JP2003088333A - 高濃度有機態ミネラル含有エキスの製造方法 - Google Patents

高濃度有機態ミネラル含有エキスの製造方法

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JP2003088333A
JP2003088333A JP2001280813A JP2001280813A JP2003088333A JP 2003088333 A JP2003088333 A JP 2003088333A JP 2001280813 A JP2001280813 A JP 2001280813A JP 2001280813 A JP2001280813 A JP 2001280813A JP 2003088333 A JP2003088333 A JP 2003088333A
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Kazuyoshi Matsunaga
和義 松永
Takafumi Ishihara
隆文 石原
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Bizen Chemical Co Ltd
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Bizen Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 健康の維持増進や疾病予防に有用な微量ミネ
ラルを含む食品素材およびその抽出法を提供する 【解決手段】 有機態ミネラルを含むエキスの製造方法
であって、無機態ミネラルを含む素材に有機酸を含む溶
液を添加する工程、この素材を含む溶液を加熱して抽出
液を得る工程、およびこの抽出液を濃縮する工程を包含
する。好ましくは、この製造方法は上記素材を前処理す
る工程をさらに包含する。上記記抽出液を得る工程は、
上記素材を含む溶液を予備加熱すること、および上記素
材を高圧下で加熱処理することを包含する。好ましく
は、上記素材はヒバマタ海藻粉末である。好ましくは、
上記ミネラルは、亜鉛、カルシウム、マグネシウムおよ
びカリウムからなる群から選択される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食品素材の抽出エキ
スの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、食品
素材中のミネラルを有機態ミネラルの形態で抽出する方
法、および有機態ミネラルを高濃度で含有するヒバマタ
海藻エキス、このヒバマタ海藻エキスを含むカキ(牡
蠣)肉エキス、およびこれらのエキスを含有する食用組
成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、生活習慣病の発生や食事パターン
の著しい変化にともない、微量ミネラルの栄養学的意義
が重要視されている。例えば、亜鉛の生体における生理
的貯蔵量は限られているため、摂取する食品の亜鉛含有
量が少ないと亜鉛欠乏症が起こりやすい。マグネシウム
もまた、生活習慣病との関連で注目されているミネラル
である。ヒトにおいて、亜鉛は必須微量元素として15
mg/日、マグネシウムは主要ミネラルとして300m
g/日、それぞれ摂取する必要があることが示されてい
る(第5次改訂日本人の栄養所要量)。しかし、現在で
は、一般に、摂食する食品に偏りがあり、その上、加工
食品、調理済み食品が氾濫していることから、これらミ
ネラルの摂取不足は著しく、日本人のミネラルの平均摂
取量は、亜鉛では10〜11mg(FooD Styl
e 21、1989.9(Vol.2)pp53−5
9)、マグネシウムでは200〜250mgであって、
特に若年層の摂取量が少なく、とりわけ女子では150
