JP2003189875A - 膵β細胞関連転写因子の遺伝子導入によるインスリン産生細胞の形成誘導 - Google Patents
膵β細胞関連転写因子の遺伝子導入によるインスリン産生細胞の形成誘導Info
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Abstract
し、インスリン産生細胞の形成を誘導するインスリン産
生細胞の形成誘導法を提供すること。 【解決手段】 膵β細胞関連転写因子の遺伝子を、総胆
管を結紮することなく、経総胆管投与によって、膵の組
織幹細胞へ導入し、インスリン産生細胞の形成誘導を行
う。本発明においては、膵β細胞関連転写因子の遺伝子
として、pdx−1、neurogenin3等を用
い、該膵β細胞関連転写因子の遺伝子を膵へ導入するた
めのベクターとして、Cre−loxP組換え系を利用
したアデノウイルスベクター等を用いる。本発明の方法
により、インスリン産生細胞の形成を誘導することによ
り、糖尿病の再生治療を可能とする。
Description
生細胞の形成誘導法、特に、膵β細胞関連転写因子の遺
伝子を、膵へ導入し、インスリン産生細胞の形成を誘導
することを特徴とするインスリン産生細胞の形成誘導法
に関する。
ン産生細胞であるβ細胞数の絶対的減少が認められ、イ
ンスリン分泌不全をきたしている(J Am Optom Assoc 6
9(11),727-32, 1998)。近年、糖尿病の移植医療の観点
から、膵島移植が行われているが、移植用膵島のドナー
不足や術後の拒絶反応に対する長期的な免疫抑制を要す
ることなど、多くの問題が残されているのが現状である
(Ann Med 33(3), 186-92, 2001)。近年、生体内に存
在し、必要に応じて増殖と分化を繰り返す未分化細胞、
すなわち、組織幹細胞への関心が高まっている。組織幹
細胞はES細胞に比べ、その分化段階がより分化した細
胞に近いと考えられるため、比較的容易にインスリン産
生細胞へ分化させることが可能と考えられる。
それを示唆するいくつかの研究結果がこれまで報告され
ている。Ramiyaらは、1型糖尿病のモデル動物と
考えられているNODマウス由来の膵管上皮細胞を単離
培養した後、インスリン産生細胞へ分化誘導したことを
報告している(Nat Med 6(3), 278-82, 2000)。また、
Bonner−Weirらはヒトの膵管上皮細胞を培養
し、インスリン陽性細胞群を形成したことを報告してい
る(Proc Natl Acad Sci U S A 97(14), 7999-8004, 20
00)。これらはいずれも、膵幹細胞が膵管上皮近傍に存
在することを示唆する報告である。更にin vivo
では、Sharmaらが、膵部分切除を施したラットの
膵断端では再生像が認められ、同時に膵管のみならず膵
島でも、膵β細胞特異的転写因子の遺伝子であるpdx
−1の発現が高まっていることを報告している(Diabet
es 48(3), 507-13, 1999)。Kritzikらは、IF
Nγを膵島細胞特異的に過剰発現するトランスジェニッ
クマウスにおいて、本来β細胞特異的転写因子であるべ
きpdx−1を発現する膵管上皮の増生と同時に、膵管
内に膵島の新生が認められると報告している(Am J Phy
siol 269(6 PT 1),E1089-94, 1995、J Endocrinol 163
(3), 523-30, 1999)。これらから、膵の組織幹細胞は
pdx−1などの転写因子活性化のシグナルを受けて内
分泌細胞へ分化することが示唆される。
簡便かつ効率の高いアデノウイルスベクターは多くの研
究で用いられている(Nature 371(6500), 802-6, 199
4、Science 265(5173), 781-4, 1994)。これまで、そ
の投与方法としては主として静脈投与法が用いられてき
たが、肝以外の臓器へは導入効率が極めて低いこと、ま
た全身投与であるため僅かながらも他臓器での外来蛋白
発現による悪影響も否定できないことなど、問題点も挙
げられている。これらの問題を解決する方法として、経
総胆管投与法がある。Peetersらはラットの肝臓
への遺伝子導入の方法として、経総胆管投与を用い、静
脈投与に比し、高率かつ特異的で、免疫応答も低い導入
が可能であることを報告している(Hum Gene Ther 7(1
4), 1693-9, 1996)。更に、RaperとDeMatt
eoは、その際、総胆管を結紮し、膵管へのみウイルス
を注入することで、膵に高い特異性を持たせることに成
功したと報告している(Pancreas 12(4), 401-10, 199
6)。
告であり、マウスでは膵管や胆管の脆弱性から同様の手
法は困難を極める。マウスは種々の遺伝子操作動物を作
製しやすく、加えてこのような外来遺伝子の導入が可能
となれば、各種研究を進める上で大変意義が深い。そこ
で、マウス肝管の結紮を行わないことで、注入時に過度
