JP2003138347A - フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents
フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法Info
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Abstract
れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を
提案する。 【解決手段】 C:0.01mass%以下、Cr:11〜23mass
%、Ni:2.0mass%以下、Al:1.0mass%以下、N:0.04
mass%以下、Nb:0.8mass%以下および/またはTi:1.0
mass%以下、18≦Nb/(C+N)+2(Ti/(C+N))≦60
を含むフェライト系ステンレス鋼板の製造方法におい
て、最終冷延前鋼板を、再結晶率95%以上、結晶粒径40
μm以下、{111}集積度2.0超えとし、冷間圧延を、全圧
下率75%以上で行い、仕上焼鈍を、焼鈍後の結晶粒径を
50μm以下とする温度で行う。
Description
リジング性、耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレ
ス鋼板およびその製造方法に関するものである。
に比べて耐熱性や耐食性に優れると共に、Niを含有しな
いためオーステナイト系ステンレス鋼に比べるとコスト
的に有利で、応力腐食割れ(SCC)が発生しないという
利点を有している。このため、従来から種々の産業分野
で利用されてきた。
板は、例えば板厚0.8mmにおける伸び値は30%程度、r
値は1.5以下であり、同じ板厚の普通鋼の高張力鋼板や
オーステナイト系ステンレス鋼板の特性に比べ成形性に
劣る欠点があった。このため、自動車強度部材などの複
雑な成形加工が要求される用途には、その利用が大幅に
制限されてきた。ここで、自動車強度部材用途とは、例
えばリインフォース、サイドメンバー、アーム、ビーム
材等を指す。
好な軟鋼板表面にめっきを施した合金化溶融亜鉛めっき
鋼板等が広く用いられてきた。そこで、これら部材に、
フェライト系ステンレス鋼板を適用できれば、その優れ
た耐食性を生かし、めっき工程や塗装工程の省略もしく
は塗装目付量の低下が可能になるため、トータルコスト
で比較すると安価な材料となる。また、ステンレス鋼板
は、母材の耐食性に優れていることから、腐食に起因し
た塗膜剥離等の心配や電着塗装が回り込まない部位にお
ける腐食の心配も少ない。しかもステンレス鋼板は、リ
サイクルが容易であることから、地球環境という観点か
らも大きな利益がもたらされる。
イト系ステンレス鋼板の加工性を高めるための試みがな
され、研究成果がいくつか報告されている。例えば、特
開平3-264652号公報には、NbおよびTiを複合添加したフ
ェライト系ステンレス鋼の製造条件を適正化し、{111}
集積度(X線回折強度比(222)/(200))が5以上の集合組
織を得て加工性を改善する技術が開示されている。
深絞り用フェライト系ステンレス鋼板では、r値は2.0
程度までしか得られない。このため、複雑な形状への成
形加工が必要な用途では、金型調整や潤滑コートの利用
等の工夫で対応していたが、素材そのものの成形性の向
上が望まれていた。また、深絞り性と肌荒れやリジング
性とのバランスも十分考慮されていたとは言い難い。す
なわち、深絞り成形を行った際に鋼板表面に発生する凹
凸(リシング)や肌荒れは、成形加工性の低下に大きな影
響を及ぼすが、これらの特性と深絞り性を兼ね備えた鋼
板の検討は今まで行われていなかった。ここで、リジン
グとは、冷間加工を受けた際に圧延方向(L方向)に平行
に表れる板幅方向に凹凸を有する波状の表面欠陥であ
り、また肌荒れとは、冷間加工を受けた際に表面に生じ
る結晶粒の凹凸に起因したオレンジピール(Orange Pea
l)を指す。
グ性、耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板
およびその製造方法を提案することにある。
を解決し、自動車強度部材等の深絞り用途に適用するた
めに必要な、フェライト系ステンレス鋼板の深絞り性、
リシング性および耐肌荒れ性について詳細に調査した。
その結果、最終冷延前焼鈍板の結晶粒微細化、{111}集
積度向上のほか、冷延条件や仕上焼鈍温度の適正化によ
り、上記特性のいずれをも満たした鋼板の製造が可能で
あることを見出した。
織が5%以上残存しない範囲で微細(結晶粒径40μm以下)
な組織ほど良く、{111}集積度が2.0超えとすることに加
え、冷間圧延を全圧下率75%以上とし、仕上焼鈍を、焼
鈍後の平均結晶粒径を50μm以下とする温度で行うこと
により、r値>2.0でかつリシング性、肌荒れ性をも兼
ね備えた深絞り性に優れたフェライト系ステンレス鋼板
が得られることを見出した。
Si:1.0mass%以下、Mn:1.5mass%以下、Cr:11〜23mas
s%、Ni:2.0mass%以下、P:0.06mass%以下、S:0.