mgに過ぎないとされている(Food Style
21、1989.9(Vol.2)pp48−51)。
【0003】亜鉛は細胞分裂の激しい部分に特に必要な
金属であり、その欠乏は、全体的な発育不全を起こしや
すい。亜鉛欠乏の個々の症例としてはタンパク同化不
全、免疫機能低下、性腺機能低下、味覚、食欲の低下な
どが見られることは良く知られている。最近では骨粗鬆
症の治療と予防に亜鉛の効能が認められている。また、
脳におけるニューロシグナル伝達に関して、興奮性神経
伝達物質であるグルタミン酸の受容体に亜鉛が作用する
ことから、亜鉛は、神経伝達調整物質の1つであると考
えられている。マグネシウムについては、その欠乏は、
高血圧、虚血性心疾患、動脈硬化症などの生活習慣病の
原因となることが知られている。そして、マグネシウム
を、亜鉛と同様に、糖尿病治療に利用することが検討さ
れている。このように、亜鉛、マグネシウムなどはヒト
の健康維持や疾病予防のうえで重要な役割を担うミネラ
ルであり、これらを強化補強するねらいから種々の栄養
補助食品、健康食品が開発されている。
【0004】その一方、カキは、グリコーゲン、タウリ
ン、多種類のアミノ酸、ビタミンB群(B2、B6
12)ミネラル(亜鉛、カルシウム、マグネシウム、カ
リウム、鉄など)などを含み、これらの栄養素を有効利
用するため、カキを原料とした抽出エキスが製造および
市販されている。
【0005】カキ肉抽出エキスは、一般に、カキ肉を、
50〜90℃の温水に浸漬するか、または熱水中で煮沸
した後に、固形分と分別して得られた抽出液を濃縮およ
び乾燥処理することによって製造されている(特公昭6
0−18381)。そしてまた、カキから亜鉛含有ペプ
チド(血小板凝集抑制作用物質)を抽出する方法とし
て、約60℃の温水で2〜3時間抽出する方法(特公平
4−63672)があり、その後、この方法は、改良さ
れてこの温湯分画を濃縮して、固形分含量20〜45
(W/W)%とした後にエタノールを加えて沈殿を得る
ことを特徴とするカキ肉エキスの製造法(特公平5−2
0440)とされた。
【0006】しかし、これらの方法では、抽出エキス中
に生カキに含まれる亜鉛量の約10重量%が抽出されて
いるに過ぎない。そこで、カドミウム、砒素などの有害
重金属を抽出しないで、亜鉛、カルシウム、マグネシウ
ムなどの天然ミネラル成分を高率に得る方法が提案され
ている。例えば、カキ肉を、酢酸などの有機酸類を含み
pH6以下の酸性水溶液の共存下、加圧・加熱下で抽出
して得られた抽出液を濃縮するか、あるいは、カキ肉を
少なくとも1回以上加圧下で熱水抽出し、その残渣とし
て得られる固形物を、酢酸などの有機酸類を含むpH6
以下の酸性水溶液の共存下、加圧・加熱下で抽出して得
られた抽出液を濃縮して高ミネラル含有カキエキスを製
造する方法(特願平11−374564)がある。しか
しながら、高濃度亜鉛含有エキスの生産量が少なく大量
生産には適さない。
【0007】その他に、最近になって、乾燥酵母や海藻
粉末が亜鉛供給源として利用されているが、亜鉛含有酵
母は風味が悪く、また酵母を培養する際に用いられる無
機質亜鉛が残存する可能性があった。また、マグネシウ
ム源としてはドロマイトが上市されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このような現状から、
本発明では、健康の維持増進や疾病予防に有用な微量ミ
ネラル、特に有機態亜鉛を強化した食用組成物を提供す
ることを目的とする。代表的には、微量ミネラル、グリ
コーゲン、タウリンなどを含有するカキ肉エキスに、ヒ
バマタ海藻由来の高濃度の有機態ミネラルを含有するヒ
バマタ海藻エキスを添加した、ミネラルの摂取バランス
に優れ、そして健康増進や疾病予防に有効利用され得る
