JP2003089586A - セラミックス前駆体及びそれを用いる多孔質リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents

セラミックス前駆体及びそれを用いる多孔質リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法

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JP2003089586A JP2001277026A JP2001277026A JP2003089586A JP 2003089586 A JP2003089586 A JP 2003089586A JP 2001277026 A JP2001277026 A JP 2001277026A JP 2001277026 A JP2001277026 A JP 2001277026A JP 2003089586 A JP2003089586 A JP 2003089586A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 取り扱い性及び加工性に優れたセラミックス
前駆体及びそれを用いる多孔質リン酸カルシウム系セラ
ミックス焼結体の製造方法を提供する。 【解決手段】 気孔率が75〜95%の多孔質リン酸カルシ
ウム系セラミックス焼結体は、(1) リン酸カルシウム系
セラミックス粉体と、水溶性高分子化合物と、非イオン
系界面活性剤と、熱可塑性樹脂とを含有するスラリーを
作製し、(2) スラリーを強く撹拌することによって起泡
させ、(3) ゲル化させ、(4) 乾燥後に熱可塑性樹脂を20
0〜300℃で融着させ、(5) 焼結することにより製造す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は細胞及び生体組織の
培養に用いる担体や、骨補填用等の生体親和性を有する
人工生体材料等に有用な多孔質リン酸カルシウム系セラ
ミックス焼結体の前駆体及びこれを用いたセラミックス
焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ハイドロキシアパタイト等のリン酸カル
シウム系セラミックスは生体適合性に優れ、細胞及び生
体組織の培養に用いる担体や、人工歯根や骨補強材等の
生体材料として利用されている。機械的強度の観点から
は、リン酸カルシウム系セラミックスは緻密なほどよい
が、生体親和性の観点からは、多孔質なほど、すなわち
気孔率が高いほど良い。このため、従来から多孔質リン
酸カルシウム系セラミックスを製造する方法として、発
泡剤添加法、熱分解性樹脂ビーズ添加法、スポンジ樹脂
含浸法、水溶性高分子ゲル化法等の種々の方法が提案さ
れている。
【0003】しかしながら、多孔質リン酸カルシウム系
セラミックス焼結前の乾燥体(セラミックス前駆体)は
気孔率が高くなるほど低強度で脆く崩れ易いため、慎重
な取り扱いが必要であり加工も困難になる。一方焼結前
乾燥体の取り扱い性及び加工性を改善する目的でバイン
ダー濃度を高くすると、目的とする高気孔率を得ること
が困難になるなどの問題が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的
は、取り扱い性及び加工性に優れたセラミックス前駆体
及びそれを用いる多孔質リン酸カルシウム系セラミック
ス焼結体の製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決する手段】上記目的に鑑み鋭意研究の結
果、本発明者は、セラミックス前駆体に熱可塑性樹脂を
添加し、200〜300℃で樹脂成分を融着させて前駆体を強
固にすることにより、取り扱い性及び加工性が向上し、
多孔質リン酸カルシウム系セラミックス焼結体を容易に
製造できることを発見し、本発明に想到した。
【0006】すなわち、本発明のセラミックス前駆体
は、熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする。
【0007】本発明のセラミックス前駆体は、熱可塑性
樹脂を前駆体全体の1重量%以上含有するのが好まし
く、熱可塑性樹脂は平均粒径が10μm以下の球形である
のが好ましい。また熱可塑性樹脂は200〜300℃の加熱処
理により融着しているのが好ましい。
【0008】本発明の気孔率が75〜95%の多孔質リン酸
カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法は、(1) リ
