JP2003169672A - ライゲーション阻害を用いてライブラリーを加工する方法 - Google Patents

ライゲーション阻害を用いてライブラリーを加工する方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、DNAライブラリーから、長いイ
ンサートサイズの所望のDNAを特異的に濃縮すること
が可能であり、且つ該DNAのクローンを直接取得する
ことができる方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明は、含有率を増加せしめるべき第
一のdsDNAを含むDNAライブラリーから、前記第
一のdsDNAとは異なる第二のdsDNAを除去する
ことによって、前記第一のdsDNAの含有率が増加し
たDNAライブラリーを構築する方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、RecAタンパク
質を用いてDNAライブラリーから所望の核酸以外の核
酸を除去することにより、所望の核酸の含有率が増加し
たDNAライブラリーを構築する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】DNAライブラリー、とりわけcDNA
ライブラリーは、遺伝子をクローニングするための極め
て有用なツールである。これまでに、cDNAライブラ
リーから多くの遺伝子がクローニングされている。クロ
ーニングされた遺伝子は、遺伝子自身の塩基配列を決定
するのに用いられるのみならず、該遺伝子によってコー
ドされるタンパク質のアミノ酸配列を決定したり、該タ
ンパク質を細菌や酵母細胞内で大量に作らせるために用
いられている。
【0003】しかしながら、cDNAライブラリーから
容易にクローニングし得るcDNAは、その鋳型となっ
たmRNAが細胞中に大量に発現しているcDNAに限
られるため、多くの遺伝子がクローニングされた現在で
は、クローニングし易いcDNAの多くは殆どクローニ
ングされてしまい、新規なcDNAを効率よくクローニ
ングすることが困難になりつつある。
【0004】cDNAライブラリーから新規なcDNA
を効率よくクローニングするためには、既にクローニン
グされたcDNAをライブラリーから除去することが必
要であり、この目的のために、以下の従来技術が考案さ
れている。
【0005】まず、この目的を達するために使用されて
いる最も基本的な方法としては、差引きハイブリダイゼ
ーションがある。
【0006】該方法では、目的の遺伝子を発現している
細胞(又は組織)と目的の遺伝子を発現していない細胞
からmRNAを調製し、一方からcDNAを合成した
後、両者をハイブリダイゼーションさせるので、両細胞
に共通するcDNAのみが除去され、ある組織や細胞に
特異的に発現している遺伝子を濃縮、単離することが可
能となる。
【0007】差引きハイブリダイゼーションを利用した
方法としては、「Genome Res 1996 S
ep;6(9):791−806」が、ヒドロキシアパ
タイトカラムを用いた差引きハイブリダイゼーション法
を開示している。該方法では、一本鎖DNAライブラリ
ーをテンプレートとしてベクター由来の配列からのプラ
イマーの伸長反応を行い、変性・再会合した後、再び二
本鎖となるもののみをヒドロキシアパタイトカラムを用
いて除去する。再会合する確率は濃度に依存するため、
多数存在するクローンから優先的に除去される。
【0008】しかしながら、インサートサイズが3kb
を超えるような長い配列を含むcDNAライブラリーの
場合、非特異的ハイブリダイゼーションが起こる可能性
が高くなるので、該方法は、0.4〜2.5kb程度の
比較的短いDNAからなるcDNAにしか適用できな
い。長い配列は、多機能タンパクや複雑な構造のタンパ
ク質をコードする機能的に重要な遺伝子を含む可能性が
高いので、長い配列を含むライブラリーに適用し得ない
ことは、本方法の大きな欠点である。また、同一の遺伝
子に由来し、3’末端と5’末端が共通であるが、中央
が異なる配列は、短いcDNAであっても該方法では区
別することができない。
【0009】また、同様の目的を達成するために多用さ
れる他の方法として、ディファレンシャルハイブリダイ
ゼーションがある。
【0010】該方法では、特異的遺伝子の取得を目的と
する細胞と対照の細胞から調製したmRNAを用いて、
cDNAのプローブを合成する。続いて、目的の細胞か
ら作成したcDNAライブラリーをプレートに播種し、
同一プレートからコロニーを2枚のフィルターにレプリ