03mass%以下、Al:1.0mass%以下、N:0.04mass%以
下、Nb:0.8mass%以下および/またはTi:1.0mass%以
下、ただし、これらは下記(1)式を満足するように含有
し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、再結晶率95
%以上でかつ、平均結晶粒径が40μm以下、{111}集積度
が2.0以上であることを特徴とするフェライト系ステン
レス鋼板である。 記 18≦Nb/(C+N)+2(Ti/(C+N))≦60 ……(1) ここで、C,N,NbおよびTiは各元素の含有量(mass
%)
に、Moを0.1〜3.0mass%かつ下記(2)式を満足するよう
に含有することが好ましい。また、Bを0.0005〜0.01ma
ss%含有することが好ましい。 記 (Cr+3.3Mo)≧14mass% ……(2)
50μm以下であるフェライト系ステンレス鋼板であるこ
とが好ましい。さらに、上記鋼板は、平均r値≧2.0で
あることが好ましい。
イト系ステンレス鋼板の製造方法において、熱延板焼鈍
後の鋼板の再結晶率95%以上とし、かつ最終冷延前鋼板
の再結晶率95%以上、平均結晶粒径が40μm以下、{111}
集積度が2.0以上となる条件で、全圧下率75%以上とす
る冷間圧延を行い、その後、平均結晶粒径を50μm以下
とする仕上焼鈍を行うことを特徴とする深絞り性、リジ
ング性および耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレ
ス鋼板の製造方法である。
を上記範囲に限定した理由について説明する。 C:0.01mass%以下 Cは、固溶状態で存在すると鋼の加工性を低下させる。
Cはまた、炭化物を形成して主に粒界に析出し、耐二次
加工脆性や粒界の耐食性を低下させる。C量が0.01mass
%を超えると、加工性、耐食性への悪影響が顕著となる
ため、0.01mass%以下に制限する。しかし、過度のC低
減は、精練コスト上昇を招くので、0.002mass%超え0.0
08mass%以下の含有量が望ましい。
くに大気環境での耐食性を向上させる。その効果を発揮
させるためには、0.2mass%以上の添加が好ましい。し
かしながら、1.0mass%を超えて含有すると鋼を脆化さ
せ、溶接部の耐二次加工脆性をも劣化させるので、1.0m
ass%を上限とする。好ましくは、0.1〜0.6mass%の範
囲に限定する。
剰に含有すると鋼を脆化させ、溶接部の耐二次加工脆性
を劣化させるので、1.5mass%以下に限定する。好まし
くは、0.1〜1.0mass%の範囲に限定する。
を得るためには11mass%以上含有している必要がある。
また溶接部の耐食性の観点からは、16mass%以上の含有
が好ましい。一方、Crは加工性を低下させる元素であ
り、特に23mass%を超えて含有するとその影響が顕著と
なるので、23mass%を上限とする。
s%以下の範囲で含有させることができる。しかし、2.0
mass%を超えて多量に含有すると,鋼が硬質化し、ま
た、応力腐食割れの懸念が生ずる。したがって、その含
有量は2.0mass%を上限とする。好ましくは、0.1〜0.8m
ass%の範囲に限定する。
界強化作用を低減させ、溶接部の耐二次加工脆性を劣化
させる。また、耐食性や高温疲労特性も劣化させるの
で、できる限り低い方が望ましい。このため0.06mass%
を上限とする。好ましくは0.03mass%以下である。しか
し、過度の低下は精練コスト上昇を招く。
が、過度の低減は製鋼コストの上昇を招くため、その含
有量は0.03mass%以下とする。好ましくは0.003〜0.008
mass%である。
過度の添加は介在物生成のために、表面外観、耐食性お
よび加工性を劣化させるので、1.0mass%以下に制限す
る。好ましくは、0.001〜0.6mass%の範囲に限定する。
04mass%を超えて含有すると、窒化物となって粒界に析
