 図4に本発明のインクジェットプリンタの一実施例に係
るもので、断面を示した模式図である。
【0056】給紙装置16より紙送りロール17で送ら
れた用紙18に向かってインクジェットヘッド13はイ
ンクを吐出させる。インクジェットヘッド13は、用紙
18の移動方向と交差する方向に往復移動する。こうし
て往復移動しながらインクを吐出することで、用紙に画
像が形成される。インクジェットヘッドはベルト15を
介してベルト駆動モーター19により、ガイドレール1
4上を往復するように動がされる。画像の形成された用
紙は用紙受けトレー20に運ばれる。またインクジェッ
トヘッドのノズルプレートに付着したインクを除去する
ため、ノズルプレート部分はシリコーンゴム板21を擦
る。
【0057】次にノズルプレート表面への撥インク層の
形成を図5に沿って詳しく述べる。
【0058】ここでは、インクの吐出側ノズルを有する
表側をおもて面、そうでない面を裏面と記述する。SU
S304製でノズル2の吐出側の直径が40μm、厚さ
80μmのノズルプレート1を用意する。おもて面にマ
スキングテープ22として3M社製工業用テープNo.
966を貼り、その上から1.0X105kg/m2の圧
力を30秒間かける。次に裏面に水溶性樹脂として和光
純薬製ポリビニルアルコール(繰り返し単位は150
0)の15重量%水溶液を塗布する。常温で乾燥すると
溶媒である水が揮発しマスク層23が形成する。マスキ
ングテープを剥離し、上記化合物(1)の3M社製PF
−5080溶液(濃度:0.5重量%)に10分間浸漬
後、120℃で20分間加熱する。こうして撥インク層
3が形成する。次にこのノズルプレートを80℃の水を
入れたビーカー中に入れた後、ビーカーを超音波洗浄器
で10分間振動させる。水を取り替え、再び超音波洗浄
器で10分間振動させる操作を以後4回繰り返し、マス
ク層を除去する。
【0059】こうしてインク吐出ノズルを有する表面に
撥インク層が形成されたノズルプレートを作製する。
【0060】作製したノズルプレート表面の撥インク層
の水との接触角は115〜117°であり、以後の画像
形成で用いるインク(表面張力:50 mN/m)に対
する接触角は90〜92°であった。また撥インク層の
厚さを溝尻光学株式会社製エリプソメーターで測定した
ところ、4〜5 nmであった。
【0061】このノズルプレートを接着剤としてスリー
ボンド社製No.2210を用いて図3に示すインクジ
ェットヘッドに固定し、更にこのインクジェットヘッド
を図4に示すインクジェットプリンタに装着する。
【0062】インクジェットヘッドのインク室に各種平
均分子量の0.3重量%ポリエチレングリコールTHF
溶液を入れ、すべてのノズルよりこのポリエチレングリ
コールTHF溶液を吐出させる。1回あたりの1個のノ
ズルからの吐出量は100pl、吐出回数は各ノズルと
も10回行う。こうしてインク室からノズルまでのイン
ク流路にポリエチレングリコール溶液を接触させる。そ
の後、インク室より0.3重量%ポリエチレングリコー
ルTHF溶液を吸引しながらダイアフラムを数回動か
し、ノズルからも0.3重量%ポリエチレングリコール
THF溶液を吐出させる。こうしてインク室からノズル
までの間の0.3重量%ポリエチレングリコールTHF
溶液を除く。その後、常温で1時間放置する。この間に
THFが揮発し、インク流路面にポリエチレングリコー
ル層が形成される。
【0063】次にインク室にインクを充填し画像の印刷
を行ったところ、用いたポリエチレングリコールの平均
分子量によってインクを吐出するノズルの割合が異なっ
た。表1にその結果を示す。
【0064】
【表1】 なお、用いるインクは、顔料としてケッチンブラック
(ケッチンブラックインターナショナル(株)製)5重量
部、溶媒として水50重量部、グリセリン25重量部、
用紙へのインク浸透性の向上剤としてジエチレングリコ
ールモノ−n−ブチルエーテル10重量部を遊星ボール
ミルで攪拌することで作製した。
【0065】平均分子量が20000未満のポリエチレ
ングリコールを用いた場合はインク吐出が行われないノ
ズルがあり、平均分子量が2000のものを用いた場合
はほとんどのノズルからインクが吐出されなかった。
【0066】それぞれのインクジェットヘッドを分解し
インクが吐出されない原因を調べた。その結果、平均分
子量が20000未満のポリエチレングリコールを用い
たヘッドの場合、吐出されないノズルではインクがイン
ク室からノズルまでたどり着いていないことがわかっ
た。またインクが吐出されたノズルもインク室からノズ
ルまでのインク流路にはインクが完全には付着せず、接
着剤のはみ出した部分にはインクが付着していなかっ
た。これに対して平均分子量が20000以上のポリエ
チレングリコールを用いたヘッドでは、インク流路内は
インクが完全に付着していた。