に膵管に圧をかけることなく適度な流入が可能であれ
ば、この方法は、ヒトにおいては非観血的で安全性の高
い内視鏡的逆行性膵・胆管造影(ERCP)などの技術
と類似点も多く、膵への効果的な遺伝子導入法として臨
床応用も期待できる(Dig Dis Sci 45(2), 230-6, 200
0)。
インスリン産生細胞の形成誘導法、特に、膵β細胞関連
転写因子の遺伝子を、膵へ導入し、インスリン産生細胞
の形成を誘導するインスリン産生細胞の形成誘導法を提
供することにある。
課題を解決すべく、鋭意研究の結果、例えば、β細胞の
分化に必要な転写因子の遺伝子を、膵の組織幹細胞へ導
入し、強制的に発現させることで成熟した膵内分泌細胞
へ分化誘導することができるように、膵β細胞関連転写
因子の遺伝子を、膵へ導入し、インスリン産生細胞の形
成を誘導し、インスリン産生細胞の形成を行うことがで
きること、及び膵への遺伝子導入法として、経総胆管投
与を用い、マウスの場合のように、肝管の結紮を行わず
に、注入時に過度に膵管に圧をかけることなく適度な流
入を行うことにより、膵への効果的な遺伝子の導入が可
能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
の遺伝子を、総胆管を結紮することなく、経総胆管投与
によって、膵の組織細胞へ導入し、インスリン産生細胞
の形成を誘導することにより、インスリン産生細胞の形
成を行うことよりなる。本発明においては、膵β細胞関
連転写因子の遺伝子として、pdx−1、neurog
enin3等が、該膵β細胞関連転写因子の遺伝子を膵
へ導入するためのベクターとして、アデノウイルスベク
ター等が用いられる。本発明の方法により、インスリン
産生細胞の形成を誘導し、インスリン産生細胞の形成を
行うことにより、糖尿病の再生治療が可能となる。ま
た、本発明の遺伝子の膵への導入方法は、ヒトにおいて
は非観血的で安全性の高い内視鏡的逆行性膵・胆管造影
(ERCP)などの技術と類似点も多く、膵への効果的
な遺伝子導入法として臨床応用も期待できるものであ
る。
の遺伝子を、経総胆管投与によって、膵へ導入し、イン
スリン産生細胞の形成を誘導することを特徴とするイン
スリン産生細胞の形成誘導法(請求項1)や、膵β細胞
関連転写因子の遺伝子が、膵β細胞の分化関連転写因子
の遺伝子であり、インスリン産生細胞の形成の誘導が、
膵に存在する組織幹細胞の分化誘導であることを特徴と
するインスリン産生細胞の形成誘導法(請求項2)や、
膵β細胞関連転写因子の遺伝子を、総胆管を結紮するこ
となく、経総胆管投与によって、膵へ導入することを特
徴とする請求項1又は2記載のインスリン産生細胞の形
成誘導法(請求項3)や、膵β細胞関連転写因子の遺伝
子が、pdx−1又はneurogenin3であるこ
とを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のインスリ
ン産生細胞の形成誘導法(請求項4)や、膵β細胞関連
転写因子の遺伝子を、アデノウイルス発現ベクターに組
込んで、膵へ導入することを特徴とする請求項1〜4の
いずれか記載のインスリン産生細胞の形成誘導法(請求
項5)や、アデノウイルス発現ベクターが、Cre−l
oxP組換え系を利用したアデノウイルスベクターであ
ることを特徴とする請求項5記載のインスリン産生細胞
の形成誘導法(請求項6)や、アデノウイルス発現ベク
ターに、レポーター遺伝子EGFPを組込んだことを特
徴とする請求項5又は6記載のインスリン産生細胞の形
成誘導法(請求項7)からなる。
載のインスリン産生細胞の形成誘導法を用いることを特
徴とする糖尿病の再生治療方法(請求項8)からなる。
の遺伝子を、経総胆管投与によって、膵へ導入し、イン
スリン産生細胞の形成を誘導することにより、インスリ
ン産生細胞の形成を行うことよりなる。本発明におい
て、膵β細胞関連転写因子の遺伝子を膵へ導入するに際
しては、従来ラットにおいて報告されていたような、総
胆管を結紮する方法ではなく、総胆管を結紮することな
く、経総胆管投与によって、膵へ導入することにより、
注入時に過度に膵管に圧をかけることなく適度な流入を
行うことができ、膵への効果的な遺伝子の導入が可能と
なる。
写因子の遺伝子としては、pdx−1及びneurog
enin3(Development 127, 3533-3542, 2000)が有
利に利用できる。本発明において、膵β細胞関連転写因
子の遺伝子を膵へ導入するには、ベクターとしてアデノ
ウイルス発現ベクターを用い、該膵β細胞関連転写因子
の遺伝子を組込んで、膵へ導入することができる。アデ
ノウイルス発現ベクターの構築には、Cre−loxP
組換え系を利用したアデノウイルスベクターの作製法
(Hum Gene Ther 10(11), 1845-52, 1999)を用いるこ
とができる。アデノウイルス発現ベクターに組込む膵β
細胞関連転写因子の遺伝子は、該遺伝子を発現する細胞