出し、耐食性に悪影響を及ぼすようになるので、上限を
0.04mass%とする。
mass%以下、 18≦Nb/(C+N)+2(Ti/(C+N))≦60 Nb,Tiは、固溶C,Nを化合物として固定することによ
り、耐食性改善およびr値を向上させる効果を有してお
り、単独もしくは複合で添加することが必要である。上
記の効果を得るためには、それぞれ0.01mass%以上を含
有させることが望ましい。一方、Nb含有量が0.8mass%
を超えると靭性の低下を、また、Ti含有量が1.0mass%
を超えると外観および靭性の低化を招くため、これらの
値をそれぞれ上限とする。また、鋼中のC,Nを炭窒化
物として固定し、一層優れた加工性を確保するには、18
≦Nb/(C+N)+2(Ti/(C+N))≦60とすることが必
要となる。ここで、C,N,Nb,Tiは、各元素の含有量
(mass%)である。Nb/(C+N)+2(Ti/(C+N))が18
未満となると、鋼中のC,Nを炭窒化物として充分に固
定できないため、加工性、耐食性が著しく低下する。一
方、60を超えると、炭窒化物の析出量が増加して、加工
性が低下する。
る。この効果を得るためには、0.1mass%以上の添加が
望ましい。しかし、3.0mass%を超えて含有すると、熱
処理時に析出物を生じ、加工性の劣化を招く。よって、
Mo含有量は3.0mass%以下、好ましくは0.1〜2.0mass%
とする。
は、孔食指数(Pitting Index)としてステンレス鋼の耐
食性を表す指標として一般に用いられている。自動車強
度部材に用いて十分な耐食性を得るためには、Cr+3.3M
oを14以上とすることが必要である。ただし、このCr+
3.3Moが30を超えると、鋼板が硬質化して加工性を損な
うので30以下とするのが好ましい。
を改善する効果を有する。また、鋼の靭性劣化を招くTi
Nの析出を、BNの形成により抑制する効果もある。こ
れらの効果を得るためには、0.0005mass%以上の添加が
必要である。しかし、0.01mass%を超える添加は、熱間
加工性を害するため、0.01mass%以下に制限する。
物である。ただし、粒界脆性改善のため、Coを0.3mass
%以下、また、機械的特性改善のため、Zr:0.5mass%
以下、Ca:0.1mass%以下、Ta:0.3mass%以下、W:0.
3mass%以下、Cu:1mass%以下およびSn:0.3mass%以
下を含有していても、本発明の各特性に格別の影響を及
ぼさない。
ス鋼板の特性を限定した理由について説明する。 (1)平均r値≧2.0 本発明のステンレス鋼板を、自動車用外板や補強部材等
の複雑形状に適用するためには、優れた深絞り性を有す
る必要がある。このためには、平均r値は高いほど好ま
しく、仕上焼鈍後の鋼板の平均r値は2.0以上に制限す
る。好ましくは2.4以上である。
にr値)に影響を及ぼし、一般に、結晶粒が大きいほど
{111}組織が発達し、r値は高い。このため、仕上焼鈍
温度を高温として粒成長を促進することも可能である。
しかし、結晶粒の過度の粗大化は、逆に成形加工後の肌
荒れや成形性等に悪影響を及ぼす。すなわち、結晶粒径
が50μmを超えて大きくなると、加工後の製品表面に、
オレンジピールと呼ばれる肌荒れが生じて、外観の悪化
を招くだけでなく、肌荒れに起因して、著しい耐食性の
劣化や成形限界の低下を引き起こす。このため、最終冷
延板の平均結晶粒径は50μm以下、好ましくは40μm以下
に制限する。なお、上記結晶粒径は、JIS G 0552に準拠
して測定したものであり、圧延方向(L方向)断面の板厚
1/2,1/4,1/6位置において、各々4点ずつ測定した値
の平均値(n数12)である。
ために、最終冷延前鋼板が具備すべき特性について説明
する。なお、ここで言う最終冷延前鋼板とは、冷延工程
で中間焼鈍を行わない1回冷延法では、熱延焼鈍後の鋼
板のことであり、中間焼鈍を行う2回冷延法では、文字
