JP2003165935A - インク組成物およびこれを用いたインクセット - Google Patents

インク組成物およびこれを用いたインクセット

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JP2003165935A
JP2003165935A JP2002061130A JP2002061130A JP2003165935A JP 2003165935 A JP2003165935 A JP 2003165935A JP 2002061130 A JP2002061130 A JP 2002061130A JP 2002061130 A JP2002061130 A JP 2002061130A JP 2003165935 A JP2003165935 A JP 2003165935A
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Takanori Kamoto
貴則 加本
Ichiro Fujii
一郎 藤井
Kiyoto Motoyama
清人 本山
Masa Nakamura
雅 中村
Masayoshi Kojima
正好 小島
Noriko Kajiura
典子 梶浦
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Nippon Kayaku Co Ltd
Sharp Corp
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Nippon Kayaku Co Ltd
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い耐水性を有するインク組成物と、該イン
ク組成物を含み、インクジェットプリンタに好適に用い
ることが可能なインクセットとを提供する。 【解決手段】 本発明にかかるインク組成物は、色素材
料として、式(1) 【化14】 (ただし、上記Aは、水素原子、塩素原子、メチル基、
アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシル基あ
るいはそのアルカリ金属塩、またはスルホン酸基あるい
はそのアルカリ金属塩の何れかであり、X,Yはそれぞ
れ独立して水素原子、アルカリ金属原子を表し、上記
x,yはそれぞれ独立して1ないし3の整数であり、z
は1または2の整数である)で表される水溶性染料を少
なくとも一種類と、主溶媒として少なくとも比抵抗値が
3kΩ・cm以上の水と、副溶媒として100℃以上の
沸点を有する水溶性有機溶剤と、2価の金属イオンとを
含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット方
式の画像形成装置に好適に用いられるインク組成物およ
びこれを用いたインクセットに関するものであり、特
に、形成された画像の安定性を向上させることができる
インク組成物およびこれを用いたインクセットに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】ハードコピー用の画像形成装置としては
種々の方式のものが提案され、実用化されている。中で
も、インクジェット方式(液滴噴射記録方式)の画像形
成装置(インクジェットプリンタ)は、近年、広い範囲
で用いられている。
【0003】上記インクジェット方式は、インクを力学
的作用または熱エネルギーによる作用により吐出し、紙
などの被記録材に対して飛翔させ、該被記録材上に画像
を形成する記録方式であり、オンデマンド型記録法とも
呼ばれる。そのため、電子写真方式などの記録方式のよ
うな現像や定着といったプロセスを必要とせず、ダイレ
クトに画像を記録することができるので、装置の構成が
簡略化されるとともに小型化や低コスト化も容易であ
り、さらに、高速記録かつ低騒音での記録が可能となっ
ている。
【0004】しかも、このインクジェット方式では、カ
ラー化が容易であって、高品位の画像形成が可能である
ため、今後、この方式による画像形成は、応用分野も含
めてその用途がますます拡大すると考えられている。
【0005】ここで、上記インクジェット方式において
カラー画像を形成する場合には、ブラックインク(B
k)に加えて、シアン(C)、マゼンタ(M)、および
イエロー(Y)の各色のインクからなるインクセットを
用いることが一般的である。つまり、カラー画像の表現
は、シアン、マゼンタ、およびイエローの3色のインク
を用いることによってほとんど実現することが可能にな
る。
【0006】ところで、一般に、インクジェット方式の
インクセットに用いられる各色のインクは、そのほとん
どが主溶媒を水とする水性インクであるが、この水性イ
ンクは、用紙などの被記録材上に形成された画像を安定
したものとするために、通常は乾燥後に耐水性となるよ
うに設計されていることがほとんどである。上記耐水性
を獲得するための具体的な手法としては、インクを発色
させるための色素材料として、被記録材に対する染着性
を有する水溶性染料を用いる手法が採用されることが多
い。これによって、容易かつ確実に、乾燥後の耐水性を
獲得することができる。
【0007】しかしながら、上記水溶性染料を用いる手
法であっても、乾燥後のインクの耐水性を十分に確保で
きるとは言えないという問題点が生じている。
【0008】たとえば、従来、マゼンタインクを作成す
るために用いられてきた下記式(i)で示されるアシッ
ドレッド52などは、耐水性が弱く、特に、被記録材と
して紙(用紙)を用いる場合、用紙の主成分であるセル
ロース繊維に対する染着性が低いという問題点を有して
いる。
【0009】
【化2】
【0010】セルロース繊維に対する染着性が低いとい
うことは、吐出されたインクがセルロース繊維との間に
良好な親和性を有さず、セルロース繊維にしみこんだり
することによる定着性が十分に発揮されないことを示
す。それゆえ、アシッドレッド52を使用したマゼンタ
インクでは、入力信号に対応して画像が形成されたとし
ても、十分にマゼンタインクが定着しないことになる。
【0011】特に、カラー画像を形成するために用いら
れる上記3色のインクのうち、視覚的な観点から最も重
要であると考えられるのが、赤系の色を表現するための
上記マゼンタインクである。赤系の色は、人間の視覚に
