JP2003105503A - 固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼 - Google Patents

固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼

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JP2003105503A
JP2003105503A JP2001296529A JP2001296529A JP2003105503A JP 2003105503 A JP2003105503 A JP 2003105503A JP 2001296529 A JP2001296529 A JP 2001296529A JP 2001296529 A JP2001296529 A JP 2001296529A JP 2003105503 A JP2003105503 A JP 2003105503A
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solid oxide
oxide film
fuel cell
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JP2001296529A
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Akihiro Tsuji
昭宏 都地
Toshihiro Uehara
利弘 上原
Takehiro Ono
丈博 大野
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 700〜950℃程度において良好な電気伝導性を
有する酸化被膜を形成するとともに、長時間の使用にお
いても良好な耐酸化性、特に耐剥離性を有し、かつ電解
質との熱膨張差が小さい安価な固体酸化物型燃料電池セ
パレータ用鋼を提供する。 【解決手段】 質量%にて、C:0.2%以下、Si:0.2%未満(0
%を含まず)、Mn:1.0%以下(0%を含まず)、Cr:15〜30%、N
i:2%以下(0%を含む)、Al:1%以下(0%を含む)、Zr:1%以
下、及びY:0.5%以下と希土類元素:0.2%以下の一種また
は二種を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる固体
酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は固体酸化物型燃料電
池のセパレータに用いられる鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、その発電効率が高いこと、
SOx、NOx、CO2の発生量が少ないこと、負荷の変動に対
する応答性が良いこと、コンパクトであること等の優れ
た特徴を有するため、火力発電の代替としての大規模集
中型、都市近郊分散配置型、及び自家発電用等の巾広い
発電システムへの適用が期待されている。燃料電池の種
類には用いる電解質により、りん酸型、溶融炭酸塩型、
固体酸化物型、高分子固体電解質型に分類されるが、な
かでも固体酸化物型燃料電池は電解質として安定化ジル
コニア等のセラミックスを用いており、従来、1000℃付
近のかなり高温で運転されるものであった。
【0003】上述の固体酸化物型燃料電池は、高温で運
転されるために電極反応に触媒を用いる必要がないこ
と、高温による化石燃料の内部改質が可能で石炭ガス等
の多様な燃料を用いることができること、高温排熱を利
用しガスタービン或いは蒸気タービン等と組み合わせ、
いわゆるコンバインドサイクル発電とすることにより高
効率の発電が可能となること、構成物が全て固体である
ためコンパクトであること等の優れた特徴を有し、次世
代の電力供給源として非常に有望視されている。
【0004】しかしながら、固体酸化物型燃料電池の実
用化のためには多くの検討課題が残されており、特に高
出力密度が可能な平板型燃料電池の場合、重要な構成要