カする。一方のフィルターは目的の細胞由来のcDNA
プローブを用いて、他方のフィルターは対照細胞由来の
cDNAプローブを用いてハイブリダイゼーションを行
い、結果を比較すれば、目的の細胞に特異的なcDNA
を検出することができる。
【0011】しかしながら、この方法は、2つのフィル
ターのハイブリダイゼーションの差をコロニー毎に比較
しなければならないため、多くのコロニーを処理するこ
とが難しく、ライブラリー全体の再構築には向いていな
い。また、該方法には、偽陽性もしくは偽陰性のシグナ
ルが多くあるために、検討に時間を要するという欠点も
存する。
【0012】このため、該方法のかかる欠点を克服する
ために、”Methods inEnzymology
1995; 254:304−321”は、従来のデ
ィファレンシャルハイブリダイゼーションとポリメラー
ゼ連鎖反応(以下PCRと称する)を組み合わせたディ
フェレンシャルディスプレー法を開示しているが、該方
法は発現レベルの差が著しくないとパターンの差が見出
せないのみならず、クローンを直接取得できないため
に、PCR産物をもとに何らかの方法によってクローン
を選択しなければならない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術に
存する上記課題を解決するためになされたものであり、
DNAライブラリーから、長いインサートサイズの所望
のDNAを特異的に濃縮することが可能であり、且つ該
DNAのクローンを直接取得することができる方法を提
供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の態様にお
いて、RecAタンパク質を用いて環状DNAライブラ
リーから特定のDNAを除去することにより、所望の核
酸の含有率が増加した環状DNAライブラリーを構築す
る方法を提供する。
【0015】すなわち、含有率を増加せしめるべき第一
のdsDNAを含む環状DNAライブラリーから、前記
第一のdsDNAとは異なる第二のdsDNAを除去す
ることによって、前記第一のdsDNAの含有率が増加
した環状DNAライブラリーを構築する方法であって、 (1) 前記環状DNAライブラリーの環状DNAを線
状DNAにする工程と、 (2) 前記第二のdsDNAに対応するssDNAを
調製する工程と; (3) 前記環状DNAライブラリーに、RecAタン
パク質と工程(2)で調製した前記第二のssDNAを
添加することにより、前記第二のdsDNAに前記Re
cAタンパク質を介して前記第二のssDNAを結合さ
せ、三本鎖構造にする工程と;(4) 工程(3)で得
られた三本鎖構造のDNAを含む線状DNAをライゲー
ションすることによって、前記第一のdsDNAの含有
率が増加したDNAライブラリーを構築する工程と; (5) 工程(4)の処理を施したDNAから線状DN
Aを除去することによって、前記第一のdsDNAの含
有率が増加したDNAライブラリーを構築する工程と; を備えた方法が提供される。
【0016】特に、前記方法であって、前記工程(4)
の処理を施したDNAからの線状DNAの除去が、前記
工程(4)で得られたDNAを宿主に形質転換して、環
状DNAが形質転換された宿主のみを薬剤で選択するこ
とによって行われる方法が提供される。
【0017】本発明の第二の態様において、RecAタ
ンパク質を用いてDNAライブラリーから特定のDNA
を除去することにより、所望の核酸の含有率が増加した
DNAライブラリーを構築する方法を提供する。
【0018】すなわち、含有率を増加せしめるべき第一
のdsDNAを含むDNAライブラリーから、前記第一
のdsDNAとは異なる第二のdsDNAを除去するこ
とによって、前記第一のdsDNAの含有率が増加した
DNAライブラリーを構築する方法であって、 (1) 第一のdsDNAを含む線状DNAライブラリーを調
製する工程と、 (2) 前記第二のdsDNAの両端の配列に対応する
ssDNAをそれぞれ調製する工程と; (3) 前記線状DNAに、RecAタンパク質と工程
(2)で調製した前記第二のssDNAを添加すること
により、前記第二のdsDNAに前記RecAタンパク
質を介して前記第二のssDNAを結合させ、三本鎖構
造にする工程と; (4) 工程(3)で得られた三本鎖構造のDNAを含
む線状DNAを所望のDNAとライゲーションする処理を
施し、三本鎖構造を含まないdsDNAのみを環状化す
る工程と; (5) 工程(4)の処理を施したDNAから線状DN
Aを除去することによって、前記第一のdsDNAの含