ン酸カルシウム系セラミックス粉体と、水溶性高分子化
合物と、非イオン系界面活性剤と、熱可塑性樹脂とを含
有するスラリーを作製し、(2) スラリーを強く撹拌する
ことによって起泡させ、(3) ゲル化させ、(4) 乾燥後に
熱可塑性樹脂を200〜300℃で融着させ、(5) 焼結するこ
とを特徴とする。
【0009】リン酸カルシウム系セラミックス粉体は長
軸方向の平均長さが100nm以下のリン酸カルシウム系セ
ラミックスの一次粒子からなる平均粒径0.5〜80μmの二
次粒子であるのが好ましい。
【0010】水溶性高分子化合物はセルロース誘導体で
あるのが好ましく、非イオン系界面活性剤は脂肪酸アル
カノールアミド系界面活性剤であるのが好ましい。
【0011】リン酸カルシウム系セラミックス粉体100
重量部に対して、水溶性高分子化合物1〜10重量部、非
イオン系界面活性剤1〜10重量部を配合し、さらに熱可
塑性樹脂を全体の1重量%以上添加するのが好ましい。
【0012】スラリー中におけるリン酸カルシウム系セ
ラミックス粉体+水溶性高分子化合物+非イオン系界面
活性剤+熱可塑性樹脂の合計濃度は20〜50重量%である
のが好ましい。
【0013】スラリー撹拌起泡処理は、処理中の温度を
5〜20℃に保持し、50W/L以上の撹拌力で、スラリーに
ガスを吹き込みながら強く撹拌するのが好ましい。
【0014】非イオン系界面活性剤は金属イオン及び硫
酸基のいずれも含有しないのが好ましく、リン酸カルシ
ウムセラミックスはハイドロキシアパタイトであるのが
好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】[1] セラミックス前駆体 セラミックス前駆体は、多孔質リン酸カルシウム系セラ
ミックス焼結体を製造する過程で作製されるセラミック
ス焼結前の乾燥体を意味し、具体的にはリン酸カルシウ
ム系セラミックス粉体、水溶性高分子化合物、非イオン
系界面活性剤及び熱可塑性樹脂から作製されるゲルの乾
燥体である。以下に各成分について説明する。
【0016】(1) リン酸カルシウムセラミックス粉体 本発明に用いるリン酸カルシウムセラミックス粉体は、
ハイドロキシアパタイト粉体[Ca10(PO4)6・(OH)2]であ
るのが好ましい。ハイドロキシアパタイト粉体は長軸方
向の平均長さが100nm以下の一次粒子からなる平均粒径
0.5〜80μmの二次粒子であるのが好ましい。スラリーの
撹拌性及びセラミックス前駆体の成形性を向上させるた
めに、ハイドロキシアパタイト粉体は球状粒子であるの
が好ましい。
【0017】(2) 水溶性高分子化合物 本発明に用いる水溶性高分子化合物は、その水溶性又は
水分散液に対して加熱等の手段を施すことによりゲル化
するようなものである。ここで、水溶性又は水分散液
は、水溶液、コロイド溶液、エマルジョン及び懸濁液の
いずれも包括する。このような水溶性高分子化合物とし
て、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ース等のセルロース誘導体、カードラン等の多糖類、ポ
リビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルア
ミド、ポリビニルピロリドン等の合成重合体等が挙げら
れ、中でもメチルセルロースが好ましい。またポリビニ
ルアルコールの場合、硼酸あるいは硼砂を添加すること
によりゲル化させることができる。
【0018】(3) 非イオン系界面活性剤 強い撹拌により微細な気泡を多数形成させるとともに、
ゲル化のための加熱工程で気泡を消失させない性質を有
する界面活性剤として、非イオン系界面活性剤が好まし
く用いられる。また多孔質リン酸カルシウム系セラミッ
クス焼結体は生体材料として体内で半永久的に使用され
るため、添加する非イオン系界面活性剤は焼結により完
全に焼失するのみならず、焼結後も残存するナトリウム
等の金属イオンや、硫酸基を含有しないものが好まし
い。
【0019】このような非イオン系界面活性剤として、
脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテルカルボキシレート、ポリオキシエチレンアル
キルエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルフェ
ニルエーテル)等が挙げられる。中でも、ハイドロキシ
アパタイトの存在下での起泡性の観点から、脂肪酸アル
カノールアミド系界面活性剤(例えばN,N-ジメチルドデ
