JP2003191093A - 溶接用アルミニウム合金ワイヤ - Google Patents
溶接用アルミニウム合金ワイヤInfo
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Abstract
接後の継手における強度を確保できる溶接用アルミニウ
ム合金ワイヤを提供する 【解決手段】 Fe,CrおよびMnを夫々含有する溶
接用アルミニウム合金ワイヤであって、Fe,Crおよ
びMnの固溶量の総和が0.160質量%以下(0質量
%を含む)であり、且つ、Feの固溶量が0.015質
量%以下(0質量%を含む)、Crの固溶量が0.1質
量%以下(0質量%を含む)であることを特徴とする溶
接用アルミニウム合金ワイヤ。
Description
Mnを含有する溶接用アルミニウム合金ワイヤに関する
ものであり、より詳細には、ワイヤの送給性を向上する
技術に関するものである。
ニウムやアルミニウム合金を溶接する際には、アーク溶
接法(例えば、TIG溶接法や消耗電極式ガスシールド
アーク溶接法など)が従来から採用されている。特に消
耗電極式ガスシールドアーク溶接法(例えば、MAG溶
接法やMIG溶接法など)では連続溶接が可能であり、
広く用いられている。
接装置の一例を説明する図である。スプール1に巻かれ
た5〜10kg程度の溶接用アルミニウム合金ワイヤ(以
下、「溶接用ワイヤ」や単に「ワイヤ」と称する場合が
ある)2は、送給装置3に備えられたガイドローラ4を介
した後プッシュ方式の送給ローラ5で送り出され、フレ
キシブルなコンジットチューブ6を介してその端部に接
続された溶接トーチ(以下「トーチ部」と称する場合が
ある)7内に送られる。溶接トーチ7内では、通電チップ
(以下「チップ部」と称する場合がある)8によってワ
イヤに接触給電され、ワイヤ先端と母材9との間にアー
クが発生する。この発生したアークによって母材9は溶
融して掘り下げられ、一方ワイヤは大気と遮断されたシ
ールドガス中で溶滴状となり、母材9側に移行して溶融
プールを生成し、この溶融プールが凝固することによっ
て溶接部が形成される。
得るためには、コンジェットチューブ内やトーチ部、チ
ップ部などにおける溶接用ワイヤの送給性が重要な要件
となる。つまり、溶接用ワイヤの送給性が悪くなると、
通電チップを通過する際のワイヤの通過速度(送給速
度)が不安定になるので、良好な溶接部が得られるよう
に予め設定されている溶接電流とアーク電圧との関係が
維持できなくなるからである。このような不具合現象を
一般に「アーク不安定」と称しており、この結果良好な
溶接部を形成できず、融合不良や形状不良を起こすので
ある。さらに、通電チップを通過する際のワイヤの通過
速度が不安定になると、ワイヤがチップ部において過剰
に通電され、溶融したワイヤが通電チップへ融着すると
いった事態を招くこともある。
ウムワイヤとして、例えば、特開平5-277786号公報に
は、線状の溶接用アルミニウムワイヤの表面に油を付着
させたものが提案されている。しかし、ワイヤに油を付
け過ぎると水素増加によるブローホールの発生といった
新たな問題が生じることになる。
ては、Al−Mg系合金(例えば、JIS Z3232 A5356
やA5183,A5556,A5554など)が広く用いられている
が、これは例えば鋼ワイヤと比べると柔らかいので、送
給ローラで削られ易く、アルミ微粉がコンジットチュー
ブ内に堆積してワイヤの定速送給を阻害することがあ
る。そこで、本発明者らはワイヤ表面の平滑度を高める
ことによって送給ローラで削られ難くしたワイヤを先に
提案しており(特開平7-32186号公報)、効果を挙げて
いる。しかしながら、このワイヤを製造する際の条件制
御が難しく、さらなる改良が望まれていた。
強度が必要となるが、強度を向上させる手段としては、
ワイヤの成分組成を調整する方法が一般的である。例え