食用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機態ミネラ
ルを高濃度で含むエキスの製造方法に関し、この方法
は、無機態ミネラルを含む素材に有機酸を含む溶液を添
加する工程、この素材を含む溶液を加熱して該素材の抽
出液を得る工程、およびこの抽出液を濃縮する工程を包
含する。
【0010】好ましくは、上記方法は、上記素材を前処
理する工程をさらに包含する。
【0011】好ましくは、上記前処理は脱塩処理であ
る。
【0012】好ましくは、上記抽出液を得る工程は、上
記素材を含む溶液を予備加熱すること、および上記素材
を高圧下で加熱処理することを包含する。
【0013】好ましくは、上記素材はヒバマタ海藻粉末
である。
【0014】本発明は、1つの局面で、有機態ミネラル
を含むエキスの製造方法に関し、この方法は、無機態ミ
ネラルを含む素材に有機酸を含む溶液を添加する工程、
この素材に含まれる無機態ミネラルと上記有機酸とを接
触させ、有機態ミネラルを含む上記素材の抽出液を得る
工程、およびこの抽出液を濃縮する工程を包含する。
【0015】本発明はまた、1つの局面で、上記の方法
により製造された高濃度有機態ミネラル含有ヒバマタエ
キスに関する。
【0016】本発明はまた、1つの局面で、有機態ミネ
ラル含有カキ肉エキスに関し、このカキ肉エキスは、上
記のヒバマタエキスとカキ肉エキスとを含む。
【0017】本発明はまた、上記のカキ肉エキスを含む
食用組成物に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、以
下詳述する。
【0019】本発明の有機態ミネラルを含むエキスの製
造に使用する素材の代表例として、ヒバマタが挙げられ
る。ヒバマタは、学名フーカスベシキュロシス(Fuc
usVesiculosis)という海藻であり、大西
洋北西海域で採取される。採取されたヒバマタは、通
常、細切された後、乾燥機で乾燥して50メッシュの大
きさに製粉されて抽出原料として用いられる。ヒバマタ
は、ミネラル、ビタミン、アミノ酸および食物繊維を含
み、特に亜鉛を2.9〜3.7%(乾燥ヒバマタ海藻粉
末に含まれる重量%)含有している。
【0020】本明細書で用いる用語「ミネラル」は、栄
養学的に有用な微量元素をいい、亜鉛、カリウム、マグ
ネシウム、カルシウムなどを含み、好ましくは、亜鉛、
カリウム、マグネシウムおよびカルシウムからなる群か
ら選択される、1種以上の元素を包含する。
【0021】上記脱塩処理は、必要に応じて、上記素材
に含まれる過剰の塩分を低減するために行なわれる。
【0022】本発明の有機態ミネラルを含むエキスの製
造方法は、無機態ミネラルを含む素材(代表的には、ヒ
バマタ海藻粉末)に有機酸を含む溶液を添加する工程、
この素材を含む溶液を加熱してこの素材の抽出液を得る
工程、およびこの抽出液を濃縮する工程を包含する。
【0023】上記有機酸は、素材を含む水溶液がpH6
以下、好ましくはpH5〜1の範囲になるに十分な量、
通常0.1〜20重量%の範囲、より好ましくは1〜1
0重量%の範囲、最も好ましくは5〜9重量%の範囲で
添加される。有機酸として、酢酸、クエン酸、リンゴ
酸、乳酸、グルコン酸およびグルクロン酸など、これら
有機酸のナトリウムやカリウム塩、およびこれらの混合
物を用い得、クエン酸、酢酸がより好適に用いられる。
クエン酸が最も好適に用いられる。
【0024】上記素材を含む溶液を加熱してこの素材の
抽出液を得る工程は、代表的には、この素材を含む有機
酸含有溶液を、1〜1.3kgf/cm2の加圧下で加
熱することによって行なわれる。好ましくはこの素材を
含む有機酸含有溶液は、加圧下で加熱する前に、大気圧
下、約100℃の温度で、通常10分〜数時間の間、好
ましくは30分〜2時間の間予備加熱され、それによっ
て有機態ミネラルの抽出効率を向上し得る。
【0025】加熱後の反応液は、放冷した後、遠心分
