JP3358938B2 - 化成処理性と加工性にすぐれる高強度熱延鋼板 - Google Patents
化成処理性と加工性にすぐれる高強度熱延鋼板Info
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Description
部材の素材として好適に用いることができる化成処理性
と加工性にすぐれる高強度熱延鋼板に関する。
観点から、自動車用鋼板の高強度薄肉化が広く進められ
ている。これらのなかでも、ばね下部材となるホイール
や足回り部材の軽量化は、自動車の燃費向上に極めて有
効な手段であるので、軽量化を目的とした高強度化が検
討されている。これらの鋼板に要求される特性は多岐に
わたり、加工性は勿論、化成処理性や疲労特性も重要で
ある。
関して、特に、伸びフランジ性が重要である。この伸び
フランジ性にすぐれる鋼板については、既に多くの開発
がなされている。例えば、特開昭57−101649号
公報には、NbとTiを含む鋼について、フェライトと
ベイナイトの面積率を適当に制御することによって、加
工性のよい高強度熱延鋼板を得ることができることが記
載されている。また、特開平6−172920号公報に
は、引張強度(TS)と伸び(El)とのバランス、即
ち、強度−延性バランスと伸びフランジ性とにすぐれる
高強度熱延鋼板を得るために、NbとTiを添加した鋼
を熱間圧廷した後、冷却制御を行なって、フェライト・
ベイナイト組織とする方法提案載されている。
重要な課題であり、そこで、PやCuを添加した母材耐
食性鋼板等が、例えば、特開平2−22416号公報に
提案されている。しかし、塗装後の耐食性には、鋼板と
塗装膜との密着性も大きく影響するので、鋼板の化成処
理性が極めて重要である。この化成処理性は、鋼板の成
分によって左右され、例えば、Si、Cr、Ti等の添
加によって劣化することが知られている。しかし、高強
度鋼板においては、これらの元素の添加量を必然的に多
くせざるを得ず、かくして、高強度鋼板の化成処理性の
劣化は、足回り部品への適用に際して、重要な問題とな
っている。
強度熱延鋼板における上述した問題を解決するために鋭
意研究した結果、Siの添加量を所定値以下に制御した
Ti添加高強度熱延鋼板において、その鋼板の表面近傍
の硬さ(Ti系析出物の状態)を適正化することによっ
て、化成処理性と加工性とにすぐれる高強度熱延鋼板を
得ることができることを見出して、本発明に至ったもの
である。従って、本発明は、690N/mm2 級以上の
高強度を有し、更に、化成処理性と加工性、特に、伸び
フランジ性にすぐれる高強度熱延鋼板を供することを目
的とする。
と加工性にすぐれる高強度熱延鋼板は、重量%にて(以
下、同じ)、C 0.04〜0.20%、Si 0.8%以
下、Mn 0.5〜2.5%、P 0.1%以下、S 0.
01%以下、Al 0.01〜0.08%、及びTi 0.0
6〜0.20を含み、残部鉄及び不可避的不純物よりな
り、熱間圧廷により製造される薄鋼板において、表層の
ビッカース硬さ(HVS )と内部のビッカース硬さ(H
Va )とが HVs /HVa ≦0.95 なる関係を満たすことを特徴とする。
記に加えて、下記の第1群から第4群のうちの少なくと
も1群中の少なくとも1種を含むことができる。 第1群 Nb 0.01〜0.1%、及びV 0.01〜0.5% 第2群 Cr 0.05〜0.8%、Mo 0.05〜1.0%、B
0.0005〜0.01%、及びNi 0.05〜2.0% 第3群 Ca 0.005%以下、及び希土類元素 0.005%以
下 第4群 Cu 0.05〜2.0%
板における化学成分について説明する。Cは、鋼の強化
に効果を有し、特に、ベイナイトを形成するために必要
な元素であり、このためには少なくとも0.04%を添加
することが必要である。しかし、過多に添加するとき
は、延性の劣化が著しく、溶接性も低下するので、その
上限を0.20%とする。
向上に非常に有効であるが、過度の添加は表面性状や化
成処理性を悪化させるので、添加量は0.8%を上限とす
る。化成処理性が特に要求される場合には、Si量は0.