株からRT−PCR法により全長をクローニングして取
得することができる。例えばマウスpdx−1 cDN
Aは、マウスインスリノーマ由来のβ細胞株であるMI
N6細胞のtotalRNAから、またマウスneur
ogenin3 cDNAはC57BL/6Jマウスの
脳のtotalRNAから、RT−PCR法により全長
をクローニングして取得することができる。
遺伝子の導入を確認するためには、アデノウイルスベク
ターに、レポーター遺伝子としてEGFP(Enhanced G
reenFluorescent Protein)遺伝子を組込むことによっ
て、その緑色蛍光により遺伝子が導入された細胞を判別
することができる。経総胆管投与の方法は、適宜公知の
方法を用いて行うことができる(Hum GeneTher 7(14),
1693-9, 1996)。本発明の方法により、インスリン産生
細胞の形成誘導を起こさせ、インスリン産生細胞の再生
を図ることにより、糖尿病に対する再生治療を行うこと
ができる。
明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定さ
れるものではない。 A.実験方法 A−1.供試動物 全実施例を通して、9週齢で雄のC57BL/6J J
cl、体重25〜28gのマウスを用いた。マウス室
は、気温を一定に保ち、12時間毎の明暗サイクルで、
飲水や食餌は特に制限を加えない状態で維持した。
cDNA(配列番号1)は、マウスインスリノーマ由来
のβ細胞株であるMIN6細胞の全RNAから、またマ
ウスneurogenin3 cDNA(配列番号3)
はC57BL/6Jマウスの脳の全RNAから、RT−
PCR法にて全長をクローニングした後、全塩基配列を
確認し使用した。本発明者の教室において開発したCr
e−loxP組み換え系を利用したアデノウイルスベク
ター作製法(Hum Gene Ther 10(11), 1845-52, 1999)
を用いて、AdV−pdx−1、AdV−ngn3、さ
らに特別なcDNAを組み込まないコントロールの、計
3種類のアデノウイルスベクターを作製した(図1)。
発現カセットには多くの細胞種で強い発現活性をもつC
AG(cytomegalovirus immediate-early enhancer-chi
cken β-actin hybrid)プロモーター下に(Gene 108
(2), 193-9, 1991)、pdx−1 cDNA、またはn
eurogenin3 cDNAを、更にその下流にI
RES、EGFPを組み込むことで遺伝子導入された細
胞が緑色蛍光により判別可能となっている(FEBS Lett
470(3), 263-8, 2000)。尚、生体に投与するアデノウ
イルスベクターはセシウムクロライド勾配精製法を用い
て精製した(J Virol Methods 4(6), 343-52, 1982)。
−1の発現確認 AdV−pdx−1を感染させた293細胞を蛋白抽出
液(150mM NaCl,10mM Tris−HC
l(pH7.4),1mM EDTA,1%NP−4
0,0.1% SDS、0.1% sodium deoxycholat
e)に懸濁し、細胞破砕した。ブラッドフォードアッセ
イ用キット(BioRad,Hercules,CA,USA)を用い、蛋白定
量を行った後、SDSサンプルバッファー(75mM
Tris−HCl(pH6.8),6% SDS,15
% グリセロール,15% 2−メルカプトエタノー
ル、0.015% ブロモフェノールブルー)と混合
し、98℃で5分加熱した。その後、サンプルを10%
ポリアクリルアミドゲルへ電気泳動し、PVDF膜(Mi
llipore,Bedford,MA)へエレクトロブロッティングし
た。蛋白の吸着した膜をウサギ抗マウスpdx−1抗血
清(大阪大学第1内科・梶本先生より寄贈)とともに3
時間室温で振盪し、洗浄後、更にペルオキシダーゼ結合
抗ウサギIgG抗体とともに1時間室温で振盪した。そ
の後、化学発光技術によるウェスタンブロット検出キッ
ト(ECL kit;Amersham Corp.,Arlington Heights, IL,
USA)およびX線フィルム(FUJI MEDICAL X-RAY FILM;F
UJI PHOTO FILM, Kanagawa, Japan)を用いて蛋白の検
出を行った。
後、総胆管の十二指腸合流部位から逆行性に29G針を
刺入し、250μlの乳酸リンゲル液にて調整したアデ
ノウイルスベクター1×109plaque forming units
を、30秒間かけてゆっくりと注入した。その際、過度
の圧が膵管にかかると外傷性の膵外分泌腺炎を惹き起こ
す可能性があるため、膵の腫大が生じないように留意し
た。逆流のないことを確認した後、腹部を縫合した。静
脈投与に際しては、尾静脈より同様に調製したアデノウ
イルス液を注入した(Nat Med 6(5), 568-72, 2000)。