有率が増加したDNAライブラリーを構築する工程と;
を備えた方法が提供される。
【0019】特に、前記方法であって、前記工程(4)
の処理を施したDNAからの線状DNAの除去が、前記
工程(4)で得られたDNAを宿主に形質転換して、環
状DNAが形質転換された宿主のみを薬剤で選択するこ
とによる除去である方法が提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明は、RecAタンパク質を
介して形成される三本鎖構造が標的核酸の末端領域に形
成される場合には、前記三本鎖構造からRecAタンパ
ク質を解離させた後にも前記三本鎖構造が維持されると
いう本発明者らの発見に基づいてなされたものである。
RecAタンパク質、及びRecAタンパク質を介して
三本鎖構造が形成されることは公知である。
【0021】ここで、RecAタンパク質について説明
する。
【0022】RecAタンパク質は、相同的組換え、D
NAの修復、又は大腸菌のSOS遺伝子の発現などに関
与することが知られている。RecAタンパク質の中で
は、大腸菌やλファージのRecAタンパク質が最も有
名である。しかしながら、大腸菌のRecAタンパク質
に類似した構造及び機能を有するタンパク質は、大腸菌
以外の生物にも広く分布していることが知られており、
これらのタンパク質は、一般に、RecA類似タンパク
質と呼称されている。
【0023】図1のように、RecAタンパク質は、一
本鎖DNAに結合した後(RecA−一本鎖DNA繊
維)、該一本鎖DNAを二本鎖DNAに対合させて三元
複合体(トリプレックス)を形成し、相同DNAの検索
を行った後、ATP存在下でDNA鎖交換反応を触媒す
る。DNA鎖交換反応後には、前記一本鎖DNAが前記
二本鎖DNAに取り込まれた雑種二本鎖DNAと前記二
本鎖DNAから分離された一本鎖DNAが形成される。
【0024】前述のように、RecAタンパク質は、一
本鎖核酸を二本鎖核酸にランダムに結合させるのではな
く、二本鎖核酸の一方のストランド中に存在する相同な
領域に結合させる。二つの核酸が「相同」であるという
ことは、RecAタンパク質を介して特異的な三本鎖構
造を形成し得る程度に、両核酸が同一である、又は類似
していることを意味する。「類似」とは、例えば、二つ
の塩基配列が少なくとも50%、好ましくは80%、よ
り好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の同
一性であり得る。
【0025】本発明の方法は、RecAタンパク質を介
して一本鎖DNAと該一本鎖DNAに相同な二本鎖DN
Aを結合させて、三本鎖構造DNAが形成されることを
利用して、DNAライブラリーから所定のDNAを除去
する方法である。
【0026】本明細書において、「RecAタンパク
質」とは、二本鎖核酸の一方のストランド中の任意の領
域に、該領域と相同な一本鎖核酸を結合させることによ
り、前記領域に三本鎖構造を形成させ得るタンパク質を
意味する。
【0027】また、RecAタンパク質には、大腸菌や
λファージのRecAタンパク質のみならず、RecA
類似タンパク質も含まれる。上述のように、本発明の方
法では、RecAタンパク質が相同なDNAの対合を促
進し、三本鎖構造DNAの形成を触媒する機能を有する
限り、本発明の方法において、前記RecA類似タンパ
ク質も使用することができる。
【0028】本発明で使用するのに好ましいRecAタ
ンパク質は、大腸菌のRecAタンパク質である。
【0029】本明細書において、「DNAライブラリ
ー」なる語は、多種類のDNA断片の集合体を意味し、主
に遺伝子ライブラリーとcDNAライブラリーを総称す
る用語として使用する。「遺伝子ライブラリー」とは、
ファージ又はコスミドに含まれる単一の生物種の全ゲノ
ムDNA断片の集合体であり、「ゲノムDNAライブラ
リー」と同義である。「cDNAライブラリー」とは、
ベクターに挿入された、特定の組織や細胞由来のmRN
Aから作成される相補的DNA(以下cDNAと称す
る)から作成される多種類のcDNA分子種の集合体を
いう。前記DNA断片は必ずしもファージ、コスミド、ま
たはプラスミド中に含まれて環状化されている必要はな
く、DNA断片のみからなっていてもよい。DNAライブ
ラリーに含まれるDNA断片の種類は何種類でもよく、2種
類であってもよい。
【0030】また、本明細書において、二本鎖DNA及
び一本鎖DNAは、それぞれdsDNA及びssDNA
と略記する。
【0031】以下、本発明の方法の詳細について述べ
る。