素としてセパレータが挙げられる。このセパレータは電
解質、燃料極、空気極の三層を支持し、ガス流路を形成
するとともに電流を流す役目を有する。従ってセパレー
タには、高温での電気伝導性、耐酸化性、更に電解質と
の熱膨張差が小さいこと等の特性が要求されることか
ら、このような要求特性を鑑み、従来は導電性セラミッ
クスが多く用いられてきたが、セラミックスは加工性が
悪くまた高価であることから、燃料電池の大型化、実用
化の面から問題を残している。
【0005】そのため安価で信頼性のある金属材料によ
るセパレータの開発が要求されているが、通常の金属材
料を1000℃で使用すると、表面が酸化され酸化被膜を生
じるが、セパレータ材として用いるためにはこの酸化被
膜が安定で酸化が進行しないこととともに酸化被膜が電
気伝導性を有することが必要である。このような要求特
性を満足させるために、特開平6-264193号には固体電解
質型燃料電池用金属材料として、C:0.1%以下、Si:0.5〜
3.0%、Mn:3.0%以下、Cr:15〜30%、Ni:20〜60%、Al:2.5〜
5.5%、残部Feからなるオーステナイト系ステンレス鋼が
提案されている。
【0006】また、特開平7-166301号には固体電解質燃
料電池のセパレータとして、Fe:60〜82%及びCr:18〜40%
に前記単電池の空気極との間の接触抵抗を低減する添加
元素(La、Y、CeまたはAlをそれぞれ単独で含有させる)
からなる合金を使用することが提案されている。更に、
特開平7-145454号には、固体電解質型燃料電池用金属材
料としてCr:5〜30%、Co:3〜45%、La:1%以下、残部Feか
らなる材料が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで最近、固体酸
化物型燃料電池の改良が著しく進み、運転温度が従来の
1000℃付近から700〜950℃程度にまで低下させることが
可能となってきた。このため、実用化が早まるものと予
想されている。上記の特開平6-264193号に開示された材
料はAlとCrを相当量含むために表面酸化被膜はAl系酸化
物を主体とし、これにCr系酸化物を含有したものであ
る。しかしながら後述するようにAl系酸化物は、電気伝
導率が低いために固体酸化物型燃料電池セパレータ用と
しては必ずしも十分といえない面があり、またオーステ
ナイト系ステンレス鋼は、電解質の安定化ジルコニアに
比較して熱膨張係数が大きいため電池の起動、停止に伴
う熱サイクルによる電解質の割れ等による電池の性能低
下を起こし易く、長時間使用における安定性に問題があ
る。更に高価なNiを多く含むために価格的にも高く、燃
料電池の実用化のためには不十分である。
【0008】これに対して、特開平7-166301号及び特開
平7-145454号に開示された材料は、オーステナイト系ス
テンレス鋼に比較して熱膨張係数が低く、電解質の安定
化ジルコニアの熱膨張係数に近いため長時間使用におけ
る安定性に有利であり、また電気伝導率も良好である。
しかし、長時間使用後の耐酸化性が不十分であり、特に
酸化層の増大に伴う剥離現象を助長し、電池内のガス流
路となるセパレータに設けた溝を狭めて、電池機能を低
下させる問題がある。また、特開平8-35042号及び特開
平8-277441号に開示された材料は、オーステナイト系ス
テンレス鋼に比較して熱膨張係数が低く、電解質の安定
化ジルコニアの熱膨張係数に近いため長時間使用におけ
る安定性に有利であるが、セパレータ材の特性として重
要な電気伝導率については何ら考慮されていない。
【0009】また、特開平9-157801号及び特開平10-280
103号に開示された材料もまた、1000℃までの熱膨張係
数が低く、電解質の安定化ジルコニアの熱膨張係数に近
いため長時間使用における安定性に有利であり、また10
00℃での耐酸化性、電気伝導率も良好である。しかしな
がら、以上説明する公知の材料は、何れも1000℃で作動
する固体酸化物型燃料電池のセパレータとして良好な特
性を得ることを目的に開発されたものであり、最近の固