その後、7〜12日で各種検討を行った。
の発現確認 EGFPの発現を確認するため、単離した肝及び膵を固
定せずにスライドグラスにのせ、蛍光顕微鏡にて460
〜490nmバンドパスフィルター及び、510nmロ
ングパスフィルターを用いて観察した。βガラクトシダ
ーゼの発現を確認するため、単離した肝及び膵をOTC
コンパウンド(Tissue-TEC, Miles, Elkhart, In, US
A)に埋包し、液体窒素にて凍結した。その後、凍結切
片作製装置にて10μmの切片を作製し、1%グルタル
アルデヒドで固定し、5-bromo-4chloro-3-indolyl-β-D
-galactosidase(X−Gal)にて4時間の染色を行っ
た。
ンに埋包した。3〜5μm厚の切片を作製し、脱パラフ
ィン処理をした。乾燥させた後、ヘマトキシリン・エオ
ジンにて染色した。また、インスリン免疫染色は以下の
ように行った。脱パラフィン処理後、非特異的染色を避
けるため、10%正常ブタ血清(コスモバイオ社製,東
京,日本)とともに10分間、室温放置した。その後、
ブタ抗ヒト・インスリン抗体(オリエンタル酵母社製,
東京,日本)とともに16時間、低温で放置した。次
に、ビオチン付加されたウサギ抗ブタIgG抗体(DA
KO,京都,日本)とともに30分間、室温で放置し、
最後にDAB(20mg(3,3'-diaminobenzidine, tet
rahydrochloride)、20μl(30% hydrogen peroxida
se in 100ml PBS))とともに5分間、室温で放置し
た。水で洗浄した後、光学顕微鏡にて観察した。
検討するため、各々のアデノウイルスベクターについ
て、4匹以上のマウスの膵から、各4以上の非連続切片
を作製してヘマトキシリン・エオジン染色及びインスリ
ン免疫染色を行った。インスリン陽性細胞群を、インス
リン陽性細胞数が5以上の正常膵島、4以下の正常膵
島、細胞数が4以上の新生膵島様の集塊、3以下の新生
インスリン陽性細胞の4つのグループに分けて観察し、
各アデノウイルス投与群間で比較検討した。
めるため、感染後3日目の293細胞から、Acid Guani
dinium-Phenol-Chloroform法を用いて全RNAを抽出し
た。これを鋳型に一本鎖cDNA合成キット(Reve
rTra Aceα;東洋紡社製.,東京,日本)を用
いて、逆転写反応を行った。生成物をAdV−pdx−
1検出用プライマー(forward primer:ACCATGAACAGTGA
GGAGCAG:配列番号5)、(backward primer:TCCTCTTG
TTTTCCTCGGGTTC:配列番号6),AdV−ngn3(fo
rward primer:TGGCACTCAGCAAACAGCGA:配列番号7)、
(backward primer:ACCCAGAGCCAGACAGGTCT:配列番号
8)検出用プライマーを用いてTaq DNAポリメラ
ーゼ(Gene Taq;和光社製,大阪,日本)によ
るPCR反応で増幅した。また、各々のテンプレートに
加えられる全cDNA量の差を補正するため、HPRT
検出用プライマー(forward primer:CTCGAAGTGTTGGATA
CAGG:配列番号9)、(backward primer:TGGCCTATAGG
CTCATAGTG:配列番号:10)を用いてPCR反応を行
った。
後のマウスより単離した膵から、同様に全RNAを抽出
し、逆転写反応を行った。膵における内因性のpdx−
1(forward primer:TGGATAAGGGAACTTAACCT:配列番号
11)、(backward primer:TTGGAACGCTCAAGTTTGTA:
配列番号:12)、CK19(forward primer:AAGACC
ATCGAGGACTTGCG:配列番号13)、(backward prime
r:CTATGTCGGCACGCACGTCG:配列番号:14)、nes
tin(forward primer:GGAGAGTCGCTTAGAGGTGC:配列
番号15)、(backward primer:GTCAGGAAAGCCAAGAGAA
G:配列番号:16)の発現を定量化するため、各々の
プライマーを用いてTaq DNAポリメラーゼ(Ge
ne Taq,和光社製,大阪,日本)によるPCR反
応を行った。更に2%アガロースゲルによる電気泳動を
行った後、エチヂウムブロマイドにて染色したゲルをF
luor−Chem(Alpha Innotech,san Leandro,C
A)にて撮影し、PCR産物の定量をAlphaEase FC soft
ware(Alpha Innotech)を用いて行った。この方法を用
いて、mRNAの発現レベルを、それぞれHPRTの発
現量に対する比として定量化し、比較検討した。
udent’s−t検定を用い、いずれも、p<0.0
5で有意とした。
遺伝子を発現することができるかを、ヒト胎児腎細胞株