【0032】本発明の第一の態様において、RecAタ
ンパク質を用いて環状DNAライブラリーから特定のD
NAを除去することにより、所望の核酸の含有率が増加
した環状DNAライブラリーを構築する方法を提供す
る。本発明の方法の第一の工程では、環状DNAライブ
ラリーの環状DNAを線状DNAにする操作を施す。環
状DNAを線状DNAにする方法としては、たとえば、
適切な制限酵素で環状DNAを切断すればよい。前記制
限酵素は、前記環状DNAの一カ所のみを切断するもの
を選択することが好ましい。前記制限酵素による切断
は、通常の方法を使用して行えばよい。 次に第二の工
程において、前記DNAライブラリーから除去すべき第
二のdsDNAに対応するssDNAを調製する。
【0033】ここで、除去すべき第二のdsDNAに
「対応する」とは、何れかのストランド中に、第二のd
sDNA全部又は一部と実質的に同じ塩基配列を有する
部分を含んでいることをいう。「実質的に同じ塩基配列
を有する」とは、RecAタンパク質による三本鎖構造
DNAの形成がなされ得る程度に同等の塩基配列を有す
ることをいう。
【0034】前記第二のdsDNAのサイズは、3〜1
3kbであり得る。6kb以上でサイズ分画されたライ
ブラリー中のDNAであることが好ましい。
【0035】なお、ライブラリー中に含まれるこれらの
dsDNAは、プラスミドやウイルスベクターに担持さ
れていることが通常であろう。
【0036】第二のdsDNAに対応するssDNAを
調製するためには、インビトロ転写系を使用することが
できる。たとえば、DNAライブラリーのインサートを
インビトロ転写可能なベクターであるpSPORT1に
載せ換えて、SP6転写システム(Ambion社)を
使用してRNA合成を行う。次に、適切なプライマー
(Rondom primer N6(宝社)など)、
および逆転写酵素(SuperScript II R
T (invitrogen社)など)を使用してcD
NAを合成した。最後にフェノール・クロロホルムによ
ってタンパク質を除去して、cDNAを精製することに
より、ssDNAを得ることができる。上記のようなc
DNAの調製方法は、当業者に周知である。
【0037】その他、ライブラリーのdsDNAに対応
するssDNAを作製するためには、ニッカーゼ等でd
sDNAにニック(切れ目)を導入した後に、ExoII
I、T7gene6等のヌクレアーゼで処理してもよ
い。さらに、dsDNAをssDNAにする操作として
は、pBluescript、pGEM、pUC119
等のファージミドベクターをファージ粒子として使用
し、ssDNAを回収する操作もあるが、これらに限定
されない。
【0038】続いて、第三の工程では、前記RecAタ
ンパク質と前記第二のssDNAを、前記DNAライブ
ラリーに添加する。
【0039】上記のようにして得られた第二のdsDN
Aに対応するssDNAは、何れかのストランドが第二
のdsDNAの全部又は一部と同一の塩基配列を含むの
で、前記工程で得られた第二のssDNAとRecAタ
ンパク質を加えると、三本鎖構造DNAの形成反応が進
行する(図2参照)。
【0040】RecAタンパク質が解離した後にも三本
鎖構造が安定に維持されるためには、前記ssDNAの
長さは、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基
以上、好ましくは20塩基以上、より好ましくは30塩
基以上、さらに好ましくは40塩基以上、最も好ましく
は60塩基以上である。
【0041】安定な三本鎖構造を得るためには、三本鎖
構造の両末端のうち、外側(すなわち、dsDNAの終
末端側)に存在する末端が、dsDNAの終末端から5
0番目の塩基、より好ましくは30番目の塩基、さらに
好ましくは20番目の塩基、さらに好ましくは10番目
の塩基よりも外側に位置することが好ましい。
【0042】また、RecAタンパク質は、本来、AT
Pの存在下において、相同的な組換えを触媒するタンパ
ク質なので、前記試料中にATPが存在すると相同的組
換えが進行して、三本鎖構造は直ぐに消滅してしまう。
【0043】RecAタンパク質を介して三本鎖構造を
形成させるためには、GTP、ITPなどのATPの機
能を代替し得る物質、またはATPγSのような非分解
性ATP類似体を添加しなければならない。GTP、I
TPの存在下では、RecAタンパク質による交換反応
は進行されないことが明らかとなっている。
【0044】次に、第四の工程では、前記工程で得られ
た三本鎖構造のDNAを含むDNAを自己ライゲーショ
