JP2003142418A - 単結晶薄膜形成方法 - Google Patents

単結晶薄膜形成方法

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JP2003142418A JP2002212649A JP2002212649A JP2003142418A JP 2003142418 A JP2003142418 A JP 2003142418A JP 2002212649 A JP2002212649 A JP 2002212649A JP 2002212649 A JP2002212649 A JP 2002212649A JP 2003142418 A JP2003142418 A JP 2003142418A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 単結晶薄膜を形成する工程を精密に実行しな
くても、適度に良好な特性を持った薄膜を得る。 【解決手段】 基板11の上に軸配向多結晶薄膜71を
あらかじめ形成した後に、複数方向からビームを照射す
ることによって薄膜71を単結晶薄膜へ転換する。この
ため、例えば基板11の上に遮蔽体が形成されているな
どのために、複数方向からのビームが基板の上に均一に
照射されなくても、基板11の上のどの部分にも単結晶
薄膜か軸配向多結晶薄膜71の少なくとも何れかが形成
されているので、目立った特性上の劣化を引き起こさな
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、基板の上に単結
晶薄膜または軸配向多結晶薄膜を効率よく形成すること
を可能にする単結晶薄膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】所定の物質の単結晶薄膜を同一物質でし
かも同一の結晶方位を有する単結晶基板の上に形成する
には、よく知られるエピタキシャル成長法を用いること
ができる。一方、非晶質基板、多結晶基板などの結晶構
造が異なる基板、あるいは物質の異なる基板の上に、単
結晶薄膜を形成するには、基板の上に非晶質薄膜あるい
は多結晶薄膜を一旦形成し、その後これらの薄膜を単結
晶へ転換する方法が用いられる。
【0003】従来、多結晶半導体薄膜および非晶質であ
るアモルファス半導体薄膜の単結晶化には溶融再結晶化
法と、横方向固相エピタキシー法が使用されて来た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法は以下に記述するような問題点を有していた。す
なわち、前者の溶融再結晶化法では、薄膜を構成する物
質が高融点物質の場合、基板に大きい熱歪が発生し、利
用しようとする薄膜の物理的、電気的特性が損なわれる
という問題点があった。また溶融を行うために、電子ビ
ーム、或いはレーザービームが使用される。このため、
これらのビームのスポットを基板の全面にわたって走査
する必要があるので、再結晶化のために多大な時間とコ
ストとを要するという問題点があった。
【0005】後者の横方向固相エピタキシー法では、基
板を構成する物質の結晶方法に影響され易い上に、成長
速度が遅いという問題点があった。例えば、10μm程
度の厚さの単結晶薄膜に成長させるのに、10時間以上
を必要とした。しかも、成長がある程度進行すると、格
子欠陥が発生し単結晶の成長が止まるために、大きい結
晶粒を得ることが困難であるという問題点があった。
【0006】さらに、いずれの方法においても、種結晶
を多結晶薄膜、或いは非晶質薄膜に接触させる必要があ
るという問題点があった。また、単結晶が成長する方向
が薄膜の主面に沿った方向、すなわち横方向であるた
め、結晶への成長距離が長くなる結果、単結晶が成長す
る中途において各種の障害が入るという問題点があっ
た。例えば、基板がガラスなどの非晶質状の材料で構成
される場合には、基板の格子の位置に規則性が無いの
で、この不規則性が単結晶の成長に影響する結果、結晶
粒の粒径は大きいが多結晶として成長してしまうという
問題点があった。
【0007】一方、これらの方法における上述した問題
点を解決することを意図して、薄膜の縦方向の成長を利
用することによって成長距離を短くし、そのことによっ
て成長時間を短くする試みが行われた。すなわち、多結
晶薄膜、あるいは非晶質薄膜の全面に種結晶を接触さ
せ、薄膜の主面に垂直な方向すなわち縦方向に固相エピ
タキシャル成長を行わせる方法が試みられた。しかしな
がら、その結果は、部分的にしか種結晶と非晶質薄膜等
とが接触せず、この接触部分から横方向エピタキシャル
成長が起こるだけであり、期待された縦方向の固相エピ
タキシャル成長によって単結晶薄膜を形成するには至ら
なかった。加えて、この方法では、種結晶と成長した単
結晶膜とが接着してしまうので、これを分離することが
非常に困難であり、敢えて引き離そうとすると、成長し
た薄膜が基板から剥離し種結晶側に付着してしまうとい
う問題点があった。
【0008】また、基板自体が単結晶構造を有する場合
には、この基板の結晶方位と異なる結晶方位を有する単
結晶の薄膜を、この基板の上に形成することはいずれの
従来の技術をもってしても不可能であるという問題点が
あった。
【0009】また、同様のことは、各結晶粒の間で一つ
の結晶軸が同一方向に揃った多結晶薄膜、すなわち軸配
向多結晶薄膜についてもいえる。すなわち、従来の技術
では、任意の基板の上に所望の方向に配向した軸配向多
結晶薄膜を形成することは困難であるという問題点があ
った。
【0010】この発明は、従来の方法が有する上述の問
題点を解決するためになされたもので、所望の方向に配
向した軸配向多結晶薄膜、および所望の結晶方位を有す
る単結晶薄膜を形成し得る単結晶薄膜形成方法を提供す
ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明にかかる請求項
1に記載の単結晶薄膜形成方法は、基板の上に所定の物
質の単結晶薄膜を形成する単結晶薄膜形成方法であっ
て、前記基板の上に前記所定の物質の結晶化が起こらな
い低温度下で、当該所定の物質を堆積させつつ、当該所
定の物質のスパッタリングを引き起こさない低エネルギ
ーの気体のビームを、堆積しつつある当該所定の物質へ
一方向から照射することによって、当該所定の物質の軸
配向多結晶薄膜を形成する工程と、前記所定の物質の結
晶化温度以下の高温下で、前記単結晶薄膜における方向
の相異なる複数の最稠密結晶面に垂直な方向から、前記
所定の物質のスパッタリングを引き起こさない低エネル
ギーの気体のビームを前記軸配向多結晶薄膜へ照射する
ことによって、当該軸配向多結晶薄膜を単結晶薄膜へ転
換する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】この発明にかかる請求項2に記載の単結晶
薄膜形成方法は、基板の上に所定の物質の単結晶薄膜を
形成する単結晶薄膜形成方法であって、前記基板の上
に、前記所定の物質を堆積させることによって当該物質
の薄膜を形成する工程と、前記工程の後に、前記所定の
物質の結晶化温度以下の高温下で、前記所定の物質のス
パッタリングを引き起こさない低エネルギーの気体のビ
ームを、前記薄膜へ一方向から照射することによって、
当該薄膜を軸配向多結晶薄膜へ転換する工程と、前記所
定の物質の結晶化温度以下の高温下で、前記単結晶薄膜
における方向の相異なる複数の最稠密結晶面に垂直な方
向から、前記所定の物質のスパッタリングを引き起こさ
ない低エネルギーの気体のビームを前記軸配向多結晶薄
膜へ照射することによって、当該軸配向多結晶薄膜を単
結晶薄膜へ転換する工程と、を備えることを特徴とす
る。
【0013】この発明にかかる請求項3に記載の単結晶
薄膜形成方法は、請求項1または請求項2に記載の方法
において、前記軸配向多結晶薄膜を形成する際における
前記気体のビームの照射方向と、前記軸配向多結晶薄膜
を単結晶薄膜へ転換する際における前記気体のビームの
複数の照射方向の1つとが、互いに同一であることを特
徴とする。
【0014】この発明にかかる請求項4に記載の単結晶
薄膜形成方法は、請求項1または請求項2に記載の方法
において、前記気体が不活性ガスであることを特徴とす
る。
【0015】この発明にかかる請求項5に記載の単結晶
薄膜形成方法は、請求項4に記載の方法において、前記
不活性ガスを構成する元素の原子量が、前記所定の物質
を構成する元素の原子量の中の最大の原子量よりも低い
ことを特徴とする。
【0016】この発明にかかる請求項6に記載の単結晶
薄膜形成方法は、請求項1または請求項2に記載の方法
において、前記所定の物質が、常温度下で気体である気
体物質を構成する元素を含むとともに、前記気体のビー
ムが、前記気体物質のビームであることを特徴とする。
【0017】この発明にかかる請求項7に記載の単結晶
薄膜形成方法は、請求項1または請求項2に記載の方法
において、前記気体のビームを電子サイクロトロン共鳴
型のイオン源を用いて生成することを特徴とする。
【0018】なお、この発明において「基板」とは、そ
の上に薄膜を形成することのみを目的として供される単
なる土台としての物体に限定されず、例えば所定の機能
を有するデバイスなどをも含めて、その上に薄膜を形成
する対象とされる媒体全般を意味する。
【0019】また、この発明で「気体のビーム」とは、
ビーム状のイオン流、原子流、分子流の何れをも包含す
る概念である。
【0020】
【作用】<請求項1に記載の発明の作用>この発明の方
法では、基板の上に軸配向多結晶薄膜をあらかじめ形成
した後に、複数方向からビームを照射することによって
薄膜を単結晶薄膜へ転換する。このため、例えば基板の
上に遮蔽体が形成されているなどのために、複数方向か
らのビームが基板の上に均一に照射されなくても、基板
の上のどの部分にも単結晶薄膜か軸配向多結晶薄膜の少
なくとも何れかが形成されているので、目立った特性上
の劣化を引き起こさない。
【0021】<請求項2に記載の発明の作用>この発明
の方法では、基板の上に軸配向多結晶薄膜をあらかじめ
形成した後に、複数方向からビームを照射することによ
って薄膜を単結晶薄膜へ転換する。このため、例えば基
板の上に遮蔽体が形成されているなどのために、複数方
向からのビームが基板の上に均一に照射されなくても、
基板の上のどの部分にも単結晶薄膜か軸配向多結晶薄膜
の少なくとも何れかが形成されているので、目立った特
性上の劣化を引き起こさない。
【0022】<請求項3に記載の発明の作用>この発明
の方法では、軸配向多結晶薄膜を形成する際における気
体のビームの照射方向と、軸配向多結晶薄膜を単結晶薄
膜へ転換する際における気体のビームの複数の照射方向
の1つとが、互いに同一であるので、単結晶薄膜への転
換が円滑に行われる。
【0023】<請求項4に記載の発明の作用>この発明
の方法では、不活性ガスのビームが照射に供されるの