【0067】インク流路のポリエチレングリコール層の
状態を調べるために以下の操作を行った。まず0.3重
量%ポリエチレングリコールTHF溶液を除き、インク
を充填する前のヘッドを分解して、インク流路のCH伸
縮の強度をIR分析法で調べた。その後インク流路を超
音波洗浄器を用いて水洗しポリエチレングリコール層を
除去後、再びCH伸縮の強度をIR分析法で測定する。
洗浄前のCH伸縮の強度から洗浄後の強度を差し引くこ
とでポリエチレングリコール層の状態を調べた。測定ス
ポットの直径は10μmである。
【0068】平均分子量が20000以上のポリエチレ
ングリコールを用いた場合、インク流路はまんべんなく
ポリエチレングリコール層が形成していることがわかっ
た。しかし平均分子量が20000未満のポリエチレン
グリコールを用いた場合、ポリエチレングリコール層は
膜厚のばらつきが大きく、特に接着剤のはみだしている
部分ではポリエチレングリコール層が形成していないこ
とがわかった。
【0069】以上よりインクジェットプリンタ用のヘッ
ドにおいて、インク流路に平均分子量が20000以上
のポリエチレングリコールからなる層を設けることで、
インクの充填が大きく改善されることが示された。
【0070】またインク流路に平均分子量が20000
以上のポリエチレングリコールからなる層を設けたヘッ
ドを用いたインクジェットプリンタでは所望のインクの
吐出が可能であり、安定な画像形成が可能であることが
示された。
【0071】他の実施例を表2に沿って述べる。
【0072】表2に示す実施例は、インクジェットヘッ
ドのインク室にポリエチレングリコールTHF溶液を入
れる前に以下の操作を行いポリビニルアルコール層を形
成後、ポリエチレングリコール層を形成する以外は先の
実施例と同様な実験を行った。
【0073】
【表2】 この結果からポリエチレングリコール層形成前に平均分
子量60000以上のポリビニルアルコールからなる層
を形成しておくと、ポリエチレングリコール層形成に用
いるポリエチレングリコールの平均分子量が10000
以上であればインク流路に必要な親インク性は確保でき
ることがわかった。
【0074】以上よりインクジェットプリンタ用のヘッ
ドにおいて、インク流路に平均分子量が60000以上
のポリビニルアルコールからなる層を形成後、平均分子
量が20000以上のポリエチレングリコールからなる
層を設けることで、インクの充填が大きく改善されるこ
とが示された。
【0075】またインク流路に平均分子量が60000
以上のポリビニルアルコールからなる層を形成後、平均
分子量が20000以上のポリエチレングリコールから
なる層を設けたヘッドを用いたインクジェットプリンタ
では所望のインクの吐出が可能であり、安定な画像形成
が可能であることが示された。
【0076】ポリビニルアルコール層形成方法について
述べる。
【0077】まず平均分子量20000、あるいは40
000、50000、60000、80000のポリビ
ニルアルコールの0.1重量%溶液(溶媒はエタノー
ル:水=3:1)をインク室に入れ、すべてのノズルよ
りこのポリビニルアルコール溶液を吐出させる。1回あ
たりの1個のノズルからの吐出量は100pl、吐出回
数は各ノズルとも10回行う。こうしてインク室からノ
ズルまでのインク流路にポリビニルアルコール溶液を接
触させる。その後、インク室よりポリビニルアルコール
溶液を吸引しながらダイアフラムを数回動かし、ノズル
からもポリビニルアルコール溶液を吐出させる。こうし
てインク室からノズルまでの間の余分なポリビニルアル
コール溶液を除く。その後常温で1時間放置する。この
間に溶媒が揮発し、インク流路面にポリビニルアルコー
ル層が形成される。
【0078】さらに他の実施例について説明を加える。
【0079】顔料としてケッチンブラック(ライオン
製)5重量部、溶媒として水50重量部、グリセリン2
5重量部、用紙へのインク浸透性の向上剤としてジエチ
レングリコールモノ−n−ブチルエーテル10重量部、
更に親水材料として平均分子量2000、あるいは80
00、16000、20000、70000、5000
00のポリエチレングリコール1重量部を遊星ボールミ
ルで攪拌し、インクジェットプリンタ用インクを作製し
た。
【0080】このインクを先の実施例で述べたインクが
正常に吐出したインクジェットヘッドに充填する。これ
をインクジェットプリンタに装着し、ベタ画像を印刷
後、ヘッドのインク乾燥防止用のキャップをはずし、プ
リンタの電源を切り、1日間放置した。これによりイン
ク流路は溶媒が揮発し乾燥した。電源を入れ、再びベタ
画像を印刷したところ、平均分子量20000以上のポ
リエチレングリコールを含有したインクを用いたものは
昨日印刷したものと変わらない画像を形成した。しか
し、平均分子量20000未満のポリエチレングリコー