最も影響を及ぼす色であるので、形成された画像の画質
を高めるためには、この赤系の色が十分かつ安定して発
色していることが求められる。それゆえ、アシッドレッ
ド52を使用したマゼンタインクの定着性が悪いと、画
像全体の品位が低下することになる。
【0012】このようにインクと被記録材との定着性が
低い問題点を解消するために、たとえば特開平3−15
3385号公報には、反応性染料を含むインクと、定着
用の塩基性溶液(アルカリ液)とを用いる技術が開示さ
れている。上記反応性染料は、用紙に対して共有結合を
形成する能力を有しており、また、この反応性染料を含
むインクは酸性を示している。そして、上記塩基性溶液
を、好ましくは先に用紙上に吐出した後に、反応性染料
を含むインクで画像を形成すると、反応性染料が用紙に
対して共有結合を形成するので、良好な定着性と耐水性
とを発揮することになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した上
記従来技術を用いて得られるインクは、形成後の画像に
良好な定着性と耐水性とを与えるものの、インクジェッ
トプリンタに用いられるインクとして不十分であるとい
う問題点が生じている。
【0014】つまり特開平3−153385号公報にお
いては、画像形成のためにインク以外に塩基性溶液を用
い、特に塩基性溶液を先に用紙上に吐出して付着させて
からインクを吐出することになるため、インクジェット
ヘッドの構造が複雑化する。単に、インクの定着性を向
上させるだけであれば、この技術で十分であるが、イン
クヘッドの構造が複雑化すれば、専用のインクヘッドが
別途必要になりインクの汎用性が低下するとともに、専
用のインクヘッドを製造するため、プリンタのコストも
増大する。しかも、インクも特殊な反応性染料を用いる
ことになるので、インクそのもののコストも増大する。
【0015】さらに、上記特開平3−153385号公
報の技術では、反応性染料が不安定であることから塩酸
を生成し易く、それゆえ、インクヘッドの金属部分など
を腐食してインクヘッドに大きなダメージを与える可能
性が高いという問題点も生じている。
【0016】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
であって、その目的は、耐水性や定着性を十分に向上さ
せることが可能なインク組成物と、該インク組成物を用
いてなり、インクジェットプリンタに好適に用いること
が可能なインクセットとを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点に鑑みて鋭意検討した結果、インクの耐水性・定着性
を向上させる最も重要な点である、被記録材として用紙
の主成分であるセルロース繊維に対する染着性を向上さ
せるためには、染料および溶媒の組み合わせが重要であ
ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】すなわち本発明にかかるインク組成物は、
上記の課題を解決するために、色素材料として、下記式
(1)
【0019】
【化3】
【0020】(ただし、上記Aは、水素原子、塩素原
子、メチル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カ
ルボキシル基あるいはそのアルカリ金属塩、またはスル
ホン酸基あるいはそのアルカリ金属塩の何れかであり、
X,Yはそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属原子
を表し、上記x,yはそれぞれ独立して1ないし3の整
数であり、zは1または2の整数である)で表される水
溶性染料を少なくとも一種類と、主溶媒として、少なく
とも比抵抗値が3kΩ・cm以上の水と、副溶媒とし
て、100℃以上の沸点を有する水溶性有機溶剤と、2
価の金属イオンとを含有することを特徴としている。
【0021】上記構成によれば、セルロース繊維に対す
る染着性が非常に優れた上記式(1)で示される高染着
性染料に加えて、上記脱イオン水を主溶媒として用い、
高沸点有機溶剤を副溶媒として用い、さらに2価の金属
イオンを添加している。そのため、インク組成物の安定
性が向上するとともに、水溶性染料の結晶化が防止さ
れ、インク組成物がインクヘッド中でも十分な流動性を
確保しつつ、蒸発・乾燥しにくくなる。そのため、イン
ク組成物の吐出安定性がより一層向上し、コゲーション
の発生を確実に防止することができる。
【0022】しかも、上記各成分を含むことにより、吐
出安定性だけでなく、インク組成物の浸透性も向上して
いるので、吐出されて被記録材である用紙に付着した後
には、該インク組成物は、乾燥するまでの間に用紙に強
力に定着される。その結果、上記式(1)の染料の性能
を十分に引き出すことが可能になり、インク組成物の耐
水性・定着性をより一層向上させることができる。
【0023】本発明にかかるインク組成物は、上記構成
に加えて、上記水溶性有機溶剤が、グリセリン、ジエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレ
ングリコールモノブチルエーテル、N−メチルピロリド
ン、2−ピロリドン、1,5−ペンタンジオール、1,
4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリ
エチレングリコールの群から選ばれる1種類以上の有機
溶剤であることを特徴としている。
【0024】上記構成によれば、上記高沸点有機溶剤と
して、上記各有機溶剤から少なくとも1種類以上が用い
られることによって、インク組成物の乾燥をより確実に
回避することが可能になる。
【0025】本発明にかかるインク組成物は、上記構成
に加えて、曇点が60℃以上のノニオン界面活性剤を含
有することを特徴としている。
【0026】上記構成によれば、インク組成物中でアニ
オンにもカチオンにもならない非イオン性の界面活性剤
が含まれており、しかもこのノニオン界面活性剤は曇点
が60℃以上である。そのため、インク組成物の表面張
力を調整する上に、界面活性剤が水溶性染料などの各成
分と反応するようなことがなく、インク組成物の結晶化
を防止することになる。その結果、インクの吐出安定性
をさらに一層向上させることができる。また、インク組
成物の表面張力を調整できることから、インクヘッドの
ノズルや被記録材(たとえば用紙など)に対するインク