で、形成される単結晶薄膜に気体が残留しても、薄膜の
電子物性等の特性に目立った影響を及ぼさないのに加え
て、侵入した気体を薄膜から容易に除去することができ
る。
【0024】<請求項5に記載の発明の作用>この発明
の方法では、不活性ガスを構成する元素の原子量が、薄
膜として成長しつつある所定の物質の構成元素の最大の
原子量よりも低いので、照射された不活性ガスの原子ま
たはイオンの大部分が、薄膜の表面ないしその近傍で後
方へ散乱され、薄膜の中に残留し難い。
【0025】<請求項6に記載の発明の作用>この発明
の方法では、照射される気体が薄膜として成長する物質
の構成元素を含んでいる。このため、照射後にこの構成
元素の原子またはイオンが薄膜の中に残留しても、これ
らが不純物として単結晶薄膜へ悪影響を及ぼす恐れがな
い。
【0026】<請求項7に記載の発明の作用>この発明
の方法では、ビーム発生源が電子サイクロトロン共鳴型
のイオン発生源である。このため、イオンビームの指向
性が高いのに加えて、イオン発生源から所定以上の距離
において、イオンを中性化する手段を用いることなく、
強度の中性ビームが得られる。また、電気絶縁性の基板
にイオンの電荷が蓄積しない。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施の形態に
係る実施例を説明する。
【0028】<1.第1実施例>まず、この発明の第1
実施例の装置について述べる。
【0029】<1-1.装置の全体構成>図2は、この実
施例の軸配向多結晶薄膜形成装置の全体構成を示す正面
断面図である。この装置102は、基板の上に所定の物
質の薄膜を成長させつつ、同時にこの薄膜を一軸配向性
の多結晶薄膜へと転換することによって、基板の上に軸
配向多結晶薄膜を形成することを目的として構成されて
いる。
【0030】この装置102では、反応容器1の上部
に、電子サイクロトロン共鳴型(ECR)のイオン発生
器2が組み込まれている。ECRイオン発生器2は、プ
ラズマ室4を内部に規定するプラズマ容器3を備えてい
る。プラズマ容器3の周囲には、プラズマ室4に直流の
高磁場を印加する磁気コイル5が設置されている。プラ
ズマ容器3の上面には、マイクロ波をプラズマ室4へ導
入する導波管6、およびNeなどの不活性ガスを導入す
る不活性ガス導入管7が設けられている。
【0031】反応容器1は、その内部に反応室8を規定
する。プラズマ容器3の底部はその中央部に、プラズマ
が通過する引出口9を規定する。反応室8とプラズマ室
4とは、この引出口9を介して互いに連通している。反
応室8の内部には、引出口9の直下の位置に試料台10
が設置され、さらに、試料台10の上には基板11が載
置されている。基板11は試料を構成する要素の一つで
あり、多結晶構造、アモルファス構造、または単結晶構
造の何れの物質で構成されてもよい。この基板11の上
に所望の方向に配向した軸配向多結晶薄膜が形成され
る。
【0032】反応室8には、反応ガス供給管13が連通
している。この反応ガス供給管13を通して、プラズマ
CVDにより基板11上に所定の物質の薄膜を形成する
ための反応ガスが供給される。図2の例では、3本の反
応ガス供給管13a、13b、および13cが設けられ
ている。反応室8には、更に真空排気管14が連通して
いる。この真空排気管14の一端には、図示しない真空
装置が連結しており、真空排気管14を介して、反応室
8に存在する気体が排気されることにより、反応室8に
おける真空度が所定の高さに保持される。反応室8にお
ける真空度を表示する真空計15が、反応室8に連通し
て設置されている。
【0033】<1-2.ECRイオン発生器2の動作>つぎ
に、ECRイオン発生器2の動作について説明する。不
活性ガス導入管7からプラズマ室4へ、Ne、Ar等の
不活性ガスを導入しつつ、同時に導波管6からプラズマ
室4へマイクロ波が導入される。更に同時に、磁気コイ
ル5に直流電流が供給されることにより、プラズマ室4
およびその周囲に直流磁場が形成される。供給された気
体は、マイクロ波と直流磁場の作用でプラズマ状態に保
たれる。このプラズマは、マイクロ波と直流磁場とによ
ってサイクロトロンの原理で螺旋運動する高エネルギー
の電子によって生成される。
【0034】この電子は、反磁性の特性を有するので、
磁場の弱い方に移動し、磁力線に沿った電子流を形成す
る。その結果、電気的中性を維持するために、電子流に
伴われて正イオンも、磁力線に沿ったイオン流を形成す
る。すなわち、引出口9から反応室8へ、下方向に向か
う電子流とイオン流とが形成される。イオン流は、電子
流と並行して流れるので、消イオン時間を経過すると、
互いに再結合することによって中性原子流となる。した
がって、引出口9から下方に所定距離以上離れた位置で
は、殆ど中性の原子流のみが形成されている。
【0035】図3は、ECRイオン発生器2によって、
10eVのAr+イオンを引出口9より取り出したとき
の、イオン電流密度と引出口9からの距離との関係を実
測した結果を示すグラフである。このグラフによれば、
イオン電流密度は、引出口から4〜5cmの距離から急
激に減少を始め、14cmの位置では1/10〜1/1
2の大きさに減衰することが読み取れる。イオン電流が
減衰した分、中性原子流が増加しており、引出口9から
下方に14cm以上離れた位置では、殆ど中性の原子流
のみが下方向へ向かって流れている。
【0036】このように、ECRイオン発生器2は、イ
オンを発生する装置でありながら、イオン流を電子流に
並行して形成するので、ECRイオン発生器2を用いる
ことにより、イオン流を中性化する他の手段を用いるこ
となく、密度の高い中性の原子流を容易に得ることがで
きるという利点がある。また、イオン流が電子流と並行
して形成されるので、進行方向があまり発散することな
く、進行方向の揃った平行流に近いイオン流が得られ
る。また、平行なイオン流が中性の原子流に転換される
ので、原子流も進行方向の揃った平行流に近いものとな
る。
【0037】また、基板11には中性の原子流が照射さ
れるので、基板11が電気絶縁性であっても、イオンの
電荷が基板11に蓄積して基板11への照射が阻害され
るという恐れがない。
【0038】<1-3.装置102の動作>つぎに図2に戻
って、装置102の動作について説明する。基板11と
して多結晶SiO2(石英)を用い、この石英基板11
の上に単結晶Siの薄膜を形成する例を取り上げる。反
応ガス供給管13a、13b、および13cのそれぞれ
から、単結晶Siの主材料であるSiを供給するSiH
4(シラン)ガス、p型不純物をドープするためのB2
3(ジボラン)ガス、およびn型不純物をドープするた
めのPH3(ホスフィン)ガスが供給される。不活性ガ
ス導入管7から導入される不活性ガスとしては、好まし
くはSi原子よりも原子量の小さいNeガスが選択され
る。
【0039】ECRイオン発生器2の働きにより、引出
口9から下方に向かってNe+イオン流と電子流が形成
される。引出口9から基板11までの距離は、好ましく
は、Ne+イオン流が殆ど中性Ne原子流に転換される
のに十分なだけの大きさに設定される。反応ガス供給管
13から供給されるシランガスは、これらのNe+イオ
ン流あるいはNe原子流によって、基板11へ向かって
叩きつけられる。その結果、基板11の上面においてプ
ラズマCVD反応が進行し、シランガスが供給するSi
を構成元素とする薄膜、すなわちSi薄膜が成長する。
また、ジボランガスまたはホスフィンガスをその流量を
適正に調整しつつ供給することによって、これらのガス
によるプラズマCVD反応も同時に進行し、B(ボロ
ン)またはP(燐)を所望の濃度で含有するSi薄膜が
形成される。
【0040】基板11は加熱されない。このため、基板
11は、略常温度に保持される。したがって、Si薄膜
は略常温度下で成長する。すなわち、プラズマCVDに
よって結晶化が進行する温度以下の温度でSi薄膜が形
成される。このためSi薄膜は、プラズマCVDによっ
て、まずアモルファスSiとして形成される。
【0041】前述の下方向へ向かうNe原子流は、基板
11の上面へ垂直に入射する。すなわち、基板11の上
面に形成されつつあるSi薄膜には、引出口9から直進
して来たNe原子流が照射される。
【0042】ところで、ECRイオン発生器2によって
形成されるプラズマのエネルギーは、基板11に到達す
るNe原子のエネルギーが、Si薄膜においてスパッタ
リングを引き起こさない大きさになるように、すなわち
Ne原子の照射によるSiのスパッタリングにおけるス
レッショルド・エネルギーとして知られる値(=27e
V)よりも低くなるように設定される。したがって、成
長しつつあるアモルファスSi薄膜に、いわゆるブラベ
ー(Bravais)の法則が作用する。すなわち、アモルフ
ァスSiに照射されるNe原子流の入射方向に垂直な面
が、最稠密結晶面すなわち(111)面となるようにア
モルファスSi内のSi原子が再配列する。
【0043】すなわち、プラズマCVDによって成長し
つつあるアモルファスSi薄膜は、一つの最稠密面に垂
直な結晶軸の方向が、基板11の表面に垂直な方向に揃
った多結晶Si薄膜、すなわち一軸配向性の多結晶Si
薄膜へと逐次転換される。その結果、基板11の上には
多結晶Si薄膜が形成され、しかも、この多結晶構造を
構成するいずれの結晶粒においても、その表面には(1
11)面が露出する。また、反応ガス供給管13より、
ジボランガスまたはホスフィンガスを、シランガスと同
時に供給することによって、BまたはPが添加されたp
型またはn型の軸配向多結晶Si薄膜が形成される。
【0044】また、前述のようにSi薄膜に照射する原
子流を構成する元素として、Si原子よりも軽いNeを
選択するのが望ましい。これは、Ne原子流がSi薄膜
に照射された際に、比較的重いSi原子が比較的軽いN
e原子を後方へ散乱する確率が高いために、Ne原子が
Si薄膜の中に侵入し残留するということが起こりにく
いからである。更に、照射する原子流を構成する元素に
不活性元素を選択するのは、不活性元素がSi薄膜の中
に残留しても、この残留する不活性元素は、Siおよび
ドープされた不純物等のいずれとも化合物を形成するこ
とがなく、Si薄膜の電子物性には余り影響を及ぼさ
ず、しかも出来上がった単結晶Si薄膜をある程度昇温
することによって、容易に外部へ除去され得るからであ
る。
【0045】ところで、装置102において、Ne原子
流あるいは中性化する前のNeイオン流の照射を受ける
可能性のある部分、例えば、反応容器1の内壁、試料台
10の上面などは、照射によってスパッタリングが発生
しない材料で構成される。すなわち、Neイオン流のエ
ネルギーよりもスレッショルド・エネルギーの高い材料
で構成される。そのため、これらの部材においてNe原
子流またはNeイオン流の照射によるスパッタリングが
発生しないので、これらの部材を構成する材料元素によ