シルアミンオキサイド)が好ましい。
【0020】(4) 熱可塑性樹脂 本発明のセラミックス前駆体は熱可塑性樹脂を含有する
ことを特徴とする。熱可塑性樹脂は、加熱融着によりセ
ラミックス前駆体の機械的強度を高めるとともに焼結に
より完全に焼失させるため、200℃以上で融解し、1000
℃以上で完全に分解する物質が好ましい。このような熱
可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポ
リスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(ナイロン
6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等)、ア
クリル樹脂(ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル
酸エステル等)等が挙げられる。中でも、単体で加工性
に優れたポリスチレン又はアクリル樹脂が好ましい。
【0021】熱可塑性樹脂の含有量は前駆体全体の1重
量%以上であるのが好ましく、1〜5重量%であるのが
より好ましい。1重量%未満ではセラミックス前駆体に
十分な機械的強度を与えることができず、また5重量%
超含有してもそれに見合う機械的強度の増大は得られな
い。熱可塑性樹脂の形状は前駆体の成形性を向上させる
ために球形であるのが好ましく、平均粒径は前駆体中に
均一に分散させるために10μm以下であるのが好まし
い。
【0022】[2] 多孔質リン酸カルシウム系セラミック
ス焼結体 (1) 組成 本発明の製造方法により作製する多孔質リン酸カルシウ
ム系セラミックス焼結体は、Ca/Pの重量比が1.6〜1.7で
あるのが好ましい。焼結後のCa/Pの重量比が1.6未満で
あるとリン酸三カルシウム[Ca3(PO4)2]との混在相とな
り、また1.7超であると酸化カルシウム(CaO)との混在相
となる。本発明を適用する多孔質リン酸カルシウム系セ
ラミックス焼結体の好ましい例は多孔質ハイドロキシア
パタイト焼結体[Ca10(PO4)6・(OH)2]である。
【0023】(2) 気孔率 本発明の製造方法により作製する多孔質リン酸カルシウ
ム系セラミックス焼結体は、75〜95%の気孔率を有する
のが好ましい。このような高気孔率の多孔質リン酸カル
シウム系セラミックス焼結体は著しく高い生体親和性を
有する。気孔率が75%以下では生体親和性が十分でな
く、95%超では機械的強度が不十分なために加工性や取
り扱い性に劣る。
【0024】多孔質リン酸カルシウム系セラミックス焼
結体の平均気孔径は好ましくは5〜1500μmである。平
均気孔径を5μm未満にすると、細胞又は血管の侵入形
成が困難となり、また1500μm超では安定した機械的強
度を得るのが困難であり、製品ロット毎に加工性や取り
扱い性の変動幅が大きくなりすぎる。多孔質リン酸カル
シウム系セラミックス焼結体中の気孔径は均一であるの
が好ましいので、大部分(80%以上)の気孔径は50〜50
0μmの範囲内に入っているのが好ましい。
【0025】[3] 多孔質リン酸カルシウム系セラミック
ス焼結体の製造方法 本発明の製造方法を多孔質ハイドロキシアパタイト焼結
体の場合を例にとって以下に説明するが、本発明は他の
リン酸カルシウム系セラミックス焼結体にも適用するこ
とができる。
【0026】(1) スラリーの調製 ハイドロキシアパタイト粉体、水溶性高分子化合物、非
イオン系界面活性剤及び熱可塑性樹脂を含有するスラリ
ーを調製する。
【0027】(a) 仮焼処理 ハイドロキシアパタイト粉体は、強い撹拌に耐える粉体
強度を得るために仮焼処理を施すのが好ましい。仮焼処
理は、粉体を700〜850℃の温度で4〜10時間熱処理する
ことからなる。仮焼温度が700℃未満であるとハイドロ
キシアパタイト粉体の強度の十分な向上は達成できず、
また850℃超であると焼結が始まるので、粒成長が起こ
るのみならず、仮焼後の粉砕が必要になる。
【0028】(b) 配合比及び濃度 スラリー中において、ハイドロキシアパタイト粉体を10
0重量部として、水溶性高分子化合物を1〜10重量部、
非イオン系界面活性剤を1〜10重量部配合するのが好ま
しく、さらに熱可塑性樹脂を固形分全体の1重量%以上
添加するのが好ましい。ハイドロキシアパタイト粉体の
配合量が少なすぎると、乾燥に時間がかかりすぎ、また
多すぎるとスラリーの粘度が高すぎ、起泡が困難であ
る。水溶性高分子化合物のより好ましい配合量は1〜5
重量部である。また非イオン系界面活性剤の配合量が1