離、プレス濾過など、当該分野で公知の方法によって固
液分離して得られた抽出液をエキスとする。固体残渣
は、さらに蒸留水または有機酸含有溶液を添加し、上記
の同様の条件の操作を繰り返すことによって上記素材か
らの有機態ミネラルの抽出をより完全にする。
【0026】得られた抽出液は、フリーズドライ、スプ
レードライなど当該分野で公知の方法によって濃縮およ
び乾燥し、ヒバマタ海藻エキス粉末を得る。
【0027】得られたヒバマタ海藻エキス粉末は、必要
に応じて、他の食品素材,代表的にはカキ肉エキスと組
み合わせて処方される。本発明で用いられるカキ肉エキ
スは、例えば、カキ肉を熱水抽出し、得られた抽出液を
濃縮および乾燥処理することによって製造される(本明
細書に参考として援用される特公昭60−18381を
参照のこと)。組み合せられる食品素材は、当業者に公
知の形態、通常粉末形態で、ヒバマタ海藻エキス粉末と
混合される。そしてこれらは、用途または好みに応じ
て、液状の食品として供することができる。あるいはハ
ードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤
もしくは丸剤としてか、または粉末状、顆粒状、茶状、
ティーバック状もしくは、飴状などの形状に成形され得
る。ヒバマタ海藻エキス粉末と、組み合せられる食品素
材との配合割合は、通常、1:10〜1:50(重量
比)の範囲、好ましくは、1:15〜1:25(重量
比)の範囲である。ヒバマタ海藻エキス粉末をカキ肉エ
キスと組み合わせる場合、得られる食用組成物に含まれ
る栄養成分、特にミネラルのバランスが優れるよう、代
表的には亜鉛が1500ppm以上となるように配合割
合が選択される。
【0028】(実施例1)ヒバマタ海藻粉末1gに3
%、5%、8%および10重量%酢酸を各10mLづつ
加えて沸騰水中で6時間加熱した。各々の濾液を分取し
て濃縮後フリーズドライによって得られた粉末の重量を
測定した結果、それぞれ0.32g、0.33g、0.
37gおよび0.49gであった。このように、10重
量%酢酸溶液をヒバマタ海藻粉末に添加した場合、最も
多い収量でヒバマタ海藻エキスが得られた。
【0029】そこで、ヒバマタ海藻粉末30gおよび1
0%酢酸300mLを500mL三角フラスコに取り、
沸騰水中で30分間加温した後、フラスコ上部を食品包
装用ラップフィルムで蓋をして、さらにオートクレ−ブ
中で1kgf/cm2の圧力条件下、2時間加熱加圧し
た。放冷後、遠心分離(3,000rpm,10分)に
よって固液分離を行って上清と固形残渣を得た。固形残
渣に再び蒸留水150mLを加えて沸騰水中で時々撹拌
しながら1時間加熱した。放冷後、遠心分離(3,00
0rpm,10分)によって固液分離を行って上清を分
取した。この上清と先に分取した上清を併せて減圧下で
濃縮した。次いでこの濃縮液をフリーズドライしてエキ
ス粉末を得た。得られたエキス粉末の重量およびエキス
粉末中の亜鉛の量を原子数光法により測定した。結果を
以下の表1に示す。なお、表1における亜鉛抽出率は、
原料(ヒバマタ海藻粉末)中の亜鉛の総量に対する測定
された抽出エキス中の亜鉛量を重量比で表した。
【0030】(比較例1)ヒバマタ海藻粉末30gおよ
び10%酢酸300mLを500mL三角フラスコに取
るかわりに、ヒバマタ海藻粉末30gおよび蒸留水30
0mLを500mL三角フラスコに取ったことを除い
て、実施例1と同様の操作を行って、ヒバマタエキスを
得、得られたエキス粉末の重量およびエキス粉末中の亜
鉛の量を原子数光法により測定した。結果を以下の表1
に示す。
【0031】(実施例2)ステンレス製の耐圧性抽出釜
に、ヒバマタ海藻粉末2kgと10重量%酢酸20Lと
を入れ、加熱蒸気を2時間通すことにより加熱した。反
応液全量をステンレス製容器に取り出し、蓋をして1夜