組成物の濡れ性や浸透性を向上させることができる。
【0027】本発明にかかるインク組成物は、上記構成
に加えて、上記2価の金属イオンが、カルシウムイオン
またはマグネシウムイオンであることを特徴としてい
る。
【0028】上記構成によれば、2価の金属イオンとし
て、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンの何れ
かを用いるため、上記式(1)の染料の染着性をさらに
一層向上させることが可能になる。その結果、インク組
成物の定着性・耐水性をさらに一層向上させることがで
きる。
【0029】本発明にかかるインクセットは、上記の課
題を解決するために、上記何れかの構成のインク組成物
をマゼンタインクとして含んでおり、インクジェットプ
リンタに使用されることを特徴としている。
【0030】上記構成によれば、セルロース繊維に対す
る染着性が非常に優れた高染着性染料を主たる色素材料
としたマゼンタインクを用いることになる。そのため、
該インクセットを用いて形成した画像は、用紙に強力に
定着することになり、カラー画像の高い耐水性を非常に
高いものとすることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について説
明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限
定されるものではない。
【0032】本発明にかかるインク組成物は、特に、カ
ラー画像形成のためのカラーインクとして好適に用いら
れるものであり、色素材料として下記式(1)を有する
水溶性染料(高染着性染料)を含んでいるものである。
【0033】
【化4】
【0034】また、本発明にかかるインクセットは、上
記水溶性染料(高染着性染料)を含むインク組成物を用
いるものであり、インクジェットプリンタに特に好適に
使用されるものである。
【0035】本発明にかかるインク組成物に含まれる水
溶性染料は、前記式(1)を有しており、特に被記録材
として用いられる用紙の成分であるセルロース繊維に非
常に高い染着性を示す高染着性染料となっている。
【0036】上記式(1)を有する高染着性染料は、た
とえば特公昭38−3437号公報に記載の実施例1に
基づき合成することができる。また、上記式(1)を有
する高染着性染料としては、具体的には、下記式(2)
〜(6)に示す各化合物が挙げられる。
【0037】
【化5】
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】また、本発明にかかるインク組成物に使用
される上記式(1)に示す各高染着性染料は、一般に塩
化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩が染料合成
時に大量に混入する。さらには、一般的に使用される水
には、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなども微
量ながら混入する。これら無機成分は、染料の溶解度お
よび染料を溶解させた溶解液または分散液の保存性を著
しく悪化させるのみならず、インクジェットプリンタの
プリンターヘッドを腐食させたり、磨耗させる原因とな
る。
【0043】そこで、本発明にかかるインク組成物にお
いては、限外濾過法、逆浸透法、イオン交換法などの方
法を利用して上記無機成分をできる限り除去し、その含
有量を1重量%以下にして使用することが非常に好まし
い。
【0044】上記式(1)を有する高染着性染料は、セ
ルロース繊維に対する染着性が非常に優れたものとな
る。それゆえ、インクヘッドからインク組成物が吐出さ
れ被記録材である用紙に付着した後、インク組成物が乾
燥するまでの間に、用紙に強力に定着することになる。
その結果、乾燥したインク組成物からなるカラー画像は
より高い耐水性を発揮することができる。
【0045】本発明にかかるインク組成物においては、
上記高染着性染料以外の各種水溶性染料が含まれていて
もよい。このようなその他の水溶性染料としては、イン
ク組成物に発色させたい色に応じて、従来公知の水溶性
染料を適宜選択することができ、特に限定されるもので
はない。
【0046】本発明にかかるインク組成物の溶媒は、主
溶媒としての水と、副溶媒としての水溶性有機溶剤とか
らなっている。本発明にかかるインク組成物は水性であ
るとともに、乾燥後は耐水性になるものであるが、この
インク組成物の乾燥を制御するために、水以外に水溶性
有機溶剤が加えられていることが好ましい。この乾燥制
御としては、たとえばインクヘッドから吐出される前に
おいてインク組成物の乾燥を防いだり、インクヘッドか
ら吐出されて被記録材上に付着した後に乾燥する場合の
乾燥効率を向上させたりする制御が挙げられる。
【0047】このうち、上記水としては、できる限りイ
オンを除去してなる脱イオン水が用いられることが非常
に好ましい。これによって後述するコゲーションの発生
を確実に防止することができる。なお、本発明に用いら
れる脱イオン水においては、上記イオンをどの程度まで
除去したかを表す指標として、該脱イオン水の比抵抗値
(電気抵抗率)を用いている。上記比抵抗値は、脱イオ
ン水における電気抵抗の大きさを示すものであって、こ
の値が小さければ脱イオン水の電気伝導性が高くイオン
が多く含まれていることを示す。逆にこの値が大きけれ
ば脱イオン水の電気伝導性が低くイオンが少ないことを
示す。なお、上記比抵抗値の単位としてはΩ・cmを用
いる。
【0048】本発明においては、脱イオン水の比抵抗値
ρ0は、具体的には、3kΩ・cmを超え18.3MΩ
・cm以下の範囲内(3×103Ω・cm<ρ0≦1.8
3×107Ω・cm)であり、好ましくは、0.1MΩ
・cm以上18.3MΩ・cm以下の範囲内(1×10
5Ω・cm≦ρ0≦1.83×107Ω・cm)であり、
より好ましくは、0.5MΩ・cm以上15MΩ・cm
以下の範囲内(5×106Ω・cm≦ρ0≦1.5×10
7Ω・cm)である。
【0049】上記比抵抗値ρ0が3kΩ・cm以下であ
ると、十分にイオンが除去された「脱イオン水」である
とはいえず、コゲーションと呼ばれる問題点を引き起こ
すことになる。一方、比抵抗値ρ0が18.3MΩ・c
mを超える水を製造することは極めて困難である。
【0050】なお、上記コゲーションとは、一般には、