ば、ワイヤにFeやCr,Mnなどの元素を含有させる
ことによって継手強度を高める方法がある(例えば、
「溶接学会誌」(2001)Vo.70,P.45やJIS Z3604 選
定指針組合わせ表など)。しかし、ワイヤにこの様な元
素を含有させると、溶接後の継手強度は高くなるもの
の、ワイヤの送給性が却って劣化して安定したアーク溶
接が実現できないことがあった。
況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤの
送給性を向上させることによって安定したアーク溶接が
可能であり、且つ、溶接後の継手における強度を確保で
きる溶接用アルミニウム合金ワイヤを提供することにあ
る。
のできた本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤと
は、Fe,CrおよびMnを夫々含有する溶接用アルミ
ニウム合金ワイヤであって、Fe,CrおよびMnの固
溶量の総和が0.160質量%以下(0質量%を含む)
であり、且つ、Feの固溶量が0.015質量%以下
(0質量%を含む)、Crの固溶量が0.1質量%以下
(0質量%を含む)である点に要旨を有し、さらにMn
の固溶量が0.15質量%以下(0質量%を含む)であ
ることが好ましい。
イヤの成分として、Fe:1質量%以下(0質量%を含
まない)、Cr:0.01〜0.5質量%およびMn:
0.01〜1.2質量%、を夫々含有することによって
溶接後の継手の強度を向上させることができる。本発明
では、さらに他の元素として、Mg:1.5〜6質量%
を含有することによって一層の効果を奏する。
べく様々な角度から検討した結果、アーク不安定になる
現象は、 コンジットチューブ(送給経路)が長い場合や、 溶接トーチの近傍でコンジットチューブを強く曲げた
場合、 コンジェットチューブの巻き径が小さい場合、 長時間連続して溶接を行う場合、 などに顕著に生じることを知った。そして、これらの様
な場合であっても安定したアーク溶接を実現できる溶接
用アルミニウム合金ワイヤの実現を目指してさらに鋭意
検討を重ねた。その結果、溶接用ワイヤを低耐力化する
と、上記課題を見事に解決できることを見出し、本発明
を完成した。以下、本発明の作用効果について説明す
る。
する原因について検討したところ、この原因は溶接用ワ
イヤに付いた癖にあることが分かった。すなわち、上述
した様に溶接用ワイヤはスプールに巻かれているのが一
般的であるが、このとき溶接用ワイヤは塑性変形して
「巻き癖」が付くのである。そして、巻き癖の付いた溶
接用ワイヤがコンジットチューブ内を通ると、ワイヤと
コンジェットチューブとの間に摩擦抵抗が発生するの
で、送給径路が長ければ長いほど抵抗が大きくなり送給
速度を不安定とし、これによってアーク発生も不安定に
なるのである。また、コンジェットチューブが強く曲げ
られている場合やコンジェットチューブが小さい径で束
ねられている場合では、このチューブ内を溶接用ワイヤ
が通るときに癖が付いてしまうこととなる。さらに、長
時間連続して溶接すると、スプールに巻かれている溶接
用ワイヤの巻き径は徐々に小さくなるので、これに伴っ
て溶接用ワイヤの癖も顕著になるのである。
くするか或いはワイヤに付いた癖が直りやすければ、ワ
イヤの送給性を向上させることができ、アーク不安定と
いった不具合が生じないのではないかという着想の下で
検討した。そして、本発明者らは、この様なワイヤを実
現するためには、ワイヤの耐力を小さくすれば良いこと
に想到した。しかしながら、その一方で溶接後の継手強
度は、少なくとも従来程度に確保する必要があるので、
ワイヤには各種元素を含有させる必要がある。
手強度を確保するために溶接用アルミニウム合金ワイヤ
の成分としてFe,CrおよびMnを夫々含有し、且
つ、ワイヤの耐力をできる限り小さくするためにワイヤ
中におけるFe,CrおよびMnの固溶量の総和と、F