重量部未満であると、起泡が困難であり、また10重量部
超にしてもそれに見合う効果の向上が得られない。非イ
オン系界面活性剤のより好ましい配合量は1〜5重量部
である。また熱可塑性樹脂のより好ましい添加量は固形
分全体の1〜5重量%である。
【0029】スラリー中におけるハイドロキシアパタイ
ト粉体+水溶性高分子化合物+非イオン系界面活性剤+
熱可塑性樹脂の合計濃度は20〜50重量%であるのが好ま
しい。これらの成分の合計濃度が20重量%未満である
と、ゲル化した後の乾燥に時間がかかりすぎ、また乾燥
後にゲルがつぶれて多孔質形状を維持できない。一方、
合計濃度が50重量%超であるとスラリーの粘度が高す
ぎ、撹拌起泡が困難である。より好ましい合計濃度は25
〜40重量%である。
【0030】(2) 起泡 上記組成のスラリーを強く撹拌すると、スラリーは空気
を巻き込み発泡する。撹拌力は50W/L以上であるのが好
ましい。撹拌力が50W/L未満であると、起泡が不充分で
あり、所望の気孔率を有する多孔質ハイドロキシアパタ
イトが得られない。なお撹拌力は、[撹拌機の最大出力
(W)/水溶液の量(L)]×(実際の回転数/最大回転数)
により求まる。撹拌機の出力はスラリーの粘度が高くな
ると回転数を保つために増大するが、高気孔率に起泡さ
せる本発明の場合、スラリー粘度は仕込み時の粘度から
実質的に変化しない。従って、粘度の影響は実質的に無
視できる。
【0031】このような撹拌力が得られる装置として
は、インペラー式ホモジナイザーが挙げられる。インペ
ラー式ホモジナイザーは本来起泡が起こらないように設
計されているが、撹拌条件を50W/L以上とすることによ
り、著しい起泡が可能になる。また撹拌羽根をディスク
状にするとともに、ディスクの外周に鋸刃状の凹凸を設
け、さらに撹拌容器の内壁に邪魔板を設けた構造の撹拌
装置を使用するのが好ましい。このような構造を有する
インペラー式ホモジナイザーは、例えばエスエムテー
(株)製のPH91、PA92、HF93、FH94P、PD96、HM10等で
ある。さらに上記気泡をさらに促進するために、撹拌中
のスラリーに空気や、窒素、アルゴン等の不活性ガスを
注入するのが好ましい。
【0032】撹拌時間は撹拌力に依存するが、一般的に
は1〜30分程度で良い。また気泡を微細かつ均一化させ
るとともに安定化させるために、比較的低温で起泡を行
うのが好ましく、具体的には約0〜25℃、特に5〜20℃
の液温で行うのが好ましい。
【0033】起泡したスラリーを内壁に可撓性耐水性膜
を張った型に注型するのが好ましい。そうすると乾燥時
のセラミックスの収縮に伴って膜が型から剥離するの
で、型と接する面でのセラミックスの崩れや内部での割
れが起こらず、優れた乾燥体が得られる。
【0034】(3) ゲル化 撹拌により十分に起泡したスラリーを80℃以上〜100℃
未満に加熱すると、メチルセルロース等の水溶性高分子
化合物の作用によりゲル化する。加熱温度が80℃未満で
あるとゲル化が不十分であり、また100℃以上であると
水分が沸騰し、ゲル構造が破壊される。
【0035】(4) 乾燥 ゲルの乾燥は、水分が沸騰しない程度の高温(例えば80
℃以上〜100℃未満)に保持することにより行うのが好
ましい。ゲルを乾燥させることによりほぼ等方的に収縮
し、微細かつ均一な球形のマクロポアを有するセラミッ
クス前駆体を得る。
【0036】(5) 加熱処理 得られたセラミックス前駆体を加熱処理する。熱可塑性
樹脂は200℃以上で融解するため、200〜300℃の温度
で、0.5〜3時間加熱して行うのが好ましい。加熱処理
により前駆体に含まれる熱可塑性樹脂は融解した後、冷
却固化してゲルに融着する。融着した熱可塑性樹脂は、
セラミックス前駆体の構造を強固に保持し、崩れ等を防
止する。
【0037】(6) 加工 熱可塑性樹脂を加えて加熱処理したセラミックス前駆体
は、バインダーのみで固定した場合よりも機械的強度が
向上する。従って取り扱い性及び加工性に優れ、仮焼成
を行うことなく乾燥体のまま切削加工しても、崩れ等を
防止して容易に行うことができる。
【0038】(7) 焼結 セラミックス前駆体を1000〜1250℃で2〜10時間焼結す
る。焼結温度が1000℃未満であると、十分な強度を有す
る多孔質ハイドロキシアパタイトが得られず、また1250
℃超であるとハイドロキシアパタイトはリン酸三カルシ
ウムと酸化カルシウムに分解してしまう。焼結時間は焼
結温度に応じて適宜設定すれば良い。なお、焼結温度に
達するまで徐々に昇温することにより脱脂処理(水溶性