インク組成物中の着色成分が熱分解することにより生じ
る物質や、インク組成物中に含まれる微量の無機不純
物、凝集物などが上記ヒータ上に付着・堆積し、その結
果ヒータによるインク加熱が十分に実施できなくなり、
安定したインクの吐出が持続しなくなる現象をいう。
【0051】上記脱イオン水の製造方法としては特に限
定されるものではなく、水道水を原料として、公知の超
純水製造装置などを用いる方法が好適である。
【0052】本発明にかかるインク組成物中における上
記脱イオン水の含有量としては、インク組成物全重量を
100重量%とすると、少なくとも50重量%以上であ
り、50重量%以上95重量%以下の範囲内であること
が好ましく、70重量%以上95重量%以下の範囲内で
あることがより好ましい。50重量%以下であると、脱
イオン水が主溶媒ではなくなりインク組成物の流動性が
低下するなどの種々の問題点が発生することになる。
【0053】本発明にかかるインク組成物に含まれる上
記副溶媒としての水溶性有機溶剤は、該インク組成物の
乾燥が制御できるとともに、インク組成物に含まれる色
素材料を変性させたりするようなものでなければ、特に
限定されるものではないが、特に、沸点が100℃以上
の水溶性有機溶剤、すなわち高沸点有機溶剤が選択され
ることが好ましい。
【0054】このような高沸点有機溶剤を用いること
で、インク組成物がインクヘッド中でも十分な流動性を
確保しつつ、蒸発・乾燥しにくくなり、上記コゲーショ
ンをより確実に防止できる。つまり、上記高溶性有機溶
剤は、特に、インクヘッドから吐出される前の乾燥過程
を良好に制御し、インク組成物の望ましくない乾燥を抑
制する湿潤剤として機能する。
【0055】上記高沸点有機溶剤としては、具体的に
は、たとえば、n−ブタノール、n−ペンタノール、is
o −ペンタノールなどのアルキルアルコール類;ジメチ
ルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド
類;ジエチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケト
ンまたはケトアルコール類;ジオキサンなどのエーテル
類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコー
ルなどのポリアルキレングリコール類;ポリエチレンイ
ミン;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブ
チレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチ
レングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チ
オグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリ
コール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリ
コール、トリプロピレングリコール、1,5−ペンタン
ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,
4−シクロヘキサンジオールなどの多価アルコール類;
エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレング
リコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ
ーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、
トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチ
レングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコー
ルの低級モノアルキルエーテル類;トリエチレングリコ
ールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチ
ルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテ
ル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどの
多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタ
ノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールア
ミン、有機アミン類、2−ピロリドン、N−メチル−2
−ピロリドンなどの有機アミド類;スルホラン;などと
いった、各種の水溶性有機溶剤が挙げられる。
【0056】上記高沸点有機溶剤の中でも、特に、グリ
セリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、N−
メチルピロリドン、2−ピロリドン、1,5−ペンタン
ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパン
ジオール、ポリエチレングリコールの少なくとも何れか
1種類以上の有機溶剤が特に好ましい。
【0057】本発明においては、上記水溶性有機溶剤は
単独で用いてもよく、複数種類を適宜選択して用いても
よいが、特にインクヘッドのノズル内での乾燥を回避す
るためには、2種類以上(複数種類)の混合物として用
いられることが好ましい。上記水溶性有機溶剤が2種類
以上用いられていれば、インク組成物には、脱イオン水
を含めて少なくとも3種類以上の溶媒が含まれているこ
とになり、各溶媒の蒸発率の違いからインク組成物の乾
燥をより確実に回避することが可能になる。
【0058】本発明にかかるインク組成物中に含まれる
上記水溶性有機溶剤の全含有量、すなわち、2種類以上
用いた場合は、全ての水溶性有機溶剤を合わせた全含有
量は、インク組成物全重量を100重量%とした場合
に、3重量%以上50重量%以下の範囲内が好ましく、
3重量%以上40重量%以下の範囲内がより好ましく、
10重量%以上30重量%以下の範囲内が特に好まし
い。
【0059】水溶性有機溶剤が50重量%を超えると、
脱イオン水が主溶媒ではなくなり、流動性が低下したり
するなどの種々の問題点が生じるため好ましくない。一