eとCrの各固溶量を適切に規定して、継手部の強度と
ワイヤの耐力とのバランスを図ったのである。各成分の
固溶量の範囲を限定した理由は下記の通りである。
160%(「質量%」の意味。以下同じ。)以下(0%を含
む) 溶接後の継手強度を確保するためには、Fe,Crおよ
びMn元素をワイヤに含有させる必要があるが、これら
の元素がワイヤ中に多く固溶すると、固溶強化が起こり
ワイヤの耐力が大きくなる。ワイヤの耐力が大きくなる
と、ワイヤに付いた癖が直り難くなるので、ワイヤを送
給する際の抵抗が大きくなって送給性が低下する。よっ
て、アーク発生が不安定になるのである。本発明ではワ
イヤに含有しているFe,CrおよびMn等の元素は、
化合物として存在していることが好ましく、ワイヤに固
溶しているFe,CrおよびMnの量は、総量で0.160
%以下、好ましくは0.15%以下に低減することが必要で
ある。尚、ワイヤに固溶している各元素の総量は0%で
あることが最も好ましい。
やすい元素であるので、前記各元素の固溶量の総和が本
発明で規定する範囲であっても、Feの固溶量が0.015
%を超えるとワイヤの耐力が大きくなってワイヤに付い
た癖が直り難くなる。よって、ワイヤの送給抵抗が大き
くなり、安定したアークを実現できない。ワイヤの耐力
を小さくするためには、ワイヤ中におけるFeの固溶量
を0.015%以下にする必要がある。好ましくは固溶量を
0.014%以下にするのが望ましい。
化させやすい元素であるので、Crの固溶量が0.1%を
超えるとワイヤの耐力が大きくなり、ワイヤの送給性を
低下させる。よって、安定したアークを実現することが
できない。耐力が小さいワイヤにするためには、ワイヤ
中におけるCrの固溶量を0.1%以下にする必要があ
る。好ましくは固溶量を0.09%以下にするのが推奨され
る。
およびMnの固溶量の総和と、FeとCrの各固溶量が
上記範囲を満足することが重要であり、Mnの固溶量は
特に限定されないが、ワイヤの耐力を一層小さくしてワ
イヤの送給性を向上させるといった観点から、ワイヤ中
におけるMnの固溶量は0.15%以下であることが好まし
い。より好ましくは0.13%以下にすることが推奨され
る。
ヤは、少なくともFe,CrおよびMnを含有するもの
であり、その含有量は特に限定されないが、溶接後の継
手強度を確保する観点から、Fe:1%以下(0%を含ま
ない)、Cr:0.01〜0.5%、Mn:0.01〜1.2%の範囲
に制御することが好ましい。尚、これらの範囲は、ワイ
ヤ中に含有させている各元素の範囲であり、ワイヤ中に
存在している固溶体も含む。これら各成分の限定理由は
下記の通りである。
含有しているが、その含量が1%を超えると溶接後の継
手部分に化合物を生じやすくなり、この化合物が継手強
度を低下させる原因となる。よって、本発明ではFe含
量を1%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.9
%以下にすることが望ましい。尚、本発明では、溶接後
の継手強度を確保するために、Feを含有する必要があ
るので、Fe含有量が0%の場合は本発明ではない。
すると共に、結晶粒径を均一化して継手強度を向上させ
る元素であり、その効果を得るためには0.01%以上含有
することが好ましい。より好ましくは0.02%以上含有す
るのが良い。しかし、その含量が0.5%を超えると、溶
接後に粗大な金属間化合物を生成して継手強度を低下さ
せる原因になるので、好ましい上限は0.5%、より好ま
しい上限は0.4%である。
すると共に、結晶粒径を均一化して継手強度を向上させ
る元素である。また、AlやFeと結合してAl−Fe
−Mn系の化合物を生成して、継手強度を向上させるこ
とができる。この様な効果を得るためには、好ましくは
0.01%以上、より好ましくは0.02%以上含有するのが良