る薄膜への汚染が防止される。また、スパッタリングに
よるこれらの部材の損傷も防止される。
【0046】表1は、照射される原子またはイオンの種
類と、標的となる物質を構成する元素との、各種の組合
せにおけるスパッタリングのスレッショルド・エネルギ
ーの値を示す。なお、表1に掲げられる値は、特に示さ
れる一部の値を除いて、すべてシミュレーションに基づ
いて得られたものである。
【0047】
【表1】
【0048】Neイオン流のエネルギーは、形成すべき
Si薄膜におけるスレッショルド・エネルギー以下に設
定されるので、Ne照射におけるスレッショルド・エネ
ルギーがSi薄膜よりも高い材料、例えば、表1に示さ
れるTa、W、Ptなどを用いて反応容器1、試料台1
0などを構成するとよい。また、それらの部材の表面、
例えば反応容器1の内壁あるいは試料台10の表面など
に、Ta等のスレッショルド・エネルギーが高い材料を
コーティングしても同様の効果が得られる。
【0049】以上は、Si薄膜の形成を例として装置1
02の構成と動作について説明したが、装置102を用
いて、Si以外の軸配向多結晶薄膜を形成することも可
能である。例えば、GaAs薄膜を形成することも可能
である。この場合には、反応ガス供給管13より供給さ
れる反応ガスは、Ga(CH33等を含むGaAsの形
成に適した反応ガスが選ばれる。また、GaAsは2元
素から成る化合物であるが、照射されるイオン流または
原子流を構成する元素は、これらの2元素の中で原子量
が大きいAs元素よりも軽い元素、例えばNeまたはA
rを選ぶとよい。そして、照射エネルギーについても同
様に、原子量が大きいAs元素に関するスレッショルド
・エネルギー以下になるように設定される。
【0050】一般に、形成すべき薄膜が複数元素で構成
される場合には、照射されるイオン流または原子流を構
成する元素は、これらの複数元素の中の原子量が最大で
ある元素よりも軽い元素を選ぶとよい。そして、照射エ
ネルギーについても同様に、原子量が最大の元素に関す
るスレッショルド・エネルギー以下になるように設定さ
れる。このとき、装置102において、試料台10など
のイオン流または原子流の照射を受ける部材の表面を、
薄膜の材料よりもスレッショルド・エネルギーの高い材
料で構成するとよい。
【0051】あるいは、これらの表面を、薄膜と同一材
料で構成してもよい。例えば、装置102を、Siの軸
配向多結晶薄膜を形成するための装置として構成すると
きには、試料台10の表面等をSiでコーティングする
とよい。このように、構成すれば、試料台10等におい
てスパッタリングが発生しても、それが、異種元素によ
るSi薄膜の汚染を引き起こさないという利点が得られ
る。
【0052】さらに、試料台10などのイオン流または
原子流の照射を受ける部材の表面を、照射されるイオン
流または原子流を構成する元素よりも重い元素を含む材
料で構成するとよい。そうすることによって、イオン流
または原子流の照射にともなって、これらのイオン流ま
たは原子流を構成する元素がそれらの部材の中に侵入し
難いという利点が生まれる。このため、異種元素の侵入
によるこれらの部材の劣化が抑制される。
【0053】なお、装置102では、プラズマCVDに
よりSi薄膜が成長する過程で、同時に一軸配向性の多
結晶への転換が逐次進行する。このため、膜厚の大きい
軸配向多結晶Si薄膜を、しかも低温下で形成すること
が可能である。低温度下で軸配向多結晶薄膜を形成でき
るので、例えば既に所定のデバイスが作り込まれた基板
の上に、このデバイスの特性を変えることなく、一軸配
向結晶薄膜を形成することが可能である。
【0054】また、以上の説明では、基板11は試料台
10の上に水平に載置され、その結果、原子流は基板1
1に垂直に入射した。このため、基板11の上に例えば
Siの軸配向多結晶薄膜を形成するときには、薄膜の表
面が(111)面となった。しかしながら、基板11を
試料台10に傾斜させて載置することによって、薄膜の
表面に対して傾斜した所望の方向に(111)面が一様
に配向したSiの軸配向多結晶薄膜を形成することも可
能である。
【0055】なお、試料台10は、回転機構に連結され
るなど、基板11を水平回転可能な構造に構成してもよ
い。また、試料台10は、水平移動機構に連結されるな
ど、基板11を水平移動可能な構造に構成してもよい。
このように構成することによって、基板11の上に均一
に一軸配向薄膜を形成することが可能となる。
【0056】<1-4.実証データ>ここでは、上記の方法
によって軸配向多結晶薄膜が形成されることを実証した
試験について記述する。図4は、上記の方法に基づい
て、多結晶の石英基板11の上に軸配向多結晶Si薄膜
を形成した試料の電子線回折像を示す実験データであ
る。この実証試験では、基板11の表面に垂直にNe原
子流が照射された。
【0057】図4に示すように、回折スポットは一点に
現れるとともに、そのまわりの円周に沿って連続に分布
する。すなわち、実験の結果は、形成されたSi薄膜の
1つの(111)面が原子流の入射方向に垂直となるよ
うに配向するとともに、入射方向の周りの配向は任意で
あり、一方向に規制されないことを示している。すなわ
ち、この試料は一つの結晶軸のみが揃った多結晶Si、
すなわち軸配向多結晶Siとして形成されていることを
実証している。
【0058】アモルファス構造よりも原子配列における
規則性の高い多結晶構造を有する石英基板11の上に、
軸配向多結晶Si薄膜を形成し得たことから、アモルフ
ァスSiなどのアモルファス構造を有する基板の上に軸
配向多結晶薄膜を形成することは当然に可能であると判
断し得る。また、多結晶粒の大きさを拡大した構造と等
価な単結晶構造を有する基板の上にも、同様に、軸配向
多結晶薄膜を形成することができるものと判断し得る。
【0059】<2.第2実施例>つぎに、この発明の第
2実施例について説明する。
【0060】<2-1.装置の全体構成>図5は、この実施
例の装置の全体構成を示す正面断面図である。なお、以
下の図において、図2に示した装置102と同一部分に
は同一符号を付して、その詳細な説明を略する。この装
置100は、基板の上に所定の物質の薄膜を成長させつ
つ、同時にこの薄膜を単結晶薄膜へと転換することによ
って、基板の上に単結晶薄膜を形成することを目的とし
て構成された単結晶薄膜形成装置である。
【0061】図5に示すように、この装置100の構造
は、反射板12が試料台10に設置される点が、装置1
02とは特徴的に異なる。反射板12は、ECRイオン
源2から供給される原子流を反射することによって、原
子流を基板11へ複数方向から照射する目的で設置され
る。このため、反射板12は引出口9の直下に位置し、
しかも基板11の上方に位置するように設置される。
【0062】<2-2.反射板の構成と機能>図6は、反射
板12の好ましい一例における斜視図である。また図7
は、図6に示した反射板の平面図であり、図8と図9は
分解図である。これらの図を参照しつつ、反射板12の
一例について説明する。
【0063】この反射板12は、単結晶Siなどの、ダ
イヤモンド構造を有する単結晶を形成するための反射板
の一例である。反射板12は、平板状の遮蔽板51の中
央部に正六角形の開口部を規定する。遮蔽板51の下面
には、開口部を囲むように、3個の反射用ブロック53
が固定的に設置されている。反射用ブロック53は、貫
通孔57を貫通しネジ孔58に螺合するネジによって、
遮蔽板51に締結されている。その結果、遮蔽板51の
開口部の直下には、これらの反射用ブロック53で縁ど
りされた正三角形状の開口部54が形成される。
【0064】上方から降り注ぐ原子流は、遮蔽板51に
よって選択的に遮蔽され、正六角形の開口部のみを通過
する。反射用ブロック53において、開口部54に面す
る斜面55が、気体ビームを反射する反射面として機能
する。図7の平面図に示されるように、3つの斜面55
はそれぞれ遮蔽板51の正六角形の開口部に選択的に露
出する。このため、上方から降り注ぐ原子流は、開口部
54を通過して基板11に垂直方向に直接入射する第1
の成分と、3つの斜面55のそれぞれによって反射され
ることによって基板11へ斜め方向から入射する第2〜
第4の成分の、合計4成分に分解される。
【0065】図7に示すように、正三角形の開口部54
の三隅は、上方から見ると正六角形の開口部の1つおき
の隅に一致している。すなわち、上方から見て、正六角
形の開口部の隣合う二辺を等辺とする3つの二等辺三角
形の領域に、3つの斜面55がそれぞれ選択的に露出す
る。このことは、複数の斜面55による二重反射を防止
するとともに、基板11の上に均一に各原子流成分を照
射させることを可能にする。図10および図11を用い
てこのことを説明する。
【0066】図10は、図7と同様に反射板12の平面
図である。また、図10に示されるA−A切断線に沿っ
た断面図を図11に示す。これらの図に示すように、二
等辺三角形の頂点に相当する1つの斜面55上の位置
(図におけるB点)に入射する原子流は、反射された後
に正三角形の開口部54の相対する頂点(図におけるC
点)へ入射する。したがって、開口部54の一辺とA−
A切断線との交点をD点と定義すると、斜面55上のB
−D間に飛来した原子流は、開口部54上のD−C間に
均等に分配される。
【0067】A−A切断線を平行にずらして成る任意の
切断線E−E上に飛来する原子流についても同様のこと
がいえる。すなわち、引出口9から飛来する原子流は遮
蔽板51によって斜面55上に選択的に供給される結
果、反射された3成分の原子流が、基板11上の開口部
54の直下に相当する領域に均一に入射する。
【0068】また、正六角形の開口部を通過して1つの
斜面55に供給される原子流は、上述のようにすべて開
口部54上に入射し、隣接する他の斜面55へ入射する
ことがない。このため、原子流が複数の斜面55によっ
て多重反射された成分が基板11上に入射するという恐
れがない。
【0069】なお、斜面55の傾斜角は、図11に示し
たように例えば55゜に設定される。
【0070】このとき、斜面55で反射された原子流
は、開口部54の直下に位置する基板11の上に70゜
の入射角をもって入射する。すなわち、基板11には第
1成分が垂直に入射するとともに、第2〜第4成分が7
0゜の入射角をもって、しかも第1の成分の入射方向の
周りに3回対称な方向に入射する。このとき、これらの
第1〜第4の成分の入射方向は、Si単結晶の最稠密面
である4つの(111)面に垂直な4方向に、それぞれ
対応する。
【0071】<2-3.装置の動作>図5に戻って、装置1
00の動作について説明する。反射板12として、図6
〜図9に示した反射板12を用い、基板11として多結
晶SiO2(石英)を用い、この石英基板11の上に単
結晶Siの薄膜を形成する例を取り上げる。反射板12
における斜面55の傾斜角は55゜に設定されているも