体酸化物型燃料電池の作動温度である700〜950℃程度で
の特性は何ら考慮されていない。本発明の目的は、700
〜950℃程度において良好な電気伝導性を有する酸化被
膜を形成するとともに、長時間の使用においても良好な
耐酸化性、特に耐剥離性を有し、かつ電解質との熱膨張
差が小さい安価な固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼
を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は種々検討の結
果、まず対象とする金属材料をフェライト系とした。こ
の理由の第一は、電解質である安定化ジルコニアの常温
から約750℃までの熱膨張係数が約11×10-6/℃に対し、
通常のオーステナイト系の金属材料では約16×10-6/℃
以上であり、両者の熱膨張差が大きいため長時間使用中
の安定性に問題があると考えたためである。第二の理由
は一般にオーステナイト系は高価なNiを含むため高価で
あることに対し、フェライト系はFeをベースとしNiを含
まないか、または含んでも少量であるため安価であるこ
とである。
【0011】次に本発明者は、形成される酸化被膜の電
気伝導度について種々検討した。保護性を有する酸化被
膜の代表としてはAlの酸化物とCrの酸化物が知られてい
る。700〜950℃付近の高温になると一般にはAl2O3の方
が保護作用が大きく有利であるが、Al2O3被膜形成材の
電気抵抗を測定してみると非常に大きく、セパレータと
しては使用できないことが分かった。一方、Cr2O3被膜
形成材の電気抵抗は、十分小さくセパレータに使用可能
であることが分かった。そこで本発明においては表面に
Cr系酸化物を主体とする酸化被膜を形成するフェライト
系金属材料、すなわちFe-Cr系を基本とした。
【0012】次に、長時間使用する場合に問題となる耐
酸化性であるが、前述のように700〜950℃付近において
は通常Cr系酸化被膜の耐酸化性はAl系酸化被膜より劣
る。また、Cr系酸化被膜を主体とする場合でもNiベース
の合金(例えばJIS NCF600に代表されるNi-Cr合金)よ
りもFeベースの合金(例えばSUS430のようなFe-Cr合
金)の方が耐酸化性は劣っている。従って、上記方針に
従ってFe-Cr系を基本とすると耐酸化性を満足させるこ
とは非常に困難になる。
【0013】本発明者はこれを解決するために種々検討
した結果、Fe-Cr系にZr 及びY、希土類元素の一種また
は二種を複合添加し、更に通常のフェライト系ステンレ
ス鋼で規定される量よりもSi、Mn量、特にSi量を低く抑
えることにより、700〜950℃付近において、Cr系の酸化
被膜を主体としながら、良好な耐酸化性、特に耐剥離性
を維持しつつ、良好な酸化皮膜の電気伝導性が得られる
ことを見出した。
【0014】即ち本発明は、質量%にて、C:0.2%以下、S
i:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:1.0%以下(0%を含まず)、C
r:15〜30%、Ni:2%以下(0%を含む)、Al:1%以下(0%を含
む)、Zr:1%以下、及びY:0.5%以下と希土類元素:0.2%以
下の一種または二種を含み、残部Fe及び不可避的不純物
からなる固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
【0015】また本発明は、質量%にて、C:0.08%以下、
Si:0.05%以上0.2%未満、Mn:0.05%以上0.2%未満、Cr:18
〜25%、Ni:0.9%以下(0%を含む)、Al:0.5%以下(0%を含
む)、Zr:0.01〜0.8%、希土類元素:0.005〜0.1%、残部Fe
及び不可避的不純物からなる固体酸化物型燃料電池セパ
レータ用鋼である。
【0016】好ましくは、質量%にて、Mo単独またはMo
とWの二種を、Mo+1/2W≦5.0%を含む固体酸化物型燃料電
池セパレータ用鋼である。更に好ましくは、質量%に
て、Ti、Nb、Hfの一種または二種以上を合計で0.01〜1.
