JP2003103643A - 複合材製中空体の製造方法 - Google Patents

複合材製中空体の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複合材製中空体の製造方法において、製造効
率を格段に向上させるとともに、材料の劣化を防止して
製品の品質を格段に向上させる。 【解決手段】 低融点合金で所要形状の中子を製作し、
熱硬化性樹脂を母材とした繊維強化樹脂複合材50を中
子に積層し、積層された繊維強化樹脂複合材50を加熱
して一次硬化させる。次いで、昇温加熱して中子を溶融
させて除去する。続いて、さらに昇温加熱して繊維強化
樹脂複合材50を硬化させて、複合材製中空体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、複合材製中空体の
製造方法に関し、特に、溶出可能な中子を用いた複合材
製中空体の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、カーボン繊維やガラス繊維などの
強化繊維に、母材であるエポキシ樹脂やポリエステル等
の熱硬化性樹脂を含浸させた繊維強化樹脂複合材が開発
され、実用化されている。この繊維強化樹脂複合材を使
用すると、軽量で高強度な構造体を得ることができるた
め、車両搭載用のエアインテークマニホールド、S字
管、U字管、燃料タンクなどの各種の薄肉閉断面形状を
有する構造体(以下、「中空体」という)の製造に有効
に用いられている。 【0003】繊維強化樹脂複合材で前記した中空体を製
造する際には、以下のような問題があった。すなわち、
中空体が、例えば直円筒などの単純形状を呈するもので
あれば、フィラメントワインディング法などで容易に製
造することができるが、中空体が複雑な閉断面形状を呈
するものである場合には、本体部と蓋体部とを別々に調
製してこれらを接合するなどの煩雑な手順を経る必要が
あり、製造に手間がかかっていた。 【0004】前記した問題を解決するために、低融点合
金で所要形状の中子を調製し、この中子に熱硬化性樹脂
を母材とした繊維強化樹脂複合材を積層し、この繊維強
化樹脂複合材を加熱して硬化させた後、前記した中子を
加熱して溶融させて除去することにより、複合材製の中
空体を製造するという方法が提案されている(特開平6
−106632号公報参照)。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、前記した方法
によると、繊維強化樹脂複合材を加熱して硬化させた後
に、あらためて中子を加熱して溶融させる工程を設ける
必要があるため、製造効率が低下する。また、中子を加
熱して溶融させる際に、繊維強化樹脂複合材の母材であ
る熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも高い温度で加熱
する必要があるため、繊維強化樹脂複合材が劣化し、製
品の品質が低下するおそれがある。 【0006】本発明の課題は、複合材製中空体の製造方
法において、製造効率を格段に向上させるとともに、繊
維強化樹脂複合材の劣化を防止して製品の品質を格段に
向上させることである。 【0007】 【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに、請求項1記載の複合材製中空体の製造方法は、例
えば図1ないし図8に示したように、低融点合金で所要
形状の中子を製作する中子製作工程と、熱硬化性樹脂を
母材とした繊維強化樹脂複合材を前記中子に積層する積
層工程と、積層された前記繊維強化樹脂複合材を加熱し
て一次硬化させる準硬化工程と、前記準硬化工程を経た
後に昇温加熱して前記中子を溶融させて除去する中子溶
出工程と、前記中子溶出工程を経た後に昇温加熱して前
記繊維強化樹脂複合材を硬化させる本硬化工程とを備え
ることを特徴とする。 【0008】請求項1記載の発明によれば、熱硬化性樹
脂を母材とした繊維強化樹脂複合材を加熱して一次硬化
させる工程と、この工程を経た後に昇温加熱して低融点
合金製の中子を溶融させて除去する工程と、この工程を
経た後に昇温加熱して繊維強化樹脂複合材を硬化させる
工程とを備えるため、繊維強化樹脂複合材を一次硬化さ
せてから硬化させるまでの間に、低融点合金製の中子を
溶融・除去することができる。従って、繊維強化樹脂複
合材を加熱して硬化させた後に、あらためて中子を加熱
して溶融させる工程を設ける必要がない。この結果、製
造効率を格段に向上させることができる。 【0009】また、請求項1記載の発明によれば、熱硬
化性樹脂を母材とした繊維強化樹脂複合材を加熱して一
次硬化させる工程と、この工程を経た後に昇温加熱して
低融点合金製の中子を溶融させて除去する工程と、この
工程を経た後に昇温加熱して繊維強化樹脂複合材を硬化
させる工程とを備えるため、繊維強化樹脂複合材を一次
硬化させてから硬化させるまでの間に、低融点合金製の
中子を溶融・除去することができる。従って、繊維強化
樹脂複合材を硬化させる温度よりも高い温度で加熱する
必要がない。この結果、繊維強化樹脂複合材の劣化を防
止することができ、製品の品質を格段に向上させること
ができる。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る複合材製中空
体の製造方法を、図面に基づいて詳細に説明する。 【0011】まず、低融点合金で、円筒体10を調製す