である293細胞を用いて検討した。293細胞へAd
V−pdx−1、AdV−ngn3、コントロールのア
デノウイルスベクターを10moiで感染後、3日目に
EGFPの発現を蛍光顕微鏡で確認した。その後、細胞
を回収し、RT−PCRを施行した。その結果、導入遺
伝子のmRNAの発現が確認された(図2A)。更に、
293細胞から抽出した蛋白を用いて、pdx−1のウ
ェスタンブロットを施行した。AdV−pdx−1を感
染させた293細胞ではマウスのβ細胞株であるMIN
6細胞から抽出した蛋白をコントロールとして、pdx
−1の46kDのバンドが確認できた(図2B)。同様
のバンドは、コントロールでは認められなかった。以上
の結果から、今回作製したアデノウイルスベクターによ
り目的の遺伝子と蛋白を細胞内で発現することが確認さ
れた。
認 本実施例で作製したアデノウイルスベクターではCAG
プロモーター下に目的遺伝子を、更にその下流にIRE
S−EGFPを組み込むことで遺伝子導入された細胞が
EGFPの緑色蛍光により判別可能となっている。アデ
ノウイルスベクター投与後、10日目の肝及び膵の外観
を蛍光顕微鏡下で観察した(図3;参考写真1参照)。
励起されたEGFPの発現は、肝では経静脈投与に比し
明らかに経総胆管投与において強いことがわかる(図3
A、B;参考写真1参照)。また膵において、EGFP
の発現は経静脈投与ではまったく認められなかったが、
経総胆管投与では広範囲に認められた(図3C、D;参
考写真1参照)。また、どちらの場合も脾臓や胃にはE
GFPの発現は認めなかった。乳酸リンゲルのみを投与
したコントロールマウスでは、EGFPの発現は認めら
れなかった。
ゼ遺伝子の発現確認 アデノウイルスベクターの組織レベルでの導入効率を更
に検討するため、本発明者は、CAGプロモーター下に
(Gene, 108(2), 193-9, 1991)、βガラクトシダーゼ
遺伝子を発現するアデノウイルスベクターであるAdV
−LacZを経静脈投与及び経総胆管投与法にて投与
し、肝及び膵の凍結切片を作製してX−gal染色を行
った(図3E、F;参考写真1参照)。膵においては、
経静脈投与ではまったく発現を確認できなかったが、経
総胆管投与では膵管を中心に広範な発現を確認した(図
3F;参考写真1参照)。また、組織学的に明らかな炎
症像や、破壊像を認めなかった。以上の結果から、膵へ
の本発明者のアデノウイルスベクターを用いた遺伝子導
入において、経総胆管投与は経静脈投与に比し非常に有
効性が高くかつ安全であることが示された。以下の膵へ
の遺伝子導入の実験に際しては、経総胆管投与法にて投
与した。
膵の組織化学的解析 次に、膵でβ細胞分化に関連する転写因子を高発現さ
せ、その影響を組織学的に検討した。投与後7〜12日
で膵を単離し、パラフィン切片を作製し、ヘマトキシリ
ン・エオジン染色及び抗ヒト・インスリン抗体を用いた
インスリン免疫染色を行った。AdV−pdx−1投与
群では、12日目の膵組織像のヘマトキシリン・エオジ
ン染色において、膵実質内に多数の膵管増殖領域が認め
られた(図4A;参考写真2参照)。その領域ではイン
スリン陽性細胞が単独であるいは膵島様の集塊として散
在しており、インスリン産生細胞の新生と考えられた
(図4B;参考写真2参照)。こうした新生像は、コン
トロールのアデノウイルスベクター投与群においては認
められなかった。AdV−ngn3投与群では、AdV
−pdx−1と同様の変化が僅かに認められた。こうし
た変化を定量的に検討するため、各々のアデノウイルス
ベクターを投与した複数のマウスの膵を採取し、複数の
非連続切片を作製してヘマトキシリン・エオジン染色及
びインスリン免疫染色を行い、各グループ間で統計学的
検討を行った。その結果、正常な膵島の総数は、各グル
ープ間で変わりはなかったが、新生したと考えられるイ
ンスリン陽性細胞やその集塊の数はAdV−pdx−1
投与群で有意に高かった(図5)(p<0.05)。以
上の結果から、膵管より投与されたアデノウイルスベク
ターにより遺伝子導入を受けた膵細胞は膵管の増殖をき
たし、一部はインスリン産生細胞へ分化したと考えられ
た。
膵におけるRT−PCRによる各種マーカーの検討 こうして示された組織学的変化の原因を、検討する目的
で、投与7日目における膵組織の全RNAを抽出し、R
T−PCRを行い、デンシトメトリーによりその発現の
強弱を定量的に比較検討した。その結果、投与7日目で
は、AdV−pdx−1投与群において内因性pdx−
1の活性化が認められた(p<0.05)(図6A)。
これまでpdx−1遺伝子はpdx−1蛋白自身による
自己調節能が報告されている(Proc Natl Acad Sci U S
A, 98(3), 1065-70, 2001、MolCell Biol 20(20), 758
3-90, 2000)ことから、アデノウイルスベクター由来の
pdx−1によるpdx−1遺伝子の活性化が示唆され
