JP2003096625A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維の製造方法

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JP2003096625A JP2002186142A JP2002186142A JP2003096625A JP 2003096625 A JP2003096625 A JP 2003096625A JP 2002186142 A JP2002186142 A JP 2002186142A JP 2002186142 A JP2002186142 A JP 2002186142A JP 2003096625 A JP2003096625 A JP 2003096625A
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carbon fiber
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Takeshi Ito
壮史 伊藤
Makoto Kobayashi
真 木林
Shigeru Takeda
茂 武田
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】横型炭素化炉を用いた炭素繊維の製造方法
において、耐炎化糸条の入側と出側の炉内圧力を管理す
ることにより、排ガスを効果的に排出し、炭素繊維の品
質の安定を図り、排ガス漏出が防止できるようにする。 【解決手段】耐炎化糸条の出側から入側に向かって炉内
ガスを流し、炉内排ガスを排ガス吸引口から排出するよ
うにした横型炭素化炉を用い、糸条の出側および入側の
炉内圧力を大気圧に対してプラス側に維持するととも
に、糸条の出側および入側から排ガス吸引口に至る平均
圧力勾配が0.25Pa/m以上になるようにして糸条
を炭素化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素繊維の製造方
法に関する。さらに詳しくは、炭素繊維の製造における
排ガス(分解ガス)、特にタール状物による炭素繊維の
品質低下が少なく、毛羽、糸切れ、融着等の欠点の著し
く少ない高品質炭素繊維を製造すること、さらには、最
低限の不活性ガス量で酸素漏入、排ガスの炉外への漏出
を防止でき、低コストかつ安全な炭素繊維の製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は、その卓越した力学的性質、
たとえば、比強度や比弾性率等の力学的特性、その他優
れた化学的、電気的性質により、航空、宇宙用途からゴ
ルフシャフト、釣竿、テニスラケット等の広い分野に使
用されており、さらに船舶、自動車等の分野にも使用さ
れようとしている。その需要の拡大に伴い、より一層の
品質の向上と同時に製造コストの低減が望まれている。
【0003】従来、炭素繊維は、よく知られているよう
にセルロース、ポリアクリロニトリル、ピッチ等の有機
繊維を不活性ガス中、高温で焼成することによって製造
している。なかでも、アクリル系繊維を焼成して得られ
る炭素繊維は、品質に優れ、均一な製品を安定して製造
し得るため、広く工業的に生産されている。
【0004】このアクリル系繊維を用いた炭素繊維の製
造プロセスは、一般にアクリル繊維をあらかじめ酸化性
雰囲気中で加熱し、アクリル繊維を構成する高分子鎖を
酸化するとともに、ニトリル基を環化させ、マッチやガ
スバーナーの炎にさらしても燃焼しない熱的に安定な構
造を有する繊維に転換せしむる耐炎化もしくは酸化工程
と、1,000℃以上の不活性雰囲気中で熱処理する炭
素化工程とで構成されている。
【0005】ところで、上記の炭素化工程では、大気の
炭素化炉内への漏入を防止するとともに被処理繊維およ
び炉の酸化を防止し、また、炉内で発生した有害な排ガ
スを炉外に漏出させないために炉の前後にシール機構を
設けることが行なわれている。シール機構としては、被
処理繊維に機械的損傷を与えないようにするため、被処
理繊維を非接触でシールする方法が行なわれている。こ
の非接触式シールの方法としては、ラビリンス機構を備
えたものや、液体でシールする方法がある。
【0006】また、この種の炭素化炉には、縦型と横型
の炉がある。縦型炉の場合、炉下部からの外気の混入を
防ぐためには多量のシールガスが必要になるため、液体
シール方式が多く用いられている。そのため、縦型炉の
場合は、使用するシールガス量を横型炉に比較して少な