ンする。このとき、前記三本鎖構造が形成されたDNA
は、自己ライゲーション反応が阻害されるが、前記三本
鎖構造が形成されていないdsDNAは、自己ライゲー
ションされて環状DNAとなる。
【0045】本明細書において、「自己ライゲーショ
ン」とは、一本の線状DNAの5‘末端と3’末端がラ
イゲーションされて、環状DNAとなることを意味す
る。
【0046】前記ライゲーション反応は、通常の方法を
使用して行えばよい。たとえば、T4 DNA Lig
ase (Invitrogen社)によってライゲー
ション反応(37℃において30分間)を行って環状D
NAを構築することができる。また、その他の商業的に
入手可能なライゲーションキット等を使用してもよい。
【0047】本発明において、さらに、上記第1から第
四の工程からなるサイクルを2回以上繰り返えしてもよ
い。
【0048】第五の工程では、前記工程で得られたDN
Aから線状DNAを除去することによって、前記第一の
dsDNAの含有率が増加したDNAライブラリーを構
築する。
【0049】除去すべき線状三本鎖構造DNAと含有率
を増加させるべき環状DNAとを分離するには、例え
ば、アガロース電気泳動で分離する方法、臭化エチジウ
ム存在下で遠心する方法、などを使用することができ
る。その他、使用したDNAライブラリー内に薬剤耐性
遺伝子が含まれている場合は、前記DNAを宿主に形質
転換して、環状DNAが形質転換された宿主のみを薬剤
で選択する方法を使用してもよいが、これらに限定され
ない。
【0050】また、本発明の方法において、前記Rec
Aタンパク質を介して三本鎖構造を形成させる工程に続
いて、前記三本鎖核酸に結合したRecAタンパク質を
解離させる工程を実施してもよい。
【0051】本発明の方法の説明において、図2及び上
記の説明では、便宜上、2種類のdsDNAの中から1
種類のdsDNAを除去する操作を記載したが、実際の
操作では、数千〜数万種類のdsDNAの中から数十〜
数万種類のdsDNAを同時に、又は順次に除去するこ
ともできる。
【0052】本発明の第二の態様において、第一の態様
において示した方法よりも効率的にDNAライブラリー
から特定のDNAを除去することにより、所望の核酸の
含有率が増加したDNAライブラリーを構築する方法を
提供する。すなわち、核酸の両末端のライゲーション反
応を阻害することによって、RecAタンパク質によるライ
ゲーション阻害を効率化した方法を提供する。
【0053】本発明の方法の第一の工程では、線状DN
Aライブラリーを調製する。線状DNAを調製する方法
としては、環状DNAからDNA断片を切り出すことによっ
て、またはPCR法によって調製してもよい。また、mRNA
を逆転写してcDNAを作製することによって調製してもよ
い。その他DNA断片を作製するために様々な方法を使用
することができる。たとえば、cDNAライブラリーで
あれば、ベクターに挿入されたインサートcDNAを切り出
すことによって調製すればよい。
【0054】前記DNAの切断、PCRおよびmRNAからの逆転
写、その他線状DNAの調製は、通常の方法を使用して行
えばよい。
【0055】次に第二の工程において、前記DNAライ
ブラリーから除去すべき第二のdsDNAの両端の配列
に対応するssDNAをそれぞれ調製する。「両端の配
列」とは、前記第二のdsDNAの5’末端および3’末端の
配列のそれぞれの配列を意味する。
【0056】また「両端の配列に対応する」とは、何れ
かのストランド中に、前記第二のdsDNAの5’末端
および3’末端の配列のそれぞれと、またはそれらの一
部と実質的に同じ塩基配列を有する部分を含んでいるこ
とをいい、「実質的に同じ塩基配列を有する」とは、上
述したとおり、RecAタンパク質による三本鎖構造D
NAの形成がなされ得る程度に同等の塩基配列を有する
ことをいう。
【0057】続いて、第三の工程では、前記RecAタ
ンパク質と前記第二のssDNAを、前記DNAライブ
ラリーに添加する。この工程により、上述の通り三本鎖
構造DNAの形成反応が進行する(図3参照)。
【0058】次に、第四の工程では、前記工程で得られ
た三本鎖構造のDNAを含むDNAを所望のDNAとライ
ゲーションする。このとき、前記三本鎖構造が形成され
たDNAは、ライゲーション反応が阻害されるが、前記
三本鎖構造が形成されていないdsDNAは、所望のDN
Aとライゲーションされて環状DNAとなる。
【0059】本方法において「所望のDNA」とは、主に
ライブラリーを構築するためのファージ、コスミド、プ
ラスミドなどのベクターを意味するが、これに限定され