4%以下とすることが望ましい。Mnも、固溶強化元素
であり、引張強さの向上に有効であるほか、粗大なパー
ライトの生成を抑制し、ベイナイトを生成させるために
必要な元素である。この効果を有効に発揮させるには、
少なくとも0.5%添加する必要があるが、過多に添加す
るときは、延性を低下させるだけでなく、溶接性をも阻
害するので、その上限を2.5%とする。
含有量は0.01%以下に規制する。Pは、鋼の強度を向
上させる作用があるが、しかし、過多の添加は、加工性
や靱性を劣化させるので、含有量は0.1%以下の範囲と
する。Alは、脱酸のために用いられる。しかし、0.1
0%を越えて過多に添加するときは、アルミナ系の介在
物が増加して、加工性を劣化させるので、Alの添加量
は0.10%以下とする。
引張強さ640N/mm2 以上の高強度とすぐれた加工
性を両立させるうえで必要不可欠の元素である。本発明
によれば、Tiは、次の3つの効果によって、すぐれた
加工性を確保しつつ、鋼板の強度を高めることができ
る。
する。この効果は、Tiの添加によって形成されるTi
Nが加熱時のオーステナイト粒の粗大化を防止すると共
に、Tiの添加によって、圧延時の再結晶が抑制される
ためである。第2に、TiはMnや後述するCrと同様
に、ベイナイトを生成させる効果を有する。フェライト
・ベイナイト組織は、すぐれた伸びフランジ性を有して
おり、Tiは、この組織を安定して生成させることがで
きる。第3には、Tiは、巻取後の微細TiCの析出に
よる強化効果を有し、これによって鋼板の強度を更に高
めることができる。
3つの効果を適度にバランスさせることによって、高強
度を有しながら、加工性にすぐれる熱延鋼板を得ること
ができる。即ち、本発明に従って、このような効果によ
って、引張強さ640N/mm2 以上の高強度を得るた
めには 0.06%以上の添加が必要である。しかし、過
多に添加するときは、化成処理性が劣化するので、Ti
の添加量の上限は、0.20%とする。更に、本発明によ
る高強度熱延鋼板は、上記に加えて、前記第1群から第
4群のうちの少なくとも1群中の少なくとも1種を含む
ことができる。
り、強度上昇に有効であるのみならず、特に、Nbは、
Mnと共存して、熱延後の鋼板の変態組織に影響を与
え、低温変態生成物の生成を容易にするTiと同様の作
用を有する。更に、NbとVは、組織を微細化して、伸
びフランジ性を向上させると共に、溶接後の熱影響部の
硬度低下を防止するので、疲労強度の改善に役立つ。こ
れらの効果を有効に発揮させるためには、NbとVは、
それぞれ、少なくとも0.01%の添加を必要とする。し
かし、これらの元素も、過多に添加するときは、降伏比
の上昇と延性の低下を招くので、添加量の上限は、Nb
は0.3%、好ましくは、0.2%であり、特に好ましくは
0.1%であり、Vは0.5%である。
定的に生成させる効果があり、この効果を有効に得るに
は、0.05%以上の添加が必要であるが、しかし、過多
に添加するときは、化成処理性を劣化させるので、添加
量は0.8%を上限とする。化成処理性が特に要求される
場合には、添加量は0.4%以下とすることが望ましい。
き入れ性を向上させて、所望の組織を有利に与える元素
である。また、Niは、Cuを添加した際のスラブの割
れを防止するのにも有効である。これらの効果を有効に
得るためには、添加量は、Moは0.05%以上、Bは0.