ルを含有したインクを用いたものは昨日印刷したものよ
り薄い画像を形成した。
【0081】以上よりインクジェットプリンタ用のイン
クにおいて、平均分子量が20000以上のポリエチレ
ングリコールを含有したものはインク流路が乾燥後も安
定したインク吐出が行えることが明らかになった。
【0082】
【発明の効果】以上に述べたように本発明によれば、イ
ンク流路に安定したインクの充填が行えるインクジェッ
トヘッドおよびインクジェットプリンタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すもので、ノズルプレー
ト断面の模式図。
【図2】本発明の実施形態を示すもので、撥インク処理
剤のノズルプレート表面との結合状態の模式図。
【図3】本発明の実施形態を示すもので、インクジェッ
トヘッドの模式図。
【図4】本発明の実施形態を示すもので、インクジェッ
トプリンタの模式図。
【図5】本発明の実施形態を示すもので、ノズルプレー
トの撥インク層形成方法の概略。
【符号の説明】
1…ノズルプレート、2…ノズル、3…撥インク層、4
…親インク層、5…パーフルオロポリエーテル鎖、6…
アルコキシシラン残基、7…水酸基、8…インク室、9
…インクフィルター、10…電極、11…圧電素子、1
2…ダイアフラム、13…インクジェットヘッド、14
…ガイドレール、15…ベルト、16…給紙装置、17
…紙送りロール、18…用紙、19…ベルト駆動モータ
ー、20…用紙受けトレー、21…シリコーンゴム板、
22…マスキングテープ、23…マスク層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐々木 洋 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 伊藤 豊 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 黒沢 誠 茨城県ひたちなか市武田1060番地 日立工 機株式会社内 (72)発明者 鈴木 能成 茨城県ひたちなか市武田1060番地 日立工 機株式会社内 Fターム(参考) 2C057 AF93 AG07 AP12 AP13 AP59 AP60

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体インクのインク粒子が吐出するノズル
    を有するインクジェットプリンタのインクジェットヘッ
    ドにあって、 前記ノズルを含むインク流路の流路面に平均分子量20
    000以上のポリエチレングリコールからなる被膜層を
    設けたことを特徴とするインクジェットプリンタのイン
    クジェットヘッド。
  2. 【請求項2】液体インクのインク粒子が吐出するノズル
    を有するインクジェットプリンタのインクジェットヘッ
    ドにあって、 前記ノズルを含むインク流路の流路面に平均分子量60
    000以上のポリビニルアルコールからなる被膜層を設
    け、該被膜層の上に平均分子量10000以上のポリエ
    チレングリコールからなる被膜層を設けることを特徴と
    するインクジェットプリンタのインクジェットヘッド。
  3. 【請求項3】液体インクのインク粒子が吐出するノズル
    を有するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッ
    ドに供給する液体インクが溜められているインク室と、
    該インク室から前記ノズルに至るインク流路とを有する
    インクジェットプリンタにおいて、 前記インク流路の流路面に平均分子量20000以上の
    ポリエチレングリコールからなる被膜層を設けたことを
    特徴とするインクジェットプリンタ。
  4. 【請求項4】液体インクのインク粒子が吐出するノズル
    を有するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッ
    ドに供給する液体インクが溜められているインク室と、
    該インク室から前記ノズルに至るインク流路とを有する
    インクジェットプリンタにおいて、 前記インク流路の流路面に平均分子量60000以上の
    ポリビニルアルコールからなる被膜層を設け、該被膜層
    の上に平均分子量10000以上のポリエチレングリコ
    ールからなる被膜層を設けることを特徴とするインクジ
    ェットプリンタ。
  5. 【請求項5】記録用の用紙を送る紙送りロールが備わる
    プリンタ本体と、該用紙上に画像形成を行うインクジェ
    ットヘッドと、該インクジェットヘッドに設けられ、か
    つ液体インクのインク粒子が吐出するノズルとを有する