静置することによって固液を分離分取した。固体残渣を
ステンレス製の耐圧性抽出釜に戻し、水18Lを加え
て、徐々に加圧して1kgf/cm2気圧に達するまで
の30分間加圧加熱した。この反応液の全量をステンレ
ス製容器に取り出し、約2時間静置して、上澄み液をプ
レスろ過して清澄液を得て、先の酢酸抽出液と合併して
ヒバマタエキスとし、その中の亜鉛含有量を測定した。
この結果は以下の表1に示した。
【0032】(比較例2)10重量%酢酸20Lの代わ
りに、水20Lを用いたことを除いて実施例2と同様の
操作を行ってヒバマタエキスを得、得られたエキス粉末
の重量、およびエキス粉末中の亜鉛の量を原子吸光法に
より測定した。結果を以下の表1に示す。
【0033】
【表1】 表1に示されるように、実験室レベルとテストプラント
レベルにおける亜鉛抽出率には差があるが、熱水加圧の
比較例1および2より、酢酸溶液加圧の実施例1および
2の方が高い抽出率を示した。
【0034】(実施例3および4)500mL三角フラ
スコにヒバマタ海藻粉末15.5gと、クエン酸11g
および蒸留水114mLを入れて92〜95℃で30分
間加温(実施例3)、あるいは92〜95℃で1時間加
温した(実施例4)後、それぞれのフラスコ上部を食品
包装用ラップフィルムで蓋をしてオートクレ−ブ中で
1.1kgf/cm2下、1.5時間加熱加圧した。放
冷後、遠心分離(3,000rpm,10分)によって
固液分離を行って上清と固形残渣を得た。それぞれの固
形残渣を別々の300mL三角フラスコに移し、蒸留水
100mLを加えてフラスコ上部を食品包装用ラップフ
ィルムで蓋をしてオートクレ−ブ中で1.1kgf/c
2で、1.5時間加熱加圧した。放冷後、遠心分離
(3,000rpm,10分)によって固液分離を行っ
てそれぞれの上清を分取した。これらの上清は先に分取
したそれぞれの上清と併せて、各々の全抽出液を減圧下
で濃縮した。次いで各濃縮液をフリーズドライしてそれ
ぞれのエキス粉末を得た。各エキス粉末について、有機
態亜鉛と無機態亜鉛の測定を行った。有機態亜鉛と無機
態亜鉛の測定は以下のようにして行った。
【0035】実施例3と4によって得た各エキス末の
0.5gを栓付試験管に取り、水を加えて完全に溶解し
て一定容積にする。同容のエタノールを徐々に加えて良
く振り混ぜると沈殿が生じるので、そのまま、冷凍庫内
に3時間静置する。この試験管を取り出し遠心分離
(3,000rpm、10分)によって固液分離を行
う。上清は濃縮してエタノールを留去した後、蒸留水に
溶かして元の一定容積にして無機態亜鉛の測定溶液とす
る。一方の固体は2N−塩酸溶液に溶かして元の一定容
積に合わせて、有機態亜鉛の測定溶液とする。それぞれ
の測定溶液について亜鉛含量を原子吸光法により測定し
た。結果は表2にまとめて示した。表2には、ヒバマタ
海藻粉末について同様に測定した有機態亜鉛と無機態亜
鉛の分析値を示した。
【0036】
【表2】 表2に示すように加圧加熱時間は実施例3と4は同じで
あることから、亜鉛抽出率に関しては、30分の81.
90%より1時間の87.04%の方が約5%高く、加
圧操作に先立つ予熱操作の影響が効果的であることがわ
かった。そしてクエン酸による亜鉛抽出率は87.04
%であり、実施例2の酢酸による亜鉛の抽出率65%よ
り高いことから、以後の実施例ではクエン酸溶液との加
圧抽出法を選択した。
【0037】また、原料であるヒバマタ海藻粉末中に
は、有機態亜鉛が平均44.2%、および無機態亜鉛が
平均55.8%と無機態亜鉛の方が多く含まれている
が、クエン酸を添加した加圧抽出により有機態亜鉛が8
2.5〜84.8%とほぼ倍増していることが判明し
た。
【0038】(実施例5)ステンレス製タンクに、ヒバ
マタ海藻粉末25kgとクエン酸20kgおよび水25
0Lを入れて100℃で1時間加温し、続いて1〜1.