通り、中間焼鈍後の最終冷延前の鋼板を意味するが、熱
延焼鈍後の鋼板も下記の特性を満たすことが好ましい。
リジング性やr値に大きな影響を及ぼし、特に未再結晶
のバンド状組織が5%以上残存すると、リジング性やr
値が著しく低下する。このため、最終焼鈍前の鋼板の再
結晶率は95%以上とする。
板の{111}集積度を高めるには有利である。すなわち、
最終冷延前鋼板の結晶粒径と仕上焼鈍後鋼板のr値との
間には相関があり、結晶粒が微細なほど平均r値は高く
なり、△rは小さくなる傾向がある。この理由は、結晶
粒界は、圧延による歪みの整合性をはかるために多重す
べりが起こって均一な変形組織となるため、{111}再結
晶粒の核生成サイトになりやすい。したがって、結晶粒
の微細化は、相対的に結晶粒界の比率が増大することに
なり、{111}集合組織の発達が促進されるためと考えら
れる。また最終冷延前鋼板の粒径が大きくなると、仕上
焼鈍後鋼板の結晶粒も粗大化するため、リジング、肌荒
れが顕著になる。以上のことから、最終冷延前鋼板の結
晶粒径は、熱延板焼鈍板であれ中間焼鈍板であれ、その
上限を40μmとする。
体の集合組織を形成することができれば、その後の最終
冷間圧延では、γ−fiberは、γ−fiber近傍での方位変
化を起こすだけである。このため、γ−fiber主体の鋼
板では、仕上焼鈍での再結晶で、より強い{111}集合組
織が形成されることになる。したがって、熱延板焼鈍板
および中間焼鈍後の鋼板の{111}集積度は高いほど望ま
しく、仕上焼鈍後の鋼板の平均r値2.0以上を確保する
ためには、{111}集積度>2.0とする必要がある。特に、
平均r値2.4以上を得るためには、{111}集積度2.5以上
とすることが好ましい。
た場合、20.0MPa以下であることが、r値向上には好ま
しい。ここで、上記時効指数とは、最終冷延前鋼板に7.
5%予歪を付与した時の強度(変形応力)と、その鋼板に
さらに100℃×30分の時効処理を施した後の降伏応力の
差で定義した値である。この時効指数は、鋼中の固溶C
量と相関があり、固溶C量が多いほど時効指数が大きく
なる。前述したように、ステンレス鋼板においては、固
溶Cは加工性を劣化させる。すなわち、鋼中の固溶C
は、{111}集合組織の形成を阻害するとともに、時効に
より材質を劣化させる。このメカニズムには、回復再結
晶時に影響を及ぼすという説と回復再結晶時に影響を及
ぼすという説の2つの説が考えられている。したがっ
て、最終冷延前の鋼板中の固溶Cは低いほど好ましく、
平均r値2.0以上を目標とする本発明においては、上記
の時効指数を20.0MPa以下に制限することが必要であ
る。
について説明する。本発明の鋼板は、製鋼、熱間圧延
(スラブ加熱、粗圧延、仕上圧延)、熱延板焼鈍、酸洗、
1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延および仕
上焼鈍の各工程を経て製造される。平均r値2.0以上で
かつリジング性、肌荒れ性に優れた鋼板を得るために
は、上記各製造工程の製造条件を、以下に説明するよう
に適切に調整する必要がある。
延が困難となり、一方、加熱温度が高すぎると、熱延板
の板厚方向の集合組織が不均一になるとともに、Ti4C2
S2析出物が再溶解し、最終冷延前の鋼板中の固溶Cが
増大する。このためスラブ加熱温度は1000〜1200℃の範
囲とするのがよい。さらに、好ましい温度範囲は1050〜
1150℃である。
1パスを、圧延温度850〜1100℃、圧下率35%以上で行
うことが好ましい。粗圧延の圧延温度が850℃未満で
は、再結晶が進みにくく、主にスラブ中の柱状組織に起
因した粗大な(100)コロニーの残存により、仕上焼鈍後
の加工性が劣り、また圧延ロールへの負荷が大きくな
り、ロール寿命が短くなる。一方、1100℃を超えると、
フェライト結晶粒が粗大化し、{111}核発生サイトとな