0%含む固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。更
に好ましくは、750℃で1000Hr加熱した後の750℃におけ
る酸化被膜の電気抵抗が80mΩ・cm2以下であり、更に850
℃で50Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が実質的に発
生しない固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
また更に好ましくは、750℃で1000Hr加熱した後の750℃
における酸化被膜の電気抵抗が50mΩ・cm2以下であり、
更に850℃で50Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が実
質的に発生しない固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼
である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に本発明における成分限定理
由について述べる。Cは、炭化物を形成して高温強度を
増大させる作用を有するが、逆に加工性を劣化させまた
Crと結び付くことにより耐酸化性に有効なCr量を減少さ
せる。従って0.2%以下に限定する。望ましくは、0.08%
以下である。
【0018】Siは、セパレータに設けた高温ガスの流路
となる溝の内面に、Cr系酸化層を主体とする被膜の形成
に関与し、長時間の使用においても形成した酸化被膜が
必要以上に成長したり、また剥離現象を起こすのを防ぐ
効果を有する元素である。しかし、過度に添加すると、
長時間使用時にSiO2被膜が成長したり連続的に繋がった
りすることによって、電気伝導度が低下しやすくなる問
題が生じる。そこで、酸化被膜の電気伝導度を高い値に
維持するためには、Siは極力抑える方が望ましい。
【0019】一方、Siの効果の一つには、恐らくCr2O3
酸化被膜と母材の界面付近に薄いSiO 2被膜を形成して耐
酸化性を向上させるものと考えられる。従って、一旦形
成させたCr系の酸化被膜は、長時間使用しても、酸化の
進行が抑制されるため安定した状態で維持することがで
きる。また、上記SiO2被膜は母材とCr2O3被膜の界面に
おいて母材、Cr2O3被膜、SiO2被膜が細かくからみ合っ
た状態を形成しており、これによって母材との密着性を
高め、Cr2O3被膜の剥離を阻止する効果がある。このよ
うな効果は特に1000℃以上の高温において大きく、700
〜950℃では必ずしも大きくないが、上記効果を得るた
めにはSiを少量添加することが必要である。酸化被膜の
電気伝導度を高い値に維持するためには、SiO2被膜が薄
いか、あるいは連続的に繋がっていない状態を保持する
ことが望ましく、そのためには、Si添加による耐酸化性
・耐剥離性への効果は最小限に止め、添加量を極力抑え
ることが望ましい。そこで、Siは0.2%未満(0%を含まず)
とする。望ましいSiの範囲は0.05%以上0.2%未満であ
る。
【0020】Mnは、Fe、Crとともにスピネル型酸化物を
形成する。このスピネル型酸化物は、通常Cr2O3程の保
護作用はないので、耐酸化性そのものに対しては不利に
働く一方で1000℃以上の高温では、適量の添加は逆に耐
剥離性に対して有利に働く。この理由は、恐らくMnを含
むスピネル型酸化物が母材とCr2O3被膜の中間の熱膨張
係数を有するため、緩衝材として働き、Cr2O3被膜の密
着性を高めるためと思われる。しかし、700〜950℃程度
の温度では、必ずしもこの効果は大きくないが、この効
果を得るためにMnは添加することが必要である。一方、
過度に添加すると前述のようにMn含有のスピネル型酸化
物自体の耐酸化性不足のため耐酸化性が悪くなり、酸化
被膜が厚くなることによって電気伝導度が低下する。電
気伝導度を高い値に維持するため、700〜950℃程度の温
度では、Mn添加の耐剥離性への効果は最小限に止め、添
加量を抑えて耐酸化性を向上させるほうが望ましい。従
って、Mnは1%以下(0%を含まず)に限定する。望ましいMn
の範囲は0.05〜0.2%未満である。
【0021】Crは、本発明においてCr2O3被膜の生成に
より、耐酸化性及び電気伝導性を維持するために重要な
元素である。そのため最低限15%を必要とする。しかし
ながら過度の添加は耐酸化性向上にさほど効果がないば
かりか加工性の劣化を招くので15〜30%に限定する。望