    インクジェットプリンタにおいて、 前記ノズルを含むインク流路の流路面に平均分子量20
    000以上のポリエチレングリコールからなる被膜層を
    設けたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
  6. 【請求項6】記録用の用紙を送る紙送りロールが備わる
    プリンタ本体と、該用紙上に画像形成を行うインクジェ
    ットヘッドと、該インクジェットヘッドに設けられ、か
    つ液体インクのインク粒子が吐出するノズルとを有する
    インクジェットプリンタにおいて、 前記ノズルを含むインク流路の流路面に平均分子量60
    000以上のポリビニルアルコールからなる被膜層を設
    け、該被膜層の上に平均分子量10000以上のポリエ
    チレングリコールからなる被膜層を設けることを特徴と
    するインクジェットプリンタ。
  7. 【請求項7】記録用の用紙を送る紙送りロールが備わる
    プリンタ本体と、該用紙上に画像形成を行うインクジェ
    ットヘッドと、該インクジェットヘッドに設けられ、か
    つ液体インクのインク粒子が吐出するノズルと、インク
    ジェットヘッドに供給する液体インクが溜められている
    インクタンク等のインク室と、該インク室から前記ノズ
    ルに至るインク流路とを有するインクジェットプリンタ
    において、 前記インク流路の流路面に平均分子量20000以上の
    ポリエチレングリコールからなる被膜層を設けたことを
    特徴とするインクジェットプリンタ。
  8. 【請求項8】記録用の用紙を送る紙送りロールが備わる
    プリンタ本体と、該用紙上に画像形成を行うインクジェ
    ットヘッドと、該インクジェットヘッドに設けられ、か
    つ液体インクのインク粒子が吐出するノズルと、インク
    ジェットヘッドに供給する液体インクが溜められている
    インクタンク等のインク室と、該インク室から前記ノズ
    ルに至るインク流路とを有するインクジェットプリンタ
    において、 前記インク流路の流路面に平均分子量60000以上の
    ポリビニルアルコールからなる被膜層を設け、該被膜層
    の上に平均分子量10000以上のポリエチレングリコ
    ールからなる被膜層を設けることを特徴とするインクジ
    ェットプリンタ。
  9. 【請求項9】記録用の用紙を送る紙送りロールが備わる
    プリンタ本体と、該用紙上に画像形成を行うインクジェ
    ットヘッドと、該インクジェットヘッドに設けられ、か
    つ液体インクのインク粒子が吐出するノズルと、インク
    ジェットヘッドに供給する液体インクが溜められている
    インクタンク等のインク室と、該インク室から前記ノズ
    ルに至るインク流路と、インクジェットヘッドに設けら
    れ、かつインク流路を流れる液体インクに圧力を加える
    圧電素子とを有するインクジェットプリンタにおいて、 前記インク流路の流路面に平均分子量20000以上の
    ポリエチレングリコールからなる被膜層を設けたことを
    特徴とするインクジェットプリンタ。
  10. 【請求項10】記録用の用紙を送る紙送りロールが備わ
    るプリンタ本体と、該用紙上に画像形成を行うインクジ
    ェットヘッドと、該インクジェットヘッドに設けられ、
    かつ液体インクのインク粒子が吐出するノズルと、イン
    クジェットヘッドに供給する液体インクが溜められてい
    るインクタンク等のインク室と、該インク室から前記ノ
    ズルに至るインク流路と、インクジェットヘッドに設け
    られ、かつインク流路を流れる液体インクに圧力を加え
    る圧電素子とを有するインクジェットプリンタにおい
    て、 前記インク流路の流路面に平均分子量60000以上の
    ポリビニルアルコールからなる被膜層を設け、該被膜層
    の上に平均分子量10000以上のポリエチレングリコ
    ールからなる被膜層を設けることを特徴とするインクジ
    ェットプリンタ。
  11. 【請求項11】請求項1または請求項2に記載されたイ
    ンクジェットプリンタのインクジェットヘッドにおい
    て、 前記ノズルの出口近傍周りに液体インクを弾く撥インク
    の被膜層を設けたことを特徴とするインクジェットプリ
    ンタのインクジェットヘッド。
  12. 【請求項12】請求項3から請求項10のいずれか一つ
    に記載されているインクジェットプリンタにおいて、 前記ノズルの出口周りに液体インクを弾く撥インクの被
    膜層を設けたことを特徴とするインクジェットプリン
    タ。
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