る粒界面積が減少し、仕上焼鈍後の鋼板のr値低下を招
くことになる。したがって、粗圧延の圧延温度は850〜1
100℃とするのが好ましい。より好ましい温度範囲は900
〜1050℃である。また、粗圧延の圧下率が35%未満で
は、板厚方向の中心部に、バンド状の未再結晶組織が大
量に残存し、深絞り性を劣化させる。逆に、粗圧延の1
パス当たりの圧下率が60%を超えると、圧延時にロール
と鋼板の焼き付けを起こしたり、圧延ロールへの噛み込
み不良を生じる危険がある。このため、圧下率は40〜60
%の範囲が好ましい。
延時に鋼板表面に強い剪断歪みが生じて、板厚中心部に
未再結晶組織が残ったり、ロールと鋼板の焼き付きを生
じることがある。このような場合には、必要に応じて、
摩擦係数0.3以下になるような潤滑を施してもよい。上
述した圧延温度と圧下率の条件を満たす粗圧延を、少な
くとも1パス行うことにより深絞り性が向上する。この
1パスは、粗圧延のどのパスで行ってもよいが、圧延機
の能力から、最終パスで行うのが最も好ましい。
する)では、少なくとも1パスを、圧延温度650〜900
℃、圧下率20〜40%で行うことが好ましい。圧延温度が
650℃未満では、変形抵抗が大きくなって20%以上の圧
下率を確保することが難しくなるとともに、ロール負荷
が大きくなる。一方、仕上圧延温度が900℃を超える
と、圧延歪みの蓄積が小さくなり、次工程以降における
深絞り性向上効果を得にくくなる。このため、仕上圧延
温度は650〜900℃、好ましくは700〜800℃の範囲で行う
のがよい。
下率が20%未満では、r値の低下やリジングの原因にな
る(100)//ND、(110)//NDコロニー(横田ら、川崎製
鉄技報、30(1998)2,p115)が大きく残存してしまう。一
方、40%を超えると、噛み込み不良や鋼板の形状不良を
引き起こし、鋼の表面性状の劣化を招く。よって、仕上
圧延においては、圧下率20〜40%の圧延を少なくとも1
パス以上行うのがよい。より好ましい範囲は25〜35%で
ある。上述した圧延温度と圧下率の条件を満たす仕上圧
延を、少なくとも1パス行うことにより深絞り性は改善
される。その1パスは、どのパスで行ってもよいが、圧
延機の能力から、最終パスで行うことが好ましい。
焼鈍が、最終冷延前の焼鈍に該当する。この場合の熱延
板焼鈍は、焼鈍後の鋼板の再結晶率が95%以上かつ平均
結晶粒径40μm以下が得られる条件が好ましい。この理
由は、熱延焼鈍板に未再結晶のバンド状組織が5%以上
残存すると、仕上焼鈍後の鋼板のr値や、特にリジング
の低下が著しいからである。適正な焼鈍温度は成分によ
り異なるが、750〜1100℃の温度範囲が好ましい。上限
を制限したのは、焼鈍温度が高くなると、結晶粒が粗大
化するとともに、固溶Cを固定した炭化物(NbC,Ti
C,M3C,M7C3他)が再溶解し、鋼中の固溶C量が増
大し、仕上焼鈍後鋼板のr値の低下を招く。また、熱延
焼鈍板の結晶粒が粗大化すると、仕上焼鈍後鋼板の粒径
も大きくなり、成形後に肌荒れが生じて成形限界の低下
や耐食性の低下を引き起こすからである。したがって、
未再結晶組織が5%未満でありかつ結晶粒径が40μm以
下、好ましくは未再結晶組織が0%かつ結晶粒径35μm
以下が得られる条件とするのがよい。なお、2回以上の
冷延法の場合には、熱延板焼鈍は、最終冷延前焼鈍に該
当しないが、熱延焼鈍板の特性が、仕上焼鈍後の鋼板特
性にも影響するため、上記の条件に適合させることが好
ましい。
上の冷延法とする。また、全圧下率は、1回冷延法、2
回以上の冷延法の場合とも75%以上とする。全圧下率の
増大は、仕上焼鈍板の{111}集積度を向上し、r値向上
に有効である。仕上焼鈍後の鋼板が平均r値2.0以上を
満たすためには、全圧下率は75%以上が必要であり、好
ましくは80〜90%未満とするのがよい。なお、2回以上
の冷延法の場合、(1回目冷延の圧下率)/(最終冷延の
圧下率)で表される圧下比は、最終冷延前鋼板の粒径や