0005%以上、Niは0.05%以上の添加を必要とす
る。しかし、いずれの元素も、過多に添加しても、その
効果が飽和し、経済的にも不利であるので、添加量の上
限は、Moは1.0%、Bは0.01%、Niは2.0%とす
る。
硫化物の形態制御を通じて、延性、特に、伸びフランジ
性を改善する効果を有する。反面、過多に添加しても、
その効果が飽和し、経済的にも不利であるので、添加量
の上限は、それぞれの元素について、0.005%とす
る。
ることによって、強度を著しく上昇させるうえに、鋼板
に耐食性を与える効果を有する。これらの効果を有効に
得るためには、少なくとも0.05%の添加が必要である
が、しかし、過多に添加しても、上記効果が飽和するの
で、上限は2.0%とする。
ッカース硬さ(HVS )と内部のビッカース硬さ(HV
a )とが HVs /HVa ≦0.95 なる関係を満たすことが必要である。ここに、表層と
は、表面から0.1mmまでの層をいい、内部とは、表面
から厚さの1/4の深さの部分をいう。本発明の熱延鋼
板によれば、このように、表層のビッカース硬さと内部
のビッカース硬さとに上記関係を満足させることによっ
て、加工性にすぐれたTi添加高強度熱延鋼板におい
て、化成処理性をも兼ね備えさせることができるのであ
る。
があるのは次のような理由による。本発明によれば、熱
延鋼板に640N/mm2 級以上の高強度とすぐれた加
工性とを共に有せしめるために、0.06%以上のTiの
添加が必要である。ここに、Ti添加量を増やせば、化
成処理性を劣化させるが、化成処理性は、鋼板の表面の
みが関係する。即ち、鋼板の化成処理性は、最表面のT
iの存在状態によって影響を受ける。
は、最表面に存在するTiがTiO2を形成する場合で
あるとみられ、熱延鋼板については、表面のTiが固溶
しているか、又は再固溶しやすい整合な微細析出物を形
成している(即ち、硬さは高くなる。)場合ほど、酸洗
後の鋼板表面において、TiO2 が形成されやすいとみ
られる。しかし、最表面のTiが非整合なTiCを形成
している場合は(即ち、硬さは低くなる。)、固溶Ti
や微細析出物を形成しているTi量は減少し、TiO2
が形成されにくいので、化成処理性は向上するとみられ
る。
することによる化成処理性向上効果に加えて、表面に軟
化層(粗大析出層)を形成させることによって、ミクロ
組織が同じフェライト・ベイナイト組織であっても、軟
化層がない鋼板よりも、曲げ加工やバーリング加工等、
表面近くで歪みが大きくなる加工様式において、加工性
を更に向上させる効果もある。
近傍において適度に非整合析出物を形成させて、前記表
層のビッカース硬さ/内部のビッカース硬さの比、HV
s /HVa に上記関係を満足させることによって、Ti
を添加した高強度熱延鋼板において、化成処理性にすぐ
れ、更に、加工性にもすぐれる高強度熱延鋼板を得るこ
とができるのである。更に、本発明によれば、前記HV
s /HVa 比を0.90以下とすることによって、特に厳
しい塗装耐蝕性が要求される用途に好適な熱延鋼板を得
ることができる。
方法について説明する。本発明によれば、鋼板の表面近
傍のみにおいて、粗大な析出物を得ることによって化成
処理性を改善する。従って、本発明によれば、板厚が厚
く、内部に比較して表面温度の低下が大きくなる仕上圧
延前の状態でNb−Ti系炭化物を析出、粗大化させる
必要がある。そこで、本発明によれば、粗圧延を950
〜1160℃の範囲の温度で終了させ、仕上圧延開始ま
での間の空冷時間を10秒以上とする。
きは、粗圧延時の表面近傍におけるNb−Ti系炭化物
の析出量が不十分であり、表面に粗大な析出物を得るこ
とができない。特に、本発明によれば、粗圧延終了温度
は1050℃以下とすることが好ましい。他方、粗圧延
終了温度が950℃よりも低いときは、圧延における変
形抵抗が大きく、粗圧延機の負荷が大きくなるほか、表
面のみならず、内部においても、前記炭化物が析出する
ので、強度が低下する。
冷時間が10秒よりも短いときは、表面温度の低下が十
分でなく、また、表面の析出物が成長する時間も不足す
るので、表面において粗大な析出物を得ることができな
い。また、上記空冷時間は、次の仕上圧延温度を確保す
ることができれば、特に、制約されない。仕上圧延温度
は、Ar3点以上である。仕上圧延温度がAr3点よりも低
いときは、加工組織が残存し、加工性が劣化する。
冷却する。仕上圧延後の冷却速度が20℃/秒よりも遅
いときは、パーライトが生成し、他方、十分な量のベイ
ナイトを得ることができないので、所要の強度及び加工
性を得ることができない。仕上圧延後の冷却速度の上限
は、特に限定されるものではないが、温度制御の観点か
ら、100℃/秒以下とすることが好ましい。
行なう。巻取温度が350℃よりも低いときは、マルテ
ンサイトが生成するので、伸びフランジ性が低下する。
しかし、600℃を越えるときは、パーライトが生成
し、更に、析出強化に寄与する微細なTi−Nb系の析
出物も粗大化するので、強度と伸びフランジ性(λ値)
が低下する。特に、伸びフランジ性が要求される場合に
は、巻取は、400〜500℃の範囲の温度で行なうの
が好ましい。
添加量を所定値以下に制御したTi添加高強度熱延鋼板
において、その鋼板の表面近傍の硬さ(Ti系析出物の