ましいCrの範囲は18〜25%である。
【0022】Zr、Y、希土類元素は、少量添加により耐
酸化性及び酸化皮膜の電気伝導度を大幅に改善する効果
を有する。特に少量のSi、Mn添加と組み合わせた場合に
耐酸化性を補う効果が大きく、これは主に酸化被膜の密
着性を改善することによると考えられる。本発明におい
てはCr系酸化被膜のみで耐酸化性を持たせているが、こ
のCr系酸化被膜の密着性を向上させるためにZrを必須で
添加し、更にYと希土類元素の一種または二種を複合添
加することは不可欠である。これによって、酸化皮膜の
密着性がより向上し、長時間加熱後においても酸化被膜
の剥離を防止できる。しかしながら過度の添加は熱間加
工性を劣化させるので、Zrは1%以下、Yは0.5%以下、希
土類元素は0.2%以下に限定する。望ましくは、Zr:0.01
〜0.8%、Y:0.005〜0.3%、希土類元素:0.005〜0.12%であ
る。また、Zr:0.01〜0.8%と希土類元素:0.005〜0.10%の
複合添加においても、上記と同様の効果が得られる。な
お、希土類元素の中では、特にLa添加が望ましく、ま
た、Zrは後述のTi、Nb、Hfと同様、Cと結びついて炭化
物を形成し、C固定により加工性を向上させ、また強度
向上にも寄与するので、非常に有効な元素である。
【0023】Niは、本発明鋼に少量添加することにより
靭性の向上に効果が有る。しかしNiはオーステナイト生
成元素であり、過度の添加はフェライト−オーステナイ
トの二相組織となり、熱膨張係数の増加およびコストア
ップを招く。更に過度のNiの添加は耐酸化性を悪くす
る。従ってNiは2%以下に限定し、無添加(0%)でも良い。
望ましいNiの上限は0.9%以下である。
【0024】Alは、通常脱酸剤として添加される。Alを
多く添加するとAl2O3被膜が形成されるが、前述のよう
にAl2O3被膜は耐酸化性に対しては有効であるが、酸化
被膜の電気抵抗を増大させる。従って、本発明の場合Al
2O3被膜の形成を避けるためにAlは1%以下に限定し、無
添加(0%)でも良い。望ましいAlの上限は0.5%以下であ
る。
【0025】Moは、特に高温強度を増加させる作用を有
するので、高温強度を重視する場合には添加してもよ
い。WもMoと同様の効果を有するが、Moと同じ効果を発
揮するためには質量%でMoの二倍の添加が必要である。W
の多量添加は熱間加工性を害することから、WはMoとの
複合添加を行い、MoとWの総量を低く抑える必要があ
る。このように、過度に添加すると加工性を劣化させる
だけでなく、耐酸化性も低下させるので、Mo+1/2Wで5%
以下に限定する。望ましくは3%以下である。
【0026】Ti、Nb、Hfは、Cと結び付いて炭化物を形
成し、C固定により加工性を向上させる。また強度向上
にも寄与する一方で、700〜950℃付近においてはHfを除
き、余り保護性のない酸化物を形成し耐酸化性を劣化さ
せる。上記のHfは、耐酸化性にも効果を有するため、こ
れらの元素の中では最も好ましいが、高価であるため必
要に応じて選択する。また、Ti、Nb、Hfの元素の過度の
添加は、一次炭化物を多く形成して加工性を劣化させ
る。従って、加工性、強度、耐酸化性を考慮しながら、
Ti、Nb、Hfは一種または二種以上を合計で0.01〜1.0%の
範囲で添加しても良い。望ましくは0.03〜0.6%である。
【0027】なお、以下の元素は下記の範囲内で本発明
鋼に含まれても良い。P≦0.04%、S≦0.03%、Cu≦0.30
%、V≦0.5%、Ta≦0.5%、Mg≦0.02%、Ca≦0.02%、Co≦2%
【0028】次に、本発明の固体酸化物型燃料電池セパ
レータ用鋼では、特に700〜950℃の温度範囲で優れた電
気抵抗を有する。そのため、その優れた電気抵抗を示す
指標として以下のように規定した。電気伝導性を評価す
る評価手段として、750℃で1000Hr加熱した後の750℃に
おける酸化被膜の電気抵抗が80mΩ・cm2以下、望ましく
は50mΩ・cm2以下であることが重要である。また、長期
使用後において、形成されたCr系酸化被膜の酸化が進行
して、表面酸化スケールとなって剥離する現象の評価手
段として、850℃で50Hr加熱後に表面酸化スケールの剥
離が実質的に発生しないことが重要である。なお、「表
面酸化スケールの剥離が実質的に発生しない」とは、ス
ケールの自然剥離がないことを指し、外的衝撃が加わら
ない状態をいう。
【0029】また、本発明鋼は、固体酸化物型燃料電池