た。また、AdV−pdx1投与群においては、膵管の
マーカーであるCK19の発現がコントロールの2.6
倍を示し、膵管の増殖を裏付ける結果となった(図6
B)。AdV−ngn3については、組織像での僅かな
変化を反映するデータは得られなかった。また、膵内分
泌前駆細胞のマーカーとして近年報告されているnes
tin(Diabetes 50(3), 521-33, 2001)の発現は、p
dx−1投与群で高い傾向が認められたが、有意な差は
認められなかった(図6C)。しかし、これは膵全体で
のmRNAの発現をみているため、膵管増生領域におけ
る局所でのnestinの発現など、今後更なる検討が
必要と考えられる。以上の結果より、アデノウイルスベ
クターにより転写因子遺伝子の導入された膵において、
内因性pdx−1の発現が惹起され、直接あるいは間接
的に膵管の増殖をきたし、また、内分泌前駆細胞に於
は、内分泌細胞への分化が誘導されたと考えられる。
入による膵内分泌細胞の再生に重点をおいて実験を進め
た。これまで、生体への簡便且つ高率な遺伝子導入手段
として、アデノウイルスベクターは、多くの研究で用い
られてきた。しかし、静脈投与では肝以外の臓器へは導
入効率が極めて低く、一方で全身への投与であるため、
他臓器での悪影響の可能性も否定できない。また、膵へ
の特異的遺伝子導入法としてMcClaneらは、マウ
スの膵実質へ直接に針を刺入する方法を提唱している
が、局所的であると同時に、ある程度の侵襲は避けられ
ない(Hum Gene Ther 8(18), 2207-16,1997、Pancreas
15(3), 236-45, 1997、Hum Gene Ther 8(6), 739-46, 1
997)。こうした理由から、今回本発明者は、膵への特
異的遺伝子導入法として、マウスの総胆管から逆行性に
アデノウイルスベクターを注入する方法、すなわち、経
総胆管投与法を用いた。Peetersらはラットの肝
臓への遺伝子導入の方法として、経総胆管投与を用い、
静脈投与に比し、高率かつ特異的で、免疫応答も低い導
入が可能であることを報告している(Hum Gene Ther 7
(14), 1693-9, 1996)。
その際、総胆管を結紮し、膵管へのみウイルスを注入す
ることで、膵に高い特異性を持たせることに成功したと
報告している(Pancreas 12(4), 401-10, 1996)。しか
し、これらは何れもラットにおける報告であり、マウス
では膵管や肝管の脆弱性から同様の手法は困難を極め
る。マウスは種々の遺伝子改変動物を作製しやすく、加
えてこのような外来遺伝子の導入が可能となれば、各種
研究を進める上で大変意義が深い。そこで、本発明者
は、肝管の結紮は行わず、あえて肝へのウイルスの流入
によるウイルス量の損失は甘受した。そのため、流入時
に過度に膵管に圧がかかることなく適度な注入が可能と
なったと考えている。膵へのウイルスの感染及び発現の
確認は、今回、目的の転写因子に加えて、EGFPを同
時に発現するように設計された発現カセットを用いてい
るため、蛍光顕微鏡下で確認が可能となった。結果的
に、経総胆管投与法を用いて、肝・膵への選択的で、か
つ高率な導入ができた。
考察する。pdx−1はインスリン、グルコキナーゼ、
GLUT2などの転写調節を通して血糖値の恒常性維持
に働く膵β細胞特異的転写因子であるが、膵の発生にも
大きく関与している。pdx−1は胎生期に膵芽発生部
位周辺の前腸に発現し、その後発生後期では膵島及び小
腸に限局し、生後は膵β細胞に特異的に発現する。変異
pdx−1のヘテロ接合体をもつヒトやマウスでは膵β
細胞の減少に伴う糖尿病を惹き起こす。ホモのマウスで
は膵の無形成が認められる(Mol Cell Biol20(20), 758
3-90, 2000、Development 122(5), 1409-16, 1996、EMB
O J 13(5),1145-56, 1994)。
eurogenin3は膵の発生過程で膵前駆細胞が膵
島の内外分泌細胞へ分化する際、Notchシグナルを
介した系で内分泌細胞への分化の方向を決定する重要な
因子である。neurogenin3はE15.5で膵
内分泌前駆細胞に発現のピークを呈し、生後消失する。
neurogenin3遺伝子のホモ欠損マウスでは発
生過程において膵島細胞は形成されず、糖尿病にて生後
1〜3日で死亡する。またこのマウスでは、膵でのpa
x4、pax6、neudoD/BETA2の発現を認
めないことがわかっている(Genes Dev 15(4), 444-54,
2001、Mol Cell Biol 20(9), 3292-307, 2000、Diabet
es 49(2), 163-76, 2000、Diabetes 50(5), 928-36, 20
01、Nature 400(6747), 877-81, 1999、Proc Natl Acad