中間焼鈍板および仕上焼鈍板中の{111}集合組織と密接
な関係があり、高r値化を達成するには、この圧下比
を、0.7〜1.3とするのが好ましい。より好ましくは0.8
〜1.1の範囲として冷間圧延するのがよい。また、2回
以上の冷延法を行う時には、各冷延はいずれも圧下率50
%以上とし、それぞれの圧下率の差は30%以下とするの
が望ましい。これは圧下率が50%未満でも、圧下率差が
30%超えでも、{111}集積量が低くなりr値が低下する
ためである。
延材表面の剪断変形を低減し、(222)/(200)を高め
て、r値の向上に有効に寄与するため、ロール径と圧延
方向の影響を考慮することが望ましい。すなわち、ロー
ル径100〜200mmφのリバース圧延に比べ、300mmφ以上
のロール径を有する1方向圧延のタンデム圧延を用いる
ことは、表面の剪断変形を低減して{111}を増加し、r
値を高めるうえで効果的である。なお、より高r値を安
定して得るためには、線圧(圧延荷重/板幅)を増大さ
せて板厚方向に均一に歪みを与えるとよい。そのために
は、熱延温度の低下、高合金化、熱延速度の増加を任意
に組み合わせることも有効である。
冷間圧延に挟まれた中間焼鈍が最終冷延前焼鈍に該当す
る。最終の仕上焼鈍板を微細結晶粒かつ高r値化するた
めには、熱延板焼鈍の場合と同様の理由で、中間焼鈍後
のフェライト結晶粒の微細化と固溶Cの低減が重要なポ
イントとなる。このため、中間焼鈍温度は最終冷延前の
結晶粒径40μm以下を満たし、かつ未再結晶組織が5%以
上残存しない温度範囲で低温ほどよい。これらのことか
ら、中間焼鈍温度は750〜1000℃とするのが好ましい。
より好ましくは熱延板焼鈍温度より50℃以上低い温度と
するのがよい。
大きくなり、{111}集積度が向上し、高r値化が達成さ
れる。これは、{111}結晶粒が他の結晶方位の粒を蚕食
して粒成長するからである。しかし、最終冷延前の鋼板
に未再結晶組織が残存する場合には、r値向上に有効な
{111}結晶方位の優先成長が起こらず、リジングの低下
も著しい。すなわち未再結晶組織が残存すると、平均r
値2.0以上を達成できないばかりか、鋼板板厚方向中央
にバンド状組織が残存し、深絞り性、加工性を著しく阻
害する。したがって、仕上焼鈍で、高r値を得るために
は、その前の最終冷延前鋼板の特性管理が重要である。
なお、上述したように、r値向上のためには、高温焼鈍
により{111}粒の優先成長を促進することが有効である
が、結晶粒が過度に大きくなると、加工後の肌荒れ(オ
レンジピール)が生じて、成形限界の低下と耐食性の劣
化をもたらす。このため、仕上焼鈍温度は、焼鈍後の結
晶粒径50μm以下を確保できる範囲で高温ほど良い。但
し、二次加工脆性が問題となる用途では、40μm以下に
微細化することが好ましい。具体的には、850〜1050℃
の温度範囲で仕上焼鈍するのが好ましい。
る場合には、TIG、MIGを始めとするアーク溶接、
電縫溶接、レーザー溶接など、通常の溶接方法はすべて
適用可能である。
15種類の鋼スラブを、転炉−連続鋳造法で製造し、1150
℃に加熱したのち熱間圧延し、5.0mmの熱延鋼板とし
た。この熱延鋼板を、850〜980℃で熱延板焼鈍し、酸洗
後、1回法では0.8mmに冷間圧延し、2回法では800〜93
0℃で中間焼鈍後、2回目の冷間圧延を行い、最終板厚
0.8mm(全圧下率84%)とした。これらの鋼板について、
熱延焼鈍板、中間焼鈍後鋼板(最終冷延前鋼板)および仕
上焼鈍後鋼板(製品板)の特性を調査した結果を表2に示
した。
リジング性の評価は、以下の方法で行った。(1)平均r
値:r値をJIS Z 2254に準拠して測定し、下記式により
平均r値を求めた。なお、rL、rDおよびrCは、そ
れぞれ圧延方向、圧延方向に村して45°および圧延方向
に対して90°方向のr値である。 平均r値=(rL+2rD+rC)/4 (2)耐肌荒れ性:鋼板の圧延方向からJIS 5号試験片を切