のとする。
【0072】反応ガス供給管13a、13b、および1
3cのそれぞれから、単結晶Siの主材料であるSiを
供給するSiH4(シラン)ガス、p型不純物をドープ
するためのB23(ジボラン)ガス、およびn型不純物
をドープするためのPH3(ホスフィン)ガスが供給さ
れる。不活性ガス導入管7から導入される不活性ガスと
しては、好ましくはSi原子よりも原子量の小さいNe
ガスが選択される。
【0073】ECRイオン発生器2の働きにより、引出
口9から下方に向かってNe+イオン流と電子流が形成
される。引出口9から反射板12までの距離は、好まし
くは、Ne+イオン流が殆ど中性Ne原子流に転換され
るのに十分なだけの大きさに設定される。
【0074】このため、図2に示した装置102と同様
に、基板11の上面においてプラズマCVD反応が進行
し、アモルファスSi薄膜が成長する。また、ジボラン
ガスまたはホスフィンガスをその流量を適正に調整しつ
つ供給することによって、これらのガスによるプラズマ
CVD反応も同時に進行し、B(ボロン)またはP
(燐)を所望の濃度で含有するSi薄膜が形成される。
【0075】同時に、反射板12の働きによって、基板
11上に形成されつつあるアモルファスSi薄膜には、
Ne原子流の4成分が照射される。そして、これらの4
成分の入射方向は、前述したようにSi単結晶の4つの
(111)面に垂直な方向に対応する。さらに、装置1
02におけると同様に、ECRイオン発生器2によって
形成されるプラズマのエネルギーは、基板11に到達す
るNe原子のエネルギーが、Ne原子の照射によるSi
のスパッタリングにおけるスレッショルド・エネルギー
(=27eV)よりも低くなるように設定される。した
がって、成長しつつあるアモルファスSi薄膜に、ブラ
ベーの法則が作用する。すなわち、アモルファスSiに
照射されるNe原子流の4成分に垂直な面が、最稠密結
晶面となるようにアモルファスSi内のSi原子が再配
列する。
【0076】すなわち、互いに独立な入射方向を有する
4つの(複数の)Ne原子流の成分によって、(11
1)面の方向が規制されるので、Si原子が再配列する
ことによって、単一の結晶方位を有する単結晶Siが形
成される。すなわち、プラズマCVDによって成長しつ
つあるアモルファスSi薄膜は、結晶方位の揃った単結
晶Si薄膜へ逐次転換される。その結果、最終的に基板
11の上に結晶方位の揃った単結晶Si薄膜が形成され
る。なお、この単結晶Si薄膜は、表面が(111)面
となる。
【0077】反応ガス供給管13より、ジボランガスま
たはホスフィンガスを、シランガスと同時に供給するこ
とによって、BまたはPが添加されたp型またはn型の
単結晶Si薄膜が形成される。また、不純物元素を含有
するこれらの反応ガスを、交互に供給することによっ
て、例えばp型単結晶Si層の上に、等軸のn型単結晶
Si層を形成することも可能である。
【0078】このように、装置100では、プラズマC
VDによりSi薄膜が成長する過程で、同時に単結晶へ
の転換が逐次進行する。このため、従来の方法に比べて
はるかに効率よく単結晶薄膜を形成し得る。しかも、外
部から種結晶を付加する必要がないので、工程が簡単で
あるとともに確実に単結晶薄膜を形成することができ
る。さらに、膜厚の大きい単結晶Si薄膜を、しかも低
温下で形成することが可能である。低温度下で単結晶薄
膜を形成できるので、例えば既に所定のデバイスが作り
込まれた基板の上に、このデバイスの特性を変えること
なく、更に新たな単結晶薄膜を形成することが可能であ
る。
【0079】また、この装置100では、1台のECR
イオン源2が供給する1本の原子流を複数の成分に分離
して、それぞれを複数の方向から基板11へ照射するの
で、複数の原子流成分を照射するために、原子流成分と
同数のECRイオン源2を準備する必要がないという利
点がある。
【0080】また、反射板12を使用するので、複数の
斜面55による原子流の多重散乱が起こらない。このた
め、基板11へは所定の4方向以外の方向からの原子流
の照射は起こらない。しかも、反射板12は、基板11
への原子流の均一な照射を実現するので、所定の4方向
からの原子流の照射が均一に行われる。このため、基板
11の上に単結晶Si薄膜が均一に形成される。
【0081】ところで、装置100において、Ne原子
流あるいは中性化する前のNeイオン流の照射を受ける
可能性のある部分、例えば、反射板12、反応容器1の
内壁、試料台10などは、照射によってスパッタリング
が発生しない材料、すなわちNeイオン流のエネルギー
よりもスレッショルド・エネルギーの高い材料で構成さ
れる。例えば、表1に示されるTa、W、Ptなどで構
成される。そのため、これらの部材においてNe原子流
またはNeイオン流の照射によるスパッタリングが発生
しないので、これらの部材を構成する材料元素による薄
膜への汚染が防止される。
【0082】また、それらの部材においてNe原子流の
照射を受ける表面、例えば遮蔽板51の上面、斜面55
などに、Ta等のスレッショルド・エネルギーが高い材
料をコーティングしても同様の効果が得られる。
【0083】以上は、Si薄膜の形成を例として装置1
00の構成と動作について説明したが、装置100を用
いて、Si以外の軸配向多結晶薄膜を形成することも可
能である。例えば、GaAs薄膜を形成することも可能
である。斜面55の傾斜角、個数等の反射板12の構造
を適宜変更することによって、任意の物質、結晶構造、
および結晶方位を有する単結晶薄膜を形成することがで
きる。反射板12の表面等は、薄膜の材料よりもスレッ
ショルド・エネルギーの高い材料で構成される。
【0084】反射板12等の表面を薄膜の材料よりもス
レッショルド・エネルギーの高い材料で構成する代わり
に、薄膜と同一材料で構成してもよい。例えば、装置1
00を、Siの単結晶薄膜を形成するための装置として
構成するときには、反射板12の表面等をSiでコーテ
ィングするとよい。このように、構成すれば、反射板1
2等においてスパッタリングが発生しても、それが、異
種元素によるSi薄膜の汚染を引き起こさないという利
点が得られる。
【0085】さらに、反射板12等の表面を、照射され
るイオン流または原子流を構成する元素よりも重い元素
を含む材料で構成するとよい。そうすることによって、
イオン流または原子流の照射にともなって、これらのイ
オン流または原子流を構成する元素がそれらの部材の中
に侵入し難いという利点が生まれる。このため、異種元
素の侵入によるこれらの部材の劣化が抑制される。
【0086】<2-4.実証データ>つぎに、上記の方法に
よって単結晶薄膜が形成されることを実証した試験につ
いて記述する。図12は、上記の方法に基づいて、多結
晶石英基板11の上に単結晶Si薄膜を形成した試料の
電子線回折像を示す実験データである。
【0087】実験の結果、図12に示すように、3回回
転対称の回折スポットが得られた。このことは、得られ
た試料が、結晶軸がすべて揃った単結晶Siとして形成
されていることを実証するものである。アモルファス構
造よりも原子配列における規則性の高い多結晶構造を有
する石英基板11の上に、単結晶Si薄膜を形成し得た
ことから、アモルファスSiなどのアモルファス構造を
有する基板の上に単結晶薄膜を形成することは当然に可
能であると判断し得る。また、多結晶粒の大きさを拡大
した構造と等価である単結晶構造を有する基板の上に、
この基板の単結晶の配向方向とは無関係な所望の方向に
配向した単結晶薄膜を形成することができる。
【0088】<3.第3実施例>つぎに、この発明の第
3実施例の装置について述べる。図13は、この実施例
の装置の全体構成を示す正面断面図である。この装置1
01は、基板の上に非晶質構造あるいは多結晶構造を有
する所定の物質の薄膜をあらかじめ形成させておき、そ
の後、この薄膜を単結晶薄膜へと転換することによっ
て、基板の上に単結晶薄膜を形成することを目的として
構成された単結晶薄膜形成装置である。
【0089】図13に示すように、この装置101の構
造は、反応ガス供給管13が設けられない点が、装置1
00とは特徴的に異なる。また、試料台10は、図示し
ないヒータを備えており、このヒータの作用により基板
11を加熱し、適正な高温度に保持することが可能であ
る。
【0090】図13を参照しつつ、装置101の基本的
な動作について説明する。反射板12として図6〜図9
に示した反射板12を用い、基板11として多結晶の石
英基板を用い、この石英基板11の上に単結晶Si薄膜
を形成する例を取り上げる。石英基板11の上には、C
VD(化学気相成長法)等の既知の方法を用いて、多結
晶Si薄膜があらかじめ形成されているものとする。
【0091】まず、基板11を試料台10と反射板12
の間へ装着する。試料台10が備えるヒータは、基板1
1を550゜Cの温度に保持する。この温度は、シリコ
ンの結晶化温度よりも低い温度であるために、この温度
の下では、一旦形成された単結晶Siが多結晶Siへと
逆戻りすることはない。同時にこの温度は、種結晶が存
在すれば、この種結晶を核として多結晶Siが単結晶S
iへと成長し得るほどには高温度である。
【0092】第1実施例で述べたと同じ理由により、基
板11に照射すべき原子流としてNe原子流が選択さ
れ、しかも、ECRイオン源2によって形成されるNe
プラズマのエネルギーは、基板11に到達するNe原子
のエネルギーが、Siのスパッタリングにおけるスレッ
ショルド・エネルギーよりも低くなるように設定され
る。また、反射板12の働きによって、基板11上に形
成されている多結晶Si薄膜には、Ne原子流の4成分
が照射される。そして、これらの4成分の入射方向は、
Si単結晶の4つの(111)面に垂直な方向に対応す
る。
【0093】このため、多結晶Si薄膜の表面近傍にブ
ラベーの法則が作用することによって、多結晶Si薄膜
に照射されるNe原子流の4成分の入射方向に垂直な面
が最稠密面となるように、多結晶Si薄膜の表面近傍に
おけるSi原子が再配列する。すなわち、互いに独立な
入射方向を有する4つの(複数の)Ne原子流の成分に
よって、表面近傍における(111)面の方向が規制さ
れるので、多結晶Si薄膜の表面近傍の層が、結晶方位
の揃った単結晶Si層へと転換される。
【0094】多結晶Si薄膜の温度は、前述のように5
50゜Cすなわち種結晶が成長するに適した範囲内の温
度に調整されている。このため、多結晶Si薄膜の表面
に形成された単結晶Si層が種結晶として機能し、単結
晶Si層が多結晶Si薄膜の深部に向かって成長する。
そして、多結晶Si薄膜の全領域が単結晶Si層へ転換
される。このようにして、石英基板11の上に結晶方位
の揃った単結晶Si層が形成される。
【0095】照射によって多結晶Si薄膜の表面に形成
され、種結晶として機能する単結晶Si層は、多結晶S
i薄膜から転化して形成されたものであるので、その深