状態)を適正化することによって、化成処理性と加工性
とにすぐれる高強度熱延鋼板を得ることができる。
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。表1に示す化学成分を有する鋼から45mm厚のス
ラブを製造し、これを15mm厚まで、終了温度850
〜1200℃の範囲で粗圧延した。粗圧延終了後、仕上
圧延を開始するまでの空冷時間を3〜30秒の範囲で変
化させた。
範囲で3.0mm厚まで圧延し、次いで、巻取温度相当の
温度(300〜700℃)まで冷却し、その温度で30
分保持した後、炉冷した。表1において、鋼種A〜E及
びJ〜Lは、本発明にて規定する化学成分を有する鋼で
あり、鋼種F〜Iは、本発明にて規定する化学成分をも
たない鋼である。
及び打ち抜き穴材の平面曲げ試験に供した。穴拡げ率λ
は試験片に直径10mmの打ち抜き穴をあけ、60°円
錐パンチを用いて、クラックが板厚を貫通するまで押し
拡げたときの穴径db と初期穴径di を用いて、次式に
より求めた。 λ=((db −di )/di ) ×100(%)
着塗装、中塗り及び上塗りを行ない、これについて塩水
噴霧試験を1200時間行なった後、クロスカット部の
ふくれ幅で評価した。ビッカース硬さは、表面から深さ
0.07mmの位置と表面から厚さの1/4 の深さの位置
でそれぞれ5点測定し、その平均値を採用した。測定荷
重は100gfとした。
結果のうち、機械的性質が外れている例を除いて、HV
s /HVa とふくれ幅との関係を図1に示す。
板は、640N/mm2 級以上の高強度を有し、しか
も、伸びフランジ性、化成処理性共にすぐれていること
が示される。これに対して、比較例による鋼板は、一つ
以上の特性において劣っている。
ている例を除いて、HVs /HVa とふくれ幅との関係
を示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】重量%にて(以下、同じ)、 C 0.04〜0.20%、 Si 0.8%以下、 Mn 0.5〜2.5%、 P 0.1%以下、 S 0.01%以下、 Al 0.01〜0.08%、及び Ti 0.06〜0.20% を含み、残部鉄及び不可避的不純物よりなり、熱間圧廷
により製造される薄鋼板において、表層のビッカース硬
さ(HVS )と内部のビッカース硬さ(HVa )とが HVs /HVa ≦0.95 なる関係を満たすことを特徴とする化成処理性と加工性
にすぐれる高強度熱延鋼板。 - 【請求項2】請求項1の高強度熱延鋼板において、更
に、下記の第1群から第4群のうちの少なくとも1群中
の少なくとも1種を含む請求項1に記載の高強度熱延鋼
板。 第1群 Nb 0.01〜0.1%、及び V 0.01〜0.5% 第2群 Cr 0.05〜0.8%、Mo 0.05〜1.0%、 B 0.0005〜0.01%、及び Ni 0.05〜2.0% 第3群 Ca 0.005%以下、及び 希土類元素 0.005%以下第4群 Cu 0.05〜2.0%
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14707796A JP3358938B2 (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 化成処理性と加工性にすぐれる高強度熱延鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14707796A JP3358938B2 (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 化成処理性と加工性にすぐれる高強度熱延鋼板 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH101748A JPH101748A (ja) | 1998-01-06 |
JP3358938B2 true JP3358938B2 (ja) | 2002-12-24 |
Family
ID=15421958
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP14707796A Expired - Lifetime JP3358938B2 (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 化成処理性と加工性にすぐれる高強度熱延鋼板 |
Country Status (1)
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JP4436419B2 (ja) * | 2008-05-02 | 2010-03-24 | 新日本製鐵株式会社 | 疲労特性と曲げ成形性に優れた機械構造鋼管用熱延鋼板とその製造方法 |
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1996
- 1996-06-10 JP JP14707796A patent/JP3358938B2/ja not_active Expired - Lifetime
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