り出し、25%の引張歪みを加えて肌荒れを発生させた
後、引張方向に垂直な方向の表面粗度Raを測定し肌荒
れ度を評価した。測定は、JIS B 0601に準拠し、触針法
により試験片長手方向中央部を5点測定し、その平均値
を求めた。評価は、表面粗度Raが2.0μm以下を耐肌荒
れ性良好とした。 (3)リジング性:圧延方向から切り出したJIS 5号引張試
験片の両面を#600のエメリー研磨紙で湿式研磨し、その
後、20%の歪を付与し、粗度計を用いて、試験片表面に
生じた凹凸のうねり高さを測定した。測定位置は引張試
験片の中央部、測定方向は引張方向に直角方向とした。
そして、うねり高さが15μm以下をランクA、16〜30μm
をランクB、31〜45μmをランクC、46〜60μmをランク
D、61μm以上をランクEとする5段階に評価した。な
お、この評価がランクB以上であれば、成形限界曲線に
よる成形性評価から、実用上問題ないレベルと判断でき
る。しかし、ランクC以下になると、r値をいくら向上
させても成形限界が低下する。
〜12は、上記条件で製造した場合、最終冷延前の鋼板は
いずれも、再結晶率が100%、{111}集積度が2.0以上お
よび結晶粒径が40μm以下であり、さらに仕上焼鈍後の
鋼板も、平均r値が2.0以上でかつ肌荒れ性やリジング
性に優れた鋼板となる。これに対して、本発明の成分基
準を外れる鋼13〜15は、最終冷延前の再結晶率を100%
としても、{111}集積度2.0超えを得ることはできず、仕
上焼鈍後の鋼板の平均r値も2.0未満のものしか得られ
ない。
範囲を満たす鋼6のスラブを、実施例1の製造条件をベ
ースにし、粗および仕上熱間圧延温度および圧下配分、
熱延板焼鈍温度、冷間圧延条件等を変化させ、鋼板特性
の変化を調査した結果である。No.16〜19は、冷延1回
法を採用した場合で、熱延板焼鈍の温度を変化させたと
きの特性変化のデータである。熱延焼鈍板の再結晶率が
95%以上であるNo.16,17では、仕上焼鈍後、r値、リ
ジング性、肌荒れ性との良好な特性が得られているが、
熱延板焼鈍温度が低く、再結晶率が95%未満となったN
o.18,19ではリジング性の低下が著しい。No.20〜24
は、冷延2回法で、中間焼鈍温度を変化させたときの特
性変化を示したものである。No.22〜24は、中間焼鈍を
高温で焼鈍した場合で、中間焼鈍後の結晶粒径が40μm
以上に粗大化した結果、リジング性が劣化する、あるい
は、固溶Cが増加して時効指数が大きくなり、平均r値
が劣化している。No.25〜30は、仕上焼鈍温度を変化さ
せたときの特性の変化を示したもので、仕上焼鈍温度を
高温で焼鈍したNo.28〜30の鋼板は、仕上焼鈍後の結晶
粒が粗大化したため、平均r値には影響は少ないが、肌
荒れ性あるいはリジング性の低下を招いている。No.31
〜33は、熱延板焼鈍、中間焼鈍条件を変化させ、最終冷
延前鋼板の{111}集積度を変化させたときの、最終冷延
板の特性を示したものである。{111}集積度が2.0以下で
あるNo.33は、平均r値が低い。No.34〜37は、熱延板焼
鈍および中間焼鈍条件を変化させた、最終冷延板の特性
を示したものである。この場合も、最終冷延前鋼板の{1
11}集積度が本発明の要求を満たさないNo.36,37では、
r値の劣化が大きい。No.38は、熱延板焼鈍および中間
焼鈍条件を変化させ、最終冷延前鋼板の再結晶率を90%
とした場合の最終冷延板の特性を示したものである。再
結晶率95%未満のNo.38鋼は、表面粗さは良好なもの
の、リジング性、r値が著しく悪い。
を、実施例1の製造条件に従い、5.0mmの熱延鋼板と
し、熱延板焼鈍を施した。その後、あるものは、冷延1
回法により、タンデム圧延機で全圧下率を40〜84%に変
化させて0.8〜3.0mmの板厚に圧延したのち、仕上焼鈍を
行った。また、あるものは、冷延2回法を採用し、タン
デム圧延とリバース圧延で、ロール径を変化させて、0.