部側に残っている多結晶Siの層とは一体をなしてい
る。すなわち、多結晶Siの層と種結晶との間の接触性
は完全である。このため、縦方向の固相エピタキシャル
成長が良好に進行する。また、種結晶と固相エピタキシ
ャル成長によって形成された単結晶Siとは、ともに同
一結晶方位を有する同一物質の単結晶であるために、単
結晶Si薄膜を形成した後に種結晶を除去する必要がな
い。また、単結晶Si薄膜が、縦方向の固相エピタキシ
ャル成長によって形成されるので、横方向に成長する従
来の技術に比べて、短時間で効率よく所望の単結晶Si
薄膜を得ることができる。
【0096】ところで、装置100と同様に、装置10
1においても、Ne原子流あるいは中性化する前のNe
イオン流の照射を受ける可能性のある部分、例えば、反
射板12、反応容器1の内壁、試料台10などにおい
て、少なくともその表面は、照射によってスパッタリン
グが発生しない材料、例えば、表1に示されるTa、
W、Ptなどで構成される。そのため、これらの部材に
おいてNe原子流またはNeイオン流の照射によるスパ
ッタリングが発生しないので、これらの部材を構成する
材料元素による薄膜への汚染が防止される。
【0097】以上は、Si薄膜の形成を例として装置1
01の構成と動作について説明したが、装置101を用
いて、Si以外の軸配向多結晶薄膜を形成することも可
能である。例えば、GaAs薄膜を形成することも可能
である。この場合にも、反射板12の表面等は、薄膜の
材料よりもスレッショルド・エネルギーの高い材料で構
成される。また、装置100と同様に、反射板12等の
表面を薄膜の材料よりもスレッショルド・エネルギーの
高い材料で構成する代わりに、薄膜と同一材料で構成し
てもよい。さらに、反射板12等の表面を、照射される
イオン流または原子流を構成する元素よりも重い元素を
含む材料で構成するとよい。
【0098】<4.第4実施例>つぎに、この発明の第
4実施例の装置について述べる。図14は、この実施例
の装置の全体構成を示す正面断面図である。この装置1
03は、基板の上に非晶質構造あるいは多結晶構造を有
する所定の物質の薄膜をあらかじめ形成させておき、そ
の後、この薄膜を軸配向多結晶薄膜へと転換することに
よって、基板の上に軸配向多結晶薄膜を形成することを
目的として構成された軸配向多結晶薄膜形成装置であ
る。
【0099】図14に示すように、この装置102は、
装置101(図13)から反射板12を除去した構造を
有する。また装置101と同様に、試料台10は図示し
ないヒータを備えており、このヒータの作用により基板
11を加熱し、適正な高温度に保持することが可能であ
る。
【0100】図14を参照しつつ、装置103の基本的
な動作について説明する。基板11として多結晶の石英
基板を用い、この石英基板11の上に軸配向多結晶Si
薄膜を形成する例を取り上げる。石英基板11の上に
は、CVD(化学気相成長法)等の既知の方法を用い
て、多結晶Si薄膜があらかじめ形成されているものと
する。この多結晶Si薄膜は、各結晶粒が任意の方向に
配向した通常の多結晶構造であってよい。
【0101】まず、基板11を試料台10の上に装着す
る。試料台10が備えるヒータは、基板11を550゜
Cの温度に保持する。この温度は、シリコンの結晶化温
度よりも低い温度であるために、この温度の下では、一
旦形成された軸配向多結晶Siが元の通常の多結晶Si
へと逆戻りすることはない。同時にこの温度は、種結晶
が存在すれば、この種結晶を核として通常の多結晶Si
が軸配向多結晶Siへと成長し得るほどには高温度であ
る。
【0102】引出口9を通過したイオン流は原子流とな
って基板11の表面に垂直に入射する。第1実施例で述
べたと同じ理由により、基板11に照射すべき原子流と
してNe原子流が選択され、しかも、ECRイオン源2
によって形成されるNeプラズマのエネルギーは、基板
11に到達するNe原子のエネルギーが、Siのスパッ
タリングにおけるスレッショルド・エネルギーよりも低
くなるように設定される。
【0103】このため、多結晶Si薄膜の表面近傍にブ
ラベーの法則が作用することによって、多結晶Si薄膜
に照射されるNe原子流の入射方向に垂直な面が最稠密
面となるように、多結晶Si薄膜の表面近傍におけるS
i原子が再配列する。すなわち、(111)面が表面に
沿うように一軸方向が揃った軸配向多結晶Si層へと多
結晶Si薄膜の表面近傍の層が転換される。
【0104】多結晶Si薄膜の温度は、前述のように5
50゜Cすなわち種結晶が成長するに適した範囲内の温
度に調整されている。このため、通常の多結晶Si薄膜
の表面に形成された軸配向多結晶Si層が種結晶として
機能し、軸配向多結晶Si層が通常の多結晶Si薄膜の
深部に向かって成長する。そして、多結晶Si薄膜の全
領域が軸配向多結晶Si層へ転換される。このようにし
て、石英基板11の上に、(111)が表面に沿うよう
に配向した軸配向多結晶Si薄膜が形成される。
【0105】なお、基板11の上に通常の多結晶Si薄
膜をあらかじめ形成する代わりに、アモルファスSi薄
膜をあらかじめ形成した後に、装置103に供すること
によっても、軸配向多結晶Si薄膜を形成することがで
きる。
【0106】ところで、装置102と同様に、装置10
3においても、Ne原子流あるいは中性化する前のNe
イオン流の照射を受ける可能性のある部分、例えば、反
応容器1の内壁、試料台10などにおいて、少なくとも
その表面は、照射によってスパッタリングが発生しない
材料、例えば、表1に示されるTa、W、Ptなどで構
成される。そのため、これらの部材においてNe原子流
またはNeイオン流の照射によるスパッタリングが発生
しないので、これらの部材を構成する材料元素による薄
膜への汚染が防止される。
【0107】以上は、Si薄膜の形成を例として装置1
03の構成と動作について説明したが、装置103を用
いて、Si以外の軸配向多結晶薄膜を形成することも可
能である。例えば、GaAs薄膜を形成することも可能
である。この場合にも、試料台10の表面等は、薄膜の
材料よりもスレッショルド・エネルギーの高い材料で構
成される。また、装置102と同様に、試料台10等の
表面を薄膜の材料よりもスレッショルド・エネルギーの
高い材料で構成する代わりに、薄膜と同一材料で構成し
てもよい。さらに、試料台10等の表面を、照射される
イオン流または原子流を構成する元素よりも重い元素を
含む材料で構成するとよい。
【0108】<5.第5実施例>つぎに、第5実施例に
ついて説明する。この実施例の方法は、基板の上に軸配
向多結晶薄膜を形成した後に、複数方向から原子流を照
射することによって単結晶薄膜に転換し、そのことによ
って基板11の上に単結晶薄膜を形成するものである。
そのためには、例えば、第1実施例の装置102を用い
て基板11の上に軸配向多結晶薄膜を形成した後に、第
3実施例の装置101を用いて、この薄膜を単結晶薄膜
に転換するとよい。
【0109】あるいは、第2実施例の装置100を用い
て、はじめは反射板12を除いて反応ガスの供給と原子
流の照射とを実行することによって軸配向多結晶薄膜を
形成し、その後、装置100に反射板12を設置して基
板11を加熱しつつ原子流の照射を実行することによっ
て、薄膜を単結晶薄膜に転換し、その結果、基板11の
上に単結晶薄膜を形成してもよい。
【0110】あるいはまた、基板11の上に非晶質ある
いは通常の多結晶構造の薄膜をCVD等によってあらか
じめ形成し、その後、装置103を用いて軸配向多結晶
薄膜に転換し、さらにその後、装置101を用いて単結
晶薄膜に転換し、その結果、基板11の上に単結晶薄膜
を形成してもよい。
【0111】このように、この実施例の方法では、基板
11の上に単結晶薄膜を形成する前に、あらかじめ軸配
向多結晶薄膜を形成する。このため、基板11の上に単
結晶薄膜が形成され難い部位があっても、その部位には
単結晶薄膜に近い特性を備える軸配向多結晶薄膜が形成
されているので、薄膜の機械的および電気的特性が目立
って劣化しないという利点がある。すなわち、単結晶薄
膜を形成する工程を精密に実行しなくても、適度に良好
な特性をもった薄膜を得ることができる。
【0112】このことは、基板11の形状が平板状でな
く立体形状であったり、あるいは基板11の表面に厚み
を有する遮蔽体が形成されているなどのために、基板1
1の所定の領域に複数方向からの原子流を均一に照射し
難い場合に特に有効である。図15〜図17に、それら
の例を示す。
【0113】図15は、立体形状を有する基板11の上
に軸配向多結晶Si薄膜71があらかじめ形成されてな
る試料70の表面に、2方向からNe原子流が照射され
つつある状態を模式的に図示する断面図である。図14
が示すように、試料70が立体形状を成しており、その
ために、試料70自身が原子流に対する遮蔽体となる。
その結果、軸配向多結晶Si薄膜71の特定の領域にお
いては、Ne原子流の照射は一方向からのみ行われ、2
方向からの照射は実現しない。
【0114】図16および図17は、薄膜状の半導体集
積回路を製造するプロセスの中で、マスク材72を用い
て基板11の上に単結晶Si薄膜を選択的に形成する工
程を模式的に示す断面図である。基板11の上には、あ
らかじめCVD等によってアモルファスまたは通常の多
結晶のSi薄膜74を形成する。その後、装置103を
用いて、SiO2等で構成されるマスク材72が有する
開口部を通して、Ne原子流をSi薄膜74の上面に垂
直に照射することによってマスク材72の開口部直下
に、軸配向多結晶Si薄膜71を選択的に形成する(図
16)。
【0115】つぎに、装置101を用いて、マスク材7
2が有する開口部を通して、Si薄膜74の上面にNe
原子流を複数方向から照射することによって、軸配向多
結晶Si薄膜71を単結晶Si薄膜へと転換する(図1
7)。このとき、マスク材72が一定の厚さを有するこ
とから、マスク材72の開口部の端縁付近には、複数方
向からのNe原子流が十分には照射されない。このた
め、マスク材72の開口部の端縁付近には単結晶Si薄
膜が形成され難い。しかしながら、単結晶Si薄膜が形
成されなくとも、少なくとも軸配向多結晶Si薄膜が形
成されているので、キャリア移動度等の電気的特性上の
劣化を最小限に抑えることができる。
【0116】なお、この実施例の方法において、単結晶
薄膜への転換を行うべく照射される原子流の複数の入射
方向の一つは、それに先だって軸配向多結晶薄膜を形成
すべく照射される原子流の入射方向に一致させるのが望
ましい。なぜならば、軸配向多結晶薄膜における共通の
一軸方向を変更することなく、単結晶薄膜への転換が行
われるので、単結晶薄膜への転換の工程が短時間で円滑
に進行するからである。
【0117】<6.第6実施例>つぎに、第6実施例に
ついて説明する。
【0118】<6-1.装置の構成>図18は、この実施
例の装置の全体構成を示す正面断面図である。この装置