くすることができるが、液体を乾燥するための設備が必
要であるというデメリットがあり、被処理繊維を通した
りトラブルの処置を行なう場合等、操業性、炉のメンテ
ナンス性を考慮すると横型炉が一般的に有利であるとい
われている。
【0007】一方、横型炉の場合には、前記のようなシ
ール機構を炉の入口部および出口部に設け、不活性ガス
でシールする方法が行なわれているが、シール性を高め
るためには多量の不活性ガスを消費し、その結果、炭素
繊維の製造コストの高騰を引き起こす。
【0008】また、炭素化工程では、有害なシアン化ガ
スのほかに多量の熱分解生成物、特にタール状物が含有
され、このタール状物による炭化のトラブル防止が炭素
繊維製造において極めて重要である。たとえば、炉内に
タール状物が付着堆積し、スケール化するのを防止する
ことが難しく、堆積、スケール化したタール状物が炉内
の不活性ガスの円滑な流れを阻害し、炉内圧の変動を招
いたり、走行する糸条が損傷され、糸切れや毛羽発生の
原因になる。また、走行糸条自体がタール状物に汚染さ
れ、結果として高品質、高性能の炭素繊維を安定して製
造することが難しいという問題がある。
【0009】炭素化炉において、酸素を含む外気の漏入
は、酸化により炉の寿命を短縮させるだけでなく、得ら
れる炭素繊維の品質を著しく低下させる。また、炉内で
発生するシアン化ガスは有毒であり、炉外に漏出すると
作業者に危険を及ぼす可能性がある。そこで、酸素漏
入、シアン化ガス漏出防止のため不活性ガスでのシール
が行われるが、横型炉では入口、出口両方シールする必
要があるため、製造コストが高騰する。また、シアン化
ガスとともに発生するタール状物は、操業性と品質に悪
影響を及ぼす。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、横型
炭素化炉を用いて炭素繊維を製造する際に、被処理繊維
である糸条の入側と出側の内圧を管理することにより、
排ガスを効果的に排出せしめ、炭素繊維の品質の安定
と、排ガスの漏出を防止することを可能ならしめること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、糸条の出側から入側に向かって炉内ガスを
流し、炉内排ガスを排ガス吸引口から排出するようにし
た横型炭素化炉を用い、糸条の出側および入側の炉内圧
力を大気圧に対してプラス側に維持するとともに、糸条
の出側および入側から排ガス吸引口に至る平均圧力勾配
が0.25Pa/m以上になるようにして糸条を炭素化
する炭素繊維の製造方法を特徴とするものである。好ま
しくは、糸条の入側および出側から炉内排ガス吸引口に
至る炉内圧力を連続的に低下させる。
【0012】また、本発明は、上記目的を達成するため
に、糸条の出側から入側に向かって炉内ガスを流すよう
にした横型炭素化炉を用い、糸条の出側の炉内圧力を糸
条の入側の炉内圧力に対して2Pa以上プラス側に維持
するとともに、糸条の入側の炉内圧力を大気圧に対して
プラス側に維持して糸条を炭素化することを特徴とする
炭素繊維の製造方法を提供する。この場合、糸条の入側
の炉内圧力を、大気圧に対して0.5Pa以上プラス側
に維持して糸条を炭素化するのが好ましい。また、好ま
しくは、炉の両端から不活性ガスを供給する。さらに、
少なくとも700℃の不活性雰囲気中で糸条を熱処理す
るのが好ましい。また、好ましくは、糸条の入側で、か
つ、糸条の走行方向に対して不活性ガス供給孔よりも下
流側で排ガスを吸引排気する。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、本発明で用いる横型炭素
化炉の概略縦断面図であり、炭素繊維の製造工程を説明
するために例示される。図1において、被処理繊維であ
る糸条3は、横型炭素化炉1の糸条の入側5から横型炭
素化炉1に導入され、横型炭素化炉1内で必要な炭素化
が行なわれた後、糸条の出側6から取り出される。横型
炭素化炉1の糸条の入側5と出側6には、それぞれ不活
性ガス供給孔2、2’を備えたシール機構7、7’が設
けられており、不活性ガスの供給により、横型炭素化炉
1内の雰囲気をシールしている。糸条の入側5において
は、糸条の走行方向に関して不活性ガス供給孔2よりも
下流側に排ガスを吸引排気する排ガス抜き出し孔4が設
けられており、これにより炉内で発生した排ガス(分解
ガス)を抜き出し、必要に応じ炉内圧力を調整すること
ができる。
【0014】本発明の炭素化工程で用いる糸条は、好適
には耐炎化または酸化処理された糸条である。