セパレータに好適な材料であり、鋼板、鋼帯に加工され
る場合が多いが、その他の固体酸化物型燃料電池用部品
または本発明鋼の特性が生かせるその他用途の部品に、
棒鋼、線材、粉末、粉末焼結体、多孔質体、鋼箔、等の
種々の形状に加工して使用することが可能である。
【0030】以上、説明した本発明の合金組成と、従来
の合金組成とを再度比較してみる。上記特開平6-264193
号に開示された材料は、前述のようにAlを含むために表
面酸化被膜はAl系酸化物を主体とするため電気伝導度が
十分でなく、更にオーステナイト系の材料であるために
熱膨張係数が大きいという問題を有する。また、特開平
7-166301号及び特開平7-145454号に開示された材料は、
Fe-Cr系にLa等を含み電気伝導度は良好であるが、Si、M
nが添加されていないかあるいは制御されていないため
に長時間使用後の耐酸化性がまだ不十分である。更に特
開平7-145454号に開示された材料は3〜20%のCoを含む
が、本発明においてはCoの添加はNiと同様むしろ耐酸化
性を悪くする。
【0031】また、特開平8-35042号に開示された材料
は、Y、希土類元素(REM)、Zr等を含まないため、耐酸化
性および酸化皮膜の電気伝導度が不十分である。特開平
8-277441号に開示された材料は、熱膨張係数がジルコニ
アに近いが、Si、Mnが添加されておらず、W、Bを多く含
むため、耐酸化性及び酸化皮膜の電気伝導度が不十分で
ある。特開平9-157801号及び特開平10-280103号に開示
された材料は、Si、Mn、Y、希土類元素(REM)、Zr等を含
み、耐酸化性、酸化皮膜の電気伝導度が良好であると考
えられるが、耐酸化性、酸化皮膜の電気伝導度に大きな
効果をもたらすSi、Mnの添加量上限に対する検討が不十
分で、耐酸化性、酸化皮膜の電気伝導度に悪影響となる
Si、Mnの過度の添加となっている可能性がある。また、
1000〜1100℃と、かなり高温の酸化及び酸化皮膜の電気
伝導度を向上させているものの、700〜950℃の耐酸化性
及び酸化皮膜の電気伝導度が考慮されていないため、70
0〜950℃では安定した特性が得られない可能性があり、
何れの公知合金ともに、運転温度が700〜950℃で用いる
に最適な合金組成でないことが分かる。
【0032】
【実施例】本発明鋼及び比較鋼を真空誘導炉にて溶製し
10kgのインゴットを作製した。その後、1100℃に加熱し
て30mm角の棒材に鍛伸し、焼鈍を行った。表1に本発明
鋼No.1〜10、比較合金No.21〜28の化学組成を示す。な
お表1において、比較鋼No.28はJIS NCF600として知ら
れているオーステナイト系合金である。
【0033】
【表1】
【0034】これらの素材から試験片を切り出し各種試
験を行った。まず、直径10mm、長さ20mmの円柱状試験片
を用いて、大気中750℃で1000Hrの加熱処理を行った
後、表面酸化スケールの剥離量を測定した。またW10mm
×L10mm×T3mmの板状試料を用いて、大気中750℃で1000
Hr加熱を行って表面に酸化被膜を形成させた後、750℃
における電気抵抗を測定した。なお電気抵抗は面積抵抗
(mΩ・cm2)で表した。また750℃で1000Hr加熱後に酸化ス
ケールの剥離が見られなかった試料については、更に加
速試験として850℃で50Hr加熱を行った後の酸化スケー
ルの剥離量を調べた。また、30℃から750℃までの平均
熱膨張係数を測定した。これらの試験結果をまとめて表
2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】表2より本発明鋼は大気中750℃×1000Hr
及び850℃×50Hr加熱後のスケールの剥離は全く観察さ
れない。また、本発明鋼は、大気中750℃で1000Hr加熱
を行って表面に酸化被膜を形成させた後に750℃におい
て測定した電気抵抗の値は十分小さい。これは、主に表
面に薄い緻密なCr2O3被膜を形成しているためと考えら
れる。更に、本発明鋼は、30〜750℃までの平均熱膨張
係数が約11×10-6/℃台と小さく、固体電解質である安
定化ジルコニアに近い。
【0037】一方、比較鋼No.21はSi量が多いため、お
そらく厚いSiO2被膜が形成されていると思われ、電気抵
抗の値が高い。比較鋼No.22は、Mn量が多いため、耐酸
化性が低くスケールの剥離が観察される。比較鋼No.23
はCr量が多いため、750℃ではスケール剥離が観察され
