JP2003155349A - 天然有機繊維からのナノ・メーター単位の超微細化繊維 - Google Patents

天然有機繊維からのナノ・メーター単位の超微細化繊維

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Takashi Taniguchi
髞 谷口
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的は、地球環境の保全と維持に貢献
する天然有機繊維からの新しい素材料であり、その応用
範囲は広く極めて興味深い素材料を提供することであ
り、すなわち、工業的規模で産業素材として利用できる
天然有機繊維からのナノ・メーター単位の超微細化繊維
を提供することにある。 【構成】天然有機繊維を同繊維を膨潤させる媒体下で、
同けんだく液がチクソトロピー性を有す濃度条件下で、
かつ同けんだく媒体中で繊維の長軸に対して、それに垂
直な方向に剪断力が加えられる条件下で、2枚の回転す
るデスク間にけんだく液を誘導し、超微細解繊し得られ
る、直径数ナノ・メーター(数nm)から直径数10ナノ
・メーター(数10nm)からなる超微細化繊維。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ミクロからマクロにわ
たり階層構造をなす細胞構造体、すなわち構成主化学成
分の高分子、その高分子の最小限の集合体(エレメンタ
リー・フィブリル)、最小限の集合体の集合体(ミクロ
・フィブリル)、さらに集合体のつくる構造体(細胞壁
の層状構造、ラメラ)、その構造体より成る細胞壁など
複雑な階層構造を呈する天然有機繊維から、その直径が
最も小さいとされる直径数ナノ・メーターから数10ナノ
・メーターの構成高分子の集合体(以下、ナノ・フィブ
リルと称する)を得ることは、新しい天然有機繊維から
の素材料の創出であり、それら天然有機繊維が、地球の
循環生態系に存在する物質であるが故に、地球環境の保
全と維持に貢献する素材料であり、その応用範囲は広
く、かつ極めて興味深い素材料と考えられる。最近のナ
ノ・テクノロジー分野の研究開発進展により、合成材料
としてのナノテクノロジーの材料の出現は著しいが、天
然有機材料のそれは、未だその例を見ない。 【0002】 【従来の技術】これまで天然繊維から、微小繊維状セル
ロース(特許公報、昭60-19921)、粉粒体状の微小繊維
材料(公開特許公報、平3-152130)、サブミクロン単位
に解繊された天然繊維体(公開特許公報、特開平4-2810
17)など、ミクロン(μm)からサブミクロン(0.1μ
m)単位の微小繊維状体を得る方法は、多くが試みら
れ、その内一部は、実用化が行われている。しかし、こ
れらの微小繊維体のすべてが、直径がサブミクロン(0.
1μmのオーダー、数100nmのオーダー)のものであり、
本出願の技術の成果、ナノフィブリル(直径がnmまたは
数10nmのオーダー)とその性状を異にするものである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本技術は、過去にセル
ロース系繊維の構成最小単位として、タマネギの根端細
胞の解繊物からMuehletaler が電子顕微鏡で確認したセ
ルロース分子の最小集合体(Elementary Fbrils)に相
当するもので、これを工業的規模で産業素材として利用
できる、天然有機繊維からのナノ・メーター単位の超微
細化繊維を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明の目的は、天然有
機繊維から直径が、数nmから数10nmのナノ・オーダー
の超微小直径を有する繊維状構造体を取り出すことであ
り、それには、該当天然有機繊維を水または該当材料を
膨潤させる溶液(メチルアルコール、エチルアルコール
などのモノアルコールなど)中に、当該天然有機繊維状
材料を分散させ、けんだく液中で同材料の個々の繊維の
繊維軸(繊維の長軸方向)方向に対して、垂直の方向か
ら、剪断応力を加え、繊維を構成する階層構造からその
最小の基本構成物、すなわち超微細繊維構造にまで解繊
するものである。これは、より糸を指に持ち、他方の指