150は、基板11の上にあらかじめ形成された非晶質
薄膜または多結晶薄膜(軸配向多結晶薄膜を含む)を、
単結晶薄膜へ転換することによって基板上に単結晶薄膜
を形成することを目的として構成されている。
【0119】この装置150は、反射板12の代わりに
反射ユニット160が設置されている点が装置101と
は特徴的に異なる。反射ユニット160は、複数の所定
の入射角度をもって基板11へ入射する複数の原子流成
分を生成するためのものであり、試料台10の上に設置
されており、しかも、基板11の上方に位置するように
設置されている。試料台10は、基板11を加熱し、適
正な高温度に保持することが可能な図示しないヒータを
備えている。
【0120】<6-2.反射ユニットの構成と動作>ここで
は、反射ユニット160の構成と動作について説明す
る。図1および図19は、それぞれ反射ユニット160
の構成を示す正面断面図および平面断面図である。これ
らの図1および図19に例示される反射ユニット160
は、単結晶Siなどの、ダイヤモンド構造の単結晶を形
成するための反射ユニットである。この反射ユニット1
60は、ECRイオン源2のイオン引出口の直下、すな
わちECRイオン源2によって生成され下方向へ向かう
原子流の下流に配設されている。
【0121】反射ユニット160の上部には、ECRイ
オン源2から供給される原子流を選択的に遮断可能な遮
蔽板104が水平に設けられている。引出口9からこの
遮蔽板104までの距離が、ECRイオン源2が出力す
るイオン流が中性の原子流に転換されるのに十分な距
離、例えば14cm以上となるように反射ユニット16
0が設置される。すなわち、遮蔽板104には殆ど中性
の原子流が到達する。この遮蔽板104には、ECRイ
オン源2からの原子流の中心軸周りに4回回転対称とな
るように開口部112が設けられている。ECRイオン
源2からの原子流は、これらの開口部112のみを通過
して更に下方へ向かって流れる。
【0122】この遮蔽板104の直下には、反射ブロッ
ク106が設置されている。この反射ブロック106は
4回回転対称な錐体をなしており、錐体の対称軸は原子
流の中心軸に一致し、4つの開口部112の直下に錐体
の4つの側面がそれぞれ位置している。これらの側面は
必ずしも平面ではなく、一般には曲面である。この4つ
の側面が原子流を反射する反射面として機能する。すな
わち、開口部112を通過した原子流は、反射ブロック
106の4つの側面によって反射され、そのことによっ
て、中心軸から遠ざかる方向へ進行する4成分の原子流
が得られる。
【0123】これらの4成分の原子流は、いずれも、そ
のビーム断面が二次元的(平面的)に拡大する発散ビー
ムである。そして、これらの4成分は、整流部材(整流
手段)108を通過することによって、それぞれの進行
方向が所望の方向に精度よく揃えられた後、4枚の反射
板110へそれぞれ入射する。整流部材108は、反射
ブロック106の側面から反射板110へと向かう放射
状に原子流の方向を整える働きをなす部材であり、従来
周知の技術で構成可能である。
【0124】これらの4枚の反射板110は、被照射対
象である基板11の周囲に、しかも反射ブロック106
の対称軸の周りに4回回転対称に配置されている(図1
9には1枚の反射板110のみを示して他を代表する。
また図19には1枚の反射板110の上半部分へ入射し
かつ反射する原子流のみを図示し、下半部分への入射お
よび反射原子流については図示を略している。)。反射
板110へ入射した原子流の成分は、その反射面によっ
て再び反射される。反射板110の反射面は適度の凹面
形状を有する。このため、発散する原子流の成分がこの
反射面に反射される結果、適度に集束されることによ
り、平行ビームとなって、しかも基板11の上面全体に
わたって一様に降り注ぐ。しかも、基板11の上面に対
して、例えば55゜の入射角度(図1)をもって、4方
向から基板11の上面へ平行ビームが入射する。
【0125】<6-3.装置150の動作>図18を参照し
つつ、装置150の動作について説明する。基板11と
してアモルファスまたは多結晶SiO2(石英)基板を
用い、この石英基板11の上に単結晶Si薄膜を形成す
る例を取り上げる。基板11の上には、例えばCVD
(化学気相成長法)等の方法を用いて、多結晶Si薄膜
(軸配向多結晶Si薄膜を含む)があらかじめ形成され
ている。
【0126】まず、基板11を試料台10と反射ユニッ
ト160の間へ装着する。試料台10が備えるヒータ
は、試料すなわち基板11および多結晶Si薄膜を、5
50゜Cの温度に保持する。装置101と同様に、不活
性ガス導入管7から導入されるガスとしては、好ましく
はSi原子よりも原子量の小さい不活性のNeガスが選
択される。
【0127】ECRイオン源2の働きにより、Ne原子
流が反射ユニット160に供給され、その結果、基板1
1の上面全体に、例えば55゜の入射角度をもって4つ
の方向から入射する。この場合、これら4成分のNe原
子流の入射方向は、形成すべきSi単結晶の4個の独立
な最稠密結晶面、すなわち(111)面に垂直な4方向
に対応する。また、装置101と同様に、ECRイオン
源2によって形成されるプラズマのエネルギーは、基板
11に到達するNe原子のエネルギーが、Ne原子の照
射によるSiのスパッタリングにおけるスレッショルド
・エネルギーよりも低くなるように設定される。
【0128】このため、多結晶Si薄膜にブラベの法則
が作用する結果、多結晶Si薄膜に照射されるNe原子
流の入射方向に垂直な面が最稠密結晶面となるように、
多結晶Si薄膜の表面近傍におけるSi原子が再配列す
る。すなわち、多結晶Si薄膜の表面近傍の層が、結晶
方位の揃った単結晶Si層へと転換される。
【0129】多結晶Si薄膜の温度は、前述のように5
50゜Cすなわち種結晶が成長するに適した範囲内の温
度に調整されている。このため、多結晶Si薄膜の表面
に形成された単結晶Si層が種結晶として機能し、単結
晶Si層が多結晶Si薄膜の深部に向かって成長する。
そして、一定時間を経た後に、多結晶Si薄膜の全領域
が単結晶Si層へ転換される。このようにして、基板1
1の上に結晶方位の揃った単結晶Si層が形成される。
形成される単結晶Si薄膜の結晶方位は、(100)面
が表面に沿うように配向する。
【0130】なお、図1に示した55゜の入射角度はい
うまでもなく一例であって、反射板110の形状、方向
を適宜変更することによって、所望する単結晶薄膜の結
晶構造から決まる任意の入射角度をもって基板11へ平
行ビームを入射することが可能である。また、反射ブロ
ック106によって発散ビームが生成されるので、反射
板110の反射ブロック106の対称軸からの距離を、
基板11の広さに応じて適宜調節することによって、広
大な基板11の上に一様に平行ビームを照射することが
できる。
【0131】このように、この装置150によれば、基
板11を走査することなく、ECRイオン源2が供給す
るビームの断面よりもはるかに大面積の基板11の全面
に、所望の入射角度をもって、しかも均一に原子流を照
射することができる。すなわち、大面積の基板11の上
に所望の単結晶薄膜を均一にかつ効率よく形成すること
が可能である。
【0132】また、遮蔽板104に設けられた4つの開
口部112の開口面積を、個別に調節することによっ
て、これらの開口部112を通過する4成分のビームの
量を個別に調整することが可能である。このため、基板
11の上面に複数方向から照射される4成分の各ビーム
量を最適に設定することができる。例えば、4成分のビ
ーム量を均一に揃えることができる。このため、良質の
単結晶薄膜を効率よく形成することが可能である。
【0133】また、装置101と同様に、反射ブロック
106、整流部材108、反射板110等の原子流の照
射を受ける反射ユニット160の各部材等の少なくとも
表面を、形成すべき薄膜よりもスパッタリングにおける
スレッショルド・エネルギーの高いTa、W、Ptなど
の材料で構成してもよい。また、装置101と同様に、
反射ユニット160の各部材等の表面を薄膜の材料より
もスレッショルド・エネルギーの高い材料で構成する代
わりに、薄膜と同一材料で構成してもよい。さらに、反
射ユニット160の各部材等の表面を、照射されるイオ
ン流または原子流を構成する元素よりも重い元素を含む
材料で構成してもよい。
【0134】<7.第7実施例>つぎに、この発明の第
7実施例の装置について述べる。図20は、この実施例
のビーム照射装置の全体構成を示す正面断面図である。
この装置151は、装置100と同様に、基板11の上
に多結晶薄膜を形成しつつ、それと同時に原子流を照射
することによって、成長しつつある多結晶薄膜を単結晶
薄膜へ逐次的に転換することを目的として構成されてい
る。
【0135】このため、装置151では、装置100と
同様に、反応室8に反応ガス供給管13が連通してい
る。この反応ガス供給管13を通して、プラズマCVD
により基板11上に所定の物質の薄膜を形成するための
反応ガスが供給される。図20の例では、3本の反応ガ
ス供給管13a、13b、および13cが設けられてい
る。その他の構成上の特徴は、装置150と同様であ
る。
【0136】装置151はつぎのように動作する。第6
実施例で取り上げたように、ここでも、基板11として
多結晶SiO2(石英)を用い、この基板11の上に単
結晶Siの薄膜を形成する例を取り上げる。反応ガス供
給管13a、13b、および13cのそれぞれから、単
結晶Siの主材料であるSiを供給するSiH4(シラ
ン)ガス、p型不純物をドープするためのB23(ジボ
ラン)ガス、およびn型不純物をドープするためのPH
3(ホスフィン)ガスが供給される。また、不活性ガス
導入管7からプラズマ室4へ、Neガスが導入される。
【0137】反応ガス供給管13から供給される反応ガ
スと、ECRイオン源2によって生成されたNe+イオ
ン流あるいはNe原子流によって、基板11の上面にお
いてプラズマCVD反応が進行し、その結果、アモルフ
ァス構造のSi薄膜が成長する。ECRイオン源2から
下方向へと向かうNe原子流は、反射ユニット160の
働きによって、基板11の上面に形成されつつあるSi
薄膜の全面へ、例えば55゜の入射角度をもつ4方向か
ら入射する。ECRイオン源2によって形成されるプラ
ズマのエネルギーは、装置100と同様に、これらの4
成分の入射エネルギーが、Siに対するスレッショルド
・エネルギーよりも低くなるように設定される。したが
って、成長しつつあるアモルファスSi薄膜にブラベの
法則が作用する結果、プラズマCVDによって成長しつ
つあるアモルファスSi薄膜は、結晶方位の揃った単結
晶Si薄膜へ逐次転換される。その結果、基板11の上
に単一の結晶方位を有する単結晶Siが形成される。
【0138】この装置151においても、反射ユニット
160が用いられるので、基板11を走査することな