方、3重量%未満であれば、水溶性有機溶剤を添加する
ことによる湿潤剤としての効果などが十分に得られなく
なるため好ましくない。
【0060】本発明にかかるインク組成物には、さら
に、所定の2価の金属イオンが含まれていることが好ま
しい。このような金属イオンを所定の濃度で添加する
と、該インク組成物に含まれる成分と金属イオンとが錯
体を形成すると考えられ、その結果、インク組成物の被
記録材である用紙などへの定着性を向上(特に、紙の成
分であるセルロース繊維への染着性を向上)させ、形成
された画像の安定性をより一層向上させ得るという利点
が得られる。
【0061】上記金属イオンは、従来ではコゲーション
の主たる発生原因であり、できる限り含まれないことが
好ましいとされてきたが、上述したように、コゲーショ
ンの発生の第1要因は、必ずしも金属系無機物のイオン
ではなく、水に含まれる各種イオン(その他のイオン)
である場合が多いため、必ずしもこれら金属イオンはコ
ゲーションを発生させるものではなく、逆に上記の利点
を得るために、本発明にかかるインク組成物には含まれ
ていることが好ましい。
【0062】また、通常、インク組成物に金属イオンが
含まれていると、インク組成物を長時間保存するだけで
沈殿や凝固などが発生し、これがコゲーションをより発
生し易くしていたが、本発明では、主溶媒として脱イオ
ン水を用いているので、上記沈殿・凝固の発生も効果的
に回避され、インク組成物の保存安定性を向上させるこ
とができる。
【0063】上記2価の金属イオンは、インク組成物に
含まれる色素材料に応じて適宜選定されるものであり、
特に限定されるものではないが、マグネシウムイオンや
カルシウムイオンが好適に用いられる。これら2価の金
属イオンの濃度としては特に限定されるものではない
が、塩としてインク組成物に添加した場合に0.1重量
%以上10重量%以下の範囲内であることが好ましく、
1重量%以上5重量%以下の範囲内であることがより好
ましい。
【0064】上記マグネシウムイオンやカルシウムイオ
ンを供給する塩としても特に限定されるものではない
が、たとえば硝酸塩、つまり硝酸マグネシウムや硝酸カ
ルシウムなどが好ましく用いられる。
【0065】本発明にかかるインク組成物には、インク
組成物の表面張力を調整し、インクヘッドのノズルや被
記録材(たとえば用紙など)に対するインク組成物の濡
れ性や浸透性を向上させる目的で界面活性剤が含まれて
いることが好ましい。特に本発明では、インク組成物に
界面活性剤が含まれていると、被記録材である用紙に対
する浸透性を良好に制御することができるので、インク
組成物の定着状態をより安定なものとして、得られるカ
ラー画像の耐水性をさらに一層向上させることができ
る。
【0066】特に本発明では、この界面活性剤はノニオ
ン性である、すなわちノニオン界面活性剤であることが
非常に好ましい。界面活性剤がノニオン性、すなわちイ
ンク組成物でアニオンにもカチオンにもならない非イオ
ン性の界面活性剤であれば、界面活性剤が水溶性染料な
どの各成分と反応するようなこともなく、インク組成物
中におけるコゲーションの発生をより一層確実に回避し
て、インクの保存安定性を向上させることができる。
【0067】上記ノニオン界面活性剤としては、特に限
定されるものではないが、たとえば、ポリオキシエチレ
ンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエー
テル、アルコールエチレンオキサイド、ポリオキシエチ
レンポリスチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン
−ポリオールプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシ
エチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキ
シエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステ
ル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリ
ン脂肪酸エステル、ノニルフェニルエーテルエチレンオ
キサイド付加物、アセチレングリコールポリエチレンオ
キサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラ
ウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレ
ート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、
ソルビタンモノステアレート、アセチレングリコールな
どが挙げられる。これらノニオン界面活性剤は単独で用
いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよ
い。
【0068】さらに、上記ノニオン界面活性剤において
は、曇点が60℃以上のものが非常に好ましい。曇点
は、ノニオン界面活性剤の水溶液の温度を上昇させた際
に、透明な水溶液が濁り始める温度のことで、曇点以上
の温度では、ノニオン界面活性剤は油溶性になり、その
ときできるエマルジョンは油中水滴型となる。本発明に
かかるインク組成物は水溶性であるので、曇点が低けれ
ばノニオン界面活性剤による界面活性効果が得られなく
なるので、特にインクジェットプリンタで用いられるこ
とを鑑みて、曇点は60℃以上であることが好ましい。
【0069】上記曇点が60℃以上のノニオン界面活性
剤としては、具体的には、Tergitolシリーズ(ユニオン
カーバイド社製)、オルフィンシリーズ(日信化学社
製)、ナロアクティーシリーズ(三洋化成社製)などが
挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0070】上記ノニオン界面活性剤のインク組成物中
における含有量としては、該インク組成物中に、約0.
01重量%以上5重量%以下の範囲内の濃度となってお
り、約0.1重量%以上3重量%以下の範囲内の濃度と
なっていることがより好ましい。この範囲内でノニオン
界面活性剤が含まれていることによって、インクヘッド
のノズルや被記録材上での濡れ性などを良好に調整する
ことが可能になる。
【0071】上記ノニオン界面活性剤の含有量が約0.