ないが、850℃では少量のスケール剥離が観察される。
また比較鋼No.24はCr量が少なく、耐酸化性が不十分で
あり、スケールの剥離が観察される。比較鋼No.25は、A
lを3%以上含むため、Al2O3被膜を形成し本発明鋼よりは
るかに大きい電気抵抗値を示している。比較鋼No.26、2
7は、ZrとY、希土類元素の複合添加がなされてないた
め、Zr、Y、希土類元素の耐酸化性の効果が十分発揮で
きず、スケールの剥離が観察され、また電気抵抗も高く
なっている。また、比較鋼No.28は、酸化スケール剥離
も観察されず、電気抵抗も低かったが、オーステナイト
系Ni基合金であるため、熱膨張係数が非常に大きくなっ
た。
【0038】
【発明の効果】以上述べたように本発明鋼を固体酸化物
型燃料電池のセパレータに用いることにより、700〜950
℃付近において良好な電気伝導性を有する酸化被膜を形
成すると共に、長時間の使用においても良好な耐酸化
性、特に耐剥離性を有し、かつ電解質との熱膨張差が小
さく、燃料電池の低コスト化および高性能化を図ること
ができることから、比較的低温の700〜950℃程度で作動
する固体酸化物型燃料電池の実用化、高効率化、大型化
に大きく寄与できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H026 AA06 BB01 EE08 HH05 HH06 HH08 HH10

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%にて、C:0.2%以下、Si:0.2%未満(0
    %を含まず)、Mn:1.0%以下(0%を含まず)、Cr:15〜30%、N
    i:2%以下(0%を含む)、Al:1%以下(0%を含む)、Zr:1%以
    下、及びY:0.5%以下と希土類元素:0.2%以下の一種また
    は二種を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなること
    を特徴とする固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  2. 【請求項2】 質量%にて、C:0.08%以下、Si:0.05%以上
    0.2%未満、Mn:0.05%以上0.2%未満、Cr:18〜25%、Ni:0.9
    %以下(0%を含む)、Al:0.5%以下(0%を含む)、Zr:0.01〜
    0.8%、希土類元素:0.005〜0.1%、残部Fe及び不可避的不
    純物からなることを特徴とする固体酸化物型燃料電池セ
    パレータ用鋼。
  3. 【請求項3】 質量%にて、Mo単独またはMoとWの二種
    を、Mo+1/2W≦5.0%を含むことを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  4. 【請求項4】 質量%にて、Ti、Nb、Hfの一種または二
    種以上を合計で0.01〜1.0%含むことを特徴とする請求項
    1乃至3の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレ
    ータ用鋼。
  5. 【請求項5】 750℃で1000Hr加熱した後の750℃におけ
    る酸化被膜の電気抵抗が80mΩ・cm2以下であり、更に850
    ℃で50Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が実質的に発
    生しないことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記
    載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  6. 【請求項6】 750℃で1000Hr加熱した後の750℃におけ
    る酸化被膜の電気抵抗が50mΩ・cm2以下であり、更に850
    ℃で50Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が実質的に発
    生しないことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記
    載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
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