1kgf/cm2、1.5時間加熱加圧した。抽出液を
緩速度で大型遠心分離機に送液して2,000rpmで
固液分離を行って上清と固形残渣を得た。上清は貯留タ
ンクに一時貯留し、固形残渣は再び反応タンクに戻し、
水200Lを注加して上と同条件で加圧加熱を1.5時
間続けた。反応終了後、緩速度で大型遠心分離機に送液
しながら、2,000rpmで遠心分離を行って上清を
得た。これら上清液は合せてプレス濾過器にかけ、得ら
れた濾液を濃縮して200kgの抽出エキスを得た。本
抽出エキスの亜鉛含量は4,600ppmであり、その
亜鉛抽出率は99.46%であった。本抽出エキス中に
はカリウム、カルシウムおよびマグネシウムも多量に含
まれていて、分析の結果、それぞれ15,188pp
m、2,058.5ppmおよび3,750.9ppm
であった。
【0039】また本抽出エキスの亜鉛、カルシウムおよ
びマグネシウムのうち、有機態は亜鉛で75.8%、カ
ルシウムは99.4%マグネシウムは91.6%、そし
て無機態は亜鉛で24.2%、カルシウムで0.56
%、マグネシウムで8.4%の割合であり、これらのミ
ネラルのほとんどが本抽出エキス中では有機態で存在す
ることが明らかとなった。なお、カルシウム、マグネシ
ウムの有機態形態および無機態形態は、亜鉛の有機態形
態と無機態形態の測定法と同様の方法により測定した。
【0040】(実施例6)実施例5におけるクエン酸2
0kgの代わりに、酢酸10kgとクエン酸10kgを
使用して行った抽出エキス中の亜鉛抽出率は80.1%
で有り、そのうち有機態亜鉛は40%、無機態亜鉛は6
0%であった。
【0041】(実施例7〜8)当社製カキ肉エキス粉末
に、本発明によって製造された所定量のヒバマタ海藻エ
キスを添加して亜鉛濃度1,500ppm以上の高濃度
亜鉛含有カキ肉エキス末をスプレードライ法によって製
造した(20kgと250kg;それぞれ粉末換算で
1:20または1:23となるようにカキ肉エキス粉末
とヒバマタ海藻エキスを混合した)。それぞれの高濃度
亜鉛含有カキ肉エキス末の含有成分とその含量を表3に
示した。
【0042】
【表3】 表3において、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、カリ
ウム、ヒ素、および鉛は原子吸光法による分析結果であ
り、タウリン、グリコーゲン、麻痺性貝毒、下痢性貝
毒、は日本健康・栄養食品協会が定める方法に準拠して
測定した。また、一般細菌数は、標準寒天培地法、大腸
菌群はBGLB培地法によって測定し、嵩比重は嵩比重
計で測定した。
【0043】これらの結果により、高濃度亜鉛含有カキ
肉エキス末は亜鉛を1500ppm以上含有し、さらに
従来品の当社製カキ肉エキス末と同程度のタウリン、グ
リコーゲンを含む製品とすることができた。さらに有機
態亜鉛は含有亜鉛の約85%を占めていた。このよう
に、本製品(高濃度亜鉛含有カキ肉エキス末)は従来に
ない特徴ある亜鉛の新素材としての利用が期待できる。
また、本製品(高濃度亜鉛含有カキ肉エキス末)は、カ
リウム、カルシウム、マグネシウムのミネラル、タンパ
ク質(22〜26%)および糖質(53〜58%)も高
濃度に含有し、栄養面からも非常にバランスの良い食品
素材として利用可能である。食品としての安全性に関す
るヒ素、鉛含量はカキ加工食品の規格数値を満たしてお
り、カドミウム0.30ppm、総水銀、麻痺性貝毒お
よび下痢性貝毒についてはいずれも不検出であった。
【0044】(実施例8)実施例7で調整した高濃度亜
鉛含有カキ肉エキス末10kgに15重量%還元麦芽水
飴水溶液を噴霧し、噴霧造粒機に供して造粒化した後、
篩過して顆粒状の食用組成物を試作した。
【0045】
【発明の効果】食品素材中のミネラルを有機態ミネラル
の形態で抽出する方法、および有機態ミネラルに富む食
品素材が提供される。摂取不足になりがちなミネラル成
分を補給するために、従来からカルシウム、鉄、最近で
はマグネシウムを含有する製品がある一方で、これら以
外の生体必須微量金属で吸収率が高いといわれる有機態