01重量%未満であれば、十分な表面張力の調整効果が
得られないため好ましくない。一方、約5重量%を超え
ると、添加量に見合った表面張力の調整効果が得られな
い上に、粘性などが高くなってしまい、インク組成物と
しての機能が低下するため好ましくない。
【0072】本発明にかかるインク組成物は、所望の物
性値を得るために、上述した成分の他に、必要に応じ
て、消泡剤、防腐剤、防カビ剤などを添付することがで
きる。これら消泡剤、防腐剤、防カビ剤などの具体例や
添加量については、インク組成物の諸特性に悪影響を及
ぼさない限り特に限定されるものではなく、従来公知の
技術を好適に用いることができる。
【0073】本発明にかかるインクセットは、上記式
(1)を有するマゼンタインクを用いてなるものであっ
て、他に発色させる色が異なるインク組成物を複数組み
合わせてなっている。たとえば、少なくともシアン、マ
ゼンタ、イエロー、およびブラックの4各色のインク組
成物のセットとなっているものが挙げられる。この本発
明にかかるインクセットは、従来公知の各種インクジェ
ットプリンタに広く適用することができる。
【0074】上記インクジェットプリンタの代表的な方
式としては、ノズル内のインク組成物をピエゾ素子の物
理的変形によって吐出するピエゾジェット方式や、ノズ
ル内のインクに熱を加えて発生する気泡によって吐出す
るサーマルジェット方式が挙げられる。本発明にかかる
インクセットは、上記何れの方式にも好適に用いること
ができる。
【0075】上記構成のインクセットであれば、セルロ
ース繊維に対する染着性が非常に優れた高染着性染料を
主たる色素材料としたマゼンタインクを用いることにな
る。そのため、特にマゼンタインクの耐水性・定着性を
向上させることが可能となる。その結果、該インクセッ
トを用いて形成した画像は、用紙に強力に定着すること
になり、カラー画像の高い耐水性を非常に高いものとす
ることができる。
【0076】
【実施例】以下、実施例、および比較例に基づいて本発
明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定さ
れるものではない。
【0077】なお、連続画像形成、デキャップ特性、お
よび画像耐水性については、下記の方法により評価し
た。
【0078】〔連続画像形成〕上記サーマルジェット方
式のカラーインクジェットプリンタ、プリズマAJ−2
000の改造機(シャープ製)を用いて、カートリッジ
のインクタンクの規定量まで各インク組成物を充填し、
PPC用紙を用いて連続して画像形成動作(印刷動作)
を実施した。インクタンクが空になった時点で同じ色の
インク組成物を再充填して、画像形成動作が不可能とな
るまで連続して画像形成動作を継続した。このときの画
像形成(印刷)濃度を20%に設定した。
【0079】画像形成動作が不可能になった時点までに
得られたPPC用紙の枚数を計数した上で、該枚数が、
200枚を超えるまで連続して画像形成動作が可能であ
る場合を○、200枚以下の場合を×として評価した。
【0080】〔デキャップ特性〕上記カートリッジのイ
ンクタンクにインク組成物を充填してから上記プリンタ
に該カートリッジを装着して10枚画像形成を行った。
その後、カートリッジをプリンタに装着したまま50
℃、湿度20%の条件で40日間放置した。放置後、再
度画像形成を行った。このときクリーニング動作を1〜
3回程度繰り返した状態で画像形成が可能である場合を
○、画像形成できない場合を×として評価した。
【0081】〔画像耐水性〕上記カートリッジのインク
タンクにインク組成物を充填して、マゼンタ単色を画像
形成し、得られた画像サンプルに水を2ml滴下して、
1分経過後にワイパーで水を拭き取った。水の滴下前後
における画像サンプルについてそれぞれ色彩計(X-LITE
社製:商品名938)を用いて色彩を測定し、その色差
(ΔE)を得た。ΔEが10以下の場合を○、10を超
える場合を×として評価した。
【0082】〔実施例1〕まず、Ultra Pure Water Sys
tem CPW-102(ADVANTEC製)を用いて水道水から脱イ
オン水(純水)を製造した。得られた脱イオン水の比抵
抗値ρ0を導電率計CM−60G(東亜社製)を用いて測
定した。該脱イオン水の比抵抗値ρ0は18MΩ・cm
であった。
【0083】この脱イオン水に対して、まず、下記式
(2)に示す染料を投入して攪拌機を用いて3時間攪拌
混合した。
【0084】
【化10】
【0085】その後、沸点が100℃以上の水溶性有機
溶剤である2−ピロリドン(沸点231℃)、およびジ
エチレングリコール(沸点244℃)、並びにノニオン
界面活性剤であるTergitol 15-S-15(曇点100℃)を
この順で加えた後、さらに3時間攪拌混合した。その
後、得られた溶液を0.5μmのフィルタを通して濾過
し、本発明にかかるインク組成物としてのマゼンタイン
クを得た。該マゼンタインクの組成を表1に示す。
【0086】このマゼンタインクを用いて、上述したよ
うに連続画像形成、デキャップ特性、画像耐水性につい
て評価した。その結果を表3に示す。
【0087】〔実施例2〕水溶性染料として、下記式
(3)に示す染料を用い、水溶性有機溶剤として1,5
−ペンタンジオール(沸点242℃)および2−ピロリ
ドンの組み合わせを用いて、最終的な組成が表1に示す
組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にし
て、本発明にかかるインク組成物としてのマゼンタイン
クを得た。
【0088】
【化11】
【0089】このマゼンタインクを用いて、上述したよ
うに連続画像形成、デキャップ特性、画像耐水性につい
て評価した。その結果を表3に示す。
【0090】〔実施例3〕水溶性染料として、下記式
(4)に示す染料を用い、水溶性有機溶剤としてグリセ
リン(沸点290℃)、2−ピロリドン、およびジエチ
レングリコールの組み合わせを用い、ノニオン界面活性
剤として曇点60℃のTergitol 15-S-9 を用い、さらに
2価の金属イオンの供給源として硝酸マグネシウムを用
いて、最終的な組成が表1に示す組成となるようにした
以外は、前記実施例1と同様にして、本発明にかかるイ
ンク組成物としてのマゼンタインクを得た。
【0091】
【化12】