【0015】耐炎化または酸化処理される繊維、すなわ
ち前駆体繊維としては、アクリル系繊維が好ましい。ア
クリル系前駆体繊維の成分としては、少なくとも95モ
ル%以上、好ましくは98モル%以上のアクリロニトリ
ルと、5モル%以下、好ましくは2モル%以下の、耐炎
化を促進し、かつ、アクリロニトリルと共重合性のある
耐炎化促進成分を共重合したものを好適に使用すること
ができる。
【0016】耐炎化促進成分としては、ビニル基含有化
合物(以下、ビニル系モノマーという)からなる共重合
体が好適に使用される。ビニル系モノマーの具体例とし
ては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等がある
が、これらに限定されるものではない。また、一部また
は全量をアンモニア中和したアクリル酸、メタクリル酸
や、イタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体は、
耐炎化促進成分としてより好適に使用できる。
【0017】アクリル系前駆体繊維の紡糸原液は、溶液
重合法、懸濁重合法、乳化重合法等で得ることができ
る。紡糸原液の溶媒としては、有機または無機の溶媒を
使用することができる。特に、有機溶媒を使用すること
が好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメ
チルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等、特にジメ
チルスルホキシドが好ましく使用できる。
【0018】紡糸方法は、乾湿式紡糸法や湿式紡糸法が
好ましく採用される。なかでも、乾湿式紡糸法はより平
滑な表面を得やすく、高物性な炭素繊維が得られるため
好ましく用いられる。
【0019】口金から直接または間接に凝固浴中に紡糸
原液を吐出し、凝固糸を得る。凝固浴液は、紡糸原液に
使用する溶媒と凝固促進成分とから構成することが簡便
性の点から好ましく、凝固促進成分としては水を用いる
ことが好ましい。凝固浴中の紡糸溶媒と凝固促進成分の
割合や凝固浴液温度は、得られる凝固糸の緻密性、表面
平滑性および可紡性等を考慮して適宜選択する。
【0020】得られる凝固糸は、好適には20〜98℃
に温調された単数または複数の水浴中で水洗、延伸され
る。延伸倍率は、糸切れや単繊維間の接着が生じない範
囲で適宜設定することができるが、表面がより平滑な前
駆体繊維を得るためには、5倍以下が好ましく、4倍以
下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。また、
得られる前駆体繊維の緻密性を向上させる観点から、延
伸浴の最高温度は、50℃以上とすることが好ましく、
70℃以上がより好ましい。
【0021】水洗、延伸された後の水膨潤状態の糸条
に、シリコーン油等の油剤を付与することが好ましい。
付与方法は、糸条内部まで均一に付与できることを考慮
して適宜選択すればよいが、具体的には、糸条の油剤浴
中への浸漬、走行糸条への噴霧および滴下等の手段が採
用される。
【0022】シリコーン油等の油剤の付着量は、繊維の
乾燥重量に対する純分の割合が0.1〜5%になるよう
にするのが好ましく、0.3〜3%がより好ましく、
0.5〜2%がさらに好ましい。付着量が0.1%を下
回ると、単繊維同士の融着が生じやすくなり、得られる
炭素繊維の引張強度が低下することがある。油剤を付与
された糸条は、できるだけ速やかに乾燥される。乾燥の
方法は、特に限定されないが、加熱された複数のローラ
ーに直接接触させる方法が好ましく用いられる。乾燥温
度は、高いほどシリコーン油剤の架橋反応を促進し、ま
た、生産性の観点からも好ましく、単繊維間の融着が生
じない範囲で高く設定することができる。具体的には、
150℃以上の温度が好ましく、180℃以上がより好
ましい。通常、乾燥温度の上限は200℃程度である。
乾燥時間は、膨潤糸条が乾燥するのに十分な時間とす
る。また、糸条への加熱状態が均一になるように、糸条
をできるだけ拡幅した状態でローラーに接触させること
が好ましい。
【0023】乾燥された糸条は、得られる前駆体繊維の
緻密性や生産性の観点から、好ましくは、さらに加圧ス
チーム中または乾熱下で後延伸される。後延伸時のスチ
ーム圧力または温度や後延伸倍率は、糸切れ、毛羽発生
のない範囲で適宜選択する。
【0024】前駆体繊維の単糸繊度は、0.1〜2dt
exであることが好ましく、0.3〜1.5dtexで
あるのがより好ましく、0.5〜1.2dtexである