Sci USA 97(4), 1607-11, 2000、Mol Cell Neurosci 8
(4), 221-41, 1996)。以上のことから、pdx−1及
びneurogenin3は、その下流に多くの転写因
子が存在しており、膵幹細胞の内分泌細胞へ向けた最終
分化はpdx−1、neurogenin3、またそれ
らにより制御されるの多くの転写因子により制御されて
いると思われる。
て非β細胞を類β細胞化しようという試みが多く行われ
ている。Watadaらはα細胞由来の細胞株であるα
TC1細胞にpdx−1遺伝子を導入すると、βセルリ
ン存在下でインスリン、グルコキナーゼなどのβ細胞特
異的蛋白の発現が誘導されることを報告している(Diab
etes 45(12), 1826-31, 1996)。また、最近、Ferb
erらは、pdx−1遺伝子を発現するアデノウイルス
を静脈投与することで肝へ高発現させると、一部の細胞
はインスリン産生細胞となり、さらにこの方法でSTZ
誘発糖尿病のマウスの血糖値を改善することに成功した
と報告している(Nat Med 6(5), 568-72, 2000)。多く
の細胞では単一遺伝子の導入で分化や分化転換が誘導さ
れるわけではなく、α細胞株や肝細胞など、β細胞に発
生学的に近い細胞であるため、このような結果が導かれ
ると考えられる。膵に存在する組織幹細胞もやはり、膵
内外分泌細胞にある程度方向付けられた細胞群のひとつ
と考えられる。そこで本発明者は、β細胞の分化に必要
な転写因子pdx−1、neurogenin3を膵の
組織幹細胞へ遺伝子導入することで分化誘導ができれ
ば、膵内分泌細胞の再生医療に向けた新たな可能性が広
がると考えた。
くの報告から、膵管上皮近傍、膵島内などの可能性が示
唆されているが、いまだ不明な点が多い(Nat Med 6
(3), 278-82, 2000、J Virol Methods 4(6), 343-52, 1
982)。そのため、本実施例においては、膵管上皮及び
その近傍の膵実質組織を標的として遺伝子導入を試み
た。その結果、膵管上皮そのものの増殖像と、その領域
中に、インスリン陽性細胞の新生を確認した。こうした
変化が生じた原因について検討するため施行したRT−
PCRにおいて、AdV−pdx−1投与群で膵での内
因性のpdx−1の発現が高まっていることが判明し
た。pdx−1遺伝子のプロモーター領域には、pdx
−1蛋白自身の結合領域があり、自己調節を行ってお
り、そのことがβ細胞の特異性に関わっていると考えら
れている(Proc Natl Acad Sci USA 98(3),1065-70, 20
01、Mol Cell Biol 20(20), 7583-90, 2000)。そこか
ら類推されるに、今回認められた内因性のpdx−1の
活性化はアデノウイルスベクターによる外来性のpdx
−1により惹き起こされたためと考えられる。また、膵
管のマーカーであるCK19は、AdV−pdx−1投
与群で有意に高い発現を認めたが、これは組織像で確認
された膵管上皮の活発な増生を反映していると考えられ
た。
た機序を次のように推測する。すなわち、膵管上皮細胞
内では、生体内の他の細胞同様、種々の蛋白が発現し、
活性化と抑制の均衡の上に恒常性を維持していると考え
られる。pdx−1は膵管上皮細胞では発生時期にのみ
発現しているが、AdV−pdx−1により外来性に高
発現したpdx−1により、内因性pdx−1を含めた
種々の遺伝子の活性化が生じ一時的に発生時期の未成熟
な性格を取り戻し膵管の増殖に至ったのではないだろう
か。Sharmaらの膵部分切除モデルにおいても、膵
管上皮にみられる脱分化や再分化の像は内因性pdx−
1活性化を伴う転写因子の不均衡による影響ではないか
と考察されている(Diabetes 48(3), 507-13, 1999)
が、推測の域を出ない。また、インスリン陽性細胞の由
来としては、AdV−pdx−1により遺伝子導入を受
けた膵管近傍の組織幹細胞がpdx−1の発現、及びそ
れにより活性化された転写因子の影響により、インスリ
ン産生細胞への最終分化を果したという可能性が考えら
れる。
x−1の活性化及び組織変化は僅かであったが、発生過
程で、neurogenin3は一度強く発現するもの
のやがて消失し、その後成熟した膵島細胞が出現する。
そこで、アデノウイルスベクターによるneuroge
nin3の一過性高発現消失後に 、インスリン陽性細
胞が出現する可能性をAdV−ngn3投与1ヵ月後の
膵を用いて検討したが、明らかな変化は認められなかっ
た。この結果から、neurogenin3単独の遺伝
子導入では、pdx−1と同等の効果は得られないと考
えられた。今回、本発明者は、アデノウイルスベクター
を経総胆管投与法を用いることで、高率にかつ安全にマ
ウス膵への遺伝子導入に成功した。pdx−1遺伝子の
導入では、膵実質内に膵管の増殖像が認められ、その領
域において、新生インスリン陽性細胞の出現を認めた。