でその長軸方向に垂直な方向で、撚りを戻す方向から剪
断力を加えると、糸は容易に構成単位の糸に分かれる現
象と類似の現象である。具体的な方法として、該当天然
有機繊維を膨潤させる水又は溶液に、当該繊維を分散さ
た、同けんだく液を、2枚の回転するデスク(互いに逆
方向に回転する2枚のデスク)間の中心部に、または一
方が固定で、一方が回転する2枚のデスク間の中心部
に、それぞれ投入し、かつけんだく液が、デスクの回転
により生じる遠心力により中心から外側に移動する際、
繊維の長軸方向を遠心力の方向に一致するように誘導
し、かつ繊維の長軸方向に対し垂直方向から剪断力がよ
り効率的に作用するように、デスクの表面にガイド溝を
付けると共に、デスクの回転数(500〜5000rpm)および
デスク間の間隔を、それぞれ最適化する。この手法によ
り、天然有機繊維は、容易に、その構成基本単位、高分
子の最小の集合体である、直径数nmまたは数10nmのナノ
フィブリルに解繊される。 【0005】 【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。 実施例1 セルロース系天然繊維の事例として、エゾマツ、ブナお
よびポプラ材の各晒しクラフト・パルプ(以下BKPと略
記)を用い、回転デスク方式による湿式粉砕機により、
媒体に対して試料濃度1〜5%で、デスク回転数1500rpm
で、10〜20回繰り返し解繊し、各供試試料のナノ・フィ
ブリル化を行った。この間、試料濃度は、けんだく液の
粘性特性が、チクソトロピック性を保つように調整し、
試料繊維に剪断力が有効に作用するように対応した。得
られたBKPのナノ・フィブリルについて、電子顕微鏡で
その像を観察したところ、いずれも直径数nmのナノ・フ
ィブリルの存在を確認した(図1 ポプラBKPのナノ・フ
ィブリルの電子顕微鏡像)。 【0006】実施例2 キチン・キトサン系天然繊維の事例として、キトサン
(市販品、キトサン)を用い、実施例1と同様な条件
で、キトサン試料のナノ・フィブリル化を行った。得ら
れたキトサンのナノ・フィブリルについて、電子顕微鏡
でその像を観察したところ、直径数10ナノメーターのナ
ノ・フィブリルの存在を確認した(図2 キトサンナノ
フィブリルの電子顕微鏡像)。 【0007】実施例3 ポリペプチド系天然繊維の事例として、コラーゲン繊維
から成る牛皮革裁断物を用い、実施例1と同様な条件
で、コラーゲン繊維試料のナノ・フィブリル化を行っ
た。得られたコラーゲン繊維ののナノ・フィブリルにつ
いて、電子顕微鏡でその像を観察したところ、その像
は、ポリペプチド分子が集合して、螺旋状のコラーゲン
繊維を形成する、最小単位のコラーゲンを示し、同試料
は、構成繊維の最小単位にまでナノ・フィブリル化され
たことを示した。同ナノ・フィブリルの直径は数10nmで
あることを確認した(図3 コラーゲン繊維のナノフィ
ブリルの電子顕微鏡像)。 【0008】実施例4 セルロース系天然有機繊維として、綿(日本薬局方脱脂
綿)、麻繊維、こうぞの靭皮繊維および海草系材料とし
て昆布(市販品、北海道産)を、フィブロイン系天然有
機繊維として脱セリシン処理をした絹糸およびケラチン
系天然線維として、表面処理をした羊毛繊維(市販品)
を用いて、それぞれ実施例1と同様な条件で、当該試料
の超微細繊維化を行ったところ、いずれの試料からも、
直径が、数nmから数10nmのナノ・オーダーのナノ・フ
ィブリルが得られた。 【0009】実施例5 リサイクル回収物である、飲料用紙製容器(牛乳などの
回収紙製容器など)の裁断物、豆腐・豆乳・油揚げ等豆
類の加工製造過程で排出されるおから等の産業廃棄物、
ビール製造時の産業廃棄物であるホップかすを、それぞ
れ実施例1と同様な条件で、当該試料の超微細繊維化を
行ったところ、前者の紙製容器からは、直径が数nmのナ
ノ・フィブリルが、後2者からは、直径が、数10nmの
ナノ・オーダーの繊維状のナノ粒子が得られた。 【0010】実施例6 実施例1で得られた、セルロース系繊維のナノ・フィブ
リルの水けんだく液を用いて、必要ならばさらに水で希
釈し、試料濃度を1〜0.01%のけん濁液に調整し、同液
をプラスチック板の上に滴下し、同板の上で室温で自然