のがさらに好ましい。繊度は、小さいほど得られる炭素
繊維の引張強度や弾性率の点で有利であるが、生産性は
低下するため、性能とコストのバランスを勘案し選択す
ることが好ましい。
【0025】また、耐炎化温度は、好ましくは200〜
300℃であり、糸条が反応熱の蓄熱によって糸切れが
生じる温度よりも10〜20℃低い温度で耐炎化するこ
とがコスト削減および得られる炭素繊維の性能を高める
観点から好ましい。耐炎化進行度は、後述する方法で測
定される耐炎化糸の炎収縮率を指標とし、70〜90%
の範囲とすることが好ましく、74〜86%がより好ま
しく、76〜84%がさらに好ましい。耐炎化時間は、
生産性および得られる炭素繊維の性能を高める観点か
ら、10〜100分間が好ましく、30〜60分間がよ
り好ましい。この耐炎化時間とは、糸条が耐炎化炉内に
滞留している全時間をいう。この時間が10分を下回る
と、単繊維の焼け斑が発生しやすくなり、引張強度等の
低下を起こすことがある。耐炎化工程での延伸比は、
0.90〜1.05が好ましく、0.91〜1.02が
より好ましく、0.92〜1.00がさらに好ましい。
【0026】耐炎化の後は、さらに予備炭化を行なうこ
とが好ましい。好ましい予備炭化工程の温度は、300
〜800℃である。また、延伸比は0.98〜1.10
であることが好ましく、0.99〜1.05であること
がより好ましく、1.00〜1.02であることがさら
に好ましい。
【0027】好ましい炭化工程の温度は、800〜1,
800℃である。また、その最高温度は、所望する炭素
繊維の要求特性に応じて適宜選択して使用されるが、8
00℃を下回ると、得られる炭素繊維の引張強度、弾性
率が低下することがある。炭化工程の延伸比は、所望す
る炭素繊維の要求特性に応じて、毛羽発生等の品位低下
の生じない範囲で適宜選択するのがよい。また、不活性
ガスとしては、窒素、アルゴンといった炭素と反応性の
低い気体、またはそれらの混合物を用いることができ
る。
【0028】炭素化工程においては、糸条の入側(入側
内圧測定点8側)の炉内圧力および出側(出側内圧測定
点9側)の炉内圧力から炉内排ガス吸引口4に至る平均
圧力勾配が少なくとも0.25Pa/mになるように維
持すること、好ましくは糸条の入側および出側から炉内
排ガス吸引口4に至る炉内圧力を連続的に低下させるこ
と、また、糸条の出側の炉内圧力を入側の炉内圧力より
2Pa以上高く維持することで、炭素化炉の大きさに無
関係に炉内の排ガスを滞留を起こすことなく排出するこ
とができる。糸条の出側と入側の炉内圧力差は、好まし
くは3〜20Paである。
【0029】また、本発明では、炭素化炉の糸条の入
側、出側の炉内圧力を大気圧に対してプラス側に維持す
るのが好ましい。入側の炉内圧力は、大気圧に対し0.
5Pa以上プラス側に維持するのが好ましい。このよう
にすることにより、外気の進入をより確実に防止するこ
とができる。糸条の入側の炉内圧力は、大気圧に対して
より好ましくは1〜10Pa以上プラス側に維持する。
【0030】炉内の圧力は、糸条の入側および出側から
の不活性ガスの流量を100〜600Nl/hr・糸条
とし、排ガスを300〜1,000Nl/hr・糸条の
流量で抜き出すことでコントロールすることが好まし
い。
【0031】本発明では、このようにして糸条の入側、
出側から排ガス吸引口までの圧力差、また糸条の入側と
出側の圧力差を保つことで、炉内ガスの流れを維持する
ことができ、排ガス成分の炉内滞留を抑制することがで
きる。
【0032】本発明では、糸条の入側5の炉内圧力を、
排ガス抜き出し孔4から排ガスを排出することによって
調整することができる。排ガス流量のコントロール方法
として、排ガス流量を測定し、測定値に基づいて排ガス
ラインの弁の開度をコントロールする方法と、炉内の圧
力を測定し、測定値に基づいて排ガスラインの弁の開度
をコントロールする方法がある。前者の方法は、オリフ
ィス等により圧損を検出して算出する方法であるが、オ
リフィスへのタール堆積により不安定になる可能性があ
るので、内圧によるコントロールが好ましい。
【0033】本発明で得られた炭素繊維は、ラケット、
ゴルフシャフト等のスポーツ用途や、航空・宇宙用途、
船舶、自動車等の構造材として有用である。
【0034】
【実施例】(実施例1)アクリル系前駆体糸条(1dt
ex/フィラメント、フィラメント数12,000本)
を最高温度260℃の酸化性雰囲気下で60分加熱処理
して酸化繊維糸条を得た。
【0035】この酸化繊維は、比重1.38、強度3.