のミネラルを含有する製品は殆ど無いのが現状である。
しかし、本法により,ヒバマタ海藻粉末より抽出した亜
鉛、マグネシウムまたはカルシウムの有機態ミネラル成
分を多量に含んだヒバマタ海藻エキスを当社製カキ肉エ
キス末に混和することにより、天然物由来の有機態ミネ
ラルを含有する製品を供給することが可能となった。こ
の製品は特に有機態亜鉛などの有機態ミネラル成分を多
く含むことが特徴である。現在、不足しやすいミネラル
成分の供給を確保するための努力が求められているもの
の、食品のみから摂取するには限度があり、亜鉛、マグ
ネシウムさらにはカルシウムを補うためのミネラル類を
高濃度に含有する本製品は、それらを補足した栄養補助
食品の製造に使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B018 MD01 MD02 MD03 MD04 MD05 MD67 MD75 ME14 MF01 MF04 MF06 4B019 LC05 LK01 LK07 LK12 LP08 LP13 4B042 AC04 AG60 AH01 AK11 AP24 AP30

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機態ミネラルを含むエキスの製造方法
    であって、 無機態ミネラルを含む素材に有機酸を含む溶液を添加す
    る工程、 該素材を含む溶液を加熱して該素材の抽出液を得る工
    程、および該抽出液を濃縮する工程を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 前記素材を前処理する工程をさらに包含
    する、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記抽出液を得る工程が、前記素材を含
    む溶液を予備加熱すること、および該素材を高圧下で加
    熱処理することを包含する、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記素材がヒバマタ海藻粉末である、請
    求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記ミネラルが、亜鉛、カルシウム、マ
    グネシウムおよびカリウムからなる群から選択される、
    請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 有機態ミネラルを含むエキスの製造方法
    であって、 無機態ミネラルを含む素材に有機酸を含む溶液を添加す
    る工程、 該素材に含まれる無機態ミネラルと該有機酸とを接触さ
    せ、有機態ミネラルを含む該素材の抽出液を得る工程、
    および該抽出液を濃縮する工程を包含する、方法。
  7. 【請求項7】 請求項4に記載の方法により製造され
    た、高濃度有機態ミネラル含有ヒバマタ海藻エキス。
  8. 【請求項8】 有機態ミネラル含有カキ肉エキスであっ
    て、 請求項7に記載のヒバマタ海藻エキスと、 カキ肉エキスとを含む、カキ肉エキス。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載のカキ肉エキスを含む、
    食用組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009225777A (ja) * 2008-03-21 2009-10-08 Sato Shokuhin Kogyo Kk 海藻抽出物の製造方法
JP4705475B2 (ja) * 2003-12-26 2011-06-22 キリン協和フーズ株式会社 白湯スープの製造法
KR101945934B1 (ko) 2016-10-25 2019-02-08 (주)비티엔 살모넬라성 설사 예방 또는 치료용 유기태화 미네랄 복합체 함유 사료 첨가제 조성물

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