い。しかし、Mn含量が1.2%を超えると、溶接後の継
手部に巨大な化合物を生成して強度を低下する原因とな
るので、好ましい上限は1.2%、より好ましい上限は1.1
%である。
ヤの好ましい化学成分組成は上記の通りであり、残部は
基本的にアルミニウムおよび不可避不純物(ZrやV,
Ag,Bi,Pb,Gaなど)からなるが、必要に応じ
てさらに他の元素としてMgを1.5〜6%含有することが
推奨される。この理由は下記の通りである。
強度を高める元素である。この様な効果を得るために
は、Mgを好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以
上含有することが望ましい。しかし、過剰に含有する
と、ワイヤを伸線加工する際に割れが発生し易くなるの
で、好ましくい上限は6%、より好ましい上限は5.5%で
ある。
合金ワイヤであって、その成分組成が5000系であるとき
は、前記不可避不純物としてSiを含有することがあ
る。Si含有量が1%超になると、溶接後の継手部にM
g−Si系化合物などを生成して、継手部の強度を低下
させる原因となるので、Si含量を好ましくは1%以
下、より好ましくは0.9%以下に抑制することが望まし
い。
CuやZn,Ti,Sn,Ni,Bなどの各元素をワイ
ヤに含有させると、溶接後の継手部における強度をさら
に高めることができる。本発明では、各元素の含有量の
好ましい上限は夫々0.1%であり、二種以上の元素を含
有するときは総量で0.2%以下にすることが推奨され
る。
よって、ワイヤに癖を付き難くするか、癖がワイヤに付
いていても直りやすくしてワイヤの送給による抵抗を小
さくして、アークの発生を安定にするものであるが、ワ
イヤの耐力は引張試験で測定したときに300〜480N/m
m2程度であることが好ましいことを確認している。ワ
イヤの耐力が300N/mm2未満では、ワイヤが例えばコ
ンジェットチューブ内を通過するときに、座屈しやすく
なってワイヤの送給が停止することがある。しかし、ワ
イヤの耐力が480N/mm2を超えると、ワイヤに付いた
癖が直り難くなるので、ワイヤとコンジェットチューブ
内壁との摩擦力が大きくなり好ましくない。
ヤを製造するに際しては、ワイヤ中に存在する各元素の
固溶量が本発明の要件を満足するものであれば特に限定
されない。例えば、下記に示す方法が挙げられる。
鋳造)や連続鋳造法などで製造すれば良い。但し、ワイ
ヤ中の各元素の固溶量は、アルミニウム鋳塊時での固溶
量に大きく影響を受けるので、アルミニウム鋳塊を製造
するに際して固溶量を低減することが好ましい。例え
ば、アルミニウム鋳塊を製造する際の凝固速度や冷却速
度を遅くする方法が挙げられる。
熱間伸線、熱間押出しによってφ5〜20mm程度の線材
にすれば良い。熱間で加工することによって、各元素の
析出を促進できるので、ワイヤ中における固溶量を低減
できるからである。このときの加熱温度は400〜550℃程
度が好ましい。
均質化処理を施すか、または熱間加工(熱間圧延や熱間
伸線、熱間押出し)で得られた前記線材に均質化処理を
施すことが好ましい。この処理によってアルミニウム中
に固溶しているFe,CrおよびMnの拡散をさらに促
進できるので、Al−Fe−Mn系の化合物を生成させ
やすくできるからである。この様な観点から、本発明で
は均質化温度を500〜600℃程度、保持時間を3時間以上
にすることが好ましい。均質化温度が500℃未満のとき
や、保持時間が3時間未満の比較的短時間であれば、F
e,CrおよびMnが充分に拡散せずワイヤ中に固溶し
たままとなり、その結果ワイヤの耐力や継手部の強度が
大きくなる原因になる場合があるからである。
れず、前記アルミニウム鋳塊の表面層を面削した後に均
質化処理を行って熱間圧延等の予備加熱と兼ねても良い
し、熱間圧延等で得られた線材に改めて均質化処理を施
しても良い。また、前記アルミニウム鋳塊に均質化処理