高分子化合物、非イオン系界面活性剤及び熱可塑性樹脂
の分解除去)を行うことができる。水溶性高分子化合物
及び非イオン系界面活性剤は300〜900℃に加熱すること
により除去することができ、熱可塑性樹脂は1000℃以上
に加熱することにより除去することができる。例えば、
室温から約10〜100℃/時の昇温速度で約600℃まで昇温
し、次に50〜200℃/時の昇温速度で焼結温度まで昇温
し、この温度で保持するのが好ましい。焼結完了後は徐
冷する。
【0039】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0040】実施例1 細長い形状の一次粒子(平均径:長径78nm、短径23nm)
からなるハイドロキシアパタイトの球形粉体(平均粒
径:10μm)120重量部と、メチルセルロース(和光純薬
工業(株)製、2重量%水溶液として20℃で測定した粘
度:4000cps)の1重量%水溶液320重量部と、脂肪酸ア
ルカノールアミド系界面活性剤(N,N-ジメチルドデシル
アミンオキサイド、「AROMOX」、ライオン(株)製)10
重量部(固形分基準)と、ポリメチルメタクリレート樹
脂(平均粒径:3μm)3重量部とを配合した。得られ
たスラリーをホモジナイザー(エスエムテー(株)製、
PA92)に投入した。スラリー温度を8℃に保ちながら、
スラリーを60W/Lの撹拌力(撹拌時の実際の出力)で5
分間強く撹拌し、起泡させた。
【0041】起泡含有スラリーを型に注入し、83℃に2
時間加熱して、ゲル化させた。得られたゲルを83℃に保
持することにより完全に乾燥し、セラミックス前駆体を
得た。
【0042】得られたセラミックス前駆体を乾燥機で20
0℃、1時間加熱処理して樹脂成分を融解させた。
【0043】樹脂成分を融着させたセラミックス前駆体
を30mm×15mm×10mmの形状に加工した後、大気中で室温
から50℃/時の昇温速度で600℃まで昇温し、次に100℃
/時の昇温速度で1200℃まで昇温し、この温度で4時間
焼成した後、50℃/時の降温速度で600℃まで冷まし、
この温度に4時間保持した後、100℃/時の降温速度で
室温まで冷却した。この焼結工程により多孔質ハイドロ
キシアパタイト焼結体を作製した。得られた焼結体の気
孔率は85%であった。
【0044】比較例1 実施例1と同じハイドロキシアパタイト粉体120重量部
と、メチルセルロース1重量%水溶液320重量部と、脂
肪酸アルカノールアミド系界面活性剤(N,N-ジメチルド
デシルアミンオキサイド、「ARMOX」、ライオン(株)
製)10重量部(固形分基準)とを配合した。得られたス
ラリーをホモジナイザー(エスエムテー(株)製、PA9
2)に投入した。スラリー温度を8℃に保ちながら、ス
ラリーを60W/Lの撹拌力(撹拌時の実際の出力)で5分
間強く撹拌し、起泡させた。
【0045】起泡含有スラリーを型に注入し、83℃に2
時間加熱して、ゲル化させた。得られたゲルを83℃に保
持することにより完全に乾燥し、セラミックス前駆体を
得た。
【0046】得られたセラミックス前駆体を30mm×15mm
×10mmの形状に加工した。次に実施例1と同様に昇温、
焼成して多孔質ハイドロキシアパタイト焼結体を作製し
た。この方法によるセラミックス前駆体は加工中も崩れ
易いため慎重な操作が必要であった。得られた焼結体の
気孔率は85%であった。
【0047】
【発明の効果】上記の通り、本発明のセラミックス前駆
体は熱可塑性樹脂を含有するので、これを融着させるこ
とにより前駆体が強固になり、優れた取り扱い性及び加
工性を有する。そのため焼結後の気孔率に影響を与えず
に多孔質リン酸カルシウム系セラミックス焼結体を容易
に製造することが可能である。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気孔率が75〜95%の多孔質リン酸カルシ
    ウム系セラミックス焼結体の前駆体であって、熱可塑性
    樹脂を含有することを特徴とするセラミックス前駆体。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のセラミックス前駆体に
    おいて、前記熱可塑性樹脂の含有量が前記セラミックス
    前駆体全体の1重量%以上であることを特徴とするセラ
    ミックス前駆体。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載のセラミックス前
    駆体において、前記熱可塑性樹脂は平均粒径が10μm以