く、ECRイオン源2が供給するビームの断面よりもは
るかに大面積の基板11の全面に、所望の入射角度をも
って、しかも均一に原子流を照射することができる。す
なわち、大面積の基板11の上に所望の単結晶薄膜を均
一にかつ効率よく形成することが可能である。
【0139】<8.第8実施例>つぎに、この発明の第
8実施例の装置について述べる。図21〜図23は、そ
れぞれこの実施例の装置の斜視図、平面図、および正面
図である。これらの図21〜図23を参照しつつ、この
実施例の装置の構成と動作について説明する。
【0140】この装置200では、ECRイオン源2は
水平に設置され、水平に載置される基板11の表面と平
行な水平方向に気体のビームを供給する。ECRイオン
源2から供給される気体のビームが基板11の上面へと
到達するまでの経路に、反射ユニット260が介挿され
ている。
【0141】反射ユニット260には、気体のビームの
経路に沿って、反射ブロック206、遮蔽板204、整
流部材208、反射板210が順に配設されている。反
射ブロック206は、中心軸が垂直な角柱形状をなして
おり、この中心軸の周りに回転駆動される。引出口9か
らこの反射ブロック206までの距離は、ECRイオン
源2が出力するイオン流が中性の原子流に転換されるの
に十分な距離、例えば14cm以上となるように設定さ
れる。このため、反射ブロック206には殆ど中性の原
子流が到達する。
【0142】図24は、反射ブロック206の動作を説
明するための平面図である。この図24に示すように、
反射ブロック206へ入射する原子流は、反射ブロック
206が回転することによって、水平面内の多方向へと
散乱される。すなわち、反射ブロック206は、ビーム
断面がビームの進行にともなって線状ないし帯状、すな
わち略一次元的に拡大する発散ビームを実質的に生成す
る。
【0143】遮蔽板204は、発散する原子流の中の、
特定範囲の散乱角を有する成分のみを選択的に通過させ
る。遮蔽板204を通過した原子流は、整流部材208
を通過することによって、その進行方向が精密に揃えら
れる。整流部材208は、整流部材108と同様に構成
される。反射ブロック206は、図24等に示すよう
に、四角柱形状である代わりに、例えば三角柱、六角柱
など他の角柱形状であってもよい。
【0144】図21〜図23に戻って、整流部材208
を通過した原子流は、水平方向に帯状の反射板210に
入射する。反射板210の反射面は適度の凹面形状を有
する。このため、発散する原子流の成分がこの反射面に
反射される結果、適度に集束されることにより、平行ビ
ームとなって、基板11の上面に線状ないし帯状に降り
注ぐ。しかも、この平行ビームは、例えば35゜の入射
角度をもって基板11の上面へ入射する。原子流の経路
に沿って配設される反射ブロック206から反射板21
0までの一組の部材が、図22に示すように、2組設置
される。このことによって、基板11の上には、対向す
る2方向からそれぞれ35゜の入射角度をもって原子流
が入射する。
【0145】反射ブロック206によって、原子流は略
一次元的に発散するように散乱されるので、反射ブロッ
ク206と反射板210の間の距離を十分に設定するこ
とによって、ECRイオン源2から供給されるビーム径
よりもはるかに幅の広い線状ないし帯状の領域に平行ビ
ームを照射することが可能である。
【0146】装置200は基板11を載置する図示しな
い試料台を備えており、この試料台は、図示しない水平
移動機構によって水平に移動可能である。この試料台の
水平移動にともなって、基板11は、原子流が入射する
線状ないし帯状領域とは垂直な方向(交差する方向)に
沿って平行に移動する。このように、基板11を走査す
ることによって、基板11の全領域にわたる原子流の照
射が実現する。基板11の走査が行われるので、広大な
基板11に対して均一に原子流の照射を実行することが
可能である。
【0147】なお、この装置200は、装置100と同
様に反応ガス供給管13を備えることによって、基板1
1に所定物質の薄膜を形成しつつ、この薄膜を単結晶に
逐次転換するように構成してもよい。また、装置101
と同様に、試料台にヒータを備えることによって、基板
11の上にあらかじめ堆積された所定物質の薄膜を、単
結晶薄膜に転換するように構成してもよい。2本の原子
流の入射方向が、互いに対向する方向であって、しかも
入射角がいずれも35゜であることから、基板11の上
に形成される単結晶薄膜の結晶方位は、(110)面が
表面に沿うように配向する。
【0148】各反射ユニット260の間の位置関係、お
よび反射板210の角度などを変更することによって、
(110)面以外の他の結晶面が薄膜の表面に沿うよう
に結晶方位が配向した単結晶薄膜を形成することが可能
である。例えば、各反射ユニット260において、反射
ブロック206から反射板210へ向かう原子流の中心
軸同士が90゜または180゜の角度を成すように2組
以上の反射ユニット260を配設し、しかも、各反射ユ
ニット260から基板11へ入射する原子流の入射角度
がいずれも55゜となるように反射板210の形状およ
び向きを設定することによって、(100)面が表面に
沿うように結晶方位が配向した単結晶薄膜を形成するこ
とができる。
【0149】また、各反射ユニット260において、反
射ブロック206から反射板210へ向かう原子流の中
心軸同士を120゜ずつずらして配置した3組の中の2
組以上の反射ユニット260を配設し、しかも、各反射
ユニット260から基板11へ入射する原子流の入射角
度がいずれも70゜となるように反射板210の形状お
よび向きを設定することによって、(111)面が表面
に沿うように結晶方位が配向した単結晶薄膜を形成する
ことができる。
【0150】また、装置150と同様に、反射ブロック
206、整流部材208、反射板210等の原子流の照
射を受ける反射ユニット260の各部材等の少なくとも
表面を、形成すべき薄膜よりもスパッタリングにおける
スレッショルド・エネルギーの高いTa、W、Ptなど
の材料で構成してもよい。また、反射ユニット260の
各部材等の表面を、形成すべき単結晶薄膜と同一物質で
構成してもよい。さらに、反射ユニット260の各部材
等の表面を、照射されるイオン流または原子流を構成す
る元素よりも重い元素を含む材料で構成してもよい。
【0151】<9.第9実施例>つぎに、この発明の第
9実施例の装置について述べる。図25は、この実施例
の装置の構成を示す斜視図である。この図25に示すよ
うに、この装置300は、反射ユニット360を備えて
いる。この反射ユニット360は、反射ブロック206
の代わりに、静電電極306を備える点が、反射ユニッ
ト260とは特徴的に異なる。静電電極306には、中
性の原子流の代わりに、イオン流が入射される。すなわ
ち、引出口9からこの静電電極306までの距離は、E
CRイオン源2が出力するイオン流が中性の原子流に殆
ど転換されずに、イオン流のままで静電電極306へ入
射するように十分に短く設定される。
【0152】静電電極306には、交流電源307が付
随して設けられる。この交流電源307は、一定バイア
ス電圧の上に交流電圧が重畳して成る変動電圧を静電電
極306に供給する。その結果、静電電極306へ入射
したイオン流が、変動する静電場の作用によって水平面
内の多方向へと散乱される。
【0153】このように、この装置300では、交流電
源307が供給する変動電圧によって、イオン流の散乱
が実現するので、遮蔽板204によって遮蔽される不要
な方向へのイオン流の散乱を容易に抑えることができ
る。すなわち、ECRイオン源2が供給するイオン流を
効率よく基板11への照射に役立てることができるとい
う利点がある。さらに、交流電源307が供給する変動
電圧の波形を、例えば三角波状に設定するなどによっ
て、イオン流を各散乱方向へ、一層高い均一性をもって
散乱することができるという利点も得られる。
【0154】<10.変形例> (1) 第6実施例および第7実施例では、反射ブロッ
ク106の形状、および反射板110の配置を4回回転
対称に選んだが、その他の回転対称、例えば2回回転対
称、あるいは3回回転対称に選ぶことも可能である。す
なわち、所望する単結晶薄膜の結晶構造に応じて、異な
る入射角度で入射する原子流の成分の数を任意に選ぶこ
とが可能である。反射ブロック106の形状を、円錐体
などの回転対称に選んでもよい。このときには、基板1
1への入射方向の数によらずに、反射ブロック106は
1つで足りる。このように、この発明の装置では、ダイ
ヤモンド構造以外の結晶構造を有する単結晶薄膜を形成
することも可能であり、また、結晶構造は同一であって
も、様々な結晶方位を有する単結晶薄膜を形成すること
も可能である。また任意の結晶構造に対応できるので、
単結晶薄膜を構成する物質もSiに限定されることがな
く、例えばGaAs、GaNなどの半導体単結晶薄膜の
形成も可能である。
【0155】(2) 第6実施例および第7実施例にお
いて、原子流の方向を整える整流部材108は、反射ブ
ロック106から反射板110へと向かう原子流の経路
に介挿する代わりに、反射板110によって反射され基
板11へと向かう原子流の経路に介挿してもよい。ま
た、これらの双方の経路に介挿してもよい。
【0156】また、整流部材108を備えない装置を構
成してもよい。しかしながら、整流部材108を備える
装置では、反射ブロック106や反射板110の形状お
よび配置などを厳密に設定しなくても、原子流の成分の
基板11への入射方向が精密に定まるという利点があ
る。
【0157】なお、以上のことは、第8実施例及び第9
実施例における、整流部材208についても同様であ
る。
【0158】(3) 第1実施例〜第8実施例におい
て、ECRイオン源2の代わりに、中性の原子流または
分子流、あるい中性のラジカル流を発生する他のビーム
源を使用してもよい。このような中性の原子流、ラジカ
ル流を発生するビーム源がすでに市販されている。この
ビーム源を使用すれば、中性の原子またはラジカルのビ
ームが得られるので、ECRイオン源を用いた場合と同
様に、イオン流を中性化する手段を要せずして、絶縁性
の基板11の上に単結晶薄膜を形成することが可能であ
る。
【0159】(4) 第1実施例〜第9実施例におい
て、ECRイオン源2の代わりに、ケージ型、カウフマ
ン型等の他のイオン源を用いてもよい。ただし、このと
きに生成されるイオン流は、イオン間の静電気による反
発力によって流れが拡散し、指向性が弱まる傾向にある
ので、イオンを中性化する手段、あるいは例えばコリメ
ータなどのイオン流の指向性を高める手段をイオン流の
経路に介挿するのが望ましい。
【0160】特に、基板11に電気絶縁性の基板を用い
るときには、基板11に電荷が蓄積して照射が進行しな
くなることを防止するために、イオンを中性化する手段
をイオン流の経路に介挿することが望ましい。これに対