5g/dtex、伸度10.0%、水分率8.0%、炎
収縮保持率85%であった。次いで、この酸化繊維糸条
を不活性雰囲気下で最高温度700℃で5分前炭素化処
理した後、図1に示す横型炭素化炉に導入し、最高温度
1,400℃で5分、300℃に加熱した窒素ガスを供
給しながら、焼成処理を施した。その際、横型炭化炉の
糸条の入側内圧を大気圧よりも1Paプラス側にコント
ロールするとともに、糸条の出側内圧を糸条の入側内圧
よりも4Paプラス側に、排ガス吸引口の圧力を0.1
Paになるように排ガスラインの弁の開度をコントロー
ルした。なお、このとき、糸条の入側からの不活性ガス
(窒素ガス)供給量は400Nl/hr・糸条、糸条の
出側からの不活性ガス(窒素ガス)供給量は300Nl
/hr・糸条、排ガス抜き出し量は700Nl/hr・
糸条とした。かくして得られた炭素繊維の品質と炭素化
炉の出入開口部のシアン化ガス濃度を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】酸化繊維の比重:酸化繊維を、オーブン中
にて120℃で2時間乾燥した後、重量W1(g)を測
定し、さらに120℃で1.5時間乾燥した後、比重d
のエタノール中に浸漬し、液中重量W2(g)を測定
し、次式により求めた。
【0038】比重(−)=W1×d/(W1−W2) 酸化繊維の水分率:酸化繊維を、室温下湿度80%雰囲
気中に16時間放置して吸湿させた後、重量W1を測定
し、さらに130℃で2時間乾燥させた後、重量W2
測定し、次式より求めた。
【0039】 水分率(%)=((W1−W2)/W2)×100 酸化繊維の強度・伸度:試長20cmの酸化繊維を、引
張試験機“テンシロン”(UTM−4−200)を用
い、ロードセル200kg、クロスヘッドスピード10
0mm/minの条件で引張切断までの強伸度曲線から
強度、伸度を求めた。 酸化繊維の炎収縮保持率:耐炎化糸束を約40cm採取
し、試長20cmとなるようにマークを付ける。次に、
一端を固定し、他端に3,300dtexあたり10g
の張力をかけ、マークした試長間をブンゼンバーナーで
加熱する。このとき、ブンゼンバーナーの炎の高さは約
15cmとし、炎の上部約1/3の部分を用い、マーク
間を約15秒/20cmの速さで1往復半移動させなが
ら加熱する。その後、マーク間の長さを測定し、これを
Wb(mm)として炎収縮保持率(%)を次式で求め
た。
【0040】 炎収縮保持率(%)=(Wb/200)×100 炉内圧力:糸条の出側6と糸条の入側5の炉内圧力は次
のようにして測定した。すなわち、糸条入側、出側それ
ぞれの糸条とスリットの隙間から内径5mm、長さ1m
の銅管を挿入し、YAMAMOTO ELECTRIC
WORKS社製“MANOSTER”WO81内圧計
を用いて測定した。図1において、糸条の入側内圧測定
点8と糸条の出側内圧測定点9の位置が測定点である。 炭素繊維の引張強度:ユニオン・カーバイト社製、“ベ
ークライト”ERL−4221を1,000g(100
重量部)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンを30g
(3重量部)およびアセトンを40g(4重量部)混合
した樹脂組成物を、測定する炭素繊維に含浸させ、樹脂
含浸ストランドを得た。これを130℃、0.5時間加
熱して硬化物を得た後、樹脂含浸ストランド試験法(J
IS R7601)に準拠して求めた。 シアン化ガス濃度:光明理化学工業(株)製、“北川式
ガス検知管 シアン化水素SB型”を用い、炭素化炉の
糸条入側および出側開口部において、糸条下側10cm
で、かつ糸条入側および出側開口部から10cm離れた
点のシアン化ガス濃度を測定した。 (実施例2〜4)排ガス抜出量、不活性ガス供給量を変
更したほかは実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得
られた炭素繊維の品質、炭素化炉入側および出側開口部
のシアン化ガス濃度を表1に示す。
【0041】また、排ガス抜き出し量を700Nl/h
r・糸条になるように、排ガス流量をオリフィス流量計
で測定、流量コントロールを行なったほかは実施例1と
同様にして、炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の品
質、炭素化炉入側および出側開口部のシアン化ガス濃度