る(円筒体調製工程、図1参照)。この円筒体10は、
後述する回転軸取付工程および切削工程を経て、所要形
状の中子40とされるものである。この円筒体10から
製作される中子40は、後述する積層工程でその外表面
に繊維強化樹脂複合材のプリプレグ50を積層させる中
子治具としての機能を果たすとともに、後述する中子溶
出工程で外部に除去されて、製品内部に中空部を形成す
るように機能する。 【0012】円筒体10の材料となる低融点合金の融点
は、プリプレグ50を硬化成形する温度よりも低く設定
されている。これは、プリプレグ50を準硬化工程にお
いて一次硬化させた後であって本硬化工程において硬化
成形する前に、この円筒体10から調製される中子40
を溶融させて除去することにより、製品に中空部を形成
するためである。 【0013】円筒体10の材料となる低融点合金として
は、Sn、Bi、Pb、In、Cd、Ag、Sb、Zn
などを適宜選択して混合させた合金を挙げることができ
る。本実施の形態では、低融点合金として低温系ハンダ
143(千住金属社製、融点143℃)を採用してい
る。 【0014】次いで、円筒体10に鋼製の回転軸20を
取り付ける(回転軸取付工程、図2参照)。本実施の形
態では、図2に示すように、円筒体10の中心軸の両端
に位置する面(端面)11の中心位置から回転軸20の
ネジ部21を円筒体10内部へと螺挿することによっ
て、回転軸20を円筒体10に固定している。 【0015】次いで、円筒体10の表面を切歯30で切
削する(切削工程、図3参照)。本実施の形態において
は、円筒体10の両端部に取り付けた回転軸20を(図
示していない)治具で支持し、この回転軸20を中心に
円筒体10を回転させながら切歯30でこの円筒体10
の表面を切削して、図3に示すように瓢箪形状の中子4
0を製作した。以上の円筒体調製工程、回転軸取付工程
および切削工程によって、所要形状の中子40が製作さ
れる(中子製作工程)。 【0016】次いで、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸さ
せたテープ状のプリプレグ50を、中子40に積層する
(積層工程、図4参照)。プリプレグ50は、後述する
準硬化工程における加熱により一次硬化し、さらに昇温
させた本硬化工程における加熱により硬化成形されるも
のである。 【0017】なお、本発明において「一次硬化」とは、
プリプレグ50が完全には硬化していない状態ではある
が、後述する中子溶出工程において低融点合金製の中子
40を溶融させて除去する際にプリプレグ50の形状が
崩れない程度の硬化状態を意味する。また、「硬化」と
は、プリプレグ50が完全に硬化した状態を意味する。 【0018】プリプレグ50を構成する強化繊維として
は、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミ
ナ繊維、ポリエチレン繊維、シリコンカーバイト繊維、
ボロン繊維などを挙げることができる。また、プリプレ
グ50の母材となる熱硬化性樹脂としては、前記したよ
うに準硬化工程で一次硬化し、さらに本硬化工程で硬化
するものであれば特に限定されるものではなく、エポキ
シ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビ
スマレイド樹脂などを挙げることができる。 【0019】次いで、中子40にプリプレグ50を積層
した積層体70から回転軸20を取り外し、加熱炉また
はオートクレーブ80内に搬入して加熱し、プリプレグ
50を一次硬化させる(準硬化工程、図5参照)。積層
体70をオートクレーブ80内に配置する際には、ステ
ンレス製の容器90の上に金網100を配置し、この上
に積層体70を配置する(図5参照)。これら容器90
および金網100は、後述する中子溶出工程で使用する
ものである。本実施の形態においては、一次硬化温度が
60℃であるプリプレグ50を一次硬化させるために、
オートクレーブ80内の温度を60℃に設定する。 【0020】この準硬化工程を経た後、オートクレーブ
80内の温度を上昇させ、中子40を加熱して溶融させ
て、回転軸20を取り外したことによって積層体70の
下方に設けられた(図示していない)貫通孔から、溶融
させた低融点合金41を除去する(中子溶出工程、図6
参照)。この際、加熱によって溶融した低融点合金41
は、金網100を通過して容器90の中に溜まることと
なる(図6参照)。 【0021】この低融点合金製の中子40の溶出によ
り、積層体70の内部には中空部71が形成されること
となる(図8参照)。本実施の形態においては、低融点
合金製の中子40の融点が143℃であるため、オート
クレーブ80内の温度を150℃〜160℃程度に設定
する。 【0022】なお、前記した準硬化工程によってプリプ
レグ50が一次硬化しているため、この中子溶出工程に
おいて中子40を溶融・除去する際に、積層体70の形
状が崩れることがない。 【0023】この中子溶出工程を経た後、さらに雰囲気
温度を上昇させ、プリプレグ50を加熱して硬化させる
(本硬化工程、図7参照)。本実施の形態においては、
本実施の形態においては、硬化温度が177℃であるプ
リプレグ50を硬化させるために、オートクレーブ80
内の温度を177℃程度に設定する。この後、オートク