し、ECRイオン源を備える実施例の装置では、イオン
流を中性化する手段を用いることなく中性原子流が容易
に得られ、しかも平行流に近い形で得られるという利点
がある。
【0161】なお、第9実施例の装置にイオンを中性化
する手段を設置する場合には、静電電極306よりも下
流に設置される。
【0162】(5) 以上の実施例で示した各ビーム照
射装置は、単結晶薄膜を形成することを目的とした装置
に限定されるものではなく、他の目的で複数方向から気
体のビームを照射するための装置に実施することも可能
である。特に、第6実施例〜第9実施例に示した装置
は、広大な基板の上に均一に、しかも複数方向から気体
のビームを照射する目的への利用に適している。
【0163】(6) 第1実施例〜第9実施例におい
て、形成すべき薄膜がGaNなど、常温下で気体である
N(窒素元素)を含む場合には、照射に供される気体と
して窒素ガスを用いてもよい。そうすれば、照射に供さ
れる気体が薄膜中に残留しても不純物として薄膜の特性
劣化をもたらす恐れがない。
【0164】
【発明の効果】<請求項1に記載の発明の効果>この発
明の方法では、基板の上に軸配向多結晶薄膜をあらかじ
め形成した後に、複数方向からビームを照射することに
よって薄膜を単結晶薄膜へ転換する。このため、例えば
基板の上に遮蔽体が形成されているなどのために、複数
方向からのビームが基板の上に均一に照射されなくて
も、基板の上のどの部分にも単結晶薄膜か軸配向多結晶
薄膜の少なくとも何れかが形成されているので、目立っ
た特性上の劣化を引き起こさない。
【0165】<請求項2に記載の発明の効果>この発明
の方法では、基板の上に軸配向多結晶薄膜をあらかじめ
形成した後に、複数方向からビームを照射することによ
って薄膜を単結晶薄膜へ転換する。このため、例えば基
板の上に遮蔽体が形成されているなどのために、複数方
向からのビームが基板の上に均一に照射されなくても、
基板の上のどの部分にも単結晶薄膜か軸配向多結晶薄膜
の少なくとも何れかが形成されているので、目立った特
性上の劣化を引き起こさない。
【0166】<請求項3に記載の発明の効果>この発明
の方法では、軸配向多結晶薄膜を形成する際における気
体のビームの照射方向と、軸配向多結晶薄膜を単結晶薄
膜へ転換する際における気体のビームの複数の照射方向
の1つとが、互いに同一であるので、単結晶薄膜への転
換が円滑に行われる。
【0167】<請求項4に記載の発明の効果>この発明
の方法では、不活性ガスのビームが照射に供されるの
で、形成される単結晶薄膜に気体が残留しても、薄膜の
電子物性等の特性に目立った影響を及ぼさないのに加え
て、侵入した気体を薄膜から容易に除去することができ
る。
【0168】<請求項5に記載の発明の効果>この発明
の方法では、不活性ガスを構成する元素の原子量が、薄
膜として成長しつつある所定の物質の構成元素の最大の
原子量よりも低いので、照射された不活性ガスの原子ま
たはイオンの大部分が、薄膜の表面ないしその近傍で後
方へ散乱され、薄膜の中に残留し難い。
【0169】<請求項6に記載の発明の効果>この発明
の方法では、照射される気体が薄膜として成長する物質
の構成元素を含んでいる。このため、照射後にこの構成
元素の原子またはイオンが薄膜の中に残留しても、これ
らが不純物として単結晶薄膜へ悪影響を及ぼす恐れがな
い。
【0170】<請求項7に記載の発明の効果>この発明
の方法では、ビーム発生源が電子サイクロトロン共鳴型
のイオン発生源である。このため、イオンビームの指向
性が高いのに加えて、イオン発生源から所定以上の距離
において、イオンを中性化する手段を用いることなく、
強度の中性ビームを得ることができる。また、イオンを
中性化する手段を用いることなく、電気絶縁性の基板を
使用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第6実施例における反射ユニットの正面断面図
である。
【図2】第1実施例における装置の正面断面図である。
【図3】第1実施例のECRイオン源の特性を示すグラ
フである。
【図4】第1実施例における装置の実証試験の結果を示
す図である。
【図5】第2実施例における装置の正面断面図である。
【図6】第2実施例における反射板の斜視図である。
【図7】図6に示した反射板の平面図である。
【図8】図6に示した反射板の分解斜視図である。
【図9】図6に示した反射板の分解斜視図である。
【図10】図6に示した反射板の平面図である。
【図11】図10に示した反射板のA−A切断線に沿っ
た断面図である。
【図12】第2実施例における装置の実証試験の結果を
示す図である。
【図13】第3実施例における装置の斜視図である。
【図14】第4実施例における装置の斜視図である。
【図15】第5実施例における方法を説明する工程図で
ある。
【図16】第5実施例における方法を説明する工程図で
ある。
【図17】第5実施例における方法を説明する工程図で
ある。
【図18】第6実施例における装置の正面断面図であ
る。
【図19】第6実施例における反射ユニットの平面図で
ある。
【図20】第7実施例における装置の正面断面図であ
る。
【図21】第8実施例における装置の斜視図である。
【図22】第8実施例における装置の平面図である。
【図23】第8実施例における装置の正面図である。
【図24】第8実施例における装置の平面図である。
【図25】第9実施例における装置の斜視図である。
【符号の説明】
102、103 軸配向多結晶薄膜形成装置(ビーム照
射装置) 100、101、150、151、200、300 単
結晶薄膜形成装置(ビーム照射装置) 1 反応容器(容器) 2 ECRイオン源(ビーム源) 10 試料台(部材) 11 基板 12 反射板(反射手段) 51 遮蔽板(遮蔽体) 53 反射用ブロック(反射体) 55 斜面(反射面) 104 遮蔽板(ビーム配分調整手段) 106、206 反射ブロック(第1の反射体) 306 静電電極(第1の反射体) 108、208 整流部材(整流手段) 110、210 反射板(第2の反射体) 160、260、360 反射ユニット(反射手段、反
射装置)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉水 敏和 大阪府吹田市江坂町1丁目12番38号 江坂 ソリトンビル 株式会社メガチップス内 (72)発明者 進藤 晶弘 大阪府吹田市江坂町1丁目12番38号 江坂 ソリトンビル 株式会社メガチップス内 Fターム(参考) 4G077 AA03 BA04 BE46 DB04 DB08 ED06 FE19 FH05 FH09 HA06 TB02 TB05 TK01 5F045 AA10 AB02 AC01 AC19 AF07 BB16 CA15 DP03 DQ10 EF13 HA17 HA18 5F052 AA01 AA03 AA04 AA05 AA18 DA01 DA02 DB01 DB03 FA00

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板の上に所定の物質の単結晶薄膜を形
    成する単結晶薄膜形成方法であって、 前記基板の上に前記所定の物質の結晶化が起こらない低
    温度下で、当該所定の物質を堆積させつつ、当該所定の
    物質のスパッタリングを引き起こさない低エネルギーの
    気体のビームを、堆積しつつある当該所定の物質へ一方
    向から照射することによって、当該所定の物質の軸配向
    多結晶薄膜を形成する工程と、 前記所定の物質の結晶化温度以下の高温下で、前記単結
    晶薄膜における方向の相異なる複数の最稠密結晶面に垂
    直な方向から、前記所定の物質のスパッタリングを引き
    起こさない低エネルギーの気体のビームを前記軸配向多
    結晶薄膜へ照射することによって、当該軸配向多結晶薄
    膜を単結晶薄膜へ転換する工程と、を備えることを特徴
    とする単結晶薄膜形成方法。
  2. 【請求項2】 基板の上に所定の物質の単結晶薄膜を形
    成する単結晶薄膜形成方法であって、 前記基板の上に、前記所定の物質を堆積させることによ
    って当該物質の薄膜を形成する工程と、 前記工程の後に、前記所定の物質の結晶化温度以下の高
    温下で、前記所定の物質のスパッタリングを引き起こさ
    ない低エネルギーの気体のビームを、前記薄膜へ一方向
    から照射することによって、当該薄膜を軸配向多結晶薄
    膜へ転換する工程と、 前記所定の物質の結晶化温度以下の高温下で、前記単結
    晶薄膜における方向の相異なる複数の最稠密結晶面に垂
    直な方向から、前記所定の物質のスパッタリングを引き
    起こさない低エネルギーの気体のビームを前記軸配向多
    結晶薄膜へ照射することによって、当該軸配向多結晶薄
    膜を単結晶薄膜へ転換する工程と、を備えることを特徴
    とする単結晶薄膜形成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の方法に
    おいて、前記軸配向多結晶薄膜を形成する際における前
    記気体のビームの照射方向と、前記軸配向多結晶薄膜を
    単結晶薄膜へ転換する際における前記気体のビームの複
    数の照射方向の1つとが、互いに同一であることを特徴
    とする単結晶薄膜形成方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の方法に
    おいて、前記気体が不活性ガスであることを特徴とする
    単結晶薄膜形成方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の方法において、前記不
    活性ガスを構成する元素の原子量が、前記所定の物質を
    構成する元素の原子量の中の最大の原子量よりも低いこ
    とを特徴とする単結晶薄膜形成方法。
  6. 【請求項6】 請求項1または請求項2に記載の方法に
    おいて、前記所定の物質が、常温度下で気体である気体
    物質を構成する元素を含むとともに、前記気体のビーム
    が、前記気体物質のビームであることを特徴とする単結
    晶薄膜形成方法。
  7. 【請求項7】 請求項1または請求項2に記載の方法に
    おいて、前記気体のビームを電子サイクロトロン共鳴型
    のイオン源を用いて生成することを特徴とする単結晶薄
    膜形成方法。
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JP2009290026A (ja) * 2008-05-29 2009-12-10 Tohoku Univ 中性粒子を用いた半導体装置の成膜方法

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