【0092】このマゼンタインクを用いて、上述したよ
うに連続画像形成、デキャップ特性、画像耐水性につい
て評価した。その結果を表3に示す。
【0093】
【表1】
【0094】〔比較例1〕まず、水道水を、活性炭層を
通した後にイオン交換樹脂の層を通すことによって得ら
れるイオン交換水を得た。このイオン交換水の比抵抗値
ρ0を実施例1と同様にして測定したところ、2kΩ・
cmであった。
【0095】そして、水溶性染料としてアシッドレッド
52を用い、水溶性有機溶剤として2−ピロリドンおよ
び1,5−ペンタンジオールを用い、ノニオン界面活性
剤として曇点63℃のナロアクティー N-100を用い、さ
らに2価の金属イオンとして硝酸カルシウムを加えて、
最終的な組成が表2に示す組成となるようにした以外
は、前記実施例1と同様にして比較インク組成物として
の比較マゼンタインクを得た。この比較マゼンタインク
を用いて、上述したように画像耐水性、連続画像形成、
およびインク乾燥・凝固性について評価した。その結果
を表3に示す。
【0096】〔比較例2〕水溶性染料としてアシッドレ
ッド52を用い、水溶性有機溶剤としてn−プロピルア
ルコール(1−プロパノール、沸点97.2℃)および
1,5−ペンタンジオールを用い、ノニオン界面活性剤
として曇点63℃のナロアクティー N-100を用いて、最
終的な組成が表2に示す組成となるようにした以外は、
前記比較例1と同様にして比較インク組成物としての比
較マゼンタインクを得た。この比較マゼンタインクを用
いて、上述したように画像耐水性、連続画像形成、およ
びインク乾燥・凝固性について評価した。その結果を表
3に示す。
【0097】〔比較例3〕水溶性染料としてアシッドレ
ッド52を用い、水溶性有機溶剤としてイソプロピルア
ルコール(2−プロパノール、沸点82℃)および1,
5−ペンタンジオールの組み合わせを用い、ノニオン界
面活性剤として曇点60℃のTergitol 15-S-9 を用い、
さらに2価の金属イオンの供給源として硝酸カルシウム
を用いて、最終的な組成が表2に示す組成となるように
した以外は、前記比較例1と同様にして比較インク組成
物としての比較マゼンタインクを得た。この比較マゼン
タインクを用いて、上述したように画像耐水性、連続画
像形成、およびインク乾燥・凝固性について評価した。
その結果を表3に示す。
【0098】〔比較例4〕水溶性染料としてアシッドレ
ッド52を用い、水溶性有機溶剤として2−ピロリドン
および1,5−ペンタンジオールの組み合わせを用い、
ノニオン界面活性剤として曇点37℃のTergitol 15-S-
7 を用い、さらに2価の金属イオンの供給源として硝酸
カルシウムを用いて、最終的な組成が表2に示す組成と
なるようにした以外は、前記比較例1と同様にして比較
インク組成物としての比較マゼンタインクを得た。この
比較マゼンタインクを用いて、上述したように画像耐水
性、連続画像形成、およびインク乾燥・凝固性について
評価した。その結果を表3に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】表3の結果から明らかなように、上記式
(1)を有する高染着性染料を用いた本発明にかかるイ
ンク組成物は、優れた耐水性を発揮できるが、上記式
(1)を有さないアシッドレッド52を用いた比較イン
ク組成物は、十分な耐水性を発揮できなかった。
【0102】また、上記式(1)を有する水溶性染料に
加えて、比抵抗値ρ0が3kΩ・cmを超える脱イオン
水を用いるとともに、沸点100℃以上の水溶性有機溶
剤(高沸点有機溶剤)を用いた場合には、200枚以上
の連続画像形成が可能になる上に、インク乾燥や凝固も
発生せず、コゲーションの発生を防止可能であることが
分かった。一方、沸点100℃未満の水溶性有機溶剤
(低沸点有機溶剤)を用いた場合には、画像形成が不安
定になることが分かった。
【0103】さらに、2価の金属イオンを加えた場合に
は、脱イオン水の作用によってコゲーションが発生しな
いだけでなく、該2価の金属イオンにより、上記式
(1)を有する水溶性染料の染着性が向上し、より優れ
た耐水性が発揮できることが分かった。特に2価の金属
イオンとしては、硝酸マグネシウムを加えることが好ま
しい。
【0104】加えて、ノニオン界面活性剤を加えた場合
には、その曇点が60℃以上の場合、画像形成が良好で
あることも分かった。
【0105】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかるインク組
成物は、溶媒と、これに溶解または分散してなる色素材
料とを含んでいるインク組成物において、色素材料とし
て、下記式(1)
【0106】
【化13】
【0107】(ただし、上記Aは、水素原子、塩素原
子、メチル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カ
ルボキシル基あるいはそのアルカリ金属塩、またはスル
ホン酸基あるいはそのアルカリ金属塩の何れかであり、
X,Yはそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属原子
を表し、上記x,yはそれぞれ独立して1ないし3の整
数であり、zは1または2の整数である)で表される水
溶性染料を少なくとも一種類と、主溶媒として、少なく
とも比抵抗値が3kΩ・cm以上の水と、副溶媒とし
て、100℃以上の沸点を有する水溶性有機溶剤と、2
価の金属イオンとを含有する構成である。
【0108】それゆえ上記構成では、インク組成物の安
定性が向上するとともに、水溶性染料の結晶化が防止さ
れ、インク組成物がインクヘッド中でも十分な流動性を
確保しつつ、蒸発・乾燥しにくくなる。そのためインク
組成物の吐出安定性がより一層向上し、コゲーションの
発生を確実に防止することができるという効果を奏す
る。しかも、上記各成分を含むことにより、吐出安定性
だけでなく、インク組成物の浸透性も向上しているの
で、吐出されて被記録材である用紙に付着した後には、
該インク組成物が用紙に強力に定着される。その結果、
上記式(1)の染料の性能を十分に引き出すことが可能
になり、インク組成物の耐水性・定着性をより一層向上
させることができるという効果も併せて奏する。
【0109】本発明にかかるインク組成物は、上記構成