    下の球形であることを特徴とするセラミックス前駆体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のセラミ
    ックス前駆体において、前記熱可塑性樹脂は200〜300℃
    の加熱処理により融着していることを特徴とするセラミ
    ックス前駆体。
  5. 【請求項5】 気孔率が75〜95%の多孔質リン酸カルシ
    ウム系セラミックス焼結体の製造方法であって、(1) リ
    ン酸カルシウム系セラミックス粉体と、水溶性高分子化
    合物と、非イオン系界面活性剤と、熱可塑性樹脂とを含
    有するスラリーを作製し、(2) 前記スラリーを強く撹拌
    することによって起泡させ、(3) ゲル化させ、(4) 乾燥
    後に前記熱可塑性樹脂を200〜300℃で融着させ、(5) 焼
    結することを特徴とする方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の多孔質リン酸カルシウ
    ム系セラミックス焼結体の製造方法において、前記リン
    酸カルシウム系セラミックス粉体は長軸方向の平均長さ
    が100nm以下のリン酸カルシウム系セラミックスの一次
    粒子からなる平均粒径0.5〜80μmの二次粒子であること
    を特徴とする方法。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6に記載の多孔質リン酸カ
    ルシウム系セラミックス焼結体の製造方法において、前
    記水溶性高分子化合物はセルロース誘導体であることを
    特徴とする方法。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記非イオン系界面活性剤は脂肪酸アルカノール
    アミド系界面活性剤であることを特徴とする方法。
  9. 【請求項9】 請求項5〜8のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記リン酸カルシウム系セラミックス粉体100重
    量部に対して、前記水溶性高分子化合物1〜10重量部、
    前記非イオン系界面活性剤1〜10重量部を配合し、さら
    に前記熱可塑性樹脂を全体の1重量%以上添加すること
    を特徴とする方法。
  10. 【請求項10】 請求項5〜9のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記スラリー中における前記リン酸カルシウム系
    セラミックス粉体+前記水溶性高分子化合物+前記非イ
    オン系界面活性剤+前記熱可塑性樹脂の合計濃度は20〜
    50重量%であることを特徴とする方法。
  11. 【請求項11】 請求項5〜10のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記スラリーの撹拌を50W/L以上の撹拌力により
    行うことを特徴とする方法。
  12. 【請求項12】 請求項5〜11のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記スラリーの撹拌起泡処理中の温度を5〜20℃
    に保持することを特徴とする方法。
  13. 【請求項13】 請求項5〜12のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記非イオン系界面活性剤が金属イオン及び硫酸
    基のいずれも含有しないことを特徴とする方法。
  14. 【請求項14】 請求項5〜13のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記スラリーにガスを吹き込みながら強く撹拌す
    ることを特徴とする方法。
  15. 【請求項15】 請求項5〜14のいずれかに記載の多孔質
    リン酸カルシウム系セラミックス焼結体の製造方法にお
    いて、前記リン酸カルシウムセラミックスがハイドロキ
    シアパタイトであることを特徴とする方法。
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CN116253562A (zh) * 2023-02-16 2023-06-13 温州医科大学附属口腔医院 一种树脂渗透陶瓷复合材料及其制备方法

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