ない。
【0060】第五の工程では、前記工程で得られたDN
Aから線状DNAを除去することによって、前記第一の
dsDNAの含有率が増加したDNAライブラリーを構
築する。
【0061】除去すべき線状三本鎖構造DNAと含有率
を増加させるべき環状DNAとを分離する方法は、上述
したとおりである。
【0062】なお、図に示されている具体的な反応や構
造などは、あくまでも理解を容易にする目的で記載され
ているにすぎないので、実際には、それらの細部が図面
と一致しない場合があり得る。
【0063】以下、実施例によって、本発明をさらに詳
細に説明する。
【0064】
【実施例】実施例1 RecAを用いたライゲーション阻害反応により、二種
類のプラスミド混合物から一方のプラスミドの除去を行
った。クロラムフェニコール耐性のプラスミドpBC2
3C10、およびアンピシリン耐性のプラスミドpBS
1B3を使用して、両者の混合物から一方のプラスミド
の除去を行った。pBC23C10およびpBS1B3
を1000:1で混合して、両プラスミドDNAの一カ
所のみを切断する制限酵素NotIによって消化し、線
状二本鎖DNAにした。pBC23C10をSalIと
NotIで切断したのち、インサートDNAと、Sal
IおよびNotIによって切断済みのpSPORT1
(Invitrogen社)をライゲーションした。イ
ンビトロ転写をすることが可能であるpSPORT1に
載せ換えた後、SP6転写システム(Ambion社)
を使用してRNA合成を行った。得られたRNA5μg
にRondom primer N6(宝社)を6.2
5μg添加し、熱変性後、氷水で急冷した。RNase
inhibitor(東洋紡社)40unit、5×
First strand Buffer (Invi
torogen社)4μl、0.1M ジチオスレイト
ール2μl、10mM dNTP Mix (Invi
trogen社)1μlを添加した。SuperScr
ipt II RT (Invitrogen社)を5
μl添加した後、滅菌蒸留水を添加して全量20μlに
した。37℃において60分間反応させてcDNAを合
成した。フェノール・クロロホルムによってタンパク質
を除去して、cDNAを精製した。三本鎖形成反応溶液
(1)は、30mMTris−酢酸(pH6.9)、1
mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトール、合
成したpBC23C10由来のcDNAを100ng、
RecAタンパク質(EPICENTRE社)5μg、
滅菌蒸留水を添加して全量を20μlにし、37℃にお
いて15分間保温する。三本鎖形成反応溶液(2)は、
30mM Tris−酢酸(pH6.9)、23mM酢
酸マグネシウム、1mM ジチオスレイトール、Not
I切断済みライブラリーを50ng、滅菌蒸留水を添加
して全量を18μlにした。これを三本鎖形成反応溶液
(1)と混合して、37℃において30分間保温した。
100mM GTP 2μlを添加して、37℃におい
て30分間反応させる。タンパク質分解操作をした後、
DNAを精製する。T4 DNA Ligase (I
nvitrogen社)によって37℃において30分
間ライゲーション反応を行った。次に、DNAを精製し
て、大腸菌を形質転換することによってライブラリーを
再構築した。除去を行いたいプラスミドのみが選択的に
1/400になっていることがわかる。
【0065】
【表1】
【0066】実施例2 RecAを使用した三本鎖形成反応によって、既に得ら
れていたプラスミド(3000クローン)をプラスミド
ライブラリーから除去した。
【0067】pBlueScriptSKII(+)内
に作製したプラスミドライブラリーインサートをインビ
トロ転写可能なベクターである、pSPORT1(In
vitrogen社)に載せ換えて、SP6転写システ
ム(Ambion社)を使用してRNA合成を行った。
得られたRNA5μgにRondom primerN
6(宝社)を6.25μg添加し、熱変性後、氷水で急
冷した。RNaseinhibitor(東洋紡社)4
0unit、5×First strand Buff
er (Invitrogen社)4μl、0.1M
ジチオスレイトール2μl、10mM dNTP Mi
x (Invitrogen社)1μlを添加した。S
uperScript II RT (Invitro
gen社)を5μl添加した後、滅菌蒸留水を添加して
全量20μlにする。37℃において60分間反応させ
てcDNAを合成した。フェノール・クロロホルムによ