を表1に示す。 (比較例1〜3)排ガス抜出量、不活性ガス供給量を変
更したほかは実施例1と同様にして、炭素繊維を得た。
得られた炭素繊維の品質、炭素化炉入側および出側開口
部のシアン化ガス濃度を表1に示す。
【0042】比較例1〜3においては、出側から入側へ
の炉内ガスが流れにくくなり、排ガス成分が炉内に滞留
し、糸条を汚染したために強度が低下した。また、比較
例3では、排ガス成分が炉外へ漏出したため、シアン化
ガスが検出された。
【0043】
【発明の効果】本発明の炭素繊維の製造方法によれば、
被処理繊維である糸条の入側と出側の内圧を管理するこ
とにより、排ガスを効果的に排出し、炭素繊維の品質の
安定と、排ガスの漏出を防止することを可能ならしめる
ことができる。
【0044】また、炭素繊維製造における排ガス(分解
ガス)、特にタール状物による炭素繊維の品質低下が少
なく、毛羽、糸切れ、融着等の欠点の著しく少ない高品
質炭素繊維の製造、さらには最低限の不活性ガス量で酸
素漏入、排ガスの炉外への漏出を防止し低コストかつ安
全な炭素繊維を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で用いる横型炭素化炉の一形態
を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 :横型炭素化炉 2、2’:不活性ガス供給孔 3 :糸条 4 :排ガス抜出孔 5 :糸条の入側 6 :糸条の出側 7、7’:シール機構 8 :糸条の入側内圧測定点 9 :糸条の出側内圧測定点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L037 CS03 CT11 CT12 CT42 FA01 PA53 PC10 PC11 PS02 PS12

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】糸条の出側から入側に向かって炉内ガスを
    流し、炉内排ガスを排ガス吸引口から排出するようにし
    た横型炭素化炉を用い、糸条の出側および入側の炉内圧
    力を大気圧に対してプラス側に維持するとともに、糸条
    の出側および入側から排ガス吸引口に至る平均圧力勾配
    が0.25Pa/m以上になるようにして糸条を炭素化
    することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】糸条の入側および出側から炉内排ガス吸引
    口に至る炉内圧力を連続的に低下させることを特徴とす
    る請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】糸条の出側から入側に向かって炉内ガスを
    流すようにした横型炭素化炉を用い、糸条の出側の炉内
    圧力を糸条の入側の炉内圧力に対して2Pa以上プラス
    側に維持するとともに、糸条の入側の炉内圧力を大気圧
    に対してプラス側に維持して糸条を炭素化することを特
    徴とする炭素繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】糸条の入側の炉内圧力を大気圧に対して
    0.5Pa以上プラス側に維持して糸条を炭素化するこ
    とを特徴とする請求項3に記載の炭素繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】炉の両端から不活性ガスを供給することを
    特徴とする請求項3または4に記載の炭素繊維の製造方
    法。
  6. 【請求項6】少なくとも700℃の不活性雰囲気中で糸
    条を熱処理することを特徴とする請求項3〜5のいずれ
    かに記載の炭素繊維の製造方法。
  7. 【請求項7】糸条の入側で、かつ、糸条の走行方向に対
    して不活性ガス供給孔よりも下流側で排ガスを吸引排気
    することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の
    炭素繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項1〜7のいずれかに記載の方法によ
    って製造された炭素繊維。
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