レーブ80内から積層体70を取り出して、中空部71
を有する積層体70(複合材製中空体)を得る(図8参
照)。 【0024】本実施の形態に係る複合材製中空体の製造
方法によれば、プリプレグ50を加熱して一次硬化させ
た後に、昇温加熱して低融点合金製の中子40を溶融さ
せ、さらに昇温加熱してプリプレグ50を硬化させるた
め、プリプレグ50を一次硬化させてから硬化させるま
での間に、低融点合金製の中子40を溶融・除去するこ
とができる。従って、プリプレグ50を加熱して硬化さ
せた後に、あらためて中子40を加熱して溶融させる工
程を設ける必要がない。この結果、製造効率を格段に向
上させることができる。 【0025】また、本実施の形態に係る複合材製中空体
の製造方法によれば、プリプレグ50を加熱して一次硬
化させた後に、昇温加熱して低融点合金製の中子40を
溶融させ、さらに昇温加熱してプリプレグ50を硬化さ
せるため、プリプレグ50を一次硬化させてから硬化さ
せるまでの間に、低融点合金製の中子40を溶融・除去
することができる。従って、プリプレグ50を硬化させ
る温度よりも高い温度で加熱する必要がない。この結
果、プリプレグ50の劣化を防止することができ、製品
の品質を格段に向上させることができる。 【0026】なお、本実施の形態では、一次硬化温度が
60℃で硬化温度が177℃のプリプレグ50を採用し
たが、これに限られるものではなく、例えば、一次硬化
温度が120℃で硬化温度が180℃のエポキシ樹脂を
母材としたプリプレグを採用することもできる。この場
合には、プリプレグを120℃で一次硬化させた後に昇
温して150℃程度で維持することによって、低温系ハ
ンダ143で調製した中子40を溶融させて排出するこ
とができ、この後さらに昇温して180℃で硬化させる
ことができる。 【0027】また、本実施の形態では、中子40を溶融
させる工程を設けているが、この工程を省略することも
できる。すなわち、(前記したエポキシ樹脂を母材とし
たプリプレグの例で示すと)プリプレグを一次硬化させ
た後、180℃まで昇温してこの温度を維持することに
よって、中子40の溶融・排出とプリプレグ50の硬化
成形とを同時に行うことができる。この場合、本硬化工
程において中子40の溶融排出がなされることになる。 【0028】 【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、繊維強化
樹脂複合材を加熱して硬化させた後に、あらためて中子
を加熱して溶融させる工程を設ける必要がない。この結
果、製造効率を格段に向上させることができる。 【0029】また、請求項1記載の発明によれば、繊維
強化樹脂複合材を構成する熱硬化性樹脂を硬化させる温
度よりも高い温度で加熱する必要がない。この結果、繊
維強化樹脂複合材の劣化を防止することができ、製品の
品質を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法における円筒体調製工程を説明するための斜視図
である。 【図2】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法における回転軸取付工程を説明するための斜視図
である。 【図3】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法における切削工程を説明するための斜視図であ
る。 【図4】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法における積層工程を説明するための斜視図であ
る。 【図5】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法における準硬化工程を説明するための正面図であ
る。 【図6】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法における中子溶出工程を説明するための正面図で
ある。 【図7】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法における本硬化工程を説明するための正面図であ
る。 【図8】本発明の実施の形態に係る複合材製中空体の製
造方法によって製造された複合材製中空体を示す一部切
り欠き断面図である。 【符号の説明】 10 円筒体 11 端面 20 回転軸 21 ネジ部 30 切歯 40 中子 41 溶融させた低融点合金 50 プリプレグ 60 ワインディングヘッド 70 積層体 71 中空部 80 オートクレーブ 90 ステンレス製の容器 100 金網

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】低融点合金で所要形状の中子を製作する中
    子製作工程と、 熱硬化性樹脂を母材とした繊維強化樹脂複合材を前記中
    子に積層する積層工程と、 積層された前記繊維強化樹脂複合材を加熱して一次硬化
    させる準硬化工程と、 前記準硬化工程を経た後に昇温加熱して前記中子を溶融
    させて除去する中子溶出工程と、 前記中子溶出工程を経た後に昇温加熱して前記繊維強化
    樹脂複合材を硬化させる本硬化工程とを備えることを特
    徴とする複合材製中空体の製造方法。
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