を施した後、表面層を面削し、これを再加熱して熱間圧
延等を行う方法は、圧延等の前に鋳塊表面に生成した酸
化皮膜が少なくなるので、表面品質向上の観点から好ま
しい手段である。
延、冷間伸線またはダイス伸線した後、線材表面の皮を
剥いてφ3〜7mm程度のワイヤ原線とする。そして、こ
のワイヤ原線に中間焼鈍を施した後、φ0.8〜3mm程度
にダイス伸線やロール圧延伸線すると本発明に係る溶接
用ワイヤを製造することができる。
加工による転移を除去できるのでワイヤの強度や耐力を
制御することができるからである。また、中間焼鈍を施
すことによってワイヤ中の各元素は拡散するので、ワイ
ヤ中の固溶量も制御することができる。中間焼鈍の条件
は、焼鈍温度を300〜500℃程度、保持時間を3時間以上
にすることが好ましい。300℃未満では各成分が充分に
拡散せず、本発明の要件を満足する様に固溶量を低減す
ることが難しいからであり、逆に500℃を超えるとF
e,CrおよびMn以外の元素(例えばMg)がワイヤ
に固溶して強度が高くなり過ぎることがあるからであ
る。尚、前記中間焼鈍は、伸線加工(ダイス伸線やロー
ル伸線)と適宜組み合わせて複数回行うことによって、
ワイヤ中の固溶量をさらに低減することができるが、製
造コストや生産性の観点から中間焼鈍は多くても3回程
度までとすることが好ましい。
加工するまでの間の総減面加工率を95%以上とし、この
様なワイヤ原線に中間焼鈍を施すと、各元素がワイヤ中
に化合物として生成し易くなり、ワイヤ中の固溶量を低
減し易いことを本発明者らは確認している。
ヤは、消耗電極式ガスシールドアーク溶接法(例えば、
MAG溶接法やMIG溶接法など)で用いることが好ま
しく、特にMIG溶接法に採用するのが好適である。
金ワイヤは、種々のアルミニウム製部材を溶接する際に
用いることができるが、特に溶接後の継手部に強度が要
求される際に用いると、本発明の効果を充分に発揮する
ことができる。例えば、構造用部材を溶接する際に本発
明のワイヤを用いることができる。この構造用部材の材
質は特に限定されず、例えば、3000系(Al−Mn−M
g系)、5000系(Al−Mg系)および6000系(Al−
Mg−Si系)など公知のものが挙げられ、これらアル
ミニウム合金製の加工材(例えば、板材、押出し材、鍛
造材など)を溶接する際に用いれば良い。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
の鋳塊(φ150mm×4000mm)に均質化処理を施した
後、熱間圧延してφ5〜20mm程度のアルミニウム線材
を得た。この線材を冷間伸線した後、皮を剥いでφ3〜7
mm程度のワイヤ原線とした。原線に中間焼鈍を施した
ものをロール圧延伸線でφ1.2mmとし、巻き径がφ400
mm程度になる様にスプールに巻いたものを供試材(溶
接用アルミニウム合金ワイヤ)とした。表1に均質化処
理の均熱条件[温度(℃)と時間(h)]と、熱間圧延
の開始温度(℃)、中間焼鈍の条件[温度(℃)と時間
(h)]を夫々示す。
の鋳塊を冷間圧延したものをワイヤ原線として上記と同
様の加工を行なった。
Mnの固溶量は、供試材を熱フェノールで残渣抽出した
ものをICP(誘導結合プラズマ)発光分析して算出し
た。このとき、残渣を漉すフィルターは、メッシュサイ
ズが0.2μmのものを用いた。表2に、ワイヤ中におけ
るFe,CrおよびMnの各固溶量とこれら固溶量の総
和を示す。
を行った。試験条件は次の通りである。試験温度:室
温、標点間距離(GL):50mm、クロスヘッド速度:
1mm/min(一定)、N数:5本の平均値。表3に、
引張り特性として、耐力(N/mm2)、強度(N/m
m2)、伸び(%)を夫々示す。
の、供試材ワイヤの送給性、送給抵抗、アーク安定性、
安定アーク継続時間、溶接後の継手強度を調べた。結果
を表3に示す。