に加えて、上記水溶性有機溶剤が、グリセリン、ジエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレ
ングリコールモノブチルエーテル、N−メチルピロリド
ン、2−ピロリドン、1,5−ペンタンジオール、1,
4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリ
エチレングリコールの群から選ばれる1種類以上の有機
溶剤であることが好ましい。
【0110】上記構成では、上記高沸点有機溶剤とし
て、上記各有機溶剤から少なくとも1種類以上が用いら
れるので、インク組成物の乾燥をより確実に回避するこ
とができるという効果を奏する。
【0111】本発明にかかるインク組成物は、上記構成
に加えて、曇点が60℃以上のノニオン界面活性剤を含
有することがより好ましい。
【0112】上記構成では、非イオン性の界面活性剤が
含まれており、しかも曇点が60℃以上であるため、イ
ンク組成物の表面張力を調整するとともに、インク組成
物の結晶化を防止することになる。その結果、インクの
吐出安定性をさらに一層向上させることができるという
効果を奏する。また、インク組成物の表面張力を調整で
きることから、インクヘッドのノズルや被記録材(たと
えば用紙など)に対するインク組成物の濡れ性や浸透性
を向上させることができるという効果も併せて奏する。
【0113】本発明にかかるインク組成物は、上記構成
に加えて、上記2価の金属イオンが、カルシウムイオン
またはマグネシウムイオンであることがより好ましい。
【0114】上記構成では、2価の金属イオンとして、
カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンの何れかを
用いるため、上記式(1)の染料の染着性をさらに一層
向上させることが可能になる。その結果、インク組成物
の定着性・耐水性をさらに一層向上させることができる
という効果を奏する。
【0115】また、本発明にかかるインクセットは、以
上のように、上記何れかの構成のインク組成物をマゼン
タインクとして含んでおり、インクジェットプリンタに
使用される構成である。
【0116】それゆえ上記構成では、セルロース繊維に
対する染着性が非常に優れた高染着性染料を主たる色素
材料としたマゼンタインクを用いることになる。そのた
め、該インクセットを用いて形成した画像は、用紙に強
力に定着することになり、カラー画像の高い耐水性を非
常に高いものとすることができるという効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 一郎 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 本山 清人 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 中村 雅 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 小島 正好 埼玉県さいたま市八王子4丁目6番20号 (72)発明者 梶浦 典子 東京都葛飾区東金町7丁目21番11号 Fターム(参考) 2C056 EA13 FC02 2H086 BA52 BA53 BA56 BA59 BA60 4H056 JB02 JC05 4J039 BA07 BA15 BA30 BC03 BC07 BC09 BC11 BC14 BC20 BC33 BC40 BC50 BC52 BC66 BC73 BC79 BE01 BE02 BE12 BE22 CA03 EA15 EA38 EA41 EA43 EA46 GA24

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】色素材料として、式(1) 【化1】 (ただし、上記Aは、水素原子、塩素原子、メチル基、
    アミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシル基あ
    るいはそのアルカリ金属塩、またはスルホン酸基あるい
    はそのアルカリ金属塩の何れかであり、X,Yはそれぞ
    れ独立して水素原子、アルカリ金属原子を表し、上記
    x,yはそれぞれ独立して1ないし3の整数であり、z
    は1または2の整数である)で表される水溶性染料を少
    なくとも一種類と、 主溶媒として、少なくとも比抵抗値が3kΩ・cm以上
    の水と、 副溶媒として、100℃以上の沸点を有する水溶性有機
    溶剤と、 2価の金属イオンとを含有することを特徴とするインク
    組成物。
  2. 【請求項2】上記水溶性有機溶剤が、グリセリン、ジエ
    チレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチ
    レングリコールモノブチルエーテル、N−メチルピロリ
    ドン、2−ピロリドン、1,5−ペンタンジオール、
    1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、
    ポリエチレングリコールの群から選ばれる1種類以上の
    有機溶剤であることを特徴とする請求項1記載のインク
    組成物。
  3. 【請求項3】さらに、曇点が60℃以上のノニオン界面
    活性剤を含有することを特徴とする請求項1または2記
    載のインク組成物。
  4. 【請求項4】上記2価の金属イオンが、カルシウムイオ
    ンまたはマグネシウムイオンであることを特徴とする請
    求項1、2または3記載のインク組成物。
  5. 【請求項5】請求項1ないし4の何れか1項に記載のイ
    ンク組成物をマゼンタインクとして含んでおり、インク
    ジェットプリンタに使用されることを特徴とするインク
    セット。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006233213A (ja) * 2005-02-24 2006-09-07 Hewlett-Packard Development Co Lp オフアクシスプリンタ用のインクジェットインク組成物
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