ってタンパク質を除去して、cDNAを精製した。プラ
スミドライブラリーは、プラスミドDNAの一カ所のみ
を切断する制限酵素NotIによって消化して、線状二
本鎖DNAにした。三本鎖形成反応溶液(1)は、30
mM Tris−酢酸 (pH6.9)、1mM酢酸マ
グネシウム、1mMジチオスレイトール、合成したcD
NAを100ng、RecAタンパク質(EPICEN
TRE社)5μg、滅菌蒸留水を添加して全量を20μ
lとし、37℃において15分間保温した。三本鎖形成
反応溶液(2)は、30mM Tris−酢酸 (pH
6.9)、23mM酢酸マグネシウム、1mM ジチオ
スレイトール、NotI切断済みライブラリーを50n
g、滅菌蒸留水を添加して全量を18μlにした。これ
を三本鎖形成反応溶液(1)と混合して、37℃におい
て30分間保温する。100mM GTP 2μlを添
加して、37℃において30分間反応させる。タンパク
質分解操作をした後、DNAを精製する。T4 DNA
Ligase (Invitrogen社)によって
37℃において30分間ライゲーション反応を行った。
次に、DNAを精製して、大腸菌を形質転換することに
よってライブラリーを再構築した。ランダムに96クロ
ーンの塩基配列を決定して、配列を既知のクローンのデ
ータベースと比較することによって、未知クローンの出
現頻度を検討した。一回の既知クローン除去操作によっ
て新規クローンの出現頻度は、約60%から約80%へ
と上昇していた。
【0068】
【表2】
【0069】実施例3 RecAを用いたライゲーション阻害反応の効率化をめざ
し、遺伝子の両端のライゲーション阻害により、二種類
のプラスミド混合物から一方のプラスミドの除去を行っ
た。
【0070】挿入した遺伝子のそれぞれの末端を切断す
る制限酵素のNotIおよびMulIでプラスミドを消化した。
消化されたプラスミドを鋳型として、T7転写システム
(Ambion社)、T3転写システム(Ambion
社)を使用してRNA合成を行った。得られたRNA5
μgにRondom primer N6(宝社)を
6.25μg添加し、熱変性後、氷水で急冷した。RN
ase inhibitor(東洋紡社)40uni
t、5×First strand Buffer
(Invitorogen社)4μl、0.1M ジチ
オスレイトール2μl、10mM dNTP Mix
(Invitrogen社)1μlを添加した。Sup
erScript II RT (Invitroge
n社)を5μl添加した後、滅菌蒸留水を添加して全量
20μlにした。37℃において60分間反応させてc
DNAを合成した。フェノール・クロロホルムによって
タンパク質を除去して、cDNAを精製した。挿入遺伝
子の量末端を切断する前記制限酵素の組合せであるNotI
およびMulIでプラスミドを消化し、ベクターと挿入され
た遺伝子を分離する。三本鎖形成反応溶液(1)は、3
0mM Tris−酢酸(pH6.9)、1mM酢酸マ
グネシウム、1mMジチオスレイトール、合成した各末
端に対応するcDNAをそれぞれ100ng、RecA
タンパク質(EPICENTRE社)5μg、滅菌蒸留
水を添加して全量を20μlにし、37℃において15
分間保温する。三本鎖形成反応溶液(2)は、30mM
Tris−酢酸(pH6.9)、23mM酢酸マグネ
シウム、1mM ジチオスレイトール、NotIおよび
MulIで切断済みプラスミドを50ng、滅菌蒸留水を添
加して全量を18μlにして、37℃において30分間
保温した。100mM GTP 2μlを添加して、3
7℃において30分間反応させる。タンパク質分解操作
をした後、DNAを精製する。T4 DNA Liga
se (Invitrogen社)によって37℃にお
いて30分間ライゲーション反応を行った。次に、DN
Aを精製して、大腸菌を形質転換することによってライ
ゲーション阻害効果を検討した。
【0071】挿入遺伝子末端の片方のcDNAを加えた場合
と比較して、両方のcDNAを加えることによって相乗的な
阻害効果があった。
【0072】
【表3】
【0073】表中の数字はコロニー数を示し、下段の括
弧内はライゲーション阻害反応を行っていない場合と比
較して、阻害反応を行った場合のコロニー数の割合を示
す。
【0074】
【発明の効果】本発明の方法を用いれば、DNAライブ
ラリーから所望の核酸以外の核酸を除去することによ
り、所望の核酸の含有率が増加したDNAライブラリー
を直接構築することができる。上記の実施例で実証され
ているように、本発明の方法を用いれば、除去すべき既