名:ダイヘン社製)、3m チップ:「TIP023010」(商品名:トーキンアーク社
製)のφ1.2mmCO2チップ。
のループを1つ作り、且つ、トーチ直上で曲率半径100
mmに曲げた(前記図1参照)。
らワイヤが送り出されるときの抵抗を測定することによ
って、送給性を評価した。このときの評価基準は、○:
抵抗が小さく良好、△:時折抵抗値が変動、×:抵抗が
大きく不良、である。
アーク電圧の変動でアーク安定性を評価した。このとき
の評価は、○:良い、△:時折変動する、×:悪い、で
ある。
2分間行い、チップの融着の有無を見た。
m、開先角度:90℃で、裏当金を付け、開先を横向にし
て2層パルス溶接を行った。この継手部の強度をJIS
Z3121の方法に従って測定した。
トチューブ内に堆積したアルミ合金粉の量を測定した。
〜23V、送り速度:50cm/minで溶接した後、コン
ジット内に堆積したアルミ合金粉を溶剤で流しながら濾
紙に採取してアルミ合金粉の発生量を比較した。但し、
供試材によって溶接時間が異なるので、5分間に発生し
たアルミ合金粉量に換算した値を表3に示す。
〜6は、ワイヤ中の元素(Fe,CrおよびMn)の総
固溶量および各元素の固溶量が、本発明で規定する範囲
にあるので、引張り特性の耐力が小さくなっている。よ
って、ワイヤに付いている癖は直りやすく、送給抵抗が
小さい。このとき送給抵抗の変動幅が小さいので、安定
したアークを継続して実現できている(チップ融着は無
かった)。さらに、ワイヤにはFe,CrおよびMnを
含有しているので、溶接後における継手部の強度も充分
確保している。
少なくとも何れかの要件を満足していない比較例であ
る。No.7は、ワイヤの耐力が大きくなり、ワイヤが変形
し難い。よって、ワイヤの送給性が悪く、送給抵抗の変
動幅が大きくなってアークが不安定となり、最終的には
チップ部で融着を発生している。尚、このワイヤはF
e,CrおよびMnを含有しているが、安定した溶接が
できなかったので、溶接後の継手強度も若干低下した。
は本発明で規定する範囲を満足するが、これらの固溶量
の総和が本発明で規定する範囲から外れている。よっ
て、ワイヤの耐力が若干大きくなり、送給性が悪くなる
ので、溶接中にチップ部でワイヤの融着を発生した。従
って、安定した溶接ができなかったので、溶接後の継手
強度も低下した。
たアークを実現できる溶接用アルミニウム合金ワイヤを
提供することができる。また、本発明に係る溶接用ワイ
ヤは、Fe,CrおよびMnを含有しているので、溶接
後の継手部における強度を確保することができる。
を説明する図である。
ーブ 7:溶接トーチ 8:通電チップ 9:母材
Claims (4)
- 【請求項1】 Fe,CrおよびMnを夫々含有する溶
接用アルミニウム合金ワイヤであって、 Fe,CrおよびMnの固溶量の総和が0.160質量
%以下(0質量%を含む)であり、且つ、 Feの固溶量が0.015質量%以下(0質量%を含
む)、Crの固溶量が0.1質量%以下(0質量%を含
む)であることを特徴とする溶接用アルミニウム合金ワ
イヤ。 - 【請求項2】 Mnの固溶量が0.15質量%以下(0
質量%を含む)である請求項1に記載の溶接用アルミニ
ウム合金ワイヤ。 - 【請求項3】 Fe:1質量%以下(0質量%を含まな
い)、Cr:0.01〜0.5質量%およびMn:0.
01〜1.2質量%、を夫々含有するものである請求項
1または2に記載の溶接用アルミニウムワイヤ。 - 【請求項4】 他の元素として、Mg:1.5〜6質量
%を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載
の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。
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