RT−PCRによる解析から、そうした変化は、内因性
のpdx−1やCK19の活性化との関連が示唆され
た。このような、生体における膵組織幹細胞の転写因子
による分化誘導の試みはこれまで初めてであり、遺伝子
導入による糖尿病の治療に道を開くものである。
pdx−1遺伝子をアデノウイルスベクターへ組み込
み、これをマウスの総胆管へ投与すると膵臓の組織細胞
へ効率よく遺伝子が導入され、インスリン産生細胞の形
成誘導がなされるので、インスリン産生細胞が再生さ
れ、糖尿病に対する再生医療が可能となる。特に、本発
明の方法は、I型糖尿病の根本的治療への道を開くもの
である。本発明の方法は、総胆管遺伝子導入法を用い
て、肝管の結紮を行わないで、注入時に過度に膵管に圧
をかけることなく適度な流入が可能であり、ヒトにおい
ては非観血的で安全性の高い内視鏡的逆行性膵・胆管造
影(ERCP)などの技術と類似点も多いので、膵への
効果的な遺伝子導入法として臨床応用も期待できる。ま
た、本発明の方法は、膵管や胆管の脆弱なマウスにも適
用することができ、本発明の方法をマウスに適用する
と、マウスは種々の遺伝子操作動物を作製しやすいとい
う利点を有するので、実験動物として各種研究を進める
上で大変意義深い。更に、本発明の方法では、アデノウ
イルスベクターを経総胆管投与法を用いることで、高率
にかつ安全に膵への遺伝子導入を可能とし、該遺伝子の
導入によりインスリン産生細胞の形成誘導に成功してい
る。このような生体における膵組織幹細胞の転写因子に
よる形成誘導の試みはこれまで初めてであり、本発明の
方法は、遺伝子導入による糖尿病のような病気の治療に
大きな展望を開くものである。
ターの構造を示す図である。
ルスベクターが、目的の遺伝子を発現することができる
かを、ヒト胎児腎細胞株である293細胞を用いて検討
した結果を示す、EGFPの発現を蛍光顕微鏡で確認し
た図である。
下に目的遺伝子を,更にその下流にIRES−EGFP
を組み込んで作製したアデノウイルスベクターを投与
後、10日目の肝及び膵の外観をEGFPの緑色蛍光に
より蛍光顕微鏡下で観察した写真を示す図である。
連する転写因子を高発現させ、その影響を組織学的に検
討するために、投与後7〜12日で膵を単離し、パラフ
ィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色及び
抗ヒト・インスリン抗体を用いたインスリン免疫染色を
行って観察した結果を示す図である。
連する転写因子を高発現させ、発現の状況を定量的に検
討するために、各々のアデノウイルスベクターを投与し
た複数のマウスの膵を採取し、複数の非連続切片を作製
してヘマトキシリン・エオジン染色及びインスリン免疫
染色を行い、各グループ間で統計学的検討を行った結果
を示す図である。
ターにより遺伝子導入を受けた膵細胞の組織学的変化を
検討するために、投与7日目における膵組織の全RNA
を抽出し、RT−PCRを行い、デンシトメトリーによ
りその発現の強弱を定量的に比較検討した結果を示す図
である。
Claims (8)
- 【請求項1】 膵β細胞関連転写因子の遺伝子を、経総
胆管投与によって、膵へ導入し、インスリン産生細胞の
形成を誘導することを特徴とするインスリン産生細胞の
形成誘導法。 - 【請求項2】 膵β細胞関連転写因子の遺伝子が、膵β
細胞の分化関連転写因子の遺伝子であり、インスリン産
生細胞の形成の誘導が、膵に存在する組織幹細胞の分化
誘導であることを特徴とするインスリン産生細胞の形成
誘導法。 - 【請求項3】 膵β細胞関連転写因子の遺伝子を、総胆
管を結紮することなく、経総胆管投与によって、膵へ導
入することを特徴とする請求項1又は2記載のインスリ
ン産生細胞の形成誘導法。 - 【請求項4】 膵β細胞関連転写因子の遺伝子が、pd
x−1又はneurogenin3であることを特徴と
する請求項1〜3のいずれか記載のインスリン産生細胞
の形成誘導法。 - 【請求項5】 膵β細胞関連転写因子の遺伝子を、アデ
ノウイルス発現ベクターに組込んで、膵へ導入すること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のインスリン
産生細胞の形成誘導法。 - 【請求項6】 アデノウイルス発現ベクターが、Cre
−loxP組換え系を利用したアデノウイルスベクター
であることを特徴とする請求項5記載のインスリン産生
細胞の形成誘導法。 - 【請求項7】 アデノウイルス発現ベクターに、レポー
ター遺伝子EGFPを組込んだことを特徴とする請求項
5又は6記載のインスリン産生細胞の形成誘導法。 - 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか記載のインスリ
ン産生細胞の形成誘導法を用いることを特徴とする糖尿
病の再生治療方法。
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