8mmの板厚まで冷延し、仕上焼鈍を行った。これらの最
終冷延板の特性を、実施例1と同様に調査した結果を表
4に示した。
は、冷延1回法における冷延圧下率の影響を示したデー
タである。圧下率の低下に伴いr値も低下しており、2.
0以上のr値を得るためには、全圧下率を75%以上確保
することが必要である。また、No.45〜50は、冷延2回
法で、圧延方向とロール径の影響を示したものである。
同じロール径では、リバース式の圧延より1方向圧延の
方が平均r値は向上すること、また同じ圧延方向では、
ロール径が大きいほど平均r値が向上する傾向が認めら
れる。
高r値のほか優れたリジング性、耐肌荒れ性を兼ね備え
た深絞り成形性に好適なフェライト系ステンレス鋼板を
得ることができる。このフェライト系ステンレス鋼板
は、自動車用外板や強度部材のほか家電、厨房、建材等
の強加工用途に適用可能であり、産業上に大きな功を奏
する。
Claims (6)
- 【請求項1】C:0.01mass%以下、Si:1.0mass%以
下、Mn:1.5mass%以下、Cr:11〜23mass%、Ni:2.0mas
s%以下、P:0.06mass%以下、S:0.03mass%以下、A
l:1.0mass%以下、N:0.04mass%以下、Nb:0.8mass
%以下および/またはTi:1.0mass%以下、ただし、こ
れらは下記(1)式を満足するように含有し、残部がFe及
び不可避的不純物からなり、再結晶率95%以上でかつ、
平均結晶粒径が40μm以下、{111}集積度が2.0以上であ
ることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。 記 18≦Nb/(C+N)+2(Ti/(C+N))≦60 ……(1) ここで、C,N,NbおよびTiは各元素の含有量(mass
%) - 【請求項2】上記成分組成に加えてさらに、Moを0.1〜
3.0mass%かつ下記(2)式を満足するように含有したこと
を特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス
鋼板。 記 (Cr+3.3Mo)≧14mass% ……(2) - 【請求項3】上記成分組成に加えてさらに、Bを0.0005
〜0.01mass%含有することを特徴とする請求項1または
2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。 - 【請求項4】平均結晶粒径が50μm以下であることを特
徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェライ
ト系ステンレス鋼板。 - 【請求項5】平均r値≧2.0であることを特徴とする請
求項1〜4のいずれか1項に記載のフェライト系ステン
レス鋼板。 - 【請求項6】請求項1〜3に記載の組成からなるフェラ
イト系ステンレス鋼板の製造方法において、最終冷延前
鋼板が再結晶率95%以上かつ平均結晶粒径が40μm以
下、{111}集積度が2.0以上となる条件で、全圧下率75%
以上とする冷間圧延を行い、その後、平均結晶粒径を50
μm以下とする仕上焼鈍を行うことを特徴とする深絞り
性、リジング性および耐肌荒れ性に優れたフェライト系
ステンレス鋼板の製造方法。
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