乾燥により水を蒸発・除去し、成膜した。得られた膜
は、半透明の強固な膜で、反射率分光方式で測定したそ
の膜厚は、試料けんだく液の濃度に依存し、それぞれ数
100nm〜数10nmの範囲であった。これらの膜は、超薄膜
であり、直径数nmのナノフィブリルが得られて、はじめ
て成膜可能なものである。この超薄膜は、従来の直径が
数ミクロン単位やサブミクロン単位の微細繊維からは、
仮に1本の微細繊維を並べたとしても、その膜厚が数10
nmの薄膜は決して得られないものである。 【0011】実施例7 実施例1 、2および3で得られた、木材パルプからの
ナノ・フィブリル、キトサンからのナノ・フィブリルお
よびコラーゲンからのナノ・フィブリルの水けんだく液
をそれぞれ所定の割合で混合し、得られたブレンド物の
けんだく液をプラスチック板の上に滴下し、同板の上で
室温で自然乾燥により水を蒸発・除去し、成膜した。得
られた膜は、半透明の強固な膜で、反射率分光方式で測
定したその膜厚は、試料けんだく液の濃度に依存し、そ
れぞれ数100nm〜数10nmの範囲であった。得られた超薄
膜を電子顕微鏡で詳細に観察したところ、それぞれのナ
ノ・フィブリルは均一に分散し、その膜表面の面内にナ
ノ・フィブリルの長軸方向を配向させて存在することが
分かった。また、その顕微赤外分光分析より、膜表面の
官能基の存在を分析した結果、膜表面にそれそれ構成ナ
ノ・フィブリルからの官能基の存在を認めた。この事
は、構成ナノ・フィブリルのそれぞれが、超薄膜表面
に、分散して、かつナノ・フィブリルの長軸方向を配向
させて在することを示唆した。また、特別な溶剤を用い
ずに、水を共通媒体として、任意のナノ・フィブリルの
ブレンドによる超薄膜の成膜が、本技術のナノ・フィブ
リルの創出によって、初めて可能になった。 【0012】実施例8 実施例5で得られた、リサイクル回収飲料用紙製容器
から得られたナノ・フィブリルの水けんだく液を用い
て、木質繊維板で用いる木材繊維と混合し、湿式脱水法
で成形し、乾燥し、接着剤を用いずに木質繊維板を作成
した。木質材料に対して、1%のナノ・フィブリル水け
んだく液を数%から数10%添加することによって、木質
材料である現行の中密度繊維板(以下MDFと略記)に比
して、本成形体は、密度がMDFより低くて、MDFと同等な
強度を有することが認められた。 【0013】 【発明の効果】実施例で示したように、本発明の天然有
機繊維からのナノ・メーター単位の超微細化繊維は、工
業的規模で産業素材として利用できるものであることが
分かった。
【図面の簡単な説明】 【図1】木材パルプ繊維、ポプラ晒しクラフトパルプか
らのナノ・フィブリルの電子顕微鏡写真(図中のスケー
ルバーは 100nm) 【図2】キトサンからのナノ・フィブリルの電子顕微鏡
写真(図中のスケールバーは 1000nm) 【図3】コラーゲン繊維からのナノ・フィブリルの電子
顕微鏡写真(図中のスケールバーは 100nm)

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 天然有機繊維を同繊維を膨潤させる媒体
    下で、同けんだく液がチクソトロピー性を有す濃度条件
    下で、かつ同けんだく媒体中で繊維の長軸に対して、そ
    れに垂直な方向に剪断力が加えられる条件下で、2枚の
    回転するデスク間にけんだく液を誘導し、超微細解繊し
    得られる、直径数ナノ・メーター(数nm)から直径数1
    0ナノ・メーター(数10nm)からなる超微細化繊維。
    天然有機繊維としては、セルロース系繊維(木綿、
    麻、木材パルプ、コウゾ・ミツマタ、ケナフ等の植物繊
    維、大豆・ソバなどの穀類および海藻等に含まれる植物
    繊維および繊維状多糖・オリゴ糖、ホヤのチュニシンセ
    ルロース、バロニアセルロース、バクテリアセルロース
    などのセルロース繊維)、キチン・キトサン系繊維、コ
    ラーゲンまたはフィブロインを主成分とする繊維、ケラ
    チンを主成分とする繊維を、それぞれ含む。
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