知のdsDNAを90%以上除去することも可能であ
る。
【0075】さらに、dsDNAの両端を三本鎖構造として
ライゲーションを阻害する方法では、片方の末端を阻害
する方法と比較して、既知遺伝子の量を百分の一以下に
除去することが可能となる。それ故、本発明を適用する
ライブラリーの種類に応じて、ライブラリーの新規クロ
ーンの出現率を10%〜99%増加させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】RecAの作用機構の概略図。
【図2】本発明のライゲーション阻害の基本原理を示し
た図。
【図3】本発明のライゲーション阻害の基本原理を示し
た図。
フロントページの続き (72)発明者 大石 道夫 千葉県木更津市かずさ鎌足2−6−7 財 団法人かずさディー・エヌ・エー研究所内 (72)発明者 小原 收 千葉県木更津市かずさ鎌足2−6−7 財 団法人かずさディー・エヌ・エー研究所内 Fターム(参考) 4B024 AA20 CA03 CA04 DA06 EA04 GA11 HA20

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含有率を増加せしめるべき第一のdsD
    NAを含む環状DNAライブラリーから、前記第一のd
    sDNAとは異なる第二のdsDNAを除去することに
    よって、前記第一のdsDNAの含有率が増加した環状
    DNAライブラリーを構築する方法であって、 (1) 前記環状DNAライブラリーの環状DNAを線
    状DNAにする工程と、 (2) 前記第二のdsDNAに対応するssDNAを
    調製する工程と; (3) 前記線状DNAライブラリーに、RecAタン
    パク質と工程(2)で調製した前記第二のssDNAを
    添加することにより、前記第二のdsDNAに前記Re
    cAタンパク質を介して前記第二のssDNAを結合さ
    せ、三本鎖構造にする工程と; (4) 工程(3)で得られた三本鎖構造のDNAを含
    む線状DNAに自己ライゲーション処理を施し、三本鎖
    構造を含まないdsDNAのみを環状化する工程と; (5) 工程(4)の処理を施したDNAから線状DN
    Aを除去することによって、前記第一のdsDNAの含
    有率が増加したDNAライブラリーを構築する工程と;
    を備えた方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法であって、前記工
    程(4)の処理を施したDNAからの線状DNAの除去
    が、前記工程(4)で得られたDNAを宿主に形質転換
    して、環状DNAが形質転換された宿主のみを薬剤で選
    択することによる除去である方法。
  3. 【請求項3】 含有率を増加せしめるべき第一のdsD
    NAを含むDNAライブラリーから、前記第一のdsD
    NAとは異なる第二のdsDNAを除去することによっ
    て、前記第一のdsDNAの含有率が増加したDNAラ
    イブラリーを構築する方法であって、 (1) 第一のdsDNAを含む線状DNAライブラリーを調
    製する工程と、 (2) 前記第二のdsDNAの両端の配列に対応する
    ssDNAをそれぞれ調製する工程と; (3) 前記線状DNAに、RecAタンパク質と工程
    (2)で調製した前記第二のssDNAを添加すること
    により、前記第二のdsDNAに前記RecAタンパク
    質を介して前記第二のssDNAを結合させ、三本鎖構
    造にする工程と; (4) 工程(3)で得られた三本鎖構造のDNAを含
    む線状DNAを所望のDNAとライゲーションする処理を
    施し、三本鎖構造を含まないdsDNAのみを環状化す
    る工程と; (5) 工程(4)の処理を施したDNAから線状DN
    Aを除去することによって、前記第一のdsDNAの含
    有率が増加したDNAライブラリーを構築する工程と;
    を備えた方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の方法であって、前記工
    程(4)の処理を施したDNAからの線状DNAの除去
    が、前記工程(4)で得られたDNAを宿主に形質転換
    して、環状DNAが形質転換された宿主のみを薬剤で選
    択することによる除去である方法。
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